掛け持ちでつまずくのは在宅テンプレート販売の守秘義務の線引き


この記事のポイント
- ✓テンプレート販売と受注案件を掛け持ちする在宅ワーカーが
- ✓守秘義務の線引きでつまずく理由を実務目線で整理
- ✓掛け持ちが続かない原因
まず、安心してください。在宅でテンプレート販売をしながら別の仕事も受ける、いわゆる掛け持ちの働き方そのものは、何も後ろめたいものではありません。ただ、この形で進めていくと、ほぼ全員が同じ場所でつまずきます。守秘義務の線引きです。
受注した案件で作ったレイアウトを、少し変えてテンプレートとして販売してよいのか。クライアントに納品したフォーマットの考え方を、別の商品に流用してよいのか。ここが曖昧なまま進めると、あとで取引を切られたり、応募段階で断られたりします。実際、掛け持ちを理由に契約を見送られるケースは珍しくありません。
この記事では、掛け持ちで守秘義務がどこから問題になるのか、契約書のどの条項を見ればいいのか、応募で落ちる場面はどこか、そして続かなくなったときにどう判断するかを、順を追って書いていきます。皆さんが今どの段階にいるかによって読む場所は違うと思いますので、必要なところから拾ってください。
掛け持ちが前提になった在宅ワーク市場の現状
在宅ワークの求人を見ていると、単一の仕事だけで生活を組み立てている人は、実はそれほど多くありません。データ入力、事務代行、ライティング、デザイン制作。こうした仕事は案件ごとに稼働量が変動するため、1本に絞ると収入が不安定になります。結果として、複数の依頼元を持つ、あるいは受注仕事とストック型の販売を並行させる形が主流になっています。
在宅の案件単価は、業務内容によって大きく開きがあります。実際の求人票に出ている条件を見ると、その幅がわかります。
報酬:出社時:時間単価1,298円(税込) ※交通費は別途お支払いします。 在宅時:案件単価165円~385円(税込) ※難易度によって変動します。 出典: mamaworks.jp
案件単価が1件あたり165円から385円という水準の仕事は、作業効率を上げないと時間単価が成立しません。一方で、専門性が求められる案件では、1件あたり数十万円規模の契約もあります。
報酬:案件単価 200,000円 案件単価:20万円(税込) ※ご経験・スキル・実績を考慮の上決定いたします。 出典: mamaworks.jp
同じ在宅ワークというくくりの中に、これだけの単価差があります。掛け持ちを検討する人の多くは、低単価の作業案件で時間が埋まってしまう状況を抜け出すために、ストック型の収入を作ろうとしてテンプレート販売に手を出します。動機としては、まったく合理的です。
問題は、その2つが情報の面で地続きになっていることです。受注案件で扱う資料と、販売用テンプレートの素材は、頭の中では同じ引き出しに入っています。ここに線を引くのが、掛け持ちの最大の技術的課題になります。
守秘義務は「契約書にサインした瞬間」から始まる
在宅ワークの契約では、業務委託契約書やNDA(エヌディーエー、秘密保持契約)を交わすのが一般的です。ところが、ここを読まずに署名している人が非常に多い。私も独立して最初の1年は、送られてきた契約書をほとんど流し読みで返送していました。読むようになったきっかけは、あるクライアントから「他社向けに同種の資料を作っていないか」と確認の連絡が来たことです。そのときに契約書を読み返して、自分が何に同意していたのかを初めて把握しました。
守秘義務の条項は、たいてい次の3層で構成されています。
秘密情報の定義
何を秘密として扱うのかを決める部分です。ここが広く書かれている契約では、「本業務に関連して知り得たすべての情報」と定義されていることがあります。この書き方だと、業務の進め方、使ったツール、資料の構成方法まで含まれる可能性が出てきます。
逆に「書面またはデータで秘密である旨を明示して開示された情報」と限定している契約もあります。この場合、明示のない情報は秘密情報にあたらないので、扱いやすくなります。掛け持ちをする人は、この定義の広さを必ず確認してください。
目的外使用の禁止
秘密情報を、その業務以外の目的で使ってはいけないという条項です。テンプレート販売を掛け持ちしている人にとって、実は守秘義務より直接効いてくるのがこちらです。
