瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い

丸山 桃子
丸山 桃子
瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い

この記事のポイント

  • 瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いを
  • 2020年の民法改正で何が変わったのかという軸で整理します
  • 隠れた瑕疵という要件の消滅

結論を先に書きます。瑕疵担保責任と契約不適合責任は、同じ問題を扱う制度の旧版と新版です。2020年4月1日に施行された改正民法によって、瑕疵担保責任という枠組みが契約不適合責任という枠組みに置き換わりました。名前が変わっただけと説明されることもありますが、実際には成果物を納品する側にとって影響の大きい変更が5つ入っています。

とくに重いのは、判断の基準が「隠れた瑕疵かどうか」から「契約の内容に適合しているかどうか」に移ったことです。これは、契約書や仕様書に何が書かれているかで責任の範囲が決まるという意味です。逆に言えば、書かれていないことについては、後から一方的に不適合だと言われる余地が減りました。同時に、書いていなかったことで自分の側が守られなくなる場面も増えました。

私はアパレルブランドのEC運営支援をしていて、商品ページの制作や写真のディレクションを請け負っています。納品したあとに「イメージと違う」と言われてやり直しが延々と続いたことがあり、そのときに契約書を読み返して、仕様の定義がどこにもないことに気づきました。責任の話は、トラブルが起きてから調べても遅い。この記事は、そのときの自分に向けて書いています。

2つの制度は入れ替わっている

まず時系列を整理します。2020年3月31日までに締結された契約には、旧民法の瑕疵担保責任の規定が適用されます。2020年4月1日以降に締結された契約には、改正民法の契約不適合責任の規定が適用されます。契約書の日付で切り替わるので、いま新しく結ぶ契約はすべて契約不適合責任の世界です。

つまり、これから契約を結ぶ人が実務で使うのは契約不適合責任だけです。それでも瑕疵担保責任を理解しておく価値があるのは、理由が3つあります。1つは、契約書のひな型が更新されていない会社がまだ存在すること。改正から数年経っても、条文名だけを「契約不適合責任」に書き換えて、中身は旧法の考え方で作られたひな型が回っています。2つは、建物などについては別の法律で「瑕疵」という語が現在も使われていること。3つは、相手との会話で旧い用語が出てきたときに、何を指しているのかを判断する必要があることです。

改正の背景も押さえておくと理解が速くなります。旧法の瑕疵担保責任は、法定責任という特別な位置づけで説明されるのが通説でした。契約の履行として売主が責任を負うのではなく、法律が特別に売主に負わせた責任だという整理です。この整理のせいで、買主が使える手段が限られたり、損害賠償の範囲が狭く解されたりする問題がありました。改正では、これを債務不履行責任の一種として整理し直しました。約束した内容と違うものを渡したのだから、それは契約違反である、という素直な考え方に戻したわけです。

用語の面でもう一点補足すると、改正民法は「瑕疵」という言葉そのものを条文から落としました。瑕疵は「かし」と読み、日常語ではない専門用語です。意味も「欠陥」「傷」と説明されるだけで、どの程度のものを指すのかが条文からは読み取れませんでした。これを「契約の内容に適合しないもの」と言い換えたことで、何と比べて不適合なのかが文面から分かるようになりました。用語の平易化と、判断基準の明確化が同時に行われたわけです。

契約の内容が判断の出発点になったということは、契約書の重要度が上がったということでもあります。

契約不適合責任によるトラブルを避けるには、売買契約書の内容を明確に記載することが重要です。契約内容と実際の物件状況が適合しているかが責任として問われるからです。 出典: mecyes.co.jp

違い1:「隠れた瑕疵」という要件が消えた

旧法の瑕疵担保責任は、目的物に「隠れた瑕疵」があることを要件としていました。隠れたというのは、買主が通常の注意を払っても気づけなかった、という意味です。つまり、買主が知っていた欠陥や、少し注意すれば気づけた欠陥については責任を問えませんでした。

改正後は、この要件がなくなりました。判断するのは、引き渡されたものが「契約の内容に適合しているか」の一点です。買主が知っていたかどうかは、要件としては問われません。契約で約束した性能や仕様を満たしていなければ不適合になります。

この変更は、成果物を作って納品する側にとって両面があります。守られる面は、契約で定めていない事柄について責任を問われにくくなったことです。仕様書に「表示速度は2秒以内」と書いてあれば、その基準で判断されます。書いていない性能について後から文句を言われても、契約の内容ではないと反論できます。

