就労継続支援B型の工賃の決め方|事業所ごとに差が出る理由


この記事のポイント
- ✓就労継続支援B型の工賃がどう決まるのかを
- ✓厚生労働省の基準省令と工賃実績をもとに整理しました
- ✓生産活動の収入から経費を引いた額を工賃にする原則
就労継続支援B型の工賃は、どうやって決まっているのか。同じ時間作業しているのに、事業所によって工賃の額が何倍も違うのはなぜか。利用者やその家族、事業所で働き始めた職員から、よく出てくる疑問です。結論から言うと、B型の工賃は、事業所が行う生産活動の収入から必要な経費を差し引いた額を、利用者に分配する形で決まります。国が決めるのは「平均で1か月あたり3,000円を下回ってはならない」という下限と、計算の原則だけで、具体的な配分のルールは事業所ごとに定めています。そのため、どんな仕事をどれだけ売っているかによって、工賃に大きな差が生まれます。この記事では、法律の原則、配分の方法、差が出る理由、利用者が確かめておきたい点を順に整理します。
就労継続支援B型と工賃の基本
就労継続支援B型とは、障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービスの1つで、一般企業に雇われて働くことが難しく、雇用契約を結んで働くことも難しい人に、働く機会と生産活動の機会を提供するものです。厚生労働省は、就労系の障害福祉サービスとして、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援の5種類を示しています。
B型の最大の特徴は、利用者と事業所が雇用契約を結ばないことです。A型は雇用契約を結ぶため、利用者は労働者として扱われ、最低賃金以上の「賃金」が支払われます。一方、B型は雇用契約を結ばないため、利用者に支払われるお金は賃金ではなく「工賃」と呼ばれます。つまり、工賃とは、雇用契約を結ばずに生産活動に参加した利用者に、その成果として支払われるお金のことです。
雇用契約がないため、B型の工賃には最低賃金の考え方が当てはまりません。その代わりに、国の基準で工賃の計算の原則と下限が決められています。
| 区分 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 |
|---|---|---|
| 雇用契約 | 結ぶ | 結ばない |
| 支払われるお金 | 賃金 | 工賃 |
| 最低賃金 | 適用される | 当てはまらない |
| 国の基準の下限 | 最低賃金以上 | 平均で1か月あたり3,000円以上 |
| 令和6年度の全国平均(月額) | 91,451円 | 24,141円 |
この表のとおり、A型とB型では支払われるお金の性格も水準も大きく違います。B型の工賃を理解するには、まず「雇用ではない」という出発点を押さえておくことが大切です。
法律が定める工賃の原則:収入から経費を引いた額を払う
B型の工賃のルールは、厚生労働省の基準省令(障害者総合支援法にもとづく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準)の第201条に定められています。
指定就労継続支援B型の事業を行う者(以下「指定就労継続支援B型事業者」という。)は、利用者に、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならない。 出典: 指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(e-Gov法令検索)
つまり、工賃の総額は、事業所が行うパンやお菓子の製造販売、部品の組み立て、清掃の請負、データ入力などの生産活動で得た収入から、材料費や外注費などの必要な経費を差し引いた額になる、ということです。式で表すと次のようになります。
生産活動の収入 − 生産活動に必要な経費 = 利用者に支払う工賃の総額
同じ第201条は、ほかに3つのことを定めています。
