未経験から事務職へ転職する進め方


この記事のポイント
- ✓事務職へ転職したい未経験の方向けに
- ✓職種の違いと求人票の読み方
- ✓必要なPCスキルと資格
まず、安心してください。事務職へ未経験から移ることは、いまでも十分に可能です。ただし、10年前と同じやり方では通りにくくなっています。事務職転職を未経験で成功させている皆さんに共通しているのは、「事務職」という言葉を細かく分解して、自分が入れる入口を正確に選んでいる点です。この記事では、事務職の中身の違い、求人票の読み方、実際に必要なスキル、年収の見通し、そして在宅という選択肢まで、準備すべき順番に沿って書いていきます。リスクも正直に書きますので、その前提で読んでみてください。
未経験で事務職に入れるのかを市場の数字で確認する
最初に、市場の状況を押さえておきます。事務職は求人に対して応募が集中する職種です。一般事務の有効求人倍率は、職業計の全体平均が1倍を超えている時期でも0.5倍前後にとどまることが珍しくありません。つまり求人1件に対して応募者が2人いる計算で、これは販売や介護、建設といった人手不足の職種とは正反対の状況です。
なぜこうなるかというと、理由は2つあります。1つは人気があること。残業が少なく、土日祝が休みで、身体的な負担が軽い。この3条件が揃う職種は多くありません。もう1つは、求人側の数が減っていること。会計ソフトやクラウドの勤怠管理、電子契約の普及で、かつて人手でやっていた入力や照合の作業が自動化されました。日本商工会議所や各種の調査でも、バックオフィス業務の効率化は中小企業まで広がっています。
ただ、これを聞いて諦める必要はありません。倍率が高いのは「一般事務」という最も広い入口の話です。営業事務、経理事務、貿易事務、IT事務といった専門性のある事務は、むしろ人が足りていません。皆さんがやるべきなのは、倍率2倍の正面玄関に並び続けることではなく、自分が入れる横の扉を探すことです。
もう1つ、雇用形態の選択肢も広がっています。正社員での採用は確かに狭き門ですが、派遣、契約社員、業務委託まで含めると入口は一気に増えます。派遣から入って紹介予定派遣で正社員になる経路は、未経験者にとって現実的な道の1つです。最初から正社員だけに絞ると、応募できる求人が10分の1になります。まずは事務の実務経験を1年作ることを目標に置いたほうが、結果的に早く着地します。
「事務職」は7種類に分けて考える
事務職という言葉でひとくくりにすると、求人選びを間違えます。中身を分けます。
一般事務は、電話応対、来客対応、書類作成、データ入力、備品管理などを幅広く担当します。求められるスキルの幅が狭い分、応募者が集中し倍率が最も高い。未経験可の求人は多いものの、競争は厳しいと考えてください。
営業事務は、営業担当の後方支援です。見積書と請求書の作成、受発注の管理、納期の調整、顧客からの問い合わせ対応。社内外との調整が多く、接客や販売の経験がそのまま評価されます。未経験から入りやすい入口として、私はここを最初に勧めることが多いです。
経理事務は、伝票処理、経費精算、月次の集計、決算の補助。簿記の知識が問われますが、逆に言えば資格で実力を示せる数少ない事務職です。日商簿記3級があれば書類選考で目に留まりやすくなります。
人事労務は、給与計算、社会保険の手続き、入退社の対応、採用のアシスタント。社会保険の知識が必要で、手続きの期限管理が厳格です。健康保険や厚生年金の実務は日本年金機構の案内に沿って進めるため、制度の理解が直接仕事の質になります。
貿易事務は、輸出入の書類作成、通関業者とのやり取り、インボイスやパッキングリストの作成。英語を使う場面があり、求人数は限られますが、経験者が少ないため一度入ると転職に強い職種です。
医療事務と調剤事務は、受付、レセプト業務、会計。専門の資格講座が多く存在しますが、資格そのものより実務経験が重視される傾向があります。
