副業禁止の会社でもできる副業の範囲と届け出の考え方

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
副業禁止の会社でもできる副業の範囲と届け出の考え方

この記事のポイント

  • ✓副業禁止できる副業の線引きを
  • ✓厚生労働省のモデル就業規則とガイドラインの原文から整理します
  • ✓無断で始める前に確認すべき点を具体的にまとめた実務記事です

結論から書きます。「副業禁止できる副業」を会社が指定しているケースはほとんどなく、実際に禁止できるのは就業規則に書かれた4つの事由に当たる働き方だけです。つまり、禁止されているのは「副業という行為」ではなく「本業に支障を出す形の副業」です。この区別を知らないまま黙って始めると、内容そのものは問題なかったのに手続きの不備だけで処分を受けることになります。この記事では、厚生労働省が公開しているモデル就業規則とガイドラインの原文から線引きを確認し、届け出の書き方、労働時間の通算、住民税の徴収方法、公務員の場合の違いまでを順に整理します。

「副業禁止」という規定が本当に禁止できる範囲

まず前提を押さえます。労働基準法には、労働者の副業を禁止する条文がありません。勤務時間外は労働者が自由に使える時間であり、会社の指揮命令が及ぶのは労働契約で定めた労働時間の中だけです。したがって「副業禁止」と書かれた就業規則は、法律が禁じているものを書き写したものではなく、会社が自社のリスクを避けるために独自に置いた社内ルールです。

社内ルールなので、その効力には限界があります。裁判で問題になるのは、会社が処分を下した行為が、就業規則に定めた禁止事由に本当に当たっていたかどうかです。就業時間外に、本業と無関係な分野で、短時間だけ行った仕事に対して重い処分を下した場合、その処分は行き過ぎと判断される余地があります。逆に、競合他社の仕事を請け負っていた、深夜まで働いて本業で居眠りが続いた、社内で得た顧客情報を持ち出したといった事情があれば、処分の根拠は固まります。

ここで多いのが、就業規則に「許可制」と書かれているのに、許可の条件が細かすぎて実質的に何も通らないというケースです。週の従事時間の上限、同業種の禁止、会社で得た知識の使用禁止といった条件が並ぶと、読んだ側は「規則に抵触しない副業は存在しない」と受け取ります。

会社に副業を伝えていますか?

副業をしようと考えています。 会社は、建前上は副業を禁止しておらず「許可制」を取っています。

しかし、実際の規則を見ると ・週8時間以上従事することはNG ・会社で得た知識経験を使うのはNG ・会社と同じ業態はNG ・本業に差し支えたと判断した場合には許可取消 ・副業のために有給休暇等を使うことは禁止

などなど、「規則に抵触しない副業は無い」というくらい禁... 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

この受け取り方は、半分は正しく半分は誤りです。正しいのは「条件を全部同時に満たす副業は探しにくい」という点で、誤りは「だから黙ってやるしかない」と結論する点です。条件の多くは会社が一律に当てはめるためのものではなく、許可を判断するときの観点として並んでいます。週8時間という上限が書かれていても、それを超えない範囲に収める設計にすれば申請は通ります。正直なところ、条件の多さに気圧されて何も申請しないのは、いちばん損な選択です。

就業規則の文言は4通りに分かれる

自社の規定がどの型かを先に判定します。型が分かれば、取るべき手続きも決まります。

第1の型は全面禁止です。「会社の許可なく他に雇われ、または自ら事業を営んではならない」と書かれています。文言は強いものの、判例の傾向としては「会社の正当な利益を害する場合」に限って効力が認められると読まれます。ここに当たる人は、後述する届け出の形を取って会社に判断させるのが安全です。

第2の型は許可制です。申請して会社が可否を判断します。多いのはこの型で、実務上もっとも使いやすい形です。許可の条件が並んでいる場合は、その条件を1つずつ「自分の副業では起きない」と示す資料を添えれば通りやすくなります。

第3の型は届け出制です。会社の許可は要らず、始める前に内容を報告すれば足ります。厚生労働省のモデル就業規則が採っているのがこの形です。

第4の型は規定なしです。就業規則に副業に関する条文が一切ない状態です。この場合は原則として自由ですが、労働契約に付随する義務として、本業に支障を出さない義務や秘密を守る義務は残ります。規定がないことは「何をしてもよい」ではありません。

