個人事業主 地震保険料控除|店舗併用住宅での按分計算

前田 壮一
前田 壮一
個人事業主 地震保険料控除|店舗併用住宅での按分計算

この記事のポイント

  • 個人事業主の地震保険料控除を
  • 店舗併用住宅の按分計算まで踏み込んで解説
  • 確定申告書への記載方法

まず、安心してください。地震保険料控除は、書類さえ揃えれば個人事業主の皆さんが確実に取り戻せる節税策のひとつです。年間で支払った地震保険料のうち、所得税で最大5万円、住民税で最大2万5,000円が所得から差し引けます。難しい計算は不要で、控除証明書の数字を確定申告書に転記するだけです。

ただし、個人事業主、特に自宅兼事務所や店舗併用住宅で仕事をしている皆さんの場合、もう一段考えるべき論点があります。「地震保険料を事業経費にすべきか、地震保険料控除として申告すべきか」「店舗併用住宅では、どこまでが家事按分の対象なのか」という線引きです。私も43歳でメーカーを辞めてフリーランスになったとき、最初の確定申告でこの按分の扱いに戸惑った記憶があります。

本記事では、地震保険料控除の制度概要から、個人事業主ならではの按分計算、書面・e-Taxそれぞれの記載方法、注意すべき経過措置までを、実務で迷いやすいポイント中心に整理します。読み終わる頃には「自分の場合はどう申告すればいいか」が判断できる状態になっているはずです。

個人事業主にとっての地震保険料控除はどんな制度か

地震保険料控除は、所得税法第77条にもとづく所得控除のひとつです。一年間に支払った地震保険料のうち、所定の上限額までを所得から差し引ける仕組みで、所得税と住民税の両方で適用を受けられます。サラリーマンであれば年末調整で完結しますが、個人事業主は確定申告で自分自身で記載する必要があります。

地震保険料控除は、個人事業主や給与所得者が地震保険に支払った保険料を一定額まで所得控除として申請できる制度です。所得税の控除額は上限が5万円、住民税の控除額は上限が2万5,000円です。

ここで強調しておきたいのは、控除の対象が「地震保険」だけで、「火災保険」の保険料は対象外という点です。火災保険と地震保険はセットで契約することが多いため混同しやすいのですが、控除証明書をよく見ると、地震保険料相当分だけが「地震保険料控除証明額」として独立して記載されています。確定申告で記入するのは、この地震保険料部分の金額のみです。

また、住宅ローンを組んで自宅を購入した皆さんの場合、住宅ローン契約時に長期の火災・地震保険にまとめて加入しているケースが多いと思います。この場合も控除対象になるのは地震保険料相当分のみで、自動引き落としでもクレジット払いでも、控除の取り扱いに違いはありません。

控除を受けられる「対象契約」の条件

国税庁No.1145によると、地震保険料控除の対象となるのは、自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族が常時居住している家屋、もしくは生活用動産(家財)を保険の対象にした地震保険契約です。賃貸物件に住んでいる場合でも、家財に地震保険をかけていれば対象になります。

「事業用の倉庫だけにかけた地震保険」は対象外で、これは経費計上で処理する世界です。一方で、自宅兼事務所や店舗併用住宅の場合は、居住用部分にかかる地震保険料は控除対象、事業用部分にかかる地震保険料は事業経費、という二段構えで処理することになります。ここが個人事業主特有のポイントなので、後ほど按分計算のセクションで詳しく見ていきます。

マクロで見た地震保険の加入状況

少し背景もお伝えしておきます。損害保険料率算出機構の統計によると、火災保険に対する地震保険の付帯率は近年70%前後で推移しており、世帯加入率もおよそ35%前後とされています。能登半島地震や首都直下地震への警戒もあり、保険料は段階的な改定で上がってきているのが実情です。