IT事務は、システム部門の事務サポート、ヘルプデスクの一次対応、資産管理。ITの基礎知識があると強く、この領域から技術職へ移る人もいます。ネットワークの基礎を体系的に学べるCCNA(シスコ技術者認定)のような資格を持っていると、IT系の事務やヘルプデスクでは明確な加点になります。
この7つのうち、自分の前職経験が最も接続しやすいのはどれかを考えてください。接客経験があるなら営業事務、数字を扱う仕事なら経理事務、というように接続点を見つけると、志望動機も自然に書けます。
未経験歓迎の求人票をどう読むか
求人サイトを開くと、未経験歓迎の文字があふれています。ただ、この言葉の中身は求人によって大きく違います。実際の求人広告は、たとえば次のような書かれ方をしています。
◎正社員経験がなくてもOK! ◎未経験・第二新卒大歓迎 ◎職歴・学歴不問!100%人柄採用♪ 「前職は残業が多くて、もっと自分の時間を大切にしたい…」 そんな退職理由も、マーキュリーでは大歓迎! 出典: woman-type.jp
こうした表現自体は悪いものではありません。ただ、求人票を読むときは、書かれている言葉より書かれていない情報に注目してください。確認すべきは4点です。
第1に、仕事内容が具体的に書かれているか。「事務全般」としか書いていない求人は、実際には電話営業や店舗応援が含まれることがあります。使用するソフト名、担当する書類の種類、1日の流れが書かれている求人のほうが信頼できます。
第2に、雇用形態と契約期間。「正社員(試用期間6ヶ月)」と「契約社員(更新あり)」では、その後の安定性がまったく違います。紹介予定派遣の場合は、正社員化の実績割合を面談で確認してください。
第3に、給与の内訳です。「月給25万円」と書かれていても、そのうち固定残業代が5万円分含まれていることがあります。固定残業代は求人票への明示が義務づけられているので、何時間分がいくら含まれるかを必ず見ます。基本給が実質20万円なら、賞与の算定基礎も低くなります。
第4に、平均年齢と離職率です。記載がない場合は面接で聞いて構いません。聞きにくいと感じるかもしれませんが、「長く勤めたいので教えてください」という聞き方なら失礼になりません。むしろ定着を重視する会社ほど、この質問を歓迎します。
私自身、会社員時代に採用に関わっていた時期がありました。そのとき痛感したのは、求人票に書ける文字数の制約で、良い会社ほど情報を詰め込めずに損をしているということです。だから、気になる求人が見つかったら、求人票だけで判断せず、その会社の採用ページや社員インタビューまで読んでみてください。情報量の差が、入社後のギャップを減らします。
事務職の年収は低いのか、上がるのか
正直に書きます。事務職の年収水準は、全職種の中では高いほうではありません。一般事務の平均年収はおおむね330万円前後とされ、営業職や技術職より低い水準にあります。未経験からの入社なら、初年度は月給20万円から23万円あたりが一般的な着地点です。
ただし、この数字には続きがあります。事務職の年収は、職種の専門性によって大きく分かれるのです。経理で月次決算まで任される、人事労務で給与計算を一人で回せる、貿易事務で通関の書類を組める。こうした専門性がつくと、同じ事務職でも年収は400万円台後半から500万円台まで上がります。つまり事務職の年収は、勤続年数ではなく担当業務の範囲で決まります。
ここが未経験で入る皆さんにとって一番大事な点です。入口の給与が低いことは問題ではありません。問題は、入った先で「誰でもできる作業」だけを3年続けてしまうことです。入社後1年以内に、自分だけが担当している業務を1つ作ってください。月次の集計でも、特定システムの運用でも構いません。それが次の転職での交渉材料になります。
比較の材料として、他職種の単価水準も見ておくと判断がしやすくなります。たとえばソフトウェア作成者の年収・単価相場を見ると、技術職の水準が事務職とどう違うかが分かります。事務職から技術職へ移る人は実際にいて、IT事務やヘルプデスクを経由するのが典型的な経路です。いまの選択が数年後にどこへつながるかを考えるとき、こうしたデータは役に立ちます。
