個人事業主の車経費 按分計算とプライベート併用の正しい記帳

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
個人事業主の車経費 按分計算とプライベート併用の正しい記帳

この記事のポイント

  • 個人事業主の車を経費にする方法を解説
  • 按分計算・減価償却・プライベート併用の記帳ルールから
  • 新車と中古車の節税効果まで

「個人事業主 車 経費」と検索した方の多くは、確定申告を前にして「自分の車、どこまで経費に落とせるんだろう?」と頭を抱えているのではないでしょうか。結論から言うと、事業に使用している割合(事業按分)に応じて、ガソリン代・車検代・自動車税・減価償却費まで幅広く経費計上が可能です。ただし、按分根拠が曖昧だと税務調査で全額否認されるリスクもあるため、「何を、どう按分して、どう記帳するか」を最初に押さえることが重要になります。

本記事では、個人事業主が車関連費用を経費にする際の実務ルールを、按分計算の考え方、減価償却の仕組み、新車と中古車の比較、税務署に認められるためのポイントまで網羅的に解説します。曖昧な節税論ではなく、国税庁の公的見解と実務の通り道に沿って整理しているので、確定申告の準備や顧問税理士との相談材料としても活用してください。

個人事業主が車を経費にできる前提条件

個人事業主が車を経費計上できるかどうかは、「事業に使っているかどうか」に尽きます。プライベート専用車を全額経費にすることはできませんし、逆に事業専用車であれば100%経費化が可能です。多くの個人事業主は1台の車を仕事とプライベートで兼用しているため、「按分」というプロセスが避けて通れません。

国税庁の所得税法上、経費とは「事業を行う上で必要な費用」と定義されています。つまり、車関連の支出のうち事業遂行に直接的または間接的に必要だった部分のみが、必要経費として認められる仕組みです。ここを誤解して全額経費に計上してしまうと、税務調査で指摘されたときに修正申告と過少申告加算税のペナルティを受けることになります。

個人事業主が事業用の車両を経費計上する場合、適切な減価償却処理が必要です。取得価額が30万円以上の車両は固定資産であるため、法定耐用年数に基づいて費用化していきます。新車と中古車では耐用年数が異なりますので、それぞれの違いについても以下で、詳しく見ていきましょう。

経費計上の前提条件は、大きく分けて3つあります。第一に「事業との関連性」が明確に証明できること、第二に「按分根拠」が客観的なデータ(走行距離・使用日数など)に基づいていること、第三に「帳簿への記帳」が継続的かつ正確に行われていること。この3つを満たして初めて、税務署から見ても経費として通る記帳になります。

特に副業から個人事業主に移行したばかりの方は、「車検代が高かったから一気に経費に入れたい」「ガソリン満タンにしたから今月は全部経費」といった処理をしがちですが、これは典型的な否認パターンです。経費は「金額の大きさ」ではなく「按分根拠の客観性」で評価されるという原則を、まず頭に入れておきましょう。

経費にできる車関連費用の全体像

個人事業主が経費計上できる車関連費用は、想像以上に幅広く存在します。多くの方は「ガソリン代と車検代くらい」とイメージしていますが、実際には10種類以上の費用が経費化対象です。それぞれ勘定科目が異なるため、freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトを使う際にも分類を理解しておく必要があります。

経費化できる代表的な車関連費用は、車両本体価格(減価償却費として)、ガソリン代、駐車場代、高速道路通行料、自動車税、自動車重量税、自賠責保険料、任意保険料、車検費用、整備・修理費、洗車代、ETC利用料、ロードサービス会費、自動車ローンの利息部分などです。ローン元本は経費にならない点に注意してください(元本は借入金の返済であって費用ではない)。

勘定科目別に整理すると、ガソリン代・駐車場代・洗車代・高速代・整備費などの日常的な支出は「車両費」または「旅費交通費」、自動車税・自動車重量税は「租税公課」、自賠責保険・任意保険は「保険料」または「損害保険料」、車両本体の減価償却は「減価償却費」、ローン利息は「支払利息」が一般的です。複数の勘定科目を使い分けることで、申告書の数字にも事業の実態が反映されます。

ただし、これらすべてを「事業按分」しなければなりません。例えば事業使用割合が60%の車であれば、年間ガソリン代30万円のうち経費にできるのは18万円です。同様に車検費用10万円であれば6万円が経費。家族名義の車を使用する場合や、配偶者が同じ車を私用で使う場合は、さらに按分の根拠を厳密に書類化する必要があります。

