未経験から母子生活支援施設で働く|受け入れている募集と、慣れるまで


この記事のポイント
- ✓母子生活支援施設で未経験から働きたい方へ
- ✓資格不問で受け入れている募集の種類
- ✓施設の1日がどう動くか
「母子生活支援施設で働いてみたいのですが、未経験でも大丈夫でしょうか」
このご相談、最近とても増えています。そしてお答えは、大丈夫です。未経験を受け入れている募集は、実際に一定数あります。
ただ、安心してくださいと言うだけでは不誠実だと思うので、正直に書きますね。この職場は「子どもの世話をする場所」だと思って入ると、必ず戸惑います。ここは母親と子どもが一緒に暮らしている場所で、支援の相手は子どもだけではないからです。そこがわかっていれば、最初の数か月はずっと楽になります。
この記事では、どんな募集が未経験を受け入れているのか、施設の1日がどう動いているのか、入った人が最初にどこでつまずくのか、そして慣れるまでに何が起きるのかを、順番にお話しします。
母子生活支援施設は、母親と子どもが一緒に入れる唯一の施設です
まず、この施設がどういう場所なのかを整理しておきましょう。ここを曖昧にしたまま応募すると、面接で話がかみ合いません。
母子生活支援施設は、児童福祉法に定められた児童福祉施設のひとつです。特徴は、母親と子どもが離れずに一緒に入所できること。児童福祉施設の中で、親子が同じ建物で暮らせるのはここだけです。
入所の理由として最も多いのは、配偶者からの暴力です。全国調査では入所世帯の半数以上がこの理由で、次いで住宅事情、経済的な困窮が続きます。つまり、入ってくる家族の多くは、それまでの生活を突然手放して来ています。荷物も少ない。住民票を移せない事情を抱えていることもあります。
施設の形は、集合住宅に近いと思ってください。世帯ごとに独立した居室があり、台所も風呂も各世帯にある施設が多い。母親が炊事をして、子どもがそこで宿題をして、夜になれば自分たちの部屋で眠ります。職員が生活のすべてを代わりにやるわけではありません。
ここが、児童養護施設との決定的な違いです。児童養護施設では、職員が食事を作り、起床を促し、寝かしつけます。母子生活支援施設では、それをするのは母親です。職員の役割は、その母親が自分の力で生活を立て直していけるように、隣で支えることです。
この構造を理解していないと、最初の1か月がとてもつらくなります。「子どものために何かしてあげたい」という気持ちで入った人が、母親の子育てのやり方に口を出したくなる場面が必ず来るからです。でも、そこで手を出すと、母親の自立を遠ざけてしまう。どこまで手を出して、どこから待つのか。この距離の取り方が、この職場のいちばん難しいところであり、いちばん面白いところでもあります。
そして、24時間365日、職員が常駐しています。これも大事な点です。
職員は、24時間365日常駐しています。玄関はオートロックで、訪問者は職員がカメラで確認した上で開錠するので、知らない人が入ってくることはありません。子どもとお母さんが安全に安心して暮らせるよう、生活の場を提供し、自立に向けた支援をおこないます。 出典: greencourt-shinsei.jp
常駐している、ということは、夜間も誰かが施設にいるということです。ここに未経験の入口があります。
未経験を受け入れている募集は、大きく分けて4種類あります
求人を眺めていると、「資格必須」と書かれたものばかりが目に入って、諦めてしまう方がいます。でも、募集の種類をわけて見ると景色が変わります。
1つ目は、宿直の非常勤です。これがいちばん入りやすい入口です。
母子生活支援施設での宿直アルバイト募集です。主な業務は事務所での利用者対応、電話番、施設内巡回、記録、簡易事務、夜間・早朝の利用者対応時の職員への取次ぎとなります。資格は不要で、児童福祉や児童養護施設への理解がある方が対象です。勤務時間は16:00から翌11:15までで、23:00から6:00は仮眠時間となります。仮眠時間とは別に45分と15分の休憩時間があります。給与は時給1,230円で、22時から23時は深夜割増となります。 出典: 求人ボックス
