手話通訳士の仕事の場と、登録して依頼を受けるまでの流れ

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手話通訳士の仕事の場と、登録して依頼を受けるまでの流れ

この記事のポイント

  • ✓手話通訳士の仕事は自治体の窓口
  • ✓放送の4系統に分かれます
  • ✓手話通訳士仕事の実像を

「手話通訳士仕事」と検索する人が本当に知りたいのは、手話が上手くなったらどこから依頼が来るのか、その依頼は生活を支えるだけの量があるのか、という2点に絞られます。結論を先に書くと、手話通訳士の仕事は自治体の意思疎通支援制度に支えられた公的な派遣が土台で、そこに医療・司法・教育・放送・企業研修といった専門分野が乗る形になっています。そして依頼の入口は「試験に合格すること」ではなく「自治体や派遣団体の登録名簿に載ること」です。この記事では、制度の根拠と試験の実データを突き合わせながら、登録して依頼が届くまでの道筋を順番に見ていきます。

手話通訳士は制度のどこに位置付けられているか

手話通訳の仕事を理解するには、まず「誰がその費用を払っているか」から入ると早いです。日本の手話通訳の多くは、障害者総合支援法の地域生活支援事業にある意思疎通支援という枠組みで動いています。つまり通訳を必要とする本人が全額を自己負担しているのではなく、市区町村や都道府県が実施主体となって派遣の仕組みを用意しています。厚生労働省はこの事業の中身をこう説明しています。

聴覚、言語機能、音声機能、視覚、盲ろう、失語、知的、発達、高次脳機能、重度の身体などの障害や難病のため、意思疎通に支障がある障害者等とその他の者の意思疎通を支援するため、手話通訳者、要約筆記者等の派遣や養成等を行います。 出典: mhlw.go.jp

役割の分担もはっきりしています。市区町村は手話通訳者や要約筆記者の派遣と、窓口への手話通訳の設置を担います。都道府県は、市町村が派遣できないときの補完と、市区町村の区域を越える広域的な派遣の調整を担います。遠隔による手話通訳もこの派遣に含まれると明記されています。

この制度の中で、手話通訳士は「厚生労働省令に基づく認定を受けた社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが実施する試験に合格し、登録をされた者」と定義されています。厚生労働省は手話通訳士に固有の役割として、政見放送での手話通訳を担当できる点を挙げています。選挙の政見放送は放送局が独自に通訳者を選ぶのではなく、この資格を持つ人が担う仕組みになっているわけです。

ここで押さえておきたいのは、手話通訳士は業務独占の資格ではないということです。手話通訳の仕事そのものは手話通訳者でも担えます。手話通訳士の資格は、報酬や依頼の優先順位を左右する「信用の証明」として働きます。自治体が派遣者の名簿を作るとき、専門性の高い場面を任せる相手を選ぶとき、そして政見放送のように資格が要件になっている場面で差が出ます。

仕事の場は大きく5つに分かれる

手話通訳士の仕事は、依頼元で分けると整理しやすくなります。

依頼元 主な仕事 働き方
市区町村の窓口 来庁した人の手続き支援、庁内会議の通訳 会計年度任用職員や非常勤の設置通訳
派遣事業の登録名簿 通院、学校の面談、金融機関、講演会 1件ごとの依頼を受ける登録型
聴覚障害者情報提供施設 相談対応、映像への手話付与、養成講座の講師 常勤または非常勤
医療機関や司法の現場 診察、入院時の説明、裁判や取り調べ 専門研修を経た指名依頼
放送と企業 政見放送、ニュース番組、社内研修、採用面接 単発の専門契約

窓口の設置通訳は、勤務日と勤務時間が決まっている代わりに、担当する内容の幅が広いのが特徴です。福祉の相談だけでなく、税や保険、住民票の手続きまで扱います。制度の言葉を手話に置き換える力が問われる持ち場です。