未経験から受かる人がやっている準備
書類選考で落ち続ける人と、通る人の差はどこにあるか。私が見てきた限り、差がつくのは次の3点です。
1つ目は、PCスキルを具体的に書けているかどうか。「パソコン操作可能」では何も伝わりません。Excelなら、VLOOKUP関数やピボットテーブルが使える、条件付き書式で管理表を作った経験がある、といったレベルで書きます。Wordなら、差し込み印刷や目次の自動生成、スタイル設定。これらは独学で1ヶ月あれば習得できる範囲です。求人票に「Excel基本操作」とあれば、それはSUMとIFに加えてVLOOKUPまでを指すと考えて準備してください。
2つ目は、タイピング速度です。地味ですが、事務職では確実に効きます。1分間に200文字程度を正確に打てれば実務で困りません。面接で入力テストを課す会社もあります。無料の練習サイトで1日10分、2週間続けるだけで体感できるほど変わります。
3つ目は、前職経験の翻訳です。未経験と言っても、社会人経験があるなら事務に接続する要素は必ずあります。販売職ならレジ締めと在庫管理は数字を扱う業務です。飲食ならシフト作成と発注は調整と計数の仕事です。製造なら日報と検査記録は書類作成です。「未経験ですが」と前置きするのではなく、「前職ではこの業務をこう担当していました」と事実で語ってください。
職務経歴書の組み立て方には決まった型があります。実績を数字と状況で示す方法を整理した職務経歴書の書き方完全ガイド|転職成功率を上げるコツ【2026年版】は、異職種から事務へ移る人が最初に読むべき内容です。書類の形式が整っているだけで、通過率は目に見えて変わります。
資格は取るべきか、何から取るか
よく聞かれる質問です。結論から言えば、事務職の資格は「あれば有利、なくても応募はできる」という位置づけです。ただし、未経験の場合は話が変わります。実務経験がない分、学習意欲と基礎力を示す材料が資格しかないからです。
優先順位を付けるなら、まずMOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)です。ExcelとWordのスペシャリストレベルを取っておくと、PCスキルの証明になります。学習期間は1科目あたり1ヶ月程度、受験料は1万円前後です。
次に日商簿記3級。経理事務を狙うなら必須に近く、狙わない場合でも財務の基礎知識は営業事務や一般事務で役に立ちます。請求書や見積書の意味が分かるようになるからです。学習時間は100時間前後が目安とされています。
3つ目に、文書作成の基礎です。事務職の本体業務は文書のやり取りなので、社外文書の形式、敬語の使い分け、メールの構成を体系的に押さえておくと、入社直後の評価が変わります。ビジネス文書検定は学習範囲が実務と完全に重なっており、未経験者が最短で「使える人」に見えるようになる資格です。
一方で、注意も書いておきます。資格を取ることが目的化して、半年以上応募を止めてしまう人がいます。これは逆効果です。事務職の採用では年齢も見られるため、学習しながら並行して応募するのが正解です。MOSなら勉強を始めて1ヶ月後の試験日を先に予約し、その間も週に数件は応募を続けてください。
事務職の1日を具体的に想像しておく
未経験の方が入社後に戸惑う最大の原因は、事務職の1日を具体的に知らないまま入ることです。イメージを具体化しておきます。
一般的な事務職の1日は、始業前後のメール確認から始まります。前日の夜から朝までに届いた依頼を確認し、その日に処理すべきものを仕分けます。午前中は、期限のある処理を先に片付けます。請求書の発行、伝票の入力、社内からの依頼書の処理。この時間帯に電話が鳴り、来客があり、上司から急ぎの資料作成を頼まれます。つまり午前中は「自分で組んだ予定が崩される時間帯」です。
