厚生年金の減額申請とは何か、働きながら受け取るときに届け出ること 2026

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厚生年金の減額申請とは何か、働きながら受け取るときに届け出ること 2026

この記事のポイント

  • ✓厚生年金の減額申請という名前の手続きはありません
  • ✓働きながら年金を受け取ると減る在職老齢年金の仕組みと令和8年4月からの65万円の基準
  • ✓自分から申し出る繰上げや支給停止

「厚生年金の減額申請」という言葉で調べている人の多くは、定年後も働きながら年金を受け取ろうとしていて、「給料があると年金が減らされるらしい。何か申請しないといけないのか」と不安になっているのではないでしょうか。結論から書くと、「減額申請」という名前の手続きはありません。働きながら受け取る厚生年金が減るのは「在職老齢年金」という仕組みによるもので、給料と年金の額に応じて自動的に計算され、本人が申請するものではないんです。しかも令和8年4月から、年金が減りはじめる基準は、給料と年金の合計で1か月あたり65万円に引き上げられました。この基準額は毎年度、賃金の変動に応じて見直されます。一方で、年金を早く受け取るために自分から減額を選ぶ「繰上げ受給」や、受け取りを止める「支給停止の申出」のように、本人の届け出で年金が変わる場面もあります。この記事では、働きながら年金を受け取るときに何が自動で、何を自分で届け出る必要があるのかを、日本年金機構の公表情報をもとに整理します。

「減額申請」で探している人が本当に知りたいこと

相談を受けていると、「厚生年金の減額申請」という言葉の裏には、だいたい4つの疑問が隠れています。

・働きながら年金を受け取ると減らされると聞いた。減らされないようにする手続きはあるのか
・65歳より前に年金を受け取りたい。早くもらうと減るらしいが、どう申請するのか
・失業手当や、60歳以降の給料が下がったときの給付と、年金が同時にもらえるのか
・会社員として払っている厚生年金の保険料を減らす申請はできるのか

つまり、「減額申請」という一つの手続きを探しているのではなく、「年金が減る場面」と「自分で何かを出す必要があるのか」を知りたい、ということです。これ、知らない人が本当に多いんです。年金の話は、制度の名前が似ていて、しかも自動で行われるものと本人が届け出るものが混ざっているので、どこから調べればいいのか分からなくなりがちです。

実際によくあるのが、次のような相談です。定年後に同じ会社で再雇用された人が、知人から「年金をもらいながら働くと減らされるから、会社に減額申請を出してもらわないといけない」と聞き、人事の担当者に尋ねたところ、担当者もはっきり答えられなかった、というものです。結論としては、本人も会社も「減額申請」を出す必要はなく、会社がふだんどおり厚生年金の手続きをすれば、年金の額は自動で計算されます。うわさの「減額申請」は、在職老齢年金の仕組みが言葉だけ伝わったものと考えるのが自然です。

この記事では、上の4つを順番に取り上げます。先に全体像を表にしておきます。

年金が変わる場面 本人の届け出 年金への影響
働きながら受け取る(在職老齢年金) 原則不要(会社が手続き) 給料と年金の合計が基準を超えると一部が止まる
65歳前に受け取る(繰上げ受給) 必要 一生減額される
受け取りを止める(支給停止の申出) 必要 申し出た期間は支給されない
失業手当・高年齢雇用継続給付との調整 必要な場合がある 65歳前の年金の全部または一部が止まる
子育て中に給料が下がった(養育期間の特例) 必要(会社経由で申出) 将来の年金が減らないようにする

在職老齢年金は自動で計算される

働きながら厚生年金を受け取るときに年金が減る仕組みを「在職老齢年金」といいます。在職老齢年金とは、厚生年金に加入して働いている人が老齢厚生年金を受け取るとき、給料と年金の合計額に応じて、年金の一部または全部の支給を止める仕組みのことです。日本年金機構の在職老齢年金の計算方法では、次のように説明されています。

老齢厚生年金を受給されている方が厚生年金保険の被保険者であるときに、受給されている老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額に応じて年金額が支給停止となる場合があります。 出典: nenkin.go.jp

ここで出てくる2つの言葉を言い換えておきます。

・基本月額:受け取る老齢厚生年金(加給年金を除く)を12で割った、1か月あたりの額
・総報酬月額相当額:その月の標準報酬月額に、その月以前1年間の賞与(標準賞与額)の合計を12で割った額を加えたもの。つまり、ボーナスも含めた1か月あたりの給料の目安