クライアントの資料を見ながら覚えた構成を、販売用テンプレートに転用する。これは「目的外使用」に該当する可能性があります。情報を外部に漏らしていなくても、自分の商品に使えば違反になりうる、という点が見落とされがちです。
存続期間
契約終了後も守秘義務が続く期間です。3年から5年が一般的ですが、「期限の定めなく存続する」と書かれている契約も実際にあります。取引が終わったから使ってよい、という判断は成り立ちません。
契約条件の書面化について、発注者と受注者の間で確認すべき項目を整理したフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストは、初めて契約書を読む立場の人にとって実務的な手引きになります。守秘義務だけでなく、報酬の支払期日や成果物の検収についても押さえておくべき点が整理されています。
掛け持ちで線引きが曖昧になる3つの場面
理屈としては「クライアントの情報を使わなければいい」で済みます。ただ実務では、そう単純にいかない場面が繰り返し出てきます。
業界特化のテンプレートを作るとき
売れるテンプレートは、汎用品ではなく特定業界の実務に沿ったものです。不動産の物件管理シート、建設業の工程表、医療機関向けの申し送りフォーマット。こうしたものは需要があります。
問題は、その業界の実務知識をどこで得たかです。クライアント案件を通じて業界の書式を知り、それをもとにテンプレートを作ったなら、限りなくグレーです。一般に公開されている書式や、業界団体が配布しているひな型をベースにしたのであれば問題ありませんが、クライアント固有の運用ルールが混ざっていると、指摘されたときに説明できません。
判断の基準は「この構成を、そのクライアントと出会う前の自分が作れたか」です。作れなかったなら、使うべきではありません。
過去の納品物をポートフォリオに載せるとき
掛け持ちで新しい仕事に応募する際、実績を見せる必要があります。ここで過去の納品物をそのまま載せると、守秘義務違反になるケースがあります。多くの契約では、成果物の公開に事前承諾を求めています。
安全なのは、実績として掲載してよいかを都度確認することです。断られる前提で聞くと気が重いですが、承諾を取っておけば堂々と見せられます。私の経験では、聞いてみると「ロゴと固有名詞を外せば構わない」と言ってもらえることのほうが多い。
承諾が取れない場合は、同種の架空案件を自主制作して見せるという手もあります。手間はかかりますが、守秘義務を破るリスクを取るよりはるかにいい。
同業のクライアントを複数抱えるとき
競合関係にある2社から同時に仕事を受けている状態です。契約書に競業避止の条項がなければ法的には可能ですが、実務上は非常に危ない。片方の情報がもう片方に流れているのではないかと疑われた時点で、両方の取引が終わる可能性があります。
掛け持ちを増やすときは、依頼元同士が競合していないかを先に確認する。これは自分を守るための作業です。
応募段階で落ちる場面と、その理由
掛け持ちをしている在宅ワーカーが応募で落ちるパターンには、いくつか典型があります。実力の問題ではなく、条件の見え方で落ちていることが多い。
稼働可能時間が読めないと判断される
複数の仕事を並行していると、応募書類に書く稼働時間が曖昧になります。「週20時間程度」と書いたところで、他の案件が立て込んだらどうなるのか、依頼側は不安になります。
対策は、時間ではなく「対応可能な曜日と時間帯」を具体的に書くことです。「平日は19時から23時、土曜は9時から17時に対応可能。連絡は平日日中も1時間以内に返信します」と書けば、依頼側は業務設計ができます。稼働の総量より、いつ捕まるかのほうが重要視されます。
守秘義務への姿勢が見えない
掛け持ちしている人に対して、依頼側が最も気にするのがここです。応募書類に何も書いていないと、「この人は情報管理を意識していない」と受け取られます。
書くべきは、案件ごとにデータを分離して管理していること、他社案件の内容は一切話さないこと、成果物の公開は事前承諾を得てからにしていること。この3点を短く添えるだけで、印象が変わります。実際に運用していないことを書くのは論外ですが、運用しているなら書かない理由がありません。
販売活動が競合と見なされる
