観光通訳士の仕事と、語学力を活かして依頼を受けるまでの道筋


この記事のポイント
- ✓観光通訳士に当たる資格は全国通訳案内士と地域通訳案内士の2つです
- ✓2018年の法改正で何が変わったか
- ✓資格がなくてもガイドができる現状で資格を取る意味を整理します
語学力を使って観光の仕事をしたいと考えて、観光通訳士という言葉で検索した方に、最初にお伝えしておきたいことがあります。この名称の資格は制度としては存在しません。実際に国が定めている資格は「全国通訳案内士」と「地域通訳案内士」の2つです。求人や講座の案内では観光通訳士という言い方が使われることがありますが、法律上の名称は違います。
ここを押さえておく理由は2つあります。1つは、試験や登録の情報を調べるときに正しい名称でないと公式の情報にたどり着けないこと。もう1つは、名乗ってよい名称が法律で決まっていることです。この記事では、2つの資格の違い、2018年の法改正で変わった点、試験の中身と2026年度の日程、登録後の義務、そして仕事の受け方を順番に確認します。
「観光通訳士」に当たる資格は2つある
まず制度の全体像を整理します。
全国通訳案内士は、通訳案内士法にもとづく国家資格です。観光庁の説明では、この法律において「報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内をすることをいう。)を業とする。」とされています。国家試験に合格したうえで、都道府県の登録を受けた人が全国通訳案内士になります。高度な外国語能力と、日本全国の歴史、地理、文化に関する質の高い知識を持つ者として位置づけられています。活動できる範囲は全国です。
地域通訳案内士は、特定の地域内で通訳案内を業とする資格です。全国通訳案内士との違いは3つあります。活動できるのがその地域に限られること、国家試験ではなく各自治体が行う研修の受講を通じて登録を受けること、そしてその地域固有の歴史、地理、文化に関する現地情報に精通した者として位置づけられていることです。
この2つは上下関係ではなく、役割の違いです。全国を移動するツアーに付く仕事は全国通訳案内士の領域で、特定の地域を深く案内する仕事は地域通訳案内士の領域です。地域によっては、地域通訳案内士の制度そのものがない場合もあります。自分が活動したい地域に制度があるかどうかは、その自治体に確認する必要があります。
規模を数字で見ると差がはっきりします。日本政府観光局(JNTO)の公表によれば、全国通訳案内士の言語別延登録者数は27,950人に達しています(2025年4月1日現在)。この数字は言語別の延べ人数なので、複数言語で登録している人は重複して数えられています。
2018年の法改正で何が変わったか
この分野を調べるときに、いちばん混乱が起きるのがここです。制度が2018年に大きく変わっています。
平成30年(2018年)1月4日に改正通訳案内士法が施行されました。変わった点は主に2つです。
1つ目は、名称が変わりました。 それまで「通訳案内士」だった資格が「全国通訳案内士」になりました。英語表記はNational Government Licensed Guide Interpreterです。
2つ目は、業務独占規制が廃止されました。 これが実務に対して大きい変更です。改正前は、報酬を得て外国語で旅行の案内をするには資格が必要でした。改正後は、資格を持たない人であっても有償で通訳案内業務を行えるようになりました。
つまり現在は、資格がなくても外国人旅行者を有償で案内できます。ただし制約が残っています。観光庁の説明では、資格を持たない人が有償で通訳案内業務を行う場合、「全国通訳案内士」や「地域通訳案内士」、またはこれに類似する名称を使用することはできないとされています。業務独占ではなく名称独占になった、という整理です。
JNTOは、類似する名称について別途PDFで示しています。何が類似に当たるかは、名刺やウェブサイトで肩書きを書く際に確認しておく必要があります。「観光通訳士」という言い方が、この類似名称に当たるかどうかは判断が分かれる余地があるため、公式の資格名以外を肩書きに使う場合は慎重に扱ったほうがよい部分です。
法改正後の位置づけについて、観光庁は次のように説明しています。資格を持たない人も有償で外国語を用いた観光案内ができるようになった一方で、通訳案内士(全国通訳案内士、地域通訳案内士)は質の高い観光案内を提供する者として、訪日外国人旅行者の満足度の高い旅行を支えるうえで引き続き重要な役割を担っている、という位置づけです。
