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治験の謝礼のしくみ|参加の申し込み手順と体への負担

@SOHO編集部
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治験の謝礼のしくみ|参加の申し込み手順と体への負担

この記事のポイント

  • ✓治験謝礼の正体である負担軽減費のしくみ
  • ✓通院と入院それぞれの相場
  • ✓税金の扱いを整理します

治験謝礼と検索する人がまず知りたいのは、いくらもらえるのか、いつ振り込まれるのか、そして税金がかかるのかという3点です。ところが調べ始めると「謝礼」という言い方と「負担軽減費」という言い方が混ざって出てきて、しかも金額の幅が広く、何を基準に決まっているのかが見えません。この記事では、治験に支払われるお金がなぜ「報酬」ではないのかという制度上の位置づけから始めて、通院と入院それぞれの相場、支払いの時期、税金の扱い、申し込みの手順、体への負担の見積もり方までを順番に整理します。制度の部分は厚生労働省の公表資料と省令の条文で確かめた内容に限っています。

治験に支払われるお金は「報酬」ではなく負担軽減費という位置づけ

最初に押さえておくべきなのは、治験に参加して受け取るお金は、労働の対価としての賃金でも、成果に対する報酬でもないということです。制度上の位置づけは「負担軽減費」で、通院にかかる交通費や時間の拘束、検査に伴う身体的な負担を金銭で埋め合わせるという考え方に立っています。

なぜこの位置づけが重要かというと、金額の決まり方に直結するからです。仮に報酬なら、成果や難易度で高く釣り上げることも理屈としてはあり得ます。しかし治験は参加するかしないかを本人が自由に決めることが制度の土台になっており、お金で参加を誘い込む形になってはいけません。医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令、通称GCPは、同意について次のように定めています。

第五十条第一項又は第二項に規定する同意は、治験責任医師等に強制され、又はその判断に不当な影響を及ぼされたものであってはならない。 出典: e-Gov 法令検索

金額が突出すると、この「不当な影響」に触れかねません。だから実務上、同じような内容の治験で片方だけが極端に高い金額を出すことは起きにくい構造になっています。治験ボランティアの募集を行っているJCVNは、金額の決まり方について次のように説明しています。

負担軽減費の金額は、治験を実施する医療機関や製薬メーカーが主に設定しています。 治験で使用する薬剤や内容により、被験者にかかる負担は異なるので一つの治験ごとに金額を設定しますが、同じような治験を比較した際に、片方が明らかに突出したような金額を設定するといったことはできず、過去の事例や経験則から大体の相場が決められております。 出典: jcvn.jp

つまり金額は「交渉で上げられるもの」ではなく、治験の内容から半ば自動的に決まる性格のものです。高額な募集を探して回るという発想は、この仕組みとは噛み合いません。見るべきなのは金額の絶対値ではなく、その金額に対してどれだけの時間と身体的な負担が伴うのかという釣り合いです。

治験そのもののしくみを先に押さえる

負担軽減費の話に入る前に、治験がどういう手続きの中に置かれているのかを見ておくと、金額の水準が納得しやすくなります。独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、治験を次のように説明しています。

医薬品、医療機器、再生医療等製品の承認申請に添付する資料として、薬物、機械器具等、加工細胞等を実際に使うとどのような効果や副作用があるかを臨床試験で確かめ、そのデータを集めることを「治験」といいます。 出典: 医薬品医療機器総合機構

承認申請に使う資料をつくるための試験である、という点が出発点です。集めたデータは国の審査に提出されるので、途中で条件が崩れると試験全体が使えなくなります。だから参加者に守ってもらうことが細かく決められていて、そこに拘束が生まれます。

手続きの流れは厚生労働省が公表しています。製薬会社は、治験を担当する医師が合意した治験実施計画書を厚生労働省に届け出ます。厚生労働省はその内容を調査し、問題があれば変更等の指示を出します。そのうえで、実施する医療機関では治験審査委員会が、計画書が参加者の人権と福祉を守った内容になっているか、担当する医師が適切か、参加者に治験の内容を正しく説明する形になっているかを審査します。治験が始まってからは、依頼した製薬会社の担当者であるモニターが進行を調査し、計画書とGCPが守られているかを確認します。

