契約不適合責任とは|納品物に不備があったとき発注者が請求できる内容 2026

長谷川 奈津
長谷川 奈津
契約不適合責任とは|納品物に不備があったとき発注者が請求できる内容 2026

この記事のポイント

  • 契約不適合責任とは何かを
  • 外注の発注者目線でわかりやすく解説
  • 納品物に不備があったとき請求できる4つの権利

先日、あるEC事業者さんから相談を受けました。「商品ページのデザインを外注して納品してもらったんですが、指定した内容と違う仕上がりで…。もう報酬を払ってしまったんですが、直してもらうことはできますか?」と。結論から言うと、できます。しかもこれ、法律上きちんと根拠のある権利なんです。その根拠が、今日お話しする「契約不適合責任」です。

「契約不適合責任」という言葉、聞いたことはあっても、いざ自分がトラブルに直面したときに「何を・いつまでに・どう請求できるのか」を正確に説明できる発注者は、実はほとんどいません。これ、知らない人が本当に多いんです。そして知らないまま「もう払っちゃったし…」「揉めたくないし…」と泣き寝入りしてしまう。すごくもったいない。契約不適合責任を理解しておけば、納品物に不備があったとき、あなたは修補・代金減額・損害賠償・契約解除という4つのカードを持てます。

この記事では、Webサイト制作・デザイン・記事作成・システム開発などを外部へ発注する立場の方に向けて、契約不適合責任の基本から、実際にトラブルが起きたときの対応、そして「そもそもトラブルを防ぐための契約書の書き方」まで、2026年時点の民法をベースに具体的に解説します。法律はあなたの味方です。

契約不適合責任とは?発注者が知っておくべき基本

契約不適合責任とは、つまり「納品されたモノやサービスが、契約で決めた内容と合っていなかったとき、依頼した側(発注者)が受注者に対して責任を追及できる」という民法上のルールです。2020年4月1日に施行された改正民法によって、それまでの「瑕疵(かし)担保責任」から名前も中身も変わりました。

もう少し噛み砕きます。あなたが「白背景で、商品が中央に大きく写った写真を10枚」と発注したのに、納品されたのが「グレー背景で、商品が隅に小さく写った写真が8枚」だったとします。これは明らかに「契約の内容に適合していない」状態です。この「適合していない」状態のことを法律用語で「契約不適合」と呼び、この場合に受注者が負う責任が「契約不適合責任」なのです。

ここで大事なのは、契約不適合責任は不動産や住宅の売買だけの話ではないということ。民法上の「請負契約」や「売買契約」全般に適用されるため、Web制作・システム開発・デザイン・動画編集・記事執筆といった、あなたが日常的に外注しているあらゆる成果物にも当てはまります。「イメージと違う」で終わらせず、「契約内容と適合しているか」という物差しで判断できるようになると、発注者としての交渉力が一気に上がります。

契約不適合の判断基準は、あくまで「契約の内容」です。ここが決定的に重要なので繰り返します。発注者の頭の中にあった理想像ではなく、契約書・仕様書・発注書・メールでのやり取りなどで「合意した内容」に照らして、合っているかどうかを判断します。つまり、発注時にどれだけ具体的に条件を詰めておいたかが、後々の請求できる・できないを分けるのです。この点は記事の後半で詳しく触れます。

「瑕疵担保責任」との違いを発注者目線で整理する

2020年の民法改正前は「瑕疵担保責任」という言葉が使われていました。今でも古い契約書やベテランの実務家の会話には登場するので、違いを押さえておくと安心です。

一番大きな違いは、責任の「性質」です。旧来の瑕疵担保責任は「法律が特別に定めた責任(法定責任説)」という位置づけで、隠れた欠陥(買主が気づけなかった欠陥)に限定される、といった解釈上の制約がありました。これに対して契約不適合責任は「債務不履行責任の一種」として整理されました。