テンプレート販売をしていること自体が、応募先にとって競合になる場合があります。デザイン制作会社に応募して、自分が同種のテンプレートを販売していれば、断られる可能性は当然あります。
これは事前に伏せるべきではありません。後から発覚するほうが深刻です。応募時に触れておいて、扱う領域が違うことを説明する。そのうえで断られたなら、そもそも合わなかったということです。
単価交渉のタイミングを外す
掛け持ちしていると、時間あたりの採算が読めてきます。そこで単価交渉をしたくなるのですが、初回の応募でいきなり条件を出すと落ちます。
順番としては、まず提示条件で受けて、成果を出してから改定を相談する。あるいは、応募時点で希望単価を書くなら、その根拠(対応範囲の広さ、修正回数の少なさ、納期の短さ)をセットで示す。単価だけを主張すると、比較検討の対象から外れます。
掛け持ちが続かなくなる4つの原因
始めることより、続けることのほうが難しい。掛け持ちをやめていく人には、はっきりした共通点があります。
切り替えコストを計算に入れていない
受注案件とテンプレート制作を1日の中で行き来すると、切り替えのたびに集中が途切れます。ソフトを立ち上げ直し、前回どこまでやったかを思い出し、頭を作業モードに入れる。この所要時間は、体感より長い。1回15分としても、1日に4回切り替えれば1時間が消えます。
対策は、日単位で仕事を分けることです。平日は受注案件、土日はテンプレート制作、というように塊で分ける。細切れにするほど、実質稼働時間は減ります。
受注案件が優先されてテンプレートが止まる
締切のある仕事と、締切のない仕事を並行させると、必ず締切のあるほうが優先されます。テンプレート販売は誰にも急かされないため、後回しが常態化します。
3か月ほど新作を出さないでいると、マーケットプレイスでの露出が落ちて、既存商品の売上も下がります。ここで「やっぱり売れない」と結論づけてやめる人が多いのですが、実際は止めたから落ちただけです。
自分に締切を課す仕組みが要ります。月末までに2点出す、と決めてカレンダーに入れる。守れなかった月が2回続いたら、その時点で掛け持ちの設計を見直すサインです。
収入の内訳を把握していない
掛け持ちしていると、どの仕事が採算に合っているかが見えにくくなります。全体の月収は把握していても、案件別の時間あたり収入を計算していない人が非常に多い。
計算するとわかりますが、テンプレート販売の時間単価は、立ち上がりの半年ほどは受注案件を大きく下回ります。それを承知で投資として続けるのか、採算が合わないから縮小するのか。数字を出さないと判断できません。
私が最初に掛け持ちを始めたときも、感覚で「両方うまくいっている」と思っていました。実際に案件ごとに時間を記録してみたら、一番手間をかけていた仕事が一番割に合っていなかった。記録は面倒ですが、これをやらないと判断を誤ります。
家族や生活との折り合いがつかなくなる
掛け持ちは、単純に稼働時間が増えます。平日の夜と土日が埋まると、家庭の時間が削られます。これが原因で続かなくなるケースは、実際にかなり多い。
始める前に、週にどれだけ使うかを家族と話しておく。そして、決めた枠を超えないようにする。枠を超えて働かないと成立しない設計なら、その掛け持ち自体が無理な計画です。
どこで見切りをつけるか
続けるかどうかの判断基準を、あらかじめ決めておくことを勧めます。感覚で判断すると、投じた時間が惜しくなって延々と続けることになります。
撤退を考えるべきシグナル
第一に、守秘義務に関する指摘を受けたとき。クライアントから確認や注意があった場合、その時点で掛け持ちの構造に問題があります。指摘の内容にかかわらず、一度立ち止まって見直すべきです。
第二に、受注案件の品質が落ちたとき。納期の遅れ、修正回数の増加、連絡の遅れ。こうした兆候が出たら、掛け持ちが本業の足を引っ張っています。テンプレート販売は取引先を持たないぶん、失うものが少ない。優先順位は明確です。
第三に、6か月続けてテンプレート販売の時間単価が受注案件の半分を下回るとき。投資期間としての妥当性を超えています。ただしこれは、閲覧数が伸びていない場合の話です。閲覧数が伸びているなら、まだ立ち上がりの途中と判断できます。
撤退ではなく、掛け持ちの形を変える
テンプレート販売そのものをやめるのではなく、扱う領域を変えるという選択もあります。汎用テンプレートは生成AIツールの普及で価格競争が激しくなっており、専門性のない商品は収益が出にくくなっています。
