公務員の副業禁止はなぜ続くのか|制度の理由と認められる働き方


この記事のポイント
- ✓公務員副業禁止はおかしいと感じる人が増えています
- ✓禁止の根拠になっている条文
- ✓許可を取れば認められる範囲
結論から言います。「公務員副業禁止おかしい」という感覚は、制度の側から見ても的を外していません。民間は2018年以降に国が副業を後押しする方向へ舵を切ったのに、公務員の側は原則禁止の条文がそのまま残っているからです。ただし「原則禁止」は「全面禁止」ではありません。許可を取れば認められる範囲があり、そもそも許可が要らない領域もあります。
この記事では、禁止の根拠になっている条文を具体的に示し、認められる働き方と認められない働き方の線引き、自治体が兼業を認め始めたこの10年の動き、無許可でやったときに実際に何が起きるか、そして収入を増やしたいという本音に対して今の職を続けたまま取れる手段を順に整理します。感情論ではなく、確かめられる事実だけで話を進めます。
なぜ「おかしい」と感じる人が増えたのか
この不満が強くなった時期はかなりはっきりしています。厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表したのが2018年で、同じ時期にモデル就業規則も「原則として副業を認める」方向へ書き換えられました。国が民間企業に対して「副業を認めましょう」と言い始めたわけです。同じ国が、自分の職員には原則禁止を維持している。この非対称が、不満の出発点になっています。
もう一つは物価です。同じ給与表で働いていても、生活コストが上がれば手取りの実質的な価値は下がります。民間の同年代が本業とは別の収入源を持ち始めたのを横目で見ながら、自分は制度上そこに手を出せない。しかも公務員の給与は人事院勧告や各自治体の条例で決まるので、個人の努力で短期的に上げられる部分が民間より小さい。1年や2年で劇的に変えられる余地がないという構造が、閉塞感につながります。
実際、検索の背景にある声はかなり生々しいものです。
収入を増やしたいときや、自身のスキルアップを考えたとき、「公務員の副業禁止はおかしい」と感じる方もいるでしょう。 出典: kujilabo.jp
注目したいのは「収入」と並んで「スキルアップ」が挙がっている点です。取材や相談の場で聞く不満も、実は金銭だけではありません。庁内の仕事だけでは身につかない技能を外で磨きたい、資格を取ったのに活かす場がない、地域の活動に本気で関わりたいのに報酬が発生する瞬間にアウトになる。この「腕を鈍らせたくない」という動機のほうが、話を聞くと根深いことが多いのです。
正直なところ、制度がこの動機に応えきれていないのはどうかと思います。ただし後で述べるように、応えようとしている自治体は確かに出てきています。まずは何が禁止されているのかを、条文のレベルで正確に押さえておきましょう。ここを曖昧にしたまま「グレーだからやってしまおう」と踏み出すのが、最も損の大きい選択です。
禁止の根拠になっている条文を正確に押さえる
公務員の副業制限は、ひとつの「副業禁止法」があるわけではありません。地方公務員と国家公務員で別の法律が、それぞれ複数の条文で網をかけています。
地方公務員の場合、中心になるのは地方公務員法第38条です。営利企業を営むこと、営利企業の役員になること、報酬を得て事業や事務に従事することを、任命権者の許可なしにはできないと定めています。ポイントは条文が「禁止」ではなく「許可を要する」という構造になっていることです。つまり許可を出す余地が法律上はじめから用意されています。
国家公務員の場合は国家公務員法第103条と第104条が対応します。第103条が私企業からの隔離、つまり営利企業の役員兼職や自ら営利企業を営むことの制限で、第104条が報酬を得て事業や事務に従事する場合に内閣総理大臣および所轄庁の長の許可を要するという規定です。細かい運用は人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)などで定められています。
加えて、副業に限らない一般的な服務規律も効いてきます。職務に専念する義務、信用失墜行為の禁止、守秘義務です。これらは副業の許可が出た後も消えません。たとえば許可を得た講演であっても、職務上知り得た秘密を話せばそこで別の問題になります。夜通し副業をして本業の勤務に支障が出れば、職務専念義務の側から問われます。
制限の理由として一般に挙げられるのは3つです。第一に職務専念、第二に公正性の確保(許認可や発注の相手方と金銭関係を持たないこと)、第三に信用の維持です。この3つは、正直に言えば筋が通っています。土木部門の職員が地元の建設会社から報酬をもらっていたら、入札の公正さを誰も信じません。「おかしい」と言われるべきなのは禁止そのものではなく、この3つに触れないはずの活動まで一律に止めてしまう運用の粗さのほうです。地域の子ども食堂の手伝いに謝礼が出た、というだけで身構えなければならないのは、制度の目的から見て過剰です。
