掛け持ちで守秘義務に触れる在宅ランディングページのコーディング

前田 壮一
前田 壮一
掛け持ちで守秘義務に触れる在宅ランディングページのコーディング

この記事のポイント

  • 在宅でランディングページのコーディングを掛け持ちすると
  • 守秘義務や競業の線に触れる場面が出てきます
  • どこからが違反になるのか

まず、安心してください。在宅でランディングページのコーディングを複数の取引先から受けること自体は、何ら問題のある行為ではありません。フリーランスや業務委託は、複数の相手と取引するのが本来の姿です。

ただし、掛け持ちには線があります。その線は、守秘義務と競業のあたりに引かれています。そして皆さんが心配されている「これは大丈夫だろうか」という場面のほとんどは、この2つのどちらかに関係しています。

私が43歳で会社を辞めてフリーランスになったとき、最初に不安だったのもここでした。複数の取引先を持つのは当たり前だと聞かされていたけれど、じゃあどこまでやっていいのか、誰も教えてくれない。

この記事では、掛け持ちで実際に問題になる場面を具体的に挙げて、それぞれどう判断し、どう管理するかを書きます。リスクも正直に書きます。メリットだけ並べても、判断の役には立たないからです。

掛け持ちが前提の働き方になっている

まず、市場の側の状況から確認します。

在宅の仕事は、1社専属では成立しにくい

在宅でランディングページのコーディングを受ける場合、案件は単発が中心です。1件納品したら、次の案件を探す。この繰り返しになります。

継続的に依頼が来る取引先が1社あったとしても、その1社の発注量が毎月安定していることはまれです。発注が途切れた月に収入がゼロになる構造は、あまりに危うい。

だから、複数の取引先を持つのが標準的な形になります。これは、皆さんが欲張っているからではなく、市場の構造がそうなっているだけです。

募集の形も多様化している

在宅の募集を見ていると、業務委託だけでなく、時給制の在宅勤務という形も増えています。

完全在宅でWebデザイナーを募集しており、副業や独学経験者も歓迎です。広告バナーやSNS画像作成から始め、慣れてきたらLP制作やサイト更新、広告改善など、成果が見えるデザインを学べます。シフトは自由で、全国・海外どこからでも応募可能です。マイクロソフトOfficeの基本操作ができ、パソコンとインターネット環境があれば応募できます。未経験者も実務を通してスキルを伸ばせる環境です。時給は1,120円からで、昇給制度があります。 出典: 求人ボックス

ここで気をつけていただきたいのは、雇用契約と業務委託では、掛け持ちのルールがまったく違うという点です。

雇用契約であれば、その会社の就業規則が適用されます。副業や兼業の可否は、規則の内容次第です。一方、業務委託であれば、契約書に書かれた範囲だけが制限になります。書かれていないことは、原則として自由です。

自分が今どちらの形で働いているのか。まずここを確認してください。契約書の表題ではなく、中身で判断します。指揮命令を受けて時間を拘束されているなら、名目が業務委託でも実質は雇用に近い可能性があります。

週5日フルタイムの在宅求人も存在する

こういう募集もあります。

ECサイトのWebデザイナーを募集します。バナー、LP、商品ページ制作、自社商品のパッケージや名入れデザイン、企画・販促チームとの連携によるデザイン提案など、幅広いデザイン業務に携わっていただきます。Adobe Illustrator/Photoshop、Dreamweaver、Slack、Googleワークスペースの使用経験がある方、EC領域でのWebデザイン実務経験3年以上、オリジナルイラスト制作経験をお持ちの方を歓迎します。完全在宅勤務で、週5日、1日5時間から勤務可能です。 出典: 求人ボックス

この形で1社に入ると、週5日を拘束されるため、掛け持ちの余地はかなり狭くなります。安定はしますが、他の取引先を持ちにくい。

どちらが良いという話ではありません。安定を取るか、分散を取るか。皆さんの生活の条件によって、答えは変わります。

守秘義務は、どこからが違反になるのか

ここが本題です。

守秘義務の対象になる情報

契約書に秘密保持条項がある場合、対象になるのは概ね次のような情報です。

依頼者から提供された未公開の資料。商品の発売前情報、価格の設定根拠、販売計画、顧客リスト。デザインデータそのもの。アクセス解析の数値やコンバージョン率。取引先の名称や、案件の存在そのもの。

