プロジェクト管理をエクセルで行うときの表の作り方と弱点


この記事のポイント
- ✓プロジェクト管理をエクセルで始めたい方へ
- ✓テーブルと入力規則と条件付き書式を使った作り方
- ✓ガントチャートの作り方
プロジェクト管理をエクセルで始めたい。けれど、どんな列を作ればよいのか、どこまでエクセルで続けられるのかが分からない。そう考えて調べている方は多いはずです。エクセルは多くの職場ですでに使われていて、追加の費用もかからないので、最初の道具として選ばれやすいのは自然なことです。
この記事では、エクセルでプロジェクトを管理するときの表の作り方を、列の決め方から、ガントチャートの作り方、共有のしかたまで順に整理します。あわせて、エクセルで管理を続けると起きやすい弱点と、それを小さくする運用のルール、専用のツールに移る目安も書きます。本質は、表の見た目より「誰が、いつ、何を更新するか」を決めることにあります。そこを押さえれば、エクセルでも十分に回せる期間は長くなります。
エクセルでプロジェクト管理をする人が多い理由
まず、エクセルがプロジェクト管理に使われ続けている理由を整理しておきます。理由を知っておくと、どこまでエクセルに任せてよいかの判断がしやすくなります。
1つ目は、使える人が多いことです。表に文字を入れる、並べ替える、色を付ける。この程度の操作なら、チームのほとんどの人がすでにできます。新しい道具の使い方を覚えてもらう手間がかからないのは、小さなチームにとって大きな利点です。
2つ目は、自由度が高いことです。列も行も好きなように作れるので、プロジェクトの形に合わせて表を変えられます。工程の多い制作の仕事でも、イベントの準備でも、同じエクセルで管理表を作れます。
3つ目は、ひな形がそろっていることです。Microsoftは、プロジェクト管理に使えるテンプレートを公開しています。公式のページでは次のように紹介されています。
To Do リスト、プランナー、ガント チャートなどの Microsoft Excel のプロジェクト計画策定ツールを使用して、プロジェクトを効果的に管理します。 出典: excel.cloud.microsoft
同じページでは、プロジェクトのトラッカー、タイムライン、ガントチャート、To Doリストの編集できるテンプレートを無料で使えると説明されています。ゼロから表を作るのが不安な方は、まずこうしたテンプレートを開いて、どんな列が並んでいるかを見てみると参考になります。
一方で、エクセルはもともと表計算のための道具で、プロジェクト管理のために作られたものではありません。人数やタスクが増えるにつれて、無理が出てくる場面があります。この記事の後半では、その弱点を具体的に見ていきます。
表を作る前に決める3つのこと
いきなり列を作り始めると、途中で「この情報はどこに書くのか」が分からなくなります。表を作る前に、次の3つを決めておきましょう。
1つ目は、管理の目的です。締切に間に合わせることが最優先なのか、メンバーの作業量の偏りを見たいのか、費用を管理したいのか。目的によって必要な列が変わります。締切が最優先なら日付と状況の列が中心になり、作業量を見たいなら担当者と見積もりの時間の列が欠かせません。
2つ目は、タスクの細かさです。タスクとは、プロジェクトを進めるための1つ1つの作業のことです。細かすぎると更新の手間が増え、粗すぎると遅れに気づけません。目安として、1つのタスクが半日から5日くらいで終わる大きさに分けると、遅れに早く気づけて、更新も負担になりにくくなります。
3つ目は、誰がいつ更新するかです。ここが最も大事です。エクセルの管理表は、更新されなくなった瞬間に役に立たなくなります。「各担当者が毎日の終業前に自分の行を更新する」「管理する人が毎週月曜の朝に全体を確かめる」のように、更新の担当と頻度を最初に決めておきます。
雑誌や書籍の編集の現場でも、表そのものは立派なのに、誰も更新しないまま締切の週を迎える、ということは珍しくありません。表が古いまま会議をすると、「実はまだ終わっていない」という報告が会議の中で次々に出てきて、計画の立て直しに時間を取られます。表の出来よりも、更新の約束のほうがずっと大事です。
管理表に入れる列の基本