派遣の登録型は、依頼が入ったときに対応できるかを返事する形で仕事が積み上がります。平日の昼間に集中するため、他の仕事と組み合わせるなら時間の融通が要ります。一方で、同じ利用者の通院に継続して入ることがあり、経過を知っているからこそ的確に訳せる場面が生まれます。

登録型で働くうえで知っておきたいのが、依頼の内容が季節で動くという点です。年度の初めは学校の面談と入学手続き、健康診断の時期は医療機関、年末年始は金融機関や役所の手続きが増えます。この波を把握しておくと、研修に通う時期や他の仕事を入れる時期を決めやすくなります。

聴覚障害者情報提供施設は、全国に設置されている拠点です。厚生労働省の説明では、聴覚障害のある人が利用する字幕や手話入りの録画物の制作と貸し出し、手話通訳者や要約筆記者の派遣、情報機器の貸し出し、相談対応までを担うとされています。通訳の実務に加えて、映像制作や講座運営といった仕事が同じ場所にあるため、通訳だけで生計を組みにくい時期の足場になります。

手話通訳技能認定試験の中身と日程を正確に把握する

手話通訳士になるには、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが実施する手話通訳技能認定試験に合格し、登録する必要があります。令和8年度に行われた第37回の実施要領を見ると、日程と条件は次のとおりです。

学科試験は令和8年7月26日、実技試験は令和8年9月27日に実施されました。受験の申し込みは令和8年4月21日から5月20日までで、当日消印有効という扱いです。受験手数料は22,000円(税込み)です。

受験資格は20歳以上で、受験日の属する年度末までに20歳に達する人も含みます。学歴や実務経験の要件はありません。手話の学習歴が浅い人でも申し込めますが、後で見る合格率を踏まえると、受験できることと合格できることの距離はかなりあります。

試験科目は学科が4科目、実技が2科目です。学科は「障害者福祉の基礎知識」「聴覚障害者に関する基礎知識」「手話通訳のあり方」「国語」で構成されます。手話の技術だけでなく、福祉制度の知識と日本語の運用力が問われる設計です。実技は聞取り通訳試験と読取り通訳試験の2科目で、それぞれ2問が出題されます。聞取り通訳は音声で出された内容を手話で解答し、読取り通訳は手話で出された内容を音声で解答します。

試験地は埼玉、東京、大阪、福岡の4か所です。会場は埼玉県立大学、日本社会事業大学の清瀬キャンパス、大阪府枚方市の研修施設、福岡女子大学が使われました。全国どこでも受けられる試験ではないため、遠方に住んでいる場合は前泊を含めた日程を組む必要があります。

見落としやすいのが学科免除の仕組みです。前年度の試験で学科の合格基準を満たしていた人は、申請により学科試験が免除されます。学科は通ったが実技で届かなかったという年があっても、翌年は実技に集中できます。この制度を知っているかどうかで、2年目の準備の組み方が変わります。

合格率と受験者層のデータが示す難易度

数字を見ると、この試験の性格がはっきりします。第36回(令和7年度)の結果は、願書提出1,193名に対して受験者1,113名、合格者125名、合格率11.2%でした。第1回から第36回までを通した累計では、受験者32,230名に対して合格者4,426名、合格率13.7%です。長期で見ても1割台で推移している試験だと分かります。

年齢分布はさらに示唆的です。第36回の合格者125名の内訳は、20代が12名、30代が15名、40代が37名、50代が50名、60歳以上が11名で、平均年齢は47.1歳でした。50代が全体の40.0%を占め、40代と合わせると約7割になります。

この数字は「若いうちに取っておく資格」という一般的なイメージとかなり違います。手話通訳は語彙の量だけでなく、話し手の意図をくみ取って日本語と手話のあいだを行き来する力が要ります。医療の説明、契約の条項、学校の面談といった場面で正確に訳すには、社会人としての経験の蓄積が効きます。合格者の年齢が高いのは、その積み上げに時間がかかることの裏返しだと読めます。