1つ目は、利用者それぞれに支払われる1か月あたりの工賃の平均額が、3,000円を下回ってはならないことです。
2つ目は、事業者は、利用者が自立した日常生活や社会生活を送れるよう、工賃の水準を高めるよう努めなければならないことです。
3つ目は、事業者は年度ごとに工賃の目標水準を決め、その目標と前年度に支払った工賃の平均額を利用者に知らせるとともに、都道府県に報告しなければならないことです。
この3つ目の規定により、利用者は自分が通う事業所の前年度の平均工賃と、今年度の目標を知ることができます。工賃について知りたいことがあれば、まずこの通知の内容を事業所に確認するとよいでしょう。
工賃は福祉サービスの報酬から払ってはいけない
B型の工賃を理解するうえで、もう1つ大切な原則があります。それは、工賃を国や自治体から事業所に支払われる福祉サービスの報酬から払ってはならないということです。
B型事業所には、大きく2種類のお金の流れがあります。1つは、利用者に支援を行うことに対して国民健康保険団体連合会を通じて支払われる報酬(自立支援給付費)です。職員の給料や事業所の家賃、光熱費などは、主にこの報酬でまかなわれます。もう1つは、生産活動で得た売上です。
厚生労働省の資料は、この2つを区分するよう求めています。
指定基準において、賃金・工賃の支払いに要する額は、災害等の場合を除き、自立支援給付をもって充ててはならないこととしており、利用者の賃金・工賃は、自立支援給付費(報酬)ではなく生産活動収支から支払う。 出典: 厚生労働省「就労支援事業の会計区分」
| 会計の区分 | 主な収入 | 主な支出 |
|---|---|---|
| 福祉事業活動 | 自立支援給付費(報酬)、利用者負担金など | 職員の給料、家賃、光熱費、支援に必要な費用 |
| 生産活動 | 製品の販売収入、作業の受託収入など | 利用者の工賃、材料費など生産活動に必要な経費 |
つまり、事業所が国から多くの報酬を受け取っていても、その報酬を工賃に回すことはできません。工賃を上げるには、生産活動の売上を伸ばすか、生産活動の経費を下げるしかない、ということです。これが、B型の工賃が事業所の「稼ぐ力」に直結する理由です。
余った分は工賃として払うのが原則、ただし積立ての仕組みもある
収入から経費を引いて工賃を払うということは、生産活動で利益が出た場合、その利益は原則として全額を工賃として利用者に払うことになります。厚生労働省の「就労支援事業会計の運用ガイドライン」も、生産活動で余剰金が出る場合は全て賃金や工賃として支払うこととされているため、生産活動の余剰金は原則として生じないと説明しています。
ただし、年によって売上が大きく変わると、工賃も年ごとに大きく上下してしまいます。そこで、将来にわたって安定して工賃を払うため、一定の条件のもとで積立金を計上することが認められています。
| 積立金の種類 | 目的 | 各年度の積立ての限度 | 積立ての上限 |
|---|---|---|---|
| 工賃変動積立金 | 工賃が一定の水準を下回ったときに補う | 過去3年間の平均工賃の10%以内 | 過去3年間の平均工賃の50%以内 |
| 設備等整備積立金 | 生産活動の設備の更新や新しい業種への展開に備える | ガイドラインで定める範囲 | ガイドラインで定める範囲 |
積立金を積み立てるには理事会などの議決が必要で、取り崩す場合も同じ手続きが必要とされています。利用者から見ると、売上がよかった年に工賃がそれほど増えなかった場合、その一部が翌年以降の工賃を支えるための積立てに回っている可能性があります。工賃の推移が気になるときは、積立ての有無と考え方を事業所に尋ねてみてもよいでしょう。積立金は、売上が落ちた年に工賃を補うために取り崩されるものなので、利用者にとっても工賃の安定につながる仕組みです。
平均工賃月額の計算方法
B型事業所の工賃の水準を表す指標が「平均工賃月額」です。この数字は、事業所の報酬の区分を決める際にも使われるため、事業所にとって重要な意味を持ちます。
