厚生年金を受けながら働くときの在職老齢年金の止まり方 2026


この記事のポイント
- ✓厚生年金の在職老齢年金で年金が止まる仕組みを
- ✓令和8年4月の改正後の基準額65万円をもとに整理します
- ✓基本月額と総報酬月額相当額の意味
厚生年金を受け取りながら働くと年金が減る、という話は広く知られています。ただ、いくらまでなら減らないのかという数字は、令和8年4月に大きく変わりました。それまでの月51万円から月65万円へ引き上げられたので、古い数字で判断すると計算が合いません。
この記事では、在職老齢年金で年金が止まる仕組みを、日本年金機構の現在の記載と厚生年金保険法の条文で確認しながら整理します。計算に使う2つの数字の意味、実際の当てはめ方、全額止まっても支給され続けるもの、金額が見直される時期、そして厚生年金の被保険者かどうかで扱いが変わる点まで順に見ていきます。データで判断できる形にするのが目的です。
在職老齢年金の仕組みは1つの式に集約される
在職老齢年金という名前の年金が別にあるわけではありません。老齢厚生年金を受け取っている人が厚生年金保険の被保険者であるとき、給与と年金の合計額に応じて年金の一部または全部が止まる仕組みのことを、まとめてこう呼んでいます。
止まるかどうかの判定は1つの式で決まります。基本月額と総報酬月額相当額を足して、その合計が基準額を超えるかどうかを見ます。超えなければ全額支給されます。超えた場合は、超えた分の半分が止まります。式にすると、支給される年金の月額は「基本月額 −(基本月額+総報酬月額相当額 − 基準額)÷ 2」になります。
ここで重要なのは、超えた分がそのまま全部止まるのではなく、半分だけ止まるという点です。合計が基準額を10万円超えたなら、止まるのは5万円です。給与を増やしても年金が同じ額だけ減るわけではないので、手取りの合計は増える方向に動きます。この点を誤解して、基準額を1円でも超えたら年金が全部消えると思い込んでいる人が少なくありません。
もう1つ押さえておきたいのは、この仕組みが働くのは厚生年金保険の被保険者である期間だけだという点です。厚生年金に入っていない働き方をしている場合は、収入がいくらあっても老齢厚生年金は止まりません。後の節で詳しく見ますが、この違いが働き方の設計に直結します。65歳未満の人の令和4年3月以前の年金については計算方法が違うので、過去の分を調べるときは別の式を使う必要があります。
令和8年4月の改正で基準額が65万円になった
基準額は法律上「支給停止調整額」と呼ばれます。この額が令和8年4月から変わりました。日本年金機構は改正の趣旨と金額を明記しています。
令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)に基づき、令和8年4月から、年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が月51万円から65万円に引き上げられました。平均寿命・健康寿命が延びる中で、働き続けることを希望する高齢者の方の活躍を後押しし、より働きやすい仕組みとすることが、今回の見直しの趣旨です。 出典: nenkin.go.jp
数字が混乱しやすい理由が1つあります。厚生年金保険法46条3項は、支給停止調整額を62万円と書いています。条文の数字だけを見ると62万円になるため、そちらを基準額として説明している記事が出回っています。しかし同じ項のただし書きに、賃金の変動に応じて改定する仕組みが定められていて、改定後の額が実際に使われる基準額になります。令和8年度の基準額として日本年金機構が示しているのは65万円です。
改定のルールも条文に書かれています。計算した額に5千円未満の端数が出たら切り捨て、5千円以上1万円未満の端数が出たら1万円に切り上げます。つまり基準額は1万円単位で動きます。毎年度見直されるため、来年度以降も同じ額であるとは限りません。数字を使うときは、その年度の額を確認するのが確実です。
引き上げの幅は小さくありません。旧基準の51万円だと、年金の基本月額が15万円の人は給与が36万円を超えた時点で年金が減り始めていました。65万円になると、同じ人でも給与が50万円まで減額なしで済みます。働く時間を増やすかどうかの判断が、この改正で変わった人は相当な数になると考えられます。
計算に使う2つの数字の正体
式は単純ですが、2つの数字の定義を取り違えると結果が変わります。順に確認します。
基本月額は、加給年金額を除いた老齢厚生年金の報酬比例部分の月額です。ここに老齢基礎年金は入りません。年金全体の月額で計算してしまうと、実際より不利な結果が出ます。加給年金は配偶者や子がいるときに加算されるお金で、これも基本月額からは除かれます。厚生年金基金に加入していた期間がある場合は、基金に加入しなかったと仮定して計算した老齢厚生年金の額をもとに基本月額を出します。基金から支払われる代行部分も、国が支払うべき年金額とみなして計算に含めます。