一方、契約不適合責任では債務不履行責任の一種として規定されているため、実際に契約を履行する物件の引き渡し時点までに契約内容と合致しない問題が生じた場合にも、売主は責任を負うことになりました。これにより、売主の責任範囲が引渡し時点まで拡大され、物件の状態に関するトラブルに対して買主がより確実に保護される仕組みとなっています。さらに、引渡し後に問題が発覚した場合でも、合理的な期間内に通知することで、買主は修補や代金減額、損害賠償を求めることが可能です。 出典: matsuya-iedepa.jp

つまり発注者にとってのメリットは、「隠れた欠陥かどうか」を問わず、契約内容に合っていない状態そのものを問題にできるようになったこと。そして請求できる手段が「4つの権利」に整理され、以前より使いやすくなったことです。外注で言えば、「見ればわかる不備」でも「後から発覚した不備」でも、契約内容に照らして不適合であれば責任追及の対象になる、と理解しておけば実務上は十分です。

もう一点、地味ですが実務で効いてくる違いがあります。旧法では「契約解除は瑕疵によって契約の目的を達成できない場合に限る」など、要件が厳しめでした。改正後は、不適合の程度に応じて代金減額という中間的な選択肢が明文化されたため、「全部やり直しか、泣き寝入りか」の二択ではなく、「この部分だけ値引きしてもらう」という現実的な落としどころを取りやすくなっています。

納品物に不備があったとき発注者が請求できる4つの権利

契約不適合が判明したとき、発注者が受注者に対して行使できる権利は、民法上おおむね4つに整理されています。ここが本記事の核心です。それぞれ、どんなときに使うべきかを具体例つきで見ていきます。

追完請求(修補・代替物の引き渡し・不足分の引き渡し)

追完請求とは、つまり「契約通りにきちんと仕上げ直してください」と求める権利です。民法562条に定められています。具体的には、(1)欠陥を直す「修補」、(2)別の完全なものに取り替える「代替物の引き渡し」、(3)足りない分を追加で納める「不足分の引き渡し」の3つの形があります。

外注の現場で一番よく使うのが、この追完請求です。たとえばWebサイトを発注して「スマホで表示が崩れる」「問い合わせフォームが送信できない」といった不具合があれば、まずは「直してください(修補)」と求めるのが自然な流れです。記事を10本発注して8本しか納品されなければ「残り2本を納品してください(不足分の引き渡し)」となります。

ここで発注者が知っておくべきポイントは、追完の方法は原則として発注者が選べるということ。ただし、受注者は発注者に不相当な負担をかけない範囲で、発注者が求めた方法と異なる方法で追完できる場合があります(民法562条ただし書き)。実務では「まず直してもらう」で話が進むことが多いので、あまり神経質になる必要はありませんが、「こちらには追完方法を指定する権利がある」と知っているだけで交渉のトーンが変わります。

代金減額請求

代金減額請求は、つまり「不備がある分、その割合だけ値引きしてください」と求める権利です(民法563条)。原則として、まず相当の期間を定めて追完を催告し、それでも受注者が応じない場合に行使できます。ただし、追完が不能な場合や、受注者が追完を明確に拒否した場合などは、催告なしで直ちに減額請求できます。

これは実務で非常に使い勝手のいいカードです。たとえば動画編集を5万円で発注し、指定したテロップの一部が入っていなかったとします。全部やり直すほどでもないけれど、そのまま満額払うのも納得がいかない。こういうとき「不足しているテロップ分を考慮して、1万円減額してもらえませんか」と交渉するのが代金減額請求の考え方です。

減額の割合は「契約に適合していれば持っていたはずの価値」と「実際に納品されたものの価値」の差で決まるのが原則ですが、実務では厳密な計算というより当事者間の合意で落ち着くことがほとんどです。ここでも「揉めたら泣き寝入り」ではなく「減額という中間的な解決策がある」と知っていることが、あなたを守ります。

