救急救命士の講師・講座の仕事

前田 壮一
前田 壮一
救急救命士の講師・講座の仕事

この記事のポイント

  • 救急救命士が講師として教える側に回るための実務ガイド
  • 個人指導という6つの仕事の形
  • 資格の範囲と勤務先との調整まで整理します

まず、安心してください。救急救命士が教える側に回るために、教員免許も、指導者としての実績も、最初から必要なわけではありません。実際に募集が出ている講師の仕事の多くは、現場の経験そのものを求めています。ただし、始め方の順番を間違えると、いつまでも一歩目が踏み出せません。この記事では、皆さんが実際に教える側に立つまでに何が必要かを、仕事の形ごとに整理します。リスクや、続かなくなる理由も正直に書きます。

救急救命士が教える側に回る市場はどこにあるか

教える相手は大きく4種類に分かれる

講師の仕事を探すとき、「救急救命士 講師」で検索すると求人が並びます。しかしそれを漠然と眺めても始まりません。まず、誰に教えるのかで市場が完全に分かれることを理解してください。

第一に、資格を目指す学生です。養成校や専門学校で、国家試験の合格に向けた講義と実技指導を行います。第二に、企業や施設で働く一般の人です。職場で人が倒れたときの初期対応を教えます。第三に、特定の業界の従事者です。その業界に固有の事故に対応するための講習を行います。第四に、個人です。消防の採用試験を目指す人や、国家試験の対策をしたい学生に対する個別指導です。

この4つは、必要な準備も、報酬の水準も、依頼の来かたも違います。自分がどこに向かうのかを先に決めてください。全部やろうとすると、どれも中途半端になります。

実際に出ている募集の中身

学生を教える仕事については、常勤の募集が定期的に出ています。

救急救命士資格を活かし、学生の合格をサポートする常勤講師を募集します。カリキュラムに沿った講義や実践指導、国家資格合格に向けたサポート、現場業務の説明、就職アドバイスなどを行います。経験・年齢不問で、教員未経験の方も歓迎します。消防官としての勤務経験者は優遇します。社会保険完備、引越し費用の補助、インフルエンザ予防接種一部補助などの福利厚生があります。勤務時間は8:40~17:40で、休日は完全週休2日制(土日祝)です。... 出典: 求人ボックス

ここで注目していただきたいのは「教員未経験の方も歓迎します」という一文です。教える技術は入職後に身につけられるという前提で募集が出ています。つまり、現場の経験そのものが採用の理由になっているということです。

この募集自体は常勤なので副業には直結しませんが、同じ養成校が非常勤講師を探していることは珍しくありません。特定の科目だけを担当する非常勤の枠は、勤務との調整がつけば副業として成立します。

新しい業界からの需要も出ている

もう一つ、注目すべき動きがあります。

ドローンによる負傷事故発生に備えた応急処置講習の講師を募集します。航空法で負傷者救護が義務化される中、ドローン業界の安全啓蒙活動を推進する重要な役割を担っていただきます。講習内容のアップデートや広報活動も担当します。ドローン関連業務経験は問いませんが、積極的な学習意欲が必要です。救急・救護・看護業務経験者を歓迎します。勤務時間は09:00~18:00(実働8時間/日)で、週休2日制、年間休日120日以上です。夏季休暇、年末年始休暇、GW休暇があります。... 出典: 求人ボックス

これは重要な示唆を含んでいます。新しい産業が生まれ、そこに事故対応の義務が課されると、教える人が足りなくなるという構図です。ドローンに限らず、屋外レジャー、eスポーツの大会運営、物流倉庫の自動化現場、外国人労働者を多く抱える事業所。安全に関する要求が新しく発生している場所には、必ず講習の需要が生まれます。

既存の講習市場は競争が激しく、価格も固まっています。しかし新しく需要が生まれた領域では、教える人がまだ少ないため、条件を交渉できます。皆さんが探すべきなのは、後者です。

副業として選ぶ人が増えている背景

そもそもなぜ副業を考えるのか、という点についても触れておきます。

「救急救命士の仕事を続けてきたけど、不規則な勤務形態なので子供ができたらどうしよう……」「将来を見据えて、副業を考えたほうが良いのかな……」と不安に感じることはありませんか? 出典: medi-jump.com

私が皆さんに伝えたいのは、この不安への対処として講師の仕事が向いているということです。理由は2つあります。第一に、講師の仕事は身体的な負担が本業と質的に違うため、年齢を重ねても続けられます。第二に、一度作った講習の型は繰り返し使えるため、準備の負担が回を追うごとに減ります。将来に向けた積み立てとしては、単発の作業を売る仕事より確実です。