なお、駐車違反の反則金・交通違反の罰金・スピード違反の罰則金は、たとえ業務中の違反であっても経費計上できません。これは所得税法上「業務遂行に必要な費用」と認められないためで、税務調査でも頻出の論点です。逆に、業務中のロードサービス会費(JAFなど)は、事業按分すれば経費化が可能です。

事業按分(家事按分)の計算方法と根拠資料

個人事業主にとって最大の山場が「按分計算」です。プライベートと事業の両方で使う車を「家事関連費」と呼び、合理的な基準で按分した部分のみを経費に算入します。按分の計算方法には大きく分けて3つのパターンがあり、自分の業態に合った方法を選ぶ必要があります。

1. 走行距離による按分

最も客観的で税務署に説明しやすいのが、走行距離による按分です。たとえば年間総走行距離が12,000kmで、業務目的の走行距離が7,200kmであれば、事業按分率は60%になります。この方法を採用する場合は、業務での移動を記録する「運行記録簿」(業務日報・走行記録ノート)を継続的につけることが必須です。

運行記録簿には、日付・出発地・目的地・走行距離・訪問先・目的を残します。エクセルでも手書きでも構いませんが、毎日記録する習慣をつけないと、年末に1年分まとめて書くハメになって信憑性が落ちます。最近はスマホアプリのDriversNoteや、Google マップのタイムライン機能を併用する個人事業主も増えています。

2. 使用日数による按分

業務用に車を使う日が比較的明確に分かれている場合、使用日数で按分する方法もあります。たとえば「平日5日のうち4日は業務で使い、休日2日は私用」というケースなら、事業按分率は4日÷7日=約57%です。営業職や訪問サービス業など、業務とプライベートの境界が日単位で分かれる業態に向いています。

3. 使用時間による按分

タクシードライバー型ではなく、1日のうち午前中だけ業務利用、午後は私用といったケースでは、使用時間による按分も認められます。ただし、時間ベースの按分は記録の精度が問われるため、走行距離による按分が選べる場合は走行距離を優先する方が安全です。

按分根拠として税務署に提示できる資料は、運行記録簿、業務日報、顧客訪問記録、Googleマップタイムライン、ETC履歴、給油レシート、駐車場のレシート、業務関連の打ち合わせメール(訪問日付の証跡として)などです。これらを最低でも7年間は保存しておく必要があります(青色申告者の帳簿書類保存期間)。

個人事業主の車両経費とは、事業運営において発生した支出のうち、税務上の損金として認められる費用のことです。具体的には、車両の取得価額を法定耐用年数(普通車6年、軽自動車4年)に応じて分割計上する「減価償却費」や、ガソリン代・車検代・保険料などの「車両費」、自動車税などの「租税公課」、ローンの支払利息、カーリース料などが含まれます。これらを、実際の使用実態(走行距離や使用日数など)に基づき、仕事とプライベートの比率を明確に区分して計上することが不可欠です。

正直なところ、按分率を90%以上に設定するのは、よほど事業専用に近い使い方をしていない限り厳しいです。営業車として平日フルに使い、休日も配送等で使うようなケースで初めて80〜90%が通る印象。一般的な個人事業主の業務利用比率は40〜70%に収まることが多いので、無理に高い按分率を主張するよりも、根拠資料の厚みで信頼性を担保した方が結果的に得をします。

車両本体価格の減価償却の仕組み

取得価額が10万円以上の車を購入した場合、その年に全額を経費にすることはできません。減価償却という処理を通じて、法定耐用年数にわたって少しずつ費用化していくことになります。これは個人事業主にとって最も誤解の多いポイントの1つです。

法定耐用年数の基本

国税庁が定める普通自動車の法定耐用年数は6年、軽自動車は4年、貨物自動車(トラック等)は5年です。たとえば新車の普通乗用車を300万円で購入した場合、定額法で減価償却すると年間50万円を6年間にわたって経費計上していくことになります(事業按分前の金額)。

中古車の耐用年数計算(節税効果が大きい)

中古車を購入する場合、新車よりも耐用年数が短くなり、年間の減価償却費が大きくなるため節税効果が高まります。中古車の耐用年数の計算式は次の通りです。

経過年数が法定耐用年数を超えている場合 → 法定耐用年数 × 20% 経過年数が法定耐用年数の一部経過の場合 → (法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%