この募集文をよく読んでみてください。書かれている仕事は、事務所での対応、電話番、巡回、記録、そして取次ぎです。判断を求められる仕事が入っていません。何かが起きたら常勤の職員へつなぐ。それが役割として明記されています。
未経験で入るなら、この形はとても理にかなっています。自分ひとりで決めなくていい状態で、施設の空気に慣れることができるからです。
2つ目は、少年指導員という職種です。名前がわかりにくいのですが、施設で暮らす子どもの生活と学習を支える職員のことです。この職種は、保育士や児童指導員任用資格が望ましいとされつつ、資格不問で募集している施設が実際にあります。子育て経験や、学習支援のボランティア経験が評価される枠でもあります。
3つ目は、パートの支援補助です。夕方から夜にかけての数時間だけ、あるいは平日の日中だけ入る形です。学童保育を併設している施設なら、放課後の時間帯に子どもを見る仕事になります。
4つ目は、調理と事務です。施設によっては給食を出しているところがあり、調理スタッフを資格不問で募集しています。事務は経理や書類仕事の経験が活きる職種で、福祉の資格は問われません。
求人票には、こういう記載が並びます。
【仕事内容】<母子の自立した生活を支援!>将来の自立に向けた、家事サポートや就労支援...【勤務時間】シフト制(実働8時間)<シフト例>10:00~19:0011:30~20:30 など 母子生活支援施設は交代で宿直あ... 出典: 求人ボックス
家事サポートや就労支援、という言葉に注目してください。ここに、この職場の性格が出ています。就労支援という言葉が出てくるのは、支援の相手が働く年齢の大人だからです。保育の現場には出てこない言葉です。
この施設の1日は、母親の生活時間で動きます
未経験の方に、いちばんイメージしていただきたいのがここです。時間を追ってみましょう。
朝、職員は7時台には動き始めます。ただ、子どもを起こしに行くわけではありません。起こすのは母親です。職員がすることは、遅れている世帯がないかを気にかけながら、玄関を通る親子に挨拶をすること。それだけのように見えて、ここで拾える情報がたくさんあります。
昨日まで元気だった子が今朝は俯いている。お母さんの顔色が悪い。上の子だけ先に出て行った。こういう小さな変化が、あとで意味を持ちます。
9時を過ぎると、母親たちの多くは仕事へ出ます。ここから昼までが、職員にとっての事務と外回りの時間です。福祉事務所へ連絡を入れ、学校とやり取りし、病院の予約に同行し、住まい探しのために不動産会社を回る。書類の作成も山のようにあります。自立支援計画、日々の記録、関係機関との協議記録。
未経験の方が驚くのは、この書類の量です。「福祉の仕事は人と関わる仕事」というイメージで入ると、机に向かう時間の長さに戸惑います。でも、この記録が次の支援を決めていくので、避けては通れません。
15時を過ぎると、子どもが帰ってきます。学童保育を併設している施設なら、ここから宿題と遊びの時間です。併設していない施設でも、子どもは事務所に顔を出します。お菓子をもらいに来る子、ただ話をしに来る子、何も言わずに座っている子。
夕方から夜にかけてが、この職場のいちばん濃い時間です。母親が仕事から帰ってきます。疲れています。子どもが甘えたくて騒ぐ。母親の余裕がない。そこで声が大きくなることがあります。
このとき職員がどう動くかが、支援の中身そのものです。すぐ入っていくのか、しばらく様子を見るのか、翌日に「昨日は大変でしたね」と声をかけるのか。正解はありません。その家族との関係の深さによって、選べる手が変わります。
21時を過ぎると施設は静かになります。宿直の職員が残り、巡回と記録を続けます。夜中に居室から泣き声が聞こえてくることもある。緊急の連絡が入ることもある。ここでの判断は、宿直者ひとりに背負わせない仕組みになっている施設がほとんどです。