講師の仕事の6つの形

形1 養成校と専門学校の非常勤講師

救急救命士の養成課程を持つ大学や専門学校で、特定の科目を担当します。担当するのは実習科目や、現場活動に関する講義が中心です。

報酬は1コマ90分)あたり8,000円から2万円程度が目安です。準備時間を含めると時給としては高くありませんが、年間の予定が先に決まるため、勤務との調整がしやすいという利点があります。

この形の難しさは、そもそも枠が空かないことです。既存の講師が続けているうちは募集が出ません。養成校に知り合いがいるか、卒業校とのつながりがあるかで、入りやすさがまったく変わります。まずは卒業した養成校に連絡を取り、非常勤の枠が出ることがあるかを聞いてみるのが最短の経路です。

形2 企業研修の講師

企業の安全衛生教育の一環として、社員向けに救命講習や急変時対応の研修を行います。人事部や総務部が窓口になり、半日または1日の枠で実施するのが一般的です。

報酬は半日3万円から8万円1日5万円から15万円程度と幅があります。この幅は、講師個人の実績よりも、発注元の企業規模と予算の枠で決まる部分が大きいのが実情です。

企業研修の良いところは、一度実施すると翌年も呼ばれる可能性が高いことです。新入社員向けの研修は毎年発生しますし、支店ごとに展開されることもあります。1社との関係が続くだけで、年間の予定が安定します。

形3 業界団体と事業者向けの講習

前述のドローンの例のように、特定の業界で発生する事故に対応するための講習です。建設、運輸、屋外レジャー、イベント運営、農業機械。それぞれに固有の事故の形があり、汎用的な救命講習では足りません。

この形が有利なのは、競合が少ないことです。その業界の事故に特化した講習を組める人は限られています。準備には時間がかかりますが、一度作れば長く使えますし、業界団体を通じて横展開しやすいという特徴もあります。

形4 介護施設と保育施設向けの研修

高齢者施設、訪問介護事業者、保育園、学童保育の職員向けです。テーマは急変時の対応と、救急要請の判断基準が中心になります。

この領域は依頼が多く、しかも切実です。職員の入れ替わりがあるため、同じ施設から毎年依頼が来ることも珍しくありません。報酬は2時間の研修で2万円から5万円程度が目安です。施設の規模によっては予算が限られるため、複数施設をまとめて実施する形を提案すると成立しやすくなります。

形5 オンラインでのライブ講座

会場に集まらず、ビデオ会議で実施する形式です。実技の指導には限界がありますが、知識の部分、つまり判断基準や体制づくりの解説であれば十分に成立します。

移動がないため、勤務の合間に実施しやすいのが最大の利点です。全国どこからでも参加できるため、対象を絞った講座でも受講者を集められます。「訪問介護の管理者向け、急変時の判断と記録」といった具体的な設定にすると、少人数でも成立します。

なお、動画教材を作って販売する形もありますが、これは講師の仕事とは別の準備が必要になります。撮影、編集、販売の仕組みづくりが加わるため、まず先にライブで教える経験を積んでからのほうが、内容の完成度が上がります。

形6 個人指導

救急救命士の国家試験対策、消防の採用試験対策、養成校への進学相談。個人を相手にした指導です。オンラインで1回60分から90分の形が一般的で、報酬は5,000円から1万5,000円程度です。

この形の良いところは、明日からでも始められることです。スキルシェア型のサービスに登録すれば、その日のうちに枠を出せます。まず教える経験を積みたいという段階では、ここから入るのが現実的です。教えることを仕事にする案件がどのような形で流通しているかは、ITコンサルティング・講師のお仕事キャリア・副業・人生相談のお仕事の分類を見ると全体像がつかめます。

始め方の3ステップ

ステップ1 教える内容を1つに絞る

いちばん多い失敗が、「救急救命士としてできることは全部教えられます」という状態のまま始めることです。これでは依頼が来ません。依頼する側は「うちの課題を解決してくれる人」を探しているのであって、何でもできる人を探しているわけではないからです。

絞り方は簡単です。次の3つを埋めてください。誰に教えるのか。何ができるようになってもらうのか。何時間で。たとえば「訪問介護のヘルパーに、救急要請の判断ができるようになってもらう。2時間」という形です。これが1行で言えるようになった時点で、営業ができる状態になります。

