事業計画書の書き方|書く項目と数字の組み立て方


この記事のポイント
- ✓売上と費用と資金の数字の組み立て方
- ✓融資と補助金と社内向けでの書き分け
- ✓よくある失敗まで順に解説します
事業計画書を書く必要が出てきたものの、何を書けばよいのか、数字はどうやって決めればよいのかが分からず、ひな形を前に手が止まっている。創業の融資を申し込む人、補助金に応募する人、社内で新しい事業を提案する人の多くが、同じところでつまずきます。事業計画書は、事業の中身と、それが成り立つ根拠を、読み手が判断できる形で示す書類です。文章の上手さより、項目がそろっていること、数字に根拠があること、項目どうしが矛盾していないことが評価を分けます。この記事では、事業計画書の目的と読み手、書く項目、各項目の書き方と例文、売上と費用と資金の数字の組み立て方、提出先ごとの書き分け、提出前の点検の方法までを順に説明します。計画書の作成を複数人で分担して進める場合の段取りには、担当と期限をボードで共有できるPinatecaを使う方法もあわせて紹介します。
事業計画書とは何か
事業計画書とは、これから始める事業や、すでにある事業を広げる計画について、何を、誰に、どのように提供し、どれだけの売上と利益を見込み、そのためにどれだけのお金が必要かをまとめた書類です。人材サービスの会社のコラムは、事業計画書を次のように説明しています。
事業計画書は、会社の創業や事業の立ち上げ・拡大の際、事業に関する戦略や実行計画、数値計画などを詳細に説明した文書です。金融機関からの融資や助成金の申請、投資家からの資金調達において、事業計画書の提出が求められます。 出典: persol-group.co.jp
事業計画書には決まった1つの様式があるわけではありません。提出先が様式を用意していればそれに従い、なければ自分で項目を組み立てます。いずれの場合も、読み手が知りたいことは大きく変わらないため、基本の項目を押さえておけば、どの提出先にも応用できます。
事業計画書を書く3つの目的
事業計画書を書く目的は、大きく3つあります。
- お金を集めるため。金融機関からの融資、補助金や助成金の申請、出資者からの出資では、事業計画書が審査や判断の中心になります
- 社内で事業の実施を決めてもらうため。新しい事業や大きな投資の提案では、経営者や役員が判断するための材料になります
- 自分の考えを整理するため。頭の中にある事業の構想を書き出すことで、足りない情報や、無理のある見通しに気づけます
3つ目の目的は見落とされがちですが、事業計画書を書く過程で最も価値があるのは、実はここです。書いてみると、「誰に売るのか」が曖昧だったり、「毎月いくら費用がかかるのか」を把握していなかったりすることに気づきます。提出のためだけでなく、事業そのものの点検のために書く、と考えると、書く意味が変わってきます。書きながら疑問に感じた点は、そのままにせず、調べたり人に聞いたりして埋めていきます。その積み重ねが、面談で質問されたときに自信を持って答えられる準備にもなります。
読み手を意識する
事業計画書は、読み手によって重視される点が違います。金融機関は、貸したお金が約束どおり返ってくるかを見ます。補助金の審査では、事業が補助の目的に合っているか、効果が見込めるかが評価されます。出資者は、事業がどれだけ大きく育つ可能性があるかに関心を持ちます。社内の経営者は、会社の方針に合っているか、投資に見合う利益が出るかを見ます。書き始める前に、誰が読み、何を判断するのかを確かめておくことが、伝わる計画書の第一歩です。
事業計画書に書く項目
提出先によって様式は違いますが、事業計画書に入れる項目はおおむね共通しています。基本となるのは次の10項目です。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 1. 事業の概要 | どのような事業かを数行で |
| 2. 創業や事業の動機 | なぜこの事業を始めるのか、なぜ自分がやるのか |