総報酬月額相当額は、その月の標準報酬月額に、その月以前1年間の標準賞与額の合計を12で割った額を足したものです。つまり、月給だけでなく賞与も月割りで入ってきます。ここを月給だけで計算すると、賞与が出る職場では判定を大きく外します。賞与の多い働き方をしている人ほど、総報酬月額相当額は月給の額より高くなります。
標準報酬月額は実際の給与そのものではなく、等級に当てはめた額です。手当や通勤費の扱いによって等級が動くため、給与明細の支給額と一致しないことがあります。自分の等級は年金事務所か、ねんきんネットで確認できます。70歳以上の人の場合は、標準報酬月額と標準賞与額の代わりに、それぞれ「相当する額」を使って計算します。
加給年金の額も押さえておくと判断しやすくなります。日本年金機構の令和8年4月からの表では、配偶者と1人目・2人目の子が各243,800円、3人目以降の子が各81,300円です。配偶者の分には受給権者の生年月日に応じて36,000円から179,900円の特別加算が付き、昭和18年4月2日以後生まれなら特別加算179,900円で合計423,700円になります。詳しい条件は日本年金機構の加給年金額と振替加算のページに出ています。
3つのケースで実際に計算する
数字を入れて動かしてみます。いずれも令和8年度の基準額65万円を使います。
1つ目のケース。基本月額が12万円、総報酬月額相当額が40万円の人です。合計は52万円で、65万円以下なので全額支給されます。年金は減りません。旧基準の51万円だったら、この人は合計52万円で超えていたので、(52万円−51万円)÷2の5千円が止まっていました。改正で止まらなくなった典型例です。
2つ目のケース。基本月額が15万円、総報酬月額相当額が58万円の人です。合計は73万円で、65万円を8万円超えています。止まるのは8万円の半分の4万円なので、支給される年金の月額は15万円から4万円を引いた11万円になります。給与を1万円上げると総報酬月額相当額も1万円上がり、止まる額は5千円増えます。差し引きで手取りは5千円増える計算です。
3つ目のケース。基本月額が10万円、総報酬月額相当額が90万円の人です。合計は100万円で、65万円を35万円超えています。止まる額は35万円の半分の17万5千円ですが、基本月額は10万円しかありません。計算上の年金支給月額がマイナスになるため、老齢厚生年金は加給年金額を含めて全額支給停止になります。
3つ目のケースで分かるのは、基本月額が小さい人ほど全額止まりやすいという構造です。厚生年金の加入期間が短い人や、報酬比例部分が少ない人は、給与がそれほど高くなくても止まる領域に入ります。逆に、基本月額が大きい人は合計額が大きくなりやすい反面、全額止まるまでの距離も長くなります。自分がどちらのタイプかで、働く時間を増やす判断の重みが変わります。
賞与の扱いも計算で効きます。年に2回の賞与が合計240万円ある人なら、総報酬月額相当額に月あたり20万円が乗ります。月給が45万円でも総報酬月額相当額は65万円になり、基本月額を足した時点で基準額を超えます。賞与の支給月だけの問題ではなく、支給から1年間続く点に注意が必要です。
全額止まっても支給され続けるもの
全額支給停止と聞くと年金がすべて消えるように読めますが、止まるのは老齢厚生年金の部分です。日本年金機構の記載では、年金支給月額がマイナスになる場合、老齢厚生年金は加給年金額を含めて全額支給停止になりますが、老齢基礎年金と経過的加算額は全額支給されます。
老齢基礎年金は国民年金から出る部分で、在職老齢年金の判定には関係しません。何歳までどれだけ働いても、この部分は減りません。経過的加算額は、老齢厚生年金の定額部分と老齢基礎年金の差額を埋めるために加算されるお金で、こちらも全額支給されます。この2つが残ることを知らないまま「働くと年金がゼロになる」と考えて就労を控えると、損をします。
止まるほうに含まれるものも確認しておきます。加給年金額は老齢厚生年金と一緒に止まります。配偶者や子の加算を生活費に組み込んでいる場合、全額支給停止の影響はその分大きくなります。また、配偶者自身が厚生年金の被保険者期間20年以上の老齢厚生年金を受け取る権利を持っているときは、その配偶者分の加給年金額は別の理由で支給停止されます。令和4年4月以降は、実際に受け取っていなくても受け取る権利があれば止まる扱いに変わりました。
厚生年金保険料の負担も併せて見る必要があります。70歳未満で厚生年金の被保険者である間は、年金が止まっていても保険料は払い続けます。払った分は将来の年金額に反映されますが、その反映の時期は次の節で見る改定の仕組みで決まります。70歳以上の人については厚生年金保険の被保険者ではないため保険料の負担はありません。それでも在職による支給停止は行われます。
支給停止額が変わるタイミング
いくら止まるかは毎月固定ではありません。日本年金機構は、支給停止額が変わる時期を2つ挙げています。総報酬月額相当額が変わった月と、退職日の翌月です。ただし退職して1か月以内に再就職して厚生年金に加入した場合は除かれます。
総報酬月額相当額が変わるのは、定時決定や随時改定で標準報酬月額が変わったとき、そして賞与が支給されて1年間の合計が動いたときです。賞与の影響は支給月だけでなく、そこから12か月間続きます。だから、賞与が出た翌月から年金が減り、1年後に戻る、という動き方をします。通帳の入金額が突然変わって驚く原因の多くがこれです。