この変更が意味するのは、参入しやすくなったかわりに、資格が「できる/できない」の線ではなく「質の証明」になったということです。誰でも案内できる市場で、何を根拠に選ばれるかという競争になっています。
訪日客は年間4,243万人。需要の現状を確認する
需要の規模を、公表されている数字で押さえます。
出入国在留管理庁の発表によると、令和7年における外国人入国者数(新規入国者数と再入国者数の合計)は約4,243万人で、前年に比べて約565万人、約15.4%増えました。新規入国者数は約3,918万人で、こちらも約517万人、約15.2%増えています。いずれも過去最高です。特例上陸許可を受けた外国人の数を合わせた総数は約4,648万人に達しました。
国籍・地域別の新規入国者数では、韓国が約923万人で最も多く、次に中国が約722万人(前年比約31.7%増)、台湾が約639万人(同約12.2%増)と続きます。在留資格別では「短期滞在」が約3,846万人で全体の約98.1%を占めています。
この構成から、観光案内の仕事を考えるときに見えてくることが2つあります。
1つ目は、需要の中心が東アジアにあるという点です。 韓国、中国、台湾の3つで新規入国者の6割を超えます。韓国語と中国語を扱える人の需要は、人数の面では英語より大きい可能性があります。ただし、韓国や台湾からの旅行者は個人旅行の比率が高く、ガイドを雇わずに動く層が多いため、人数がそのまま案内の依頼数になるわけではありません。
2つ目は、伸びが大きいのは中国からの旅行者だという点です。 1年で約31.7%増えています。団体での旅行が一定の比率を占める市場なので、ガイドの依頼につながりやすい層です。
一方で、英語の需要は人数以上に広く残っています。英語圏以外の国から来る旅行者も、共通語として英語を使う場面が多いためです。欧米の旅行者は滞在日数が長く、1人あたりの支出も大きい傾向があるため、案内の依頼としては単価が高くなりやすい市場です。
全国通訳案内士試験の外国語の種類は、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語の10種です。この10種のどれを選ぶかは、扱える言語の中で需要と競合の数を見て決める話になります。
全国通訳案内士試験の中身と2026年度の日程
試験は、全国通訳案内士として必要な知識と能力を有するかどうかを判定するために毎年1回実施される国家試験です。JNTOが観光庁の代行機関として実施しています。
受験資格に制限はありません。JNTOの説明では、年齢、性別、学歴、国籍などに関係なく受験できます。学歴要件がないため、語学力があれば誰でも挑戦できる試験です。
試験は筆記試験と口述試験の2段階です。筆記試験に合格した人が、その年の口述試験に進みます。口述試験の内容については、次のように説明されています。
通訳案内の現場で必要とされるコミュニケーションを適切にとることができるか、実際に観光案内をするシミュレーションが行われ、その内容が評価されます。選択する外国語は、筆記試験と同一の言語となります。 出典: tex.co.jp
つまり口述試験は、語学の試験ではなく実務のシミュレーションです。日本の観光地や文化について外国語で説明し、旅行者役からの質問に答える形になります。知識を持っているだけでは足りず、その場で組み立てて話す力が試されます。
2026年度の日程は、JNTOが公表しています。
| 段階 | 日付 |
|---|---|
| ガイドライン公開 | 2026年4月6日(月) |
| 官報公示 | 2026年4月28日(火) |
| 施行要領公開 | 2026年5月22日(金) |
| 願書受付 | 2026年6月1日(月)から7月9日(木) |
| 筆記試験 | 2026年8月16日(日) |
| 筆記試験合格発表 | 2026年9月25日(金) |
| 口述試験 | 2026年11月29日(日) |
| 最終合格発表 | 2027年1月22日(金)(予定) |
2026年度の願書受付はすでに終了しています。次に受験するなら2027年度が対象です。
手続きの形式で押さえておくべき点があります。2026年度は施行要領の公開が電子媒体のみで、出願も電子申請のみでした。郵送での施行要領の配付および出願受付は行われていません。受験を考えている人は、電子申請システムから申し込む前提で準備することになります。