損害賠償請求

損害賠償請求は、契約不適合によって発注者が実際に被った損害を、金銭で埋め合わせてもらう権利です(民法564条、415条)。追完請求や代金減額請求と併せて行使できるのが特徴です。つまり「直してもらったうえで、それとは別に発生した損害も賠償してください」と言えるわけです。

具体例を挙げます。ECサイトのセールに合わせてバナー制作を発注したのに、納品されたバナーにリンク切れがあり、セール初日にお客様が商品ページへ飛べなかった。その結果、機会損失が発生した。このケースでは、修補(リンクを直す)に加えて、リンク切れによって生じた損害の賠償を求める余地があります。

ただし、注意が必要です。契約不適合責任における損害賠償は、受注者に帰責事由(つまり落ち度)があることが要件とされています。また、損害の範囲や因果関係の立証は発注者側が行う必要があり、実務上ここが一番ハードルが高い。「いくら損したか」を客観的に示すのは簡単ではありません。※金額が大きいケースや、機会損失など立証が難しい損害を請求したい場合は、弁護士に相談することを強くおすすめします。

契約解除

契約解除は、つまり「この契約はもうなかったことにして、支払ったお金を返してください」と求める権利です(民法564条、541条・542条)。4つの権利のなかで最も強力ですが、その分、行使できる場面は限られます。

原則として、まず相当の期間を定めて追完を催告し、それでも履行されない場合に解除できます(催告解除)。一方で、不適合の程度が重大で契約の目的を達成できないことが明らかな場合などは、催告なしで直ちに解除できます(無催告解除)。

外注で契約解除まで至るのは、たとえば「システム開発を発注したが、根本的に仕様を満たしておらず、直しようがない」「納期を大幅に過ぎても納品されず、もはや発注した意味がない」といった深刻なケースです。ここで発注者が誤解しがちなのは、「不備が一つでもあれば解除できる」という思い込み。改正民法では、軽微な不適合では解除できないと明記されています。つまり、些細な不備を理由に契約全体を白紙に戻すことはできない。この場合はまず追完請求や代金減額で対応するのが筋です。

契約不適合責任を追及できる期間に要注意

発注者が絶対に押さえておくべきなのが「期間制限」です。せっかく請求できる権利があっても、期限を過ぎると使えなくなってしまう。これ、知らずに損する人が本当に多いところです。

「不適合を知ってから1年以内」の通知期間

民法566条は、契約不適合のうち「種類または品質」に関する不適合について、買主(発注者)が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主(受注者)に通知しないと、原則として権利を行使できなくなると定めています。ここでのポイントは、「1年以内に請求を完了させる」のではなく「1年以内に通知する」であること。まずは「こういう不適合がありました」と受注者へ知らせておけば、権利を保全できます。

つまり、納品物の不備に気づいたら、まずはメールでもチャットでも構わないので、「◯月◯日に納品いただいた成果物に、△△という契約内容との不一致がありました」と記録に残る形で伝えることが第一歩です。口頭だけだと「言った・言わない」の水掛け論になりがちなので、必ず文字で残してください。これ、本当に大事です。

なお、「数量」に関する不適合や、この後で触れる消滅時効については、この1年の通知期間の制約は及ばないと解釈されています。ただ、実務上は「不備に気づいたらすぐ文字で通知」を徹底しておけば、細かい区別を気にする必要はほとんどありません。

消滅時効との関係

1年の通知期間とは別に、契約不適合に基づく権利にも消滅時効が適用されます。改正民法166条により、債権は原則として「権利を行使できることを知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」で時効消滅します。つまり、通知期間の1年をクリアしても、時効を過ぎると結局は権利を失います。

外注のトラブル対応で言えば、「不備に気づいてから1年以内に通知」し、その後は放置せず「速やかに追完や減額の交渉に入る」のが鉄則です。数年単位で塩漬けにすると、時効のリスクが現実味を帯びてきます。特に金額の大きい発注では、対応が長引きそうなら早めに専門家へ相談し、時効の完成猶予(内容証明の送付など)の手続きを取っておくと安心です。