つまり、地震保険料そのものが家計に占める割合は無視できない水準に来ており、年間で2万円から5万円程度を支払っている世帯が珍しくありません。控除を取り切れば、所得税率10%の世帯で年間数千円から1万円超、住民税まで含めれば1万円超の節税になります。小さくない金額です。

控除額の上限と計算ルールを整理する

地震保険料控除の計算ルールはシンプルですが、後述する「経過措置」が絡むと一気にわかりにくくなります。まずは純粋に「地震保険のみ」を契約している場合のルールを押さえましょう。

所得税の控除額(地震保険料のみのケース)

年間に支払った地震保険料の合計額が5万円以下であれば、支払った金額がそのまま控除額になります。年間5万円超の場合は、控除額は一律5万円が上限です。

たとえば年間の地震保険料が3万円なら控除額は3万円、6万円でも控除額は5万円、ということになります。控除されるのは「税額」ではなく「所得」である点に注意してください。所得税率が10%の方であれば、5万円の控除で実際の所得税は5,000円下がる、というイメージです。

住民税の控除額

住民税側の控除額は、年間に支払った地震保険料の2分の1、上限2万5,000円です。所得税と住民税は別計算なので、それぞれの上限の範囲で控除が適用されます。確定申告書に地震保険料控除欄を記入すれば、住民税側は自治体に自動で連携されるので、住民税申告のためだけに別途何かを書く必要はありません。

「経過措置」が残っている長期損害保険の存在

ややこしいのが、平成18年12月31日までに契約した長期損害保険契約(旧長期損害保険料、いわゆる「旧長期」)が経過措置で控除対象として残っている点です。10年以上の長期契約で、満期返戻金がある火災・傷害保険などが該当します。

旧長期分は、所得税では支払額が1万円以下なら全額、1万円超2万円以下なら「支払額×1/2+5,000円」、2万円超なら一律1万5,000円が控除額となります。住民税では支払額5,000円以下なら全額、5,000円超1万5,000円以下なら「支払額×1/2+2,500円」、1万5,000円超なら一律1万円が上限です。

地震保険料控除を受けるには、年末調整や確定申告で手続きが必要です。給与所得者であれば、年末調整で地震保険料控除の適用を受けます。 個人事業主や自営業者などは確定申告で地震保険料控除について記載してください。 給与所得者の場合でも年収が2,000万円を超えていたり、副業の年間収入が20万円を超えていれば確定申告が必要です。忘れずに地震保険料控除について申告してください。

地震保険と旧長期損害保険の両方に加入している場合は、それぞれで計算した控除額の合計が控除額になりますが、合計の上限は所得税で5万円、住民税で2万5,000円です。控除証明書には「地震保険料の金額」「旧長期損害保険料の金額」が別欄で印字されていますので、両方を見ながら確定申告書に記載することになります。

ひとつの契約に地震と旧長期が併存している場合の選択ルール

ひとつの保険契約に、地震保険料部分と旧長期損害保険料部分が両方含まれている、というケースもあります。たとえば旧来の長期総合保険に地震保険特約を後付けで付けた場合などです。この場合は、どちらか有利な区分を選んで控除を受けることになります。地震・旧長期の両方の金額がそれなりに大きいときは、控除証明書の金額を両パターンで比べて、控除額が大きくなる方を選ぶと良いでしょう。会計ソフトに入力する際にもこの選択を求められるので、控除証明書をよく読んで判断してください。

個人事業主の確定申告での記載方法

個人事業主が地震保険料控除を受ける手順は、決して難しくありません。書類を準備して、確定申告書の所定欄に記入する、それだけです。e-Taxでの電子申告でも、紙の申告書でも、流れは基本的に同じです。

必要な書類と入手方法

まず必要なのが「地震保険料控除証明書」です。多くの保険会社では、毎年10月頃に圧着ハガキやPDF形式でこの証明書を送ってきます。住宅ローン契約とセットで火災・地震保険に加入している場合は、金融機関ではなく保険会社(損害保険会社)から直接届くのが一般的です。

