司法書士の講師・講座の仕事


この記事のポイント
- ✓司法書士の講師・副業として
- ✓個人指導の4つの型を整理しました
- ✓時間単価と成果物単価の考え方
司法書士の資格を持っていて、登記や相続の実務はひととおりこなせる。けれども事務所の仕事だけで週が埋まっていて、単価も件数も自分ではあまり動かせない。そういう立場の人が次に検討するのが、司法書士の講師という仕事です。教える側に回ると、同じ知識を何度も換金できるようになり、しかも大半の工程が在宅で完結します。
この記事は、これから資格を取る人ではなく、すでに司法書士試験に合格している人、あるいは補助者として実務を積んできた人に向けて書いています。講師の仕事がどこに存在するのか、どの型なら副業として週末だけで回せるのか、値付けはどう考えるのか、そして法律面でどこに線が引かれているのかを順番に整理します。
司法書士が教える側に回る市場は3つに分かれている
「講師の仕事」とひとくくりにすると値付けも準備の重さもばらばらになります。まず市場を分けて見るところから始めます。司法書士の知識が売れる教育市場は、受験指導、実務研修、一般向け啓発の3つです。この3つは、受講者が払っている理由がまったく違います。
受験指導は、司法書士試験の合格を売る市場です。受講者は「試験に受かること」に金を払っているので、講師に求められるのは試験のクセを知っていることと、頻出論点を短時間で処理できる技術です。実務でどれだけ複雑な商業登記をさばいてきたかは、直接には評価されません。逆に言えば、合格からまだ日が浅い人ほど有利に働く場面があります。
実務研修は、すでに現場にいる人の手を早くする市場です。受講者は司法書士事務所の補助者、不動産会社や金融機関の担当者、企業の総務や法務の担当者です。ここで求められるのは、実際の書式、実際のつまずきどころ、法務局とのやりとりで詰まる箇所を知っていることです。受験指導とは反対に、実務年数がそのまま説得力になります。
一般向け啓発は、相続や後見について不安を持っている人に、制度の全体像を説明する市場です。自治体の市民講座、金融機関の顧客向けセミナー、士業以外の事業者が集客のために開くセミナーなどが該当します。単価は3つの中でいちばん読みにくいのですが、後述するとおり、ここは本業の相談につながる入口としての価値が別にあります。
受験指導と実務研修では、必要な準備の重さが違う
受験指導は、教材の骨格が予備校側にあります。カリキュラム、テキスト、過去問の分析はすでに用意されていて、講師はその上で話す役割を担うことが多い。つまり、ゼロから教材を作らなくてよい代わりに、報酬の決まり方も予備校の基準に従うことになります。
実務研修は逆で、依頼する側が「うちの担当者が登記の必要書類でいつも詰まるので、そこを2時間でやってほしい」といった形で持ちかけてきます。教材は自分で作らなければならない。準備は重くなりますが、そのぶん内容も値付けもこちらが決められます。副業として少しずつ積み上げるなら、資産になるのはこちらです。
一般向け啓発は、資料の使い回しがいちばん効きます。相続の全体像を説明する90分の資料を一度作り込んでおけば、公民館でも、金融機関の店頭セミナーでも、オンラインでも、細部を差し替えるだけで対応できます。準備の重さと再利用の効きやすさは、必ずセットで考えてください。
予備校が副業講師をどう募集しているかを見ておく
教える側の求人がどういう条件で出ているかを知っておくと、自分の位置がつかみやすくなります。司法書士に限らず、資格予備校は合格者を講師として継続的に募集しています。求人サイトに出ている募集要項からは、未経験者向けの研修制度と、常勤ではない登録型の受け入れ枠が用意されていることが読み取れます。
資格の学校LECで宅建士講師・教材制作スタッフを募集しています。宅建士合格者であれば、未経験でも講師研修制度があり安心して始められます。副業・フリーランスの方も歓迎しており、ご希望に応じてパートナー講師としての登録制度もございます。講義は都内各学校等、企業、自治体研修会場、大学等で実施し、教材制作は在宅勤務も可能です。人の成長を支え、可能性を広げることに共感いただける方を求めています。 出典: 求人ボックス
ここで注目してほしいのは「教材制作は在宅勤務も可能」という部分です。講師の仕事というと教室に立つ姿を思い浮かべますが、実際に副業として入りやすいのは教材制作のほうです。答案添削、模試の解説執筆、テキストの改訂作業は、締切さえ守れば時間帯を選びません。教壇に立つ前に、まず紙の仕事で関係を作るというルートが現実的に存在します。
講師の仕事を4つの型に分けて、自分に合う入口を選ぶ
市場の分け方が分かったところで、実際の仕事の形を4つに分けます。副業として始めるなら、この4つのどれか1つに絞るのが失敗しにくいやり方です。
型1 予備校の講師と教材制作
もっとも入口がはっきりしているのがこれです。合格者であれば応募資格を満たすことが多く、講師研修が用意されている予備校もあります。仕事の内容は、生講義、収録講義、答案添削、模試の作問と解説執筆、テキスト改訂に分かれます。
副業として現実的なのは、添削と解説執筆です。1通あたりの単価が決まっている出来高制が多く、繁忙期は答案が集中しますが、自宅で処理できます。生講義は日程が固定されるため、平日の本業がある人には向きません。まず添削で入り、講師登録につなげるという順番が組みやすい。
