家賃や光熱費も落とせる?個人事業主副業経費の按分計算と領収書の保管

前田 壮一
前田 壮一
家賃や光熱費も落とせる?個人事業主副業経費の按分計算と領収書の保管

この記事のポイント

  • 個人事業主の副業経費は家賃や光熱費も按分すれば計上可能
  • 確定申告で認められる経費の範囲
  • 領収書の保管ルールまで実務目線で解説します

「個人事業主として副業をしているけれど、家賃や光熱費は経費にできるのだろうか」、そう悩んでいる皆さんへ。まず、安心してください。条件を満たせば、家賃も光熱費もスマホ代も、ちゃんと経費に落とせます。ただし、ルールを知らないまま申告すると税務署から指摘を受けることもあります。私も43歳でメーカーを辞めてフリーランスになったとき、最初の確定申告で「これ、経費にしていいの?」と何時間も悩みました。本記事では、副業の経費として認められる範囲、家事按分の具体的な計算方法、領収書の保管ルールまで、実務でつまずきやすいポイントを中心に整理します。読み終える頃には、来年の確定申告で迷わない基準が手に入るはずです。

副業を持つ個人事業主が増えている社会的背景

副業解禁の流れは、ここ数年で一気に加速しました。2018年の厚生労働省「モデル就業規則」改定で副業・兼業を原則容認する方向に変わり、2022年には副業・兼業の促進に関するガイドラインも改定されています。経済産業省や厚生労働省が公表する各種調査でも、副業をしている、あるいは希望する会社員の割合は年々増加傾向にあります。

この流れの中で、会社員として給与をもらいながら個人事業主として開業届を出し、副業を「事業所得」として申告する人が増えています。私の周りでも、Webライティング、プログラミング、動画編集、コンサルティングなど、さまざまな分野で副業を始めた40代・50代の知人が珍しくありません。

副業を事業として運営する以上、収入から必要経費を差し引いた「所得」に対して税金がかかります。ここで経費の知識があるかないかで、手元に残るお金が大きく変わってきます。年間20万円を超える副業所得がある会社員は確定申告が必要となるため、経費の取り扱いは避けて通れないテーマです。

副業の経費として認められる「所得区分」を最初に確認する

経費の話に入る前に、皆さんに必ず押さえてほしいのが「所得区分」です。これを理解していないと、そもそも経費計上ができないケースもあります。

副業で経費計上が認められるのは、主に次の4つの所得です。

  • 事業所得: 反復継続して行う事業から得る所得
  • 雑所得: 上記に該当しない副業収入の多く
  • 不動産所得: 不動産の賃貸による所得
  • 山林所得: 山林の伐採・譲渡による所得

会社員が副業で得た収入は、原則として「雑所得」または「事業所得」に区分されます。2022年に国税庁が公表した所得税基本通達の改正により、帳簿書類の保存がない副業収入は原則として雑所得に区分される運用となりました。事業所得として申告するには、帳簿付けと書類保存が必須要件となっています。

副業でも雑所得・事業所得・不動産所得・山林所得に該当する場合は経費計上が可能です。経費として認められるのは「副業をする上で発生した支出」のみで、プライベートによる支出は経費計上できません。

2023年の確定申告提出分からは、明確に経費であることを証明できないものは損金不算入とされるので注意しましょう。

また、副業で得た収入から必要経費を差し引いた所得額が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。経費を漏れなく計上することは、納める税金を最低限に抑えることにつながるので、経費はしっかり計上しましょう。

私自身、退職して独立した1年目に税理士に相談した際、「事業所得で青色申告にすれば最大65万円の青色申告特別控除が使えますよ」と言われ、迷わず事業所得を選びました。ただし、副業の規模が小さく、帳簿付けが負担になる方は雑所得のままでも構いません。所得区分の選択は、経費計上の可否と申告の手間のバランスで判断するのが現実的です。