なお、条文そのものを確かめたいときは政府の法令検索を使うのが早いです。e-Govや各省庁のサイトから法令データベースにたどれます。(e-Gov、総務省)
許可を取れば認められる範囲と、許可が要らない範囲
線引きを整理すると、実務上は3つの層に分かれます。
第一に、そもそも許可の対象外とされやすい領域です。株式や投資信託、債券などの資産運用は、事業として営む形でなければ「報酬を得て事業に従事する」ものではないという整理が一般的です。自分の私物をフリマアプリで売る行為も、営利事業の継続的な営みでなければ同じです。ただし転売を反復継続して在庫を仕入れ始めれば、それは事業です。ここの境目は金額よりも「反復継続性」と「営利目的での仕入れの有無」で判断されます。
第二に、許可を得れば認められる可能性がある領域です。代表例が不動産賃貸です。国家公務員では人事院の運用上、規模が一定を超えると「自営」に当たるとされ、独立家屋がおおむね5棟以上、アパートなどの区分が10室以上、賃貸収入が年額500万円以上といった水準が目安として示されてきました。相続で物件を引き継いだ場合など、避けられない事情がある場合の承認の道も用意されています。地方公務員も同様の考え方を条例や規程で持つ団体が多いですが、数値の扱いは団体ごとに違います。目安の数字だけを鵜呑みにせず、必ず自分の所属の人事担当に確認してください。
執筆、講演、単発の講師、学会報告への謝金なども、この第二層に入ります。単発かつ職務との利益相反がなく、勤務時間外であれば承認される例は珍しくありません。手続きを踏むかどうかが分かれ目で、内容そのものが問題になるケースは多くありません。冒頭に挙げたような、市が主催するイベントに休日のスタッフとして年に1回か2回入り、交通費と時間分の謝礼を受け取るという類の相談も、実務では同じ枠で扱われます。
公務員が休日の休みを利用して市の観光政策課主催のイベントにスタッフとして1日のみ、年間1〜2回参加した場合の謝礼金を受けとっても問題はないのでしょうか?ちなみに謝礼金には交通費と時間給が発生します 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
この質問への答えは「金額の大小ではなく、先に所属へ確認する話」です。年に数回、数千円から1万円弱の謝礼という規模なら、多くの団体では手続きを踏めば通ります。逆に、金額が小さいから黙っていていいという判断をした瞬間に、無許可という別の問題が発生します。制度上まずいのは報酬の額ではなく、手続きの欠落です。
第三に、原則として通らない領域です。許認可や補助金、発注の相手方から報酬を受ける形、勤務時間と重なる形、継続的に人を雇って事業を営む形、そして本業の信用を使って集客する形。ここに踏み込む案件は、どれだけ収入が魅力的でも避けるべきです。
自治体が兼業を認め始めたこの10年の動き
「おかしい」という声に対して、行政の側がまったく動いていないわけではありません。地域貢献活動に限って兼業を積極的に認める枠組みを作った自治体が、2017年前後から出てきました。神戸市が地域貢献を目的とした職員の兼業を認める制度を作り、奈良県生駒市も同様の基準を公表しました。以後、同じ発想の制度を持つ団体が徐々に増えています。総務省も地方公務員の公益的活動としての兼業について整理を進め、許可の判断基準を明確化するよう促してきました。
制度の共通点は3つあります。第一に、対象を「営利目的の副収入」ではなく「地域や公益に資する活動」に絞っていること。第二に、報酬の受け取り自体は否定せず、社会通念上妥当な範囲であればよいとしていること。第三に、許可の判断基準を事前に文書で公開していることです。3つ目が実は一番効きます。基準が公開されていれば職員は申請の可否を事前に読めますし、審査する側も前例に縛られずに判断できます。
国家公務員についても、NPOなどの非営利団体での兼業に関する考え方が整理され、公益的活動への参加が想定される場面では承認の道筋が示されるようになりました。方向性としては「一律に止めるのをやめて、基準を明示して判断する」に寄っています。
ただ、率直に言えば、この動きは収入を増やしたい人の期待とはずれています。認められつつあるのは地域貢献の文脈であって、「生活費の補填のために稼ぐ」文脈ではありません。地域おこしの手伝いや講師、専門知識を活かした支援活動には道が開きつつある。一方で、夜に業務委託の作業を請けて月あたりの手取りを上げるという使い方は、依然として原則の側にあります。この差を理解しておかないと、「解禁されたと聞いたのに申請が通らない」という食い違いが起きます。
