未経験から就労移行支援事業所で働く|受け入れている募集と、慣れるまで


この記事のポイント
- ✓就労移行支援事業所は未経験の募集が一定数あります
- ✓前職の経験がどこで活きるか
- ✓慣れるまでの半年で起きること
「福祉の資格も経験もないのに、就労移行支援事業所に応募していいのでしょうか」。こういうご相談、本当によくあります。
大丈夫ですよ。就労移行支援事業所は、福祉の中でも未経験の採用に比較的開かれている職場です。理由は単純で、この仕事の中核が「企業とやり取りすること」と「働き方を一緒に設計すること」だからです。介護技術のような専門技能が入口に置かれていない。だから、営業や事務、販売、製造といった一般企業での経験が、そのまま使えます。
ただ、開かれているからといって、簡単というわけではありません。未経験の方が最初の半年でつまずく場所は、だいたい決まっています。この記事では、就労移行支援事業所という職場の中で1日がどう動いているのか、未経験歓迎の募集が実際にどんな条件で出ているのか、そして慣れるまでに何が起きるのかを、順に書いていきます。あなたは一人じゃありません。同じ道を通った方は、たくさんいます。
就労移行支援事業所は、何をしている場所なのか
まず、職場の輪郭を掴んでください。ここが曖昧なまま応募すると、面接で話が噛み合いません。
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す障害のある方が、原則2年という期限の中で訓練を受け、就職活動をして、就職後の定着まで支援を受けるサービスです。利用者は雇用契約を結ばず、工賃も原則として発生しません。つまり、ここは「働く場所」ではなく「働けるようになるための場所」です。
この点が、就労継続支援B型との決定的な違いです。B型は生産活動を通じて工賃を得る場で、期限がありません。就労移行支援には期限があり、全員のゴールが就職で一致しています。目的が揃っているぶん、職員間の方針のずれは起きにくい。代わりに、「就職者が出ているかどうか」という結果が、事業所にも職員にも常に突きつけられます。
事業所の規模は、定員20人前後が標準です。人員配置は、職業指導員と生活支援員を合わせて利用者数の6分の1以上、そして就労支援員を利用者数の15分の1以上、と定められています。これに加えてサービス管理責任者と管理者。定員20人の事業所であれば、常勤換算で5人から7人程度で運営されている計算になります。
職種の役割は、名前のとおりに分かれてはいません。就労支援員は企業の開拓や実習先の調整、就職活動の同行を担当するのが本来の役割ですが、実際にはプログラムの講師もします。職業指導員はパソコン訓練や作業の指導をしつつ、面談も持ちます。生活支援員は生活リズムや通院の相談に乗りながら、記録も書きます。少人数なので、全員が全部をやる。未経験の方が入ると、まずこの「役割が重なっている」状態に戸惑います。
そして、就職後も仕事は終わりません。就職から6か月間は定着支援の期間として、職場を訪問したり、本人と企業の双方から状況を聞いたりします。この定着支援こそが、就労移行支援の価値の中心だと私は考えています。就職させることではなく、続けられるようにすることが目的だからです。
就労移行支援事業所の1日を、時間で追う
次に、時間の流れです。ここに、この仕事の実体があります。
朝は8時30分から9時ごろの出勤で、職員の朝礼があります。前日の様子の共有、その日のプログラムの担当確認、欠席連絡の有無。ここで15分ほど。
9時30分から10時にかけて利用者が通所してきます。到着した方から体調と気分を確認し、当日の予定を一緒に確認する。この短い時間が、実はとても重要です。表情や声の調子から、その日どこまで負荷をかけられるかを判断します。
10時から午前のプログラムが始まります。中身は事業所によって幅がありますが、ビジネスマナー、パソコン訓練、軽作業による集中力の訓練、コミュニケーションのグループワーク、そして自己理解のためのワークが代表的です。職員は講師として前に立つこともあれば、個別に横について支援することもあります。