未経験の人が最初につまずくのは、たいてい同じ3つです
これまで何人もの方から、入職後のご相談を受けてきました。つまずく場所には、はっきりした傾向があります。
1つ目は、母親との距離感です。
同年代だったり、自分より年下だったりすることも多い。親しみが生まれるのは自然なことです。でも、友人のような関係になってしまうと、支援の話ができなくなります。かといって、事務的に接すると心を開いてもらえない。
この揺れは、誰もが通ります。ベテランの職員でも、いまだに悩んでいると話す人がいます。だから、答えを出そうとしなくて大丈夫です。迷ったら先輩に聞く。それを繰り返すうちに、自分なりの距離が見つかります。
2つ目は、自分の価値観が出てしまうことです。
これは、あるご相談の例です。入職して間もない方が、ある母親の部屋が片づいていないこと、子どもに市販の惣菜ばかり食べさせていることが気になって、つい「もう少しこうしたほうが」と言ってしまった。そのあと、母親が職員を避けるようになってしまった、と。
その方は悪気があったわけではありません。むしろ真面目な方でした。でも、その家族がどれだけの力を使ってそこまでたどり着いたのかを、まだ知らなかったのです。
暴力から逃れて、荷物も持たずに来て、仕事を探して、子どもを学校に通わせて。そこまでやっている人に対して、部屋の片づけは「まだできていないこと」ではなく「今は優先順位が低いこと」かもしれません。
3つ目は、自分の心が持っていかれることです。
入所の背景には、つらい話が含まれます。それを聞いたとき、眠れなくなる方がいます。休みの日にも思い出してしまう方がいます。
これは弱さではありません。まともな反応です。むしろ何も感じない状態のほうが危ない。大事なのは、ひとりで抱えないことです。多くの施設にはケース会議やスーパービジョンの仕組みがあり、職員が話す場が用意されています。それを遠慮なく使ってください。
児童養護施設や保育園とは、任される範囲がまるで違います
同じ児童福祉の資格で入れる職場でも、中身は別物です。ここを知らずに転職すると、前職の感覚が通用せずに苦しみます。
保育園から移ってきた方がいちばん驚くのは、保護者が生活の場にいることです。保育園では、送り迎えの数分が保護者との接点でした。ここでは、母親が同じ建物にいて、毎日顔を合わせます。保育の技術より、大人との対話の技術が問われます。
児童養護施設から移ってきた方が戸惑うのは、子どもへの直接の関わりが減ることです。児童養護施設では、職員が生活のすべてを担っていました。ここでは、母親の領分に踏み込まないことが支援になります。「子どもと関わりたくて来たのに、あまり関われない」と感じる時期が来ます。
介護の現場から移ってきた方の場合、身体介助がほぼ無いことに拍子抜けすることがあります。その代わり、相談援助と関係機関との調整が業務の中心になります。仕事の疲れ方の質が、身体から頭と心へ移ります。待遇の考え方も変わるので、介護側の水準と比べたい方は介護職員の年収・単価相場で夜勤手当や資格手当の内訳を確認しておくと、求人票の数字の意味がつかみやすくなります。
保育士資格をお持ちの方は、この施設では「保育士」と「母子支援員」という2つの職種のどちらでも働ける場合があります。どちらで採用されるかによって、子ども中心の関わりになるか、母親中心の関わりになるかが変わります。応募時に確認しておくとよい点です。保育士としての待遇相場そのものは保育士の年収・単価相場に地域別の数字が整理されているので、施設の提示額と並べてみてください。
母子支援員と少年指導員、名前が似ている職種の中身
求人票を見ていると、職種名がいくつも出てきて混乱すると思います。ここを整理しておきましょう。
母子支援員は、母親の支援を担う中心的な職種です。生活の相談に乗り、就労を支え、住まいを探し、福祉事務所や学校とやり取りします。資格要件としては、保育士、社会福祉士、精神保健福祉士、あるいは都道府県知事の指定する養成機関の卒業などが挙げられます。未経験から直接この職種に就くのは、資格を持っていなければ難しいと考えてください。
