副業禁止の会社に知られたらどうなるか、処分の流れと備え方


この記事のポイント
- ✓副業禁止の会社に副業が知られたらどうなるのかを
- ✓懲戒処分の種類と重さの上限
- ✓就業規則に定めのない事由では処分できないという原則
副業禁止の会社で副業をしていることが知られたらどうなるのか。まず、落ち着いて事実から押さえてください。副業をすること自体は法律違反ではありません。副業禁止は会社のルール、つまり就業規則の定めです。そして会社が処分を下せる範囲には、はっきりした枠があります。就業規則に定めのない事由では処分できませんし、処分の重さが釣り合っていなければ無効になることがあります。厚生労働省が示している見本では、副業について「勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という形が標準になっており、制限できるのは4つの場合に限られています。この記事では、知られたときに何がどの順番で起きるのか、どんな処分がありうるのか、どこで線が引かれているのか、そして知られる前と後に打てる手を、公式資料で確認できる範囲だけで整理します。
副業禁止は「法律で禁止」ではない。会社のルールという位置づけ
最初に、いちばん大きな誤解を外しておきます。会社員が副業をすることを禁じる法律はありません。禁じているのは、その会社の就業規則です。公務員には法律上の兼業の制限がありますが、民間企業に勤めている人の場合は、労働契約と就業規則の話になります。
では会社は、どこまで制限できるのか。厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドラインには、裁判例の考え方が整理されています。
副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、例えば、 ① 労務提供上の支障がある場合 ② 業務上の秘密が漏洩する場合 ③ 競業により自社の利益が害される場合 ④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合 に該当する場合と解されている。 出典: mhlw.go.jp
出発点は「労働時間以外の時間の使い方は基本的に労働者の自由」です。制限できるのは例外として挙げられた場合、という組み立てになっています。
同じガイドラインには、厚生労働省が平成30年1月に改定したモデル就業規則において「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」とされていることも書かれています。それ以前のモデル就業規則には、労働者の遵守事項として「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定が置かれていました。この一文が削除され、副業と兼業についての条文が新しく設けられたのが平成30年1月の改定です。
つまり、国が示す標準形は「原則として認める」に変わっています。ただし、これは見本です。自分の会社の就業規則がこの形になっているとは限りません。改定前の見本をもとに作られた古い規則が、そのまま残っている職場もあります。
だから知りたいことの答えは、一般論ではなく自分の会社の就業規則の中にあります。労働基準法第89条にもとづいて作られる書類なので、対象となる事業場には必ず存在します。社内のイントラネットか、総務や人事に頼めば読めます。
就業規則のどこを読むか。確認する箇所は4つ
就業規則を手に入れたら、次の4か所を順番に確認してください。読む順番を決めておくと、必要な情報だけが取れます。
1つ目が、副業に関する条文です。禁止、許可制、届出制のどれになっているかを見ます。「許可なく従事しないこと」と書かれていれば許可制です。「届け出ること」なら届出制です。一切認めないと書かれているなら禁止です。書き方によって、これから打てる手が変わります。
2つ目が、制限の理由です。厚生労働省のモデル就業規則では、届出にもとづいて、労務提供上の支障がある場合、企業秘密が漏洩する場合、会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、競業により企業の利益を害する場合のいずれかに該当するときは禁止または制限できるという形になっています。自分の会社の規則にも同じような列挙があるかを見てください。列挙があるなら、自分の副業がそのどれにも当たらないと説明できるかどうかを考えます。
3つ目が、懲戒の条文です。どんな事由でどんな処分があるのかが書かれています。ここに副業に関する記載があるかどうかが、実際の処分の可否に直結します。
4つ目が、届出や申請の様式です。用意されているなら、その会社は副業を想定しているということです。様式がない場合でも、届け出ることはできます。