厳しくなる面は、契約の内容が曖昧なときに、何が約束だったのかを当事者の合意内容から探ることになる点です。契約書に何も書かれていなければ、やりとりのメール、打ち合わせの議事録、提示された参考事例、そうしたものから「当事者はこういう品質を前提にしていた」と認定されます。認定の材料が発注側のメールばかりだったら、当然そちらに有利に傾きます。

私が経験したやり直しの件も、原因はここでした。契約書には「デザイン制作一式」としか書かれておらず、参考として送られてきた他社のサイトが基準なのか、それとも私が提出した企画書が基準なのかが決まっていませんでした。基準がない状態で「イメージと違う」と言われると、反論する足場がない。以後は、着手前に仕様と検収基準を1枚にまとめて相互に確認するようにしています。

開発系の仕事では、工程ごとにどこまでが自分の責任範囲なのかを明確にしておくことが特に重要です。アプリケーション開発のお仕事では、要件定義から運用までの工程ごとに求められる役割が整理されているので、契約書の作業範囲を書くときの下敷きとして使えます。

違い2:使える請求が2つから4つに増えた

旧法では、買主が使える手段は基本的に損害賠償請求と契約の解除の2つでした。修補を求める権利、つまり直してほしいという請求は、売買契約については条文上ありませんでした。請負契約には修補請求の規定がありましたが、売買にはなかったのです。

改正後は、4つの手段が用意されました。

1つ目が追完請求です。修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しのいずれかを求めることができます。不適合を直して契約どおりの状態にしてほしい、という最も素直な請求です。ここで重要なのは、どの方法で追完するかについて、売主側にも選択の余地があることです。買主が指定した方法が売主に不相当な負担を課すものであれば、売主は別の合理的な方法で追完できます。成果物の作り手としては、この点を知っているかどうかで交渉の幅が変わります。

2つ目が代金減額請求です。追完を催告して相当期間内に追完されない場合、または追完が不可能な場合に、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます。旧法にはなかった手段で、実務ではこれが増えました。全部やり直すには時間がないから、その分を値引きしてほしい、という決着の付け方です。

3つ目が損害賠償請求です。4つ目が契約の解除です。

この4つのうち、追完請求と代金減額請求には、売主側の帰責事由(責められるべき事情)が不要です。つまり、売主に落ち度がなくても、契約の内容に適合していなければ追完や減額の対象になります。一方で損害賠償請求には帰責事由が必要で、売主が「自分の責任ではない事情で不適合が生じた」と示せれば免れる余地があります。ここは実務でよく争点になる部分です。

解除のルールも合わせて変わった

4つの手段のうち、契約の解除についても改正で考え方が整理されました。ここは旧法との差が大きいので、独立して見ておく価値があります。

旧法では、瑕疵を理由に契約を解除できるのは「契約をした目的を達することができないとき」に限られていました。要件が厳しく、多少の瑕疵では解除できませんでした。

改正後は、債務不履行の解除の枠組みに統合されました。原則は催告解除です。相当の期間を定めて追完を催告し、その期間内に追完されなければ解除できます。ただし、期間が経過した時点での不履行が「契約および取引上の社会通念に照らして軽微」である場合は解除できません。軽微かどうかは、不適合の程度、契約の目的への影響、修補の容易さなどで判断されます。

催告をせずに直ちに解除できる場合もあります。追完が不可能であるとき、受注側が追完を明確に拒絶したとき、契約の性質や当事者の意思表示によって特定の日時に履行されなければ契約の目的を達成できないとき、などです。納期が絶対条件になっているキャンペーン用の制作物などは、この無催告解除の対象になり得ます。

作り手の立場で押さえるべき点は2つです。第1に、解除には受注側の帰責事由が不要になりました。自分に落ち度がなくても、契約の内容に適合していなければ解除される可能性があります。第2に、その代わりに「軽微でないこと」というハードルが設けられました。細かな表記ゆれや軽微な修正で解除まで持っていかれることはない、という意味です。

もう一つ、解除された場合の効果も知っておいてください。解除されると契約は遡って効力を失い、受け取った報酬は返還する義務が生じます。ただし、すでに提供した役務のうち発注側が利益を受けている部分については、価値に応じた清算が行われる余地があります。工程の途中で解除された場合は、どこまでの成果が引き渡されているかが清算の材料になるので、進捗の記録を残しておくことが自分を守ります。

違い3:権利行使期間から通知期間に変わった

期間の扱いも大きく変わりました。ここは見落とすと致命的です。

旧法では、買主は瑕疵を知った時から1年以内に権利を行使しなければなりませんでした。権利行使というのは、具体的に損害賠償を請求する、解除するといった行為です。1年以内にそこまで進める必要があったため、期間としては厳しいものでした。