GCPは治験審査委員会について、設置者が手順書、委員名簿、会議の記録とその概要を作成し、そのうち手順書・委員名簿・会議の記録の概要を公表しなければならないと定めています。誰がどういう基準で審査したのかを外から確認できる形にする、という趣旨です。参加を検討している治験がどの委員会の審査を受けたのかは、後で述べる説明文書に書かれています。

実施されている治験を自分で探すこともできます。厚生労働省の臨床研究等提出・公開システム、通称jRCTでは、対象疾患名や医療機関の所在する都道府県、募集の状況で検索できます。募集前または募集中に絞り込む機能もあるので、「いま参加できるものがあるか」を自分で確かめられます。

負担軽減費の相場は通院か入院かで大きく分かれる

金額は、通院で受ける治験か、施設に泊まる治験かで水準が変わります。拘束される時間の長さがまるで違うからです。

入院を伴う治験について、JCVNは1泊あたりの水準を次のように説明しています。

入院タイプの治験は、拘束時間も長く制限要項も多く設けられるため、通院タイプの治験よりも負担軽減費は高くなります。全国平均の最低賃金が930円(※2021年時点)とされているので、930円×24時間とすると一泊あたり約20,000円を目安に想定されています。加えて、入院タイプの治験の大半は治験薬を投与する内容となっているため、時間的拘束の他に薬剤投与による身体への影響を鑑み、入院タイプの治験は1泊あたり20,000~30,000円が相場となっています。 宿泊数の回数が負担軽減費の増減に直結するため、総額の判別は通院タイプの治験と比較して視覚化しやすくなっています。 出典: jcvn.jp

なお、この説明が計算の前提に置いている最低賃金は2021年時点の金額です。最低賃金は毎年改定されているため、いまの水準で計算し直すと目安の額も上がることになります。募集を見比べるときは、この計算の考え方を「1泊あたりいくらか」を測る物差しとして使い、実際の金額は個々の募集に書かれている額で確かめてください。

通院型については、治験の参加者募集を行っているパルイットが次のように示しています。

一方、通院の治験では1回あたり10,000円が相場ですが、通院先が大学病院などの場合には7,000円になるケースもあります。 出典: pa-ruit.jp

この2つを並べると、総額の組み立て方が見えてきます。入院型は1泊あたり20,000円から30,000円を宿泊日数で掛けた額が土台になり、通院型は1回あたり7,000円から10,000円を通院回数で掛けた額が土台になります。入院型で総額が大きく見えるのは単価が高いからではなく、泊数が積み上がるからです。

見落としがちなのは、入院型と通院型が組み合わされた治験が多いという点です。入院して薬を投与し、退院後に数回通院して検査を受けるという設計が一般的で、この場合は両方が合算されます。募集要項で総額だけを見て判断すると、通院が何回あるのかを読み落とします。総額に対して「何日拘束されるのか」「何回足を運ぶのか」を必ず数えてください。

支払いの時期と受け取り方

支払いのタイミングは、治験が終わってから一括というわけではありません。実務では、来院した回ごとに計算して支払う形が一般的です。

来院ごとに計算する場合でも、その場で現金を渡す形は少なくなっており、指定した口座への振り込みが主流です。振り込みの時期は治験ごとに決められており、来院日の翌月にまとめて振り込む、治験の区切りごとに振り込む、最終来院の後にまとめて振り込むなど、設計は一定ではありません。

ここで気をつけたいのが、途中で参加を取りやめた場合の扱いです。GCPは説明文書に記載する事項として「治験の参加をいつでも取りやめることができる旨」と「治験に参加しないこと又は参加を取りやめることにより被験者が不利益な取扱いを受けない旨」を挙げています。したがって、途中でやめたこと自体を理由に不利益を受ける扱いにはなりません。その一方で、来院した回数分をどう精算するかは治験ごとの取り決めによります。参加を決める前に、途中で終えた場合の精算方法を担当者に確認しておくのが確実です。

もう1つ、金額とは別に押さえておく費用の話があります。GCPは説明文書の記載事項として「被験者が負担する治験の費用があるときは、当該費用に関する事項」を挙げています。つまり、参加者側に費用が発生する場合は、その内容を文書で示さなければなりません。何が無料で、何が自分の負担になるのかは説明文書に書かれているので、そこを読んでから判断できます。