計算の流れは次のとおりです。

・基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円以下なら、年金は全額支給
・65万円を超えるなら、超えた額の半分が年金から差し引かれる

式にすると「基本月額 -(基本月額 + 総報酬月額相当額 - 65万円)÷ 2」が、1か月に受け取れる年金の額です。

具体的な数字で確かめてみます。年金の基本月額が10万円、総報酬月額相当額が50万円の人は、合計60万円なので全額支給です。基本月額が15万円、総報酬月額相当額が60万円の人は、合計75万円で基準を10万円超えるので、その半分の5万円が差し引かれ、1か月に受け取る老齢厚生年金は10万円になります。

大事なのは、この計算は本人が申請しなくても、日本年金機構が自動で行うという点です。会社が厚生年金の加入の手続きや給料の届け出をすると、その情報をもとに支給の額が決まります。「減額されないように申請する」手続きも、「減額してほしいと申請する」手続きもありません。

もうひとつ知っておきたいのは、在職老齢年金で止まるのは老齢厚生年金だけで、老齢基礎年金と経過的加算額は全額支給されることです。国民年金から出る部分は、どれだけ給料が高くても減りません。

令和8年4月から基準が65万円に上がった

在職老齢年金の基準は、令和8年4月に大きく変わりました。日本年金機構によると、令和7年の年金制度改正法に基づき、年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が、1か月あたり51万円から65万円に引き上げられました。高齢者が働き続けやすい仕組みにすることが見直しの趣旨とされています。

この変更で、これまで年金の一部が止まっていた人のうち、給料と年金の合計が51万円を超えて65万円以下の人は、令和8年4月分から全額を受け取れるようになりました。たとえば基本月額12万円、総報酬月額相当額45万円で合計57万円の人は、以前の基準なら(57万円-51万円)÷2で3万円が止まっていましたが、今は全額支給です。

65万円という数字は令和8年度の額で、毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。ネットには「47万円」「48万円」「50万円」「51万円」といった過去の基準のまま書かれた情報がたくさん残っているので、調べるときは必ず年度を確かめてください。

70歳以上の人の扱いも押さえておきます。70歳になると厚生年金の加入者ではなくなり、保険料の負担もなくなります。ただし、70歳以降も厚生年金の適用事業所で働いている場合は、加入者でなくても在職老齢年金の計算が行われます。つまり、70歳を過ぎても、会社で高い給料を受け取っていれば年金の一部が止まることはあります。

ケース別に計算してみる

在職老齢年金の計算は、式を見ただけでは実感がわきにくいので、よくある働き方を4つ並べて計算してみます。いずれも令和8年度の基準額65万円で、基本月額は老齢厚生年金を12で割った額です。

ケース 基本月額 総報酬月額相当額 合計 1か月に受け取る老齢厚生年金
再雇用で給料が下がった 10万円 30万円 40万円 10万円(全額)
役員として高めの報酬 12万円 55万円 67万円 11万円
管理職のまま延長勤務 15万円 60万円 75万円 10万円
賞与が多い年 10万円 70万円 80万円 2.5万円

2つめのケースは、合計が65万円を2万円超えるので、その半分の1万円が止まり、11万円を受け取ります。4つめのケースでは、合計が65万円を15万円超えるので、7万5,000円が止まり、2万5,000円になります。ここで見落としやすいのが賞与です。総報酬月額相当額には、その月以前1年間の賞与を12で割った額が含まれるので、月々の給料が同じでも、賞与が多い年は年金の止まる額が増えます。

計算結果がマイナスになる場合、つまり止まる額が基本月額を上回る場合は、老齢厚生年金は加給年金も含めて全額止まります。それでも老齢基礎年金は全額支給されるので、年金がまったくなくなるわけではありません。

自分の数字で確かめたいときは、日本年金機構が公開している在職老齢年金の早見表を使うか、毎年届く「ねんきん定期便」や年金額の通知書で年金の額を確かめ、勤め先の給与明細で標準報酬月額を確かめて計算します。

年金の額が見直されるタイミング

在職老齢年金で止まる額は、ずっと同じではありません。いつ見直されるのかを知っておくと、年金の振込額が変わったときに慌てずに済みます。

支給停止の額が変わるのは、総報酬月額相当額が変わった月か、退職日の翌月です。昇給や降給で標準報酬月額が変わったり、賞与が出たりすると、その月から停止額が変わります。