| 3. 経営者の経歴 | これまでの仕事の経験、資格、身につけた技術 |
| 4. 商品・サービス | 何を、誰に、いくらで売るのか。強みは何か |
| 5. 市場と競合 | 市場の規模や動き、競合する相手と違い |
| 6. 販売の方法 | どうやってお客様に知ってもらい、買ってもらうのか |
| 7. 取引先と取引の条件 | 仕入れ先、販売先、入金と支払いのタイミング |
| 8. 人員の計画 | 従業員の数、採用の予定 |
| 9. 必要な資金と調達の方法 | 設備や開業の費用、運転資金と、その出どころ |
| 10. 収支の見通し | 売上、費用、利益の見込みと、その計算の根拠 |
創業の融資を扱う日本政策金融公庫は、創業計画書の様式と記入例を公開しています。業種ごとの記入例もあり、項目の書き方の見本として役立ちます。様式と記入例は日本政策金融公庫の各種書式のページから無料で入手できます。
各項目の書き方と例文
ここからは、項目ごとの書き方を例文と一緒に説明します。例文は、在宅で働く人向けにオンラインの事務代行を始める個人事業を想定したものです。
1. 事業の概要
事業の概要は、計画書の冒頭に置かれ、読み手が最初に目にする部分です。何を、誰に、どのように提供する事業なのかを、3〜5行で書きます。
例文:小規模な会社や個人事業主を対象に、請求書の作成、経費の入力、メールの一次対応などの事務作業を、オンラインで代行するサービスを提供します。1か月あたりの作業時間に応じた定額の料金で契約し、事務の担当者を雇う余裕のない事業者の負担を軽くします。
2. 創業や事業の動機
なぜこの事業を始めるのかを書きます。読み手は、動機から事業への本気度と、事業を続ける力があるかを読み取ります。自分の経験の中で気づいた課題と、それを解決したいと考えた理由を、具体的に書きます。
例文:会計事務所で8年間勤務し、顧客の小規模事業者から「本業に集中したいが、事務の作業に時間を取られる」という相談を多く受けてきました。一方で、事務の担当者を雇うほどの作業量はないという事業者が多く、短い時間だけ外部に頼める仕組みに需要があると考え、創業を決めました。
3. 経営者の経歴
これまでの職歴、担当した業務、役職、資格、身につけた技術を書きます。事業に関係のある経験を中心に、年数と具体的な業務の内容を書くと、事業を進める力があることが伝わります。
4. 商品・サービス
何を、誰に、いくらで売るのかを書きます。あわせて、他の選択肢ではなく自分の商品が選ばれる理由、つまり強みを書きます。
例文:主な商品は、1か月あたり10時間までの事務代行で、料金は月額5万円(税抜)です。追加の作業は1時間あたり5,000円で受けます。会計事務所での経験を生かし、経費の入力と請求書の作成を会計ソフトに合わせた形で行えることが強みです。
5. 市場と競合
事業を行う市場の規模や動き、競合する相手を調べて書きます。競合については、名前を挙げて批判するのではなく、自社との違いを事実で書きます。店舗を出す事業なら、出店する場所の周りの状況も書きます。
6. 販売の方法
どうやってお客様に知ってもらい、契約してもらうのかを書きます。「インターネットで集客する」だけでなく、どのサイトや手段で、月に何件の問い合わせを見込み、そのうち何件が契約になる見込みなのかまで書くと、売上の見通しの根拠になります。
7. 取引先と取引の条件
仕入れ先や外注先、販売先と、お金の入金と支払いのタイミングを書きます。売上が上がっても入金が翌月や翌々月になる場合は、その間の支払いに備える運転資金が必要になるため、資金の計画と深く関わる項目です。
8. 人員の計画
開業時の従業員の数と、今後の採用の予定を書きます。家族が手伝う場合は、その人数と役割も書きます。人件費は収支の見通しの大きな費用になるため、人数と給与の見込みは収支の計算と一致させます。
9. 必要な資金と調達の方法