2026年度のガイドラインは、2025年度(令和7年4月7日改正)から変更がないとJNTOが明記しています。また2025年4月7日に告示が改正され、免除規定の一部が変わりました。他の資格や試験の成績による科目免除が使えるかどうかは、この告示とガイドラインで確認する必要があります。
試験範囲のうち「通訳案内の実務」については、観光庁の研修テキストが試験範囲になります。このテキストは2025年4月7日に改訂されました。あわせて「通訳ガイドテキスト(初版)」も公開されており、令和7年6月11日付けで一部の誤記等が修正されています。古い版で学習すると試験範囲とずれるため、最新版を確認してから学習を始めます。
試験の事務手続きと運営については、JNTOが2026年度分を株式会社JTBに委託しています。問い合わせ先は全国通訳案内士試験事務局(株式会社JTB内)です。
難易度と合格率をどう読むか
合格率の数字は、この試験を検討する人が最も気にするところです。
過去の実績として、2022年度の状況が示されています。
2022年度の全受験者は3,472名、平均合格率は16.2%となっており、言語ごとの受講者数および合格率は以下となっています。(内は合格率) 出典: tex.co.jp
直近では、JNTOが2025年度に585人が合格したと公表しています。年度ごとの受験者数と合格者数は、JNTOのサイトで言語別に閲覧できます。合否判定のための基準は、観光庁が公表している全国通訳案内士試験ガイドラインに定められています。
この合格率をどう読むかですが、いくつか注意点があります。
1つ目は、免除制度の影響です。 語学の科目については、他の語学試験で一定の成績を満たしていれば免除される制度があります。そのため、語学に自信がある受験者は語学科目を免除して日本地理、日本歴史、一般常識、通訳案内の実務に集中します。逆に語学から受ける人は全科目を戦うことになり、同じ合格率の分母の中で条件が違います。
2つ目は、言語による差です。 受験者数が多い英語と、受験者が数人という言語では、合格率の意味がまったく違います。受験者が少ない言語では、1人の合否で率が大きく動きます。自分が受ける言語の実績を個別に見る必要があります。
3つ目は、複数年で合格する受験者が多いことです。 筆記試験の科目のうち合格したものは、次の年度に免除される制度があります。そのため、1年で全科目を通すのではなく、2年から3年かけて積み上げる受験者が相当います。1回の合格率が低いことは、「到達できない」という意味ではありません。
難易度の実感で言えば、負荷が大きいのは語学ではなく日本の歴史と地理です。語学が得意な人がつまずくのはこの2科目です。範囲が広く、観光地の名称、時代の区分、地形、気候、伝統工芸、食文化まで問われます。しかも試験に出るのは、外国人旅行者が訪れる場所に関する知識です。教科書的な歴史の暗記とは出題の角度が違います。
筆記試験の科目ごとに、何をどう学ぶか
筆記試験は複数の科目に分かれています。科目ごとに性質が違うため、同じやり方で学ぶとどこかで詰まります。
外国語の科目は、選んだ言語で日本の観光や文化に関する内容を読み、答える形です。一般的な語学試験と違うのは、扱われる題材が日本に関するものだという点です。神社と寺の違い、和食の作り方、伝統工芸の技法、温泉の入り方。こうした内容を外国語で読んで理解し、外国語で説明する語彙が必要になります。日常会話や時事の語彙を鍛えても、この部分は埋まりません。対策としては、日本の文化を扱った外国語の資料を読む量を確保することです。観光庁やJNTOが外国語で出している案内、美術館や寺社の外国語版の解説文、英字媒体の日本文化の記事。実務でそのまま使う表現がここに集まっています。
日本地理は、範囲の広さが最大の壁です。都道府県の位置と特徴、主要な観光地、地形、気候、温泉地、国立公園、世界遺産、郷土料理、伝統工芸品。地図を見ながら覚えるのが効率的で、白地図に観光地を書き込んでいく方法が定番です。注意したいのは、出題されるのは外国人旅行者が実際に訪れる場所だという点です。教科書に載っている地形の名前を網羅するより、旅行の行程に登場する地名を優先するほうが得点につながります。
日本歴史は、時代の流れと、その時代に作られた建築物や文化財を結び付けて覚える必要があります。年号の暗記だけでは対応できません。この寺はいつの時代に建てられ、誰が建て、何の目的だったのか。旅行者に説明する内容がそのまま問われる形です。写真を見て何の建物かを答える出題もあるため、名前と見た目を対応させて覚えます。