支払いの手続きのために、本人確認書類と口座情報の提出を求められます。振込先の名義は本人名義に限られるのが通例です。

税金はどう扱われるのか

ここは誤解が多い部分なので、制度の枠組みを正確に押さえます。

まず、負担軽減費は雇用契約に基づいて働いた賃金ではありません。したがって給与所得ではなく、所得税では雑所得として扱われるのが一般的です。国税庁のタックスアンサーNo.1500は、雑所得を「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得」と説明し、その金額は総収入金額から必要経費を引いて計算すると示しています。

次に、申告が必要になる線です。会社に勤めて給与を受け取っている人については、国税庁のタックスアンサーNo.1900が次の内容を示しています。給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象である場合、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円を超える人は確定申告をしなければなりません。給与を2か所以上から受けている場合は、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円を超えるときに申告が必要になります。

つまり、会社員が受け取った負担軽減費は「給与所得と退職所得を除く各種の所得金額」の側に入るので、他の副業の所得と合わせて20万円を超えるかどうかで判断することになります。1件の治験で20万円を超える例は多くありませんが、複数の治験に参加した年や、他に副業の所得がある年は超えることがあります。

ここで断定を避けたい点を明記します。負担軽減費が実際にどの所得区分になるか、必要経費として何が認められるかは、支払いの名目や実際の支払い方によって変わる余地があります。金額が大きい年や、他の所得と重なる年は、税務署か税理士に確認してください。この記事で個別の結論を示すことはしません。

住民税については、所得税の20万円の線とは別の扱いになります。所得税の申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があるので、自分が住んでいる市区町村の窓口で確かめてください。

参加の申し込み手順を7段階で見る

申し込みから参加までの流れは、おおむね7つの段階に分かれます。

第1段階は登録です。治験の参加者を集める仲介事業者のサイトで、氏名、生年月日、連絡先、身長と体重、喫煙の有無、既往歴、現在服用している薬などを登録します。登録は無料で行われるのが通例で、登録の段階で費用を求められることはありません。

第2段階は募集案件の確認です。登録すると、条件に合う治験の案内が届くようになります。案内には対象となる年齢と性別、健康状態の条件、入院や通院の日程、負担軽減費の額が書かれています。

第3段階は説明会です。参加を希望すると、医療機関で治験の内容を説明する場が設けられます。ここで説明文書が渡されます。厚生労働省は、この段階の進め方について次のように記しています。

そして、治験に参加するかしないかは、だれからも強制されることなく、自分の意思で決めてください。説明を受けたその場で決めず、説明文書を持ち帰って家族に相談してから決めることもできます。 出典: 厚生労働省

その場で決めなくてよいという点は、実務でもそのとおりに運用されています。急かされると感じたら、持ち帰って考えると伝えて構いません。

第4段階が同意です。GCPは、同意が「説明文書の内容を十分に理解した上で、当該内容の治験に参加することに同意する旨を記載した文書」に、説明を行った医師と本人が日付を記載して署名しなければ効力を生じないと定めています。さらに、署名した同意文書の写しを本人に交付しなければならないとも定めています。写しを受け取らないまま進む形は、制度上想定されていません。

第5段階が事前検査です。血液検査や尿検査、心電図、身体測定などで、治験の条件に合うかどうかを確認します。ここで条件に合わないと判断されると参加できません。事前検査だけを受けて参加に至らなかった場合の負担軽減費の扱いは治験ごとに違うため、検査を受ける前に確認しておくとよいです。

第6段階が参加です。入院型なら指定された施設に泊まり、通院型なら決められた日に通います。この期間は、食事や飲酒、運動、他の薬の使用などに制限がかかります。

第7段階が終了後の確認です。治験薬の影響を見るために、投与が終わった後にも検査を受ける日程が組まれることがあります。ここまでを含めて全体の拘束期間を数えてください。

説明文書に書かれている17項目と、そこで確かめること

GCPは、説明文書に記載しなければならない事項を17項目挙げています。この一覧を知っていると、説明を受けるときに何を聞けばよいかが分かります。主なものを挙げると、治験が試験を目的とするものである旨、治験の目的、担当医師の氏名と連絡先、治験の方法、予測される心身の健康に対する利益(見込まれない場合はその旨)と予測される不利益、他の治療方法に関する事項、参加する期間、いつでも取りやめられる旨、参加しないことや取りやめることで不利益な取扱いを受けない旨、秘密が保全される旨、健康被害が発生した場合の連絡先、健康被害が発生した場合に必要な治療が行われる旨、健康被害の補償に関する事項、審査を行った治験審査委員会に関する事項、本人が負担する費用があるときはその費用に関する事項です。