判定の手順は簡単です。社内の共有フォルダかイントラネットで就業規則の全文を開き、「兼業」「副業」「他の業務」「二重就職」の4語で検索します。見つからなければ、服務規律の章と懲戒の章を通読します。それでも該当条文が見つからない場合は、人事に「副業に関する規定の有無」だけを質問します。この質問自体は副業の申告ではないため、答えを得てから次を考えられます。

モデル就業規則が挙げる禁止できる4つの事由

厚生労働省のモデル就業規則は、副業を届け出制とした上で、会社が禁止または制限できる場合を4つに絞って列挙しています。令和7年12月版の第70条です。

第70条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。 2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。 ① 労務提供上の支障がある場合 ② 企業秘密が漏洩する場合 ③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合 ④ 競業により、企業の利益を害する場合 出典: mhlw.go.jp

この4つが、副業を選ぶときのチェックリストになります。順に見ます。

労務提供上の支障とは、副業の疲労や拘束時間が本業の遂行を妨げる状態です。深夜から早朝までの勤務、休日が完全に埋まる働き方、連絡対応が本業の勤務時間に食い込む仕事はここに引っかかります。避け方は時間帯の設計です。平日夜の2時間と休日の半日に収め、締切のある納品物は余裕を持って受ける形にすれば、この事由には当たりません。

企業秘密の漏洩は、本業で扱う設計図、顧客名簿、価格表、開発中の仕様といった非公開情報が副業先に流れる状態です。同じ業界で働くほど距離が近くなるため、業界を変えるか、扱う情報の層を変えるのが現実的な対処です。

名誉や信用を損なう行為には、公序良俗に反する業種、本業の取引先を批判する発信、会社名を出した営業行為が含まれます。会社名や役職を副業のプロフィールに書かないだけで、この事由のほとんどは回避できます。

競業による利益侵害は、本業の顧客を副業側で取ることや、同一市場で本業と競う立場に立つことです。判断が分かれやすい事由なので、同業と少しでも重なるなら届け出で会社の判断を仰いだほうが安全です。

副業に当たりにくい収入と、当たると見られやすい収入

多くの会社は、就業規則で「他に雇われること」と「自ら事業を営むこと」を対象にしています。この文言から外れる収入は、そもそも副業の届け出対象にならないと読めます。

対象になりにくいのは、資産から生まれる収入です。上場株式や投資信託の配当と売却益、公社債の利息、少額の暗号資産の売却益は、労務の提供を伴わないため、雇われることにも事業を営むことにも当たりません。企業型の確定拠出年金や個人型の確定拠出年金の運用も同じです。ただし、勤務先が金融機関や上場企業で、インサイダー取引の防止規程があるときは、売買の届け出が別途求められます。就業規則ではなく、そちらの規程に従います。

判断が分かれるのが不動産の賃貸です。規模が大きくなると、税務上は事業として扱われます。国税庁は事業として行われているかどうかの判定基準を、室数と棟数で示しています。

(1) 貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。 (2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。 出典: nta.go.jp

この水準を超えると「自ら事業を営む」に近づくため、届け出の対象と考えたほうが無難です。相続した実家1軒を貸している程度であれば、事業には当たらないという扱いが一般的です。とはいえ税務上の判定と就業規則上の判定は別物で、会社によっては規模を問わず届け出を求めます。判断が割れる場合は窓口で確認してください。

対象になりやすいのは、時間を売る形の仕事です。飲食店やコンビニエンスストアのアルバイト、イベントスタッフ、配送の請負は、雇われる形か事業を営む形のどちらかに入ります。在宅の受託業務も、継続的に受けるなら事業を営む形です。ここに該当する働き方を選ぶなら、届け出を出す前提で組み立ててください。

届け出は「会社の心配を先に消す」書き方にする

届け出や許可申請の通りやすさは、書く内容でほとんど決まります。会社が知りたいのは副業の魅力ではなく、4つの禁止事由に当たらないという確認です。したがって申請書には、次の5項目を事実として書きます。

