民法改正で請負契約の瑕疵担保責任はどう変わったか|契約不適合責任の要点

@SOHO編集部
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民法改正で請負契約の瑕疵担保責任はどう変わったか|契約不適合責任の要点

この記事のポイント

  • ✓2020年4月の民法改正で
  • ✓請負契約の瑕疵担保責任は契約不適合責任に改められました
  • ✓注文者ができる4つの請求

ウェブサイトの制作、システムの開発、デザイン、原稿の執筆。在宅で受ける仕事の多くは、「仕事を完成させて、その結果に対して報酬を受け取る」という形の請負契約です。納品した後に「不具合がある」「頼んだものと違う」と言われたとき、受注した側はどこまで直す責任があるのか。契約書に「瑕疵担保責任」と書かれているが、今の法律ではどう読めばよいのか。そう迷って調べている方も多いはずです。

結論から書きます。2020年4月1日に施行された改正民法で、請負契約の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に改められました。納めた成果物が契約の内容に合っていないとき、注文者は、直してもらうこと(追完)、報酬を減らすこと、損害の賠償、契約の解除の4つを求めることができます。その期間は、改正前の「引き渡しから1年」ではなく、注文者が不適合を「知った時から1年以内に通知」する形に変わりました。この記事では、改正の前後で何が変わったのかを条文に沿って確かめ、受注する側が契約書で確かめるべき条項と、指摘を受けたときの対応を整理します。

請負契約とは:仕事の完成に報酬が支払われる契約

最初に、請負契約とは何かを確かめておきます。民法は請負を次のように定めています。

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。 出典: laws.e-gov.go.jp

言い換えると、請負契約では、受注した側(請負人)は「仕事を完成させること」を約束し、注文した側(注文者)は「完成した結果」に対して報酬を払います。ウェブサイトを作って納める、記事を書いて納める、ロゴを作って納めるといった仕事は、典型的な請負です。

これと区別されるのが、準委任契約です。準委任は、仕事の完成ではなく、事務の処理そのものを引き受ける契約です。システムの運用保守、相談への対応、時間単位で働く業務の手伝いなどは、準委任にあたることが多くあります。準委任では、原則として完成の責任を負わず、事務を処理するときに専門家として求められる注意を払う義務(善管注意義務)を負います。

この区別は、この記事のテーマである契約不適合責任にも関係します。契約不適合責任は、主に「完成した物や成果」が契約に合っているかを問う仕組みなので、請負契約で特に問題になります。契約書のタイトルが「業務委託契約書」となっていても、中身が請負なのか準委任なのかで、受注した側の責任の範囲が変わります。自分の契約がどちらにあたるかは、報酬が「成果物」に対して払われるのか、「作業の時間や期間」に対して払われるのかで、おおよその見当がつきます。

改正前の「瑕疵担保責任」はどんな仕組みだったか

改正前の民法では、請負の仕事に欠陥(瑕疵)があったときの責任を、請負の章の中で独自に定めていました。瑕疵とは、本来あるべき品質や性能が欠けていることを指す法律の言葉です。

改正前の仕組みを受注する側の目線で並べると、次のようになっていました。

注文者は、仕事の目的物に瑕疵があるとき、相当の期間を定めて修補(直すこと)を求めることができました。修補に代えて、または修補とあわせて、損害の賠償を求めることもできました。瑕疵のために契約の目的を達することができないときは、契約を解除することもできましたが、建物などの土地の工作物については、解除はできないとされていました。

責任を問える期間は、原則として「仕事の目的物を引き渡した時から1年以内」でした。建物などの土地の工作物については、引き渡しから5年、石造りなど堅固なものは10年と、別の期間が定められていました。

この仕組みには、分かりにくい点がありました。売買の瑕疵担保責任とは別の仕組みとして定められていたこと、「瑕疵」という言葉の意味が条文からは分かりにくいこと、期間が引き渡しから一律に数えられるため、欠陥に気づくのが遅れると責任を問えなくなることなどです。2020年の改正は、こうした点を整理し、売買と請負で共通のルールにまとめ直しました。