最後の項目に驚かれる方がいますが、「A社の案件をやっている」という事実自体が秘密にあたる契約は珍しくありません。特に、発売前の商品や新規事業に関わる案件では、この扱いになることが多い。

掛け持ちで違反が起きやすい5つの場面

実際に問題になるのは、次のような場面です。

1つ目、A社の案件で知った価格や販売計画を、同業のB社との会話で口にしてしまう。悪意なく「最近こういう傾向がありますね」と言ったつもりが、A社の非公開情報の推測を可能にしてしまう。

2つ目、A社向けに作ったコードを、そのままB社の案件に流用する。これは後で詳しく書きますが、判断が分かれる領域です。

3つ目、A社の案件のスクリーンショットをポートフォリオに載せる。公開前のページであれば、明確に違反です。公開後でも、掲載の許可を得ていなければ問題になります。

4つ目、同じ端末で複数の案件を扱っていて、ファイルの取り違えが起きる。B社への納品物に、A社のファイルが混ざる。これは実際に起きます。

5つ目、SNSで作業内容をつぶやく。「今日は化粧品のLPを組んでいます」という一言が、業界の人には特定可能な情報になることがあります。

特に注意が必要なのは、同業他社の掛け持ち

守秘義務の観点で最も危ういのは、同じ業界の競合同士を同時に受けることです。

たとえば、同じ地域の同じ業態の会社2社から、それぞれランディングページの制作を受ける。この状態では、片方で得た情報がもう片方の判断に影響しないようにするのが、現実的にかなり難しくなります。

避ける方法は2つあります。1つは、受注前に依頼者へ伝えて判断を仰ぐこと。「現在、同じ業界の案件を受けております。差し支えございますでしょうか」と確認する。多くの場合、問題ないと言われます。問題があるなら、その時点で断られるので、後から揉めるより遥かにましです。

もう1つは、時期をずらすこと。同時進行を避けて、片方が完了してから次に着手する。

正直に申し上げると、私は独立して最初の年に、この確認を怠って冷や汗をかいたことがあります。2社の案件が、後から同じ商圏の競合同士だと気づいた。幸い、どちらの案件も一般的な制作範囲で、非公開情報に触れていなかったので実害はありませんでした。それ以来、受注前に業種と商圏を必ず聞くようにしています。

コードとテンプレートの再利用は、どこまで許されるか

掛け持ちで最もよく相談されるのがこれです。

著作権の帰属を契約で確認する

まず、作ったコードの権利が誰に帰属するかを確認してください。契約書に「成果物の著作権は委託者に移転する」と書かれていれば、そのコードは依頼者のものになります。

この場合、そのコードをそのまま他の案件に使うのは、権利上の問題が生じます。

一方、権利の移転について何も書かれていない場合、著作権は原則として制作者に残ります。ただし、依頼者は当然そのページを使用できます。

契約書に「著作者人格権を行使しない」といった条項が入っていることもあります。これは、後から改変を止めたりできなくなるという意味です。

汎用的な部分と個別の部分を分ける

実務的な線引きとして、私は次のように考えています。

汎用的な部分。リセットCSS、レイアウトの基本構造、よく使う装飾のパターン、フォームの基本的なマークアップ。これらは、誰が書いても似た形になる部分であり、自分の資産として持ち回っても実務上の問題は生じにくい。

個別の部分。その案件のデザインに固有の値、商品名や固有の文言、依頼者から提供された画像やロゴ、その案件のために設計した独自の仕組み。これらは持ち出さない。

この線引きを自分の中で明確にしておくと、判断に迷わなくなります。

自分用のテンプレートを整備しておく

掛け持ちを効率よく回すなら、汎用部分を自分のテンプレートとして整備しておくのが最も効きます。

案件のたびにゼロから書くと、1本あたりの時間が膨らみます。テンプレートがあれば、初期構築の時間を大きく削れる。削れた時間が、確認の時間に回せます。

ただし、テンプレートを作る際は、過去案件のコードをそのままコピーするのではなく、書き直して汎用化してください。固有の値や依頼者名が残っていると、それが他社に渡ることになります。

ポートフォリオへの掲載は必ず確認する

掛け持ちの実績を公開したい気持ちはよくわかります。ただし、掲載は必ず依頼者の許可を得てください。

聞き方は簡単です。「制作実績として掲載させていただいてもよろしいでしょうか」と、納品後に一言。断られることもありますが、聞かずに載せて後から発覚するほうが遥かに問題です。