読んでみて「禁止」と書かれていたとしても、そこで終わりではありません。ガイドラインが示す裁判例の考え方では、労働時間以外の時間の使い方は基本的に自由とされています。規則の文面と、実際に処分が有効になるかどうかは別の問題です。ここは後の章で扱います。
知られたときに、実際はどういう順番で進むのか
処分がいきなり来ることは、通常ありません。段階を追って進みます。何が起きるかを知っておくと、その場で慌てずに対応できます。
第1段階は、事実の確認です。多くの場合、給与計算や人事の担当者が住民税の税額の変化に気づく、あるいは社内で話が伝わる、という形で始まります。この段階では「他に収入がありますか」といった質問になります。
第2段階は、聞き取りです。上司や人事から、何をしているのか、いつからか、どのくらいの時間を使っているのか、どこから報酬を得ているのかを聞かれます。ここで何を答えるかが、その後の判断に直接影響します。
第3段階は、会社側の判断です。就業規則の条文と照らして、制限や禁止に当たるかを検討します。同時に、業務への影響、競業に当たるか、秘密の漏洩がないか、会社の設備を使っていないかが見られます。
第4段階が、結論です。注意で終わる、届出を出して認められる、副業をやめるよう求められる、あるいは懲戒処分に進む。この4つのどれかになります。実務上、最も多いのは注意で終わる形と、届出に切り替える形です。
第5段階として、処分に進む場合には、通常は本人に弁明の機会が与えられます。就業規則に懲戒の手続きが書かれている会社もあります。処分の内容は書面で示されるのが通常の形です。
覚えておいてほしいのは、第2段階での対応が結果を大きく変えるという点です。事実と違うことを言うと、それ自体が別の問題になります。就業規則の懲戒の事由には、会社の指示や命令に従わないこと、経歴の詐称といった項目が並んでいます。嘘は状況を悪くします。
懲戒処分の種類と、重さの上限は決まっている
処分の種類は無限にありません。厚生労働省のモデル就業規則は、懲戒の種類を4つに分けています。
① けん責 始末書を提出させて将来を戒める。 ② 減給 始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることはなく、また、総額が1賃金支払期における賃金総額の1割を超えることはない。 出典: mhlw.go.jp
同じ資料では、残りの2つとして出勤停止と懲戒解雇が示されています。出勤停止は、始末書を提出させたうえで一定の日数を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支給しないという内容です。懲戒解雇は、予告期間を設けることなく即時に解雇するものとされています。
減給の上限には法律の根拠があります。同資料の解説には、就業規則で減給の制裁を定める場合、その減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないと労働基準法第91条に定められていると説明されています。つまり、減給になったとしても金額には天井があります。
懲戒解雇の手続きにも決まりがあります。同解説によると、労働者を懲戒解雇として平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支給せずに即時に解雇する場合には、あらかじめ所轄の労働基準監督署長に解雇予告除外認定の申請をし、その認定を受けることが必要とされています。これは労働基準法第20条にもとづく手続きです。認定を受けずに即時に解雇する場合には、解雇予告手当を支給しなければなりません。
この4つを並べると、副業が知られた事実だけで最も重い処分に飛ぶという流れが、制度の建前としては想定されていないことが分かります。処分は情状に応じて選ばれるものとして設計されています。
就業規則に定めのない事由では、処分できない
ここがいちばん大事な原則です。会社は思いついた理由で処分することはできません。
モデル就業規則の解説には、懲戒処分について最高裁の判決が引かれています。国鉄札幌運転区事件の最高裁第3小法廷判決、昭和54年10月30日です。この判決では、使用者は規則や指示、命令に違反する労働者に対しては「規則の定めるところ」により懲戒処分をなし得ると述べられています。そこから、就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできないという結論が示されています。
つまり、就業規則に副業についての定めがなく、懲戒の事由にも該当する項目がないなら、副業をしていたという事実だけを理由に懲戒処分をすることはできません。
もう1つの関門が、処分の相当性です。同解説は労働契約法第15条を引いて説明しています。使用者が労働者を懲戒することができる場合において、その懲戒が、懲戒に係る労働者の行為の性質および態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利を濫用したものとして無効とする、という条文です。