事業を始めるために必要なお金を、設備資金と運転資金に分けて書きます。設備資金は、パソコン、機械、店舗の内装など、長く使うものにかかるお金です。運転資金は、仕入れ、人件費、家賃、広告費など、事業を回すために毎月かかるお金です。そのうえで、そのお金を自己資金、借入、補助金などのどこから用意するのかを書きます。必要な資金の合計と、調達する資金の合計は、必ず一致させます。
10. 収支の見通し
売上、費用、利益の見込みを、開業直後と、事業が軌道に乗った後に分けて書きます。数字の組み立て方は、次の節で詳しく説明します。
数字の組み立て方
事業計画書の中で最も重視され、最も手が止まりやすいのが数字の部分です。数字は「希望」ではなく「根拠のある見込み」として示す必要があります。
売上は要素に分けて計算する
売上の見込みは、要素に分けて掛け算で計算します。要素に分けると、どの数字に根拠が必要なのかがはっきりし、後で実績と比べるときにも、どの要素が計画とずれたのかを確かめられます。業種によって分け方は違いますが、代表的なものは次のとおりです。
| 業種 | 売上の計算の例 |
|---|---|
| 飲食店 | 席数 × 1日の回転数 × 客単価 × 営業日数 |
| 小売店 | 1日の来店者数 × 購入する人の割合 × 客単価 × 営業日数 |
| サービス業 | 契約数 × 1件あたりの月額料金 |
| 製造業・卸売業 | 取引先ごとの月間の受注見込み × 単価 |
先ほどの事務代行の例なら、「契約数 × 月額料金」に追加作業の売上を加えた計算になります。開業から半年は月に2件ずつ契約が増え、6か月目に12件になると見込めば、6か月目の売上は12件 × 5万円で60万円になります。この「月に2件ずつ」の根拠として、前職の知り合いの事業者から何件の相談を受けているか、問い合わせの何割が契約になると見込むかを書き添えます。
費用は固定費と変動費に分ける
費用は、売上に関係なく毎月かかる固定費と、売上に応じて増える変動費に分けて見積もります。固定費は、家賃、人件費、通信費、ソフトウェアの利用料、借入の利息などです。変動費は、仕入れ、外注費、販売の手数料などです。漏れがないように、開業後の1か月の生活を想像しながら、出ていくお金を1つずつ書き出します。
利益から返済できるかを確かめる
借入をする場合は、毎月の利益から返済ができるかを必ず確かめます。個人事業の場合は、利益の中から自分の生活費も出す必要があります。融資の審査では、返済の原資となる利益が確保されているかが厳しく見られます。
根拠を書き添える
日本政策金融公庫が公開している創業計画書のセルフチェックリストには、事業の見通しについて次のような確認の項目が並んでいます。
計算根拠をもって売上高や売上原価の予測を立てていますか? 経費に漏れがないか検討していますか? 利益から借入の返済が可能な収支計画となっていますか? 出典: jfc.go.jp(創業計画書 セルフチェックリスト)
この3つの問いに答えられる数字になっていれば、収支の見通しの骨組みはできています。売上の計算の式、費用の内訳、返済の額と利益の関係を、計画書の中か別紙に書いておきます。
3つの段階で示す
収支の見通しは、開業直後、軌道に乗った後(たとえば1年後)、さらに先(3年後など)の3つの段階で示すと、事業の成長の筋道が伝わります。開業直後は売上が少なく赤字になることも多いため、その期間の赤字を補う運転資金を用意しているかどうかも、セルフチェックリストで確認の項目に挙げられています。事業が軌道に乗るまでの半年程度の赤字を補えるだけの資金を、必要な資金の中に含めておくと安心です。
提出先ごとの書き分け
基本の項目は同じでも、提出先によって力を入れるべき部分が違います。
融資の申し込み
金融機関への融資の申し込みでは、返済の確実さが最も重視されます。収支の見通しの根拠と、返済の計画を丁寧に書きます。自己資金の額も重視される傾向があり、日本政策金融公庫のセルフチェックリストにも「自己資金が少なく、借入依存の資金調達計画になっていませんか?」という項目があります。自己資金をどのように貯めてきたかを説明できるようにしておくと、事業への準備の度合いが伝わります。