支給停止の期間そのものは、基本月額と総報酬月額相当額の合計が基準額を超えている期間です。合計が基準額以下に戻れば、その月から全額支給に戻ります。手続きは必要ありません。給与が下がる時期が分かっているなら、いつから満額に戻るかを先に計算できます。
年度が変わるタイミングも見ておく価値があります。基準額は毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。年金額そのものも毎年度改定されるため、基本月額も動きます。前年度の数字で立てた見通しが、4月から少しずれる可能性があります。年に1回、4月分の支払いの内容を確認する習慣を持っておくと安全です。
在職定時改定と退職改定の時期
働きながら払った保険料が年金額に反映される時期にも決まりがあります。2つの仕組みがあります。
1つは在職定時改定です。厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受けている65歳以上70歳未満の人が、基準日である9月1日に被保険者であるときは、翌月の10月分の年金額から見直されます。前年9月から当年8月までの加入期間が追加され、年金額が再計算されます。9月1日の前に資格を喪失して、1か月が経過する前に再取得した場合も、在職定時改定として再計算されます。8月25日に資格喪失して9月3日に資格取得した例が示されています。
もう1つは退職改定です。厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受けている70歳未満の人が、退職して1か月を経過したときは、退職した翌月分の年金額から見直されます。70歳に到達したときも、到達した翌月分から見直されます。このとき年金額の一部または全部の支給停止がなくなり、全額支給されます。反映されていなかった退職までの加入期間が追加されて、年金額が再計算されます。
注意点が2つあります。1つは、退職して1か月以内に再就職して厚生年金に加入した場合、つまり転職のような場合には、年金額の再計算が行われないことです。もう1つは、70歳以上の期間は厚生年金に加入していないため、年金額の再計算に反映されないことです。70歳以降も適用事業所で働き続ける人は、保険料を払わない代わりに年金額も増えません。
再計算の結果として、思わぬ加算が付くこともあります。再計算で厚生年金の加入期間が20年を超えたときは、加給年金が支給される場合や、配偶者に振替加算が支給される場合があります。この場合は別途手続きが必要です。加入期間が19年台で退職を迎える人は、1年働き足すことで加算の対象になる可能性があるため、自分の加入期間を先に確認しておく価値があります。
70歳を超えたときの扱い
70歳になると厚生年金保険の被保険者ではなくなります。それなら在職老齢年金の対象から外れると思われがちですが、そうではありません。平成19年4月以降に70歳に達した人が、70歳以降も厚生年金の適用事業所に勤務している場合は、被保険者でなくても在職による支給停止が行われます。
このときの計算は、標準報酬月額と標準賞与額の代わりに「相当する額」を使います。実際に払っている保険料はないので標準報酬月額は決まりませんが、支給停止の判定のために報酬額を等級に当てはめた額を使う、という扱いです。式そのものは70歳未満と同じで、基準額を超えた分の半分が止まります。
厚生年金保険法46条1項は、70歳以上で使用される者についても支給停止の対象に含めることを明記しています。国会議員と地方公共団体の議会の議員も同様に対象です。条文はe-Gov法令検索で確認できます。
70歳以上の人にとっての違いは、保険料の負担がないぶん手取りの計算が単純になる点です。給与から厚生年金保険料が引かれないので、給与の額がそのまま総報酬月額相当額に近い形で効きます。一方、年金額が増える要素はなくなるため、働くことで将来の年金を増やす効果は期待できません。70歳以降の就労は、年金の増額ではなく今の収入を得るための選択になります。
適用事業所でない場所で働く場合、たとえば業務委託で仕事を受ける場合は、この支給停止の対象になりません。70歳を超えて収入を得たい人が、雇用ではない形を選ぶ理由の1つがここにあります。
働き方で支給停止の有無が変わる
在職老齢年金の判定は、厚生年金保険の被保険者であるかどうかを入口にしています。つまり、厚生年金に入らない働き方をすれば、収入の多さに関係なく老齢厚生年金は止まりません。
具体的には3つの形があります。1つ目は、業務委託や請負で仕事を受ける形です。雇用ではないので厚生年金の被保険者になりません。2つ目は、厚生年金の加入要件を満たさない短時間勤務にする形です。短時間労働者の社会保険は、週の所定労働時間が20時間以上、2か月を超える雇用の見込み、学生でないこと、という要件で判定されます。以前あった所定内賃金が月額8.8万円以上という賃金要件は2026年10月に撤廃されたため、現在は賃金の額ではなく時間などの条件で判定されます。3つ目は、厚生年金の適用事業所ではない場所で働く形です。