副業で経費計上できる費用の具体例

ここから本題です。副業で経費にできる支出には、おおむね以下のようなものがあります。「副業をする上で発生した支出」であることが大原則です。

1. 通信費

インターネット回線、スマホ代、Wi-Fiルーター代などが該当します。Webライターやプログラマーなど、ネット環境がなければ仕事にならない業種では特に重要な経費です。ただし、プライベート利用と併用している場合は後述する家事按分が必要になります。

2. 消耗品費・事務用品費

ペン、ノート、プリンター用紙、トナー、PC周辺機器など、業務で使う消耗品が対象です。10万円未満の備品は消耗品費として全額その年に経費化できます。10万円以上の備品は減価償却資産となり、複数年に分けて経費化します。

3. 接待交際費

クライアントとの打ち合わせの飲食代、お中元・お歳暮、慶弔費などが該当します。ただし「事業に関連していること」が明確である必要があり、領収書には相手先や目的をメモしておくと安心です。

4. 旅費交通費

打ち合わせの電車代、出張費、取材のための交通費など。Suicaなどの交通系ICの利用履歴は、駅の券売機やアプリで確認・出力できるので保存しておきましょう。

5. 新聞図書費・研修費

業務に関連する書籍、専門誌、有料ニュースサイト、オンライン講座、セミナー受講料などが対象です。Webライターであれば取材分野の書籍代、エンジニアであれば技術書代が典型例です。

6. 減価償却費

10万円以上のPC、カメラ、机などは耐用年数に応じて分割で経費化します。青色申告であれば、30万円未満の備品は「少額減価償却資産の特例」で一括経費化できる優遇措置があります。

7. 支払手数料

これら以外にも、業務委託費、広告宣伝費、損害保険料など多岐にわたります。要は「事業のために必要だった支出」かどうかが判断軸です。

家賃・光熱費の家事按分は副業経費の最重要トピック

自宅で副業をしている個人事業主にとって、家賃と光熱費の家事按分は最も大きな経費削減効果を持ちます。私も、自宅の一室を仕事部屋として使っているので、ここはきっちり按分しています。

家事按分の基本的な考え方

家事按分とは、プライベートと事業の両方に使っている支出について、事業で使っている割合だけを経費にする計算方法です。代表的な按分基準は次の通りです。

  • 家賃・住宅ローン利息: 事業で使っている床面積の割合
  • 電気代: 事業で使う時間や使用機器の電力割合
  • 水道代・ガス代: 事業との関連が薄いため按分は慎重に
  • インターネット・スマホ代: 業務利用時間の割合
  • 車両費・ガソリン代: 業務での走行距離の割合

家賃の按分計算の具体例

総床面積100㎡の自宅のうち、30㎡を仕事部屋として専有している場合、家賃10万円のうち30%、つまり3万円が経費になります。

総面積から副業で使用している面積の割合:30㎡ ÷100㎡ = 30%

経費にできる額:100,000円 × 30% = 30,000円(1ヶ月あたり)

ポイントは「合理的な基準」を持つことです。私の場合、間取り図で仕事部屋の面積を測り、家全体の床面積で割って按分率を出しました。仕事部屋を写真に撮って保管し、按分根拠の書類も残しています。税務調査が入っても説明できる状態にしておくのが安全策です。

電気代・通信費の按分

電気代は使用時間で按分するのが一般的です。1日のうち副業に使う時間が8時間程度なら、24時間で割って約33%、つまり3割程度が一つの目安になります。週に何日働くかも考慮して、私は実際の稼働時間ベースで25%程度に設定しています。

通信費も同様で、業務利用と私的利用の時間割合で按分します。スマホをほぼ業務専用で使っているなら7〜8割、私的利用も多いなら3〜5割といった具合です。

按分率に「絶対の正解」はありませんが、根拠を説明できることが大切です。「なんとなく半分にした」では税務署から指摘されたときに反論できません。

副業の経費として認められないもの

経費として落とせないもの、あるいは判断が難しいものも整理しておきましょう。

プライベートの支出

家族との外食、私的な買い物、旅行費用などは事業に関連がないため経費になりません。「打ち合わせを兼ねた」と称しても、実態が伴わなければ否認されます。

所得税・住民税

所得税や住民税は、事業の利益に対して課される個人の税金なので経費にはなりません。ただし、事業に関連する**事業税・消費税・固定資産税(事業使用部分)**は経費になります。

