2022年のハラスメント法改正で広がった義務と、働く側の相談先


この記事のポイント
- ✓ハラスメント法改正2022の中身を
- ✓厚生労働省の案内と法律の条文で確かめて整理しました
- ✓2022年4月に中小企業へ広がったパワハラ防止の義務
2022年のハラスメント法改正について調べている方は、「2022年に何が変わったのか」「自分の勤める小さな会社にも関係があるのか」「職場でつらい思いをしているが、法律で何を求められるのか」といった疑問を持っているはずです。会社の人事や総務の担当者として調べている方もいれば、働く側として自分を守る方法を探している方もいるでしょう。
結論から書きます。2022年4月1日から、職場のパワーハラスメントを防ぐための措置が、大企業だけでなく中小企業にも義務づけられました。これにより、規模にかかわらずすべての会社が、相談窓口の設置や、相談があったときの迅速な対応などを行わなければならなくなりました。さらに2026年10月1日からは、顧客からの著しい迷惑行為であるカスタマーハラスメントと、就職活動中の人へのセクシュアルハラスメントについても、対策が会社の義務になっています。
この記事では、厚生労働省の案内と法律の条文で確かめた内容をもとに、2022年の改正で何が変わったのか、会社に求められる措置は何か、その後の改正で何が加わったのか、そして働く側がつらい思いをしたときにどこへ相談すればよいのかを、順に解説します。
2022年のハラスメント法改正とは何だったのか
2022年の改正を理解するには、少し前にさかのぼる必要があります。職場のパワーハラスメント対策が法律で義務になったのは、2019年に成立した法改正がきっかけです。厚生労働省の案内では、令和元年6月5日に関係する法律の改正が公布され、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法が改正されたと説明されています。施行は令和2年6月1日です。
労働施策総合推進法とは、働く人の雇用の安定や職業生活の充実を目的とした法律で、パワーハラスメントの防止の規定が入ったことから「パワハラ防止法」と呼ばれることもあります。この改正で、会社はパワーハラスメントを防ぐために雇用管理上必要な措置を講じることが義務になりました。
ただし、令和2年6月の時点で義務になったのは大企業だけでした。中小企業には準備の期間が設けられ、それまでは努力義務とされていました。努力義務とは、取り組むよう努めなければならないが、行わなくても直ちに法律違反にはならない、という意味です。この準備の期間が終わり、中小企業にも義務が広がったのが、2022年4月1日です。厚生労働省も当時、「2022年(令和4年)4月1日より、パワーハラスメント防止措置が中小企業の事業主にも義務化されます」というリーフレットを出して周知しました。
つまり、「ハラスメント法改正2022」とは、新しい法律ができたというより、2020年に大企業から始まったパワハラ防止の義務が、2022年4月に中小企業を含むすべての会社に広がったことを指しています。従業員が数人しかいない会社であっても、人を雇っている以上、パワハラを防ぐための措置を取る義務があります。
2022年は、育児・介護休業法の改正が段階的に施行された年でもあります。妊娠や出産を会社に申し出た人に対して、育児休業の制度を個別に知らせ、取得の意向を確認することが会社の義務になりました。妊娠や出産、育児休業の取得をめぐる嫌がらせは、マタニティハラスメントやパタニティハラスメントと呼ばれ、もともと会社に防止の措置が義務づけられていますが、制度を使いやすくする改正とあわせて、職場の対応がいっそう問われるようになりました。
パワーハラスメントの定義:3つの要素で判断する
パワハラ防止の義務を理解するには、法律がパワーハラスメントをどう定めているかを知る必要があります。労働施策総合推進法では、会社が防がなければならない言動を、次のように定めています。
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
条文は長いので、3つの要素に分けて言い換えます。
1つ目は、優越的な関係を背景とした言動であることです。上司から部下への言動が典型ですが、それだけではありません。仕事の知識や経験が豊富な同僚からの言動や、集団で1人を無視するような言動も、相手が抵抗や拒絶をしにくい関係を背景にしていれば当てはまります。
2つ目は、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであることです。仕事のミスを注意することや、業務の改善を求めることは、それ自体はパワハラではありません。問題になるのは、人格を否定するような言葉や、必要以上に長時間にわたって叱り続けるような、仕事の指導として明らかに行き過ぎた言動です。