一般常識は、日本の政治、経済、産業、社会、文化に関する時事的な内容です。出題の対象は近年の動きに寄るため、過去問だけでは足りません。観光庁が出している観光白書は、この科目の対策として直接役に立ちます。訪日客の数、消費額、宿泊の動向といった数字が問われる形になるためです。
通訳案内の実務は、観光庁の研修テキストが試験範囲です。旅程の管理、旅行者の安全の確保、緊急時の対応、関係する法令、災害時の対応、感染症への対応。実務で必要になる手続きと判断の知識です。この科目はテキストが特定されているので、範囲がはっきりしています。テキストが改訂されたときに古い版で学習すると範囲がずれるため、最新版で学ぶことが前提になります。
学習の順番としては、外国語の科目と日本歴史から始めるのが実務的です。この2つは積み上げに時間がかかります。日本地理と一般常識は短期間で追い込みが利く科目で、通訳案内の実務はテキストの範囲が決まっているため直前でも対応できます。科目合格が翌年度に免除される制度があるので、1年目に時間のかかる科目を確実に通しておくと、2年目の負荷が下がります。
登録後に義務づけられている研修
合格して登録すれば終わりではありません。研修の受講義務があります。
観光庁の説明では、全国通訳案内士は5年に1度、観光庁が登録した研修機関が実施する研修を受講しなければなりません。2018年1月4日より前に登録している人は2023年1月3日までに受講する必要があり、2回目以降は前回の受講日から5年を超えない期間までに受講することになっています。
登録研修機関の一覧は観光庁のサイトで確認できます。研修を実施しているのは通訳案内士の団体です。また、試験合格者と全国通訳案内士を対象とした新人研修も、通訳案内士団体が実施しています。
この研修義務は、費用と時間の負担として計算に入れておく必要があります。資格を維持するための固定の費用が5年ごとに発生するということです。ガイドの仕事を年に数件しか受けないなら、費用に対する見返りを考える場面が来ます。
一方で、この研修は制度上の意味を持っています。法改正で資格がなくても案内できるようになった中で、資格を持つ者が質の高い案内を提供する立場として位置づけられているのは、この研修の仕組みがあるためです。旅行会社が案内を依頼する際に資格の有無を確認するのは、この裏づけを見ているからです。
地域通訳案内士という別の入口
全国通訳案内士試験のハードルが高いと感じる場合、地域通訳案内士という道があります。
地域通訳案内士は、特定の地域内において報酬を得て通訳案内を業とする資格です。各自治体が行う研修を受講することで登録を受けられます。国家試験はありません。観光庁のページは2025年3月10日に最終更新されており、地域通訳案内士になるための案内も用意されています。
この制度の利点は3つあります。
1つ目は、入口が研修であることです。 試験の合否ではなく、研修の受講と修了で登録できます。日本地理と日本歴史の全国範囲を学ぶ必要はなく、対象地域の歴史と文化に集中できます。
2つ目は、地域の需要に直結していることです。 自治体がこの制度を作るのは、その地域に外国人旅行者を案内する人材が必要だからです。つまり登録後の依頼につながる見込みがある状態で制度が作られています。
3つ目は、専門性を絞れることです。 全国どこでも案内できることは、必ずしも強みになりません。その地域のことを深く知っている人のほうが、旅行者の満足度は高くなります。
制約もあります。活動できるのは登録を受けた地域内に限られます。そのため、その地域に住んでいるか、通える範囲にいることが前提になります。また、すべての自治体がこの制度を持っているわけではありません。自分が活動したい地域に制度があるかどうかを、まずその自治体に確認する必要があります。
全国通訳案内士を目指しながら、並行して地域通訳案内士で実務経験を積むという進め方もあります。現場を知ってから試験に臨むほうが、口述試験のシミュレーションで実感を持って話せます。
資格がなくてもガイドができる。では資格を取る意味は何か
ここが、この分野を検討する人にとって最も実務的な問いです。業務独占が廃止された今、資格を取る意味を整理します。
意味がある場面の1つ目は、旅行会社からの依頼です。 旅行会社が外国人向けのツアーに付けるガイドを探すとき、資格の有無を条件にすることがあります。理由は、旅行者に対して質を保証する根拠が必要だからです。資格がなくても案内できる制度になったからこそ、発注する側は何かの基準で選別します。