契約書で期間を短く定められている場合

見落としがちなのが、契約書で法律の原則よりも短い期間が定められているケースです。受注者側が用意した契約書には、「契約不適合の通知は納品後14日以内」「契約不適合責任を負う期間は納品後3ヶ月とする」といった短縮条項が入っていることがあります。

これらの特約は、民法の任意規定を当事者間の合意で修正するものとして、原則有効です。つまり、あなたが署名した契約書に「通知は納品後14日以内」と書いてあれば、法律の1年ではなく14日が適用される可能性が高い。契約書にサインする前に、「契約不適合責任」「瑕疵担保」「保証」といった見出しの条項は必ず読み込んでください。ここを読まずにサインして、後から「1年あると思っていたのに」と気づくパターンが後を絶ちません。

発注者が契約不適合責任を「使える」状態にする契約書の作り方

ここまで読んで、「請求できる権利があるのはわかった。でも、どうすれば確実に使えるの?」と思った方も多いはず。答えはシンプルで、「発注前に契約内容を具体的に決めておくこと」に尽きます。契約不適合責任は「契約内容との不一致」を問題にする制度なので、契約内容が曖昧だと、そもそも「不適合かどうか」を判断できないのです。

仕様・要件を「契約の内容」として明文化する

一番のポイントは、あなたが期待する成果物の条件を、頭の中ではなく文書に落とし込むことです。Webサイトなら「対応ブラウザ」「レスポンシブ対応の有無」「ページ数」「搭載する機能」、記事なら「文字数」「見出し構成」「独自性・コピペチェックの基準」、デザインなら「納品形式(AI/PSD/PNG等)」「解像度」「修正回数」といった具体的な条件です。

これらを発注書・仕様書・見積書のいずれかに明記し、受注者と合意しておけば、それが「契約の内容」になります。逆に言えば、ここに書いていない条件は「不適合」の判断基準になりません。「なんとなくこういうものが欲しかった」は、残念ながら契約不適合責任では守られないのです。契約書・仕様書・企画書といった発注時のドキュメント整備そのものを外注したい場合は、契約書・資料・企画書作成のお仕事のように、書類作成を専門に請け負う人材へ依頼するのも一つの手です。要件定義がしっかりしているほど、後のトラブルは減ります。

検収(受け入れ検査)の基準と期間を決めておく

請負契約では「検収(けんしゅう)」、つまり納品物が要件を満たしているかを発注者が確認するプロセスがあります。この検収の基準と期間を契約書に定めておくと、トラブル対応が格段にスムーズになります。

たとえば「納品後7営業日以内に検収を行い、不適合があれば書面で通知する。期間内に通知がない場合は検収合格とみなす」といった条項です。発注者にとっては、検収期間中にしっかり成果物をチェックする責任が生じますが、逆にこの期間内なら安心して指摘・修正依頼ができる、という枠組みが手に入ります。ビジネス文書として契約書や覚書を整える作業自体を外注したいなら、ビジネス文書・契約書作成のお仕事を参考に、法務書類に慣れた人材へ相談すると確実です。

修正回数と追加費用の線引きを明確にする

外注トラブルで意外と多いのが「修正がいつまでも終わらない」問題です。これは契約不適合責任というより、「どこまでが契約範囲内の追完で、どこからが追加発注(有償)か」の線引きが曖昧なことが原因です。

契約書には「修正は◯回まで無償、それ以降は1回あたり◯円」「契約内容との不一致(=契約不適合)の修正は無償だが、当初仕様にない新たな要望は別途見積もり」といった形で、無償修正と有償対応の境界を書いておきましょう。これがあると、「イメージと違うから何度でも直して」という発注者の言い過ぎも、「契約通りなのに追加対応させられる」という受注者の不満も、どちらも防げます。公平な線引きは、結果的に良い受注者との長期的な関係につながります。