3つ目は、働く人の就業環境が害されることです。言動によって体や心に苦痛を受け、仕事に支障が出るほどの状態になることを指します。
厚生労働省は、パワーハラスメントの典型的な例として、次の6つの類型を整理しています。
| 類型 | 内容の例 |
|---|---|
| 身体的な攻撃 | 暴行、傷害 |
| 精神的な攻撃 | 脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言 |
| 人間関係からの切り離し | 隔離、仲間外し、無視 |
| 過大な要求 | 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害 |
| 過小な要求 | 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること、仕事を与えないこと |
| 個の侵害 | 私的なことに過度に立ち入ること |
厚生労働省は、これらはパワーハラスメントに当たり得る行為のすべてを網羅するものではないとしています。表に当てはまらないからといって、パワハラではないと決まるわけではありません。
指導とパワハラの線引き:どこからが行き過ぎなのか
パワハラ防止の義務が広がったことで、職場では「どこまで注意してよいのか分からない」という声も聞かれるようになりました。働く側にとっても、自分が受けている言動がパワハラに当たるのか、正当な指導なのかを見極めるのは簡単ではありません。
法律の定義に照らすと、判断の分かれ目になるのは、2つ目の要素である「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」かどうかです。仕事のミスを指摘し、改善の方法を伝えることは、業務上必要な指導です。遅刻や無断欠勤を繰り返す人に注意することも、指導の範囲に入ります。
一方で、次のような言動は、業務上必要な範囲を超えていると判断されやすくなります。
- ミスを指摘する際に「役立たず」「辞めてしまえ」など、人格を否定する言葉を使う
- 他の社員の前で、長時間にわたって繰り返し叱責する
- 仕事に関係のない私生活のことを、しつこく聞き出したり話題にしたりする
- 明らかにこなせない量の仕事を押しつけ、できないことを責める
- 理由なく仕事を取り上げ、会議や連絡から外す
判断の際には、言動の目的、言動が行われた経緯、言動の回数や時間、受けた人の状況など、さまざまな事情が総合的に考慮されます。同じ言葉でも、1回の注意と、毎日のように繰り返される叱責とでは、評価が変わることがあります。
働く側として大切なのは、自分の感じ方だけで判断を終えないことです。つらいと感じたときは、それがパワハラに当たるかどうかを1人で決めようとせず、記録を残したうえで相談窓口に相談してください。パワハラに当たらない場合でも、職場の環境を改善するきっかけになることがあります。
在宅勤務やリモートワークで起きやすいハラスメント
働き方の変化に伴って、ハラスメントが起きる場面も変わってきました。在宅勤務やリモートワークでは、職場で顔を合わせる機会が減る一方で、チャットやビデオ会議を通じたハラスメントが問題になることがあります。
ビデオ会議では、自宅の様子が画面に映ることがあります。部屋の中の様子や家族について、本人が望まないのに繰り返し話題にする言動は、私的なことに過度に立ち入る「個の侵害」に当たり得ます。ビデオ会議でカメラをつけるよう必要以上に求めたり、服装や容姿について性的な発言をしたりする言動も、ハラスメントとして問題になります。
チャットでは、勤務時間外の深夜や休日に、すぐの返信を求める連絡が繰り返されることがあります。業務上の必要性が乏しいのに、時間外の対応を事実上強いる言動は、過大な要求に当たる可能性があります。グループのチャットで特定の人だけを外したり、発言を無視し続けたりする行為は、人間関係からの切り離しに当たり得ます。
在宅勤務では、周りに同僚がいないため、ハラスメントを受けていても気づかれにくいという問題があります。その一方で、チャットやメールのやり取りは記録が残りやすいという面もあります。つらいと感じたときは、やり取りの画面を保存し、会社の相談窓口に早めに伝えてください。会社には、在宅勤務で働く人からの相談にも適切に対応する義務があります。
会社に義務づけられた措置:4つの柱
2022年4月から中小企業も含めて義務になった措置とは、具体的に何をすることなのでしょうか。厚生労働省の案内では、職場のハラスメントを防ぐために会社が必ず実施しなければならない措置として、次のような内容が示されています。