2つ目は、名称を使えることです。 「全国通訳案内士」という肩書きを名刺やウェブサイトに書けるのは、登録を受けた人だけです。個人で仕事を受けるとき、この肩書きは信頼の材料になります。資格がない場合、類似する名称も使えないため、自分の能力を示す別の材料を用意する必要があります。
3つ目は、体系的に学ぶ機会そのものです。 試験の準備を通じて、日本の歴史、地理、文化を外国語で説明するための知識が整理されます。実務に入ってから、この土台があるかどうかで説明の深さが変わります。
逆に、資格を取らなくても成り立つ場面もあります。特定のテーマに絞った案内、たとえば食、酒、建築、アニメ、登山、自転車といった分野で、自分の専門性が強い場合です。旅行者が求めているのがそのテーマの知識であれば、通訳案内士の資格よりもその分野の経験が選ばれる理由になります。個人で旅行者と直接つながる形の仕事では、この傾向がより強く出ます。
判断の目安はこうです。旅行会社を通じた仕事を主軸にするなら資格を取る価値が大きく、個人の旅行者を直接受ける形で、かつ明確な専門分野があるなら、資格より実績と発信を先に作るほうが早く仕事につながります。
依頼を受けるまでの経路と、仕事の中身
実際に依頼が来る経路を整理します。
経路1 旅行会社とランドオペレーター 訪日旅行を扱う旅行会社、または現地手配を専門に行うランドオペレーターに登録します。ツアーの日程が決まった段階で、日程と言語に対応できるガイドに声がかかります。この経路は依頼の量が安定する一方で、単価は会社が設定します。
経路2 通訳案内士の団体 通訳案内士の団体は研修を実施しているだけでなく、会員向けに案件の情報を回していることがあります。団体に所属すると、研修の受講と案件の入口が同時に手に入ります。
経路3 個人向けのガイドマッチングサービス 旅行者が直接ガイドを探して予約するサービスに登録します。プロフィール、対応言語、扱えるテーマ、料金を自分で設定します。単価を自分で決められる一方で、選ばれるための発信が必要です。
経路4 自治体と観光協会 地域通訳案内士の制度を運営している自治体、地域の観光協会からの依頼です。イベント、視察の受け入れ、地域を巡るツアーなどがあります。
仕事の中身は、案内する対象によって変わります。ツアーガイドは、日程どおりに複数の観光地を回り、移動の管理、時間の管理、食事の手配の確認まで担います。個人旅行者の案内では、その日の体調や興味に合わせて行き先を調整する柔軟さが求められます。視察の受け入れでは、産業や制度の説明が中心になり、観光の知識より専門用語の理解が必要になります。
共通して求められるのは、説明する力より段取りの力です。電車の乗り継ぎ、雨天時の代替案、体調を崩した旅行者への対応、予約した店の変更。想定どおりに進まない場面の処理が、旅行者の満足度を決めます。この点は、語学の勉強では身に付きません。
収入の組み立て方と、繁忙期の偏り
収入の面で、この仕事の最大の特徴は季節による偏りです。
訪日旅行の需要は、桜の時期、夏休み、紅葉の時期、年末年始に集中します。この時期はガイドの手が足りなくなり、依頼が重なります。逆に閑散期には依頼がほとんど入りません。年間を通して均等に仕事がある形にはなりにくい構造です。
そのため、収入を組み立てるには繁忙期以外の仕事を用意する必要があります。実務として成り立っている組み合わせは3つあります。
1つ目は、翻訳との併用です。 観光の案内文、飲食店のメニュー、宿泊施設の案内、自治体の観光パンフレット。訪日客向けの文書の翻訳需要は年間を通してあります。ガイドで得た現場の感覚は、この種の翻訳で直接役に立ちます。旅行者が実際に何を知りたがるかを知っているかどうかで、訳文の質が変わります。
2つ目は、オンラインでの案内です。 現地に行かずに、映像を使って日本を紹介する形の仕事があります。移動が不要なため、閑散期の稼働として組み込めます。
3つ目は、語学を使う別の仕事との併用です。 企業の通訳、会議の通訳、語学の指導。時間帯を調整しやすい仕事を組み合わせることで、年間の収入を平準化できます。
単価そのものの考え方については、Webライターが文字単価を上げる方法【2026年版】|1円→5円のステップで整理している考え方がそのまま当てはまります。誰でもできる仕事を安く多く受けるのではなく、扱える人が少ない領域に絞る。ガイドの世界でも、汎用の観光案内より、特定のテーマに強いガイドのほうが単価の交渉が成り立ちます。
市場データから見た、語学力を収入に変える道筋
最後に、語学力を収入につなげる全体像を整理します。