制度を使った人の動きを見ていると、効果は収入より別のところに出ています。庁外の人と対等な立場で仕事をすると、自分の技能のうち何が外で通用して何が通用しないかが分かります。行政文書を正確に書ける、要件を漏れなく整理できる、関係者の合意を段取りできる。この3つは庁内では当たり前でも、外では希少です。逆に、外の現場で必要とされるスピード感や、成果を一枚で説明する技術は、庁内の作法と噛み合わないことがある。この落差を在職中に知れるかどうかが、将来どの選択をするにしても効いてきます。
自分の団体に該当する制度があるかどうかは、人事課が出している服務関係の通知や職員向けポータルを見るのが確実です。名前は「地域貢献応援制度」「公益的活動兼業」など団体によって違います。制度が無い団体でも、個別の許可申請の窓は法律上あります。制度が無いことと申請できないことは別です。
無許可で始めたときに実際に起きること
ここは感情を抜いて事実だけ書きます。無許可の兼業が判明した場合、懲戒処分の対象になります。人事院が公表している懲戒処分の指針では、承認手続きを怠って兼業した場合の標準的な処分例が示されており、地方自治体もこれに準じた基準を持っているのが通例です。悪質さや期間、金額、職務への影響の度合いによって重さは変わりますが、「バレたら注意で終わる」という前提で動くのは危険です。
見つかる経路も、想像より地味です。住民税の特別徴収です。給与所得以外の所得があると、自治体から勤務先に通知される住民税額が同年代の水準と食い違います。経理や人事が気づく入口はここが最も多い。次に、確定申告をしていない場合の税務からの照会、そしてSNSや事業者サイトでの実名や顔写真の露出、取引先経由での伝聞です。副業そのものを隠しきれても、金の流れと名前の露出は残ります。
もう一つ見落とされがちなのが、家族名義にすればよいという発想です。実質的に自分が経営しているのに名義だけ配偶者にする形は、実態で判断されます。家族が独立して事業を営んでいることと、名義貸しは別です。ここを曖昧にして始めると、後から整理するコストが大きくなります。
そして最も現実的なリスクは、処分そのものより「続けられなくなること」です。無許可の状態で取引先との関係を作ると、問題が起きたときに誰にも相談できません。報酬が支払われない、契約内容と違う作業を求められる、といったトラブルは業務委託では実際に起こります。表に出せない仕事はトラブル時に法的な手段も取りにくくなります。参考として、報酬が支払われないときの手続きの流れは未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】にまとめています。着手金や支払督促の実務がわかると、なぜ「表に出せる形で契約する」ことが自分を守るのかが見えてきます。
よくある誤解も整理しておきます。「報酬を受け取らなければ何をしてもよい」というのは正確ではありません。無償のボランティアであっても、勤務時間中に行えば職務専念義務の問題になり、活動内容が職務と利益相反を起こす場合は無償でも問題になります。逆に「少額なら報酬とみなされない」という理解も誤りです。金額の多寡は処分の重さに影響しても、手続きの要否を左右するものではありません。また「匿名でやれば分からない」という発想も、金の流れが残る以上は破綻しやすい。報酬を振り込みで受け取れば記録が残り、現金でも申告の段階で説明が必要になります。
結論として、無許可で始める選択は期待値が低いです。得られる金額は限られる一方、失うものは職の安定と将来の選択肢です。先に許可の可否を確かめる、それが通らないなら別の手段を選ぶ、という順番のほうが合理的です。
民間との差はどこで生まれているのか
民間と公務員で歩調が揃わない理由は、変えるべきルールの置き場所が違うからです。民間企業の副業可否は就業規則で定められています。就業規則は会社が手続きを踏めば改定できるので、国がガイドラインとモデル就業規則を示せば、それに追随する企業が出てきます。実際、2018年以降に副業を認める企業は継続的に増え、ガイドラインも2020年と2022年に改定されて、労働時間の管理方法や健康確保の考え方が具体化されました。
一方、公務員の側は法律です。地方公務員法や国家公務員法の条文を変えるには国会での法改正が必要で、そこには人事院勧告の枠組み、地方自治体ごとの条例、服務規律全体との整合といった調整が絡みます。だから動きが遅い。加えて、公務員の兼業は「公正性への疑いが生じないこと」を制度として担保しなければならないため、民間のように企業ごとの判断に委ねるという設計が取りにくい。ここが本質的な違いです。
ただ、この説明で納得できるかというと別問題です。職務専念と公正性を守るための仕組みは「許可制」で既に用意されているのですから、許可の基準を明確に公開して運用を回せば、法改正を待たずにかなりの範囲が解決します。実際に地域貢献型の兼業制度を作った自治体は、法律を変えずに基準の明示だけで前へ進みました。つまり足りないのは条文ではなく運用側の整備です。この点を指摘せずに「法律だから仕方ない」で終わらせるのは、正直なところ怠慢だと思います。