2020年の改正で何が変わったか:全体像

改正の要点を、受注する側に関係が深いものに絞って表にまとめます。

比べる点 改正前(瑕疵担保責任) 改正後(契約不適合責任)
責任の基準 目的物の「瑕疵」 種類や品質が「契約の内容に適合しない」こと
注文者が求められること 修補、損害賠償、解除 追完(修補など)、報酬の減額、損害賠償、解除
報酬の減額 請負には定めがなかった 売買の規定を準用して求められる
建物の解除 できなかった 一般のルールで判断される
期間の数え方 引き渡しから1年(建物は5年・10年) 不適合を知った時から1年以内に通知
規定の置き場所 請負の章に独自の規定 売買の規定を有償契約に準用

一番大きな変化は、責任の基準が「瑕疵」から「契約の内容に適合しない」に変わったことです。言い換えると、「一般的に見て欠陥があるか」ではなく、「当事者が契約で決めた内容に合っているか」で判断されるようになりました。契約で何を約束したかが、これまで以上に重要になったということです。

もう1つの大きな変化は、規定の置き場所です。改正後の民法は、売買の契約不適合責任の規定を、請負など売買以外の有償契約にも当てはめる(準用する)形をとっています。民法559条は「この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する」と定めており、請負の章には、請負に特有の点(注文者の指図による不適合、期間の制限など)だけが残されました。

改正民法は2020年4月1日から施行されています。施行日より前に結ばれた契約には、原則として改正前の民法が適用されます。何年も前から続いている取引で、古い契約書をそのまま使っている場合は、どちらのルールが当てはまるかに注意が必要です。

注文者が求められる4つのこと

改正後の民法で、納めた成果物が契約に合っていないときに注文者が求められることは、4つあります。売買の条文を請負に当てはめて読むと、次のようになります。

追完の請求

追完とは、契約どおりの状態にすることです。条文は、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないとき、修補、代替物の引き渡し、不足分の引き渡しによる「履行の追完」を求めることができると定めています。在宅の仕事で言えば、プログラムの不具合を直す、仕様と違うデザインを作り直す、足りないページを追加するといったことです。

条文には、受注する側にとって大事なただし書きがあります。注文者に不相当な負担をかけないときは、注文者が求めた方法と違う方法で追完することができる、というものです。たとえば、注文者が「全部作り直してほしい」と言ってきても、一部の修正で契約どおりの状態にできるなら、修正で対応できる余地があります。

報酬の減額の請求

注文者が相当の期間を定めて追完を求めたのに、その期間内に追完されないときは、注文者は不適合の程度に応じて報酬の減額を求めることができます。追完ができない場合や、受注者が追完をはっきり拒んだ場合などは、催告なしにすぐ減額を求めることもできます。改正前の請負には、この減額の仕組みがありませんでした。

損害賠償の請求

不適合によって注文者に損害が生じた場合は、損害の賠償を求めることができます。改正後は、債務不履行の一般のルール(民法415条)に従って判断されます。受注者の責めに帰することができない事由による場合は、賠償の責任を負いません。

契約の解除

追完を求めても応じない場合などには、注文者は契約を解除することができます。これも、解除の一般のルール(民法541条・542条)に従います。不履行が契約や取引の社会通念に照らして軽微なときは、催告をしても解除できないと定められています。

この4つのうち、注文者が最初に求めるのは、通常は追完です。受注する側としても、まずは追完で契約どおりの状態にすることが、減額や解除へ進むのを防ぐ一番の方法になります。

期間の制限:知った時から1年以内の通知

改正で受注する側に影響が大きいのが、責任を問える期間の変更です。改正後の民法637条は、次のように定めています。

前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。 出典: laws.e-gov.go.jp

ポイントは2つです。1つ目は、数え始めが「引き渡した時」から「注文者が不適合を知った時」に変わったことです。注文者が不具合に気づくのが納品から2年後なら、そこから1年以内であれば通知できることになります。受注する側から見ると、責任を問われうる期間が、引き渡しからの一律1年より長くなる可能性があります。

2つ目は、1年以内にしなければならないのが「通知」であることです。改正前は、1年以内に修補や損害賠償の請求そのものをする必要があるとされていました。改正後は、不適合があることを請負人に知らせれば足ります。通知をしておけば、具体的な請求はその後でもかまいません。