65歳以上で厚生年金に加入しながら年金を受け取っている人は、毎年9月1日を基準日として年金額が見直されます。これを「在職定時改定」といいます。前年9月から当年8月までに厚生年金に加入していた期間が年金額に加えられ、10月分の年金から反映されます。働き続けている間も、毎年少しずつ年金が増えていく仕組みです。

70歳未満の人が退職して1か月が経つと、退職した翌月分から年金額が再計算されます。これを「退職改定」といいます。在職中に止まっていた分がなくなり、全額支給に変わります。ただし、退職して1か月以内に再就職して厚生年金に加入した場合は、この再計算は行われません。

退職改定や在職定時改定で厚生年金の加入期間が20年を超えると、加給年金や振替加算がつく場合があります。加給年金とは、一定の条件を満たす配偶者や子がいる場合に年金に加算されるお金のこと。この場合は別に手続きが必要になると日本年金機構は案内しているので、加入期間が20年に近い人は気にかけておいてください。

働き始めたときに届け出ること

年金を受け取っている人が会社に就職して厚生年金に加入するとき、本人が年金事務所に「減額申請」を出す必要はありません。手続きをするのは会社です。

会社は、新しく雇った人が厚生年金の加入条件に当てはまる場合、資格取得の届け出を日本年金機構に出します。70歳以上の人を雇う場合は、厚生年金の加入者にはなりませんが、在職老齢年金の計算のために、70歳以上の人が働いていることを届け出ます。給料が大きく変わったときも、会社が月額変更の届け出を出します。この届け出の書類の名前は「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届/厚生年金保険 70歳以上被用者月額変更届」です。

本人がしておきたいのは、会社に年金を受け取っていることを伝え、基礎年金番号やマイナンバーを正しく届けることです。届け出の内容が間違っていると、年金の支給額の計算も狂います。

注意したいのは、会社の手続きが遅れた場合です。あとから届け出がされると、さかのぼって支給停止の額が計算し直され、受け取りすぎた年金を返すよう求められることがあります。就職した月や給料が変わった月の年金の振込額を、年金の支払いの通知と照らし合わせておくと安心です。※会社が届け出をしていない疑いがある場合は、年金事務所に相談してください。

自分から年金を減らす・止める申し出

ここまでの話は自動で行われるものでしたが、本人の申し出で年金が減ったり止まったりする場面もあります。「減額申請」という言葉に一番近いのは、こちらです。

繰上げ受給は自分で選ぶ減額

老齢基礎年金と老齢厚生年金は原則65歳から受け取りますが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受け取れます。これを「繰上げ受給」といいます。繰り上げた月数に応じて年金が減額され、その減額は一生続きます。

日本年金機構の年金の繰上げ受給によると、昭和37年4月2日以降に生まれた人の減額率は1か月あたり0.4%で、最大24%です。請求するときの年齢ごとの減額率は次のとおりです。

請求時の年齢 減額率(昭和37年4月2日以降生まれ)
60歳 24.0%
61歳 19.2%
62歳 14.4%
63歳 9.6%
64歳 4.8%

昭和37年4月1日以前に生まれた人は、1か月あたり0.5%で最大30%です。

繰上げには、取り消せないという重い特徴があります。いったん請求すると取り消せず、国民年金の任意加入や保険料の追納もできなくなります。さらに、繰上げ請求した日以後は、事後重症などによる障害年金を請求できなくなります。持病がある人や治療中の人は、特に慎重に考える必要があります。

働きながら繰上げ受給をした場合も、厚生年金に加入していれば在職老齢年金の計算の対象になります。早く受け取れば得、とは限らない理由がここにもあります。

支給停止の申出は、受け取りを止める手続き

あまり知られていませんが、年金は本人の申し出で支給を止めることもできます。厚生年金保険法の第38条の2では、年金は受給権者の申出によって全額の支給を停止するとされています。この申し出は、いつでも将来に向かって撤回できます。

ただし、これは「年金を減らして何か得をする」手続きではありません。止めた期間の年金は、あとから受け取れるわけではなく、受け取らないことになります。支給を止めたほうがよい事情は限られるので、考えている人は、必ず年金事務所で影響を確かめてから判断してください。※他の給付との関係で判断が分かれる場合があるので、個別の事情は年金事務所や社会保険労務士に相談してください。