平均工賃月額の計算方法は、令和6年度の報酬改定で変わりました。厚生労働省の工賃実績の資料では、次のように説明されています。
・令和4年度までは、前年度の「工賃支払対象者数」を分母に用いて計算していた
・令和6年度の報酬改定で、障害の特性などにより利用日数が少ない人を受け入れる事業所に配慮し、前年度の「一日当たりの平均利用者数」を分母に用いる新しい計算方法を導入した
・令和5年度の実績からは、新しい計算方法による平均工賃月額が反映されている
古い計算方法では、週に1日だけ通う人も、毎日通う人も、同じ1人として分母に数えていました。そのため、短い日数で通う人を多く受け入れる事業所ほど、平均工賃月額が低く出てしまう問題がありました。新しい計算方法では、1日あたりの平均利用者数を分母にするため、利用日数の少ない人を受け入れていても、平均工賃月額が不当に低く出にくくなっています。
インターネット上には、今も「工賃総額を実際の利用者数で割る」という古い計算方法を紹介している情報が残っています。報酬の区分にかかわる計算をするときは、必ず最新の報酬告示や自治体の案内で確認してください。
なお、平均工賃月額は事業所全体の平均です。個々の利用者が受け取る工賃は、通う日数や作業の時間、事業所の配分のルールによって、平均より多い人も少ない人もいます。
全国の平均工賃はいくらか
厚生労働省は、B型とA型の事業所から報告された工賃と賃金の実績を毎年公表しています。令和6年度の実績では、B型事業所の平均工賃月額は24,141円でした。報告した事業所の数は18,245か所で、令和5年度の22,649円に比べて106.6%となっています。
過去の推移を見ると、平成24年度は14,190円、平成30年度は16,118円、令和4年度は17,031円でした。令和5年度に22,649円へ大きく上がっているのは、前の節で説明した計算方法の変更が反映されたためで、同じ物差しで比べられるのは令和5年度以降の数字です。
| 年度 | B型の平均工賃月額 |
|---|---|
| 平成24年度 | 14,190円 |
| 平成30年度 | 16,118円 |
| 令和4年度 | 17,031円 |
| 令和5年度 | 22,649円(新しい計算方法) |
| 令和6年度 | 24,141円(新しい計算方法) |
全国平均は、あくまで多くの事業所の平均です。都道府県や事業所によって、平均工賃が数千円の事業所もあれば、数万円の事業所もあります。都道府県ごとの実績や、工賃を引き上げるための計画は、各都道府県が「工賃向上計画」として公表しているので、地域の水準を知りたいときは住んでいる都道府県のページを確認するとよいでしょう。過去の実績の資料は、厚生労働省の平均工賃の実績のページにまとめられています。
個々の利用者への配分の決め方:主な4つの方式
工賃の総額が決まったら、次はそれを利用者一人ひとりにどう分けるかです。国の基準は配分の方法まで細かく定めていないため、事業所ごとに「工賃規程」などのルールを作り、利用者に説明したうえで運用しているのが一般的です。よく使われる方式は、次の4つです。
時間給方式
作業した時間に、1時間あたりの単価をかけて工賃を決める方式です。分かりやすく、体調に合わせて短い時間だけ作業する人にも公平に分配しやすいのが利点です。一方、作業の成果の違いは反映されにくくなります。
日給方式
1日作業に参加するごとに、決まった額を払う方式です。半日の参加なら半額にするなど、時間の区切りを設けることもあります。計算が簡単で、利用者にも分かりやすい方式です。
出来高方式
作った製品の数や、こなした作業の量に応じて工賃を決める方式です。部品の組み立てや袋詰めのように、成果を数えやすい作業で使われます。頑張った分が工賃に反映されやすい一方、障害の特性や体調によって作業の速さが違う人の間で、差が大きくなりやすい面があります。
評価を加える方式
時間給や日給を基本にしながら、作業の正確さ、出席の安定、手順の理解、他の利用者への協力などを評価し、加算する方式です。評価の基準を明確にし、利用者に事前に説明しておくことが欠かせません。