昼を挟んで午後は、比較的まとまった作業ができます。月次の集計、資料の作成、データの整理。ここで重要なのが、締め日の意識です。事務職の仕事には、月末の請求、月初の締め、給与計算日、社会保険の提出期限といった動かせない日付が並んでいます。この日付を押さえていない人は、毎月同じ場所で慌てます。入社したら、まず年間と月間のカレンダーに締め日を全部書き込んでください。これだけで仕事の見え方が変わります。
そして夕方は、翌日の準備と、その日に処理できなかった依頼の整理です。事務職で残業が発生するのは、自分の作業が遅いからではなく、他部署からの依頼が終業間際に来るからというケースが大半です。だから、依頼を受ける段階で「いつまでに必要ですか」と確認する習慣が、そのまま残業時間を左右します。
未経験の方が抱きがちな誤解を1つ挙げておくと、事務職は「言われたことを正確にやる仕事」ではありません。実際には、複数の部署から来る要求を調整し、優先順位を決め、期限を交渉する仕事です。指示待ちの姿勢だと評価が伸びません。逆に、前職で調整や段取りをやっていた方は、それが最大の武器になります。
入社後3ヶ月でつまずく人と定着する人
せっかく入っても、早い段階で辞めてしまう人がいます。その分かれ目を書いておきます。
つまずく人の第1のパターンは、質問をためらうことです。未経験で入った引け目から「こんなことを聞いたら呆れられる」と考え、自己判断で進めてしまう。事務の仕事はミスが後工程に伝播するので、独断の処理は最も避けたいことです。入社後3ヶ月は、聞くことが仕事だと考えて構いません。ただし聞き方には工夫が必要で、「どうすればいいですか」ではなく「この手順でよいか確認させてください」と自分の案を添えて聞くと、相手の負担が減り、印象も変わります。
第2のパターンは、メモを取らないことです。事務の業務は手順が細かく、一度聞いただけでは再現できません。同じことを3回聞くと信頼が落ちます。教わった手順は、その日のうちに自分の言葉で手順書にしてください。これは自分のためだけでなく、半年後に後輩へ渡せる資産になります。手順書を作れる人は、どの職場でも重宝されます。
第3のパターンは、周囲の業務に関心を持たないことです。自分の担当範囲だけを見ていると、なぜその書類が必要なのかが分からないまま作業することになります。理由が分からない作業はミスを生みやすく、改善の提案もできません。逆に、書類の行き先まで理解している人は、1年で任される範囲が広がります。
定着する人の共通点は、シンプルです。期限を守る、報告を欠かさない、同じ質問を繰り返さない。この3つだけです。特別な能力ではなく、習慣の問題です。そして、この3つができている人は、数年後に転職するときも前職での評価が言葉にしやすくなります。
面接で必ず聞かれる3つの質問と答え方
書類が通ったら次は面接です。未経験の事務職採用では、聞かれることがほぼ決まっています。準備しておけば怖くありません。
1つ目は「なぜ事務職なのですか」。ここで「残業が少ないから」「体力的に楽だから」と答えると、ほぼ落ちます。本音としては正しくても、採用側が聞きたいのは「この人は事務の仕事を理解しているか」だからです。答え方の型は、前職の業務のうち事務に近い部分を挙げ、そこにやりがいを感じた経験を具体的に語ることです。「販売の仕事で在庫管理の担当になり、発注データを整理して欠品を減らした経験から、数字を整えて全体が回る状態を作る仕事に関心を持ちました」。この形なら、動機と適性が同時に伝わります。
2つ目は「前職を辞めた理由」。ここでの原則は、不満を並べないことです。人間関係や待遇が本当の理由であっても、そのまま言うと「うちでも同じことを言って辞めるのでは」と受け取られます。辞めた理由ではなく、次に求めるものの形で話してください。「短期的な成果を追う環境から、継続的に改善を積み上げる仕事に移りたいと考えました」というように、前向きな方向に言い換えます。嘘をつく必要はなく、視点を未来に移すだけです。