注意点として、受験指導は情報の鮮度が命です。司法書士試験は民法や不動産登記法の改正がそのまま出題に反映されるので、教える側も改正を追い続ける必要があります。1年放置した教材をそのまま使い回すことはできません。この維持コストを織り込んで値付けしてください。
型2 企業や団体向けの実務研修
不動産会社、金融機関、司法書士事務所、企業の法務部門などに向けて、実務のポイントを講義する型です。1回90分から2時間、参加人数は10人から30人程度の規模が多くなります。
この型は、依頼者が明確な困りごとを持っているのが特徴です。「相続登記の申請義務化で問い合わせが増えたが、社内で説明できる人がいない」「商業登記の必要書類を毎回法務局に聞いていて時間がかかる」といった具体的な課題が先にあります。だから、汎用的な講義ではなく、その会社の業務手順に合わせた研修が求められます。
準備は重いのですが、一度作った資料は同業他社に横展開できます。金融機関向けに作った相続手続きの研修は、内容の骨格を変えずに別の金融機関にも提供できる。この横展開が効くかどうかで、時間あたりの実入りが大きく変わります。
型3 オンライン講座を自分で開く
学習プラットフォームに講座を置く、あるいは自分でオンラインセミナーを開く型です。収録して置いておく形なら、作ったあとの手間はほぼゼロになります。ただし、司法書士のオンライン講座は受講者の母数が小さいので、幅広く売れることは期待しないほうがいい。
現実的に成立しやすいのは、テーマを極端に狭くした講座です。たとえば「相続登記の必要書類の集め方だけを扱う90分講座」「株式会社の役員変更登記を自分でやりたい人向けの実践講座」のように、対象と用途を絞ると受講者が自分ごととして選びやすくなります。広く浅い「司法書士入門」は、無料の情報に埋もれます。
値付けは、収録型で3,000円から15,000円程度の帯に落ち着くことが多い。ライブ開催で質疑応答を含める場合は、これより高く設定できます。オンラインで学びの場を作る動きは資格分野全般に広がっていて、キャリア系の資格でも同じ構図が見られます。関連する進め方はキャリアコンサルタント資格の活かし方|副業・独立ガイド【2026年版】にまとめてあり、資格を教育コンテンツに変える手順の部分は司法書士でもそのまま応用できます。
型4 個人指導と答案添削
受験生を個別に指導する型です。月額制で質問対応と学習計画の相談を受け持ち、記述式の答案を添削します。人数を絞れば副業として回しやすく、単価も比較的高く保てます。
この型の強みは、受講者との距離が近いぶん継続率が高いことです。弱みは、時間が完全に人数に比例することです。5人を超えたあたりから本業を圧迫し始めるので、上限を決めてから募集してください。継続的に相談を受ける仕事の設計についてはキャリア・副業・人生相談のお仕事に、相談型の案件がどう発注されているかがまとまっています。
値付けの考え方は「時間単価」と「成果物単価」で分ける
講師の仕事で失敗しやすいのが値付けです。最初の依頼で安く受けてしまうと、その金額が基準として固定されます。値付けは、時間で売るのか、成果物で売るのかを先に決めてください。
時間で売るときは、拘束時間ではなく準備時間で計算する
研修や講義の報酬は、多くの場合「1回いくら」で提示されます。ここで90分の講義だからと90分ぶんで計算すると、必ず割に合わなくなります。初回は資料作成に8時間から15時間かかるからです。
計算式はこうです。目標時給に、講義時間と準備時間の合計を掛ける。初回はこれで見積もり、2回目以降は準備時間が減るぶん、同じ金額でも実質の時給が上がっていきます。逆に、初回を準備時間なしで見積もると、2回目以降も同じ安い金額に据え置かれます。
企業研修の外部講師料は、内容と講師の実績で大きく振れます。士業が担当する法務系の研修では、3万円から10万円程度の帯で提示されることが多く、行政や自治体の市民講座はこれより低めに設定されます。低い依頼を断る必要はありませんが、低いと分かったうえで「その代わり資料は使い回す」と決めて受けるのと、何も考えずに受けるのとでは、1年後の状況がまるで違います。
成果物で売るときは、修正回数を先に決める
教材制作、解説執筆、答案添削は成果物単価です。ここで必ず取り決めておくべきなのが、修正の回数です。「納品後の修正は2回まで、それ以降は別途」と最初の見積もりに書いておくだけで、際限のない直しを防げます。
添削は1通あたりの単価で受けるのが一般的です。記述式の答案添削は1通あたり1,000円から3,000円の帯が多く、コメントの分量によって上下します。1通に何分かけるかを最初の10通で実測してください。実測なしに単価を受け入れると、時給換算で最低賃金を割ることが起こります。
文章を書いて納品する仕事全体の相場感は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。教材や解説を書く仕事は、法律知識が要るぶん一般的なライティングより高く設定されるべきもので、この相場を下回る提示が来たときは根拠を尋ねる価値があります。
中間手数料が乗るかどうかで、手取りは大きく変わる
