治験の協力を副業と考える前に|参加の流れと注意したい点

中西 直美
中西 直美
治験の協力を副業と考える前に|参加の流れと注意したい点

この記事のポイント

  • ✓治験副業を考えている方へ
  • ✓勤務先の就業規則や税金の扱い
  • ✓体への負担の考え方まで

「治験って副業になるんでしょうか。まとまったお金が入るって聞いたんですが、勤務先に知られないか心配で」。このご相談、実はよくいただきます。

大丈夫ですよ。順番に整理していけば、判断できます。

ただ、最初にひとつだけお伝えしておきたいことがあります。治験で受け取るお金は、働いた対価ではありません。ここを取り違えたまま「副業」として計算すると、思っていたのと違う結果になります。この記事では、治験副業という言葉の中身を、負担軽減費の相場、参加の流れ、事前検診と休薬期間、勤務先との関係、税金の扱いまで、ひとつずつ見ていきます。読み終わったときに「自分はどうするか」を落ち着いて決められる状態になっていれば、それがいちばんです。

治験の謝礼は「働いた対価」ではありません

まず、ここを押さえます。

治験は、新しい薬や治療法が人に対して安全で効果があるかを確かめるための臨床試験です。日本では、医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)というルールに沿って行われます。参加する人は「被験者」と呼ばれ、協力する立場です。制度の全体像は厚生労働省のサイトで確認できます。

参加者に支払われるお金は、正式には「負担軽減費」と呼ばれます。通院の交通費、検査で拘束される時間、生活上の制約。こうした負担を軽くするために支払われるもので、労働の対価ではありません。だから、募集している側も「有償ボランティア」という表現を使うことが多いのです。

この違いは、言葉遊びではありません。3つの点で実際に効いてきます。

ひとつ目。労働の対価ではないので、頑張っても金額が増えません。作業を早く終わらせたり、質を上げたりして単価を上げる、という発想が通じない領域です。

ふたつ目。参加する回数を自分で増やせません。あとで詳しく書きますが、体を守るための仕組みとして、次の参加までに一定の期間を空ける必要があります。

みっつ目。就業規則や公務員法との関係が、一般的な副業とは違う整理になります。労働として他の事業者に従事しているわけではないからです。ただし「だから完全に自由」という話でもありません。ここも後で書きます。

つまり、治験は「収入を増やす手段」というより「特定の条件が揃ったときに、まとまった額の負担軽減費を受け取れる協力」です。この理解から始めると、期待と現実がずれません。

負担軽減費の相場と、収入として見たときの限界

具体的な金額を見ていきましょう。

治験は大きく、通院型と入院型に分かれます。

通院型。指定された日に病院へ通い、検査や問診を受けます。1回の来院あたり7,000円から10,000円程度が目安とされることが多いです。来院回数は治験の内容によりますが、数回から10回を超えるものもあります。

入院型。数日間、施設に泊まって経過を観察します。1泊あたり2万円前後が目安とされ、入院日数がそのまま総額に反映されます。実際のシミュレーションを見てみましょう。

入院の治験を副業収入として考える場合、現実的な例として「2泊3日×2回(合計4泊6日)」の治験を例にシミュレーションしてみます。 この場合、1度の報酬総額は約10万~12万円です。 出典: pa-ruit.jp

4泊6日で10万円から12万円。この数字だけ見ると、確かに大きく見えます。

でも、同じ資料はこう続けています。

ただし、この収入は治験の事前検診(合格率約40%)に毎回合格し、休薬期間が明けたころにタイミングよくスケジュールに合った治験に参加できたケースを例にしていますので、実際の報酬総額はもっと少額になると考えられます。 出典: pa-ruit.jp

ここが大事なところです。事前検診の合格率が約40%。つまり、応募して検診まで進んでも、6割は参加に至りません。さらに、休薬期間が明けたタイミングでちょうど条件に合う治験が募集されているかどうか。この2つの条件が揃わないと、計算どおりにはなりません。

年間で見てみましょう。入院型の治験に参加できるのは、休薬期間を考えると年間2回から3回が上限に近いところです。1回あたり10万円として、年間20万円から30万円。月あたりに割ると2万円前後です。しかも、検診に落ちればゼロになります。

この数字を見て「思ったより少ない」と感じたなら、その感覚は正しいです。治験は、毎月の収入を支える手段としては設計されていません。「まとまった出費が控えているときに、条件が合えば助けになる」という位置づけで見るのが、現実に合っています。