さらに同解説には、懲戒処分の対象者に対しては、規律違反の程度に応じ、過去の同種事例における処分内容等を考慮して公正な処分を行う必要があると書かれています。裁判においては、使用者の行った懲戒処分が公正とは認められない場合に、懲戒権の濫用として無効と判断したものもあるとされています。
加えて、就業規則に懲戒規定を設ける前にした労働者の行為に対してさかのぼって懲戒処分をすることや、1回の懲戒事由に該当する行為に対して複数回の懲戒処分を行うことはできないとも明記されています。
これらをまとめると、確認すべき点は3つです。就業規則に定めがあるか。その定めに自分の行為が当たるか。処分の重さが行為に釣り合っているか。この3つのどこかで外れていれば、処分の有効性を争う余地があります。ただし、実際に有効か無効かは個別の事情で判断されます。ここは一般論で結論を出せる領域ではないので、処分が示された段階なら専門家に相談してください。
重い処分に向かいやすいのは、副業そのものではない部分
実務の感覚として、処分が重くなるのは副業をしていたこと自体ではなく、別の要素が重なった場合です。モデル就業規則の懲戒の事由を読むと、その要素が具体的に分かります。
1つ目が、競業です。会社の利益を害する形で同業の仕事を受けている場合、制限が認められる4類型のうちの1つにまっすぐ当たります。同じ業界、同じ顧客層、同じサービス。ここが重なると、話の性質が変わります。
2つ目が、秘密の漏洩です。業務上重要な秘密を外部に漏らして会社に損害を与えた場合は、懲戒解雇の事由として挙げられています。本業で知った情報を副業で使うことは、意図がなくても疑われます。
3つ目が、会社の設備の使用です。許可なく職務以外の目的で会社の施設や物品を使用したときという項目が、懲戒解雇の事由に並んでいます。会社のパソコン、メール、通信回線、クラウドを副業に使うと、副業の可否とは別の問題として扱われます。
4つ目が、業務への支障です。正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき、業務上の指示や命令に従わなかったときといった項目があります。副業で睡眠が削られて本業のパフォーマンスが落ちると、ここに触れます。
5つ目が、名誉や信用です。私生活上の非違行為や会社に対する正当な理由のない誹謗中傷等であって、会社の名誉信用を損ない、業務に重大な悪影響を及ぼす行為をしたときという項目があります。SNSで本業の不満を書きながら副業を宣伝する、といった形は、ここに当たる可能性が出てきます。
逆に言えば、この5つを避けていれば、重い処分に向かう理由が積み上がりません。分野を1つずらす、会社の資源を一切使わない、本業の時間を削らない。この3つが実質的な備えになります。
処分より先に、労働時間の通算が問題になることがある
もう1つ、見落とされやすい論点があります。副業が雇われる形の場合、労働時間の通算という仕組みが働きます。
厚生労働省のガイドラインには、労働基準法第38条第1項の規定として「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と引用されています。同じ資料では、労基法が適用される労働者に該当する場合に、複数の事業場における労働時間が通算されると説明されています。
これは会社側の管理義務の話ですが、働く本人にも影響します。通算した時間が法律の上限に触れると、会社は放置できません。だから会社は、副業の内容と時間を把握する必要が出てきます。モデル就業規則が届出の規定を置いている理由の1つがここにあります。
一方、業務委託で受ける仕事は雇用ではないので、この通算の対象になりません。副業の形を選ぶ段階で、この違いは大きく効きます。
健康の話も、ガイドラインにはっきり書かれています。労働者の対応として、副業や兼業による過労によって健康を害したり業務に支障を来したりすることがないよう、労働者が自ら各事業場の業務の量やその進捗状況、それに費やす時間や健康状態を管理する必要があると記されています。また、他の事業場の業務量や自らの健康の状況等について報告することは、企業による健康確保措置を実効あるものとする観点から有効であるとも書かれています。
つまり、隠し続けることの負担は、処分のリスクだけではありません。体調を崩したときに会社側が状況を把握できていない、という問題も含みます。
知られる前にできる備えを、順番に並べる
備えは、難しいことではありません。順番があるだけです。
最初にやるのは、就業規則を読むことです。ここを飛ばすと、必要のない心配をしたり、本当に危ない行為を見落としたりします。読んだ結果が届出制や許可制だったなら、届け出るという選択肢が現実的に出てきます。
次に、ガイドラインが挙げた4類型に自分の副業が当たらないかを確認してください。競業していないか、秘密に触れないか、業務に支障が出ていないか、会社の信用を損なう要素がないか。この4つを外せていれば、説明できる状態になります。