繰下げ受給と在職老齢年金の関係

繰上げとは逆に、受け取りを遅らせて年金を増やす「繰下げ受給」もあります。日本年金機構の年金の繰下げ受給によると、66歳以後75歳までの間で繰り下げると、1か月あたり0.7%、最大84%増えます。70歳まで繰り下げれば42.0%、75歳なら84.0%の増額です。老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げられます。

「働いている間は年金が止まるなら、繰り下げて増やせばいい」と考える人は多いのですが、ここに落とし穴があります。65歳以後に厚生年金に加入して働いていた期間がある場合、在職老齢年金で止まるはずだった額は、繰下げの増額の対象になりません。つまり、高い給料をもらいながら繰り下げても、止まる分については増えないということです。

給料と年金の合計が65万円以下で、もともと年金が止まらない人なら、繰り下げた分はそのまま増額の対象になります。基準が65万円に上がったことで、繰下げを選びやすくなった人は増えたといえます。なお、特別支給の老齢厚生年金には繰下げの制度がないので、受け取れる年齢になったら速やかに請求するよう日本年金機構は案内しています。

繰下げの待機中は加給年金を受け取れない、医療保険や介護保険の自己負担や保険料、税金に影響する場合がある、といった注意点もあります。※繰り上げるか繰り下げるかは、健康状態や家計、ほかの収入で答えが変わるので、年金事務所で試算してもらってから決めてください。

雇用保険の給付と年金の調整

60代前半で働いたり、仕事を探したりしている人は、雇用保険の給付と年金の関係にも注意が要ります。ここでは届け出が必要になる場合があります。

失業手当を受けると65歳前の年金は止まる

特別支給の老齢厚生年金など、65歳になるまでに受け取る老齢年金と、雇用保険の失業手当(基本手当)は、同時には受け取れません。日本年金機構によると、ハローワークで求職の申し込みをした日の属する月の翌月から、失業手当の受給期間が過ぎた月(または所定の給付日数を受け終わった月)まで、年金が全額止まります。

求職の申し込みをしたあと、失業手当を受けていない月がある場合、その月の年金はすぐには支払われず、3か月ほどあとになると案内されています。

高年齢雇用継続給付を受けると年金の一部が止まる

高年齢雇用継続給付とは、雇用保険に5年以上加入していた60歳以上65歳未満の人が、60歳時点より賃金が75%未満に下がったときに、賃金の最高10%にあたる額が雇用保険から支給される仕組みです。

65歳前の老齢年金を受け取っている人がこの給付を受けると、在職老齢年金による停止に加えて、年金の一部が止まります。止まる額は、最高で標準報酬月額の4%にあたる額です。この内容は、令和7年4月1日施行の改正によるもので、それより前に支給要件を満たした人は、給付が最高15%、年金の停止が最大6%という以前のルールになります。

いずれの場合も、年金事務所への届け出が必要になる場合があると日本年金機構は案内しています。ハローワークで手続きをしたら、年金のほうで届け出が必要かを年金事務所に確かめておくと確実です。

保険料の側の「減額」と、養育期間の特例

「厚生年金の減額申請」で調べる人の中には、年金を受け取る側ではなく、会社員として払っている保険料を減らしたいと考えている人もいます。

結論から書くと、会社員が個人で厚生年金の保険料を減らしてもらう申請はありません。保険料は給料の額をもとにした標準報酬月額で決まり、毎年4月から6月の給料をもとに9月に見直されます。降給などで固定的な給料が大きく下がり、標準報酬月額に2等級以上の差が出た場合は、会社が月額変更の届け出を出して、4か月目から標準報酬月額が見直されます。これを随時改定といいます。つまり、給料が下がれば保険料も下がる仕組みはありますが、届け出るのは会社です。

国民年金には、所得が少ない人の保険料を免除する制度がありますが、これは自営業や無職の人など、国民年金の第1号被保険者のための制度です。会社員の厚生年金とは別の仕組みなので、混同しないようにしてください。

一方、会社員が「将来の年金が減らないように」申し出る制度があります。それが養育期間の特例です。日本年金機構の養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置によると、3歳未満の子を育てている期間に、時短勤務などで給料が下がり標準報酬月額が下がった場合でも、子を育てる前の高い標準報酬月額で将来の年金額を計算してもらえます。