参加の流れを最初から最後まで

不安を減らすために、流れを全部書いておきます。知らないことがいちばん怖いので。

1. 募集を探して応募する。治験を実施する医療機関や、参加者を募る仲介事業者のサイトから応募します。条件は細かく指定されていて、年齢、性別、体格の指標、喫煙の有無、服用中の薬、既往症などで絞られます。健康な人を対象にした試験もあり、特定の疾患を持つ人を対象にした試験もあります。

2. 説明を受けて同意する。参加の前に、治験の目的、方法、予想される効果と副作用、他の治療の選択肢、健康被害が生じた場合の補償について、文書で説明を受けます。これをインフォームドコンセントと呼びます。そして大事なのは、ここで同意したあとでも、いつでも理由を言わずに同意を撤回できるということです。撤回したことで不利益な扱いを受けることはありません。これは制度として保障されています。

3. 事前検診を受ける。血液検査、心電図、身体測定、問診などを受けます。ここで基準に合わないと参加できません。合格率が約40%とされているのは、この段階のことです。検診自体にも負担軽減費が支払われる場合がありますが、金額は参加時より小さくなります。

4. 治験に参加する。通院型なら指定日に来院し、入院型なら施設に入ります。入院中は生活が管理されます。食事の内容と時間、起床と就寝、飲酒や喫煙の禁止、激しい運動の禁止。パソコンやスマートフォンの持ち込みが許される施設が多いので、静かに作業や読書をして過ごす人が多いようです。

5. 追跡の検査を受ける。参加が終わったあとも、決められた日に検査を受けることがあります。ここを欠かすと治験のデータが成立しないので、スケジュールは最初に全部確認してください。

6. 負担軽減費を受け取る。支払いのタイミングは実施機関によって違い、来院ごとに受け取る形と、終了後にまとめて受け取る形があります。

流れを見ていただくとわかるように、拘束される期間は「入院している日数」よりも長くなります。応募から追跡検査の終わりまでで、数か月にわたることも珍しくありません。スケジュール表をもらったら、仕事や家庭の予定と全部突き合わせる。これを先にやっておくと、途中で困りません。

入院型と通院型、どちらを選ぶか

同じ治験でも、通院型と入院型では生活への影響がまったく違います。選ぶ前に比べておきましょう。

通院型が向いている方。平日に半日だけ時間を作れる方、勤務先に長期の休みを申し出にくい方、まずは体験してみたい方です。1回あたりの負担軽減費は小さいのですが、生活のリズムを崩さずに済みます。来院の日程が固定されていることが多いので、シフト勤務の方は事前にスケジュールを突き合わせてください。

入院型が向いている方。まとまった休みを取れる方、学生や転職の合間にいる方、体調が安定している方です。総額は大きくなりますが、連続した日数を拘束されます。仕事をしている方だと、有給休暇の使い方をあらかじめ考えておく必要があります。

どちらにも共通する確認事項。参加中の生活の制約です。食事の内容と時間、飲酒と喫煙の禁止、激しい運動の禁止、他の薬やサプリメントの服用制限。この制約は参加の前から始まることがあります。検診の数日前から食事に注意が必要な場合もあるので、スケジュール表をもらった時点で制約の開始日も確認してください。

持ち物についても聞いておきます。入院型の場合、パソコンやタブレットの持ち込みが許されるかどうかで、過ごし方が変わります。持ち込める施設なら、読書や学習の時間として使えます。逆に、そこを当てにして予定を組むと、持ち込めなかったときに困ります。

迷ったら、通院型から始めてみるのがおすすめです。手続きの流れを一度経験しておくと、次の判断が落ち着いてできます。焦って大きいほうを選ばなくて大丈夫ですよ。

事前検診と休薬期間という2つのハードル

ここが、治験を収入として計算しづらくしている最大の理由です。

事前検診。健康な人を対象にした試験でも、基準は厳しく設定されています。血液の数値がわずかに基準を外れた、血圧が高めだった、申告していなかったサプリメントを飲んでいた。こうした理由で参加できないことがあります。

落ちたことを、自分の健康の問題だと重く受け止めなくて大丈夫です。治験の基準は「データが正しく取れる状態かどうか」で設定されているので、日常生活では何も問題のない人でも外れることがあります。ただ、検診で自分の数値を知れるのは、それ自体が意味のあることだと思います。