具体例で見ると、新車登録から4年経過した普通自動車の耐用年数は、(6年−4年)+4年×20%=2.8年→端数切り捨てで2年になります。4年10ヶ月以上経過した普通車だと、6年×20%=1.2年→1年(年初に取得すれば実質その年に全額償却)です。

これが「4年落ち中古車が節税に強い」と言われる根拠です。年初に取得して定率法を選んでいれば、購入価格300万円×事業按分率60%=180万円を、初年度にほぼ全額経費化できる計算になります。所得が大きく出た年に4年落ち中古車を購入する個人事業主が多いのはこのためです。

定額法と定率法の選び方

個人事業主は原則として定額法が適用されますが、税務署に「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出すれば定率法も選択できます。定額法は毎年同じ金額を計上する方法、定率法は初年度に大きく計上して年々減らしていく方法です。

定額法のメリットは計算がシンプルで予測しやすいこと、定率法のメリットは初年度の節税効果が大きいこと。ただし定率法は計算が複雑になるため、会計ソフトを使わずに手計算する方には正直おすすめしません。マネーフォワード クラウド確定申告やfreee会計などのソフトを使えば、どちらの方法も自動で計算してくれるので、節税効果の大きい方を選ぶ余地があります。

一括経費化できる特例

青色申告をしている個人事業主には、「少額減価償却資産の特例」という制度があります。取得価額30万円未満の資産であれば、その年に一括で経費計上できるという特例です(年間合計300万円まで)。

ただし、車両の場合は車両本体価格に加えて、取得時に支払う取得税・登録費用・納車費用などを合算した「取得価額」で判定するため、安い軽自動車でも30万円を超えることが多いです。実務上は、原付バイクや一部の中古軽トラックなど、特殊なケースでしか使えない特例と考えておくのが現実的でしょう。

ガソリン代・車検代・保険料などの実務的な記帳方法

車両本体の減価償却以外にも、日々発生するランニングコストの記帳は確定申告作業の大きな部分を占めます。それぞれ勘定科目が異なるため、会計ソフト上で正しく分類することが重要です。

ガソリン代の記帳

ガソリン代の勘定科目は「車両費」または「旅費交通費」が一般的です。中小企業庁の指針では、車両を多く使う業態(運送・配送・営業)は「車両費」、それ以外は「旅費交通費」に含めることが多いとされています。一度決めた勘定科目は、原則として継続して使うことが求められます(継続性の原則)。

仕訳例:事業按分率60%、ガソリン代5,000円を現金で支払った場合 車両費 3,000円 / 現金 3,000円 事業主貸 2,000円 / 現金 2,000円

事業主貸の部分は、事業者本人が個人的に支出した金額として処理します。これがプライベート利用部分の按分処理です。

車検費用の記帳

車検費用は、いくつかの費目に分解する必要があります。法定費用(自賠責保険・自動車重量税・印紙代)と、整備費用(部品代・点検費・整備工賃)に分かれ、それぞれ勘定科目が違います。

法定費用の内訳:自動車重量税は「租税公課」、自賠責保険は「保険料」または「損害保険料」、印紙代は「租税公課」または「支払手数料」。整備費用は「車両費」または「修繕費」が一般的です。車検証や請求書の明細を見ながら、項目ごとに分解して記帳する必要があるため、慣れないうちは時間がかかります。

自動車税・自動車重量税の記帳

自動車税は毎年4月1日時点の所有者に課税される税金で、勘定科目は「租税公課」です。事業按分率に応じて経費計上します。普通車だと年間3万〜5万円程度ですが、按分率60%なら1.8万〜3万円が経費に。

なお、自動車税は事業按分後の金額を経費に入れ、按分外の部分は事業主貸として処理するのが原則です。「事業のために必要な部分だけ租税公課」という整理になります。

任意保険料の記帳

任意保険料の勘定科目は「保険料」または「損害保険料」です。月払い・年払いのどちらでも記帳可能ですが、年払いで複数年分を一括前払いした場合は、当期分のみを経費にし、残りは「前払保険料」として資産計上します。