- 会社の方針を明確にし、管理職を含む働く人に、その方針を知らせて理解を広めること
- 相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整えること
- 相談があった場合に、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害を受けた人と行為をした人に適正に対処するとともに、再発を防ぐ措置を講じること
- 相談した人や行為をした人などのプライバシーを守り、相談したことや事実の確認に協力したことを理由に不利益な扱いをしてはならないと定め、働く人に知らせること
1つ目の方針の明確化とは、就業規則や社内の案内で「職場でのハラスメントは許さない」と示し、どんな言動がハラスメントに当たるのか、行為をした人にはどう対処するのかを明らかにすることです。社内の研修や朝礼での説明も、方針を広めるための方法の1つです。
2つ目の相談体制とは、ハラスメントについて相談できる窓口をあらかじめ決めて、働く人に知らせておくことです。社内の人事や総務の担当者を相談の担当として決める方法のほか、外部の専門機関に窓口を委託する方法もあります。男性と女性の両方の担当者を決めておくと、相談の内容によって話しやすい相手を選べるため、相談のしやすさが高まります。小さな会社では、社長自身が窓口になっていて相談しにくいという声もあるため、外部の窓口を設ける会社もあります。
3つ目の事後の対応は、相談を受けたあとの動きです。相談した人と行為をしたとされる人の双方から話を聞き、事実を確かめたうえで、配置の変更や懲戒などの対処を行い、再発を防ぐための取り組みを行います。
4つ目のプライバシーの保護と不利益な扱いの禁止は、相談した人が安心して声を上げられるようにするためのものです。法律では、働く人が相談をしたことや、会社の対応に協力して事実を述べたことを理由に、解雇やその他の不利益な扱いをしてはならないと定められています。
厚生労働省は、これらの措置は業種や規模にかかわらず、すべての会社に義務づけられているとしています。セクシュアルハラスメントや、妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメントについても、同じように防止の措置が会社の義務です。妊娠・出産などに関するハラスメントについては、業務の体制を整えるなど、ハラスメントの原因や背景になる要因を解消する措置も求められています。
2026年10月の改正:カスハラと求職者へのセクハラも義務に
2022年のあとも、ハラスメント対策の法律は改正が続いています。働く人にとって最も新しい変化が、2026年10月1日に施行された改正です。厚生労働省は、この改正について次のように案内しています。
本改正により、カスタマーハラスメントや求職者等に対するセクシュアルハラスメント(いわゆる「求職者等セクハラ」)の防止措置が事業主の義務となります(令和8年10月1日施行)。 出典: mhlw.go.jp
カスタマーハラスメントとは、顧客や取引の相手、施設の利用者などから働く人に向けられる、社会通念上許される範囲を超えた言動のことです。改正後の法律では、会社は、こうした言動で働く人の就業環境が害されないよう、相談に応じる体制を整えるほか、言動への対応の実効性を確保するための抑止の措置などを講じなければならないとされています。たとえば、悪質な要求への対応の手順を決めておくこと、1人で対応させずに複数で対応する体制を取ることなどが考えられます。
求職者へのセクシュアルハラスメントとは、就職活動中の学生やインターンシップの参加者、転職活動中の人などに対する性的な言動のことです。面接の場や、採用の担当者と就職活動中の人が会う場面で起きる性的な言動について、会社が防止の措置を講じることが義務になりました。
この改正にあわせて、令和8年2月26日には、カスタマーハラスメント防止の指針と、求職者などへのセクシュアルハラスメント防止の指針が公布されています。指針とは、法律で定めた義務について、会社が具体的に何をすればよいかを示した国の考え方のことです。
つまり、2022年に中小企業にも広がったのは、社内の上司や同僚からのパワハラを防ぐ義務でした。2026年10月の改正では、それが社外の顧客からの言動や、まだ社員になっていない就職活動中の人への言動にまで広がったことになります。職場のハラスメント対策は、2020年、2022年、2026年と段階を踏んで、守られる人と場面の範囲を広げてきました。
フリーランスも守られる:業務委託でのハラスメント