12時に昼食、13時から午後のプログラム。この時間帯に個別面談が組まれます。就職活動の段階に入っている方であれば、履歴書の添削、応募先の検討、面接練習。実習中の方がいれば、職員が実習先に出向いて様子を見ます。
15時から15時30分ごろに終了して、利用者が帰ります。そこから17時30分前後までが職員の事務時間です。記録の入力、個別支援計画の作成とモニタリング、企業への電話、ハローワークや障害者就業・生活支援センターとの連携、次のプログラムの準備。そして週に1回か2回の会議。
この夕方の時間帯に、外に出る仕事も入ります。企業への訪問、実習先への同行、就職した方の職場への定着支援訪問。外勤が入る日は、記録が後ろにずれます。
未経験の方に知っておいてほしいのは、日中は「人と向き合う仕事」で、夕方は「書く仕事と調整する仕事」だという点です。この2種類の仕事は、使う頭の場所がまったく違います。日中に感情を使い切ってしまうと、夕方の記録が書けない。逆に記録を溜めると、翌日の面談の準備ができない。この配分を掴むのに、だいたい3か月かかります。
未経験歓迎の募集は、実際にどんな条件で出ているのか
では、実際の求人がどうなっているかを見てみましょう。就労移行支援の支援員募集には、次のような内容のものがあります。
就労移行支援事業所の支援員として、障害のある方の就労支援全般、研修・実習トレーニング実施、面談実施、そして事業所運営全般に携わっていただきます。売上を意識した施策遂行や新規利用者募集、サービス改善なども担当し、チーム支援を大切にする環境です。未経験者歓迎で、対人折衝経験があれば応募可能です。完全週休2日制で、フルフレックス制度や残業少なめ、在宅・リモートワークも可能です。賞与年2回、副業OK、自己啓発支援など、ライフステージに寄り添った働き方ができます。 出典: 求人ボックス
この募集内容には、就労移行支援の職場の特徴が全部出ています。順番に読み解きます。
まず「未経験者歓迎で、対人折衝経験があれば応募可能」という部分。福祉資格ではなく対人折衝の経験を条件にしている。これが、この業界が未経験を受け入れている実質的な理由です。企業に電話をかけ、訪問して、実習を受け入れてもらう交渉をする。この動きは営業職そのものです。
次に「売上を意識した施策遂行や新規利用者募集」。ここは正直にお伝えしておきます。就労移行支援事業所の収入は、利用者の通所日数に応じた給付費が中心です。つまり、利用者が定員に対して何割埋まっているかが、そのまま事業所の経営を左右します。だから職員に新規の利用者募集が求められます。福祉の仕事だから数字とは無縁、と思って入ると、ここで驚きます。
「完全週休2日制」「残業少なめ」「在宅・リモートワークも可能」という条件も、就労移行支援の特徴です。通所型で夜勤がなく、土日は基本的に休所。在宅勤務が可能と書かれているのは、記録や資料作成、オンラインでの面談を自宅でこなせる業務があるためです。介護や保育と比べて、働く時間の見通しが立てやすい職場だと言えます。
ただし、これは求人票に書かれている条件です。実際にそのとおり運用されているかは、面接と見学で確認する必要があります。後ほど、確認の仕方を書きます。
前職の経験は、どこで使えるのか
未経験と言っても、社会人経験がゼロの方は少ないはずです。前職ごとに、何が武器になるかを整理します。
営業職から移った方は、企業開拓でそのまま力を発揮します。実習先を探して電話をかけ、断られ、また次にかける。この動きに抵抗がないことは、就労移行支援の現場では大きな強みです。障害者雇用に関心はあるが何から始めればいいか分からない、という企業は多く、そこに説明に行く役割は営業経験者が一番向いています。
事務職から移った方は、パソコン訓練のプログラムと、書類の整備で貢献できます。就労移行支援では、実績記録票、個別支援計画、モニタリング記録、請求データと、書類の量がかなり多い。事務の精度が高い方は、入って早い段階で「いてくれて助かる」と言われます。