ただし、通知をしたからといって、いつまでも請求できるわけではありません。請求する権利には、債権の消滅時効の一般のルールがかかります。民法166条は、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年で、債権が時効によって消えると定めています。

また、637条の2項には例外があります。引き渡しの時に、請負人が不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかった場合は、1年の期間の制限は適用されません。不具合に気づいていながら黙って納品すると、期間の制限による保護を受けられなくなるということです。

注文者の指図や材料が原因の不適合は責任を問われない

受注する側にとって知っておきたいのが、民法636条です。請負人の担保責任の制限という見出しの条文で、要点は次のとおりです。

注文者は、注文者が提供した材料の性質や、注文者が与えた指図によって生じた不適合を理由として、追完、報酬の減額、損害賠償、解除のいずれも求めることができません。ただし、請負人がその材料や指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りではありません。

在宅の仕事に当てはめると、たとえば次のような場面です。注文者から渡された原稿の数字が間違っていて、そのとおりに作ったチラシの数字が間違っていた。注文者が指定したプラグインを使ったら、表示が崩れた。注文者が「この色で」と指定した配色が、読みにくいと後で言われた。こうした不適合は、原則として受注者の責任ではありません。

ただし、ただし書きに注意が必要です。受注者が「この指定では不具合が出る」と分かっていたのに黙っていた場合は、責任を免れることができません。専門家として気づくべきことに気づいたら、文面で注文者に伝え、そのうえで指示を確かめておくことが大切です。「ご指定のプラグインは、現在のテーマとの組み合わせで表示が崩れる可能性があります。このまま進めてよろしいでしょうか」と送り、返事を保存しておけば、後で責任を問われたときの備えになります。

契約書で確かめる条項

民法の契約不適合責任の規定は、多くが当事者の合意で変えることができる規定です。つまり、契約書に別の定めがあれば、原則として契約書の定めが優先されます。だからこそ、契約書の条項を読むことが重要になります。

何が「契約の内容」かを決める条項

契約不適合責任の基準は「契約の内容に適合しているか」です。仕様書、要件定義書、発注のメール、打ち合わせの議事録など、何が契約の内容になるのかが契約書でどう定められているかを確かめます。仕様があいまいなまま仕事を始めると、後で「頼んだものと違う」と言われたときに、何が契約の内容だったのかで争いになります。

検収の条項

納品の後、注文者が一定の期間内に成果物を確かめ(検収)、合格と判断したら引き渡しが完了する、という条項がよくあります。検収の期間と、期間内に連絡がなければ合格とみなす定めがあるかを確かめます。合格とみなす定めがないと、注文者が確認を後回しにしている間、引き渡しが完了したのかどうかがあいまいなまま時間が過ぎていきます。検収の期間は、仕事の量に見合った長さになっているかも見ておきます。短すぎれば注文者が十分に確かめられず、長すぎれば受注者の報酬の支払が遅れる原因になります。検収の合格が報酬の支払の条件になっている契約も多いため、この条項は入金の時期にも直結します。

責任の期間を定める条項

「検収完了後6か月以内に通知されたものに限り責任を負う」のように、民法とは別の期間を定めている契約があります。民法の「知った時から1年」より短い期間を定めることも、当事者の合意で可能とされています。受注する側にとっては、期間が区切られていたほうが見通しを立てやすくなります。

責任の範囲と上限を定める条項

追完だけに責任を限るのか、損害賠償まで負うのか。損害賠償を負う場合、その上限を報酬の額までとするのか。こうした定めで、受注者の負うリスクの大きさが大きく変わります。

条項 確かめること
契約の内容 仕様書や発注メールなど、何が基準になるか
検収 検収の期間、期間内に連絡がないときの扱い
責任の期間 民法の「知った時から1年」と違う定めがあるか
責任の範囲 追完だけか、損害賠償や解除まで含むか
賠償の上限 報酬の額などの上限があるか

古い契約書に「瑕疵担保責任」と書かれているとき

2020年の改正から年数が経った今でも、「瑕疵担保責任」という言葉が残ったままの契約書を見かけることがあります。ひな形を長く使い回している会社では、珍しいことではありません。