改正後は、不適合を知った時から1年以内に「売主に通知」すれば足りることになりました。通知とは、不適合があることを知らせる行為です。金額を確定させる必要も、請求内容を詰める必要もありません。通知さえ1年以内に行えば、その後の具体的な請求は一般の時効の枠内で行えます。一般の時効は、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年です。

つまり、買主にとっては使える期間が実質的に延びました。売主である成果物の作り手にとっては、責任を追及されうる期間が長くなったということです。納品から数年経ってから通知が来る可能性がある、と考えておく必要があります。

もう一つ注意点があります。この1年の通知期間が適用されるのは、種類または品質の不適合についてだけです。数量の不適合と、権利に関する不適合には適用されません。それらは一般の時効だけで判断されます。実務では品質の不適合が圧倒的に多いので、1年の通知期間を覚えておけば足りますが、数量不足の場面では期間の考え方が違うと知っておくと役に立ちます。

なお、この期間の定めは任意規定です。契約で「引渡しから6か月以内に通知がない場合は責任を負わない」と定めることができます。作り手側としては、契約書にこの短縮条項を入れられるかどうかが、リスク管理の分かれ目になります。ただし、不適合を知りながら告げなかった場合には、短縮条項の効力が否定されることがあります。

違い4:損害賠償の範囲が広がった

旧法の瑕疵担保責任を法定責任と整理する考え方のもとでは、損害賠償の範囲は信頼利益に限られるという説明がされることがありました。信頼利益とは、契約が有効だと信じたことによって生じた損害、たとえば契約のために支出した費用のことです。

改正後は債務不履行責任として整理されたため、損害賠償の範囲は債務不履行一般のルールで判断されます。これにより、履行利益も対象に入ります。履行利益とは、契約が予定どおり履行されていれば得られたはずの利益です。不適合な成果物のために事業の売上機会を失った、という種類の損害が請求対象になり得ます。

その代わり、前述のとおり損害賠償には債務者の帰責事由が必要です。売主に責められるべき事情がなければ、賠償責任は生じません。追完請求や代金減額請求には帰責事由が不要なのに、損害賠償には必要。この非対称は改正の重要なポイントで、実務では「追完で済ませる」か「賠償まで求める」かの分岐点になります。

そして、成果物の作り手が本当に警戒すべきなのは、損害賠償の上限がないことです。契約金額が20万円の仕事で、不適合が原因で発注側に数百万円の損害が生じたと主張されれば、理屈のうえでは請求されます。だからこそ、契約書に損害賠償額の上限条項を入れることが実務の防御になります。「損害賠償の額は本契約の報酬額を上限とする」という1文があるかないかで、最悪の場合の差が桁で変わります。

契約金額そのものの妥当性も併せて見ておきたいところです。請け負う業務の範囲に対して報酬が市場水準より低い場合、リスクとリターンの釣り合いが崩れます。ソフトウェア作成者の年収・単価相場著述家,記者,編集者の年収・単価相場で職種別の単価水準を確認しておくと、責任の重さに見合った金額かどうかを判断できます。

違い5:請負契約の特則が消えた

請負契約についても変更がありました。旧法には、請負人の瑕疵担保責任について独自の規定があり、建物その他の土地の工作物については引渡しから5年、石造やコンクリート造などの堅固な建物については10年という期間の特則が置かれていました。

改正により、これらの特則は削除され、請負についても売買の契約不適合責任の規定が準用される形になりました。したがって、建物についても原則として「不適合を知った時から1年以内に通知」というルールで動きます。

ただし、住宅については別の法律が効いています。新築住宅の構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分については、引渡しから10年間の責任が法律で定められており、こちらは現在も「瑕疵」という語が使われています。つまり、民法では契約不適合責任に一本化されたものの、住宅分野では瑕疵という言葉が現役だということです。検索して両方の用語が並んで出てくる理由の一つがこれです。

情報成果物の制作を請け負う場合も、契約類型としては請負にあたることが多いです。したがって、上記のルールがそのまま自分の仕事に適用されます。納品したプログラムやデザインについて、引渡しから1年どころではなく、不適合を知った時から1年という起算点で通知が来る可能性がある。この感覚を持っておくことが、契約書に期間短縮条項を入れる動機になります。