販売や接客から移った方は、対人の距離感の掴み方が身についています。初対面の方に警戒されずに話しかける技術は、訓練では身につきにくいものです。
製造業から移った方は、作業を工程に分解する視点を持っています。就労移行支援のプログラムでは、作業を細かく分けて、どこでつまずいているかを特定する場面が頻繁にあります。この分解が自然にできる人は貴重です。
人事や採用の経験がある方は、企業側の目線を持っています。「この履歴書は採用担当者にどう見えるか」を具体的に語れることは、利用者の方にとって非常に説得力があります。
私がカウンセリングの仕事を始めたころ、産業の現場を知らないまま心理の知識だけで相談を受けていた時期がありました。相談に来られた方に「職場でどう伝えればいいか」を聞かれて、気持ちの整理の話しかできなかった。相手が本当に必要としていたのは、上司に伝えるときの言い方の具体例だったんです。そのとき、企業で働いた経験があることは、支援の現場ではっきりと強みになると気づきました。福祉の資格がないことを引け目に感じる必要はありません。
慣れるまでの半年で、何が起きるか
未経験で入った方が、どの時期に何につまずくか。これも、だいたい決まっています。
最初の1か月は、情報量に圧倒されます。利用者の方の名前、障害の特性、通院先、家族の状況、就職活動の進捗。さらに制度の用語が次々に出てきます。個別支援計画、モニタリング、実績記録票、基本報酬区分、定着支援。全部を覚えようとすると、1か月で疲れ果てます。この時期は、名前と顔、そして「その方が何に困っているか」を1つだけ覚えることに絞ってください。制度の用語は、使う場面に出会ってから覚えれば間に合います。
2か月目から3か月目にかけて、記録の壁が来ます。何を書けばいいのか分からない。書いても長くなりすぎる、あるいは短すぎて内容がない。これは全員が通ります。コツを1つだけお伝えすると、記録には「事実」と「解釈」を分けて書いてください。「Aさんは午前中、集中が続かない様子だった」は解釈です。「10時15分と10時40分に離席し、それぞれ5分程度で戻られた」が事実です。事実を先に書いて、解釈を後ろに置く。これだけで、読める記録になります。
3か月目から半年にかけて、最も大きな壁が来ます。成果が見えないことへの不安です。営業職であれば数字が出ます。事務職であれば処理した件数が見えます。ところが支援の仕事は、半年かけて何も変わらないように見えることがある。実際には、遅刻が週3回から週1回に減っている、面談で自分から話す時間が伸びている、といった変化は起きています。ただ、それを自分で認識する訓練をしていないと、「自分は何もできていない」と感じます。
こういうご相談、本当に多いんです。対処法は具体的です。自分の担当している方について、3か月前の記録を読み返す習慣を作ってください。週に1回、15分で構いません。記録は、変化を見るために書いているものです。書きっぱなしにすると、自分の仕事が見えなくなります。
半年を過ぎると、企業とのやり取りが自分の担当になってきます。ここで前職の経験が効いてきます。同時に、就職が決まった方が出てくる時期でもあります。この経験を1回通ると、仕事の輪郭が掴めます。
もう1つ、未経験の方が抱えやすいのが、感情の持ち帰りです。うまくいかなかった面談を、帰りの電車でずっと考えてしまう。これは真面目な方ほど起きます。対策としては、退勤前に「今日の心配事を1行だけ記録に書いて、明日の自分に引き継ぐ」という手続きを作ることです。書いて外に出すと、頭の中で回り続けることが減ります。呼吸を整えて、明日の自分に任せる。それでいいんですよ。
利用者との距離感は、どこで覚えるのか
未経験の方から一番多く受ける質問が、この距離感の話です。「どこまで踏み込んでいいのか分からない」。これ、資格を持っている方でも最初は迷います。
基本の考え方を1つだけお伝えします。就労移行支援の職員は、本人の代わりに何かをやる人ではありません。本人が自分でやれるように、条件を整える人です。ここが、介護職との最も大きな違いです。