目的とタスクの細かさが決まったら、列を作ります。多くのプロジェクトで使える基本の列を挙げます。
| 列の名前 | 入れる内容 | 入力のしかた |
|---|---|---|
| 番号 | タスクを区別する通し番号 | 1、2、3と順に入力 |
| 大項目 | 工程や担当の分野 | 一覧から選ぶ |
| タスク名 | 具体的な作業の内容 | 「〜を作る」のように動詞で終える |
| 担当者 | 作業をする人 | 一覧から選ぶ |
| 開始日 | 作業を始める日 | 日付で入力 |
| 終了予定日 | 作業を終える予定の日 | 日付で入力 |
| 実際の終了日 | 実際に終えた日 | 終えたときに入力 |
| 状況 | 未着手、作業中、確認待ち、完了など | 一覧から選ぶ |
| 優先度 | 高、中、低 | 一覧から選ぶ |
| 前のタスク | このタスクの前に終わっている必要がある作業 | 番号で入力 |
| メモ | 補足や課題 | 自由に入力 |
ポイントは、選ぶ形で入力できる列を増やすことです。状況の列に「作業中」「対応中」「進行中」と人によって違う言葉が入ると、あとで絞り込んだり数えたりできなくなります。一覧から選ぶ形にしておけば、言葉がそろいます。
タスク名は、「デザイン」のような名詞ではなく、「トップページのデザイン案を作る」のように動詞で終えると、何をすれば完了なのかがはっきりします。完了の基準があいまいなタスクは、いつまでも「作業中」のまま残りがちです。
「前のタスク」の列は、工程の順番を表すためのものです。たとえば、原稿が仕上がらないと校正が始められない、という関係です。この列があると、1つの作業が遅れたときに、後ろのどの作業に影響するかが分かります。
テーブルと入力規則で表を整える手順
列が決まったら、エクセルの機能を使って表を整えます。手順は次のとおりです。
- 1行目に列の名前を入力し、2行目から下にタスクを入力する
- 表の中のどこかのセルを選び、「挿入」から「テーブル」を選ぶ(Windowsでは「Ctrl」と「T」を同時に押しても作れます)
- 状況や担当者の列を選び、「データ」から「データの入力規則」を開く
- 「入力値の種類」で「リスト」を選び、選べる言葉をカンマで区切って入力する
- 日付の列は、「入力値の種類」で「日付」を選んでおく
テーブルにしておくと、行を追加したときに書式や数式が自動で引き継がれます。列の名前の横に絞り込みのボタンが付くので、「担当者がAさんで、状況が作業中のもの」のように絞り込むのも簡単です。
入力規則の一覧は、別のシートにまとめておくと便利です。「設定」というシートを作り、状況の言葉や担当者の名前を並べておき、入力規則ではそのシートの範囲を指定します。メンバーが増えたときは、設定のシートに名前を追加するだけで、すべての行の選択肢に反映されます。
最後に、1行目を固定しておきます。「表示」から「ウィンドウ枠の固定」を選び、「先頭行の固定」を選ぶと、下にスクロールしても列の名前が見えたままになります。タスクが50行、100行と増えても、どの列が何かを見失いません。
シートを役割ごとに分ける
管理表が育ってくると、1枚のシートにすべてを詰め込みがちです。役割ごとにシートを分けておくと、見たい情報にすぐたどり着けます。小さなプロジェクトなら、次の4枚で十分です。
1枚目は「タスク」のシートです。この記事で紹介した列を並べ、今動いているタスクだけを管理します。メンバーが毎日開くのはこのシートです。
2枚目は「節目」のシートです。プロジェクトの中で必ず守るべき日付、たとえば初回の提出日、取引先の確認日、公開日などを並べます。節目のことをマイルストーンと呼ぶこともあります。タスクが何十行あっても、節目は数行で済むので、全体の流れを短い時間で確かめられます。
3枚目は「課題」のシートです。作業を止めている問題や、まだ決まっていないことを記録します。Microsoftのプロジェクト管理の紹介ページでも、プロジェクトのブックに問題のログのタブを設け、障害を記録してリスクを管理する方法が紹介されています。課題には「誰が、いつまでに決めるか」を書いておくと、放置されにくくなります。
4枚目は「設定」のシートです。状況の言葉や担当者の名前など、入力規則の一覧をまとめます。前に書いたとおり、ここを1か所にしておくと、メンバーの追加や言葉の変更が楽になります。