登録者数も見ておきましょう。令和8年4月1日現在の手話通訳士の登録者数は全国で4,378名です。累計の合格者4,426名に近い数字で、資格を取った人がおおむね登録を続けていることが分かります。一方で、聴覚に障害のある人の数に照らすと、この人数が十分とは言いにくい状況です。地域差も大きく、都道府県別の登録者数を見ると、神奈川県が436名、愛知県が141名、福岡県が140名という県がある一方で、二桁前半にとどまる県もあります。

つまり需要の総量ではなく、住んでいる地域にどれだけ通訳者がいるかで仕事の入りやすさが変わります。登録者が少ない地域では、資格を取った時点で派遣の依頼が集まりやすくなります。

手話奉仕員から手話通訳士までの段階を知る

手話を仕事にする道筋には段階があります。厚生労働省は意思疎通の支援者を種類ごとに整理しており、手話に関わるものは3つです。

手話奉仕員は「手話で日常会話を行うのに必要な手話語彙及び手話表現技術を習得している者」です。多くの自治体が入門課程と基礎課程の講座を開いており、ここが最初の入口になります。

手話通訳者は「手話通訳に必要な手話語彙、手話表現技術及び基本技術を習得している者」です。厚生労働省は、手話通訳者と要約筆記者については養成研修を受講した上で、都道府県等が行う試験に合格する必要があると明記しています。この試験に合格すると、自治体の派遣事業に登録して実際の通訳を担えるようになります。

手話通訳士は、前述の全国試験に合格して登録した人です。

養成のカリキュラムは国が示しています。手話奉仕員と手話通訳者の養成カリキュラムについては令和5年6月26日付の通知が出ており、各自治体の講座はこれに沿って組まれています。自治体ごとに講座の名前や回数は違っても、身につける中身は共通の基準で作られているということです。

実務の順序としては、手話奉仕員の講座から始めて、手話通訳者の養成研修に進み、都道府県の試験に合格して派遣登録を受け、現場を積みながら手話通訳士の試験に挑むという流れが一般的です。合格者の平均年齢が47.1歳という数字は、この階段を1段ずつ上がった結果だと考えると納得がいきます。

現場を長く見てきた立場から言えば、この順序を飛ばそうとする人ほど行き止まりに当たります。手話の語彙を独学で増やしても、派遣の依頼は登録名簿から出ます。名簿に載るための入口は自治体の養成研修であり、そこに通うことが遠回りではなく最短の道です。

登録して依頼を受けるまでの実際の流れ

資格を取った後、依頼が届くまでにやることを順番に並べます。

第一に、住んでいる市区町村の障害福祉担当課に問い合わせて、意思疎通支援事業の派遣登録の受け付け方法を確認します。自治体によって、登録できる資格の要件、登録の時期、登録更新の周期が違います。ここは推測が効かない部分なので、必ず窓口で確認します。

第二に、都道府県の聴覚障害者情報提供施設と、地域の手話通訳者の団体に登録の相談をします。市区町村の派遣で対応できない依頼や、区域を越える依頼は都道府県が調整すると制度上決まっているため、両方に登録しておくと依頼の経路が増えます。

第三に、対応できる分野と時間帯を具体的に伝えます。平日の日中だけ、医療の場面は可、司法は不可といった条件を明確にしておくと、調整する側が声をかけやすくなります。曖昧にしておくと、結果として依頼が来なくなります。

第四に、専門分野の研修に手を挙げます。医療、司法、教育、労働の各分野には専門の研修が用意されていることが多く、受講歴が指名の判断材料になります。

第五に、通訳以外の仕事の窓口も開いておきます。聴覚障害者情報提供施設の映像制作、養成講座の講師、企業研修の講師、行政の会議録の作成といった仕事は、通訳の依頼が少ない時期を埋めます。文章を扱う仕事を併せて受ける人も多く、ビジネス文書検定のように文書作成の基礎を測る資格を持っていると、報告書や議事録を含む委託を受けやすくなります。