紛失してしまった場合は、保険会社のマイページや、電話・問い合わせフォームで再発行を依頼できます。確定申告期限ぎりぎりだと間に合わない可能性があるので、見当たらないと思ったら早めに連絡してください。

地震保険料控除証明書を用意してから、実際に申告書に記載をおこないます。給与所得者と個人事業主では記載する書類が違うので注意してください。 ここでは一般的な書面による手続きを紹介しています。

確定申告書第一表・第二表への記載

書面で申告する場合の手順を整理します。所得税の確定申告書第一表の「地震保険料控除」欄に、計算後の控除額を記入します。多くの個人事業主が使うB様式(令和以降の様式統一後は1枚に集約)でも、地震保険料控除の欄は独立して用意されているので、間違える心配は少ないはずです。

第二表の右側には「地震保険料控除」の明細欄があり、ここに「支払保険料等の計」を記入します。地震保険料部分と、旧長期損害保険料部分を分けて記載できる構成です。控除証明書の「年間支払保険料」または「申告額」を見て、対応する欄に転記してください。

第一表の控除額は、第二表の支払額をもとに「所得税の控除額計算式」に当てはめて算出した数字を書きます。地震保険料5万円以下ならそのまま、5万円超なら5万円、と覚えておけば実務上はほぼ困りません。

e-Taxでの入力フロー

e-Taxの確定申告書等作成コーナーを使う場合は、「所得控除の入力」セクションで地震保険料控除を選択し、画面の案内に従って金額を入力していきます。地震保険料と旧長期損害保険料の入力欄が分かれているので、控除証明書を見ながら数字を入れていけば、控除額は自動計算されます。

電子申告では、地震保険料控除証明書の原本提出が原則不要です(5年間の保存義務はあります)。e-Tax公式サイト(e-Tax)から入って、マイナンバーカード方式またはID・パスワード方式でログインしてください。会計ソフトの確定申告連携機能を使うと、青色申告決算書の作成から所得控除の入力、e-Tax送信まで一気通貫で進められて便利です。

会計ソフト連携時の典型的な入力欄

会計ソフト(freeeマネーフォワードなど)を使っている場合、「確定申告」メニューの「所得から差し引かれる金額」セクションに地震保険料控除の入力欄があります。地震保険料、旧長期損害保険料、それぞれの年間支払額を入力すれば、上限額を踏まえた控除額が自動計算されて、申告書の所定欄にも自動転記されます。

入力時のコツは、「地震保険料区分」と「旧長期損害保険料区分」を間違えないこと。控除証明書のどちらの欄に金額が印字されているかを必ず確認してください。年間支払額をそのまま入力すればよく、上限の5万円を超える場合のクリッピングはソフト側が自動でやってくれます。

店舗併用住宅・自宅兼事務所での按分計算

ここが個人事業主にとって、もっとも判断に迷うところです。「自宅兼事務所」や「1階が店舗で2階が住居」といった建物にかけた地震保険料を、地震保険料控除と事業経費でどう分けるか、という論点です。

大原則は「居住用部分=控除対象、事業用部分=経費」

国税庁の整理を踏まえると、地震保険料控除の対象は「常時居住している家屋および家財」にかけた地震保険です。したがって、店舗併用住宅にかけた地震保険料のうち、

  • 居住用部分に対応する保険料 → 地震保険料控除の対象
  • 事業用部分に対応する保険料 → 事業所得の必要経費(損害保険料)

として、按分して処理することになります。両方をまとめて控除に入れてしまうと、本来経費にすべき部分まで控除に乗せていることになり、二重計上となるので注意が必要です。

床面積基準での按分計算の実務

按分の方法は、原則として「合理的な基準」によることとされており、店舗併用住宅では「床面積按分」がもっとも一般的です。たとえば総床面積が100㎡で、店舗部分が30㎡、居住部分が70㎡の場合、事業用は30%、居住用は70%として、地震保険料を分けます。