在宅ワークや業務委託で働く人にとって見逃せないのが、フリーランスを守る法律です。会社に雇われていないフリーランスは、労働施策総合推進法のパワハラ防止の義務の対象である「雇用する労働者」には当たりません。そのため、以前は取引先からのハラスメントを受けても、法律上の守りが手薄でした。
2024年11月に施行された特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、通称フリーランス法では、この点が変わりました。この法律では、フリーランスに業務を委託する一定の事業者に対して、業務委託に関して行われる次のような言動で、フリーランスの就業環境が害されることのないよう、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備などの措置を講じることを義務づけています。
- 性的な言動への対応によって、業務委託の条件で不利益を与えたり、性的な言動で就業環境を害したりすること
- 妊娠や出産に関する言動で就業環境を害すること
- 取引上の優越的な関係を背景とした言動で、業務を行ううえで必要かつ相当な範囲を超えたものにより就業環境を害すること
3つ目は、会社員に対するパワハラの定義とよく似ています。つまり、発注者が取引上の強い立場を背景に、仕事に必要な範囲を超えた言動をすることは、フリーランスに対しても防がなければならないということです。相談をしたことを理由に、契約を打ち切るなどの不利益な扱いをすることも禁止されています。
フリーランス法の概要は、厚生労働省のフリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へのページで確認できます。この法律には、ハラスメント対策のほかにも、取引の条件を書面などで明示する義務や、報酬の支払期日の決まりなどが定められています。発注書や契約書で確かめておきたい項目は、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストで一覧にしています。
一般的な相談の場でよくあるのが、フリーランスのデザイナーが、取引先の担当者から深夜にも繰り返し電話で修正を求められ、断ると「次の仕事は出さない」と言われたというケースです。こうした言動は、取引上の優越的な関係を背景にしたハラスメントに当たる可能性があります。やり取りの記録を残し、取引先の相談窓口や、国が設けているフリーランス向けの相談窓口に早めに相談することをおすすめします。具体的な事情によっては、弁護士への相談が必要になる場合もあります。
国が設けているフリーランス向けの窓口として、厚生労働省は「フリーランス・トラブル110番」を令和2年11月から設置しています。フリーランスや個人事業主が、契約上や仕事上のトラブルについて、弁護士に無料で相談できる窓口です。ハラスメントだけでなく、報酬の未払いや一方的な契約の打ち切りといった相談も受け付けています。どこに相談すればよいか分からないときの最初の窓口として覚えておくと安心です。報酬が支払われない場合の具体的な回収の手順は、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で解説しています。
また、厚生労働省は、フリーランスという名前で契約していても、働き方の実態によっては労働基準法上の「労働者」に当たる可能性があると案内しています。労働者に当たるかどうかは、契約の形式や名前ではなく、仕事の依頼を断る自由があるか、仕事の進め方や時間を細かく指示されているかといった実態で判断されます。労働者に当たる場合は、会社員と同じように、パワハラ防止の措置の対象になります。
つらい思いをしたときの相談先と、相談の順番
ハラスメントを受けたと感じたとき、どこに相談すればよいのでしょうか。厚生労働省の案内では、働く人に向けて、次のような順番で行動することが勧められています。
最初は、はっきりと意思を伝えることです。厚生労働省は、ハラスメントは受け流しているだけでは状況が改善されないとして、「やめてください」「私はイヤです」と自分の意思を伝えることを勧めています。ただし、相手が上司や取引先で、直接伝えることが難しい場合も多いはずです。無理に1人で向き合う必要はありません。
次は、会社の相談窓口です。厚生労働省は、ハラスメントは個人の問題ではなく会社の問題だとして、人事や労務の相談担当者、信頼できる上司に相談するよう勧めています。取引先や顧客からセクシュアルハラスメントを受けた場合も、自分の勤める会社に相談します。労働組合に相談する方法もあります。
会社に相談しても対応してもらえなかった場合は、都道府県の労働局に相談できます。厚生労働省の案内では、会社に相談しても対応してもらえなかったら、近くの都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談するよう案内されています。労働局では、法律に基づいて、会社と働く人の間の紛争を解決するための援助を行っています。