同じ金額の講座でも、間に入る事業者が何パーセント取るかで手元に残る額が変わります。仲介サービスを使うなら、手数料の率を必ず確認してください。20%の手数料が乗る場合、5万円の研修で手取りは4万円になります。
この差は1件では小さく見えますが、年20件受ければ20万円の違いになります。手数料0%で直接取引ができる場では、依頼側は同じ予算でより多く頼めて、受け手の手取りは厚くなります。20年この市場を見てきた立場から言えば、講師の仕事は特に、初回の橋渡しを仲介に頼っても、2回目以降は依頼者と直接つながる形へ移っていく人が多い分野です。研修は担当者との関係で継続が決まるため、間に人が入り続ける必然性が薄いからです。
最初の講座を作る手順を、実際の順番で
ここからは、何もない状態から最初の1本を作る手順です。順番を守ると、途中で止まりにくくなります。
手順1 教える範囲を1つに絞る
最初にやることは、範囲を削ることです。司法書士の知識は広く、全部を扱おうとすると資料が終わりません。「相続登記」ではまだ広い。「相続登記のうち、戸籍の収集でつまずく場面だけ」まで絞ってください。
絞り方の基準は、自分が実務で「またこれか」と思った質問です。事務所に何度も来た質問、法務局で何度も補正になった箇所、依頼者が毎回誤解する制度。これらは、そのまま受講者が金を払う理由になります。逆に、自分が調べれば書けるが実務では触ったことがない領域は、最初の1本には向きません。
手順2 90分を5つのブロックに割る
範囲が決まったら、時間配分を作ります。90分なら、導入10分、全体像15分、実務の手順40分、つまずきどころ15分、質疑10分という割り方が扱いやすい。ここで重要なのは、実務の手順に半分近くを充てることです。
受講者が講座に払っているのは、制度の説明ではありません。制度の説明は無料の情報にいくらでもあります。金を払う理由は「実際にどう動けばいいか」が分かることです。書式のどこに何を書くか、どの順番で書類を集めるか、どこで法務局に事前相談するか。この具体性が単価を決めます。
手順3 資料は文字を減らし、手順を図にする
スライドに文章を詰め込むと、受講者は読んでしまって話を聞きません。1枚あたりの文字は少なくし、手順は流れ図にしてください。法律の条文を引くときは、条文そのものをスライドに貼るのではなく、要点を自分の言葉で書き、条文番号を添える形にすると読みやすくなります。
手順4 収録するなら機材は最小限で始める
オンライン講座を収録する場合、最初から高い機材をそろえる必要はありません。必要なのは、外付けのマイクと、静かな部屋です。映像の画質より音声の品質のほうが受講者の満足度に効きます。数千円のUSBマイクで十分に差が出ます。
収録は、90分を一度に録らないでください。10分から15分のブロックに分けて録ると、撮り直しが軽くなり、受講者も休憩を取りやすくなります。編集も分割してあるほうが圧倒的に楽です。
手順5 最初の1回は無料か低額で回して、感想を集める
作った講座をいきなり有料で売り出すより、知り合いの補助者や同期の合格者に無料で受けてもらい、どこが分かりにくかったかを聞くほうが早く仕上がります。ここで集めた感想は、次回以降の告知文にそのまま使えます。実績ゼロの状態で告知文を書くのは難しいので、この一手間が効きます。
法律面の線引きを、断定せずに確認する
講師の仕事は資格の業務そのものではありませんが、周辺には確認が必要な線がいくつもあります。ここは断定を避け、根拠となる法令名を挙げて、確認先を示す形で整理します。
講座の中で個別の相談に踏み込むと、業務の領域に近づく
司法書士法第3条は司法書士の業務を定めており、同法第73条は司法書士でない者がその業務を行うことを禁じています。講座で制度を一般的に説明する行為と、受講者個人の事案について具体的な手続きを助言する行為は、性質が異なります。質疑応答で個別事案の相談が始まったとき、それがどちらに当たるかは事案ごとの判断になるため、所属する司法書士会に確認するのが確実です。
とくに、名簿に登録していない有資格者が講師をする場合は注意が要ります。司法書士法第8条は、司法書士となるには日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿への登録が必要であると定めています。登録していない段階で「司法書士」と名乗って講座を開くことについては、同法第73条第2項が紛らわしい名称の使用を制限しているため、肩書きの表記を含めて事前に確認してください。「司法書士試験合格者」と書くのか「司法書士」と書くのかは、この登録の有無で変わります。
認定を受けた範囲と、そうでない範囲を混ぜない
簡易裁判所の訴訟代理等に関する業務は、司法書士法第3条第2項に基づく法務大臣の認定を受けた司法書士に限られ、紛争の目的の価額が140万円を超えない事件が対象とされています。研修で紛争解決の話題を扱うとき、この範囲を曖昧にしたまま「司法書士ならできる」と説明すると、受講者に誤解が残ります。認定の有無で扱える範囲が変わることは、講座の中で明示しておくほうが安全です。
勤務先の就業規則と、事務所の方針を先に見る