完了したタスクを移す「完了」のシートは、必要になった時点で追加すれば十分です。最初から多くのシートを作ると、どこに何を書くかで迷う人が出てくるので、少ない枚数から始めるのがコツです。
条件付き書式で遅れを目立たせる
管理表で最も見落としたくないのは、遅れているタスクです。条件付き書式という機能を使うと、決めた条件に当てはまる行に自動で色を付けられます。
たとえば、終了予定日を過ぎているのに状況が「完了」になっていない行を赤くしたい場合は、次の手順で設定します。
- 色を付けたい範囲(タスクの行全体)を選ぶ
- 「ホーム」から「条件付き書式」、「新しいルール」の順に選ぶ
- 「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選ぶ
- 数式の欄に、終了予定日の列がF、状況の列がHなら
=AND(TODAY()>$F2,NOT($H2="完了"))と入力する - 「書式」から塗りつぶしの色を選び、「OK」を押す
数式の中の「TODAY()」は、今日の日付を表します。毎日ファイルを開くたびに、その日の時点で遅れている行に色が付きます。同じ考え方で、「終了予定日まで3日以内で、まだ完了していない行を黄色にする」といった設定も作れます。
色の使い方には注意が要ります。色の種類が多すぎると、どの色が何を表すのかが分からなくなります。「赤は遅れ、黄色は締切が近い、灰色は完了」のように、3色程度に絞っておくと、ひと目で状況をつかめます。
ガントチャートを作る2つの方法
ガントチャートとは、タスクを縦に並べ、期間を横棒で表した表のことです。どの作業がいつからいつまでか、どこで作業が重なっているかを一目で確かめられます。エクセルでガントチャートを作る方法は、主に2つあります。
1つ目は、条件付き書式で日付のマス目を塗る方法です。管理表の右側に、1列1日の日付の列を並べます。各マスに「その日が開始日から終了予定日のあいだなら色を付ける」という条件付き書式を設定すると、期間の部分だけが塗られて横棒のように見えます。たとえば、開始日がE列、終了予定日がF列、日付の見出しが3行目にある場合は、=AND(L$3>=$E4,$F4>=L$3)のような数式を使います。列の幅を細くすれば、1画面で1か月から2か月の範囲を見渡せます。
2つ目は、グラフの機能を使う方法です。積み上げ横棒グラフを作り、開始日の部分を透明にして、期間の部分だけを表示させます。見た目は整いますが、タスクを追加するたびにグラフの範囲を直す手間がかかるため、頻繁に更新する管理表には1つ目の方法のほうが向いています。
どちらの方法でも、土日や祝日に色を付けておくと、作業できない日が分かりやすくなります。日付の見出しの行に、曜日を表す数式と条件付き書式を組み合わせて、土日の列を灰色にしておくと便利です。
ガントチャートは、作ることより更新することに手間がかかります。予定が変わるたびに開始日と終了予定日を直す必要があるので、更新の担当を決めておくことが欠かせません。
進み具合の付け方で気をつけること
進み具合を「進捗率」として、30%、50%、80%のように数字で入れる管理表もよく見かけます。ただ、この数字は人によって付け方がばらばらになりやすく、注意が要ります。
よくあるのが、80%から先がなかなか進まないという現象です。作業の大部分は終わったと感じても、最後の確認や細かな直しに思った以上の時間がかかります。表の上では80%の状態が何日も続き、締切の直前になって遅れが表に出てきます。
こうしたずれを防ぐには、進捗率を自由に入力させるのではなく、状況の段階で表す方法が向いています。「未着手」「作業中」「確認待ち」「完了」の4段階にして、確認待ちに入ったら誰かが中身を見る、というルールにすると、実態とのずれが小さくなります。
数字で表したい場合は、タスクを細かく分け、完了したタスクの数を全体の数で割って進み具合とする方法があります。1つ1つのタスクは「終わったか、終わっていないか」の2択なので、人による付け方の差が出にくくなります。