具体例:3年分の任意保険15万円を一括払いした場合、当期分5万円を保険料、残り10万円を前払保険料として処理。事業按分率60%なら、当期保険料は3万円が経費。

家事按分については以下の記事でもくわしく解説しているので、合わせて参考にしてください。 会社設立の基礎知識フリーランス・個人事業主必見!家事按分を活用して生活費を経費にするための5つのポイント | マネーフ...フリーランス・個人事業主になると、様々な税金の負担が大きく感じるようになります。そのような時には、普段使っているお金の一部を費用として仕分けられる家事按分を活用した節税がおすすめです。 しかし一方で、経費に計上する金額によっては税務署に否認されてしまう可能性があります。今回はトラブルを避けるために押さえておきたい、5つ…

ローン購入・カーリースの記帳

ローンで車を購入した場合、月々の支払額のうち「元本部分」と「利息部分」を分けて記帳する必要があります。元本部分は借入金の返済なので経費ではなく、利息部分のみが「支払利息」として経費計上できます(事業按分後)。

一方、カーリースで車を利用している場合は、月々のリース料を「賃借料」または「リース料」として経費計上します。リース料には車両本体・税金・保険・メンテナンス費が含まれていることが多いので、減価償却の計算が不要で、按分処理だけで済むのがメリットです。月額3万円のカーリースなら、按分率60%で月1.8万円を経費化。経理処理のシンプルさを優先する個人事業主にはリースが向いている傾向があります。

新車と中古車、どちらが節税面で有利か

「経費目的なら4年落ち中古車」という話を聞いたことがある方も多いでしょう。実際にこれは中小企業や個人事業主の節税の鉄板パターンとして広く知られています。ただし、節税効果と実利用の両面から見ると、必ずしも中古車一択ではありません。

新車のメリット・デメリット

新車のメリットは、初期不具合が少なく長期利用に向くこと、メーカー保証が充実していること、燃費性能が高くランニングコストを抑えられること、新車登録時の各種税金優遇制度(エコカー減税等)を活用できることなどです。

一方デメリットは、購入価格が高く減価償却期間が6年と長いこと、新車登録1年目の自動車税が他より高いこと、登録諸費用が嵩むことなどが挙げられます。減価償却の都合上、利益が大きく出た年に新車を買っても、その年に経費化できる金額はそれほど多くありません。

中古車のメリット・デメリット

中古車、特に4年落ち以上の中古車のメリットは、減価償却期間が短く1〜2年で大半を経費化できること、購入価格が新車より圧倒的に安いこと、登録諸費用も新車より少額で済むことです。所得が大きく出た年に節税策として活用するのに向いています。

デメリットは、整備履歴が不明な車を引き当ててしまうリスク、メーカー保証の残期間が短い、初期不具合や故障の確率が新車より高い、燃費性能が古い世代になるためランニングコストが嵩む可能性などです。整備記録簿が残っている認定中古車を選ぶことで、リスクをある程度コントロールできます。

結論:使い方で選ぶのが正解

正直なところ、これはどうかと思いますが「節税のためだけに4年落ち中古車を買う」のは本末転倒です。車両は事業の道具なので、業務にしっかり使える信頼性・燃費・荷物の積載性が最優先。その上で、新車と中古車の節税効果を比較するのが正しい順番です。

年間走行距離が短く(5,000km以下程度)、長く乗りたい方は新車、年間走行距離が多く(2万km以上)数年で乗り換える前提なら中古車、というのが実務的な分け方です。所得が一時的に大きく出る年(フリーランスでスポット案件が大ヒットした年など)には、4年落ち中古車を選択肢に入れて節税効果を測算するのが合理的でしょう。

税務署に否認されないためのポイント

ここまで読んで「自分の場合、どこまで経費にできるんだろう?」と不安になった方も多いと思います。税務調査で否認されないために押さえておくべき5つのポイントを整理します。

1. 按分根拠の客観性を担保する

何度も触れていますが、按分根拠が客観的なデータに基づいていないと、税務署はまず認めません。「だいたい7割は仕事で使ってるから」では論外で、走行距離・使用日数・使用時間のいずれかを記録した運行記録簿が必須です。記録は事後にまとめて作成するのではなく、日々の業務の中でリアルタイムにつけることが重要。

2. 名義の問題に注意する

個人事業主本人名義の車であれば経費化に問題はありませんが、家族名義(配偶者・親など)の車を業務に使う場合は注意が必要です。原則として、車検証の所有者・使用者が事業主本人以外の場合、自動車税や減価償却費は経費にできません。ただし、ガソリン代・高速代・駐車場代など、事業主が実際に支払った費用は事業按分後に経費化が可能です。