3つ目が、会社の資源を一切使わないことです。パソコン、メール、回線、印刷機、会議室。ここを混ぜると、副業の可否とは別の理由で処分の対象になります。
4つ目が、時間の設計です。本業の勤務時間中に副業の連絡に応じない、深夜の作業を習慣にしない。業務への支障は、処分の理由としても、健康の問題としても、いちばん現実的なリスクです。
5つ目が、記録です。誰から、いつ、何の仕事を、いくらで受けたか。この記録があると、聞き取りの場面で正確に説明できます。あわせて、税の手続きにもそのまま使えます。
6つ目が、届け出る判断です。ガイドラインには、実際に副業や兼業を行うに当たっては、労働者と企業の双方が納得感を持って進めることができるよう、企業と労働者との間で十分にコミュニケーションをとることが重要であると書かれています。モデル就業規則の解説には、副業や兼業に係る相談や自己申告等を行ったことにより不利益な取扱いをすることはできないとも明記されています。届け出ることで不利に扱われることは、想定されていません。
知られた後の対応は、記録と書面から始める
すでに知られてしまった場合の手順です。
まず、事実を時系列で書き出してください。いつから、どんな仕事を、月に何時間、どこから報酬を得ていたか。会社の設備を使っていないこと、本業の時間中に作業していないことも、事実として整理します。この整理が、聞き取りの場でそのまま使えます。
次に、就業規則の該当条文を確認してください。どの条文を根拠に何を問題とされているのかが分かると、話が具体的になります。
3つ目に、会社から示されたことを記録してください。口頭で言われた内容も、日付と相手と発言の要旨をメモに残します。処分が示される場合は、書面で受け取ってください。書面があれば、後で相談するときに話が早く進みます。
4つ目に、退職を求められた場合は即答しないでください。退職届を出すことと、解雇されることは扱いが違います。その場で判断せず、持ち帰ってから相談してよい話です。
5つ目に、外部の窓口に相談してください。次の章で具体的に挙げます。
なお、副業で受けている仕事の側にも配慮が必要です。急に連絡を止めると、取引先に迷惑がかかります。契約を整理する必要が出たなら、期限と引き継ぎを明確にして伝えてください。業務委託の契約では、報酬の支払期日や成果物の扱いが決まっています。未払いが発生したときの進め方については未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に手順がまとまっています。契約書や発注書で確認しておくべき項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理されています。
相談できる公的な窓口を、費用のかからない順に
相談先は、いくつも用意されています。費用のかからないものから並べます。
最初に挙げたいのが、総合労働相談コーナーです。厚生労働省の案内には次のように書かれています。
解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、パワハラなどの あらゆる分野の労働問題を対象 としています。 専門の相談員が 面談 もしくは 電話 で対応致します。 予約不要 、ご利用は 無料 です。 出典: mhlw.go.jp
同じページには、各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内などの378か所に設置されていること、土日祝日と年末年始は閉庁していること、相談者のプライバシーの保護に配慮した対応を行うことが書かれています。
さらに、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律にもとづき、労働相談を受けるほか「助言・指導」や「あっせん」を案内しているとされています。あっせんは、第三者が間に入って話をまとめる手続きです。裁判より短い期間で進みます。労働基準法等の法律に違反の疑いがある場合は、労働基準監督署等の行政指導等の権限を持つ担当部署に取り次ぐことになるとも書かれています。希望する場合には、裁判所、地方公共団体、法テラスなどの他の紛争解決機関の情報提供も受けられます。
窓口を使うときのコツは、感情ではなく事実を並べることです。就業規則の条文、日付、やりとりの記録、示された処分の内容。この4点があれば、相談員が状況を把握できます。
処分が重い場合や、金銭の請求まで考える場合は、弁護士への相談を検討してください。費用が心配なら、法テラスの案内を受けられます。ここも総合労働相談コーナーで情報提供してもらえます。
順番としては、まず無料の窓口で状況を整理し、必要と分かってから有料の相談に進むのが現実的です。最初から高い費用をかける必要はありません。
会社が副業を嫌がる理由を知ると、説明の仕方が変わる