許可が得られない場合でも、代替手段があります。案件名を伏せて業種だけ書く。あるいは、架空の商品を設定した自主制作を代わりに載せる。実案件でなくても、構成の意図を説明できれば、依頼者から見た評価は十分に得られます。

契約書で確認すべき条項

掛け持ちを前提にするなら、契約時に見るべき箇所があります。

競業避止の条項

「本契約期間中および終了後1年間、委託者と競合する事業者から同種の業務を受託してはならない」といった条項が入っていることがあります。

この条項があると、掛け持ちの範囲が大きく制限されます。範囲が広すぎる条項は、そのまま有効とは限りませんが、争うには時間と費用がかかります。

署名する前に読んで、範囲が広すぎると感じたら交渉してください。「対象を、貴社と直接競合する同一商圏の事業者に限定していただけますか」といった形です。多くの場合、応じてもらえます。

専属性の条項

「本業務に専従すること」といった条項も見かけます。業務委託でこれが入っていると、掛け持ちができなくなります。

この場合、報酬がその制約に見合っているかを確認してください。専従を求めるなら、それは実質的に雇用に近い形です。報酬水準もそれに応じたものであるべきです。

再委託の禁止

「委託者の書面による事前の承諾なく、第三者に再委託してはならない」という条項です。

掛け持ちで手が足りなくなったとき、知人に手伝ってもらうことを考える方がいます。この条項があると、無断で頼むのは契約違反になります。

手伝いを頼む場合は、事前に承諾を得てください。承諾を得たうえで、その協力者とも秘密保持の取り決めを交わします。

発注書の交付は発注者の義務

条項の確認以前に、そもそも書面がないという状況もあります。

フリーランス保護新法により、発注者は業務を委託する際に、給付の内容、報酬の額、支払期日などを書面または電磁的方法で明示する義務があります。報酬は、成果物を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に支払う必要があります。制度の詳細は公正取引委員会の情報(https://www.jftc.go.jp/)や厚生労働省の情報(https://www.mhlw.go.jp/)で確認できます。

掛け持ちをしていると、条件を口頭でしか把握していない取引先が混ざりがちです。書面がないと、後から「そんな話はしていない」となったときに立証できません。

発注書で確認すべき項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにチェックリスト形式でまとまっています。取引先が増えるほど、確認の型を持っておく価値が上がります。

複数案件を安全に並行させる管理方法

ここからは実務です。事故を防ぐ仕組みの話をします。

案件ごとに保管場所を完全に分ける

最も基本的で、最も効く対策です。

案件ごとにフォルダを作り、その中だけで作業する。共通のデスクトップに複数案件のファイルを並べない。この単純なルールで、取り違えの事故はほぼ防げます。

私は、案件名の頭に取引先の識別子を付けています。フォルダ名を見ただけで、どの案件のものかがわかる状態にしておく。納品の直前に、ファイル名を目視で確認する習慣も付けています。

メールとチャットの誤送信を防ぐ

掛け持ちで起きる事故として多いのが、送り先の間違いです。

対策は3つあります。1つ目、送信前に宛先を声に出して読む。2つ目、添付ファイルを付けてから宛先を入れる(先に宛先を入れると、うっかり送信してしまう)。3つ目、送信取り消しの機能を有効にしておく。

地味ですが、これで防げる事故は多い。

同時進行の本数に上限を置く

安全性の観点からも、同時進行は2本までに抑えることをおすすめします。

3本を超えると、頭の中での切り替えが追いつかなくなります。切り替えの失敗が、情報の取り違えにつながる。守秘義務の事故は、悪意ではなく混乱から起きます。

3本目の依頼が来たら、着手日をずらして受ける方法があります。「現在2件が進行中ですので、来月頭からの着手であればお受けできます」と伝えるだけです。断らずに済みます。

記録を残す

どの案件で何を受け取ったかを、簡単な表にしておいてください。

案件名、依頼者、受領したデータ、返却または削除の期限、公開の可否。この5項目です。

契約に「業務終了後、受領した資料は返却または破棄する」という条項がある場合、実際に破棄した記録が要ります。表があれば、対応漏れが防げます。

掛け持ちの経済的な側面

安全の話が続いたので、収入の面も整理します。

単価と手数料の構造

在宅で受けるランディングページのコーディングは、1ページあたり2万円から10万円程度が中心帯です。静的なコーディングのみなら3万円前後、アニメーションやフォーム連携まで含めば8万円を超えることもあります。