自分が受注案件で扱っている領域とは別の、しかし自分の知識が活きる分野に絞る。この切り替えで状況が変わることがあります。守秘義務の観点でも、受注案件と領域が離れるほど安全になります。
在宅で受けられる仕事の幅を知っておくと、掛け持ちの組み合わせを見直す材料になります。AIツールの導入支援や業務改善の相談を扱う仕事の内容をまとめたAIコンサル・業務活用支援のお仕事、マーケティングやセキュリティ領域の案件傾向を整理したAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、開発系の実務内容を扱うアプリケーション開発のお仕事は、それぞれ求められるスキルが違います。今の掛け持ちが噛み合っていないなら、組み合わせ自体を変える発想も要ります。
税務と契約の実務、掛け持ち特有の注意点
掛け持ちをしていると、税務処理が複雑になります。ここを押さえておかないと、確定申告の時期に苦労します。
収入区分を分けて記録する
テンプレート販売の売上、受注案件の報酬、それぞれ別に記録します。同じ事業所得として合算する場合でも、内訳を分けておかないと、後で採算分析ができません。会計ソフトを使うなら、取引先ごとに補助科目を設定しておくと集計が楽になります。
源泉徴収の有無を確認する
受注案件では、報酬から源泉所得税が引かれている場合があります。原稿料やデザイン料は源泉徴収の対象です。一方、テンプレート販売の売上は源泉徴収されません。
確定申告の際、源泉徴収された分は納付済みの税額として精算されるため、支払調書や振込明細をきちんと保管しておく必要があります。掛け持ちで取引先が増えるほど、この管理が煩雑になります。
経費の按分
自宅の一室で作業している場合、家賃や光熱費を按分して経費計上できます。掛け持ちの場合でも、按分の考え方は同じです。事業全体で使っている面積と時間の割合で計算します。
計算方法や必要書類の詳細は年度によって変わるため、実際の申告前に国税庁の案内で確認してください。青色申告を選ぶかどうかも、記帳の手間と控除額を比べて判断することになります。
税務処理を専門家に任せる選択もあります。どこまでを自分でやり、どこから依頼するかを考える際は、この分野の業務内容を整理した税理士の副業ガイド|確定申告代行・記帳代行で稼ぐ方法【2026年版】が参考になります。
規模が大きくなったとき
売上が伸びて法人化を検討する段階になると、登記関連の手続きが発生します。手続きの費用感を把握しておきたい場合は本店移転・役員変更登記の報酬相場|オンライン申請とプロへの依頼比較【2026年最新】に目安が整理されています。ただし、掛け持ちの段階で法人化を急ぐ必要はありません。
スキルと単価の関係を数字で確認する
掛け持ちの組み合わせを考えるうえで、どのスキルがどの単価帯につながるかを知っておくことは重要です。感覚で選ぶと、時間を投じた先が低単価領域だった、という結果になります。
文章やコンテンツ制作の領域の報酬水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。開発寄りの領域ならソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になります。テンプレート販売に投じる時間を、こうした領域のスキル習得に振り向けた場合と比べて、1年後にどちらが有利かを検討する材料になります。
資格そのものが収入を保証するわけではありませんが、応募時の説明材料としては機能します。事務系の書類作成スキルを示すビジネス文書検定や、インフラ領域のCCNA(シスコ技術者認定)は、在宅案件の選考で判断材料として見られることがあります。掛け持ちで実績が分散している人ほど、こうした客観的な指標があると説明しやすくなります。
情報を物理的に分ける具体的な手順
守秘義務を守るという話は、意識の問題として語られがちです。実務では、意識ではなく仕組みで解決したほうが確実です。掛け持ちをしている人が最低限やっておくべき分離の手順を挙げます。
保存場所を案件ごとに完全に分ける
クライアント案件のデータと、テンプレート販売用の素材を同じフォルダ階層に置かない。これは基本ですが、守れていない人がかなり多い。デスクトップに作業中のファイルが混在している状態は、事故が起きる前提の環境です。