1つ目は副業先の名称と事業内容です。取引先が個人事業主や小規模な会社であっても、屋号と事業内容を正確に書きます。2つ目は業務の内容です。「Webライティング」ではなく「不動産会社の自社メディア向けに、住宅設備の解説記事を月間4本執筆」のように、対象と成果物と本数まで書きます。曖昧に書くほど会社は競業を疑います。

3つ目は従事する曜日と時間帯です。「平日は21時から23時まで、休日は土曜の午前のみ。合計で週に10時間以内」と上限を自分から示します。会社が設定している上限より低い数字を自分から出せば、労務提供上の支障という論点は消えます。4つ目は雇用の形です。雇用契約か業務委託契約かを明記します。次の節で述べるとおり、この違いで会社の義務が変わるため、会社にとっては最重要の項目です。

5つ目は競業と秘密に関する確認です。「本業の取引先および同業他社とは取引しない」「本業で得た情報は一切使用しない」と自分から書きます。書面に残すことで、会社は禁止する理由を失います。

厚生労働省のガイドラインは、会社が副業を把握する方法として届出制を定めることを想定しており、労働者が副業の相談や自己申告を行ったことで不利益な取扱いをすることはできないと明記しています。申告したことそのものを理由に処分されることはない、という点は押さえておいてください。

なお、届け出の相手は直属の上司ではなく人事部門が原則です。上司に口頭で伝えただけでは記録が残らず、後から「聞いていない」と言われたときに証明できません。社内の申請システムか書面で出し、控えを保存してください。

労働時間の通算が起きる形と、起きない形

会社が副業に神経を使う最大の理由が、労働時間の通算です。労働基準法第38条第1項により、事業主が異なる複数の事業場で働く場合、労働時間は通算されます。通算した結果、1日8時間または週40時間を超えると、どちらかの会社に割増賃金の支払い義務が生じます。会社にとっては費用が増える話なので、雇用される形の副業には慎重になります。

一方、通算されない形もはっきり示されています。

次のいずれかに該当する場合は、その時間は通算されない。 ・ 労基法が適用されない場合(例 フリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事等) ・ 労基法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合(農業・畜産業・養蚕業・水産業、管理監督者・機密事務取扱者、監視・断続的労働者、高度プロフェッショナル制度) 出典: mhlw.go.jp

つまり、業務委託で受ける在宅の仕事は労働時間の通算対象になりません。会社側の追加負担が生じないため、許可も出やすくなります。実務的な結論として、雇用される形のアルバイトよりも、成果物を納める業務委託のほうが会社との調整は軽くなります。

ただし通算されないからといって働き放題ではありません。同じガイドラインは、通算対象外の場合でも、過労で本業に支障が出ないよう、就業時間の把握を通じて長時間にならないよう配慮することが望ましいとしています。会社が届け出で稼働時間を尋ねてくるのは、この配慮義務があるためです。

なお、休憩、休日、年次有給休暇に関する規定は通算されません。36協定で定める延長時間の上限も、事業場ごとに判断されます。「副業先で働いた時間のせいで本業の有給が減る」といった誤解は不要です。

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確定申告と住民税でつまずかない手順

手続きの話に移ります。副業の収入があると、所得税と住民税で別々の対応が必要になります。

所得税の側では、給与を1か所から受けていて、給与以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です。国税庁は、給与を2か所以上から受けている場合の要件も別に定めています。注意したいのは、この20万円は所得の金額であって、受け取った報酬の総額ではないという点です。経費を差し引いた後の金額で判定します。

住民税の側には、20万円という線がありません。所得の多少にかかわらず申告が必要で、地方税法第317条の2により、期限は3月15日、提出先は1月1日現在の住所地の市区町村です。確定申告をした人は、その内容が市区町村に回るため、住民税の申告を別に出す必要はありません。

会社に知られる経路として語られるのが、住民税の特別徴収です。会社員の住民税は給与から差し引かれる特別徴収が原則で、市区町村は本業の会社に税額の通知を送ります。副業の所得が加わって税額が上がると、会社の経理が金額の変化に気づく可能性があります。