少年指導員は、子どもの側を担う職種です。学習の見守り、遊びの相手、学校との連携、進路の相談。名前に「少年」とありますが、幼児から高校生まで幅広く関わります。この職種は、資格が望ましいとしつつ不問で募集している施設が実際にあります。未経験の入口として現実的なのはこちらです。
ほかに、保育士として採用される枠があります。施設内に保育室を持っている場合、そこで乳幼児を預かる仕事になります。母親が仕事や求職活動に出ている間、子どもを見る役割です。
心理療法担当職員という職種もあります。心理の専門教育を受けた人が担うもので、母親や子どもの心のケアにあたります。ここは未経験から入れる職種ではありません。
そして、嘱託医や栄養士、調理員、事務職員が加わって、ひとつの施設が動いています。
面白いのは、職種の線引きが施設によってかなり違うことです。母子支援員と少年指導員をきっちり分けている施設もあれば、両方を兼ねる形で運用している施設もある。小規模な施設ほど、職員ひとりが担う範囲は広くなります。
応募するときは、職種名だけで判断しないでください。「母子支援員として、どこまでの業務を担当されますか」と面接で聞くと、その施設の設計が見えてきます。答えが曖昧な施設は、実際の運用も曖昧である可能性があります。
求人票で、必ず見てほしい5か所
条件が似て見える求人でも、実際の働き方はかなり違います。見るべき場所をお伝えします。
1つ目は、施設の定員です。20世帯の施設と30世帯の施設では、ひとりの職員が関わる家族の数が変わります。施設のウェブサイトに書かれていることが多いので、応募前に見ておきましょう。
2つ目は、宿直の回数です。「月3回程度」「交代で宿直あり」といった書き方がされています。「あり」とだけ書かれている場合は、面接で必ず回数を聞いてください。月2回と月6回では、生活のリズムがまるで違います。
3つ目は、シフト例です。「10:00から19:00」「11:30から20:30」のように具体例が書かれている求人は、実態に近いと考えてよい。夕方から夜にかけてが山場の職場なので、遅番が主軸になるのは自然なことです。朝型の生活を崩したくない方は、ここで判断できます。
4つ目は、併設施設の有無です。学童保育クラブや児童家庭支援センターを併設している施設があります。
旭ヶ丘母子ホームは、30世帯定員の母子生活支援施設です。母子家庭の自立支援を行なっています。また、学童保育クラブ及び児童家庭支援センターも併設しております。 出典: asahigaoka-cwa.com
併設があると、業務の幅が広がります。子どもと関わる時間が増える一方で、担当する範囲も増えます。どちらが自分に合うかは、応募前に考えておく価値があります。
5つ目は、未経験者の受け入れ実績です。「未経験可」と書いてあっても、実際に未経験の職員が何人いるかは別の話です。面接で「未経験で入られた方は、どのくらいの期間で単独の宿直に入られますか」と聞いてみてください。答えが具体的であれば、育てる仕組みがある施設です。
施設の1年には、季節ごとの山があります
この職場は、毎日が同じように過ぎていくわけではありません。年間の流れを知っておくと、入る時期の心づもりができます。
春は、いちばん動きの大きい季節です。子どもの進級と進学があり、転校の手続きがあり、新しい学校とのやり取りが一斉に発生します。入所してきたばかりの家族にとって、学校が変わるのは大きな出来事です。制服やランドセル、学用品の準備をどうするか、費用をどう工面するかも含めて、職員が一緒に考えます。
夏は、子どもの時間が長くなります。学校が休みになると、日中ずっと施設にいる子が増える。母親は仕事へ出ているので、その時間をどう過ごすかが課題になります。学童保育を併設している施設では、ここが一年で最も忙しい時期です。行事を企画する施設も多く、企画の中心を任される職員もいます。