具体例で考えてみましょう。年間地震保険料が3万円の場合、

  • 事業用部分(30%):9,000円 → 確定申告書Bの「損害保険料」として事業経費に計上
  • 居住用部分(70%):21,000円 → 地震保険料控除の支払額として申告

この21,000円を控除額(所得税では支払額そのまま)として、確定申告書の地震保険料控除欄に記入する流れになります。建築面積ではなく「延床面積」で按分するのが一般的です。

自宅兼事務所(事業利用部分が一部のみ)の場合

明確な店舗併用ではなく、「マンションの一室を仕事部屋にしている」「リビングの一角を作業スペースにしている」というケースのほうが、フリーランスでは多いと思います。この場合も理屈は同じで、事業利用面積の割合(家事按分比率)に応じて、地震保険料も按分するのが筋論です。

ただし、家事按分比率が10〜20%程度で、地震保険料も年間2〜3万円といった金額感の場合は、按分の影響額は数千円程度に収まります。実務上の選択肢として、

  • 厳密に家事按分して事業経費にも一部計上する
  • すべて地震保険料控除として申告し、事業経費には乗せない

の二択がありますが、後者を選んでいる個人事業主は少なくありません。事業経費側に乗せない代わりに、地震保険料控除で満額使う、という形です。所得税率が高い方ほど経費にしたほうが有利な傾向がありますが、住宅ローン控除や青色申告特別控除との兼ね合いもあるので、年間の事業所得規模を見ながら判断するのが現実的です。

私の場合も、フリーランス1年目はリビングの一角と書斎程度しか使っていなかったので、家賃や水道光熱費は床面積で家事按分しつつ、地震保険料は控除側だけで使う、というシンプルな処理にしました。少なくとも、「両方に満額計上する」のだけは絶対にやってはいけないと、最初に税務署で確認した記憶があります。

賃貸物件で家財地震保険に入っている場合

賃貸住まいで、自分が契約している家財保険に地震保険特約を付けている場合は、その家財地震保険料は地震保険料控除の対象になります。家財には事業に使うパソコンや備品も含まれている可能性がありますが、原則は「常時居住する者の家財」を対象とした保険なので、控除側で取って差し支えありません。

例外的に、「事業専用で使っている機材だけを対象にした動産保険」や「事業所として借りた物件にかけた地震保険」は、控除対象ではなく事業経費(損害保険料)として処理することになります。契約の対象物が「居住用家財」なのか「事業用動産」なのか、契約書と控除証明書の記載をよく確認してください。

経費計上と控除のどちらが有利かを判断する視点

ここまで読んで「結局、自分は経費にすべきか、控除にすべきか」と迷っている皆さんに向けて、判断の整理ポイントをまとめます。前提として、店舗併用住宅や自宅兼事務所では「按分して両方に振り分ける」のが原則ですが、現実の運用ではどちらかに寄せている方も多いはずです。

所得税率と控除額の比較

判断の出発点は「自分の所得税率」と「控除額」です。所得税の累進構造では、課税所得の階段が上がるほど税率が高くなります。たとえば課税所得が330万円超695万円以下の方は所得税率20%、695万円超なら所得税率23%以上です。

地震保険料控除は所得控除なので、節税額は「控除額×税率」になります。所得税率20%の方が3万円を地震保険料控除で取れば、節税額は6,000円程度(住民税分も含めるとさらに上乗せ)。一方、これを事業経費にすれば、所得税・住民税・国民健康保険料・事業税の課税ベースが同時に下がるため、自治体の国保料水準にもよりますが、節税効果は8,000〜1万円程度になることもあります。

つまり、「事業所得が大きい」「国民健康保険料の所得割が重い」自治体ほど、按分して経費化したほうが有利になりやすい、という傾向があります。逆に、事業所得が低めで、所得税率5%や10%の段階の方は、事務処理の簡便さを優先して控除側で完結させる、という判断もありえます。