同条はさらに、説明文書に本人の権利を放棄させる旨やそれを疑わせる記載を入れてはならず、治験依頼者や医療機関、担当医師の責任を免除または軽減する旨の記載も入れてはならないと定めています。加えて、説明文書にはできる限り平易な表現を用いなければならないとも定めています。読んで意味が取れない書き方になっている場合は、質問してよい、という裏付けになります。

実務で見落とされやすいのは、17項目のうち「予測される利益が見込まれない場合はその旨」という部分です。健康な人が参加する種類の治験では、参加者本人に治療上の利益は生じません。この点が説明文書にはっきり書かれているかを確かめてください。ここを曖昧にしたまま「体にいいかもしれない」と考えて参加するのは、制度が想定している参加の形ではありません。

もう1つ、質問の機会についても定めがあります。GCPは、担当医師等が説明文書の内容その他治験に関する事項について本人に質問をする機会を与え、その質問に十分に答えなければならないと定めています。聞きたいことがあれば聞くのが正しい進め方です。

体への負担をどう見積もるか

金額だけを見て判断せず、負担の側を数えるのが実務的な考え方です。負担は3つの軸に分けられます。

1つ目は時間の拘束です。入院型は数日から2週間程度の宿泊を伴い、その間は外出できません。決まった時刻に食事を取り、決まった時刻に検査を受けます。スマートフォンやパソコンの使用が認められている施設もありますが、通信の可否や作業の可否は施設ごとに違います。在宅で仕事をしている人が「入院中に仕事を進めればいい」と考えて参加すると、想定どおりに進まないことがあります。

2つ目は生活の制限です。治験の期間中は、飲酒や喫煙、激しい運動、特定の食品の摂取、他の薬やサプリメントの使用に制限がかかります。これはデータの精度を保つためで、守れないと治験全体が使えなくなる可能性があります。厚生労働省も、他の薬と治験薬を組み合わせて使用すると、それぞれの作用を弱めたり強めたりするなど予期しないことが起こることがあると注意を示しており、他の病院を受診する場合は必ず治験を担当する医師に相談し、その病院の医師にも治験に参加していることを伝えるよう求めています。

3つ目が身体的な負担です。採血の回数、検査の種類、投与の方法によって負担は変わります。ここは体質や持病によって受け止め方が違うため、記事で一般化できる部分ではありません。説明文書に書かれた予測される不利益を読み、自分の体調と持病について担当医師に伝えて判断してください。診断や治療の判断は医師の領域であり、この記事で助言することはしません。

3つの軸を数えたうえで、総額をその拘束時間で割ってみると、その治験が自分にとって釣り合っているかを比べられます。入院型で総額が大きく見えても、宿泊日数と制限の重さで割ると印象は変わります。

健康被害が起きたときの補償のしくみ

参加を検討するうえで最も重要なのが、この部分です。

GCPは、治験の依頼をしようとする者に対して、あらかじめ、治験に係る被験者に生じた健康被害の補償のために、保険契約の締結その他の必要な措置を講じておかなければならないと定めています。つまり、治験を始める前に補償の備えをしておくことが、依頼する側の義務になっています。受託者の業務によって生じた健康被害も含まれます。医師が自ら治験を実施する場合についても、同じ趣旨の定めが置かれています。

そして説明文書には、健康被害が発生した場合の医療機関の連絡先、健康被害が発生した場合に必要な治療が行われる旨、健康被害の補償に関する事項を記載しなければなりません。補償の中身は治験ごとに決められているので、参加前に説明文書のこの部分を読み、分からない点は質問してください。

体調に変化を感じたときの動き方も、先に決めておくとよいです。自分で「たいしたことはない」と判断して黙っているより、担当医師に伝えるのが正しい対応です。GCPは、治験中に発生したこれまでに知られていない重大な副作用が、治験を依頼した製薬会社から国に報告され、参加者の安全を確保するため必要に応じて治験計画の見直しなどが行われる仕組みを前提にしています。報告が上がらないと、この仕組みが働きません。