ステップ2 90分の型を作る

内容が決まったら、実際の進行を作ります。90分を単位にすると、多くの依頼に対応できます。2時間の依頼なら休憩を挟んで拡張し、60分なら演習部分を削る。この伸縮ができる型を1つ持っておくと、依頼のたびに作り直す必要がなくなります。

型の中身は、次の配分が扱いやすいはずです。導入で参加者の不安を聞き出すのに10分。知識の解説に30分。演習またはケース検討に30分。質疑と持ち帰りの整理に20分

ここで重要なのは、解説の時間を短くすることです。教える経験が浅いうちは、知っていることを全部話したくなります。しかし参加者が持ち帰れる量には限りがあります。伝えたいことを3つに絞り、残りは資料に載せて配る。この割り切りができると、講習の評価は明確に上がります。

ステップ3 最初の登壇先を作る

型ができたら、実際に人前で話す機会を作ってください。有償の依頼を待つ必要はありません。地域の自治会、子ども会、自分の子どもが通う学校のPTA、所属している趣味の団体。無償でも構いませんので、まず1回やってみることです。

なぜこれが重要か。人前で話すと、自分の型のどこが崩れるかが分かるからです。想定より説明が長くなる、演習の指示が伝わらない、質問が予想と違う方向から来る。これは実際にやらないと分かりません。そして、この修正を2回から3回繰り返すと、有償で提供できる水準になります。

実施した記録は必ず残してください。日付、対象、人数、内容、参加者の感想。これが最初の実績になります。営業のときに「これまでに実施した講習」として提示できる材料が、無償の回でも積み上がります。

講師料をどう決めるか

単価は3つの要素で決まる

講師料の内訳を分けて考えると、交渉がしやすくなります。第一に、当日の拘束時間に対する対価。第二に、資料と教材の作成に対する対価。第三に、移動と交通費。

多くの人が第一の要素だけで見積もりを出してしまい、結果として安く受けてしまいます。2時間の研修でも、資料を新しく作るなら準備に6時間かかることは普通にあります。既存の型を使い回せる場合と、新規に作る場合で見積もりを変えてください。

相場の目安

企業研修は半日3万円から8万円。施設向けの研修は2時間2万円から5万円。養成校の非常勤は1コマ8,000円から2万円。オンラインの個人指導は60分5,000円から1万5,000円。自治体や公的団体からの依頼は、要綱で単価が定まっていることが多く、交渉の余地は小さめです。

指導や助言を仕事にする職種全般の報酬水準を確認したい場合は、統計に基づく著述家,記者,編集者の年収・単価相場も比較の材料になります。知識を人に渡す仕事の相場感を掴むのに使えます。

手数料が手取りに与える影響

仲介型のプラットフォームを経由すると、報酬から10%から22%程度が手数料として引かれます。5万円の研修なら、手取りは4万円前後まで落ちます。

手数料0%の直接契約型を併用すると、同じ請求額でも手取りが厚くなります。発注する企業や施設の側も、同じ予算でもう1回実施できるという計算になります。実績を作る段階では仲介型を使い、継続する関係は直接の契約に移していく。この順番が、私が皆さんに勧める進め方です。

値上げのタイミング

同じ相手から3回目の依頼が来たとき、または年間の予定が埋まり始めたときが、単価を見直すタイミングです。切り出し方は難しくありません。「来年度から、資料の更新分を含めて見積もりを改めさせてください」と、更新の理由を添えて伝えるだけです。

ここで正直に書いておきます。値上げを言い出せずに、5年間同じ単価のまま続けている人は少なくありません。断られるのが怖いという気持ちは分かります。ただ、講習の内容は毎年更新されており、その労力は確実に増えています。相手も、それを分かっていることが多いのです。

最初の有償依頼をどう取るか

案内文は1枚に収める

営業に使う資料は、長い企画書ではなく1枚の案内文で十分です。載せる項目は決まっています。誰向けの講習か。終わったあとに何ができるようになるか。所要時間。当日の流れ。用意してほしいもの。講師の経歴。そして料金。

このうち、依頼する側がいちばん知りたいのは「終わったあとに何ができるようになるか」です。ここを「救命の知識が身につきます」と書いてしまうと、他の講習との違いが伝わりません。「職員が救急要請の判断に迷ったとき、施設として同じ基準で動けるようになります」のように、組織にとっての変化として書いてください。

料金を書かない案内文もよく見かけますが、これは逆効果です。担当者は予算が取れるかどうかを最初に確認したいので、料金が書かれていないと問い合わせ自体をためらいます。幅を持たせてよいので、必ず載せてください。