備えの質を上げるために、会社側の心配を知っておくと役に立ちます。厚生労働省のガイドラインには、企業から見た副業の留意点が整理されています。
そこに挙げられているのは、必要な就業時間の把握と管理、健康管理への対応、そして職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかという懸念への対応です。逆に企業側のメリットとしては、労働者が社内では得られない知識や技能を獲得できること、自律性や自主性を促せること、優秀な人材の獲得と流出の防止ができて競争力が向上すること、社外から新たな知識や情報や人脈が入ることで事業機会の拡大につながることが挙げられています。
ここを踏まえると、届け出るときや聞き取りを受けるときの説明の組み立て方が決まります。会社が気にしているのは3点です。時間、健康、そして情報と競業です。だから、次の形で答えられる状態を作っておくと話が通ります。
時間については、月に何時間か、いつの時間帯か、本業の勤務時間と重なっていないかを具体的に言えるようにしてください。「空いた時間に少し」ではなく「土日の午前に合計で月20時間ほど」のように数字で言えると、相手が判断できます。
健康については、睡眠時間が削られていないこと、体調に影響が出ていないことを伝えてください。ガイドラインにも、労働者が自ら業務の量や進捗、費やす時間や健康状態を管理する必要があると書かれています。管理していると言える状態にしておくことが備えになります。
情報と競業については、取引先の業種が本業と重ならないこと、本業で知った情報を使っていないこと、会社の設備を使っていないことを明確にしてください。ここが担保されていれば、制限が認められる4類型のうち3つが外れます。
ガイドラインには、労働者の対応として、副業や兼業を希望する場合にはまず自身が勤めている企業の副業と兼業に関するルールを確認し、そのルールに照らして業務内容や就業時間等が適切な副業と兼業を選択する必要があると書かれています。順番は、規則を読む、それに合う仕事を選ぶ、という並びです。すでに始めている場合でも、この順番で見直すことができます。
もう1つ、ガイドラインに書かれている実務的な助言があります。副業先を探す段階で、就業時間、特に時間外労働の有無等の情報を集めて適切な就職先を選ぶことが重要とされています。あわせて、企業が自社のホームページ等で公表した副業と兼業に関する情報を参考にすることや、ハローワークにおいて求人内容の適法性等の確認作業を経て受理され公開されている求人について求職活動を行うことも有効であるとされています。つまり、募集の出どころを選ぶことも備えの一部です。
副業の形を選び直すという選択肢
知られた後に副業をやめるのではなく、形を変えるという選択肢もあります。実際の相談でも、この方向で落ち着くことが少なくありません。
雇われる形の副業は、2つの仕組みに乗ります。1つが労働時間の通算で、もう1つが社会保険の加入要件です。どちらも会社側の手続きに関わるため、隠しにくく、会社側にとっても管理の負担になります。だから会社が難色を示しやすいのは、こちらの形です。
業務委託で受ける仕事は、労働時間の通算の対象になりません。時間の使い方も自分で決められます。会社が気にする3点のうち、時間の管理という論点が軽くなります。同じ「副業」という言葉でも、会社から見たときの性質がかなり違います。
作業する場所と時間を自分で決められる仕事に切り替えると、本業への影響も実際に減ります。深夜のシフトに入る必要がなくなり、休日の予定も動かせます。健康の管理という論点も軽くなります。
ただし、業務委託には別の注意点があります。報酬が成果に対して支払われるため、最低賃金の保護がありません。契約の条件を自分で確認する必要があります。報酬の額、納品の期日、支払いの時期、修正の範囲。ここを書面で確認してから受けるという習慣が必要です。
そして、税の手続きも自分で行うことになります。所得の計算に使う記録を残しておくこと、確定申告の要否を確認すること。これは負担ではありますが、裏を返せば、自分の収入を自分で把握できるようになるということです。独立を視野に入れているなら、この経験そのものが準備になります。
在宅の仕事を長く見てきた立場からの考察
20年この市場を見てきた立場から言えば、副業が原因で会社と揉めた例には共通した形があります。副業の存在そのものではなく、本業と重なっていたことが原因になっています。同じ業界、同じ顧客層、同じ時間帯。この3つのどれかが重なった場合に、話が大きくなります。逆に、分野を1つずらして、勤務時間外に完結する形で受けている人は、そもそも問題として浮上していません。
運営者として見てきた限りでは、40代や50代で副業から入って独立に向かう人の進み方には、順序があります。いきなり収入を伸ばそうとせず、まず月に決まった時間だけ確実に納品する形を作る。それを何か月も崩さない。すると発注する側から「この人に任せると自分が楽になる」と思われるようになり、依頼が安定します。単価の交渉よりも、この信頼の積み上がりのほうが年間の収入を左右します。焦らずに進めたほうが、結果として早く形になります。