メリットとデメリットを並べて判断する

メリットは3つに整理できます。第1に、特別な資格や技能を必要としないこと。条件に合うかどうかは健康状態と年齢で決まります。第2に、詳しい検査を受ける機会になること。事前検査では血液検査や心電図など、普段の健康診断より項目の多い検査を受けることがあります。ただし、これは治験の条件を確認するための検査であって、健康診断の代わりとして受けるものではありません。第3に、拘束される期間が事前に確定していること。入院日と通院日が最初から決まっているので、予定が立てやすいです。

デメリットも3つあります。第1に、拘束が重いこと。入院型では数日から2週間程度、外出できない期間が生じます。第2に、生活の制限が長く続くこと。治験の前後にも飲酒や薬の使用に制限がかかる期間が設定されることがあります。第3に、繰り返し参加できないこと。治験ごとに、前の治験からの間隔について条件が設けられているのが通例で、次々に申し込んで収入にするという使い方はできません。

とくに3つ目は、治験を収入の手段として考える人が最初につまずく点です。同じ人が短い間隔で複数の治験に参加すると、前の治験薬の影響が残っている可能性があるため、データとして使えなくなります。だから間隔の条件が設けられています。参加できる頻度は制度の側から抑えられていると考えてください。

もう1つ、注意点として挙げたいのが仲介の入口です。登録料や保証金を求める、参加が確定していないのに金銭を要求する、契約書や説明文書を渡さないといった形は、ここまで述べてきた制度の枠組みから外れています。治験の参加者募集は医療機関か、医療機関と契約した事業者が行うもので、登録の段階で参加者が金銭を払う形にはなりません。

健康な人が参加する治験と、患者が参加する治験は別物

治験謝礼を調べている人が見ている募集は、実はもともと目的が違う2種類が混ざっています。ここを分けて考えないと、金額の幅がなぜこれほど広いのかが理解できません。

1つは、健康な人を対象にする種類です。新しい薬の候補を初めて人に使う段階では、まず体の中でどう吸収され、どう分解され、どのくらいの時間で出ていくのかを調べます。この段階では病気を治す効果を測るのではなく、安全に使える範囲を確かめることが目的になります。だから対象になるのは持病のない人で、入院して決まった時刻に投与と採血を繰り返す設計になります。拘束が重い代わりに、負担軽減費の総額は大きくなりやすい種類です。

もう1つは、その病気を持っている人を対象にする種類です。すでに安全に使える範囲がある程度わかった薬の候補について、実際に病気に効くのかを調べます。この場合は通院が中心で、既に受けている治療の一部として組み込まれることもあります。拘束は軽い代わりに、通院回数で計算されるため総額は健康な人向けの入院型より小さくなりやすいです。

ここで大事なのは、前者では参加者本人に治療上の利益が見込まれないという点です。GCPが説明文書の記載事項として「予測される治験薬による被験者の心身の健康に対する利益(当該利益が見込まれない場合はその旨)」を挙げているのは、まさにこの区別があるからです。健康な人向けの治験に「体が良くなるかもしれない」という期待で参加するのは、制度の想定から外れています。

自分がどちらの種類の募集を見ているのかは、募集要項の対象条件を読めば判別できます。「20歳から40歳の健康な男性」のように健康状態を条件にしているものは前者、「〇〇の診断を受けている方」のように病名を条件にしているものは後者です。総額を比べるときは、同じ種類どうしで比べてください。

募集要項で読み落としやすい5つの条件

申し込む前に必ず数える項目を5つに絞ります。どれも募集要項に書かれているのに、金額の大きさに目が行って読み落とされやすい部分です。

第1に、入院の日数と通院の回数の合計です。前に述べたとおり、入院型と通院型が組み合わされている治験が多く、退院後の通院が数回続く設計が一般的です。総額だけを見て「1週間で終わる」と思い込むと、退院後に何度も足を運ぶことになります。第2に、通院先の所在地と交通費の扱いです。負担軽減費に交通費が含まれているのか、別に支給されるのかで手元に残る額が変わります。遠方の医療機関だと差が大きく出ます。

第3に、事前検査の日程です。事前検査は参加できるかを確認するためのもので、この検査を受けるためにも医療機関へ行く必要があります。検査の結果で参加できなかった場合の扱いは治験ごとに違うので、検査の前に確認しておいてください。第4に、治験の前後に設けられる制限の期間です。参加期間だけでなく、その前後にも飲酒や他の薬の使用に制限がかかる期間が設定されることがあります。この期間を含めて、生活に影響が出る日数を数えます。