文章を扱う仕事の報酬水準を知っておくと、通訳と翻訳の配分を考えるときの基準になります。著述家,記者,編集者の年収・単価相場では、文章を書く仕事の報酬の分布を公的な統計にもとづいて確認できます。ガイドの日当と、翻訳の1文字あたりの単価を同じ時間あたりの数字に換算して比べると、どちらに時間を使うべきかが見えてきます。
観光の情報を整理して発信する仕事も広がっています。近年はAIコンサル・業務活用支援のお仕事のように、業務の流れを整理して仕組みに落とす役割の依頼も増えており、多言語の対応をどう設計するかという相談も含まれます。現場を知っている人が仕組みの設計に関わると、実際に使えるものになります。語学の現場経験は、こうした場面でも材料になります。
20年この市場を見てきた立場から言えば、語学を仕事にして長く続いている人には共通点があります。語学力の高さを売りにしていないのです。売りにしているのは「この人に任せると楽だ」という部分です。段取りが確実で、報告が早く、想定外のときに自分で判断して動く。ガイドの仕事はとくにこの性質が強く、旅行者からも発注する旅行会社からも、同じ理由で指名されます。運営者として見てきた限りでは、単発の依頼を安く受け続ける人よりも、この関係づくりに時間を使った人のほうが、結果として収入が安定しています。
もうひとつ、手取りの構造の話をします。ガイドの仕事は仲介が重なりやすい領域です。旅行会社、ランドオペレーター、さらにその下請け。仲介が増えるほど、旅行者が払った金額と案内した人が受け取る金額の差は開きます。中間に手数料が乗らない直接取引であれば、依頼する側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%という条件が効いてくるのは、金額の見栄えではなく、この手取りの質の部分です。数年続けた人は、日当の額面より手取りの話をするようになります。
取引を進める実務の力も欠かせません。ビジネス文書検定は、見積書や請求書、報告書といった書類の形式を体系的に学べる検定で、個人で仕事を受けるときの実務の裏づけになります。旅行会社との契約でも、自治体からの受託でも、書類のやりとりが必ず発生します。ここが整っている人は、継続して依頼を受けやすくなります。
観光通訳士という名前で探していた方に向けて、要点を確認します。正式な資格は全国通訳案内士と地域通訳案内士の2つで、前者は国家試験、後者は自治体の研修が入口です。2018年の法改正で資格がなくても有償の案内はできるようになりましたが、資格名とこれに類似する名称は使えません。試験は年1回で、受験資格に年齢や学歴の制限はありません。まず自分が活動したい地域に地域通訳案内士の制度があるかを確認する、それが最も費用をかけずに始められる一歩です。
よくある質問
Q. 観光通訳士という資格はあるのですか?
制度としては存在しません。国が定めているのは通訳案内士法にもとづく「全国通訳案内士」と、各自治体が研修を通じて登録する「地域通訳案内士」の2つです。資格を持たない人がこれらの名称、またはこれに類似する名称を使うことはできないため、肩書きとして使う場合は公式の資格名を確認してください。
Q. 資格がなくても外国人を有償で案内できますか?
できます。平成30年1月4日に施行された改正通訳案内士法で業務独占規制が廃止され、資格を持たない人でも有償で通訳案内業務を行えるようになりました。ただし「全国通訳案内士」「地域通訳案内士」やこれに類似する名称は使用できません。旅行会社が資格を条件にする場合があるため、受ける仕事の経路によって必要性が変わります。
Q. 全国通訳案内士試験はいつ実施されますか?
毎年1回です。2026年度は筆記試験が8月16日、筆記試験の合格発表が9月25日、口述試験が11月29日、最終合格発表が2027年1月22日の予定でした。願書受付は6月1日から7月9日までで、すでに終了しています。2026年度は施行要領の公開と出願が電子申請のみで、郵送での受付は行われていません。
Q. 試験に受験資格はありますか?
ありません。JNTOの説明では、年齢、性別、学歴、国籍などに関係なく受験できます。外国語の種類は英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語の10種です。合格後は都道府県の登録を受け、その後5年に1度、観光庁が登録した研修機関の研修を受講する必要があります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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