第六に、契約条件を書面で受け取る習慣をつけます。自治体の派遣は単価や交通費の扱いが規定で決まっていますが、企業や団体からの直接依頼はその都度の取り決めになります。次の節で扱う項目を、依頼を受ける前に確認します。

報酬の決まり方と、確かめておく契約条件

手話通訳の報酬は一律ではありません。自治体の派遣事業では、実施主体である自治体が単価と交通費の扱いを規定しています。厚生労働省も利用者負担について「実施主体である地方自治体がそれぞれ規定しております」と書いており、金額は地域ごとに違います。したがって具体的な額は、登録する自治体の要綱で確認するのが唯一の正しい方法です。

企業や団体から直接依頼を受ける場合は、自分で条件を決めることになります。このとき参考になるのが、厚生労働省の自営型テレワークの適正な実施のためのガイドラインです。在宅で業務委託を受ける人を対象にした指針ですが、契約条件として明らかにすべき項目が具体的に並んでいます。報酬の支払期日については、次のように書かれています。

報酬の支払期日については、注文者が成果物についての検査をす るかどうかを問わず、注文者が自営型テレワーカーから成果物を受 け取った日又は役務の提供を受けた日から起算して 30 日以内とし、 長くても 60 日以内とすること。 出典: mhlw.go.jp

同じガイドラインは、契約時に文書で明らかにする項目として、仕事の内容、報酬額と支払期日と支払方法、諸経費の取扱い、納期、検収を完了する期日、条件を変更する場合の取扱い、知的財産権の取扱い、業務上知り得た個人情報の取扱いなどを挙げています。注文者はこの文書を3年間保存することとされ、電子メールでの明示も認められています。

手話通訳の場合、特に確認しておきたいのは4点です。1つめは拘束時間の数え方です。通訳は集中を要するため、長時間の依頼では複数名での交代が前提になります。単独で受けるのか交代で受けるのかを決めます。2つめは事前資料の提供です。講演や会議の通訳は、原稿や資料を事前に読めるかどうかで質が変わります。3つめは移動と待機の扱いです。4つめは録画や配信の可否で、通訳の映像が残る場合は肖像の扱いを決めます。

諸経費の取扱いもガイドラインが明示を求めている項目です。遠隔で対応するときの通信費や機材の費用を自己負担にするのか、依頼側が持つのかを最初に決めておきます。

医療、司法、教育の現場で求められる専門性の中身

派遣の依頼のなかでも、特定の分野は別枠で扱われます。求められる中身が違うためです。

医療の通訳は、症状の説明と治療の選択が中心になります。医師の説明を訳すときに、たとえば「経過観察」という言葉を手話にするには、何もしないのではなく期間を決めて様子を見るという中身まで伝える必要があります。検査の同意、入院時の説明、手術前の確認といった場面は、訳し方が本人の判断を左右します。厚生労働省は、意思疎通を図ることに支障がある障害者等の入院中における意思疎通支援事業の取扱いについての通知を出しており、入院中の支援も事業の対象として整理されています。ここで注意したいのは、通訳者が医療上の助言をする立場ではないという線です。訳すことと説明を足すことの区別を守れる人が指名されます。

司法の通訳は、言葉を選ぶ余地がさらに狭くなります。取り調べや法廷では、話し手が使った表現をそのまま訳すことが求められ、分かりやすく言い換えることが不利になる場面もあります。手続きの流れ、供述と証言の違い、黙秘の意味といった前提を理解していないと、訳しながら判断を誤ります。この分野は専門研修と経験の蓄積が要求されます。