具体的には、クライアントごとにトップレベルのフォルダを作り、その中に案件番号や年月でサブフォルダを切ります。販売用の素材は別のドライブ、あるいは別のクラウドストレージのアカウントに置く。物理的に離れていれば、間違えて素材を混ぜることがありません。
クラウドストレージを使う場合、共有リンクの扱いにも注意が要ります。フォルダ単位で共有リンクを発行していると、後から入れたファイルまで共有対象になります。共有はファイル単位、期限付きが原則です。
使い回すテンプレート素材を先に用意しておく
販売用テンプレートを作るとき、ゼロから毎回組み立てるのではなく、自分専用の共通パーツを持っておきます。グリッド設定、カラーパレット、見出しのスタイル、書き出し設定。これらを最初に整備しておけば、クライアント案件で使った要素を無意識に流用してしまうリスクが下がります。
このパーツ群は、クライアントと出会う前に自力で作ったものであることが証明できる状態にしておくと、なお良い。制作日時が記録されたファイルを残しておくだけで、あとで説明できます。
案件終了時にデータを処理する
契約書には、業務終了後の資料返還や消去を定めた条項が入っていることがあります。読み飛ばされやすい部分ですが、掛け持ちしている人ほど重要です。
終了した案件のデータが手元に残っていると、後から流用の疑いをかけられたときに反証が難しくなります。契約で消去が定められているなら、実際に消して、消去した日付を記録しておく。返還が求められているなら、返還した記録を残す。手間ですが、自分を守るための作業です。
会話の内容も情報のうち
意外に見落とされるのが、口頭でやり取りした内容です。オンライン会議でクライアントが話した業界の内情、社内の課題、競合の動向。これらも秘密情報に含まれる可能性があります。
別のクライアントとの雑談で「そういえば、この業界ではこういう課題があるらしくて」と話してしまう。悪意はなくても、聞いた側が出所を推測すれば問題になります。掛け持ちしている人は、話題の出所を常に意識する習慣が要ります。
掛け持ちの時間設計を数字で組む
感覚で掛け持ちを進めると、たいてい破綻します。使える時間を先に確定させて、そこから配分を決める手順を書きます。
使える時間の総量を先に出す
1週間は168時間です。ここから睡眠を49時間、本業や家事や通勤などの固定の予定を引いていくと、実際に自由に使える時間が出ます。多くの人にとって、この数字は想像よりずっと小さい。
本業が会社勤めなら、週に確保できるのは15時間から20時間程度が現実的な上限です。この枠を超える計画を立てた時点で、その掛け持ちは失敗します。
配分を決めて固定する
確保した時間を、受注案件とテンプレート制作にどう割り振るかを決めます。立ち上げ期は受注案件7割、テンプレート3割あたりが無理のない配分です。収入の柱を先に確保しないと、テンプレート側の投資期間を耐えられません。
重要なのは、この配分を毎週変えないことです。忙しいからテンプレートは今週なし、という運用を続けると、結局止まります。少なくとも週に1回、決まった曜日に決まった時間だけは制作に充てる。量より継続性が効きます。
記録を取って月次で見直す
案件ごとに実際にかかった時間を記録します。ツールを使ってもいいですし、スプレッドシートに手入力でも構いません。重要なのは、月末に集計して時間単価を出すことです。
この数字を見ると、思い込みとの差に驚くことがあります。楽だと思っていた案件が実は時間を食っていた、面倒だと感じていた案件が実は効率が良かった。感覚と実測はよくずれます。掛け持ちの組み合わせを見直す判断は、この実測値をもとに行います。
在宅ワーク市場を20年見てきた立場からの観察
20年この市場を運営者として見てきた立場から言えば、掛け持ちで長く続いている人には、はっきりした特徴があります。仕事を「作業」ではなく「関係」で捉えていることです。
単発の作業を数多くこなす方向に進んだ人は、単価競争に巻き込まれて疲弊していきます。一方、依頼者から「この人に任せると楽だ」と思われる関係を作った人は、稼働時間が増えなくても収入が安定します。掛け持ちの本質は、複数の関係を並行して育てることであって、複数の作業を同時にこなすことではありません。この違いを理解している人は、案件を増やすときに慎重です。