休薬期間。治験で薬を投与されたあと、体から薬の影響が抜けるまで、次の治験には参加できません。この期間は治験の内容によりますが、3か月から4か月程度が目安とされます。参加者の安全を守るための仕組みで、複数の実施機関が情報を共有して重複参加を防ぐ形になっています。

この2つがあるので、「毎月治験に参加して安定収入を作る」という組み立ては成立しません。そして、成立しないことは悪いことではないんです。参加者の体を守るために、そう設計されている。ここは制度の良い面として受け止めてよい部分です。

もし、この期間を短く見せる募集や、重複参加を勧めるような案内に出会ったら、そこから離れてください。安全の仕組みを迂回しようとしている募集は、参加者の体を守る気がないということです。

勤務先の就業規則や公務員法との関係

ここも心配される方が多いところです。

まず、治験で受け取る負担軽減費は労働の対価ではないので、一般的には「他の事業者に雇われて働く副業」とは別の整理になります。ただし、勤務先の就業規則の書き方によっては、収入を得る活動全般について届け出を求めている場合があります。ですから「治験だから届け出なくてよい」と決めつけないで、自分の会社の規則の文言を確認するのがいちばん確実です。

公務員の場合も、考え方は同じです。地方公務員法や国家公務員法が規制しているのは、営利企業の役員を兼ねること、自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業や事務に従事することです。治験への協力がこのどれに当たるかは、活動の性格から判断されます。過去に副業で処分された事例を見ると、傾向が読み取れます。

公務員が副業をして処分された事例は様々なものがあります。知人にカウンセリングをして200万円の報酬を受けた小学校教諭は停職処分、接待を伴う飲食店での副業をしていた看護師は戒告、スニーカー転売で1900万円の転売益を得ていた市職員は、減給10分の1などです。 出典: media-ctms.com

並んでいるのは、いずれも継続的に事業や労務に従事していた例です。治験への協力はこれらと性格が違いますが、だからといって自己判断で済ませるのはおすすめしません。所属先の規程を読み、判断に迷うなら人事担当に確認する。この順番が安全です。

もうひとつ、現実的な問題があります。入院型の治験は、平日を含む連続した日数の拘束があります。有給休暇を使うことになるので、その時点で職場に予定を伝えることになります。「知られたくない」という気持ちがある場合、入院型はそもそも実行しにくい。ここは金額よりも先に考えておくべき点です。

税金の扱いをどう考えるか

お金の話を最後まで整理しておきましょう。

負担軽減費は給与ではないので、勤務先の年末調整の対象になりません。所得税の世界では、給与以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。治験の負担軽減費が所得としてどう分類されるかについては、雑所得として扱うという説明が一般的ですが、個別の事情で判断が変わることがあります。金額が大きくなる年は、税務署か税理士に確認するのが確実です。要件の一次情報は国税庁の案内にあります。

実務的にやっておくとよいことは3つです。

ひとつ目。受け取った金額と日付を記録します。複数の治験に参加した年は、合計額が自分の想定より大きくなっていることがあります。

ふたつ目。関連する支出の領収書を残します。交通費が実費で別に支払われているのか、負担軽減費に含まれているのかは実施機関によって違います。

みっつ目。住民税のことも頭に置いておきます。所得税の確定申告をすれば住民税は連動して計算されます。申告が不要な場合でも住民税の申告が必要になるケースがあるので、住んでいる自治体の案内を確認してください。

税金の話は面倒に感じるかもしれませんが、記録を付けておくだけで、あとの手続きはずいぶん楽になります。参加した日をカレンダーに残す、それくらいから始めれば十分です。

体への負担と、断ってよいという前提

ここは、私がいちばんお伝えしたい部分です。

治験は、参加者の安全を守るための手続きが何重にも用意されています。倫理審査、インフォームドコンセント、健康被害が生じた場合の補償。参加中は医師や看護師が経過を見ています。そのうえで言いますが、体に何かが起こる可能性がゼロになるわけではありません。だから同意の撤回がいつでも認められているのです。

こういう相談を受けたことがあります。入院型の治験に参加している途中で体調に違和感を覚えたけれど、「途中で抜けたら迷惑をかける」と思って言い出せなかった、という方の話です。結果的に大きな問題にはならなかったのですが、その方は「言ってよかったのか、ずっと迷っていた」とおっしゃっていました。