実際には、これらを組み合わせて使う事業所が多くあります。たとえば、基本は時間給とし、出来高の大きい作業には加算を付ける、といった形です。
どの方式を採るにしても、工賃の総額は生産活動の収入から経費を引いた額が上限になります。時間給の単価を高く設定しても、売上が足りなければ払うことはできません。そのため、多くの事業所は、年度の初めに売上の見込みから工賃の総額を見積もり、そこから単価を決め、年度の途中や終わりに実績に合わせて調整しています。
計算例で見る工賃の決まり方
ここまでの仕組みを、架空の事業所の数字で確かめてみます。数字はすべて説明のための例です。
ある事業所で、1か月の生産活動の収入が、焼き菓子の販売で60万円、企業から受けた封入作業で20万円、合計80万円だったとします。この月の生産活動に必要な経費は、材料費が25万円、包装資材と配送費が5万円、生産活動に按分した共通経費が5万円で、合計35万円でした。
生産活動の収入80万円から経費35万円を差し引いた45万円が、この月に利用者に支払う工賃の総額になります。
この事業所が時間給方式を採っていて、利用者全員の作業時間の合計が1,500時間だったとすると、1時間あたりの単価は300円になります。月に50時間作業した人の工賃は15,000円、月に20時間作業した人の工賃は6,000円です。
翌月、焼き菓子の売上が落ちて収入が70万円になり、経費が32万円だったとすると、工賃の総額は38万円に減ります。作業時間の合計が同じ1,500時間なら、単価は約253円に下がります。このように、売上の変動はそのまま工賃の変動につながります。
実際には、毎月の単価を大きく上下させると利用者の生活が不安定になるため、多くの事業所は年間の見込みで単価を決め、売上がよい月と悪い月をならして運用しています。前に説明した工賃変動積立金も、こうした変動をならすための仕組みです。
この例から分かるのは、工賃を上げるには、焼き菓子の売上を伸ばす、単価の高い作業を受ける、材料費を見直す、といった生産活動そのものの改善が欠かせないということです。職員が支援に熱心であっても、生産活動の収支が改善しなければ工賃は上がりません。
平均工賃月額と事業所の報酬の関係
平均工賃月額は、利用者にとっての工賃の目安であるだけでなく、事業所の経営にも関わる数字です。厚生労働省の資料には「平均工賃月額に応じた報酬体系を採用する就労継続支援B型事業所」という表現があり、この報酬体系では、前年度の平均工賃月額の水準によって、事業所が受け取る基本の報酬の区分が変わる仕組みになっています。
つまり、平均工賃月額が高い事業所ほど、受け取る報酬の区分も高くなる方向に設計されている、ということです。事業所にとっては、工賃を上げることが利用者のためになるだけでなく、事業所の運営の安定にもつながります。
ここで注意したいのは、報酬が増えても、その報酬を工賃に回すことはできないという点です。報酬は職員の給料や事業所の運営に充てるもので、工賃はあくまで生産活動の収支から払います。工賃が上がると報酬の区分が上がり、報酬で支援の体制を整えることで、さらに生産活動の質が上がる、という好循環をつくることが、制度の狙いだと考えられます。
報酬の区分の具体的な基準や単価は、報酬改定のたびに見直されます。事業所の運営者は、最新の報酬告示と、指定を受けている自治体の案内で確認してください。
事業所ごとに工賃の差が出る理由
同じB型でも、事業所によって工賃に大きな差が出るのはなぜか。ここまでの仕組みを踏まえると、理由は主に5つに整理できます。
理由1:生産活動の種類と単価
最も大きいのは、どんな仕事をしているかです。軽作業の受託のように1件あたりの単価が低い仕事が中心の事業所と、自社製品を作って販売している事業所、企業からデータ入力や清掃などの業務を継続的に受けている事業所では、同じ時間作業しても生み出す売上が違います。
理由2:販路と営業の力