制作会社にコーディングだけを外注する場合は1ページ4万円から15万円程度。この差が、個人に依頼が回ってくる理由です。

そして手数料です。大手のクラウドソーシングでは報酬から16.5%から20%が引かれます。掛け持ちで案件数が増えるほど、この差し引きの絶対額が大きくなります。年間150万円受注するなら、25万円から30万円が消える計算です。

手数料0%で直接取引できる経路を併用すると、同じ稼働で手取りが変わります。掛け持ちの本数を増やさずに収入を保てるなら、それは安全性の向上でもあります。

取引先の分散はリスク管理でもある

1社に依存していると、その1社の発注が止まったときに収入がゼロになります。

目安として、1つの取引先からの収入が全体の5割を超えたら、分散を意識する時期です。7割を超えると、その取引先の条件変更に対して交渉力がなくなります。

掛け持ちは、単に収入を増やす手段ではなく、交渉力を保つための仕組みでもあります。

確定申告と経費の管理

複数の取引先から報酬を受け取る場合、記録の管理が重要になります。

取引先ごとに、いつ、いくら、どの案件で受け取ったかを月ごとに残してください。年末にまとめてやろうとすると、必ず抜けが出ます。

経費として計上できるものには、機材費、通信費、書籍代などがあります。判断は個別の事情によるため、国税庁の情報(https://www.nta.go.jp/)を確認するか、税務署に相談してください。

記帳や申告を専門家に頼む選択もあります。相場感は税理士の副業ガイド|確定申告代行・記帳代行で稼ぐ方法【2026年版】に整理されているので、依頼する側として読んでも参考になります。

規模が大きくなったら法人化の検討

取引先が増えて収入が安定してくると、法人化を検討する段階が来ます。

急ぐ必要はありません。ただ、法人にすると発注側の与信の面で有利になる場面があり、掛け持ちの取引先を増やしやすくなる側面はあります。

登記の手続きや費用については本店移転・役員変更登記の報酬相場|オンライン申請とプロへの依頼比較【2026年最新】に、専門家に依頼する場合とオンライン申請の比較があります。将来の選択肢として頭に入れておく程度で十分です。

スキルの積み上げ方と、次の方向

掛け持ちを続けながら、どこに投資するかの話です。

取引の型を持つと、掛け持ちが楽になる

案件が増えると、見積もり、条件確認、進捗報告、請求といった事務作業が案件数分だけ発生します。

ここに型がないと、毎回文面を考えることになり、時間が溶けます。逆に型があれば、コピーして固有名詞を差し替えるだけで済む。

この領域はビジネス文書検定の学習範囲と重なります。文書の型を体系的に押さえておくと、取引先が増えても事務の負荷が比例して増えません。

公開作業まで請け負えると単価が上がる

サーバーやドメイン、通信の基礎を理解していると、制作から公開までを一貫して引き受けられます。1案件あたりの単価が上がるので、掛け持ちの本数を増やさずに収入を保てます。

ネットワークの体系を押さえるならCCNA(シスコ技術者認定)の出題範囲が目安になります。資格取得が目的でなくても、範囲を眺めるだけで自分の穴が見えます。

隣接する領域を見ておく

掛け持ちの取引先を増やす際、同じ職種ばかりで揃えると、市場の変化に対して脆くなります。

技術寄りに広げるなら、開発職の単価水準をソフトウェア作成者の年収・単価相場で確認しておいてください。ランディングページ単体の制作と、システム開発では金額の帯が異なります。

文章側に広げるなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場が参考になります。ランディングページの原稿制作は依頼者が重なるため、同じ取引先から追加で受けやすい領域です。

案件の種類を広げるなら、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事に広告運用や解析といった、ページを公開した後の仕事が整理されています。制作と運用を両方持つと、1つの取引先から継続的に発注が来る形を作れます。より技術寄りに進むならアプリケーション開発のお仕事、業務改善の相談に軸を移すならAIコンサル・業務活用支援のお仕事が近い領域です。

掛け持ちの本数別に、起きやすいことを整理する

本数によって、注意すべき点が変わります。段階別に見ていきます。

取引先1社の段階

安定して見えますが、実は最も脆い状態です。

その1社の担当者が異動したり、予算が削られたりすると、収入が一気にゼロになります。しかも、1社しか知らないと相場の感覚が身に付きません。提示された単価が高いのか安いのか、比較の材料がないからです。