免責や期間短縮の特約はどこまで有効か

契約不適合責任の規定は任意規定です。つまり、当事者の合意で内容を変えられます。実務でよく使われるのが、責任期間を短縮する条項と、責任の範囲を限定する条項です。

期間短縮は前述のとおり、「引渡しから6か月以内に通知がない場合は責任を負わない」といった形で設定できます。制作物の性質によっては3か月でも通ることがあります。長期の責任を負いたくない作り手にとって、最も効果の大きい防御策です。

責任の範囲を限定する条項もあります。「追完請求にのみ応じ、損害賠償および解除は行わないものとする」といった形です。ただし、これは発注側にとって不利が大きいため、交渉で通るかどうかは力関係次第です。現実的な落としどころは、損害賠償額の上限を報酬額に設定することでしょう。

一方で、特約が無効になる場面もあります。代表的なのは、不適合を知りながら発注側に告げなかった場合です。この場合は免責特約の効力が認められません。知っていて隠したという事情があれば、契約の文言で守られることはないと考えてください。バグを把握したまま納品する、素材の権利関係に問題があると気づいていながら黙っている、こうした行為は契約条項の外側に自分を置く行為です。

また、相手が消費者である場合には、消費者契約法による制約が加わります。事業者の責任を全部免除する条項や、責任の有無を事業者が決められるとする条項は無効です。個人向けにサービスを提供する立場であれば、この点は押さえておく必要があります。

もう一つ、特約の書き方で気をつけたいのが、期間の起算点です。「引渡しから」と「不適合を知った時から」では意味がまったく違います。作り手に有利なのは「引渡しから」で、発注側に有利なのは「不適合を知った時から」です。条項に書かれた起算点を読み飛ばすと、短縮したつもりが短縮になっていないという事故が起きます。数字よりも起算点を先に見てください。

受注側が契約書で確認すべき5項目

ここまでを踏まえて、契約書のどこを見ればよいかを絞り込みます。

1つ目が、成果物の仕様です。何をもって契約の内容とするのかを特定する条項です。別紙の仕様書を引用する形でも構いませんが、その別紙が実際に添付されているかまで確認してください。「別途協議のうえ定める」と書かれているだけの契約書は、判断基準がない状態と同じです。

2つ目が、検収の基準と期限です。いつまでに、どの基準で合否を判断するのか。検収期限が書かれていないと、いつまでも合格にならない状態が続きます。「納品後10営業日以内に書面で合否を通知し、通知がない場合は合格とみなす」という条項が入っていれば、作り手側は安心できます。

3つ目が、契約不適合責任の期間です。法律の原則は不適合を知った時から1年の通知期間ですが、契約で「引渡しから6か月」などに短縮できます。ここを交渉できるかどうかが、長期のリスクを決めます。

4つ目が、損害賠償の上限です。報酬額を上限とする条項が入っているかを確認します。入っていなければ、入れてもらえるか交渉する価値があります。

5つ目が、修正回数の上限です。契約不適合責任とは別に、通常の修正対応をどこまで行うのかを決めておく条項です。「初回納品後の修正は2回まで、それ以降は別途見積り」と書いておくだけで、無限修正を防げます。

6つ目として、権利の帰属と第三者の権利についても見ておいてください。成果物に使った素材やフォント、ライブラリの権利関係に問題があった場合、それは権利に関する不適合として扱われます。この類型には1年の通知期間が適用されないため、責任を追及されうる期間が長くなります。素材の利用許諾の範囲を確認し、どの素材を使ったかの記録を残しておくことが、実務上の防御になります。有償素材の領収書やライセンス証明は、案件ごとのフォルダに一緒に入れておくのが確実です。

これらは特別な条項ではなく、実務で普通に使われているものです。発注書と契約書で最低限そろえるべき項目は、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにチェックリストの形でまとまっているので、次の契約から当てはめてみてください。

納品後にやり直しを求められたときの考え方

実際に「契約不適合だから直してほしい」と言われたときの判断の順番を書いておきます。

最初に確認するのは、指摘された事柄が契約の内容に含まれていたかどうかです。仕様書に書かれている基準を満たしていなければ、それは不適合であり、追完に応じるのが筋です。書かれていない事柄についての要望であれば、それは仕様変更であり、追加の作業として見積りを出す対象になります。この線引きを最初に伝えることが、無償のやり直しを防ぎます。

次に確認するのが、指摘の時期です。検収期限を過ぎてから言われたのか、期限内なのか。検収で合格した後の指摘であれば、合格の事実が自分側の材料になります。

3つ目が、指摘内容の記録です。口頭やチャットで断片的に言われた内容を、書面で一覧にまとめて相手に確認してもらいます。これをやると、指摘が整理される過程で半分ほどが落ちることが少なくありません。曖昧な不満が、具体的な項目に翻訳された時点で消えるからです。