健康診断費・医療費

個人事業主の健康診断費や医療費は原則として経費になりません。これらは医療費控除や社会保険料控除で対応します。

スーツ代・身だしなみ費用

打ち合わせで着るスーツ代を経費にしたいという相談をよく受けますが、原則として認められません。プライベートでも着用可能と判断されるためです。明らかに業務専用の作業服や制服であれば経費計上可能です。

罰金・反則金

業務中に発生した駐車違反の反則金なども、罰則的な性質を持つため経費に算入できません。

判断に迷う支出は、税務署や税理士に相談するのが確実です。国税庁のタックスアンサーも実務的な疑問に答えてくれる便利なリソースです。

領収書・レシートの保管ルール

経費計上の正当性を担保するのが、領収書・レシート・請求書などの証憑書類です。ここを軽視している人が本当に多い、というのが私の正直な感想です。

保存期間は青色申告で7年、白色申告で5年

国税庁のルールでは、青色申告者は帳簿書類を7年間、白色申告者は5年間保存する義務があります。さらに消費税の課税事業者は7年間の保存が必要です。古い領収書を慌てて整理することにならないよう、最初から年度ごとに分けて保管する習慣をつけましょう。

電子帳簿保存法への対応

2024年1月から、電子取引で授受した領収書(PDF、メール添付ファイル等)は電子のまま保存することが義務化されました。プリントアウトしての紙保存だけでは要件を満たさないので注意が必要です。具体的には、検索要件(取引日・取引先・金額で検索可能)とタイムスタンプまたは訂正削除防止措置が求められます。

私は会計ソフトのレシート読み取り機能と連携して、紙のレシートはスマホで撮影してすぐ電子化、電子取引のPDFはそのまま会計ソフトに保管する運用に切り替えました。月末に慌てて整理するより、発生時に処理する方が結果的に楽です。

レシートに書き込むメモ

レシートには、相手先名・打ち合わせ目的・参加者などをメモしておくと、税務調査が入った際の説明根拠になります。「クライアントA社の○○さんと、××案件の打ち合わせ」と一行書いておくだけで、後から記憶を辿る手間が大幅に減ります。

確定申告における副業経費の書き方

副業の所得が一定額を超えると確定申告が必要です。

副業の所得が20万円を超えると、確定申告が必要です。所得は収入から経費を差し引いた金額で、所得の種類によっては控除が適用される場合もあります。

会社員の副業の場合、給与所得以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要です。ここでいう「所得」は、収入から経費を差し引いた後の金額である点に注意してください。

雑所得で申告する場合

確定申告書の「雑所得(その他)」欄に、収入金額と必要経費を記入します。経費の内訳は、収入金額の表内で集計するか、別紙で明細を作成しておきます。

事業所得で青色申告する場合

青色申告では、損益計算書(青色申告決算書)に勘定科目ごとに経費を記入します。通信費・消耗品費・水道光熱費・地代家賃・接待交際費・旅費交通費・支払手数料・減価償却費など、勘定科目ごとに整理して計上します。

青色申告には、最大65万円の青色申告特別控除赤字の3年繰越控除、**家族への給与を経費化(青色事業専従者給与)**といった大きな節税メリットがあります。確定申告の節税戦略全般については確定申告 節税完全ガイド!フリーランスが手残りを最大化する全手法で詳しく解説していますので、合わせて読むと理解が深まります。

売上が1000万円を超えたら消費税の検討も

副業が軌道に乗って売上が大きくなった場合は、消費税の課税事業者になるかどうかの判断が必要になります。詳しくは売上1000万円超えたらやるべきこと5選|消費税・法人化・社会保険の判断基準を参照してください。