第5に、前の治験からの間隔の条件です。すでに別の治験に参加したことがある人は、この条件に当たって申し込めない場合があります。参加歴は登録の段階で申告する項目に入っているのが通例ですが、自分でも記録を残しておくと確認が早く済みます。

この5つを数えたうえで、拘束される総日数と生活に制限がかかる総日数を出し、総額と並べてみてください。募集の金額が高い順に選ぶのではなく、この釣り合いで選ぶほうが後悔が少なくなります。

収入の柱にはならない。何と組み合わせるかで考える

ここまで整理すると、治験の負担軽減費は「単発で入る臨時の収入」であって、毎月の生活を支える柱にはならないことがはっきりします。参加できる頻度が制度の側から抑えられており、金額も交渉で動かせません。だから、柱を別に持っている人が、空いた期間に差し込むという使い方が現実的です。

運営者として在宅と業務委託の市場を長く見てきた立場から言えば、収入が安定している人は共通して、単発で終わる仕事と期間をまたいで続く仕事の2本を持っています。単発だけを積み上げる形は、次の依頼が来る保証がないため、月ごとの振れ幅が大きくなります。逆に続く仕事を1本でも持っている人は、単発の収入をそこに足す形で使えるので、振れ幅が小さくなります。

続く仕事の側を作るとき、何から手をつけるかは現在の状況で変わります。在宅で受けられる仕事に技能から入りたい場合は、在宅ワークに強い資格10選|自宅で稼げるスキルを身につけるで、どの資格が実際の案件に結びつきやすいかを確認できます。書類を正確に作る力を目に見える形にするなら、ビジネス文書検定が入口の1つです。社内外でやり取りする文書の作り方と敬語の使い方を問う検定で、事務系の在宅案件に応募するときの説明材料になります。

報酬の水準を先に知っておきたい場合は、職業分類の単位で相場を整理したページが役に立ちます。著述家,記者,編集者の年収・単価相場では文章を納品する仕事の水準、ソフトウェア作成者の年収・単価相場では開発職の水準が確認できます。技術側に進むなら、業務委託でどんな案件が出ているのかをアプリケーション開発のお仕事で把握し、近年募集が増えている領域をAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で見ておくと、学ぶ順番を決めやすくなります。

環境の面では、通信の安定が在宅の仕事の土台になります。入院型の治験に参加している間も含めて、どこで作業するかを想定しておくなら在宅ワークに最適なネット回線|光回線vsホームルーターの選び方が判断材料になります。

最後に額面と手取りの話をしておきます。仲介が何段か入る仕事では、依頼者が出した予算のうち受け手に届く割合が下がります。手数料0%の直接取引なら、同じ予算で依頼者はより多く頼めて、受け手には厚い手取りが残ります。運営者として見てきた限りでは、長く続いている人は単価の高い案件を追いかけるのではなく、この構造が成り立つ相手を数人確保しています。治験の負担軽減費のような単発の収入は、その相手を見つけるまでの期間を支える役割として使うと、生活の設計が崩れにくくなります。

よくある質問

Q. 治験の謝礼はいくらくらいが相場ですか?

入院を伴う治験は1泊あたり20,000円から30,000円、通院型は1回あたり10,000円が目安で、通院先が大学病院などの場合は7,000円になるケースもあります。総額は宿泊日数と通院回数を掛けた額になるため、金額だけでなく何日拘束されるかを必ず数えて比べてください。

Q. 受け取ったお金に税金はかかりますか?

負担軽減費は賃金ではないため、所得税では雑所得として扱われるのが一般的です。会社で給与を受け取っている人は、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計が20万円を超えると確定申告が必要になります。金額が大きい年や他に副業の所得がある年は、税務署か税理士に確認してください。

Q. 途中でやめることはできますか?

できます。GCPは説明文書に「治験の参加をいつでも取りやめることができる旨」と「取りやめることにより不利益な取扱いを受けない旨」を記載するよう定めています。ただし、そこまでの回数分をどう精算するかは治験ごとの取り決めなので、参加を決める前に担当者へ確認しておくのが確実です。

Q. 続けて何度も参加できますか?

できません。治験ごとに、前の治験からどれだけ間隔を空けるかという条件が設けられているのが通例です。前の治験薬の影響が残っているとデータとして使えなくなるためで、参加できる頻度は制度の側から抑えられています。収入の柱として当てにする使い方には向きません。

この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年1月16日最終更新:2026年9月27日
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