これを避ける方法として普通徴収の選択が挙げられますが、対象には制限があります。地方税法第321条の3第2項のただし書きにより、普通徴収を選べるのは給与所得以外の所得に係る住民税だけです。副業がアルバイトのような給与であれば選べません。在宅の受託業務のように雑所得や事業所得になる収入であれば、確定申告書の住民税に関する欄で「自分で納付」を選択できます。徴収方法の原則と例外については、東京都主税局の個人住民税の説明ページで確認できます。

ここで強調しておきたいのは、普通徴収は隠す手段ではないということです。会社に伝えずに始めた副業が発覚する経路は住民税だけではなく、取引先からの連絡、SNSでの発信、同僚の口伝えなど複数あります。届け出を先に済ませておけば、この心配自体が消えます。

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公務員は根拠法が違うので判断も変わる

会社員と公務員は、副業の根拠になる決まりが別です。国家公務員は国家公務員法第103条と第104条により、営利企業の役員の兼任や自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業や事務に従事することについて、あらかじめ内閣総理大臣と所轄庁の長の許可が必要とされています。地方公務員は地方公務員法第38条で同様の定めがあり、任命権者の許可が要ります。条文そのものはe-Gov法令検索で確認できます。

つまり公務員の場合、就業規則ではなく法律が土台になります。「禁止されていないから自由」という読み方が成り立ちません。株式や投資信託の運用、一定規模以下の不動産賃貸、家業の手伝いなど、許可の対象外または許可を得やすい範囲は定められていますが、規模や報酬の有無で判定が変わります。該当しそうな人は、所属の人事担当に照会してから動いてください。この領域は個別事情で結論が変わるため、記事の記述で判断を固めないことをおすすめします。

なお、公務員に準じた扱いを社内規程で採用している法人もあります。独立行政法人、学校法人、医療法人の一部がこれに当たります。就業規則に「国家公務員に準ずる」といった文言があれば、法人の規程を優先して読んでください。

無断で始めた場合に実際に起きること

処分の重さは、就業規則の禁止事由に当たった度合いで決まります。届け出義務に違反しただけで、業務への支障も情報漏洩もない場合、実務でよく見られるのは注意や指導です。一方、競業に当たった、本業で成果が落ちた、秘密情報を使ったといった事情が重なると、減給や出勤停止、場合によっては解雇まで検討されます。

見落としやすいのが、処分以外の不利益です。1つは損害賠償です。競業や情報漏洩で会社に損害が出た場合、処分とは別に賠償を求められる余地があります。2つ目は退職金や賞与の査定です。懲戒処分の記録が残ると、支給額の計算や昇格の判断に影響します。3つ目は再就職時の説明責任です。懲戒処分を受けた事実は、転職先への説明が必要になる場面があります。

逆の見方をすれば、届け出を出しておくことで守られる範囲が広がります。会社が内容を把握した上で始めた副業であれば、後から「知らなかった」という争いが起きません。副業が原因で本業に影響が出た場合も、会社が事前に時間配分を認識しているため、一方的な責任にはなりにくくなります。

契約面の備えも合わせて整えておくと安心です。発注書と契約書に入れておくべき項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにチェックリストの形で並んでいます。業務の範囲、納期、検収の条件、報酬の支払期日が書面に残っていれば、会社への説明も取引先との交渉も同じ資料で済みます。資格職の場合は、所属する団体の倫理規程や兼業に関する規定が会社の就業規則とは別に存在することがあります。会計士や税理士のように独占業務を持つ職種では、その団体側の届け出も必要になるため、会社の承認だけで済ませないよう注意してください。

副業の種類別に見た、届け出の通りやすさ

同じ会社でも、副業の形によって会社の反応は変わります。会社が判断に使う材料は、労働時間の通算が起きるか、競業に触れるか、稼働時間が読めるかの3点です。この3点で分類すると、次のように整理できます。

もっとも通りやすいのは、成果物を納める形の受託業務です。文章の執筆、資料の作成、図面のトレース、データの入力と整理、動画の編集などが該当します。契約が業務委託であれば労働時間の通算が起きず、会社に追加の割増賃金の負担が生じません。納品物の本数で稼働量を説明できるため、届け出の記載も具体的に書けます。分野が本業と離れていれば、競業の論点も生じません。