具体的に言うと、履歴書を代わりに書いてはいけません。書き方を一緒に検討して、本人が書く。企業に代わりに電話をかけるのも、原則としては避けます。かけ方を練習して、本人がかける。もちろん、体調や特性によって職員が同席したり代行したりする場面はありますが、それは本人と相談して決めることであって、職員が先回りして引き受けることではないんです。
未経験の方、特に面倒見の良い方ほど、ここでつまずきます。目の前で困っている人がいると、つい手を出したくなる。気持ちはよく分かります。ただ、手を出し続けると、本人が「自分にはできない」という経験を積み重ねてしまいます。2年という期限のあるサービスで、これは致命的です。
もう1つ、個人的な関係を作らないという原則があります。私用の携帯番号やメールアドレスを教えない、個人のSNSでつながらない、休日に連絡を取らない。これは冷たさではなく、サービスとして支援を提供しているという枠組みを守るためのものです。一度個人の関係になると、その方が困ったときに事業所全体で支えることができなくなります。
感情が巻き込まれたときの対処も、覚えておいてください。面談で強く責められた、こちらの提案が拒まれた、就職が決まらずに利用期限が近づいている。こうした場面では、職員側の感情が動きます。動くこと自体は自然です。問題は、それを1人で処理しようとすること。事業所には必ずサービス管理責任者がいます。その日のうちに5分だけでも話してください。抱え込まないことが、この仕事を続ける最大のコツです。
そして、本人が就職して離れていくときの感覚も、最初は戸惑うものです。長く関わった方が事業所を卒業すると、嬉しさと同時に喪失感があります。この仕事は、別れが成功の形をしている仕事です。そういうものだと知っておくだけで、受け止め方が変わります。
転職して入る前に、確かめておきたい働き方の条件
未経験からの転職で入る場合、支援の中身と同じくらい、働き方の条件を詰めておく必要があります。求人票の言葉と実態がずれやすい項目を挙げます。
在宅勤務やリモートワークが可能と書かれている場合、対象となる業務を確認してください。就労移行支援は利用者が通所してくるサービスなので、日中の支援は事業所にいなければできません。在宅でできるのは、記録の入力、資料の作成、オンライン面談、企業への連絡といった業務です。つまり、週に1日から2日、事務日として在宅にする運用が現実的な上限になります。「フルリモート可」と読み違えないでください。
フレックスタイム制も同様です。利用者の通所時間が固定されているため、コアタイムの設定は事実上10時から15時になります。始業を8時にして16時30分に退勤する、といった調整は可能でも、午後から出勤するような使い方はできません。
副業を認めている法人も増えていますが、条件があります。同業他社での勤務は競業になるため、認められないのが一般的です。認められるのは、執筆、講師、資格を活かした個人の相談業務といった領域です。就業規則の副業に関する条項を、入職前に確認しておいてください。
賞与の実績も聞いておく価値があります。求人票の「賞与年2回」という表記は、支給の回数であって金額の保証ではありません。直近3年でどれくらい支給されたのかを聞くと、法人の経営状況がある程度見えます。
異動の有無も、法人の規模によって大きく違います。1事業所だけを運営する法人であれば異動はありませんが、人間関係がこじれたときの逃げ場もありません。複数事業所を展開する法人であれば、異動という選択肢がある代わりに、転居を伴う可能性もあります。どちらが良いということではなく、自分がどちらを望むかを決めてから求人を絞ってください。
最後に、研修体制です。未経験で入る以上、ここが最も重要かもしれません。入職後にどんな研修があるのか、外部研修の費用は法人が負担するのか、勤務時間として扱われるのか。この3点を面接で聞いてください。研修を休日に自費で受けさせる法人と、勤務時間内に費用負担で受けさせる法人では、3年後に身についているものが違います。
資格と保険は、どう扱われるのか
未経験で入る際に気になる、資格と待遇の話をまとめます。