このような契約書を受け取ったとき、まず確かめたいのは、契約を結ぶ日です。2020年4月1日以降に結ぶ契約であれば、民法の規定としては改正後の契約不適合責任のルールが当てはまります。ただ、契約書の条項に「瑕疵」「瑕疵担保責任」と書かれている場合、その言葉を当事者がどういう意味で使ったのかが、後で解釈の争いになるおそれがあります。

たとえば、「納品後1年間、瑕疵担保責任を負う」という条項は、「引き渡しから1年」という改正前の期間の考え方を前提にしているように読めます。この条項が、民法の「知った時から1年以内の通知」に代わる特約として有効なのか、それとも単に古い言葉が残っているだけなのかは、契約全体から判断されることになります。

受注する側としては、契約の前に「瑕疵担保責任」を「契約不適合責任」に改め、責任の期間を「検収完了から○か月以内に通知されたもの」のように、数え始めをはっきりさせた形に直してもらうよう相談するのが安全です。相手に直してもらうのが難しい場合でも、責任の期間と範囲について、自分の理解をメールで確かめておくと、後の争いを防ぐ助けになります。

納品の前にできる予防の手順

契約不適合責任をめぐる争いは、納品の後に起きます。けれども、その多くは納品の前の手順で防ぐことができます。在宅で仕事を受ける人が、納品の前に取り入れたい手順を挙げます。

1つ目は、仕様を文面で固めることです。打ち合わせで決まったことは、その日のうちに「本日の打ち合わせで決まった点は次のとおりです」とメールで送り、相手の了承を得ておきます。改正後の民法では、何が「契約の内容」だったかが判断の基準になるので、この記録がそのまま受注者を守る材料になります。

2つ目は、途中で確認をもらうことです。デザインならラフの段階、システムなら画面の試作の段階、原稿なら構成案の段階で、注文者に確認してもらい、了承を文面で残します。完成してから方向の違いが分かると、作り直しの負担が大きくなります。

3つ目は、自分で検査してから納品することです。プログラムなら主な操作を一通り試し、原稿なら誤字や事実関係を見直し、デザインなら指定のサイズや色を確かめます。何を確かめたかを簡単な一覧にして納品のメールに添えると、注文者の検収の助けにもなります。

4つ目は、気づいた懸念を伝えることです。民法636条のただし書きにあるとおり、注文者の指図が不適当だと知りながら黙っていると、責任を免れません。「このままでも動作しますが、将来この点で不具合が出る可能性があります」と伝え、判断を注文者に委ねた記録を残しておきます。

5つ目は、納品物と納品日を記録することです。どのファイルを、いつ、どの方法で納めたかを残しておけば、後で「納品された物が違う」と言われたときにも確かめられます。

指摘を受けたときの対応の順番

納品の後に「契約に合っていない」と指摘されたとき、受注する側はどう対応すればよいのでしょうか。慌てて全部作り直す前に、次の順番で確かめると、必要以上の負担を負わずに済みます。

最初に、指摘の中身を文面で受け取ります。どの部分が、契約のどの内容と違うのかを具体的に書いてもらいます。口頭や電話だけで話が進むと、後で何を指摘されたのかが分からなくなります。

次に、その指摘が契約の内容に照らして不適合にあたるかを確かめます。仕様書や発注のメールに書かれていない要望は、不適合ではなく、新しい依頼(追加の注文)である可能性があります。追加の注文であれば、追加の報酬を前提に話し合うことができます。

3つ目に、原因を確かめます。注文者の指図や提供された材料が原因であれば、民法636条により、原則として受注者の責任ではありません。ただし、受注者が不適当だと知りながら告げなかった場合は別です。

4つ目に、期間を確かめます。契約書で責任の期間が定められていれば、その期間内の指摘かを見ます。定めがなければ、注文者が不適合を知った時から1年以内の通知かどうかが基準になります。

そのうえで、不適合にあたり、受注者の責任であると判断したら、追完の方法を提案します。条文のとおり、注文者に不相当な負担をかけない範囲で、受注者が別の方法で追完することもできます。修正の範囲と完了の見込みを文面で示し、合意を得てから作業に入ります。

取適法やフリーランス法の「やり直しの禁止」との関係

契約不適合責任の話と一緒に知っておきたいのが、取引の規模によってかかる別のルールです。2026年1月1日から「取適法」に改められた下請法では、発注者が一定の規模の会社である取引について、受注者の責めに帰すべき理由がないのに、成果物を受け取った後にやり直させることを禁止しています。個人で働く人を守るフリーランス法にも、一定の期間以上続く取引について、同じ趣旨の禁止があります。