司法書士事務所に勤めている人が講師の副業を始める場合、就業規則の副業条項を先に確認してください。士業事務所は顧客情報の管理が厳しく、外部での講演について事前届出を求めている場合があります。研修で扱う事例が、実際に事務所で扱った案件をもとにしていると、守秘義務の問題が生じます。事例は必ず一般化し、特定できる情報を落としてから使ってください。
行政書士など隣接する資格を併せ持っている人は、扱える範囲がさらに広がる一方で、線引きも複雑になります。行政書士の資格ガイドには、その資格でどこまでの書類作成が業務範囲とされているかがまとまっているので、講座で複数の資格の話をするときは事前に照らし合わせておくと説明の精度が上がります。
在宅の仕事として続けるための設計
講師の仕事を単発で終わらせるか、収入の柱の1つに育てるかは、記録の残し方で決まります。ここまでの内容を、続けるための形に落とし込みます。
1本の資料を3つの用途で使う
作った90分の研修資料は、そのままオンライン講座の台本になり、要点を抜き出せば記事になり、質疑で出た質問は一問一答形式の教材になります。1回の準備を1回で使い捨てないでください。運営者として見てきた限り、教える仕事を長く続けている人ほど、素材の再利用の設計が最初からできています。
とくに、講義で出た質問の記録は資産になります。受講者が何を分かっていないかは、次の講座のテーマそのものです。質問を100個ためた頃には、次に何を作ればいいかを考える必要がなくなっています。
講師の実績を、依頼が来る形で置いておく
講師の仕事は、依頼側が「この人に頼めそうか」を判断できないと発生しません。過去にどこで何を話したか、対象は誰だったか、時間は何分だったかを、一覧で見える場所に置いてください。プロフィールに「相続登記の実務研修(金融機関向け、90分、2026年)」のように書いてあるだけで、依頼側の判断が早くなります。
コンサルティングや講師の案件がどういう条件で発注されているかはITコンサルティング・講師のお仕事で確認できます。技術分野の講師案件が中心ですが、依頼文の書き方、求められる成果物の粒度、期間の設定といった発注側の作法は分野をまたいで共通しています。自分の提案文を書く前に、発注側がどう書いているかを読むのは効率のいい準備です。
本業の相談につながる導線を、押し付けずに置く
一般向けの啓発講座は、単価だけを見ると割に合わないことがあります。しかし、講座を聞いた人がのちに相続や後見の相談者になる流れは実際に起こります。ここで大事なのは、講座の中で営業をしないことです。制度の説明を丁寧にやり切って、最後に連絡先を1枚出す。それだけで十分に機能します。
20年この市場を見てきた実感として、教える仕事から仕事につながる人は、講座の質で信頼を作っています。逆に、講座を営業の場として使う人は、次の依頼が来ません。主催者側は「宣伝された」という感想を必ず受け取るからです。単価の低い講座を受けるときほど、内容で返すという姿勢が効きます。
収入の見え方を、月ではなく年で見る
講師の仕事は、月ごとの変動が大きい仕事です。受験指導は試験前に集中し、企業研修は年度末と期初に偏り、市民講座は自治体の予算に連動します。月単位で見ると不安定に見えますが、年単位で見ると案外そろいます。副業として始めるなら、最初の1年は月次の数字に一喜一憂せず、年間で何本受けられたかを数えてください。
そして、本業と講師業を足したときの総労働時間を必ず記録してください。教える仕事は精神的な負荷が高く、準備時間が見えにくい。手帳に準備時間を書き込むだけで、次の値付けの根拠になります。金額ではなく時間を記録する。これが、講師の副業を数年続けられる人と、1年で燃え尽きる人の分かれ目になっています。
講師の副業でつまずきやすい3つの場面
最後に、教える仕事を始めた人が実際につまずく場面を3つ挙げておきます。どれも事前に知っていれば避けられるものです。
1つ目は、受講者の前提知識を読み違える場面です。司法書士の資格を持っている人にとって当たり前の用語が、不動産会社の担当者や一般の受講者には通じません。登記識別情報、原因日付、添付書面といった言葉は、初回に必ず言い換えを用意してください。研修の冒頭で「今日出てくる用語を5つだけ先に説明します」と断ってから入ると、その後の理解度が変わります。
2つ目は、資料の作り込みに時間をかけすぎる場面です。完璧な資料を目指すと、1本目が永遠に完成しません。70%の出来で一度人前に出し、質問された箇所だけを直すほうが、結果として短時間で良い資料になります。どこが分かりにくいかは、自分では分からないからです。
3つ目は、単発の依頼を受けたあと、次につながらない場面です。研修が終わった時点で関係が切れてしまう人は、終了後の連絡を何もしていないことが多い。当日出た質問のうち、その場で答えきれなかったものを後日まとめて送るだけで、主催者の記憶に残ります。この一手間があるかどうかで、翌年度の依頼が来るかどうかが分かれます。
教える仕事は、資格を取ったときの知識をそのまま換金できる数少ない道です。実務の案件と違って納期に追われることも少なく、在宅で進められる工程が多い。本業の繁閑に合わせて量を調整できる点も、副業として続けやすい理由になっています。
よくある質問
Q. 司法書士の実務経験がなくても講師の副業はできますか?