この段階でやるべきことは、2社目を探すことです。無理に受注しなくても構いません。案件の募集を定期的に眺めて、条件を比べる習慣を付けるだけでも、相場の感覚が育ちます。

取引先2社の段階

最も安定しやすい形です。片方が止まっても、もう片方が残る。

注意点は、2社の繁忙期が重ならないかどうかです。年度末や決算期に両方の依頼が集中すると、一時的に処理しきれなくなります。

各取引先の繁忙期を把握して、カレンダーに書き込んでおいてください。重なる月は、事前にどちらかへ「この時期は着手が遅れる可能性があります」と伝えておく。事前に言えば調整してもらえます。

取引先3社以上の段階

管理の仕組みがないと、ここで崩れます。

崩れ方には共通の型があります。まず、進捗の把握が曖昧になる。次に、返信の遅れが出る。返信が遅れると依頼者の不安が増え、確認の連絡が増える。確認が増えると、さらに時間を取られる。この循環に入ります。

3社以上を持つなら、案件の状態を1枚の表で見られる状態にしてください。表がないまま本数だけ増やすのは、事故を待っているのと同じです。

一時的に本数を減らす判断

体調、家庭の事情、本業の繁忙。理由は何であれ、本数を減らす判断は必要な場面があります。

減らし方は、既存の取引先を切るのではなく、新規の受注を止めるのが基本です。「しばらく新規のお受けを控えております」と伝えれば、関係は維持できます。既存を切ると、戻すのに時間がかかります。

情報の取り違えを実際に防いだ工夫

私が独立してから使っている、地味だけれど効く工夫をいくつか挙げます。

作業前に、案件名を声に出す

作業を始める前に、フォルダ名を声に出して読みます。「これはB社のキャンペーンページ」と。

馬鹿げているようですが、これが効きます。作業に入る前に対象を意識に上げておくと、別案件のファイルを開いたときに違和感が働きます。

納品前に24時間置く

可能な限り、納品の24時間前には作業を終えて、送信は翌日にします。

一晩置いてから見返すと、宛先の間違い、ファイルの混在、消し忘れたコメントなどに気づきます。締切ぎりぎりで送ると、この確認の機会が消えます。

案件ごとにブラウザのプロファイルを分ける

複数の案件で管理画面やクラウドサービスにログインする場合、ブラウザのプロファイルを分けておくと、ログイン状態の取り違えが防げます。

A社の管理画面を開いたつもりが、B社のアカウントで操作していた、という事故は実際に起きます。プロファイルを分けるだけで、この種の事故はほぼ消えます。

終了した案件のデータを、期限を決めて消す

契約に「業務終了後、受領した資料は返却または破棄する」とある場合、実行しなければ契約違反です。

納品から1か月後に削除する、といったルールを決めて、カレンダーに入れておきます。手元に残っている情報が少ないほど、事故の可能性は下がります。

削除の際は、削除した日付を記録に残してください。後から確認を求められたときに答えられます。

掛け持ち先を増やすときの探し方

安全に本数を増やすための、探し方の順序です。

既存の取引先からの紹介が最も安全

条件と人柄が事前にわかっているため、事故が起きにくい。

紹介をもらうには、こちらから「もし周囲でお困りの方がいらっしゃれば」と伝えておくことです。言わなければ、相手は紹介していいのかどうかを判断できません。

過去に取引のあった相手に再度連絡する

1年以上前に取引が途切れた相手に、近況を伝える連絡をする。これも有効です。

「その節はありがとうございました。現在も制作を続けておりますので、機会がございましたらお声がけください」程度の内容で十分です。売り込みにならない書き方をすると、返信率が上がります。

求人媒体で条件を比較する

未経験からでも入れる募集は、実際に存在します。

未経験からWebデザイナーを目指せる求人です。1年間の研修でWebデザインや動画編集スキルを習得でき、研修後はフルリモートやフレックスなど多様な働き方が可能です。アニメ・ゲームLP制作やECサイト開発などに携わり、簡単な業務からスタートできます。年間休日128日、残業月平均3時間とワークライフバランスも充実しており、「推し活手当」などのユニークな福利厚生もあります。学歴・職歴不問で、ポテンシャル採用のため、未経験者や社会人デビューの方も歓迎しています。 出典: 求人ボックス

ただし、こうした雇用形態の募集に応じる場合、掛け持ちの可否は就業規則で決まります。応募前に、副業や兼業の扱いを確認してください。業務委託の掛け持ちとは前提が変わります。