労働局が行う援助には、大きく2つあります。1つは、都道府県労働局長が、紛争の当事者に助言、指導、勧告をすることです。もう1つは、専門家で構成される紛争調整委員会による調停です。調停とは、第三者が間に入って話し合いを進め、解決案を示す手続きのことです。どちらも無料で利用でき、法律では、援助を求めたことや調停を申請したことを理由に、会社が働く人に不利益な扱いをすることを禁じています。
相談先を整理すると、次のようになります。
| 相談先 | 向いている場面 | 特徴 |
|---|---|---|
| 会社の相談窓口 | まず社内で解決したいとき | 会社には相談に適切に対応する義務がある |
| 労働組合 | 会社と交渉する力がほしいとき | 社外の労働組合に加入して相談できる場合もある |
| 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室) | 会社が対応してくれないとき | 助言・指導・勧告や調停を無料で受けられる |
| 総合労働相談コーナー | どこに相談すればよいか分からないとき | 労働問題全般の相談を受け付けている |
| 弁護士 | 損害賠償などを求めたいとき | 個別の事情に応じた法的な助言を受けられる |
心と体の健康が大きく損なわれている場合は、相談と並行して、医療機関を受診することも大切です。眠れない、食欲がない、仕事のことを考えると体調を崩すといった状態が続く場合は、1人で抱え込まないでください。
相談の前に準備しておきたい記録
どの相談先に行く場合でも、記録があると話が進みやすくなります。ハラスメントは、2人きりの場や、口頭のやり取りの中で起きることが多く、後から事実を確かめるのが難しいからです。
残しておきたい記録は、次のようなものです。
- いつ、どこで、誰から、どんな言動を受けたか(日時、場所、相手、具体的な言葉)
- その場にいた人や、見聞きしていた人
- メール、チャット、メッセージアプリのやり取り(画面の画像も含めて)
- 言動を受けたあとの体調の変化や、医療機関の受診の記録
- 会社に相談した日時、相談した相手、会社の対応の内容
記録は、できるだけ出来事の直後に書くのが理想です。時間が経つと、細かい言葉や順番を思い出せなくなります。手帳やスマートフォンのメモに、日付を入れて書いておくだけでも、十分な記録になります。会社のパソコンやアカウントに記録を保存していると、退職したときに取り出せなくなるおそれがあるため、個人の端末にも控えを残しておくと安心です。
在宅勤務やリモートワークでは、ハラスメントがチャットやビデオ会議の中で起きることもあります。チャットでの侮辱的な書き込みや、ビデオ会議で大勢の前で繰り返し叱責されるといった言動も、パワハラに当たり得ます。テキストのやり取りは記録が残りやすいため、削除される前に保存しておくことが大切です。
一方で、相手の同意なく会話を録音することについては、状況によって扱いが分かれることがあります。録音を証拠として使えるかどうかは、個別の事情によって判断されるため、迷う場合は弁護士などの専門家に相談してください。
会社の担当者が見直したい点
この記事を読んでいる方の中には、会社の人事や総務の担当者もいるはずです。2022年に義務が広がってから時間が経ち、2026年10月にはカスハラと求職者へのセクハラの対策も加わりました。社内の仕組みを見直すときの要点を整理します。
まず、就業規則や社内規程の見直しです。パワハラ、セクハラ、妊娠・出産などに関するハラスメントに加えて、顧客からの迷惑行為への対応方針と、採用活動での性的な言動の禁止を、方針として明らかにしておく必要があります。
次に、相談窓口の範囲の確認です。従業員からの相談だけでなく、顧客からの迷惑行為を受けた従業員からの相談や、採用の過程でハラスメントを受けた就職活動中の人からの相談にも、対応できる体制になっているかを確かめます。
さらに、フリーランスに業務を委託している会社は、フリーランス法に基づくハラスメント対策の体制も整えておく必要があります。社員向けの相談窓口を、業務委託で働く人も利用できるようにするなどの方法が考えられます。
見直しの手順としては、まず現在の就業規則と相談窓口の案内を書き出し、パワハラ、セクハラ、妊娠・出産などに関するハラスメント、カスタマーハラスメント、求職者へのセクハラ、フリーランスへのハラスメントの6つについて、方針と窓口と対応の手順がそろっているかを表にして確かめる方法があります。抜けている項目が見つかったら、規程の改定と社内への周知を進め、管理職向けの研修で具体的な事例を共有します。研修では、法律の定義を説明するだけでなく、自社の業務で起こり得る場面を題材にすると、受講した人が自分のこととして考えやすくなります。相談窓口の担当者には、相談を受けたときの聞き取りの手順や記録の取り方を、あらかじめ決めておくことも大切です。