次に通りやすいのは、専門知識を切り出して提供する形です。研修の講師、執筆の監修、技術の相談対応などが当たります。稼働は単発で、時間帯も事前に確定します。ただし本業の業界内で行うと競業と秘密の両方に触れるため、対象を業界外に限る設計が必要です。会社の承認を得やすくするには、依頼元の業種と、扱う情報の範囲を申請書に明記してください。

通りにくいのは、雇用される形の勤務です。飲食店や小売店のアルバイト、倉庫や配送の勤務が典型です。労働時間の通算が起きるため、会社は割増賃金の計算と健康管理の両方を抱えます。シフト制だと稼働時間の上限も読めません。どうしてもこの形で働くなら、週の合計時間を自分から低く設定し、勤務日を固定したうえで申請してください。

もっとも通りにくいのは、本業と同じ市場での事業です。同業の受託、本業の取引先への営業、競合サービスの運営が当たります。禁止事由の4番目に直接当たるため、申請しても承認は難しいと考えてください。この分野で活動したいなら、副業ではなく転職か独立の検討に切り替えたほうが現実的です。

許可が出なかったときに取れる選択

申請したのに承認されない場合もあります。このとき最初にすべきことは、不承認の理由を書面か記録の残る形で確認することです。理由が分かれば、次の手が決まります。

理由が稼働時間であれば、時間を削った内容で再申請します。週の上限を半分に下げ、平日の稼働をやめて休日の午前だけにするといった修正で承認に転じるケースがあります。理由が競業であれば、業種と依頼元を変える必要があります。同じ技能でも、対象とする業界を変えれば競業には当たりません。開発の仕事であれば、本業が金融系なら教育系や医療系の案件に寄せる、といった調整です。

理由が「規程上一律に認めていない」だった場合は、個別の交渉では動きません。この場合に取れる選択は3つです。1つは資産運用のように届け出の対象外となる収入に切り替えることです。2つ目は報酬を受けない活動に切り替えることです。地域の勉強会での登壇や、無償の技術支援は、報酬が発生しないため多くの規程の対象外です。実績と人脈は残るため、将来の独立や転職の準備になります。3つ目は転職または独立の検討です。副業を認める企業は増えており、就業規則を届け出制に改めた会社を選ぶという判断も現実的です。

やってはいけないのは、不承認の結果を知りながら無断で始めることです。届け出を出した記録が残っているため、後から「知らなかった」という説明が成り立ちません。処分の判断では、規程違反を認識していた点が重く見られます。

始めた後に3か月ごとに見直す4項目

届け出が済んで実際に動き始めると、状況は少しずつ変わります。最初の申請内容のままで放置すると、いつのまにか届け出の範囲から外れていることがあります。3か月ごとに次の4項目を点検してください。

1項目目は稼働時間です。申請した上限を超えていないかを、実際の作業記録で確かめます。記録は手帳でも表計算でも構いませんが、日付と作業時間を残してください。超えていた場合は、受注量を絞るか、申請内容の変更を届け出ます。会社が気にするのは超過そのものよりも、把握していない状態が続くことです。

2項目目は取引先の広がりです。最初は1社だけだったのが、紹介で増えることがあります。増えた相手が本業の取引先や同業でないかを確認します。名刺や請求先の社名を確認するだけで済みます。

3項目目は扱う情報です。仕事に慣れると、本業で得た知識を使いたくなる場面が出ます。一般に公開されている知識と、社内限りの情報の線引きを都度確認してください。判断に迷ったら使わないのが原則です。

4項目目は税務の準備です。収入と経費の記録を月ごとに更新しておくと、確定申告の時期にまとめて作業する必要がなくなります。報酬から源泉徴収されている場合は、支払調書または支払明細を保存してください。年間の所得が見えていれば、扶養や社会保険への影響も早めに判断できます。

この4項目を回していれば、会社との関係も税務の手続きも後追いになりません。副業を長く続けている人は、例外なくこの種の記録を持っています。

市場データから読む「禁止」の現状と、運営者の観察

ここまでは制度の話でした。最後に、市場の側から見た現状を整理します。

厚生労働省が副業と兼業のガイドラインを公表し、モデル就業規則を届け出制に書き換えたのは、企業に副業を認める方向へ促す政策判断です。この流れを受けて、就業規則の文言を全面禁止から届け出制に改める企業が増えています。一方で、規程を改めないまま運用だけを緩めている企業も残っており、条文と実態がずれた状態が広く見られます。だからこそ、条文の型を判定する作業に価値があります。