まず資格です。就労移行支援事業所の職業指導員、生活支援員、就労支援員は、法令上、特定の資格が必須とされているわけではありません。無資格でも就任できます。事業所によっては社会福祉士や精神保健福祉士を採用条件に挙げていますが、それは事業所の方針であって、制度上の要件ではありません。
入ってから積み上げるとすれば、順番があります。最初に取ると役立つのは、職場適応援助者、いわゆるジョブコーチの養成研修です。企業の中に入って、本人と職場の双方に働きかける手法を学びます。就労移行支援の業務と直結しているため、学んだことをすぐ使えます。
次に、キャリアの相談を体系的に学びたい方には、国家資格であるキャリアコンサルタントがあります。企業や支援機関での相談業務に直結する資格で、面談の構造化や、職業理解の考え方が身につきます。試験内容と受験ルートはキャリアコンサルタントにまとまっているので、養成講習の要件と費用を先に確認しておくとよいでしょう。就労移行支援での個別面談の経験は、そのまま学習の土台になります。
その先には、サービス管理責任者があります。一定年数の実務経験を積んだうえで基礎研修と実践研修を受ける必要があり、時間はかかりますが、取得後の選択肢は大きく広がります。慢性的に不足している役割だからです。
保険と待遇についてです。就労移行支援事業所は通所型のサービスで、正職員としての採用であれば社会保険は完備されているのが通常です。週の所定労働時間が正社員の4分の3以上であれば厚生年金と健康保険に加入し、週20時間以上で31日以上の雇用見込みがあれば雇用保険に加入します。障害福祉サービスには処遇改善のための加算が設けられており、これが給与に反映される仕組みになっています。求人票の月給に加算分が含まれているのか、別途支給なのかで手取りが変わるため、面接で確認してください。
給与水準が相場から外れていないかを判断する材料として、福祉や介護の職種別の年収と単価の分布をまとめた介護職員の年収・単価相場が参考になります。雇用形態や地域による幅も載っているので、提示額を評価する基準として使えます。
求人票と見学で、事業所を見極める
最後に、応募先の選び方です。就労移行支援事業所は、事業所によって質の差が大きい分野です。
一番重要な確認事項は、就職実績と定着率です。「直近1年で何人が就職されましたか」「そのうち6か月後も働いている方は何人ですか」。この2つを聞いてください。数字そのものより、即答できるかどうかが大事です。記録を取っていない事業所は、支援の質を管理していません。
次に、定員に対する利用者数です。定員20人に対して利用者が8人しかいない事業所は、経営が厳しく、職員に新規利用者の獲得が強く求められます。逆に定員いっぱいの事業所は、職員1人あたりの担当人数が増えます。どちらにも事情があるので、実際の人数を聞いたうえで、職員が何人いるかと合わせて判断してください。
新規利用者の募集について、ノルマがあるのかどうかも確認しておきましょう。先ほどの求人票にもあったとおり、募集活動は業務に含まれるのが一般的です。問題は、それが個人の目標として課されているかどうかです。
プログラムの中身も見てください。既製の教材を配って各自で進めてもらう形式なのか、職員が組み立てているのか。前者であれば未経験でも入りやすい反面、専門性は身につきにくい。
見学で見るべき点は3つです。利用者の方への呼びかけ方、夕方の記録時間が確保されているか、そして職員が外に出る動きがあるか。就労移行支援なのに職員が誰も事業所の外に出ていないとすれば、企業開拓も定着支援も動いていないということです。
面接でこちらが聞かれる内容も、押さえておきましょう。未経験の応募で必ず問われるのが、「なぜ福祉の仕事を選んだのか」と「障害のある方と関わった経験はあるか」の2つです。ここで無理に立派な動機を作らなくて大丈夫ですよ。経験がないなら、ないと答えて構いません。むしろ評価されるのは、前職で「相手が動けるように条件を整えた経験」を具体的に語れることです。取引先の担当者が社内で稟議を通しやすいように資料の形を変えた、新人が作業を覚えられるように手順を分解した。そういう話のほうが、この仕事への適性をはっきり示します。