ただし、厚生年金に入らないことにはもう1つの面があります。保険料を払わないぶん、将来の年金額は増えません。健康保険も国民健康保険に切り替わるため、保険料の計算方法が変わります。働く期間が短いなら年金の増額は小さいので支給停止を避けるほうが得になりやすく、働く期間が長いなら加入して年金額を伸ばすほうが得になる場合があります。どちらが有利かは基本月額と給与の水準で変わるので、年金事務所で試算してもらうのが確実です。
判断のときに見落とされやすいのが、税と社会保険料を引いた後の金額で比べていないことです。年金が止まらない働き方を選んでも、国民健康保険料が上がれば手取りは減ります。総額ではなく手取りで比べる必要があります。個別の金額は事情で変わるため、年金事務所と市区町村の窓口の両方で確認してください。
業務委託で働くことを選ぶ場合、契約の条件を書面で残すことが前提になります。報酬の支払期日や業務範囲を口約束で始めると、後から揉めます。契約書に入れる項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにチェックリストの形で整理されています。報酬が支払われないときの回収手順は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で扱っています。
繰下げ受給を選ぶときに見落とされる点
働き続けるなら年金を繰り下げて増やす、という選択肢があります。老齢基礎年金と老齢厚生年金は、65歳で受け取らずに66歳以後75歳までの間で繰り下げると、繰り下げた期間に応じて増額されます。増額率は1か月あたり0.7%で、75歳まで繰り下げると84%増えます。この増額率は一生変わりません。2つの年金は別々に繰り下げることもできます。
ここに在職老齢年金が絡むと話が変わります。日本年金機構は、65歳以後に厚生年金保険に加入していた期間がある場合や、70歳以後に適用事業所に勤務していた期間がある場合、在職老齢年金制度によって支給停止される額は増額の対象にならないと明記しています。つまり、止まっていた部分は繰り下げても増えません。働きながら繰り下げれば両方得になる、という単純な話ではないということです。
計算の方法も示されています。繰下げ加算額に平均支給率を乗じて計算します。平均支給率は、月単位での支給率の合計を繰下げ待機期間で割った値です。月単位での支給率は、1から「在職支給停止額を65歳時点の老齢厚生年金額で割った値」を引いた数になります。全額支給停止が続いた期間は支給率がゼロになるため、その期間は繰下げによる増額に寄与しません。
もう1つの注意点は加算の扱いです。加給年金額と振替加算額は増額の対象になりません。さらに、繰下げ待機期間中は加給年金額と振替加算そのものを受け取れません。配偶者の加給年金が付いている人が老齢厚生年金を繰り下げると、待機している年数分の加算を受け取らないまま過ごすことになります。増額分と受け取らない加算額を比べてから決める必要があります。
繰下げには他にも条件が並びます。75歳に達した月を過ぎて請求しても増額率は増えません。66歳に達した日以後の待機期間中に他の公的年金を受け取る権利を得た場合は、その時点で増額率が固定されます。厚生年金基金や企業年金連合会から年金を受けている人は、基金の年金も併せて繰下げになるため、支払元への確認が必要です。年金生活者支援給付金、医療保険や介護保険の自己負担と保険料、税金にも影響する場合があります。詳しい条件は日本年金機構の年金の繰下げ受給のページに並んでいます。
雇用保険の給付を受けるときの調整
在職老齢年金とは別に、雇用保険の給付との調整という仕組みもあります。65歳になるまでの老齢年金を受けている人にとっては、こちらの影響のほうが大きい場合があります。
まず失業給付です。特別支給の老齢厚生年金などの65歳になるまでの老齢年金と、雇用保険の失業給付は同時に受けられません。ハローワークで求職の申込みを行った日の属する月の翌月から、失業給付の受給期間が経過した日の属する月、または所定給付日数を受け終わった日の属する月まで、年金が全額支給停止されます。求職の申込みをした後で基本手当を受けていない月がある場合、その月分の年金はすぐには支給されず、3か月程度後の支給になります。受給期間が経過した後の支払い開始も3か月程度後になります。
次に高年齢雇用継続給付です。これは雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の人のうち、賃金額が60歳到達時の75%未満になった人に、最高で賃金額の10%に相当する額を支給する制度です。令和7年4月1日施行の改正で、この率が引き下げられました。厚生年金保険の被保険者で65歳になるまでの老齢年金を受けている人がこの給付を受けられるときは、在職による支給停止に加えて年金の一部がさらに止まります。止まる額は最高で標準報酬月額の4%に当たる額です。