良い製品を作っても、売る先がなければ売上になりません。百貨店や企業との取引、ネット販売、地域のイベントでの販売など、安定した販路を持つ事業所ほど売上が伸びやすくなります。国や地方公共団体には、障害者就労施設などから優先的に物品や役務を調達する仕組み(障害者優先調達推進法)もあり、これを活用できているかどうかも差につながります。
理由3:経費の管理
工賃は収入から経費を引いた額なので、材料費や外注費、生産活動にかかる共通経費をどう管理するかで工賃は変わります。厚生労働省の会計ガイドラインは、福祉事業と生産活動にまたがる共通経費を、合理的な基準で按分するよう求めています。
理由4:利用者の通い方
利用者の多くが週に数日、短い時間だけ通う事業所と、毎日長い時間通う人が多い事業所では、1人あたりの作業時間が違うため、1人あたりの工賃にも差が出ます。
理由5:事業所の方針
工賃を最優先に高める方針の事業所もあれば、体調の安定や生活のリズムづくりを重視し、作業の負担を軽くしている事業所もあります。どちらが良い悪いではなく、利用者の状態や目標によって合う事業所が違うということです。
ある相談では、家族が工賃の高い事業所への移籍を強く勧めたものの、作業のペースが合わずに通えなくなってしまった例がありました。工賃の額は大切な指標ですが、それだけで事業所を選ぶと、本人に合わない場合があります。工賃と、作業の内容、通いやすさ、支援の手厚さを合わせて考えることが大切です。
利用者や家族が確かめておきたいこと
工賃について不安や疑問があるときに、事業所に確かめておきたい点を整理します。
| 確かめること | 理由 |
|---|---|
| 前年度の平均工賃と今年度の目標 | 基準省令により、事業所は利用者に通知することになっている |
| 工賃の配分のルール(工賃規程) | 時間給か出来高かなどで、自分の工賃の見込みが変わる |
| 支払日と支払い方法 | 毎月の生活の計画に関わる |
| 工賃が変わる場合の説明 | 売上の変動で単価が変わることがある |
| 生産活動の内容と販路 | 工賃の安定性を判断する材料になる |
工賃規程は、事業所が工賃の決め方を文章にまとめたものです。利用を始める前の見学や体験の段階でも確認できるので、複数の事業所を比べるときの材料にもなります。見せてもらえるか尋ねてみて、分かりにくい部分があれば説明を求めましょう。工賃の決め方が利用者に分かりやすく示されていることは、事業所の運営の透明性を測る目安にもなります。
工賃の額は、ほかの制度との関係でも意味を持つことがあります。生活保護や障害年金など、ほかの給付を受けている人は、工賃が収入としてどのように扱われるかを、それぞれの窓口に確認してください。
工賃のことで事業所との話し合いがうまくいかない場合は、相談支援専門員や市区町村の障害福祉の窓口に相談できます。事業所の運営が基準に合っていないと思われる場合は、事業所を指定している都道府県や市町村が相談先になります。
工賃をめぐるよくある行き違い
工賃について、利用者や家族と事業所の間で行き違いが起きやすい場面を、匿名化した相談の形で紹介します。個別の事情によって対応は変わるため、解決が難しい場合は相談支援専門員や自治体の窓口に相談してください。
例1:先月より工賃が下がった理由が分からない
同じように通ったのに、工賃が前の月より下がっていたという相談です。売上の減少で単価が下がった、作業時間の数え方が変わった、評価の加算がなくなったなど、理由はいくつか考えられます。工賃明細に計算の内訳が書かれていない場合は、どの要素で金額が変わったのかを事業所に尋ねましょう。工賃規程に、単価を変える場合の手続きや説明の方法が書かれているかも確認ポイントです。
例2:出来高の差が大きく、続けるのがつらい
出来高方式の事業所で、作業の速い人との工賃の差が気になり、通うのがつらくなったという相談です。工賃の配分の方法は事業所ごとに決められているため、時間給を基本とする事業所に移る、作業の種類を変えてもらうなど、本人に合った形を相談員と一緒に検討できます。
例3:体験利用のときに聞いた工賃と違う