教育の通訳は、授業の進行に合わせて訳し続ける持久力が要ります。教科の用語を先に押さえておく必要があり、理科や数学では図や板書と手話をどう対応させるかを事前に組みます。学校の面談では、保護者と教員のあいだに立つ立場になるため、どちらの言葉も足さずに訳す姿勢が問われます。

労働の分野も伸びています。採用面接、入社時の説明、安全衛生の教育、労使の話し合いといった場面で通訳が入ります。企業が障害者雇用を進めるなかで、社内の会議に定期的に通訳が入る形も増えています。専門用語の整理という点では、技術職の用語をあらかじめ押さえておくと強みになります。たとえば情報通信の現場で通訳するなら、ネットワークの基礎を扱うCCNA(シスコ技術者認定)の範囲にある用語を知っているかどうかで、訳の精度が変わります。

どの分野でも共通しているのは、事前の準備時間が報酬に含まれているかという問題です。資料を読み、用語を調べ、手話表現を決めておく作業は、当日の拘束時間の外にあります。この準備を前提にした単価になっているかを、依頼を受ける段階で確かめる必要があります。

最初の3年でつまずきやすい点

養成研修を終えて派遣登録まで進んだ人が、その後に行き詰まるパターンには型があります。

1つめは、依頼の断り方で名簿から遠ざかるケースです。対応できない依頼を断るのは当然ですが、返事が遅れると調整する側は次の人を探す時間を失います。受けられないと分かった時点ですぐ返すことが、次の依頼につながります。

2つめは、収入の波を読み損なうケースです。派遣の依頼は平日の日中に集中し、年度の切り替わりや長期休暇の時期に落ち込みます。通訳だけで年間を埋める前提で組むと、落ち込む月に立て直せません。通訳以外の仕事を併走させる設計が要ります。

3つめは、専門分野を決めないまま時間が過ぎるケースです。依頼を選ばずに受け続けると、経験は増えるものの指名の理由が作れません。医療なのか教育なのか放送なのかを決めて研修を積むほうが、3年後の依頼の質が変わります。

4つめは、記録と請求の手間を軽く見るケースです。1件ごとの依頼を積み上げる働き方は、報酬の管理が煩雑になります。依頼日、時間、単価、交通費、支払日を1つの表で管理しないと、未入金に気づかないまま時間が過ぎます。契約条件を文書で受け取る習慣と、その文書を3年間保存する習慣は、ガイドラインが求めている以上に自分の身を守ります。

5つめは、守秘の線引きを共有していないケースです。通訳の場で知った内容は外に出せません。家族に話す、研修の事例として使う、日々の記録に具体名を残す、といった行為はいずれも問題になります。事例として共有したい場合は、依頼側の許可を得て内容を特定できない形に直します。

6つめは、体を痛めるケースです。手話通訳は腕と肩に負担がかかり、長時間の単独対応を続けると故障につながります。複数名での交代を前提に受けることは、質の確保と同時に自分の職業寿命を守る判断です。

遠隔の手話通訳と電話リレーサービスが開いた在宅の仕事

ここ数年で大きく変わったのが、通訳の場所です。厚生労働省は意思疎通支援事業の説明のなかで、市区町村が行う派遣と窓口への設置のどちらについても「遠隔による手話通訳等を含む」と明記しています。制度の側が、通訳者が現場に出向かない形を正面から認めているということです。

もう1つの柱が電話リレーサービスです。これは手話通訳者や要約筆記者がオペレーターとして入り、聴覚や発話に障害のある人の手話や文字を通訳して電話をかける仕組みです。聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律が令和2年6月に成立し、同年12月1日に施行され、令和3年7月から公共インフラとしてサービスが始まりました。厚生労働省も、オペレーターとなり得る通訳者の養成を通じて協力する立場を示しています。

この仕組みは、手話通訳を「常設の持ち場のある仕事」に変えました。通訳の依頼が入るのを待つのではなく、決まった時間帯に入って次々と通訳を担う働き方です。通訳オペレーターの養成カリキュラムも公開されており、求められる技能の輪郭がつかめます。