もう1つ、面接で必ず確認しておきたいのが、1人あたりの担当人数です。「入職後、何人くらいの方を担当することになりますか」と聞いてください。就労移行支援では、個別支援計画の作成とモニタリング、面談、企業とのやり取りを担当ごとに持ちます。1人が8人を超えて担当している事業所では、1人あたりに割ける時間が薄くなり、未経験の方が育つ余裕もなくなります。この数字は、労働環境の実態を最も端的に表します。
支援の仕事で身につく、相手の状況を整理して次の一手を一緒に決める力は、福祉の枠を超えて評価されます。将来的に働き方を変えたくなったときのために、相談の仕事がどんな形で取引されているかを見ておくことも無駄になりません。職場・転職・キャリア相談のお仕事には、企業やサービス提供者から出ている相談系の依頼がまとまっており、必要とされる経験の幅を知る材料になります。
20年この市場を見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を長く運営してきた立場から、1つだけ補足します。
支援の仕事に未経験から入って長く続いている方には、共通点があります。「自分が何かを教える人」ではなく「相手が動けるように条件を整える人」として自分を定義している点です。前者の構えで入ると、成果が出ないときに自分の力不足として抱え込みます。後者であれば、うまくいかないときに条件のどこを変えるかを考えられる。この違いが、3年目あたりで大きな差になって表れます。
運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど、単発のやり取りではなく「この人に任せると周りが楽になる」という関係づくりに時間を使っています。就労移行支援でいえば、企業の担当者と、本人と、家族と、それぞれに対して同じことを言い続けられるかどうか。派手さはありませんが、これが定着率という結果になって返ってきます。
福祉の資格がないことは、入口では不利に見えます。けれど、企業で働いた経験があることは、この仕事では最後まで武器であり続けます。焦らなくて大丈夫ですよ。半年かけて、ゆっくり慣れていけば十分です。
よくある質問
Q. 福祉の資格がなくても就労移行支援事業所で働けますか?
働けます。職業指導員、生活支援員、就労支援員は法令上、特定の資格が必須とされていません。求人では福祉資格より対人折衝の経験を条件にしているものが多く、営業や事務、販売、製造といった一般企業での経験がそのまま評価されます。入職後にジョブコーチ養成研修などを積み上げていく形が一般的です。
Q. 就労継続支援B型と就労移行支援は、働く側から見て何が違いますか?
B型は生産活動を通じて工賃を得る場で利用期限がなく、就労移行支援は原則2年の期限の中で一般就労を目指す場です。就労移行支援では全員のゴールが就職で揃うため方針のずれは起きにくい一方、就職実績と定着率という結果が常に問われます。企業開拓や職場訪問など、外に出る業務が多い点も違いです。
Q. 未経験だと、どのくらいで仕事に慣れますか?
日中の面談と夕方の事務作業の配分を掴むまでに約3か月、就職が決まる方を1人担当し切るまでに半年前後というのが目安です。最初の1か月は制度用語をすべて覚えようとせず、担当する方が何に困っているかを把握することに絞ってください。記録は事実と解釈を分けて書くと、早く形になります。
Q. 求人票のどこを見れば良い事業所か判断できますか?
直近1年の就職者数と、就職6か月後の定着人数を面接で確認してください。数字そのものより即答できるかが判断材料になります。あわせて、定員に対する実際の利用者数、新規利用者募集が個人のノルマになっているか、夕方に記録の時間が確保されているかの3点を確認すると、運営の実態が見えます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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