手取りの構造にも触れておきます。仲介が何段か重なる仕事では、発注側が出した予算が途中で目減りします。中間マージンが乗らない直接の取引なら、同じ予算で依頼側はより多く頼めて、受け手には手数料0%のぶんだけ厚く残ります。副業として時間が限られている場合、これは「同じ手取りを少ない時間で作れる」という話になります。時間が短くなること自体が、本業への影響を減らします。
分野を選ぶときは、単価の水準を先に見ておいてください。文章を書く仕事の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場、開発系の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっています。職業分類にもとづく数字なので、募集側の言い値と比べる物差しになります。
在宅で動いている仕事を職種単位で見たいなら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事やアプリケーション開発のお仕事が入口になります。専門的に見える分野でも、最初の依頼は資料の整理や下調べということが少なくありません。資格を持っている職種でどう線を引くかの実例としては、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】が参考になります。
技能を足す方向なら、書類を整える力は在宅の事務にそのままつながります。文書の型や敬語を体系的に学べるビジネス文書検定は受験のハードルが低く、実務で使える内容です。技術寄りに進みたいならCCNA(シスコ技術者認定)がネットワークの基礎からの定番の入口です。
最後に、いちばん伝えたいことを書きます。副業が知られたとしても、いきなり職を失うという流れは制度の建前として想定されていません。処分には、就業規則に定めがあること、行為が定めに当たること、重さが釣り合っていることという3つの条件があります。だから、まず落ち着いて事実を並べ、就業規則の条文を確認し、無料の窓口で相談してください。自分だけで結論を出さないことが、いちばん確実な備えです。
よくある質問
Q. 副業をすると法律違反になりますか?
民間企業に勤めている人が副業をすること自体を禁じる法律はありません。副業禁止は会社の就業規則の定めです。厚生労働省のガイドラインには、裁判例では労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由とされ、企業が制限できるのは労務提供上の支障がある場合、業務上の秘密が漏洩する場合、競業により自社の利益が害される場合、自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合と解されていると書かれています。
Q. 副業が知られたら、すぐに懲戒解雇になりますか?
厚生労働省のモデル就業規則は懲戒の種類をけん責、減給、出勤停止、懲戒解雇の4つに分け、情状に応じて選ぶ形になっています。同資料の解説には、最高裁判決を引いて就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできないと明記され、さらに労働契約法第15条により客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない懲戒は無効になると説明されています。実際の判断は個別の事情によります。
Q. 減給された場合、金額に上限はありますか?
あります。厚生労働省のモデル就業規則の解説には、就業規則で減給の制裁を定める場合、その減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないと労働基準法第91条に定められていると書かれています。つまり1回の額と月内の合計の両方に天井があります。
Q. 処分を示されたら、どこに相談すればよいですか?
厚生労働省の総合労働相談コーナーが最初の窓口になります。解雇や雇止め、配置転換、賃金の引下げなどあらゆる分野の労働問題を対象とし、予約不要で無料、専門の相談員が面談か電話で対応します。全国378か所に設置されています。個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律にもとづく助言・指導やあっせんの案内もあり、必要に応じて裁判所や法テラスなどの情報提供も受けられます。相談の前に、就業規則の条文、日付、やりとりの記録、示された処分の内容を整理しておいてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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