言ってよかったんです。むしろ、言わなければならなかった。

治験の現場は、参加者が違和感を伝えることを前提に設計されています。伝えないでいると、データの正確さも損なわれます。迷惑をかけるどころか、伝えることが協力の中身なのです。ここは覚えておいてください。同意の撤回も同じで、撤回したからといって不利益を受けることはありません。

もうひとつ。お金が必要な状況にあるときほど、判断が甘くなります。「これくらいなら平気」と自分に言い聞かせて、体の声を無視してしまう。生活が切羽詰まっているときに治験を検討している方は、まず「いくら必要で、いつまでに必要か」を紙に書いてみてください。書いてみると、治験のスケジュールでは間に合わないことに気づく場合があります。それがわかったら、別の手段を探すほうが早い。焦って決めた判断が、あとで自分を苦しめないようにしたいのです。

募集を見るときに気をつけたい点

治験の募集そのものは、医療機関や正規の仲介事業者が出しているものです。ただ、言葉が似ている別のものが混ざることがあるので、見分け方をお伝えしておきます。

実施機関がはっきり書かれているか。どの医療機関で実施するのか、問い合わせ先の電話番号があるのか。ここが書かれていない案内は、いったん止まってください。

説明の場が用意されているか。正規の治験では、参加前に文書で説明を受けて同意する手続きがあります。説明会や面談の案内がなく、いきなり「申し込めば参加できます」という流れになっているものは、手続きが省かれています。

費用を求められないか。治験への参加で、参加者が登録料や紹介料を払うことはありません。お金を求められたら、そこで離れてください。

効果を断定していないか。「この薬で必ず良くなります」という表現は、治験の性質と矛盾します。効果を確かめるために行うのが治験だからです。断定している案内は、治験の説明として成立していません。

同意の撤回について書かれているか。参加者はいつでも同意を撤回できます。この点に触れていない案内は、参加者の権利を軽く扱っている可能性があります。

もうひとつ。治験と、健康食品や化粧品の「モニター」は別物です。モニター募集は商品の使用感を聞く調査で、医薬品の臨床試験ではありません。どちらも悪いものではありませんが、受け取る金額の水準も手続きの厳密さも違います。応募する前に、自分がどちらに応募しているのかを確認してください。

判断に迷ったときは、応募を急がないことです。募集は繰り返し出ます。今日決めなくても、機会は来ます。焦らされる案内からは、離れていいんです。

参加するなら、先に決めておきたいこと

参加を決める前に、紙に書いておくと落ち着いて進められることを並べます。

スケジュールを全部書き出す。応募、事前検診、参加期間、追跡検査。この4つの日程を、仕事と家庭の予定の上に重ねます。入院型なら有給休暇の残り日数も確認します。ここで無理があるとわかったら、通院型に切り替えるか、見送るかを選べます。

家族に伝える順番を決める。同居している方がいる場合、入院の予定は共有せずに済ませられません。生活のリズムが変わるので、先に話しておいたほうが後々の負担が軽くなります。

体調の記録を付け始める。参加の前から、睡眠時間と体調を簡単にメモしておきます。参加中に違和感を覚えたとき、普段との違いを説明しやすくなります。

中断する基準を自分で決める。どういう状態になったら申し出るか、あらかじめ言葉にしておきます。「眠れない日が2日続いたら伝える」といった具体的な形にしておくと、その場で迷いません。

受け取ったお金の使い道を決める。まとまった額が入ると、予定していなかった支出に流れやすくなります。何に充てるかを先に決めておけば、参加した意味が残ります。

この5つは、どれも紙とペンがあればできます。参加を決める前の30分で、あとの数か月がずいぶん落ち着きます。

収入を安定させたいなら、治験は「主」にはできない

ここまで整理してきたことをまとめると、治験を収入の柱にするのは難しいとわかります。理由は3つ。参加できる回数に上限がある。事前検診で落ちる可能性が6割ある。金額を自分の努力で増やせない。

では、どう考えればよいか。治験は「臨時の収入」の枠に置いて、毎月の収入は別の手段で作る。これがいちばん現実的です。

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治験は、条件が合ったときに助けになる制度です。そして、月々の生活を支えるのは、続けられる仕事です。両方を別の枠で考えられるようになると、気持ちがずいぶん楽になります。