4つ目に見るのが、指摘の中身が客観的な基準で判断できるものかどうかです。「表示が崩れている」「リンクが動かない」は客観的に検証できます。「印象が弱い」「もっと高級感を出してほしい」は主観です。客観的な指摘には速やかに対応し、主観的な指摘には基準の提示を求める。この使い分けをしないと、対応の工数が無限に伸びます。基準の提示を求めるときは、「参考にされている具体的な事例を1つ挙げていただけますか」と聞くのが早いです。相手も言葉にできていないことが多いので、事例を持ってきてもらうと話が進みます。

そして、応じる場合は範囲と期限を決めます。「この3点について、いつまでに修正して再納品する。それをもって検収完了とする」という形で合意を取る。終わりの見えないやり直しは、ここで止められます。

支払いが止まったまま長期化してしまった場合の手続と費用感は、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で整理されています。契約不適合を理由に支払いを保留されているケースは実際にあるので、選択肢を先に知っておくと落ち着いて対応できます。

20年この市場を見てきた立場からの観察

在宅ワークと業務委託の市場を長く運営してきた立場から言うと、契約不適合という言葉が出てくる案件には共通の前段があります。仕様を決めずに着手している。この一点です。改正民法は判断の基準を契約の内容に置いたので、契約の内容が空白なら、判断そのものができません。空白を埋めるのは、力の強い側の主張になります。

用語の理解に自信が持てないという声は、法務の実務者からも出ています。

いまだに瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いがわからず、自信が持てないままでいます。違いについての考え方や契約書をレビューする際の注意点などがありましたら教えてください。 出典: businessandlaw.jp

専門家に近い立場の人でもこう言うのですから、受注側が完璧に理解する必要はありません。必要なのは、契約の内容に書いてあることだけが基準になる、という1点を掴んでおくことです。その1点が分かっていれば、着手前に仕様を固めるという行動に自然に結びつきます。

運営者として見てきた限りでは、長く仕事が続いている受注者は、成果物の品質そのものよりも、合意の作り方が上手いです。着手前に仕様と検収基準を確認し、途中で認識のずれが出たらその時点で書面に残す。これを続けている人は、納品後に揉めません。技術の高さではなく、手続の丁寧さで差がついています。

もう一つ、間に入る会社が増えると、この合意形成が一気に難しくなります。実際に成果物を使う人と自分の間に複数の窓口があると、仕様が伝言で薄まり、検収の基準も誰が持っているのか分からなくなる。直接の関係を持てている受注者は、仕様の確認が1往復で終わるため、そもそも不適合の争いが起きにくい。同じ予算で動いても、間に挟まる数だけ受注側の手取りは薄くなりますが、薄くなるのは金額だけではありません。情報も同じように薄まります。この2つが同時に起きているのが、多重の委託構造の実態だと感じています。

よくある質問

Q. 瑕疵担保責任と契約不適合責任はどちらが適用されますか?

契約を締結した日で決まります。2020年3月31日までに締結した契約には旧民法の瑕疵担保責任、2020年4月1日以降に締結した契約には契約不適合責任が適用されます。これから結ぶ契約はすべて契約不適合責任の対象なので、実務で使うのはこちらだけです。

Q. 契約不適合責任で発注側が使える請求は何ですか?

追完請求(修補、代替物の引渡し、不足分の引渡し)、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除の4つです。旧法では損害賠償と解除の2つに限られていました。追完請求と代金減額請求には受注側の帰責事由が不要で、損害賠償請求には帰責事由が必要という違いがあります。

Q. 責任を追及できる期間はどれくらいですか?

種類または品質の不適合については、発注側が不適合を知った時から1年以内に通知すれば権利が保たれます。通知後の具体的な請求は一般の時効の枠内で行えます。この期間は任意規定なので、契約で引渡しから6か月などに短縮できます。数量や権利の不適合には1年の通知期間は適用されません。

Q. 納品後に仕様外の修正を求められたらどう断ればよいですか?

まず指摘内容が契約の内容に含まれていたかを確認します。仕様書に書かれていない要望であれば契約不適合ではなく仕様変更なので、追加作業として見積りを出す対象です。その線引きを最初に文書で伝え、応じる範囲と期限、それをもって検収完了とすることを合意しておくと、終わりのないやり直しを防げます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月5日最終更新:2026年9月24日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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