秋は、比較的落ち着いた時期です。この時期に、自立支援計画の見直しをする施設が多い。半年の変化を振り返り、次の半年をどう進めるかを母親と一緒に考えます。退所の時期が具体的に見えてくる家族も出てきます。
冬は、年末年始をどう過ごすかという話になります。帰る実家がある家族ばかりではありません。施設で過ごす世帯に対して、どこまで行事を用意するかは施設ごとに考え方が分かれます。そして年明けは、進学に関する手続きが動き出す時期です。
もうひとつ、季節と関係なく起きるのが、入所と退所です。空いた居室に新しい家族が入ってくる。準備が整った家族が出ていく。この出入りが、施設の空気を少しずつ変えていきます。
未経験で入る方には、できれば春から夏にかけての時期をお勧めすることが多いです。変化の大きい時期に入ると大変ではありますが、施設が動いている様子をまとめて見られるからです。
慣れるまでの3か月に、何が起きるか
入職してからの時間を、目安としてお伝えします。個人差はありますが、多くの方がこのような流れをたどります。
最初の2週間は、顔と名前を覚えることでいっぱいになります。世帯が20あれば、母親が20人、子どもは30人以上いることもあります。誰がどの部屋の誰なのか、兄弟関係はどうなっているのか。これがつながるまでは、何が起きているのかが読めません。
1か月目は、記録の書き方に苦戦します。見たことをそのまま書くのは意外に難しい。「泣いていた」と書くのか「泣いているのを見た」と書くのか、「機嫌が悪そうだった」は解釈なのか事実なのか。先輩の記録を読ませてもらうのが、いちばんの近道です。
2か月目あたりで、ひとつめの壁が来ます。仕事の全体像が見えてきて、自分が何もできていないことに気づく時期です。ここで落ち込む方が多い。でも、これは順調な証拠です。見えていなかったものが見えるようになったから、できていないと感じるのです。
3か月目に入ると、少しずつ自分から動けるようになります。あの子は最近元気がない、あのお母さんは今週忙しそうだ、と気づけるようになる。気づいたことを会議で話せるようになれば、もうチームの一員です。
半年を過ぎるころ、単独の宿直に入る施設が多いようです。ひとりで夜を過ごす不安は誰にでもありますが、そのころには「何かあったら誰に連絡するか」が体に入っているはずです。
焦らなくて大丈夫です。この仕事は、早く一人前になった人が長く続くわけではありません。むしろ、わからないことをわからないと言い続けた人のほうが、結果的に長く残っています。
退所という場面が、この仕事のいちばん大きな出来事です
支援には終わりがあります。ここが、他の児童福祉施設と大きく違うところです。
母子生活支援施設の在所期間は、そう長くありません。全国の調査では、5年未満で退所する世帯が大多数を占め、2年以内に出ていく世帯が全体の3分の2ほどになります。つまり、多くの家族とは数年の付き合いです。
退所が決まるまでには、いくつもの段階があります。仕事が安定すること。住まいを確保できること。子どもの学校をどうするか決めること。公的な手続きを整えること。そのひとつひとつに職員が伴走します。
不動産会社を回るときに一緒に行く職員もいます。母子世帯というだけで断られることが、残念ながらまだあるからです。家財道具をどう揃えるか、引っ越しの費用をどうするか、退所後の相談先をどこにするか。細かい調整が続きます。
そして、出ていく日が来ます。
この日のことを、多くの職員が「うれしいけれど寂しい」と表現します。数年かけて一緒にやってきた家族が、自分たちの足で出ていく。それは支援が成功したということです。でも、明日からその人たちはここにいない。
未経験で入った方が、半年や1年経って最初の退所を見送ったとき、この感情に戸惑うことがあります。それは自然なことです。
退所後も関係が続く場合があります。困ったときに施設へ電話をかけてくる元入所者がいる。地域の相談窓口として機能している施設も多い。つながりが完全に切れるわけではありません。