受験指導であれば可能性はあります。予備校が求めるのは試験対策の技術であり、実務年数ではないからです。合格から日が浅いほうが試験のクセを覚えている利点もあります。一方、企業向けの実務研修は実際の書式やつまずきどころを知っていることが前提になるため、実務経験がない段階では難しくなります。まずは答案添削や解説執筆から入るのが現実的です。
Q. 講師の報酬はどのくらいの水準ですか?
内容と実績で大きく振れます。士業が担当する法務系の企業研修では1回3万円から10万円程度の帯で提示されることが多く、自治体の市民講座はこれより低めです。記述式の答案添削は1通1,000円から3,000円程度が目安になります。いずれも初回は資料作成に8時間以上かかるため、講義時間だけで計算せず準備時間を含めて見積もってください。
Q. オンライン講座を作るのに必要な機材は何ですか?
外付けのUSBマイクと静かな部屋があれば始められます。受講者の満足度は映像の画質より音声の品質に左右されるため、まずマイクに投資してください。収録は90分を一度に録らず、10分から15分のブロックに分けると撮り直しと編集が軽くなります。高額な照明やカメラは、講座が継続的に売れてから検討すれば十分です。
Q. 講座の質疑応答で個別の相談を受けても問題ありませんか?
制度の一般的な説明と、個人の事案についての具体的な助言では性質が異なります。司法書士法第3条が業務の範囲を定め、第73条が資格のない者による業務を禁じているため、どこまでが説明でどこからが業務にあたるかは事案ごとの判断になります。名簿に登録していない有資格者はとくに注意が必要で、肩書きの表記も含めて所属先や司法書士会に事前確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
関連記事
カテゴリから探す

クラウドソーシング入門
クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド
職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク
副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス
フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金
確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

比較・ランキング
サービス比較・おすすめランキング

AI活用
職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド
市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド
クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア
転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人
看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人
薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人
介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人
保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人
医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険
生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人
無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース
バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業
契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代
シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ
サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック
暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス
経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材
フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方
子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金
個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド
SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方