読者の立場で実用的な結論を言うと、自分の団体の運用がどのレベルにあるかを確かめる価値があります。基準を文書で公開している団体なら、申請の可否は自分で読めます。公開していない団体でも、人事担当に「どういう内容なら承認の対象になり得るか」を一般論として聞くことはできます。個別の案件名を出す前に枠組みを聞く、という順序にすると相談のハードルが下がります。
申請を通す書き方と、落ちる申請の共通点
許可申請は、内容が同じでも書き方で結果が変わります。判断する側が確認したいのは4点です。職務に支障が出ないか、職務との利益相反がないか、報酬が社会通念上妥当か、公務の信用を損なわないか。申請書はこの4点に先に答える形で書くと通りやすくなります。
具体的には、次の情報を明記します。活動の内容と依頼元の名称、活動の日時と場所(勤務時間外であることが分かる形)、期間(単発か継続か、継続なら想定回数)、報酬の額と算定根拠、依頼元と自分の所属部署との関係(許認可や補助金、発注の関係が無いこと)。この5つが埋まっていれば、審査する側は判断材料が揃います。逆に「執筆活動」「地域活動」のような抽象的な書き方だと、確認のやり取りが増えて時間がかかります。
落ちる申請には共通点があります。第一に、依頼元と所属部署に取引関係があるケース。これは書き方では救えません。第二に、活動時間が勤務時間と重なるケース。第三に、報酬の算定根拠が説明できないケース。時間単価や原稿料の相場から離れた金額だと、対価性を疑われます。第四に、継続性が高いのに単発として申請するケース。毎月定期的に発生する仕事を「単発」と書くと、後で事実と食い違います。第五に、事後申請です。活動を始めてから申請すると、無許可の期間が記録に残ります。
順序として押さえておきたいのは、直属の上司への相談を人事への申請より先に置くことです。制度上の決定権は任命権者にありますが、実務では所属長の意見が添えられます。事前に共有されていない案件は、内容が問題なくても慎重に扱われます。報酬の発生する活動は、依頼を受けた段階で相談しておくのが安全です。依頼元に対しても「所属の承認が要るので、日程は承認後に確定させたい」と伝えておけば、断りにくい状況に追い込まれることを避けられます。
もう一つ、税の手続きも忘れないでください。承認を得て報酬を受け取った場合、給与以外の所得として確定申告が必要になる場合があります。金額の基準や必要書類は国税庁のサイトで確認できます。(国税庁) 承認は取れているのに申告を落として指摘を受ける、というのは避けたい失敗です。
今の職を続けたまま取れる手段を具体的に並べる
「稼ぐ」が難しいなら、何ができるのか。取れる手段は3つの方向に分かれます。
一つ目は、承認の取れる範囲で外に出ることです。専門知識を活かした単発の講師や執筆、地域の公益活動、家業の手伝い、小規模な農業。金額は大きくなりませんが、外の世界との接点ができます。この接点が後で効きます。実務で見てきた限り、退職後に仕事が早く立ち上がる人は、在職中に外部との関係を持っていた人です。名刺の肩書きが変わっても、相手が自分の仕事の質を知っていれば話が続くからです。
二つ目は、報酬を伴わない形で技能を磨いておくことです。資格取得は、報酬が発生しないので服務の問題が起きません。文書作成の精度を上げるビジネス文書検定のような基礎系は、行政文書に慣れた人ならもともと相性がよく、在宅の受注業務でも通用します。技術寄りに振るならCCNA(シスコ技術者認定)のようなインフラ系の認定が、情報部門の経験を外部で説明する材料になります。どの技能が市場でいくらに換算されるのかを先に知っておくと、狙いを絞れます。ソフトウェア作成者の年収・単価相場や著述家,記者,編集者の年収・単価相場には職種ごとの収入水準がまとまっているので、自分の持ち駒がどのレンジに置かれるのかを事前に見ておくと判断が早くなります。
三つ目は、退職や転職を選択肢として具体化することです。ここで大事なのは、勢いで辞めないことです。在宅で受注する働き方は、案件の単価と稼働量で収入が決まります。行政経験が評価されやすいのは、制度や要件を読み解く仕事、文書を整える仕事、事業者からの申請を審査する感覚が要る仕事です。近年は生成AIの導入支援のように、業務手順を整理して現場に落とす能力が問われる領域も広がっています。AIコンサル・業務活用支援のお仕事には、こうした業務の依頼内容や求められる前提がまとまっていて、行政の業務改善に関わった経験がどう読み替えられるかを掴みやすいです。