市場を長く見てきた立場からの観察

20年この市場を見てきた立場から言えば、掛け持ちがうまくいく方と、破綻する方の差は、本数ではなく管理の仕組みにあります。

破綻する方は、頭の中だけで複数案件を回そうとします。どの案件がどの段階か、何を受け取っていて何を返していないか、記憶に頼る。案件が3本を超えた時点で、必ずどこかが抜けます。

続く方は、簡単な表を1枚持っています。それだけです。特別なツールではなく、案件名と状態と期限が並んだ表。この1枚があるかないかで、数年後の姿がまったく違ってきます。

もうひとつ、長く続く方は単発の作業ではなく関係づくりに時間を使っています。「この人に任せると楽だ」と思われる位置に入ると、案件を探す時間がゼロになる。掛け持ちの本数を無理に増やさなくても、収入が安定します。

そして手取りの構造です。同じ5万円の案件でも、手数料20%が引かれれば手取りは4万円手数料0%の直接取引ならそのまま残ります。依頼する側から見ても、中間マージンが乗らなければ同じ予算でより多く頼めます。双方が得をする構造で、運営者として見てきた限り、この構造に早く気づいた方ほど、少ない本数で成立させています。

本数が少なければ、守秘義務の事故も起きにくい。手取りの厚さは、安全性にも効いてくるということです。

掛け持ちを始める前の確認事項

最後に、実行できる形でまとめます。

1つ目、現在の各取引先との契約書を読み直す。競業避止、専属性、再委託の3つの条項を確認してください。書面がない取引先があれば、発注書の交付を求めます。

2つ目、新しい案件を受ける前に、業種と商圏を聞く。既存の取引先と競合する可能性があれば、受注前に伝えて判断を仰ぎます。

3つ目、案件ごとにフォルダを分け、共通の場所にファイルを置かない。納品前にファイル名を目視確認する習慣を付けます。

4つ目、同時進行を2本までに固定する。3本目は着手日をずらして受けます。

5つ目、案件名、依頼者、受領データ、削除期限、公開可否の5列の表を作る。これが、掛け持ちの安全性を支える中心になります。

掛け持ちは、悪いことでも危ないことでもありません。管理されていない掛け持ちが危ないだけです。仕組みを1つずつ入れていけば、皆さんが心配しているような事故は、まず起きません。

まずは、表を1枚作るところから始めてみてください。

よくある質問

Q. 在宅のランディングページのコーディングを複数社から受けるのは問題ありませんか?

業務委託であれば、複数の取引先を持つこと自体に問題はありません。制限になるのは契約書に書かれた条項だけです。競業避止、専属性、再委託の3つを確認してください。ただし雇用契約の場合は就業規則が適用されるため、扱いが変わります。契約書の表題ではなく、指揮命令や時間拘束の有無で実質を判断してください。

Q. 前の案件で作ったコードを別の案件で使い回してもいいですか?

契約で著作権が委託者に移転している場合、そのまま流用するのは権利上の問題が生じます。実務的な線引きとしては、リセットCSSやレイアウトの基本構造といった汎用部分は自分の資産として持ち回れます。一方、その案件固有の値、商品名、提供された画像、独自に設計した仕組みは持ち出しません。テンプレート化する際は、コピーではなく書き直して汎用化してください。

Q. 同じ業界の競合2社から同時に依頼が来たらどうすべきですか?

受注前に依頼者へ伝えて判断を仰ぐのが最も安全です。「現在、同じ業界の案件を受けております。差し支えございますでしょうか」と確認すれば、問題があればその時点で断られます。後から発覚するより遥かに良い。もう1つの方法は時期をずらすことで、片方が完了してから次に着手します。受注前に業種と商圏を聞く習慣を付けてください。

Q. 掛け持ちの実績をポートフォリオに載せてもいいですか?

必ず依頼者の許可を得てください。公開前のページは明確に違反です。公開後でも、許可がなければ問題になります。「制作実績として掲載させていただいてもよろしいでしょうか」と納品後に確認するだけで済みます。許可が得られない場合は、案件名を伏せて業種だけ書くか、架空の商品を設定した自主制作を代わりに載せる方法があります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年7月30日最終更新:2026年8月12日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金

お金・税金

確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

AI活用

AI活用

職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師

看護師

看護師の転職・副業・フリーランス・キャリアガイド

薬剤師

薬剤師

薬剤師の転職・副業・キャリアパスガイド

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金

補助金・助成金

個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方