補助金の申請
補助金の申請では、事業が補助金の目的に合っているかどうかが審査されます。公募の要領に書かれた審査の項目を読み、その項目ごとに対応する内容を計画書に書くのが基本です。審査の項目と計画書の見出しを対応させておくと、審査する人が評価しやすくなります。補助金ごとの書き方のポイントは、小規模事業者持続化補助金2026|採択率を上げる事業計画書の書き方や、事業再構築補助金2026|最新公募の変更点と採択されるための計画書作成法で詳しく解説しています。
社内での提案
社内で新しい事業を提案する場合は、会社の方針や既存の事業との関係、投資に対してどれだけの期間で利益が回収できるかが重視されます。失敗した場合の損失の範囲と、撤退の基準を書いておくと、経営者は判断しやすくなります。
書き始める前に調べておくこと
事業計画書の質は、書き始める前の下調べで大きく変わります。机の上で考えた数字だけで書くと、根拠の弱い計画書になります。書く前に、次のことを調べておきます。
お客様になりそうな人の声
売りたい商品やサービスについて、お客様になりそうな人に実際に話を聞きます。前職の取引先、知人の紹介、同じ業界の集まりなどで、5人から10人でも話を聞くと、「その料金なら使いたい」「その内容では足りない」といった生の声が集まります。聞き取りの結果は、売上の見込みの根拠として計画書にそのまま書けます。何人に聞き、何人が利用を希望したのかを記録しておきます。
競合の料金と内容
同じような商品やサービスを提供している相手の料金、内容、対象のお客様を調べます。公式のサイトや案内の資料で確かめられる範囲で一覧にし、自分の商品との違いを整理します。競合より高い料金をつけるなら、その理由となる強みを、低い料金をつけるなら、それでも利益が出る理由を説明できるようにしておきます。
費用の見積もり
設備、内装、ソフトウェア、広告など、開業にかかる費用は、できるだけ見積書を取ります。日本政策金融公庫のセルフチェックリストにも、必要な資金について「見積金額が適切か、相場を調べたり、相見積もりを取得するなどして、検証していますか?」という項目があります。相見積もりとは、複数の会社から見積もりを取って比べることです。見積書は、融資の申し込みで提出を求められることもあるため、保管しておきます。
公的な統計
市場の規模や地域の事業所の数、人口の動きなどは、国や自治体が公表している統計で調べられます。統計の数字を使う場合は、どの統計の、いつの時点の数字かを書き添えます。出どころの分からない数字は、計画書の信用を下げる原因になります。
収支計画表の作り方
収支の見通しは、文章で説明するより、表にまとめて示すほうが伝わります。ここでは、先ほどの事務代行の例で、開業直後と1年後の収支を表にします。数字は説明のための例です。
| 項目 | 開業直後(1か月あたり) | 1年後(1か月あたり) | 計算の根拠 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 20万円 | 75万円 | 契約4件から15件へ × 月額5万円 |
| 外注費 | 0円 | 10万円 | 繁忙期の作業の一部を外部に依頼 |
| 通信費・ソフトウェア | 3万円 | 4万円 | 会計ソフト、通信、作業用の道具の利用料 |
| 広告費 | 5万円 | 3万円 | 開業時の案内とWebの広告 |
| 家賃 | 0円 | 0円 | 自宅で開業 |
| その他の経費 | 2万円 | 3万円 | 交通費、消耗品など |
| 借入の利息 | 1万円 | 1万円 | 借入300万円の利息の見込み |
| 利益 | 9万円 | 54万円 | 売上高から費用を引いた額 |