在宅で通訳を担うときに必要になるのは、手話が見やすく映る環境です。背景を無地にする、手元と表情の両方が入る画角を作る、照明を正面から当てる、通信が途切れない回線を用意する。この準備は通訳の技術とは別の技能で、機材の扱いに慣れている人が有利になります。映像や通信の設定に強みがある人なら、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で扱うような情報の取り扱いの知識を併せ持つことで、個人情報を含む通訳を安心して任される側に回れます。

遠隔の通訳には守るべき線もあります。通訳の場で知った内容は、対面でも遠隔でも同じく守秘の対象です。画面の記録が残る環境では、録画の設定を切ることまで含めて依頼側と決めておく必要があります。

テレビの手話通訳という専門の枠

手話通訳の仕事のなかで、独立した専門領域になっているのが放送です。総務省は平成30年度から、テレビジョン放送のニュース番組等を担うことができる手話通訳の育成に向けた研修を継続して実施しています。令和8年度の研修会も開かれており、講義の動画は総務省のYouTubeチャンネルで一般公開されています。

公開されている講義の構成を見ると、この領域の特殊性が分かります。テレビの手話通訳そのものの技術、身だしなみの作り方、実際に担った人の経験談、国際関係の手話表現、スポーツ実況における手話通訳といった内容が並びます。令和7年3月には、平成30年度から令和5年度までの研修で講師から指摘のあった表現技術の留意点をまとめた参考例集も公開されました。

放送の手話通訳は、画面の枠のなかで表現を完結させる必要があります。手の動く範囲が限られ、表情がアップで映り、時間の遅れが許されません。加えてニュースは固有名詞と数字が多く、事前に台本が固まらないまま生放送に入ることもあります。通常の派遣通訳とは別の訓練が要るため、総務省が研修を用意しているわけです。

放送分野の全体像も把握しておくと、仕事の総量が読めます。総務省が公表した令和6年度の実績では、1週間当たりの手話放送時間は、NHK総合の放送センターで1時間12分、NHK教育で4時間42分、在京キー5局で31分、独立県域13局で1時間22分でした。字幕放送に比べると手話放送の時間はまだ短く、放送事業者ごとの差も大きいことが読み取れます。

この数字は、放送の手話通訳が狭い枠であることを示しています。同時に、伸びる余地が残っている領域だとも読めます。総務省が育成研修を続けている事実と合わせて考えると、いま訓練を受けておくことが数年後の枠の取り合いで効いてきます。

需要と供給のデータから読み取れること

最後に、数字を並べて仕事の設計に落とします。

令和8年4月1日現在の手話通訳士は全国で4,378名です。試験の合格率は直近で11.2%、累計で13.7%。合格者の平均年齢は47.1歳で、50代が4割を占めます。この3つを並べると、供給が急に増える構造にはなっていないことが分かります。養成に時間がかかり、試験の関門が狭く、合格者の年齢層が高いためです。

一方で需要の側は、制度が押し広げる方向に動いています。意思疎通支援は市区町村の事業として全国で実施され、遠隔による通訳も含むと明記されています。電話リレーサービスは公共インフラとして運用が始まりました。放送分野では総務省が育成研修を続けています。障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律も施行されており、情報にたどり着ける状態を整える方向で制度が積み重なっています。

20年この在宅と業務委託の市場を見てきた立場から言えば、長く仕事が続く人の共通点は、技術の高さそのものよりも「この人に任せると段取りが楽だ」と依頼側に思われていることです。手話通訳でも同じで、事前資料の受け渡し、交代の組み方、遅れが出たときの連絡、記録の扱いといった段取りを自分から提案できる人に依頼が集まります。技術を磨くことと、依頼側の手間を減らすことは別の投資で、後者を軽く見る人が多いのが実情です。