3. レシート・領収書を必ず保管する

経費計上した費用については、レシート・領収書・請求書を必ず保管してください。青色申告者は原則7年間の保存義務があります。最近は電子帳簿保存法の改正により、紙のレシートをスキャナ保存・スマホ撮影での保存も認められていますが、要件を満たした方法で保存する必要があります。

4. 個人用クレジットカードと事業用カードを分ける

ガソリン代や駐車場代を個人カードと事業カードでバラバラに支払っていると、按分計算がぐちゃぐちゃになります。事業用と個人用のクレジットカードを別々に持ち、可能な限り車関連費用は1枚にまとめると、後の記帳作業が圧倒的に楽になります。事業用カードを作るなら、年会費無料で利用明細が会計ソフトと連携するものがおすすめです。

クレジットカード選びについては、個人事業主におすすめのクレジットカードの記事で詳しく比較しているので参考にしてください。

5. 過剰な按分率を主張しない

事業按分率を高く設定したい気持ちは分かりますが、業態に対して明らかに不自然な按分率は税務調査で集中砲火を浴びます。一人で事務所兼自宅で仕事をしているIT系フリーランスが「車は事業利用90%」と申告すれば、当然「何にそんなに使っているんですか?」と質問されます。

業態別の妥当な按分率の目安は、訪問サービス業(営業・整体・修理)で60〜80%、配送・運送業で70〜90%、店舗併設の小売・飲食業で30〜50%、IT・デザイン・ライター等の在宅型業務で20〜40%程度です。あくまで目安なので、自分の業務実態と照らし合わせて設定してください。

私の体験では、業務委託でクライアント先に訪問する頻度が増えた年に、按分率を50%から65%に上げて申告したことがあります。事前に運行記録簿をつけ直して、訪問日と走行距離をエクセルで集計しておいたところ、税務署からの問い合わせは特になく問題なく受理されました。逆に言うと、根拠資料さえ準備していれば按分率の変更も問題にならないということです。

個人事業主の車経費でよくある失敗パターン

実務でよく見かける失敗例を共有しておきます。これらを避けるだけで、税務調査リスクを大きく下げられます。

失敗例1:年末にまとめて運行記録を捏造する

確定申告の直前になって「運行記録、つけてなかった…」と慌てて1年分まとめて作成するパターン。手書きの場合は筆跡や使用したペンの色で簡単にバレますし、エクセルでも更新日時の履歴から判明します。税務署はそういう作為を見抜くプロなので、最初から日々つける習慣を持つことが何より重要。

失敗例2:高額な車を経費目的で衝動買い

「節税のために高い車を買おう」と所得が出た年の年末に衝動買いするパターン。減価償却は耐用年数で按分されるので、その年に経費にできる金額は限定的です(4年落ち中古車を除く)。しかも事業按分率が低ければ、節税効果はさらに薄まります。500万円の新車を購入しても、按分率40%なら年間経費化できるのは33万円程度(500万÷6年×40%)です。

失敗例3:プライベートで使った時のガソリン代まで全額経費

「面倒だから給油したら全部経費でいいや」というずさんな処理をすると、税務調査時に按分根拠の説明ができず大量否認のリスクがあります。レシートを保管していても、走行記録と紐づかなければ意味がありません。

失敗例4:駐車違反の罰金を経費計上

業務中の駐車違反であっても、罰金は経費にできません。所得税法上「公序良俗に反する支出」は必要経費から除外される仕組みです。これは経費計上ミスの定番なので注意してください。

失敗例5:家族名義の車の減価償却を計上

家族名義(配偶者・親など)の車を業務利用している場合、その車の減価償却費を経費計上することはできません。所有権が事業主本人にないためです。家族名義の車を使うなら、ガソリン代・高速代・駐車場代・洗車代などの「実費」のみを按分して経費化するのが正しい処理です。

@SOHO独自データの考察:個人事業主の業態別「車経費の使い方」傾向

@SOHOには、さまざまな業態のフリーランス・個人事業主が登録しています。実際の案件カテゴリ別に「車経費がどれくらい発生しているか」をデータ視点で見てみると、業態によって大きな差があることが分かります。

ソフトウェア作成者の年収・単価相場を見ると、エンジニア・プログラマー系は在宅型の業務が中心で、車経費が発生する割合は比較的低めです。クライアントとの打ち合わせがオンライン主体になっている今、事業按分率は20〜30%程度に収まることが多い印象。