進み具合を全体で見たいときは、状況の列を数える方法が便利です。COUNTIF関数を使い、「完了」の行の数を全体の行の数で割れば、プロジェクト全体の進み具合を1つの数字で表せます。この数字を毎週の打ち合わせの冒頭で確かめ、前の週からどれだけ進んだかを見ると、全体の速さが計画に合っているかを判断しやすくなります。
共有と共同編集の条件を確かめる
チームで管理表を使うとき、最初につまずきやすいのが共有のしかたです。メールにファイルを添付して回すと、誰の手元のファイルが最新なのかが分からなくなります。複数の人が同じファイルを同時に開いて編集する場合は、共同編集の機能を使います。
Microsoftのサポート情報では、共同編集の条件として次のように書かれています。
Excel ブックは、.xlsx、.xlsm、または .xlsb ファイル形式で使用する必要があります。 出典: support.microsoft.com
同じページでは、ファイルをOneDrive、OneDrive for Business、SharePoint Onlineのいずれかに保存する必要があると説明されています。会社のサーバーなどMicrosoftが運営していない場所に保存したファイルでは、共同編集はできません。デスクトップ版のExcelで共同編集をするには、Microsoft 365の契約と、新しい版のExcelが必要とされています。契約していない人は、ブラウザで開くExcelから編集に参加できます。
古い形式のファイル(拡張子が.xlsのもの)を使っている場合は、「ファイル」から「コピーの保存」を選び、形式を「Excel ブック (*.xlsx)」に変えて保存し直します。マクロを使っている管理表は、マクロの一部がブラウザ版で動かないことがあるので、共同編集を始める前に確かめておきましょう。
共同編集を使っても、同じセルを2人が同時に書き換えると、片方の入力が上書きされることがあります。行ごとに担当を決め、自分の行だけを更新するルールにしておくと、こうした衝突を避けられます。
定例の打ち合わせで管理表を生かすコツ
管理表は、週に1回の定例の打ち合わせと組み合わせると、効果がぐっと大きくなります。打ち合わせの進め方の例を挙げます。
まず、打ち合わせの前日までに、各担当者が自分の行を更新しておくことを約束にします。打ち合わせの場で更新を始めると、時間の大半が入力に消えてしまいます。
打ち合わせでは、全部の行を上から読み上げるのではなく、絞り込みを使って見る範囲を絞ります。順番は、遅れている行、今週が締切の行、課題のシートの順がおすすめです。順調な行は話題にしなくて構いません。30分の打ち合わせなら、遅れと課題だけで十分に時間を使えます。
決まったことは、その場で管理表に反映します。締切の変更、担当の交代、新しいタスクの追加を、画面を共有しながら直していけば、打ち合わせが終わった時点で表が最新になります。議事録を別に作る手間も減らせます。
打ち合わせの最後には、次の1週間で必ず終えるタスクを確認します。担当者が自分の口で「この3つは金曜までに終えます」と言うだけで、表の上の約束が具体的な行動に変わります。
テンプレートを使うときに気をつけること
Microsoftが公開しているテンプレートや、各社が配っている無料のテンプレートを使えば、管理表を短い時間で用意できます。ただ、そのまま使うと合わない部分も出てきます。
1つ目は、列が多すぎることです。テンプレートは、多くのプロジェクトに対応できるよう、たくさんの列を用意しています。自分たちが使わない列は、最初に削除しておきましょう。空欄の列が並んでいると、「書かなければいけないのでは」と迷う人が出ます。
2つ目は、数式の仕組みが分からないことです。テンプレートには、進み具合の計算やガントチャートの表示のために、複雑な数式が組み込まれていることがあります。仕組みを知らないまま行を追加したり列を動かしたりすると、表示が崩れることがあります。最初に数式の入っているセルを確かめ、触ってよい範囲を決めておきます。
3つ目は、マクロの扱いです。マクロとは、決まった操作を自動で行うための仕組みのことです。マクロ入りのテンプレートは、会社の設定によって動かないことがあり、ブラウザ版のExcelでは使えない機能もあります。チームで共同編集する予定なら、マクロのないテンプレートを選ぶほうが安全です。
取引先や外部のメンバーと共有するとき