他の専門職がどう整理しているかも参考になります。監査法人勤務のように兼業の制約が強い職種での考え方は会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】に整理されています。利益相反を避けながら専門性を外に出す手順は、公務員にも応用できる部分があります。また、実際に外の仕事を請ける段になったら、契約書の必須項目を先に押さえておくべきです。フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにチェックリストがあります。発注書に何が書かれていなければ危ないかを知っておくと、最初の1件で足元を掬われません。
市場を見てきた立場からの観察
20年ほど在宅ワークとフリーランスの市場を運営してきた立場から、ひとつ言えることがあります。収入が安定する人と不安定なままの人の差は、単価の高さよりも「同じ相手から繰り返し頼まれるかどうか」で決まります。長く続く人ほど、単発の作業をこなすことより、この人に任せると楽だと相手に思わせる関係づくりに時間を使っています。逆に、単価だけを追って相手を毎回変えていると、営業に費やす時間が増え続けて、結果的に時間あたりの手取りが下がっていきます。
この観点は、公務員が「今すぐ稼げないこと」を考え直す材料になります。関係づくりには時間がかかります。つまり、在職中に急いで収入を作れないことは、実は致命的な遅れではありません。むしろ在職中に「誰と、どういう仕事で、どう役に立てるか」を見極めておいた人のほうが、外に出てからの立ち上がりが速い。急いで無許可の案件に手を出すより、承認の取れる範囲で外部と接点を持ち、市場の相場と自分の技能の距離を測っておくほうが、長い目で見て手取りは大きくなります。
もう一点、額面と手取りの差についてです。仲介が入る仕組みでは、依頼側が払った金額から一定割合が引かれて受け手に届きます。同じ予算でも、中間マージンが乗らない直接の取引なら、依頼側はより多く頼めて、受け手は手元に残る額が厚くなります。運営者として見てきた限り、この差が効いてくるのは金額の派手さではなく継続性のほうです。手数料0%の環境で同じ相手と長く付き合った人は、1件ごとの単価が平凡でも年間の手取りが崩れにくい。派手な高単価案件を単発で拾い続ける人のほうが、年間では波が大きく出ます。
最後に、制度への評価をもう一度書きます。公務員の副業制限は、公正性と信用の維持という目的の部分では筋が通っています。おかしいのは、その目的に触れない活動まで一律に止めてしまう運用の粗さと、基準を職員に見せていない団体が残っていることです。個人としてできるのは、基準を確かめ、通るものは手続きを踏んで通し、通らないものは別の手段に振り替えることです。感情の置き場と行動の置き場を分ける、これが一番損の少ない進め方です。制度への異議は異議として持ち続けてよいし、声を上げる場もあります。ただ、自分の生活設計は制度が変わるのを待たずに動かせます。今日できるのは、所属の基準を読むこと、承認が取れる活動を1つ探すこと、市場の相場を調べることの3つです。
よくある質問
Q. 公務員でも許可なしにできることはありますか?
株式や投資信託などの資産運用、自分の私物をフリマアプリで売る行為は、事業として反復継続しなければ許可の対象外と整理されるのが一般的です。ただし在庫を仕入れて転売を繰り返す形は事業に当たります。境目は金額より反復継続性と営利目的の仕入れの有無なので、迷ったら所属の人事担当に先に確認してください。
Q. 不動産賃貸は公務員でもできますか?
一定規模までなら認められる余地があります。国家公務員では独立家屋がおおむね5棟以上、区分が10室以上、賃貸収入が年額500万円以上といった水準が自営の目安として示されてきました。相続で引き継いだ場合など、やむを得ない事情での承認の道もあります。数値の扱いは団体ごとに違うため、必ず自分の所属の規程を確認してください。
Q. 無許可で副業をすると、どのように発覚しますか?
最も多い入口は住民税の特別徴収です。給与以外の所得があると勤務先に通知される税額が食い違います。次に確定申告をしていない場合の税務からの照会、SNSや事業者サイトでの実名や顔写真の露出、取引先経由の伝聞です。無許可の状態はトラブル時に相談先がなくなる点でも不利になります。
Q. 退職せずに収入を増やす現実的な方法はありますか?
即効性のある方法は限られます。現実的なのは、承認が取れる範囲の単発の講師や執筆、地域の公益活動で外部との接点を作り、並行して報酬の発生しない資格取得で技能を積むことです。市場の単価相場を先に調べておくと、退職や転職を選ぶ場合の判断が早くなり、立ち上がりも速くなります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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