移行期の扱いもあります。令和7年3月31日以前に支給要件を満たす人、具体的には60歳到達日が令和7年4月1日より前で高年齢雇用継続基本給付金を受ける場合と、施行日より前に再就職して高年齢再就職給付金を受ける場合は、給付額が新賃金の15%、年金の支給停止額が標準報酬月額の最大6%になります。自分がどちらに当たるかは60歳到達日で決まります。
見落とされやすい注意点が1つあります。初回の高年齢雇用継続給付金の支給申請が認められた場合、その後に支給申請を行わなかった月についても、申請が可能である期間中は老齢年金の一部支給停止が解除されません。退職したとき、65歳に到達したとき、または不支給決定などの雇用情報が提供されたときに、遡って解除され、申請しなかった期間の年金が支払われます。手続きの詳細は日本年金機構の高年齢雇用継続給付との調整のページで確認できます。届出が必要になる場合があるので、ハローワークで手続きをしたら年金事務所にも連絡するのが確実です。
確認と手続きの窓口
自分の数字を確かめる手順を整理します。まず基本月額を知るには、年金証書か年金額改定通知書を見ます。老齢厚生年金の報酬比例部分の年額を12で割った額が基本月額です。加給年金額が含まれている場合は差し引きます。
次に総報酬月額相当額です。標準報酬月額は、事業所から交付される標準報酬決定通知書で分かります。ねんきんネットに登録していれば、加入記録から確認できます。賞与の分は、直近1年間の標準賞与額の合計を12で割って足します。
2つの数字が揃ったら、基準額と比べて式に当てはめます。日本年金機構は在職老齢年金早見表をPDFで公開しているので、細かい計算をせずに支給停止額を調べることもできます。手続きの届出が必要かどうかは個別の事情で変わるため、ねんきんダイヤルか最寄りの年金事務所に確認するのが確実です。
将来の見通しを立てるなら、ねんきんネットの試算機能が使えます。働き方を変えた場合の年金額を条件別に計算できるので、雇用を続ける場合と業務委託に切り替える場合の差を数字で比べられます。この試算を見ないまま感覚で判断すると、数万円単位のずれが出ます。
年金の相談は無料です。予約して行けば待ち時間も短くなります。制度の説明を読んで分からない部分は、そのまま窓口に持ち込むのが早いです。税金の扱いについては税務署か税理士、健康保険料については市区町村の窓口が担当になります。窓口が分かれている点だけ押さえておくと、たらい回しを避けられます。
現場から見た、年金と働き方の組み立て
20年この市場を見てきた立場から言えば、60代以降の働き方で成果が出ているのは、時間を売る形から成果を売る形に切り替えた人たちです。時間を売る形だと、体力の低下がそのまま収入の低下になります。加えて、雇用の形だと厚生年金の被保険者になるため、在職老齢年金の判定を毎月気にすることになります。
運営者として見てきた限りでは、長く続く人の共通点は専門性の言語化でした。これまでの職務経験を「何ができるか」の一覧に変換できている人は、業務委託の依頼が続きます。逆に、役職名や勤務先名でしか経歴を語れない人は、雇用以外の入口を見つけにくくなります。ここは年齢より準備の差が出るところです。
手取りの厚さも継続を左右します。仲介の手数料が乗る経路では、同じ予算でも受け手に届く額が薄くなり、割に合わないと感じた時点で人が離れます。中間のマージンが乗らない直接取引だと、依頼する側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側は手数料0%の厚い手取りを確保できます。年金の支給停止を避けられるうえに手取りも厚いという組み合わせは、60代以降の働き方として合理的な選択になります。
具体的にどの分野に需要があるかを見ておくと、切り替えの計画が立てやすくなります。長年の業務知識を生かせる領域としてはAIコンサル・業務活用支援のお仕事が伸びていて、業務の手順を整理して自動化する提案が求められています。開発の経験がある人はアプリケーション開発のお仕事で案件の種類と工程を確認できます。報酬の水準を判断するならソフトウェア作成者の年収・単価相場や著述家,記者,編集者の年収・単価相場のように職種ごとの単価をまとめたデータが手がかりになります。
報告や提案の書類を整える力も、受注の継続に効きます。ビジネス文書検定は文書の構成を体系的に扱うので、業務委託で必要になる提案書や報告書の型を固めるのに使えます。資格そのものが評価されるというより、書き方が安定することで相手の手間が減り、次の依頼につながる形です。
最後に、判断する順番を整理します。基本月額と総報酬月額相当額を出して、今の状態で年金が止まっているかを確かめる。止まっているなら、いくら止まっているかを式で出す。働き方を変えた場合の年金額と手取りを、ねんきんネットの試算と保険料の見込みで比べる。雇用以外の形を選ぶなら、契約条件を書面で残す。この4つを踏めば、感覚ではなく数字で決められます。金額や個別の事情で扱いが変わる部分は、年金事務所の窓口で確認してください。
よくある質問
Q. 令和8年度に年金が減り始めるのはいくらからですか?