声をかける順番

いきなり見知らぬ企業に営業をかけるのは効率が悪いやり方です。順番があります。

最初は、自分がすでに関わっている組織です。子どもが通う保育園や学校、所属している地域の団体、家族の勤務先。次が、そこから紹介してもらえる先です。研修を実施した施設の担当者に「同業の知り合いで、こういう研修を必要としている方はいませんか」と聞くだけで、次の依頼が生まれることがあります。

その次が、業界団体や事業者の集まりです。特定の業界に向けた講習を作ってあるなら、その業界の組合や協会に直接案内を送るほうが、個別の企業に送るより反応が良くなります。団体の側も、会員向けの研修の企画を常に探しているからです。

問い合わせから実施までの進め方

問い合わせが来たら、日程を決める前に対象と人数と課題を聞いてください。この3つが分からないまま内容を組むと、当日に噛み合いません。とくに聞いておきたいのが、これまでに同種の研修を受けたことがあるかどうかです。受けたことがある集団に基礎から説明すると、時間が無駄になります。

内容が固まったら、実施前に簡単な進行表を送ってください。担当者は上司に説明する必要があることが多く、進行表があるとそのまま社内に回せます。この一手間があるかないかで、次年度も呼ばれるかどうかが変わります。

実施後にやっておくこと

終わった当日か翌日に、短い礼状と、当日の要点をまとめたメモを送ってください。参加できなかった職員にも共有できる形にしておくと、組織の中であなたの名前が残ります。

そして、次回の提案を1行だけ添えてください。「今回は判断基準を扱いましたので、次の段階として実際の場面を想定した演習も組めます」といった形です。押し売りにならない程度に、続きがあることだけ示しておく。これが継続につながる最も確実な方法です。

資格の範囲と、講習で言ってよいこと

修了の位置づけを誤解させない

これは必ず守ってください。自分が実施する講習について、「この講習を受ければ資格が取れる」「公的な修了証になる」と受け取られる説明をしてはいけません。

消防本部や日本赤十字社などが実施している講習には、それぞれ定められた位置づけがあります。個人が実施する講習は、それとは別のものです。案内文には「本講習は公的資格の認定を伴うものではありません」と明記してください。参加者が誤解したまま職場に報告し、後で問題になるケースを防げます。

実技指導での配慮

胸骨圧迫の実技を行う際、参加者が身体を痛めることがあります。とくに高齢の参加者や、腰や手首に既往のある人には注意が必要です。開始前に体調と既往を確認し、無理をしない旨を伝えてください。

また、参加者への直接的な身体の処置は行わないでください。実技の指導は姿勢や手の位置を示すことであって、参加者に対して処置をすることではありません。この区別は、当たり前のようで、講習中の流れで曖昧になりがちです。

名称と業務の範囲

救急救命士法(平成3年法律第36号)は、救急救命処置を行える場面や、名称の使用について定めを置いています。

救急救命士法は、救急救命処置を行える場面と、名称の使用について条文で定めを置いています。講習の案内文を作る前に、原文を確認しておいてください。 出典: e-Gov法令検索

資格を持っている人が資格名を名乗ること自体に問題はありません。注意すべきは、資格名と講習内容の組み合わせが、実態以上のものに見えていないかという点です。「救急救命士だからこの範囲まで教えてよい」という対応関係を法律が定めているわけではないため、内容が医療行為の指導に寄っていく場合は、事前に確認が必要です。判断に迷う内容が含まれるなら、依頼元の法務担当や弁護士に相談してください。

所属先の名称を案内文に載せることも、許可なく行うべきではありません。所属先の信用を使った営業と受け取られると、副業の許可そのものに影響します。

勤務先との調整

消防に勤務している場合、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第38条により、任命権者の許可なく報酬を得る事業に従事することが制限されています。

地方公務員の副業は原則禁止ではなく許可制です。ただし許可の運用は自治体によって大きく異なります。 出典: e-Gov法令検索

講師の仕事は、書く仕事と比べると許可の判断が慎重になりがちです。理由は2つあります。実施日時が固定されるため勤務との調整が必要になること、そして所属先の業務と内容が近いことです。申請の際は、実施予定の日程、対象、内容の範囲、所属先の名称を出さないことを明記して出してください。

民間の病院や企業に勤めている場合は、就業規則が基準です。確認すべきは、届出が必要か、競業避止の条項がどこまでを禁じているか、所属先の名称や職名を対外的に出してよいかの3点です。制度としての副業の考え方は厚生労働省が公開している資料で確認できます。