市場を長く見てきた立場からの観察

20年この市場を見てきた立場から言えば、収入の不安を抱えている方が最初に探すのは、いつも「短期間でまとまった額が入る手段」です。治験の検索が多いのも、その気持ちの表れだと思います。

でも、運営者として見てきた限りでは、生活が落ち着いた方に共通しているのは、まとまった額を一度手にしたことではありません。小さくても毎月続く収入を作れたことです。金額が小さくても、来月も来ることがわかっているお金は、気持ちを安定させます。逆に、大きな額が不定期に入る状態は、計画が立てにくく、不安が消えません。

もうひとつ、長く続いている方は「誰かに任せてもらえる関係」を作っています。単発の仕事を数でこなすのではなく、同じ相手から繰り返し頼まれる形です。発注する側からすると、毎回説明しなくて済む相手は貴重で、その分は報酬に回せます。関係を育てる時間は、あとから収入として返ってきます。

そして、手取りの話です。仕事の報酬は、仲介の仕組みによって手元に残る額が変わります。20%の手数料が乗る仕組みだと、依頼者が5万円を出しても受け手には4万円しか届きません。ここが手数料0%で繋がると、同じ予算で依頼者はより多く頼めるし、受け手の手取りは厚くなります。使える時間が限られている方にとって、この差は「あと何時間働くか」に直結します。手取りが厚いというのは、金額の大小の話ではなく、体と時間を守れるかという話です。

在宅ワークのデータから見えること

在宅でできる仕事を横断して見ていくと、収入が安定している方の共通点がはっきりします。ひとつの手段に頼っていないことです。時間で報酬が決まる仕事を土台に置いて、成果で変動する仕事を上に乗せる。この形にすると、悪い月でも土台の分は残ります。

治験は、この構造の中では最も上のほう、つまり「あれば嬉しいが、なくても困らない」層に置くべきものです。参加できる回数に上限があり、検診で落ちる可能性があり、金額を自分で伸ばせないからです。ここを土台に置くと、落ちた月に生活が揺れます。

一方で、治験に参加した経験そのものには価値があります。健康診断より詳しい検査を受けることになるので、自分の体の数値を知る機会になる。体調管理は、在宅で長く働くための土台です。体を壊して数か月働けなくなると、その損失は治験の負担軽減費を大きく上回ります。

治験を副業と考えていた方に、最後にお伝えしたいことがあります。治験は、新しい薬を世に出すための協力です。お金のために参加する方がいても、それ自体が悪いわけではありません。ただ、その協力に自分の体を差し出すかどうかは、金額ではなく体調と生活の余裕で決めてください。余裕がないときこそ、断る選択を持っていてほしいのです。あなたは一人ではありません。決める前に、誰かに話してみるのもいい方法です。

よくある質問

Q. 治験は副業になりますか?

治験で受け取るお金は負担軽減費と呼ばれ、労働の対価ではありません。通院の交通費や時間的な拘束への負担を軽くするために支払われるもので、有償ボランティアとして整理されるのが一般的です。ただし勤務先の就業規則が収入を得る活動全般に届け出を求めている場合もあるため、自分の会社の規則の文言を確認してください。

Q. 治験の負担軽減費はいくらぐらいですか?

通院型は1回の来院あたり7,000円から10,000円程度、入院型は1泊あたり2万円前後が目安とされます。4泊6日の入院型で総額10万円から12万円という例もあります。ただし事前検診の合格率は約40%とされ、休薬期間も必要なため、年間で参加できるのは2回から3回程度が現実的な上限です。

Q. 治験に毎月参加して安定収入にできますか?

できません。治験で薬を投与されたあとは、体から影響が抜けるまで次の治験に参加できず、この休薬期間は3か月から4か月程度が目安です。参加者の安全を守るための仕組みで、実施機関が情報を共有して重複参加を防いでいます。毎月の収入は在宅の仕事など別の手段で作り、治験は臨時収入の枠に置くのが現実的です。

Q. 治験の負担軽減費に確定申告は必要ですか?

負担軽減費は給与ではないため年末調整の対象外です。給与以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。所得の分類については雑所得として扱うという説明が一般的ですが、個別の事情で判断が変わるため、金額が大きい年は税務署か税理士に確認してください。受け取った金額と日付は記録しておきましょう。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月10日最終更新:2026年9月20日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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