3つ目は「PCスキルはどの程度ですか」。曖昧に答えず、具体的な操作名で答えます。「Excelは前職で月次の売上集計表を作成しており、VLOOKUPとピボットテーブルを使っていました。Wordは社内向けのマニュアル作成で目次の自動生成とスタイル設定を使っています」。このレベルで答えられる応募者は、実は多くありません。ここで差がつきます。
逆質問も用意しておきます。「入社後3ヶ月でどこまでできるようになっていてほしいですか」という質問は、仕事への姿勢が伝わるうえ、こちらも仕事内容の実像を掴めるので一石二鳥です。避けたいのは、給与や休日の条件だけを聞くこと。条件は内定後に確認できます。
年代別に見た、未経験転職の攻め方
同じ未経験でも、年齢によって戦い方は変わります。ここは現実的に書きます。
20代の場合、ポテンシャル採用の枠が使えます。企業側は「育てる前提」で見るため、実務経験よりも素直さと学習意欲が評価されます。この年代なら、資格を揃えるより先に応募数を増やすほうが効率的です。第二新卒枠を扱うサービスは一般の転職サイトと紹介される求人が違うため、20代の転職サイトおすすめ5選|未経験・第二新卒向けで使い分けを確認してから登録すると無駄が減ります。
30代の場合、ポテンシャル枠は狭まる一方で、前職の経験を活かした「専門性のある事務」への転換が現実的になります。営業をしていたなら営業事務、店長経験があるなら人事や総務のアシスタント、というように接続点を作ります。この年代で一般事務の求人に未経験で応募すると、20代の応募者と正面から比較されて不利です。狙いを絞ってください。
40代以上の場合、正社員の一般事務はかなり厳しいのが実情です。ただし道がないわけではありません。まず派遣や業務委託で実務経験を作る、あるいは経理や労務といった専門領域を資格と組み合わせて狙う。中小企業では、総務と経理と労務を1人で兼任する求人があり、ここは年齢より実務理解が優先されます。私も40代で働き方を変えましたが、そのとき効いたのは資格よりも「前職で何を回していたか」を説明できたことでした。
どの年代でも共通するのは、転職サイトとエージェントを両方使うことです。サイトは求人数が多く自分のペースで進められ、エージェントは非公開求人と書類添削が使えます。年代と職種でどのサービスが強いかは転職サイトおすすめ比較【2026年版】|年代・職種別の選び方に整理されているので、登録先を決める前に一度目を通しておくと効率が違います。
在宅でできる事務という第三の選択肢
最後に、通勤する事務職だけが答えではないという話をします。ここ数年で、在宅を前提とした事務の仕事が明確に増えました。オンライン秘書、バックオフィス代行、データ入力、資料作成、経理補助。いずれも雇用ではなく業務委託の形が多いのですが、実務経験を積む場としては有効です。
在宅の事務で求められるのは、対面の愛嬌ではなく、文章で正確に伝える力と、期限を守る力です。チャットで報告し、クラウド上で資料を共有し、顔を合わせずに仕事を進める。この形に慣れておくと、通勤型の会社に入ったあとでもリモート対応のある部署で重宝されます。
もう1つ、AIツールを使った業務効率化の支援という領域が広がっています。議事録の要約、定型文書の下書き、データの整形といった作業をツールで回せる人は、事務職の中でも希少です。こうした仕事の広がりはAIコンサル・業務活用支援のお仕事に整理されています。特別な技術力よりも、現場の面倒な作業を言語化できることのほうが価値になります。
在宅で働く場合の注意点も書いておきます。業務委託は雇用ではないため、健康保険は国民健康保険へ、年金は国民年金へ切り替えが必要です。有給休暇もありません。収入が不安定な期間もあります。ですから、いきなり在宅一本に移るのではなく、いまの仕事を続けながら月に数件から始めるのが現実的です。