フリーランスへ直接依頼する発注者が知っておくべき実務のコツ

ここからは、私が法務相談の現場で見てきた「発注者側の失敗と気づき」を、より実務的な視点でお話しします。契約不適合責任は「いざというときの保険」ですが、そもそも保険を使わずに済むのが一番。そのための知恵です。

私が発注側で失敗した「安さだけで選んだ」ケース

正直に告白すると、私自身、自分の事務所のロゴ制作を外注したとき、見積もりの安さだけで受注者を選んで痛い目に遭ったことがあります。相場より明らかに安い金額に飛びついたのですが、いざ納品されたものは、こちらが伝えたイメージとかけ離れていて、しかも修正回数の取り決めをしていなかったために「これ以上は追加料金です」と言われてしまいました。

このとき痛感したのは、「安さ」は契約内容の具体性とセットでなければ意味がない、ということ。事前に「修正は3回まで」「納品形式はAIデータ込み」と決めていれば防げたトラブルでした。結局、契約内容が曖昧だと、契約不適合責任というカードすら切りにくくなる。安く発注したいなら、なおさら要件を細かく詰めるべきなのです。これ、発注者の多くが逆に考えているんですよね。「安いから細かいことは言えない」ではなく「安いからこそ条件を明確に」が正解です。

仲介手数料と「直接取引」のコスト構造

外注のコストを考えるうえで、発注者が意外と見落としているのが「中間マージン」の存在です。制作会社や代理店を経由して外注すると、実際に手を動かすクリエイターへ支払われる報酬に加えて、仲介側の管理費・マージンが上乗せされます。業界や案件によって幅はありますが、この中間コストが最終的な発注額の相当部分を占めることも珍しくありません。

一方で、フリーランスへ直接依頼すれば、この中間マージンがかからない分、同じ予算でより多くの作業を頼めたり、同じ作業をより安く発注できたりします。手数料0%で直接つながれるマッチングの仕組みを使えば、発注者は費用を抑えられ、受注者は手取りが厚くなる。つまり双方が得をする構造です。もちろん、直接取引は契約や進行管理を自分で担う必要があるので、だからこそ本記事で解説してきた「契約内容の明文化」「検収基準」「契約不適合責任の理解」が効いてくるわけです。

トラブルを未然に防ぐ、身元確認と支払い条件

直接取引で発注者が気をつけるべきは、相手の身元と実績の確認、そして支払い条件です。連絡先が曖昧で身元がはっきりしない相手や、契約前に全額前払いを強く求めてくる相手には慎重になってください。着手金と納品後の分割払いにする、成果物を確認してから残金を支払う、といった支払い設計は、契約不適合責任を実際に行使する場面でも効いてきます。全額支払い後だと、代金減額の交渉がしにくくなるからです。

ここで一点、発注者側の義務にも触れておきます。2024年に施行されたフリーランス保護新法により、発注者は成果物の受領日から原則60日以内に報酬を支払う義務を負います。「イメージと違う」を理由にした不当な支払い拒否は禁止されています。つまり、契約不適合責任は発注者の武器であると同時に、「契約に適合した納品」に対しては発注者もきちんと支払う義務がある、という双方向のルールなのです。この点は発注者として必ず理解しておいてください。

業種別に見る契約不適合責任のポイントと注意点

契約不適合責任の考え方は共通ですが、外注する業務の種類によって、実務上気をつけるポイントは少しずつ違います。ここでは代表的な外注業務ごとに、発注者が押さえるべき勘所を整理します。

システム・ソフトウェア開発の場合

システム開発は、契約不適合責任のトラブルが最も起きやすい分野の一つです。理由は「完成した状態」の定義が曖昧になりがちだから。「ログインできる」という要件一つとっても、想定される全パターンで正常動作するのか、特定条件下でのエラーは許容範囲なのか、認識がずれやすい。