もう1点、運営者として見てきた限りでは、手取りの厚さが継続率に直結します。仲介手数料が引かれる場と、手数料0%で直接やり取りできる場では、同じ契約金額でも受け手に残る額が違います。依頼する側から見ても、同じ予算でより多くを頼めるということです。掛け持ちで時間が限られている人ほど、1時間あたりに手元に残る金額の差が効いてきます。この差は1件では小さく見えても、年間で積み上がると、続けられるかどうかを左右します。
守秘義務の話に戻ると、長く続く人ほど、この線引きに神経を使っています。曖昧なままにしておくと、いつか必ず問題になる。逆に、最初から明確にルールを決めている人は、掛け持ちを増やしても揉めません。手間をかける価値のある部分です。
市場データから読み取れる、掛け持ちの現実的な設計
在宅ワークの求人動向を継続的に見ていると、いくつかの傾向が明確に出ています。
第一に、汎用的な作業案件の単価は下がり続けています。データ入力、簡単な画像加工、文字起こしといった業務は、ツールによる自動化が進み、報酬水準が低下しました。この領域だけで掛け持ちを組むと、稼働時間を増やしても収入が伸びない構造になります。
第二に、専門知識が前提になる案件は単価が維持されています。特定業界の実務を理解していないと成立しない仕事、法令や規格に沿った書類を扱う仕事、業務プロセスの設計に踏み込む仕事。こうした領域は、簡単には置き換えられません。
第三に、依頼側が求めているのは「安心して任せられること」です。スキルの高さより、連絡が取れること、納期を守ること、情報を適切に扱うことが評価されます。掛け持ちをしている人が不利に見られるのは、この3点に不安があると受け取られるからです。逆に言えば、この3点をきちんと示せれば、掛け持ちは不利になりません。
この3つを踏まえると、掛け持ちの設計方針は絞られます。低単価の作業案件を数で埋めるのではなく、専門性のある領域を1つ持ち、そこに関連しつつ守秘義務の面で分離できる領域をもう1つ組み合わせる。そして、どちらの依頼元に対しても、情報管理の運用を明示する。この形が、最も破綻しにくい構造です。
テンプレート販売は、うまく組み合わせれば稼働の谷を埋める役割を果たします。ただし、受注案件と情報が地続きになった状態で進めると、どこかで必ず線引きの問題に突き当たります。始める前に、自分の中でルールを決めておく。それが、掛け持ちを長く続けるための最初の作業です。
よくある質問
Q. 受注案件で作った資料の構成を、テンプレート販売に使ってもよいですか?
契約書の秘密情報の定義と目的外使用の条項を確認してください。多くの契約では、業務を通じて知り得た情報を他の目的に使うことが禁じられています。判断の基準は「そのクライアントと出会う前の自分が同じ構成を作れたか」です。作れなかったなら使うべきではありません。
Q. 掛け持ちしていることは、応募時に伝えるべきでしょうか?
伝えるべきです。特に応募先と扱う領域が重なる場合、後から発覚するほうが深刻な問題になります。あわせて、案件ごとにデータを分離していること、他社案件の内容は話さないこと、成果物の公開は事前承諾を得ていることを添えると、情報管理への姿勢が伝わって評価されやすくなります。
Q. テンプレート販売と受注案件、どちらを優先すべきですか?
納期のある受注案件を優先してください。テンプレート販売は誰にも急かされないため後回しになりがちですが、受注案件の品質が落ちると取引そのものを失います。ただしテンプレート側も月に2点程度は出さないと露出が落ちるため、自分で締切を設定して塊の時間を確保するのが現実的です。
Q. 掛け持ちをやめるべきか、どう判断すればいいですか?
判断基準を3つ持っておいてください。クライアントから守秘義務に関する指摘を受けたとき、受注案件で納期遅れや修正増加が出はじめたとき、6か月続けてテンプレート販売の時間単価が受注案件の半分を下回りかつ閲覧数も伸びていないとき。いずれかに当てはまったら、掛け持ちの構造を見直す時期です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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