私は43歳で会社を辞めましたが、辞める1年前から副業として文章の仕事を始めていました。ゼロから独立したわけではありません。最初は月に数件、慣れない業界用語に戸惑い、納品した原稿に赤字が真っ赤に入って落ち込んだこともあります。ただ、その1年があったから、辞めるときに怖さが半分になりました。皆さんに伝えたいのは、準備の期間を持てば、選択は怖いものではなくなるということです。
20年この市場を見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、事務系の仕事で長く続く人には共通点があります。作業が速い人ではなく、聞かれる前に状況を報告する人です。依頼する側から見ると、進捗が見えない相手には次を頼みにくい。逆に「ここまで終わりました、この点だけ確認させてください」と一言添えてくる相手には、安心して次の仕事を渡せます。事務職の評価軸は、処理量より信頼の積み上げにあります。
運営者として見てきた限りでは、単発の作業を数多くこなす人より、「この人に任せると楽だ」という関係を1社ずつ作っていく人のほうが、結果的に安定しています。これは雇用でも業務委託でも変わりません。未経験で入る皆さんは、最初の1年でスキルを増やすことより、頼まれた仕事を期限内に確実に返すことを優先してください。スキルは後からでも積めますが、信頼は最初の数ヶ月で決まります。
収入の構造についても触れておきます。仲介が何重にも入る取引では、発注側が払った金額と受け手が受け取る金額の間に大きな開きが生まれます。手数料0%の直接取引が意味を持つのは、金額の大小というより、同じ予算で依頼側はより多く頼め、受け手の手取りが厚くなるという構造の話です。1件では小さな差でも、継続的な関係になるほど効いてきます。派遣や業務委託で働く場合、この構造を理解しているかどうかで、数年後の手取りが変わります。
最後に、進め方をまとめておきます。まず7種類の事務のどこを狙うか決める。次に求人票を4つの観点で読む習慣をつける。並行してExcelの関数とタイピングを2週間鍛える。職務経歴書で前職を翻訳する。そのうえで、正社員に絞らず派遣や業務委託も含めて応募する。この順番で進めれば、未経験でも道は開きます。焦らず、しかし手は止めずに進めてください。
よくある質問
Q. 未経験から事務職に転職するのは難しいですか?
一般事務は有効求人倍率が0.5倍前後と応募が集中するため、正面から挑むと厳しいのは事実です。一方で営業事務、経理事務、貿易事務、IT事務といった専門性のある事務は人が足りていません。雇用形態も正社員に限定せず、派遣や紹介予定派遣まで広げると入口は大きく増えます。
Q. 事務職に転職するのにどんな資格が必要ですか?
必須の資格はありませんが、未経験の場合は基礎力を示す材料になります。優先度が高いのはMOSのExcelとWord、経理を狙うなら日商簿記3級、文書作成の基礎を押さえるならビジネス文書検定です。ただし資格取得に専念して応募を止めるのは逆効果なので、学習と応募は並行して進めます。
Q. 事務職の年収はどのくらいですか?
一般事務の平均年収はおおむね330万円前後で、未経験入社の初年度は月給20万円から23万円あたりが一般的です。ただし経理の月次決算、人事の給与計算、貿易の通関書類など担当範囲が広がると400万円台後半まで上がります。勤続年数ではなく担当業務の範囲で決まる職種です。
Q. 在宅でできる事務の仕事はありますか?
オンライン秘書、バックオフィス代行、データ入力、資料作成、経理補助などが業務委託の形で増えています。文章で正確に伝える力と期限を守る力が評価されます。ただし業務委託は雇用ではないため健康保険と年金の切り替えが必要で、有給休暇もありません。現職を続けながら小さく始めるのが安全です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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