基本月額と総報酬月額相当額の合計が月65万円を超えた時点からです。令和8年4月に、それまでの月51万円から引き上げられました。基本月額は加給年金額を除いた老齢厚生年金の報酬比例部分の月額、総報酬月額相当額はその月の標準報酬月額に直近1年間の標準賞与額の合計を12で割った額を足したものです。基準額は毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。
Q. 基準額を超えると年金は全部止まりますか?
超えた分の半分だけが止まります。計算式は「基本月額 −(基本月額+総報酬月額相当額 − 基準額)÷ 2」です。ただし、この計算結果がマイナスになる場合は、老齢厚生年金が加給年金額を含めて全額支給停止になります。基本月額が小さい人ほど全額止まりやすい構造です。
Q. 全額支給停止になると年金はゼロになりますか?
ゼロにはなりません。止まるのは老齢厚生年金と加給年金額の部分で、老齢基礎年金と経過的加算額は全額支給されます。老齢基礎年金は在職老齢年金の判定に関係しないため、働く時間や収入がいくらであっても減りません。この点を知らずに就労を控えると、受け取れる金額が減ります。
Q. 業務委託で働けば年金は止まりませんか?
止まりません。在職老齢年金の判定は厚生年金保険の被保険者であることを入口にしているため、雇用ではない業務委託の形では支給停止の対象になりません。ただし保険料を払わないぶん将来の年金額は増えず、健康保険も国民健康保険に切り替わります。どちらが有利かは基本月額と給与の水準で変わるので、年金事務所で試算を依頼してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
関連記事
カテゴリから探す

クラウドソーシング入門
クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド
職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク
副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス
フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金
確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ
プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング
サービス比較・おすすめランキング

AI活用
職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド
市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド
クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア
転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人
看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人
薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人
介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人
保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人
医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険
生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人
無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース
バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

シニア・50代
シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ
サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック
暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス
経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材
フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方
子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金
個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド
SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方