この「終わりがある」という構造は、働く側にも影響します。子どもの成長を長期にわたって見守り続ける児童養護施設とは、関わりの設計が違うのです。短い期間で何をどこまで渡せるか。そこに集中する仕事だと考えてください。
給与と条件の相場、それから続けるための工夫
金額の話もしておきましょう。
常勤職員の月給は、求人を横断して見ると19万円台から25万円台に分布しています。賞与を年3回出す施設もあり、年収では300万円台が中心帯です。住宅手当や借り上げ社宅を用意している施設もあるので、額面だけで比べないでください。
宿直の非常勤は、時給1,200円前後に深夜割増が加わる形が一般的です。仮眠時間を挟む長い拘束になる代わりに、1回でまとまった額になります。本業を持ちながら週1回入る、という働き方をしている方も実際にいます。
条件の話が終わったところで、最後にひとつだけ。
在宅で働く方の相談を長く受けてきて思うのですが、働き方の種類が違っても、続く人には共通点があります。自分が疲れる場面を知っていることです。
この職場なら、たとえば「お母さんに強い言葉をぶつけられた日」「子どもの前で夫婦の話が出た日」。そういう日のあとに何をすれば回復するかを、自分で知っている人は長く続きます。帰り道に遠回りする、風呂に長く入る、同期に短く電話する。何でもいいのです。
支援の技術を学ぶことと同じくらい、自分の整え方を持つことが大事です。人の生活に関わる仕事は、関わった分だけこちらも動きます。それを前提に組み立ててください。
もし将来的に、相談や面談そのものを軸にしたいと感じたら、外の枠組みを覗いてみるのもひとつです。キャリアコンサルタントは、人の進路を面談で支えるための国家資格で、学ぶ内容は施設での就労支援とかなり重なります。母親の再就職に伴走する場面で、実際に役立ちます。仕事として相談援助がどう成り立っているのかを知りたい方は、職場・転職・キャリア相談のお仕事に、面談を軸にした仕事の構造が整理されています。
未経験だから不利、ということはありません。この仕事で問われるのは、経験より、目の前の人の力を信じて待てるかどうかです。それは今日から練習できます。
よくある質問
Q. 未経験・無資格でも母子生活支援施設に応募できますか?
応募できます。宿直の非常勤、パートの支援補助、調理、事務は資格不問での募集が多く、少年指導員も資格不問で募集している施設があります。宿直の求人は「起きたことを常勤職員へ取り次ぐ」ことが役割として明記されていることが多く、自分ひとりで判断しなくてよい状態で施設に慣れられます。
Q. 児童養護施設との違いは何ですか?
母親と子どもが一緒に入所している点です。児童養護施設では職員が食事や起床など生活全般を担いますが、母子生活支援施設でそれを行うのは母親です。職員の役割は母親が自分の力で生活を立て直せるよう隣で支えることで、就労支援や住まい探し、関係機関との調整が業務の中心になります。
Q. 未経験で入って、慣れるまでどのくらいかかりますか?
目安として、最初の2週間は世帯と子どもの顔と名前を覚える時期、1か月目は記録の書き方に苦戦する時期、2か月目に全体像が見えて落ち込みやすい時期が来ます。3か月目から自分で気づいて動けるようになり、単独の宿直に入るのは半年前後という施設が多いようです。焦らず先輩に聞き続けるのが近道です。
Q. 求人票で必ず確認すべき点はどこですか?
施設の定員世帯数、宿直の月あたり回数、シフトの具体例、学童保育などの併設施設の有無、未経験者の受け入れ実績の5つです。特に宿直は「交代で宿直あり」とだけ書かれていることが多いので、面接で回数を確認してください。月2回と月6回では生活のリズムがまったく変わります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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