住宅ローン控除との関係

注意したいのは、住宅ローン控除を受けている方です。住宅ローン控除は「税額控除」なので、所得控除である地震保険料控除とは性格が異なります。地震保険料控除を取っても住宅ローン控除には影響しないので、両方をしっかり取り切るのが基本路線です。

ただし、住宅ローン控除をフルに使えていない(所得税額が住宅ローン控除額を下回っていて余ってしまっている)方の場合は、地震保険料控除で所得税を減らしてもさらに住宅ローン控除が余るだけ、という状況になりえます。この場合は、所得税では地震保険料控除の節税効果が見かけ上ゼロになり、住民税側の控除と、住宅ローン控除の住民税からの控除との合計で考える必要が出てきます。

国民健康保険料・事業税への波及効果

事業経費として計上した場合は、事業所得が下がるため、国民健康保険料の所得割や、事業税の計算にも影響します。一方、地震保険料控除はあくまで「所得税・住民税の所得控除」なので、国民健康保険料には基本的に影響しません(自治体ごとに細部は確認してください)。

事業所得規模が大きく、国民健康保険料の所得割上限に達していない方ほど、按分計算をしっかり行って事業経費側にも振り分けたほうがトータルの手取りが増えやすい、という関係になります。会計ソフトの試算機能で、両パターンの所得税・住民税・国民健康保険料を試算してみるのが手堅い判断方法です。

関連する節税策と合わせて考える

地震保険料控除単体だけでなく、他の節税策と組み合わせて考えるのも重要です。具体的には、

  • 小規模企業共済等掛金控除(小規模企業共済、iDeCo、企業型DC個人拠出)
  • 経営セーフティ共済(倒産防止共済)の掛金損金算入
  • 国民年金基金や付加年金
  • ふるさと納税
  • 青色申告特別控除(最大65万円)

このあたりを総動員すると、フリーランス・個人事業主の課税所得は大きく圧縮できます。地震保険料控除はその中の「数千円から1万円台」の節税ピースですが、書類1枚で確実に取り切れる節税策として、必ず押さえておきたい項目です。節税の全体像については、関連記事の個人事業主 節税 2026 テクニックで15個の打ち手をまとめていますので、合わせて参照してください。

よくある失敗パターンと注意点

確定申告の現場で実際に見かける、地震保険料控除まわりの失敗パターンを整理します。私自身、最初の年に何度かやらかしました。

火災保険料を含めて申告してしまう

もっとも多い失敗が、「火災保険+地震保険」のセット契約で、控除証明書の「年間保険料合計」をそのまま申告してしまうケースです。控除対象は地震保険料部分のみなので、火災保険料を含めて申告すると過大申告になり、税務署から問い合わせが入る可能性があります。

防止策は、控除証明書を必ず手元で確認すること。証明書には「地震保険料控除証明額」「申告額」といった見出しで、控除対象になる金額だけが独立して印字されています。年間保険料の合計額ではなく、必ず「控除証明額」または「申告額」の数字を使ってください。

控除証明書が届かない・紛失した

引っ越し直後で郵便物の転送が漏れていたり、家族の郵便物に紛れて気づかなかったり、というケースもあります。10月末になっても証明書が見当たらなければ、保険会社のマイページや問い合わせ窓口で再発行を依頼してください。

電子発行に対応している保険会社も増えており、PDFをダウンロードして印刷、あるいはe-Tax用にそのまま電子データで利用、という運用が可能です。再発行までに数日〜2週間程度かかることもあるので、確定申告期限ぎりぎりではなく、12月〜1月のうちに準備しておくのが安心です。

事業用倉庫・事業用動産の地震保険を控除に入れてしまう

自分専用の事業用倉庫や、店舗だけを対象にした地震保険、事業用動産(業務用機材)にかけた地震保険などは、控除の対象外です。「常時居住する家屋・家財」にかけた地震保険のみが対象、という線引きを忘れないでください。