一方、著述家,記者,編集者の年収・単価相場に分類される編集者・ライター系は、取材で各地を訪問するケースが多く、訪問取材中心の方は40〜60%程度の按分率になる傾向があります。在宅執筆中心の方は20%程度。

AIコンサル・業務活用支援のお仕事のように、顧客先での導入支援を伴う業務では、移動距離が長くなり按分率も高めになります。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事も訪問コンサルを伴う場合は同様の傾向。逆にアプリケーション開発のお仕事はリモート中心なので、車経費はそれほど発生しません。

業態を問わず共通しているのは、「車経費を意識して記帳できている人」と「漠然と申告している人」の確定申告書類の精度が、明らかに前者の方が高いということ。後者は申告期限直前に駆け込みで領収書をまとめて、按分根拠も曖昧なまま提出してしまい、税務調査リスクを抱えたままになります。

業務委託で得る収入の規模が大きくなってきた個人事業主にとって、車経費の正確な按分は数十万円単位の節税効果につながります。年間ガソリン代30万円・車検費用10万円・自動車税4万円・任意保険8万円・減価償却費50万円の合計102万円を、按分率60%で経費化すれば61万2,000円が経費に計上できる計算。所得税率20%・住民税率10%の方であれば、合計税率30%として約18万円の節税効果になります。

また、住宅ローンを組んでいる個人事業主の方は、車経費の按分計算が個人事業主の住宅ローン審査にも影響します。経費を正しく計上することで所得金額が下がり、結果的に住宅ローン審査での年収評価に影響する場合があるため、戦略的に按分を設計する視点も重要です。

ふるさと納税の上限額計算も同様で、ふるさと納税 上限額 個人事業主の記事でも触れているように、経費の計上額が所得に直結するため、車経費の按分は確定申告全体の戦略と切り離せません。一つの経費の判断が、他の節税策の上限額にも波及するというのが、個人事業主の確定申告のリアルです。

将来的に法人化を視野に入れている個人事業主にとっても、車経費の按分実績は重要な判断材料になります。法人化すると車を社用車として全額経費化できる代わりに、私的利用部分は「役員報酬の現物給与」として課税されるため、結局のところ按分の論点は形を変えて残り続けます。今のうちから按分計算の習慣をつけておくことは、将来の法人化局面でも必ず役に立ちます。

資格取得の費用も同様に経費化できるケースがあるため、たとえばビジネス文書検定CCNA(シスコ技術者認定)のような業務関連の資格を取得する際の交通費・テキスト代も、車経費と同じく事業按分の対象として整理しておくと申告作業がスムーズになります。

確定申告の準備で最も大切なのは、「年間を通じた継続的な記帳」と「按分根拠の客観性」です。1月から12月までの12ヶ月間、毎月コツコツと記帳していくことで、年度末の確定申告作業が劇的に楽になります。会計ソフトと運行記録アプリを組み合わせれば、ほぼ自動的に按分計算まで完了する仕組みも作れるので、まずは自分の業態に合った仕組みづくりから始めてみてください。

公的機関・関連参考情報

本記事の内容に関連する公的機関や信頼できる情報源は以下の通りです。最新情報は公式サイトで確認してください。

よくある質問

Q. プライベートでも使う車を仕事の経費にすることはできますか?

はい、可能です。ただし、仕事とプライベートの利用割合に応じて「家事按分(かじあんぶん)」を行う必要があります。走行距離や使用日数などの客観的な基準をもとに、事業用として使用した割合分だけを減価償却費や維持費として計上します。

Q. 仕事とプライベートの利用割合(家事按分)が変わった場合はどうすればいいですか?

事業の実態に合わせて、年度ごとに按分割合を見直しても問題ありません。ただし、税務調査などで根拠を問われた際に応えられるよう、走行距離の記録や仕事で使用した日数がわかる日報などを保管し、客観的に説明できる状態にしておくことが大切です。

Q. 中古品を買った場合はどうなりますか?

中古品の場合、「簡便法」という計算を用いて、新品(法定耐用年数)よりも短い期間で償却できる可能性があります。ただし、購入金額が 30万円未満 であれば、中古であっても新品と同様に「少額減価償却資産の特例」を使って、その年に一括で経費にする方が、節税効率としては早い(即効性がある)ケースがほとんどです。

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朝比奈 蒼

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朝比奈 蒼

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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