対策は、要件定義書と受け入れテスト(検収テスト)の項目を、発注前にできる限り具体化しておくことです。「この操作をしたら、この結果になる」というテストケースを一覧にしておけば、それが契約内容になり、不適合の判断基準になります。開発者やエンジニアへの発注を検討している方は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のようなカテゴリで、技術領域に強い人材の相場感を掴んでおくとよいでしょう。技術者のスキル水準を測る指標として、CCNA(シスコ技術者認定)のような資格の有無を確認するのも一つの目安になります。エンジニアへ支払う報酬の相場を知りたければ、ソフトウェア作成者の年収・単価相場も参考になります。

ライティング・記事制作の場合

記事やコンテンツの発注では、「品質」という主観が入りやすい要素が不適合の争点になりがちです。ここでの対策は、品質基準をできるだけ客観的な指標に落とし込むこと。「文字数」「見出し構成」「コピペチェックツールで一致率◯%以下」「指定キーワードの含有」など、数値やルールで測れる条件を契約内容に含めておきましょう。

「文章のうまさ」のような主観的な要素は不適合の主張が難しいので、事前にトンマナ(トーン&マナー)のサンプルや参考記事を共有しておくと、認識のずれを減らせます。ライターへの発注相場を把握したい場合は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場が役立ちます。また、ビジネス文書の作成品質を担保する指標として、ビジネス文書検定のような資格を持つ人材を選ぶのも、書類系の外注では安心材料になります。

デザイン・クリエイティブの場合

デザインは「イメージと違う」トラブルの最頻出分野です。ここで発注者が肝に銘じるべきは、主観的な「好み」は契約不適合責任では守られにくいということ。「なんとなく気に入らない」は不適合ではありません。だからこそ、参考デザイン・カラー指定・NG要素・納品形式・修正回数を、発注時に文書で固めておくことが決定的に重要です。デザインの品質トラブルの多くは、法律論に持ち込む前の「発注の仕方」で防げます。

運営者視点で見る、契約不適合責任が本当に効く場面

ここで、フリーランス・在宅ワークの市場を20年見てきた運営者の立場から、少し俯瞰した観察をお伝えします。契約不適合責任という制度は確かに強力ですが、実際にこの権利を「法的手段」として発動する場面は、外注全体から見ればごくわずかです。多くのトラブルは、その手前の「対話」で解決しています。

20年この市場を見てきて感じるのは、長く良い外注関係を築いている発注者ほど、契約不適合責任を「振りかざす武器」としてではなく、「お互いの認識をそろえるための共通言語」として使っているということです。「契約内容と違う」という物差しがあるからこそ、感情的に「気に入らない」とぶつけるのではなく、「ここが当初の仕様と違うので、この部分だけ調整してもらえますか」と冷静に伝えられる。この落ち着いたコミュニケーションが、結果的に受注者との信頼を守り、次もまた気持ちよく仕事を頼める関係につながっているのです。

もう一つ、運営者として強く感じるのは、中間マージンが乗らない直接取引の価値です。仲介を挟まない分、同じ予算でも発注者はより多くを頼め、受け手は手取りが厚くなる。長く続く発注者ほど、この「双方が得をする」関係を大切にしていて、単発の値切り合戦ではなく「この人に任せると安心」という関係づくりに時間を使っています。契約不適合責任の理解は、その安心の土台です。ルールを知っている発注者は、いざというときに慌てず対応できるので、受注者から見ても「きちんとした発注者」として信頼される。法律の知識は、値切りの道具ではなく、良い関係を長く続けるための土台なのだと、現場を見ていて実感します。

独自データから見る、外注トラブルを減らすための発注設計

在宅ワークやフリーランスへの外注は、この数年で確実に一般化しました。個人事業主や中小企業が、SNS運用・記事作成・デザイン・バックオフィス業務などを外部へ切り出す動きは、もはや特別なことではありません。市場全体で見れば、発注のハードルが下がった一方で、「契約書を交わさずに、チャットのやり取りだけで発注する」ケースも増えています。これが、契約不適合責任をめぐるトラブルの温床になっています。