業務委託のメンバーや取引先と管理表を共有する場面もあります。社内だけで使うときとは違う注意が必要です。
まず、見せる範囲を決めます。社内の費用や、ほかの取引先の名前が入った列は、外部の人に見せるべきではありません。外部と共有する場合は、共有用のファイルを分けるか、見せる列だけを別のシートにまとめます。1つのファイルの中で列を隠すだけでは、表示を戻せば見えてしまうので、守りたい情報の扱いとしては不十分です。
次に、権限を決めます。共有の設定で、編集できる人と閲覧だけの人を分けておきます。外部の人には、自分の担当の行だけを更新してもらうルールにし、それ以外は閲覧だけにするのが無難です。
3つ目に、共有をやめる時期を決めます。プロジェクトが終わったあとも共有のリンクが生きていると、関係のなくなった人がファイルを見られる状態が続きます。終了の時点で共有を解除することを、最後のタスクとして管理表に入れておくと忘れません。
Googleスプレッドシートで作る場合との違い
エクセルの代わりに、Googleスプレッドシートで管理表を作るチームもあります。表の作り方の考え方は同じで、この記事で紹介した列や、入力規則、条件付き書式の考え方はそのまま使えます。違いが出るのは、主に共有と費用の面です。
Googleスプレッドシートは、ブラウザで使うことを前提にした表計算の道具です。Googleのアカウントがあれば使え、同じファイルを複数の人が同時に編集することが最初から想定されています。ファイルの保存先を気にする必要がなく、共有のリンクを送るだけで共同作業を始められる手軽さがあります。
一方で、エクセルで作り込んだマクロや一部の関数は、そのままでは動かないことがあります。取引先や社内の決まりでエクセルの形式が求められる場合は、書き出しのたびに表示や数式を確かめる手間がかかります。
どちらを選ぶかは、チームがふだん使っている道具に合わせるのが基本です。会社でMicrosoft 365を契約していて、ファイルもOneDriveやSharePointにあるならエクセル、Googleのサービスを中心に仕事をしているならスプレッドシート、という分け方が無理のない選び方です。どちらを選んでも、更新の担当を決めること、ファイルを1つにすることといった運用の決まりは変わりません。
エクセルで管理を続けると出てくる弱点
ここからは、エクセルでの管理を続けると出てきやすい弱点を整理します。どれもエクセルが悪いのではなく、もともと表計算の道具であることから来るものです。
1つ目は、知らせる仕組みがないことです。担当が変わった、締切が近い、コメントがついた、といった変化があっても、エクセルは相手に知らせてくれません。結局、メールやチャットで別に連絡することになり、連絡の場所と管理の場所が分かれてしまいます。
2つ目は、やりとりが残りにくいことです。タスクについての相談は、チャットやメールの中に散らばります。あとから「なぜこの締切に変えたのか」を確かめようとしても、表には結果しか残っていません。メモの列に書き込むこともできますが、長いやりとりには向きません。
3つ目は、行が増えると重くなることです。タスクが数百行になり、条件付き書式や数式が増えると、ファイルを開くたびに時間がかかるようになります。過去のプロジェクトの行を残したまま新しい行を追加し続けると、この問題はさらに大きくなります。
4つ目は、作った人にしか直せなくなることです。数式やマクロを工夫して便利な管理表を作るほど、作った人がいないと直せない状態になります。担当が異動したり、外部のメンバーに作業を引き継いだりしたときに、表が壊れても誰も直せない、ということが起きます。
5つ目は、見る人に合わせた表示を切り替えにくいことです。管理する人は全体の締切を見たい、作業する人は自分のタスクだけを見たい、取引先には進み具合の概要だけを見せたい。エクセルでは、こうした見せ方の切り替えのたびに、シートを分けたり絞り込みを設定し直したりする必要があります。
弱点を小さくする運用のルール
弱点はあっても、運用のルールを決めておけば、エクセルで回せる期間は長くなります。効果の大きいものを挙げます。