副業経費を計上する際の注意点

最後に、実務で気をつけたいポイントをまとめておきます。

1. プライベートと事業を厳格に分ける: 事業用の銀行口座、クレジットカードを別途用意するのが基本です。個人用と混ざると、後から仕分けるのが本当に大変です。私は副業を始めた最初の月に、ネット銀行で事業用の口座を1つ作りました。それだけで、毎月の集計時間が劇的に短くなりました。

2. 過大計上は逆にリスク: 「経費はとにかく多く計上した方が得」というのは誤解です。明らかに事業との関連が薄い支出を経費にすると、税務調査で指摘され追徴課税の対象になります。説明責任を持てる範囲で計上するのが鉄則です。

3. 開業届と青色申告承認申請書のセット提出: 副業を事業所得として申告したい場合は、税務署に「個人事業の開業届出書」と「所得税の青色申告承認申請書」をセットで提出します。青色申告承認申請書は、原則として青色申告したい年の3月15日までに提出しないと、その年からの青色申告ができません。

4. 会計ソフトの活用: 個人で帳簿付けをするのは想像以上に大変です。クラウド会計ソフト(freeeマネーフォワード、弥生など)を使えば、銀行口座やクレジットカードと連携して自動で帳簿が作成されます。月額1,000円〜3,000円程度の出費ですが、これも経費計上できますし、時間効率を考えれば必ず元が取れます。

5. 困ったら専門家に相談: 副業の規模が大きくなってきたら、年に1回でも税理士に相談するのが安心です。私も独立2年目から顧問税理士をつけており、確定申告の不安が一気に減りました。

これらの分野は、家賃や通信費の家事按分、PCの減価償却、書籍代といった経費が中心になります。逆に物販・EC系の副業の場合は、仕入れ原価、倉庫費用、梱包資材、配送費など、より幅広い経費科目を扱う必要が出てきます。

特にAI関連の業務は近年急速に伸びており、AIコンサル・業務活用支援のお仕事AI・マーケティング・セキュリティのお仕事では、AIツールの月額利用料、クラウドサービス費、学習用書籍代などが主な経費になります。これらは事業との関連が明確で、経費計上の判断がしやすい分野です。

アプリケーション開発のお仕事であれば、開発環境のサブスクリプション、技術書、ドメイン・サーバー代などが典型的な経費です。資格取得を目指す方はCCNA(シスコ技術者認定)ビジネス文書検定の受験料・学習教材費も研修費として計上できます。

副業を「点」ではなく「事業」として考えると、経費の管理は売上を伸ばすのと同じくらい大切な仕事です。記録の習慣をつけて、毎月コツコツ整理する。これが、私が43歳でフリーランスになって学んだ一番大事なことです。準備さえしておけば、確定申告も決して怖くありません。

よくある質問

Q. 領収書を失くしてしまった場合は経費にできませんか?

領収書を失くしても、出金伝票を作成し「日付・支払先・金額・内容」を記録しておけば経費として認められる場合があります。ただし、多用すると税務署からの信頼を損なうため、極力再発行を依頼するか、カード決済の明細を残すようにしましょう。

Q. 領収書やレシートは申告時に提出する必要がありますか?

いいえ、提出の必要はありません。ただし、青色申告の場合は7年間(一部書類は5年間)の保存義務があります。税務調査が入った際に提示できるよう、整理して保管しておきましょう。

Q. 自宅兼オフィスの場合、火災保険や地震保険も経費になりますか?

はい、家賃と同様に事業専用面積の割合(按分率)に応じて経費に計上できます。住宅ローンを利用している場合は、利息部分のみが按分経費の対象となり、元本返済分は経費にならない点に注意が必要です。

Q. 青色申告と白色申告で、按分のルールは違いますか?

原則的な考え方は同じですが、白色申告の場合は「業務運営上直接必要であったことが明らかに区分できること」という条件に加え、主たる部分(50%超)が事業用でないと経費として認められにくいという運用上の違いがあります。青色申告であれば、10%や20%といった少ない割合でも、合理的根拠があれば経費として認められます。

前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師

看護師

看護師の転職・副業・フリーランス・キャリアガイド

薬剤師

薬剤師

薬剤師の転職・副業・キャリアパスガイド

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業

法律・士業

契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理