続かなくなる3つの理由

メリットだけ並べるつもりはないので、続かない理由も書いておきます。

第一に、準備の負担を見誤ることです。2時間の研修に対して10時間の準備をかけていると、時給としては本業を下回ります。型を作って使い回す仕組みがないまま件数を増やすと、この状態で消耗します。

第二に、日程の固定です。講師の仕事は、相手の都合で日時が決まります。勤務のシフトが確定する前に依頼が来ることも多く、調整に失敗すると信用を失います。受ける前に、自分のシフトが何か月先まで確定するのかを把握しておいてください。

第三に、教えることへの評価が返ってこない時期があることです。参加者が理解したかどうかは、その場では分かりません。手応えのないまま数回続くと、意味を感じられなくなります。ここを越えるために、簡単なアンケートを毎回取ってください。「今日いちばん持ち帰れたことを1つ書いてください」という質問1つで十分です。返ってくる回答が、次に進む材料になります。

運営者として見てきた、講師の仕事が積み上がる条件

在宅の仕事の市場を長く運営してきた立場から、教える仕事について1つ観察を書きます。

講師の仕事は、他の在宅の仕事と決定的に違う性質があります。それは、1回の仕事が次の仕事を連れてくる構造になっていることです。研修を受けた参加者の中に、別の組織に属している人がいる。その人が転職したり、別の場で「良い講習があった」と話したりする。この経路で依頼が来るケースが、長く続いている人にはほぼ例外なく見られます。

だからこそ、最初の数回をどう扱うかが決定的です。単価が低いから手を抜く、という判断をすると、この連鎖が起きません。逆に、無償の回であっても丁寧に組み立てた人は、その回の参加者から次が来ます。20年この市場を見てきて言えるのは、教える仕事で長く残っている人は、目の前の1回の報酬額よりも、その回を受けた人がどう感じるかに時間を使っているということです。

手数料の構造も、この連鎖と関係しています。仲介を挟まない直接の契約では、依頼側が支払った額がそのまま講師に届きます。同じ5万円でも、20%が引かれる環境では手取りは4万円です。この差は金額の問題であると同時に、準備にかけられる時間の問題でもあります。手取りが厚ければ、資料を作り直す時間を確保できます。資料の質が保たれるから、次が来る。手数料の重さは、実は講習の質に効いてきます。

最後に一つ。教える仕事は、本業を続けている間だけのものではありません。現場を離れた後も、教える技術と作った教材は手元に残ります。準備さえしておけば、いつ始めても遅くはないというのが、私が皆さんに一番伝えたいことです。資格を仕事に変える経路を他の分野でも確認したい場合は、行政書士の資格ガイドが、業務範囲と副業の関係を考える材料になります。

よくある質問

Q. 教員免許がなくても救急救命士は講師の仕事を受けられますか?

受けられます。実際に出ている養成校の講師募集でも「教員未経験の方も歓迎します」と明記されている例があり、現場の実務経験そのものが採用の理由になっています。企業研修や施設向けの研修、業界団体の講習も同様で、教える技術は型を作って数回実施すれば身につきます。

Q. 救急救命士の講師料の相場はどのくらいですか?

企業研修は半日で3万円から8万円、施設向けの研修は2時間で2万円から5万円、養成校の非常勤講師は1コマ90分で8,000円から2万円、オンラインの個人指導は60分で5,000円から1万5,000円が目安です。資料を新規に作る場合は準備時間が長くなるため、教材作成分を別途見積もりに含めてください。

Q. 自分で開く講習で「修了証」を出してもいいですか?

参加証として出すことは可能ですが、公的な資格の認定を伴うものと誤解される表現は避けてください。消防本部や公的団体が実施する講習にはそれぞれ定められた位置づけがあり、個人が実施する講習はそれとは別のものです。案内文に「本講習は公的資格の認定を伴うものではありません」と明記しておくと、後の誤解を防げます。

Q. 消防に勤務しながら講師の副業をするには何が必要ですか?

地方公務員法第38条により、任命権者の許可を受けずに報酬を得る事業に従事することが制限されています。原則禁止ではなく許可制ですが、講師の仕事は実施日時が固定されるため、書く仕事より審査が慎重になる傾向があります。申請時に実施予定の日程、対象、内容の範囲、所属先の名称を出さないことを明記して提出してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月17日最終更新:2026年9月13日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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