もう1つ、報酬の構造について触れておきます。仲介の手数料が乗らない形で依頼と受け手が直接つながると、同じ予算で依頼側はより多くの回数を頼め、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%の仕組みが効くのは金額の派手さではなく、この「同じ仕事で手取りが減らない」という質の部分です。自治体の派遣は単価が規定で決まっていますが、企業研修や映像への手話付与のような直接契約では、間に入る事業者の数が手取りを左右します。

収入の組み方としては、3つの層を重ねるのが現実的です。土台は自治体の派遣登録と窓口の設置通訳です。次に、専門分野の指名依頼と企業からの直接契約を乗せます。そして通訳以外の仕事、つまり養成講座の講師、映像制作、文書作成、遠隔オペレーターを埋め草にします。専門職の単価を確かめる手がかりとしては、著述家,記者,編集者の年収・単価相場のように職種ごとの相場をまとめたデータが参考になります。職種は違っても、専門性が単価にどう反映されるかの目安がつかめます。

技能を伸ばす方向についても、データから言えることがあります。合格者の年齢構成が40代と50代に寄っているのは、手話の技術が語彙の暗記では完成しないことの表れです。訳す対象になる話題の幅が広く、制度も医療も法律も学校も仕事の現場も理解の対象になります。したがって手話の学習と並行して、社会の仕組みを学び直す時間を持つことが遠回りに見えて効きます。新聞の記事を読んで要点を手話で言い直す練習、行政の通知を読んで平易な日本語に置き換える練習は、学科試験の国語と実技の両方に効きます。逆に、手話の語彙だけを増やす練習に偏った人は、実技の読取り通訳で日本語に戻すところで詰まります。

登録者数が少ない地域に住んでいる人は、その条件を弱みではなく強みとして扱えます。派遣の調整をする側は、対応できる人を探すことに苦労しています。対応可能な分野と時間帯をはっきり示して名簿に載ることが、いちばん確実な入口です。あわせて、在宅で受けられる仕事の幅を知っておくと空白の時期を埋められます。業務委託の求人の探し方はAIコンサル・業務活用支援のお仕事のような分野別のガイドで形式をつかんでおくと、契約条件の読み方に慣れておけます。

よくある質問

Q. 手話通訳士の試験はどれくらい難しいですか?

第36回(令和7年度)は受験者1,113名に対して合格者125名で、合格率は11.2%でした。第1回から第36回までの累計でも13.7%です。合格者の平均年齢は47.1歳で、50代が40.0%を占めます。手話の語彙だけでなく福祉制度の知識と日本語の運用力が問われるため、数年かけて準備する人が多い試験です。

Q. 手話通訳士の資格がないと手話通訳の仕事はできませんか?

できます。手話通訳士は業務独占の資格ではなく、自治体の派遣事業では手話通訳者も通訳を担います。手話通訳者になるには養成研修を受けたうえで都道府県等が行う試験に合格する必要があります。ただし政見放送の手話通訳は手話通訳士が担当する仕組みで、専門性の高い場面では資格が指名の判断材料になります。

Q. 在宅でできる手話通訳の仕事はありますか?

あります。厚生労働省は意思疎通支援事業の派遣と窓口設置のどちらにも遠隔による手話通訳を含むと明記しています。加えて電話リレーサービスが令和3年7月から公共インフラとして運用されており、通訳者がオペレーターとして入る形の仕事があります。背景や照明、回線といった映りの環境を整える準備が別に必要です。

Q. 資格を取ったあと、どうすれば依頼が来ますか?

試験の合格だけでは依頼は届きません。住んでいる市区町村の障害福祉担当課で意思疎通支援事業の派遣登録の方法を確認し、都道府県の聴覚障害者情報提供施設と地域の団体にも登録します。そのうえで対応できる分野と時間帯を具体的に伝え、医療や司法などの専門研修の受講歴を示すと指名されやすくなります。

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年2月21日最終更新:2026年9月27日
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SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方