つまり、成果物が契約に合っていて、受注者に責任のある不適合がないのに、注文者の都合で作り直しを求めることは、これらの法律に触れるおそれがあるということです。仕様が後から変わった、担当者の好みが変わったといった理由での作り直しは、契約不適合責任の追完ではなく、新しい依頼として扱われるべきものです。

一方、受注者の責任による不適合があれば、やり直しを求めることは禁止されていません。どちらにあたるかを判断するためにも、何が契約の内容だったのかを記録しておくことが大切です。

発注者が作り直しを一方的に求めてきて、報酬の支払も止まっている場合は、厚生労働省の「フリーランス・トラブル110番」で弁護士に無料で相談できます。発注書や契約書に入れておくべき項目は、「フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリスト」でチェックリストの形にしています。

仕事が途中で終わったときの報酬

契約不適合責任とあわせて押さえておきたいのが、仕事が途中で終わった場合の報酬です。改正で新しく設けられた民法634条は、注文者の責めに帰することができない事由で仕事を完成できなくなったときや、仕事の完成前に契約が解除されたときに、すでにした仕事のうち分けられる部分によって注文者が利益を受けるなら、その部分を完成とみなし、利益の割合に応じて報酬を請求できると定めています。

改正前は、請負は「完成して初めて報酬がもらえる」という考え方が強く、途中で終わった仕事の報酬をどう扱うかは、条文からは読み取りにくい状態でした。改正後は、たとえば10ページのウェブサイトのうち6ページを作り終えた段階で契約が解除され、その6ページを注文者が使えるなら、その割合に応じた報酬を求める根拠が条文に置かれたことになります。

また、民法641条は、請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できると定めています。注文者の都合で途中で打ち切られた場合、受注者は、すでにした仕事の報酬に加えて、解除によって生じた損害の賠償を求められる可能性があります。

途中の仕事に対する報酬を求めるときも、どこまで仕事が進んでいたかを示す記録が欠かせません。工程ごとの納品や、途中経過の報告を文面で残しておくと、こうした場面で役に立ちます。報酬が支払われないまま話が進まない場合は、弁護士への相談も検討してください。依頼するときの費用の目安は「未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】」で整理しています。

システム開発で請負と準委任を分けて考える

在宅で受ける仕事の中でも、システムやアプリの開発は、請負と準委任の区別が特に問題になりやすい分野です。開発の仕事は、要件を決める工程、設計の工程、作る工程、試す工程、動かした後の保守の工程と、いくつもの段階に分かれています。

このうち、何を作るかを注文者と一緒に決める要件定義や、動き始めた後の保守は、完成の形がはっきりしないため、準委任として契約されることが多くあります。一方、決まった仕様に沿ってプログラムを作る工程は、完成させる物がはっきりしているため、請負として契約されることが多くあります。

この区別が大事なのは、契約不適合責任が主に請負で問題になるからです。準委任であれば、受注者は完成の責任ではなく、専門家として求められる注意を払って事務を処理する責任を負います。改正では、準委任のうち、成果に対して報酬を払う形(成果完成型)について、成果の引き渡しと同時に報酬を払うことや、途中で終わった場合の報酬の考え方を定める規定(民法648条の2)が設けられました。

受注する側としては、契約書のタイトルではなく中身を見て、工程ごとにどちらの契約なのかを確かめることが大切です。1つの契約書の中に請負と準委任の工程が混ざっている場合は、どの工程にどの責任がかかるのかを、注文者と文面で確かめておくと、後の争いを防げます。

改正前に結んだ契約がまだ続いているとき

改正から年数が経った今でも、2020年3月31日以前に結んだ契約が続いていることがあります。保守契約のように長く続く契約や、基本契約を結んだうえで個別の注文を重ねていく取引がその例です。

改正民法の経過措置では、施行日より前に結ばれた契約には、原則として改正前の民法が適用されるとされています。基本契約が改正前に結ばれていても、個別の注文が改正後に出されている場合や、契約が改正後に更新された場合に、どちらの民法が当てはまるかは、契約の内容や更新の仕方によって判断が分かれることがあります。