個人事業の場合、この利益の中から、自分の生活費と、借入の元金の返済を出すことになります。開業直後の利益9万円では生活費が足りないため、その差を自己資金や運転資金でどう補うのかを、資金の計画に書いておきます。1年後の見通しでは、利益から生活費と返済を出しても手元にお金が残るかを確かめます。
表の右側に計算の根拠の列を設けておくと、読み手は数字の出どころをその場で確かめられます。この列が空欄の行があれば、まだ根拠が固まっていない数字だということが、書いている本人にも分かります。
事業計画書の分量と体裁
事業計画書の分量に決まりはありませんが、提出先の様式があればその枠に収め、なければA4で5〜10枚程度を目安にします。分量が多ければよいわけではなく、読み手が判断に必要な情報が、読みやすく整理されていることが大切です。
体裁で気をつけたいのは、見出しを項目ごとにはっきり分けること、1つの段落を長くしすぎないこと、数字は表にまとめることの3つです。書体と文字のサイズは全体でそろえ、色を使う場合は強調したい部分に絞ります。提出前に印刷して読み返すと、画面では気づかなかった読みにくさや誤字が見つかります。
既存の事業を広げるための計画書では、創業の計画書の項目に加えて、これまでの売上と利益の推移、既存の事業との関係、新しい取り組みで何が変わるのかを書きます。過去の実績は、決算書や確定申告の数字をそのまま使えるため、根拠として強い材料になります。
説得力を上げるポイント
項目がそろい、数字ができたら、読み手に伝わる計画書に仕上げます。
結論を先に書く
各項目の冒頭に、その項目で言いたいことを1文で書きます。読み手は多くの計画書を読むため、最初の1文で要点がつかめる書類ほど、内容が正しく伝わります。
数字と固有名詞で書く
「多くのお客様に喜ばれる」「市場は拡大している」のような曖昧な表現ではなく、「近隣の事業者20社に聞き取りを行い、6社が利用を希望した」「市内の事業所数は約3,000」のように、数字と固有名詞で書きます。数字の出どころは、公的な統計、自分で行った調査、見積書など、確かめられるものを使います。
弱みとその対策も書く
強みだけを並べた計画書は、かえって信用されにくくなります。事業の弱みや起こりうるリスクと、その対策を自分から書いておくと、事業を冷静に見ていることが伝わります。たとえば「営業の経験が少ない」という弱みに対しては、「開業前に紹介をお願いできる事業者を10社確保している」のような対策を書きます。
図や表を使う
収支の見通しや資金の計画は、文章より表で示すほうが読みやすくなります。事業の仕組みも、お金とサービスの流れを矢印でつないだ図にすると、一目で伝わります。
提出前の点検
書き終えたら、提出の前に次の点を確かめます。
- 必要な資金の合計と、調達する資金の合計が一致しているか
- 人員の計画と、収支の人件費が一致しているか
- 販売の方法で書いた件数と、売上の計算の件数が一致しているか
- 売上の計算の式が書かれているか
- 費用に漏れがないか(税金、保険料、借入の利息、ソフトウェアの利用料など)
- 開業直後の赤字を補う運転資金が含まれているか
- 誤字や、数字の単位の間違いがないか
特に、項目どうしの数字の食い違いは、読み手がすぐに気づく点です。1か所の食い違いが見つかると、他の数字まで疑われるきっかけになります。表計算ソフトで数字を管理し、計画書の各項目の数字を同じ表から引用するようにすると、食い違いを防げます。家族や知人、創業の相談窓口などに読んでもらい、分かりにくい点を指摘してもらうのも効果的です。
面談や質疑に備える
融資の申し込みや補助金の審査では、計画書を提出した後に、面談や質問への回答を求められることがあります。社内の提案でも、役員会で説明と質疑の時間が設けられるのが普通です。計画書は書いて終わりではなく、自分の言葉で説明できて初めて完成します。
よく聞かれること
面談や質疑でよく聞かれるのは、次のような点です。
- なぜこの事業を、この時期に始めるのか
- 売上の見込みの根拠は何か。最初のお客様の当てはあるのか