これらは事業所得の必要経費(損害保険料)として、青色申告決算書または収支内訳書に計上することになります。控除と経費の二重計上は絶対に避けるのが原則です。

旧長期損害保険料と地震保険料の併用ミス

平成18年以前から続いている長期の損害保険に加入している方は、「旧長期損害保険料」として控除対象になる可能性があります。地震保険料と旧長期損害保険料の合算は所得税で5万円、住民税で2万5,000円が上限という点を見落とすと、過大申告になります。

会計ソフトを使えば自動で上限処理されますが、紙の申告書を手書きで作成する方は、計算式を確認しながら丁寧に進めてください。控除証明書に「地震保険料用」「旧長期損害保険料用」と区分が記載されていますので、それぞれの区分に正しく転記することが第一歩です。

家事按分の比率が毎年バラバラ

按分比率を毎年変えると、税務署から「合理的根拠は何か」と問われる可能性があります。床面積比は建物自体に変化がなければ基本的に固定ですし、時間按分(事業に使っている時間/全時間)を採用している場合も、明確な根拠なくコロコロ変えるのは望ましくありません。

実務上は、按分根拠(床面積の図面、利用時間の記録、家事按分の計算メモなど)を「按分計算書」として作成しておくと安全です。税務調査のときに、説明資料としてそのまま提示できます。家事按分の考え方については、関連記事のふるさと納税 上限額 個人事業主で触れている課税所得計算とも繋がる論点なので、合わせて読んでおくと理解が深まります。

これらの職種に共通しているのは、「自宅で完結する仕事」が大半である点です。つまり、自宅の一部を仕事場として使い、家賃・水道光熱費・通信費を家事按分するスタイルが定着しているということです。地震保険料についても、当然ながら按分の対象になり得ます。

在宅型フリーランスの典型的な家事按分パターン

この20〜30%という比率は、地震保険料の按分にも応用できます。年間地震保険料3万円であれば、

  • 事業用(25%想定):7,500円 → 損害保険料として事業経費
  • 居住用(75%想定):22,500円 → 地震保険料控除の支払額

として処理する形になります。この程度の規模感だと、節税効果の差は数百円〜1,000円程度ですが、毎年の積み重ねで考えると無視できる金額ではありません。

スキル分野別の事業所得と地震保険料控除の使い方

AIコンサル・業務活用支援のお仕事や、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事アプリケーション開発のお仕事といった、AI・IT領域は単価が高く、年間事業所得が500万円〜1,000万円規模になるフリーランスも珍しくありません。

事業所得が大きい方ほど、所得税率も上がり、地震保険料控除の節税効果も大きくなります。所得税率20〜23%の階層では、控除額5万円フル活用で1万円〜1万1,500円の所得税減、住民税側の控除を合わせると1.2万円〜1.5万円程度の節税効果が見込めます。

一方、ライティングや事務系の業務をパート的に行うケース(年間事業所得100〜200万円程度)では、所得税率5〜10%の段階で、節税額は2,500円〜5,000円程度。それでも、書類1枚で確実に取り切れる節税としては、年間で「ちょっとした夕食代」くらいの価値はあります。

資格取得・スキルアップ投資との関係

地震保険料控除以外にも、フリーランスとして有利な税制・節税策はいくつもあります。たとえば、業務に関連する書籍代や、資格試験の受験料、研修参加費などは、事業経費として計上できる可能性が高い項目です。

事業に直結する資格取得についていえば、ビジネス文書検定はライターや事務系フリーランスにとって信頼性を補強する基礎資格ですし、CCNA(シスコ技術者認定)はネットワーク・インフラ系のフリーランスにとって受注単価を引き上げる代表的な国際資格です。受験料や教材費は、業務との関連性が明確であれば、原則として事業経費として計上できます。

地震保険料控除のような所得控除と、事業経費の積み上げを両輪で進めることで、フリーランスの実効税率は確実に下げていけます。確定申告は面倒に感じるかもしれませんが、その分、サラリーマンにはない節税の「自由度」がある、と捉えると見方が変わるはずです。