まず、ファイルは1つだけにします。共有の場所に保存したファイルだけを正とし、メールに添付したり、手元にコピーして作業したりしないことを決めます。ファイル名に日付を付けて保存し直す運用は、どれが最新か分からなくなる原因なので避けます。
次に、完了したタスクは別のシートに移します。表に残る行を今動いているタスクだけにすると、ファイルが軽くなり、見落としも減ります。月に1回、完了した行をまとめて「完了」のシートに移す、というルールが扱いやすいでしょう。
3つ目に、連絡の場所を1つに決めます。タスクについての相談は、チャットの決まった場所で行い、決まったことだけを管理表のメモに書く。こうしておけば、表とやりとりを行き来する手間が減ります。
4つ目に、数式やマクロは最小限にします。誰でも直せる範囲の機能だけで作っておくと、作った人がいなくても管理表を使い続けられます。凝った仕組みを作りたくなったら、それはエクセルの外に出る時期が近い合図だと考えてください。
5つ目に、週に1回、全体を見直す時間を決めます。管理する人が表を上から確かめ、遅れているタスクと、担当が決まっていないタスクを拾い上げます。この時間があるだけで、表と実態のずれが大きくなる前に気づけます。
専用のツールに移る目安
運用のルールを守っても、プロジェクトの規模が大きくなれば、エクセルでは追いつかなくなります。次のような状態が続いたら、専用のツールに移ることを考える時期です。
・メンバーが5人を超え、同時に編集する場面が増えてきた
・タスクの変更をチャットで知らせる手間が、1日に何度も発生している
・「どこで話したか」を探す時間が増えてきた
・管理表を開くのに時間がかかるようになった
・外部のメンバーや取引先とも、同じ管理表を見る必要が出てきた
・作った人以外が表を直せず、困る場面が出てきた
1つや2つなら運用で乗り切れますが、3つ以上当てはまるなら、移った後の手間よりも、続けることの手間のほうが大きくなっていると考えてよいでしょう。
移るときは、いきなりすべてを切り替えないことが大切です。まず次に始まる1つのプロジェクトだけを新しいツールで管理し、エクセルと並べて使いながら、メンバーの反応を確かめます。合わなければ、エクセルに戻る道を残しておくと、試すことへの抵抗が小さくなります。
移る前には、エクセルの管理表を一度整理しておくと、新しいツールでの立ち上げが速くなります。具体的には、完了したタスクを別のシートに移して進行中のタスクだけにする、担当者の名前の表記をそろえる、状況の言葉を3つから5つに絞る、の3点です。新しいツールでは、この整理した一覧をもとにタスクを登録していきます。エクセルで使っていた列のうち、実際に毎週見ていたものだけを新しいツールの項目として作り、見ていなかった列は思い切って作らない。こうしておくと、移った先の画面も最初からすっきりします。
エクセルの次に試せる選択肢
専用のツールには多くの種類があり、料金も機能もさまざまです。エクセルからの乗り換えで重視したいのは、表で一覧できること、ガントチャートが使えること、そして少人数なら無料で試せることです。そうした条件で探す場合の候補の1つとして、Pinatecaがあります。
公式の料金ページによると、Pinatecaのフリープランは5人まで、ボード10個までで、期限なしの無料です。クレジットカードの登録は要りません。無料の範囲で、カンバン、ガント、カレンダー、リストなど全8種類のボードが使え、チャットやコメント、カスタムフィールド、権限の設定も含まれると書かれています。
エクセルの管理表に近いのは、リストボードです。公式サイトでは、表で全件を並べ、絞り込んで一括で直すボードと説明されています。ガントボードでは、カードの期間が横棒で並び、バーをドラッグすると開始日や締切がその場で変わります。カスタムフィールドを使えば、見積もりの時間や優先度、顧客名など、エクセルで作っていた列をカードに追加できます。自分宛てのメンションや担当の割り当て、締切は受信箱にまとめて届くので、エクセルの弱点だった「知らせる仕組みがない」点を補えます。
6人目、または11個目のボードからはスタンダードプランになり、料金は1人あたり月額500円、年払いなら1人あたり月額400円です。表示価格は税抜で、閲覧だけのゲストは人数に数えないと明記されています。
Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
なお、エクセルのファイルをそのまま取り込む機能は、公式サイトでは案内されていません。移るときは、進行中のタスクだけを新しく登録し直すのが現実的です。完了したタスクの記録は、エクセルのファイルのまま保存しておけば十分です。
進行を管理する力は、それ自体が仕事になる
最後に、プロジェクトを管理する側の視点から書いておきます。エクセルでも専用のツールでも、管理表を回す力は、それ自体が評価される技能です。締切から逆算して作業を分ける、担当を割り振る、遅れに早く気づいて手を打つ。こうした進行管理の仕事は、在宅の業務委託でも一定の需要があります。
フリーランスや在宅ワークの市場を長く運営してきた立場から見ると、長く続く人ほど、作業そのものに加えて「この人に任せると進行が楽になる」という信頼を積み重ねています。直接取引では中間に入る手数料がない分、依頼主は同じ予算でより多くを頼めて、受け手は手取りが厚くなります。進行の見える化は、その信頼を形にする手段の1つです。
中小企業の業務の見直しや仕組みづくりに関わる仕事に関心がある方は、中小企業診断士の資格ガイドで、試験の内容と、資格を生かせる仕事の範囲を確かめられます。経営の課題を整理する力は、プロジェクトの進行管理とも重なる部分が多い分野です。
企業の業務にAIやITの道具を取り入れる手伝いをする仕事については、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で、仕事の内容と求められるスキルを整理しています。エクセルから専用ツールへの移行を手伝う案件も、こうした仕事の一部です。
道具を増やすと、毎月の費用も増えます。会社で使うサービスの費用を見直したい方は、中小企業のSaaS費用管理術2026|サブスクコストを30%削減する方法で、契約の棚卸しと費用の抑え方を整理しています。製造業の現場で工程の管理をデジタルに移したい方は、中小製造業のDX推進|生産管理SaaS比較2026|補助金活用の完全ガイドも参考になります。
エクセルでのプロジェクト管理は、決して時代遅れではありません。列を絞り、更新の約束を決め、弱点を知ったうえで使えば、小さなチームには十分な道具です。そして、表が追いつかなくなったと感じたときが、次の道具を試す合図です。
よくある質問
Q. エクセルのプロジェクト管理表には最低限どんな列が必要ですか?
最低限必要なのは、タスク名、担当者、開始日、終了予定日、状況の5つです。タスク名は「〜を作る」のように動詞で終えると、完了の基準がはっきりします。状況は「未着手」「作業中」「確認待ち」「完了」などを一覧から選ぶ形にすると、言葉がそろい、絞り込みや集計がしやすくなります。
Q. エクセルでガントチャートを作るにはどうすればよいですか?
管理表の右側に1列1日の日付の列を並べ、開始日から終了予定日までのマスに色を付ける条件付き書式を設定する方法が手軽です。タスクを追加しても書式が引き継がれるので、更新の手間が少なく済みます。Microsoftが公開しているガントチャートのテンプレートを使う方法もあります。
Q. 複数人で同じエクセルの管理表を同時に編集できますか?
できます。ファイルを.xlsxなどの形式にして、OneDriveやSharePoint Onlineに保存すれば、共同編集の機能で同時に編集できます。デスクトップ版で共同編集するにはMicrosoft 365の契約が必要で、契約がない人はブラウザ版のExcelから参加できます。同じセルの同時編集は避け、行ごとに担当を決めておくと安全です。
Q. エクセルから専用ツールに移るのはどんなタイミングですか?
メンバーが増えて同時に編集する場面が多くなった、変更の連絡を別に送る手間が増えた、やりとりを探す時間が増えた、ファイルが重くなった、といった状態が重なってきたら考える時期です。移るときは、次に始まる1つのプロジェクトから試し、エクセルに戻れる道を残しておくと失敗が少なくなります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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