社内の規程や案内文を見直すときは、読み手に誤解のない文章で書くことが求められます。ビジネス文書の書き方を体系的に学びたい担当者は、ビジネス文書検定の内容と試験の概要が参考になります。
運営者の立場から見えること
ここからは、在宅ワークの仲介を長く続けてきた運営者の立場から、ハラスメントと働き方について見てきたことを書きます。
運営者として見てきた限りでは、取引のトラブルの相談の中には、報酬の額や納期だけでなく、担当者の言動に関するものが少なくありません。深夜や休日の連絡、人格を否定するような修正の指示、断ったときの取引の打ち切りの示唆などです。こうした相談が寄せられるのは、たいてい、依頼主と受注者の間に条件の取り決めが十分でない取引です。連絡の時間帯や修正の回数を最初に決めておく取引では、こうした問題は起きにくい傾向があります。
もう1つ見えているのは、仲介の手数料が乗らない直接取引では、依頼主と受注者が対等に条件を話し合いやすいということです。間に入る事業者がいない分、受注者は報酬の手取りが厚くなり、無理な依頼を断る余裕も持ちやすくなります。手数料0%で直接取引できる形は、取引上の力の差を小さくし、ハラスメントの起きにくい関係を作るうえでも意味があると考えています。
在宅でできる仕事の種類も広がっています。生成AIを業務に取り入れる支援や、マーケティングやセキュリティの仕事など、新しい分野の仕事も増えました。仕事の中身と求められるスキルは、AIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で確認できます。文章を書く仕事に関心がある方は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、収入の幅と働き方の傾向を見ておくと、取引の条件を話し合うときの目安になります。
ハラスメントの防止は、2022年に中小企業を含むすべての会社の義務になり、2026年10月には顧客からの迷惑行為や就職活動中の人へのセクハラにまで広がりました。フリーランスも、業務委託の場面で守られるようになっています。法律は、働く人が声を上げることを前提に作られています。つらい思いをしているときは、記録を残し、会社の窓口や労働局に早めに相談してください。
よくある質問
Q. 2022年4月のハラスメント法改正で、何が変わったのですか?
2020年6月に大企業から始まったパワーハラスメント防止の措置が、2022年4月1日から中小企業にも義務になりました。それまで中小企業は努力義務でしたが、この日から規模にかかわらずすべての会社が、方針の明確化、相談体制の整備、相談後の迅速な対応、相談者のプライバシー保護などの措置を取らなければならなくなりました。
Q. 従業員が数人の小さな会社にも、パワハラ防止の義務はありますか?
あります。厚生労働省は、職場のハラスメントを防ぐための措置は業種や規模にかかわらず、すべての事業主に義務づけられているとしています。2022年4月からは中小企業もパワハラ防止の措置が義務になっており、人を雇っている会社であれば、従業員が少なくても相談窓口を設けるなどの対応が必要です。
Q. 会社に相談しても対応してもらえない場合は、どうすればよいですか?
都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。労働局では、法律に基づいて、労働局長による助言・指導・勧告や、紛争調整委員会による調停を無料で行っています。援助を求めたことや調停を申請したことを理由に、会社が不利益な扱いをすることは法律で禁じられています。どこに相談すればよいか分からない場合は、総合労働相談コーナーも利用できます。
Q. フリーランスでも、取引先からのハラスメントについて相談できますか?
できます。2024年11月に施行されたフリーランス法では、フリーランスに業務を委託する一定の事業者に、性的な言動や妊娠・出産に関する言動、取引上の優越的な関係を背景にした行き過ぎた言動を防ぐための体制の整備を義務づけています。相談したことを理由に契約を打ち切るなどの不利益な扱いも禁止されています。取引先の窓口や国の相談窓口に相談してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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