住宅ローンや住居選びとの関連

個人事業主として独立する前後で、住宅ローンを組んだり、店舗併用住宅を新築したりするタイミングがある皆さんは、地震保険料控除と合わせて住宅ローン審査の論点も気にしておきたいところです。フリーランスの住宅ローン審査については、関連記事の個人事業主 住宅ローン 審査 通りやすいに詳しくまとめています。住宅ローンとセットで火災・地震保険に加入する場面では、団体扱いの長期一括払いの可能性もあるので、控除証明書の毎年発行有無や、一括払いした保険料の按分計算(年割り)について、保険会社に必ず確認してください。

長期一括で支払った地震保険料は、契約期間で按分して、各年の控除証明額として通知されるのが一般的です。たとえば5年分を一括で15万円支払った場合、毎年3万円ずつ控除証明額として記載されてくる、というイメージです。長期契約のほうが割安になる傾向はありますが、控除としては「毎年の支払額相当」で計算されるため、節税効果を一気に取れるわけではない点に注意してください。

制度を「使い切る」発想で

最後に強調しておきたいのは、地震保険料控除を含む所得控除は「使わなければゼロ」の制度だということです。年末調整のように勤務先がやってくれる仕組みはなく、自分で確定申告書に1行書くだけで成立する権利を、書き忘れたら一銭も戻ってきません。

私の周りでも、独立初年度のフリーランスで「地震保険料控除なんて知らなかった」「年末調整がなくなって控除制度ごと忘れていた」という方は意外と多いです。43歳でフリーランスになった私自身、最初の確定申告では国税庁のサイトと弥生やマネーフォワードの解説記事をひたすら往復しながら、一つひとつ控除を取り切る作業をした記憶があります。

地震保険料控除は、控除証明書さえ手元にあれば10分で済む節税策です。皆さんも今年の確定申告では、必ず控除証明書の有無を確認して、忘れずに控除欄を埋めてください。制度の詳細な条文や手続きを確認したい場合は、国税庁のNo.1145ページ、またはe-Taxのヘルプを参照すると、最新の取り扱いが確認できます。

よくある質問

Q. 「収入」と「所得」の違いは何ですか?

「収入(確定申告書 第一表の①など)」は、事業で得た売上の総額(経費などを差し引く前の金額)を指します。一方「所得(第一表の⑧など)」は、収入から事業にかかった必要経費を差し引いた、手元に残る利益(儲け)のことを指します。

Q. 自宅兼事務所の場合、住所確認はどうなりますか?

賃貸借契約書や公共料金の領収書などが、事業拠点の証明として有効です。

Q. フリーランスになったら、まずどの保険に入ればいいですか?

まずは「賠償責任保険」です。月額1,000円程度で、個人では負いきれない数千万円〜1億円の賠償リスクをカバーできます。次に検討すべきは、病気やケガで無収入になるリスクを防ぐ「所得補償保険」です。

Q. 確定申告書は数種類あるようですが、どれを提出すればいいのでしょうか?

全員が必須となるのは基本情報や所得・税額をまとめた「第一表」と、所得の内訳や控除の明細を記載する「第二表」です。これらに加え、青色申告を選択している場合は4ページ構成の「青色申告決算書」も一緒に提出(または審査等で提示 )する必要があります。

Q. 個人事業主の場合、「年収」を聞かれたら確定申告書のどこを見ればいいですか?

場面によって答え方が異なりますが、住宅ローン審査や保育園の入園申請などで公的に「年収(所得)」を求められた場合は、第一表の「所得金額等 ⑧(事業 営業等)」の金額が基準となります。ただし、青色申告をしている場合はこの金額からすでに青色申告特別控除額(最大65万円など)が差し引かれているため、実質的な年収を算出するには「所得金額等 ⑧ + 青色申告特別控除額」を加算した金額で答えるのが実務的です。

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前田 壮一

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前田 壮一

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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