見学や体験利用のときに聞いた工賃の目安と、実際に通い始めてからの工賃が違ったという相談です。見学のときに示される金額は、平均の工賃であることが多く、通う日数や時間が少なければ、受け取る額は平均より少なくなります。見学の段階で、自分が想定している通い方の場合にどのくらいになるかを具体的に尋ねておくと、行き違いを防げます。
どの例でも共通しているのは、工賃の決め方が文章で示され、利用者に説明されているかどうかが鍵になるということです。工賃明細を毎月保管しておき、作業した日と時間の自分の記録と見比べられるようにしておくと、疑問が出たときに具体的に質問できます。家族が代わりに確認する場合も、明細と記録がそろっていれば、事業所との話し合いが感情的になりにくくなります。
事業所の側から見た、工賃を上げるための取り組み
ここからは、事業所で働く職員や運営に携わる人に向けて、工賃を上げるための取り組みを整理します。工賃は売上から経費を引いた額なので、取り組みは「売上を伸ばす」と「経費を下げる」の2つに分かれます。
単価の高い仕事を増やす
軽作業の受託だけでなく、企業の業務の一部を継続して受ける形や、自社製品の開発に取り組むことで、1時間あたりの売上を高められます。厚生労働省は、工賃向上の事例集やガイドブックを公表しており、他の事業所の取り組みを参考にできます。
販路を広げる
地域の企業や自治体への営業、ネット販売の導入、共同受注の仕組みへの参加などで、安定した取引先を増やします。自治体の優先調達の窓口に、提供できる製品や役務を登録しておくことも有効です。
経費と会計を見直す
材料の仕入れ先の見直しや、共通経費の按分の基準を明確にすることで、工賃に回せる額を正しく把握します。生産活動の会計を福祉事業の会計と正しく区分しておくことは、指定基準を守るうえでも欠かせません。
工賃の決め方を文章で示す
配分のルールを工賃規程として文章にし、利用者と家族に説明することは、信頼関係の土台になります。分かりやすい規程を書くには、目的、計算方法、支払日、変更の手続きを順に並べ、専門用語には説明を添えることが大切です。こうした文書の書き方は、ビジネス文書検定で学ぶ内容とも重なります。
国は、自治体が就労継続支援事業所の新規指定や運営状況の確認を行うためのガイドラインも示しており、その中で生産活動の収支を確認するための様式(生産活動シート)も用意されています。事業所の運営者は、こうした様式を使って自らの生産活動の収支を点検しておくと、自治体の確認にも落ち着いて対応できます。
工賃規程に書いておきたい項目
工賃規程は、法律で書式が決まっているものではありません。そのため、事業所によって内容の詳しさに大きな差があります。利用者と家族に分かりやすく、行き違いを防げる規程にするために、書いておきたい項目を整理します。
| 項目 | 書いておく内容の例 |
|---|---|
| 目的 | 工賃の考え方(生産活動の収入から経費を引いた額を分配すること) |
| 対象 | 工賃を支払う利用者の範囲 |
| 計算方法 | 時間給、日給、出来高、評価の加算のどれを使うか。単価の決め方 |
| 作業時間の数え方 | 休憩、送迎、訓練の時間を含めるかどうか。端数の扱い |
| 評価の基準 | 加算がある場合の評価項目と、評価の頻度 |
| 支払日と方法 | 締め日、支払日、現金か振込か |
| 単価の見直し | 見直しの時期と、利用者への説明の方法 |
| 積立金 | 工賃変動積立金を計上する場合の考え方 |
| 相談の窓口 | 工賃に疑問があるときの問い合わせ先 |
特に行き違いが起きやすいのが、作業時間の数え方と単価の見直しです。たとえば、作業の合間の休憩や、作業前の準備の時間を作業時間に含めるかどうかで、時間給方式の工賃は変わります。単価を見直す場合も、いつ、どのような理由で見直すのかを規程に書き、見直したときは利用者に説明する手順を決めておくと、利用者の納得が得やすくなります。