私たちが日々見ている外注マッチングの現場でも、トラブルに発展する案件には共通点があります。それは「発注時に成果物の条件を具体的に決めていない」こと。逆に、要件を明文化し、検収基準を決め、修正回数を取り決めている発注者の案件は、そもそも大きなトラブルになりにくい。契約不適合責任という制度は、このドキュメント整備の延長線上にある「最後の保険」なのです。保険を使わずに済むよう、入り口の発注設計に力を入れるのが、コストと手間の両面で最も賢い選択だと言えます。

発注設計を整えるうえで、関連する周辺知識も押さえておくと視野が広がります。たとえば法人としての契約実務に関心があれば、高級賃貸マンションを法人契約して節税!経営者の住居を社宅にする損金算入ルールと審査対策のような法人契約の記事が参考になりますし、書類作成そのものを外注する費用感を知りたいなら、契約書・資料・企画書作成の副業で稼ぐ方法と案件相場で受注者側の相場観を裏側から把握できます。フリーランスを継続的なパートナーとして迎える発展形を考えるなら、執行役員と取締役の違いとは?報酬・責任の範囲とフリーランスからの登用事例も、外部人材との関係設計を考えるヒントになるはずです。

最後に、発注者としての心構えをもう一度だけ。契約不適合責任は、あなたが泣き寝入りしないための正当な権利です。納品物に契約内容との不一致があれば、修補・代金減額・損害賠償・契約解除という4つのカードを、正しい期間内に、正しい手順で切ることができます。そしてその権利を確実に使えるようにする鍵は、発注前の「契約内容の具体化」にあります。曖昧なまま発注して後で揉めるより、少し手間をかけて条件を文書化しておくこと。それが、あなたと受注者の双方を守る最善策です。法律はあなたの味方です。困ったときは一人で抱え込まず、金額が大きいケースや解釈が難しいケースでは、迷わず弁護士や行政書士といった専門家に相談してください。

なお、関連テーマを扱った業務委託契約の契約不適合責任の期間|納品後どこまで請求できるか 2026もあわせて参考にしてください。

よくある質問

Q. 報酬を全額支払った後でも、契約不適合責任は請求できますか?

はい、支払い後でも請求できます。契約不適合責任は代金支払いの有無に関わらず、契約内容との不一致があれば追完・代金減額・損害賠償・契約解除を求められます。ただし支払い後は代金減額の交渉がしにくくなるため、可能なら成果物を検収してから残金を支払う支払い設計が安全です。不適合に気づいたら1年以内に書面で通知しましょう。

Q. 「イメージと違う」という理由で修正や返金を求められますか?

主観的な「イメージと違う」だけでは請求は難しいです。契約不適合責任はあくまで「契約で合意した内容」との不一致を問題にする制度だからです。逆に言えば、発注時に仕様・色・形式・修正回数などを文書で具体的に決めておけば、それと違う納品は不適合として正当に請求できます。発注前の条件明文化が鍵になります。

Q. 契約不適合責任を追及できる期間はどれくらいですか?

種類・品質の不適合は、原則として発注者が不適合を知った時から1年以内に受注者へ通知する必要があります。この期間内に「請求完了」ではなく「通知」すれば権利を保全できます。別途、消滅時効(知った時から5年など)もあります。ただし契約書で「納品後14日以内」など短い期間が定められている場合はそちらが優先されるため、契約書の確認が重要です。

Q. 契約書がなくてもチャットのやり取りだけで請求できますか?

契約書がなくても、メールやチャットで合意した内容があれば「契約の内容」として契約不適合の判断材料になります。ただし口頭やあいまいなやり取りだけだと「何が契約内容か」を立証しにくく、請求が難しくなります。発注時の条件はできるだけ文字で残し、納品物の不備に気づいたら記録に残る形で通知することをおすすめします。

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公開:2026年4月8日最終更新:2026年7月31日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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