受注する側としては、古い基本契約に基づいて仕事を続けている場合、契約の見直しを申し出て、改正後の考え方に合った条項に改めておくのが安全です。どちらのルールが当てはまるか判断に迷う場合は、弁護士に契約書を見てもらうことも検討してください。

運営者の視点で見た、不適合をめぐるトラブル

フリーランスや在宅ワークの市場を20年見てきた運営者の立場から言えば、成果物の出来をめぐるトラブルの多くは、法律の解釈よりも手前の段階で起きています。何を作るのかが、発注のときに文面で決まっていないことです。「いい感じにお願いします」で始まった仕事は、納品の後に「思っていたのと違う」で揉めやすくなります。

改正で責任の基準が「契約の内容に適合しているか」になったことは、この点をはっきりさせました。仕様が文面で決まっていれば、受注者は契約どおりに作ったことを示しやすく、注文者も何を求めてよいかが分かります。長く続く取引ほど、最初の打ち合わせで仕様を文面にし、変更があればそのたびに書き残す習慣が、双方に根づいています。

仲介の手数料が乗らない直接取引では、受注者の手取りが厚くなる一方、仕様の取り決めや責任の範囲の交渉も自分で行う必要があります。契約不適合責任の仕組みを知っておくことは、その交渉の土台になります。

職種ごとに見る、契約不適合責任の重み

最後に、職種ごとの特徴から、契約不適合責任がどれだけ重いかを考えます。

システムやアプリの開発は、不具合の有無が問題になりやすく、契約不適合責任の影響が最も大きい仕事の1つです。ソフトウェア作成者の年収・単価相場にあるように単価の高い仕事なので、責任の期間と賠償の上限を契約で決めておく重みも大きくなります。開発の仕事の種類と進め方はアプリケーション開発のお仕事で整理しています。要件定義を準委任、開発を請負と分けて契約する形もよく見られ、どの工程がどちらの契約かを確かめることが大切です。

原稿の執筆や編集では、誤字や事実の誤り、指定された文字数や構成との違いが、不適合として指摘されることがあります。著述家,記者,編集者の年収・単価相場で見られるように件数の多い仕事なので、発注のたびに構成や文字数、表記のルールを文面で確かめておくと、後の指摘に落ち着いて対応できます。

仕様の確認や、指摘への回答を、相手に失礼のない文面で正確に書く力は、どの職種でも欠かせません。ビジネス文書検定で取引の文書の書き方を学んでおくと、契約不適合をめぐるやり取りでも、事実を整理して伝えやすくなります。

よくある質問

Q. 瑕疵担保責任と契約不適合責任は何が違いますか?

2020年4月1日施行の改正民法で、瑕疵担保責任は契約不適合責任に改められました。基準が「瑕疵があるか」から「契約の内容に適合しているか」に変わり、注文者は追完、報酬の減額、損害賠償、解除の4つを求められるようになりました。期間も「引き渡しから1年」から「不適合を知った時から1年以内の通知」に変わっています。

Q. 請負契約の契約不適合責任はいつまで問われますか?

民法では、注文者が不適合を知った時から1年以内に請負人へ通知しなければ、責任を問えなくなります。通知をした後の請求には、知った時から5年、行使できる時から10年の消滅時効がかかります。契約書で別の期間を定めていれば、原則としてその定めが優先されます。

Q. 注文者の指示どおりに作った結果の不具合も責任を負いますか?

民法636条により、注文者が提供した材料や注文者の指図によって生じた不適合については、原則として責任を負いません。ただし、受注者がその材料や指図が不適当だと知りながら告げなかった場合は、責任を免れません。気づいた点は文面で伝え、指示を確かめておくことが大切です。

Q. 古い契約書に瑕疵担保責任と書かれている場合はどうすればよいですか?

2020年4月1日以降に結ぶ契約には改正後の民法が当てはまりますが、条項の言葉が古いままだと、責任の期間や範囲の解釈で争いになるおそれがあります。契約の前に「契約不適合責任」に改め、責任の期間を「検収完了から何か月以内の通知」のように、数え始めがはっきりした形に直してもらうよう相談するのが安全です。

この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年1月28日最終更新:2026年10月6日
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