この特例は、本人が「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」を会社を通じて出さないと適用されません。申し出が遅れても、申し出た日の前月までの2年間についてはさかのぼって認められます。保険料は下がった給料に応じた額のまま、年金だけは以前の高い額で計算されるので、該当する人には大きな意味があります。

65歳前に年金を受け取っている人の場合

生まれた年によっては、65歳になる前から「特別支給の老齢厚生年金」を受け取れる人がいます。特別支給の老齢厚生年金とは、厚生年金の受給開始が60歳から65歳に引き上げられた際の経過措置として、一定の年齢以前に生まれた人に65歳前から支給される老齢厚生年金のことです。

この年金を受け取りながら厚生年金に加入して働く場合も、在職老齢年金の計算の対象になります。以前は65歳未満の人には別の、より厳しい計算方法が使われていましたが、令和4年4月以降の分は65歳以上の人と同じ計算方法になっています。ネットで「28万円」「47万円」といった数字を見かけたら、それは令和4年3月以前の65歳未満の計算方法なので、今の計算には当てはまりません。

65歳前の人は、ここまでに書いた雇用保険との調整も重なります。失業手当を受ければ年金は全額止まり、高年齢雇用継続給付を受ければ年金の一部がさらに止まります。在職老齢年金、雇用保険との調整、繰上げの3つが同時に関わりうる年代なので、60歳前後で働き方を変える人は、年金事務所で一度まとめて試算してもらうのが確実です。

再雇用やパートで働くときに会社に確かめること

定年後に再雇用やパートで働くとき、年金との関係で会社に確かめておきたいことがあります。

ひとつは、厚生年金に加入する働き方かどうかです。短時間で働く人が厚生年金に加入するかどうかは、勤務時間や雇用の見込みの期間、会社の規模などで決まります。短時間で働く人の加入条件のうち、所定内賃金が1か月あたり8.8万円以上という要件は、2026年10月に撤廃されました。厚生年金に加入しない働き方なら、在職老齢年金の計算の対象にはなりません。ただし、70歳以上の人の扱いや、会社の規模ごとの適用の範囲には細かい決まりがあるので、勤め先の人事や年金事務所で確かめてください。

ふたつめは、給料と賞与の内訳です。年金が止まるかどうかは、月々の給料だけでなく、賞与を含めた総報酬月額相当額で決まります。賞与の額と支給月を確かめておくと、年金が止まる月を予想できます。

みっつめは、届け出の時期です。採用や給料の変更の届け出が遅れると、さかのぼって年金の額が計算し直されることがあります。手続きの時期を確かめておくと、あとで返納を求められる事態を防げます。

振込額が減っていたときに確かめること

「年金の振込額が急に減った」という相談は少なくありません。減った理由を自分で確かめる手順を整理しておきます。

まず、日本年金機構から届く通知を確かめます。年金の額が変わるときは、支給額の変更を知らせる通知が届きます。在職老齢年金で止まる額が変わったとき、在職定時改定で年金額が見直されたときなど、理由によって通知の種類が違います。通知を捨ててしまった場合でも、「ねんきんネット」に登録していれば、年金の支払額や通知の内容を画面で確かめられます。

次に、減った時期と、自分の働き方や給料の変化を照らし合わせます。昇給した月、賞与が出た月、会社を変わった月、ハローワークで求職の申し込みをした月。在職老齢年金や雇用保険との調整で止まる額は、こうした出来事の月を境に変わります。

それでも理由が分からない場合は、年金事務所に相談します。相談するときは、基礎年金番号が分かるもの(基礎年金番号通知書や年金手帳)、届いた通知、給与明細、本人確認書類を持っていくと、話が早く進みます。

よくあるのは、会社が給料の変更や賞与の届け出をしたことで、さかのぼって停止額が計算し直されたケースです。受け取りすぎた分は、あとの年金から差し引かれたり、返納を求められたりします。こうした場合も、通知に理由が書かれているので、まず通知を読むことが出発点になります。※通知の内容に納得できない場合は、不服を申し立てる仕組みもあります。期限があるので、早めに年金事務所や社会保険労務士に相談してください。

業務委託で働く場合の考え方

定年後の働き方として、会社に雇われるのではなく、業務委託で仕事を受ける人も増えています。在職老齢年金との関係で知っておきたいのは、この仕組みが「厚生年金の加入者として働いている人」を対象にしているという点です。