20年にわたってフリーランスと在宅ワークの市場を運営してきた立場から見ると、副業が長く続く人には共通点があります。作業単価の高い仕事を探し回るのではなく、「この人に任せると手戻りが少ない」という評価を積み上げている点です。届け出を通して堂々と受けている人ほど、締切と稼働時間を正直に伝えられるため、この評価が積み上がります。逆に会社に隠している人は、連絡が取りにくい時間帯を説明できず、途中で関係が切れやすい傾向が見られます。手続きを踏むことは、面倒な回り道ではなく、継続の条件です。

もう1つの観察は、手取りの厚さについてです。仲介手数料が引かれない直接取引では、依頼者は同じ予算でより多くを頼め、受け手は同じ作業で手取りが厚くなります。運営者として見てきた限りでは、この差は年間の総額よりも「1件ごとの納得感」に表れます。副業は時間の総量が限られるため、1件あたりの手取りが薄い形だと早い段階で続かなくなります。手数料0%の取引が効いてくるのは、稼働時間を増やせない副業の人ほど大きいと考えています。

職種を選ぶときの手がかりとして、報酬水準の目安は押さえておいてください。文章を書く仕事の相場は著述家,記者,編集者の年収・単価相場に、開発系の相場はソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとめられています。どちらも公的統計をもとにした水準なので、案件の提示額が妥当かを判断する基準に使えます。

資格を足がかりにする進め方も現実的です。書類の作成や社内文書の整備を請け負うならビジネス文書検定が、対応できる業務の範囲を説明する材料になります。ネットワークの構築や運用を受ける場合も、ベンダーが認定する技術者資格を持っていれば、会社に対して「本業の情報を使わずに成立する仕事である」と示しやすくなります。届け出の申請書に、取得した資格と対応できる業務範囲を添えると、会社側も内容を判断しやすくなります。在宅で受けられる仕事の全体像はAIコンサル・業務活用支援のお仕事で確認してください。分野ごとに必要な経験年数と、単発で受けられる範囲がどこまでかが書かれているため、届け出に書く業務内容を具体化する下敷きに使えます。

最後に手順として整理します。就業規則の型を判定する、4つの禁止事由に当たらない働き方を選ぶ、時間帯と業務内容を明記して届け出る、所得税と住民税の手続きを期限内に済ませる。この4段階を踏めば、禁止と書かれた会社でも進められる範囲は残っています。

よくある質問

Q. 就業規則に「副業禁止」と書かれていても、実際にできる副業はありますか?

あります。会社が禁止できるのは、厚生労働省のモデル就業規則が挙げる4つの事由、つまり労務提供上の支障、企業秘密の漏洩、名誉や信用を損なう行為、競業による利益侵害に当たる場合です。これらに触れない働き方であれば、届け出を出したうえで進められる余地があります。まず就業規則が全面禁止か許可制か届け出制かを確認してください。

Q. 株式投資や投資信託は副業の届け出が必要ですか?

一般には、労務の提供を伴わない資産運用は「雇われること」も「事業を営むこと」にも当たらないため、就業規則上の副業には含まれません。ただし勤務先が金融機関や上場企業で、インサイダー取引の防止規程がある場合は、売買の届け出が別に求められます。就業規則ではなくその規程を確認してください。

Q. 副業の住民税を普通徴収にすれば会社に知られませんか?

普通徴収を選べるのは給与所得以外の所得に係る住民税だけです。地方税法第321条の3第2項のただし書きが根拠で、副業がアルバイトなどの給与だと選択できません。また発覚の経路は住民税だけではないため、隠す手段としては確実性がありません。届け出を先に済ませるほうが安全です。

Q. 業務委託の副業なら本業の労働時間に影響しませんか?

労働時間の通算という観点では影響しません。厚生労働省のガイドラインは、フリーランスや業務委託のように労働基準法が適用されない働き方は通算されないと明記しています。ただし過労で本業に支障が出ないよう配慮することが望ましいとされており、会社が稼働時間を尋ねてくるのはこのためです。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月19日最終更新:2026年9月26日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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