規程の文章は、利用者が読んで理解できる言葉で書くことが大切です。難しい用語を使う場合は、その場で言い換えを添え、計算の例を載せておくと分かりやすくなります。読み上げやふりがな付きの版を用意するなど、利用者の特性に合わせた説明の工夫も考えられます。
B型からその先の働き方へ
B型で作業に慣れ、体調が安定してきた人の中には、A型への移行や一般企業への就職、在宅での仕事に挑戦する人もいます。令和7年10月には、本人の希望や能力に合った働き方を選ぶための「就労選択支援」が新たに始まりました。B型を続けるか、別の働き方に移るかを考えるときは、相談支援専門員や事業所の職員と相談しながら、こうした制度を活用できます。
在宅での仕事を考える場合は、パソコンを使った入力や文章作成、デザイン、プログラミングなどの分野があります。たとえばアプリケーション開発のお仕事では、開発の仕事の内容や求められるスキルを紹介しています。B型の事業所の中には、パソコンを使った作業を生産活動として取り入れているところもあり、そこで身につけたスキルが次の働き方につながることもあります。
20年にわたって在宅ワークと業務委託の市場を見てきた運営者の立場から言えば、働く場を移しながら長く続けている人ほど、今いる場所で身につけたことを具体的な言葉で説明できるようにしています。「何の作業を、どのくらいの正確さで、どのくらいの時間続けられるか」を言葉にできると、次の職場や仕事の依頼主にも力が伝わりやすくなります。仲介の手数料がかからない直接の取引であれば、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受ける側の手取りも厚くなります。B型の工賃の仕組みを知ることは、自分の仕事の価値がどう決まるのかを考える出発点にもなります。
就労継続支援B型の工賃は、生産活動の収入から経費を引いた額を、事業所が定めたルールで分配して決まります。国の基準が定めるのは、平均で1か月あたり3,000円という下限と計算の原則だけで、事業所ごとの差は、仕事の種類、販路、経費の管理、利用者の通い方、事業所の方針から生まれます。工賃の額だけでなく、その決め方と事業所の取り組みを確かめることが、自分に合った事業所を選ぶ手がかりになります。
よくある質問
Q. 就労継続支援B型の工賃に最低額はありますか?
基準省令の第201条で、利用者それぞれに支払われる1か月あたりの工賃の平均額は3,000円を下回ってはならないと定められています。ただし、これは事業所全体の平均の下限であり、利用者一人ひとりの最低額を保証するものではありません。B型は雇用契約を結ばないため、最低賃金の考え方は当てはまりません。
Q. 工賃が事業所によって大きく違うのはなぜですか?
工賃は、生産活動の収入から必要な経費を差し引いた額を分配して決まり、国や自治体からの報酬を工賃に回すことは認められていません。そのため、どんな仕事をどれだけの単価で受けているか、販路を持っているか、経費をどう管理しているかによって工賃の総額が変わり、事業所ごとの差が生まれます。
Q. 平均工賃月額はどうやって計算されますか?
令和6年度の報酬改定で、前年度の「一日当たりの平均利用者数」を分母に用いる新しい計算方法が導入され、令和5年度の実績から反映されています。以前は工賃支払対象者数を分母にしていました。古い計算方法を紹介する情報も残っているため、報酬の区分に関わる計算は最新の告示や自治体の案内で確認してください。
Q. 自分の事業所の工賃の決め方を知る方法はありますか?
事業所は年度ごとに工賃の目標水準を設定し、その目標と前年度の平均工賃を利用者に知らせることになっています。あわせて、工賃の配分のルールをまとめた工賃規程があれば、見せてもらえるか尋ねてみましょう。説明が分かりにくいときや話し合いがうまくいかないときは、相談支援専門員や市区町村の障害福祉の窓口に相談できます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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