在職老齢年金の計算に使う総報酬月額相当額は、厚生年金の標準報酬月額と標準賞与額から出します。業務委託の報酬は給料ではないので、厚生年金の標準報酬月額には入りません。つまり、会社員として雇われずに業務委託だけで収入を得ている場合、その報酬の額によって老齢厚生年金が止まることは、制度上は想定されていません。

ただし、業務委託という名前の契約でも、実態が雇用に近ければ、会社の厚生年金に加入すべき働き方と判断されることがあります。また、業務委託の収入は所得税や住民税、国民健康保険料には反映されます。働き方を選ぶときは、年金だけでなく、税と保険料の全体で比べることが大切です。※働き方ごとの手取りの比較は、個別の事情で大きく変わるので、税理士や社会保険労務士に相談してください。

業務委託で仕事を受けるときに気をつけたいのが、契約の中身と報酬の支払いです。フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストでは、発注書や契約書に入れておくべき項目を整理しています。報酬を払ってもらえない場合の回収の手順は、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】が参考になります。

年金と働き方を一緒に考えるために

フリーランスや在宅ワークの市場を長く見てきた立場から言えば、60代で仕事を続ける人の働き方は、ここ数年で明らかに多様になっています。会社の再雇用で働き続ける人、業務委託で以前の会社や取引先から仕事を受ける人、まったく別の分野で小さく仕事を始める人。どの道を選ぶ人も、年金と給料のバランスを一度は計算しています。そして、計算した人ほど、自分に合った働き方に落ち着いています。

基準が65万円に上がったことで、会社員として働き続けても年金が止まらない人は確実に増えました。一方で、業務委託で働く場合は、仲介の手数料が乗らない直接の取引ほど、発注側は同じ予算でより多く頼め、受ける側は手数料0%で手取りが厚くなります。年金を受け取りながら、手元に残るお金をどう厚くするか、という視点で働き方を選ぶのが現実的です。

会社員時代の経験を業務委託で生かすなら、まず自分の職種の相場を確かめておくことです。たとえばシステム開発の経験がある人は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場で業務委託の水準を確かめておくと、安く受けすぎることを防げます。契約書や報告書を自分で書く場面も増えるので、ビジネス文書検定のような資格で文書の基本を固めておくのも一つの方法です。

厚生年金の「減額申請」という手続きはありません。働きながら年金を受け取るときに減る仕組みは自動で計算され、本人が届け出るのは、繰上げ、支給停止の申出、雇用保険の給付を受けるとき、養育期間の特例といった場面です。自分がどれに当たるかを確かめ、分からないことは年金事務所で聞いてください。法律はあなたの味方です。

よくある質問

Q. 厚生年金の減額申請という手続きはありますか?

「減額申請」という名前の手続きはありません。働きながら厚生年金を受け取るときに年金が減るのは在職老齢年金という仕組みで、給料と年金の合計額に応じて日本年金機構が自動で計算します。本人が届け出る必要があるのは、繰上げ受給や支給停止の申出、雇用保険の給付を受けるときなど、限られた場面です。

Q. 令和8年度は給料がいくらを超えると年金が減りますか?

年金の基本月額と、賞与を含めた1か月あたりの給料の目安である総報酬月額相当額の合計が65万円を超えると、超えた額の半分が老齢厚生年金から差し引かれます。令和8年4月に51万円から引き上げられた基準で、毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。老齢基礎年金は減りません。

Q. 65歳より前に年金を受け取るとどれくらい減りますか?

繰上げ受給をすると、昭和37年4月2日以降に生まれた人は1か月あたり0.4%、最大24%が一生減額されます。60歳で請求すると24.0%、63歳なら9.6%です。いったん請求すると取り消せず、事後重症などによる障害年金を請求できなくなるといった影響もあるので、年金事務所で確かめてから判断してください。

Q. 業務委託で働いた報酬でも年金は減りますか?

在職老齢年金の計算に使うのは、厚生年金の標準報酬月額と標準賞与額です。業務委託の報酬は給料ではないので、これには入りません。ただし、契約の名前が業務委託でも実態が雇用に近い場合は厚生年金への加入が必要と判断されることがあり、税や国民健康保険料には報酬が反映されます。個別の判断は年金事務所や専門家に確認してください。

この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年1月30日最終更新:2026年10月4日
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