- 計画どおりに売上が伸びなかった場合、どうするのか
- 自己資金はどのように準備したのか
- 経営者自身の経験は、この事業のどこに生きるのか
これらの問いに、計画書に書いた内容と矛盾しない答えを用意しておきます。特に、売上が計画を下回った場合の対応は、計画書に書いていなくても聞かれることが多い点です。費用をどこまで減らせるか、どの時点で事業の見直しを判断するのかを、自分の中で決めておきます。
数字は手元で説明できるように
面談では、計画書の数字について「この月の売上はどう計算したのか」と細かく聞かれることがあります。計画書に載せきれなかった計算の過程は、手元の資料として持っておくと、その場で答えられます。表計算ソフトのファイルを印刷して持参するか、画面で見せられるように準備しておきます。
分からないことは正直に答える
質問に答えられないときに、その場で思いつきの数字を答えるのは避けます。「その点はまだ調べきれていないので、確かめてからお答えします」と伝え、後日きちんと回答するほうが、信用を損ないません。
よくある失敗
事業計画書でよく見かける失敗を整理します。
売上の見込みが高すぎる
開業直後から売上が順調に伸びる計画は、読み手に疑問を持たれます。開業直後は知名度がなく、売上が予想より伸びないのが普通です。売上は控えめに見積もり、それでも事業が成り立つかを確かめます。
費用の見積もりが漏れている
家賃や人件費は書いていても、通信費、ソフトウェアの利用料、交通費、保険料、税金などが漏れていることがあります。漏れた費用の分だけ、実際の利益は計画より少なくなります。年に1回だけかかる費用(更新料、保険料、税金など)は、月ごとの計画から漏れやすいので、年間の一覧を作ってから月に割り振ります。
想いばかりで根拠がない
事業への熱意は大切ですが、熱意だけでは事業が成り立つ根拠になりません。動機の項目では熱意を伝え、他の項目では事実と数字で根拠を示す、という使い分けを意識します。
他人の計画書を写している
記入例やひな形を参考にするのはよいことですが、内容をそのまま写すと、自分の事業の実態と合わない計画書になります。記入例は項目の書き方の見本として使い、中身は自分の事業に合わせて一から書きます。
一度書いたら見直さない
事業計画書は、提出したら役目を終える書類だと考えられがちですが、実際に事業を始めると、計画と実績の差が必ず出てきます。開業から3か月、半年、1年といった区切りで計画書を読み返し、売上や費用が計画とどれだけ違ったのか、なぜ違ったのかを確かめると、次の打ち手が見えてきます。追加の融資や次の補助金に申し込むときも、前回の計画と実績を比べて説明できると、計画を立てる力と実行する力の両方を示せます。計画書の数字を管理している表計算ソフトのファイルに、実績の列を加えて毎月記入していくと、見直しの手間が小さくなります。
計画書の作成を複数人で進める段取り
会社で補助金の申請や新規事業の提案のために事業計画書を作る場合は、複数の人で分担することがよくあります。営業の担当者が販売の方法を、経理の担当者が資金と収支を、技術の担当者が商品の説明を書く、といった分担です。このとき、「どの項目を誰が書いているのか」「どこまで進んでいるのか」「申請の締め切りまでに何が残っているのか」が見えにくくなり、締め切りの直前に慌てることになりがちです。
分担して書く場合は、まず項目ごとに担当と期限を決め、全体の取りまとめ役を1人決めます。数字は1つの表計算ソフトのファイルで管理し、各項目の担当者はそこから数字を引用するようにすると、食い違いを防げます。
項目ごとの担当と期限と進み具合を複数人で共有したい場合の選択肢の1つが、ボードで仕事を進めるプロジェクト管理のPinatecaです。公式の案内によると、Pinatecaではカンバン、ガントチャート、カレンダー、リストなど8種類のボードを無料のプランから使え、5人までのチームならボード10個まで無料と案内されています。計画書の項目ごとに1枚のカードを作って担当者と締め切りを付け、「執筆中」「確認待ち」「修正中」「完成」のような列に並べると、申請の締め切りまでに残っている作業が一目で分かります。カードには見積書や参考資料を添付でき、コメントで修正の指示をやり取りできるので、メールにやり取りが散らばるのを防げます。計画書の本文は文書作成のソフトで書き、作業の段取りだけをボードで管理する、という分担です。Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
事業計画書の作成を支える仕事と専門家
事業計画書を自分だけで書くのが難しい場合は、外部の力を借りる方法があります。創業の相談窓口や、商工会議所、商工会などで相談を受け付けているほか、計画書の作成の支援を仕事として請け負う専門家もいます。
業務委託の仕事を紹介するサイトでも、事業計画書の作成支援、補助金の申請書類の作成、市場の調査といった依頼が見られます。どのような仕事があるかは、経営・事業計画・起業支援のお仕事で、依頼の種類と進め方を紹介しています。経営の診断と助言を行う国家資格としては中小企業診断士があり、中小企業診断士のページで、試験の仕組みと資格を生かした働き方を確かめられます。補助金の上限額や対象の経費まで含めて計画を組み立てる方法は、小規模事業者持続化補助金2026|上限250万円を勝ち取る事業計画のコツで解説しています。
在宅ワークとフリーランスの仲介を20年あまり続けてきた運営者として見てきた限りでは、フリーランスとして独立する人の中にも、事業計画書を書いたことがきっかけで、自分の仕事の値付けを見直した人が少なくありません。月にどれだけの売上が必要で、そのためには何件の仕事を、いくらで受ける必要があるのかを計算すると、それまでの単価では生活が成り立たないことに気づくことがあるからです。仲介の手数料が上乗せされない直接の取引では、受け取る金額がそのまま売上になるため、収支の見通しを立てやすく、計画と実際の差も確かめやすくなります。事業計画書は、お金を借りるためだけの書類ではなく、自分の事業を数字で見直すための道具でもあります。
よくある質問
Q. 事業計画書には何を書けばよいですか?
事業の概要、創業の動機、経営者の経歴、商品とサービス、市場と競合、販売の方法、取引先と取引の条件、人員の計画、必要な資金と調達の方法、収支の見通しの10項目が基本です。提出先が様式を用意している場合はそれに従い、ない場合はこの項目で組み立てると、どの提出先にも応用できる計画書になります。
Q. 売上の見込みはどうやって計算すればよいですか?
売上を要素に分けて掛け算で計算します。飲食店なら席数と回転数と客単価と営業日数、サービス業なら契約数と月額料金のように分けます。それぞれの数字について、聞き取りの結果や問い合わせの見込みなど根拠を書き添えることが大切です。開業直後は売上が伸びにくいため、控えめに見積もっても事業が成り立つかを確かめます。
Q. 事業計画書のひな形はどこで手に入りますか?
日本政策金融公庫が創業計画書の様式と業種ごとの記入例を無料で公開しており、項目の書き方の見本として使えます。補助金に申請する場合は、それぞれの公募の要領に様式が示されていることが多いので、そちらを使います。記入例の内容をそのまま写すのではなく、自分の事業の実態に合わせて一から書くことが大切です。
Q. 事業計画書で審査の担当者が重視するのはどこですか?
融資では、利益から借入の返済ができるか、自己資金がどれだけあるかが重視されます。補助金では、事業が補助の目的と審査の項目に合っているかが評価されます。どちらの場合も、売上と費用の数字に根拠があるか、必要な資金と調達する資金の合計が一致しているかなど、項目どうしに矛盾がないかが見られます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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