国民健康保険料が減免される条件とは

前田 壮一
前田 壮一
国民健康保険料が減免される条件とは

この記事のポイント

  • 国民健康保険料の減免条件を
  • 申請がいらない法定軽減と
  • 申請して初めて下がる条例減免に分けて整理しました

会社を辞めて国民健康保険に切り替えたとたん、納付書の金額を見て手が止まった。そんな相談が、独立を考える世代からいちばん多く届きます。まず、落ち着いて確かめてほしいことがあります。国民健康保険料には、条件に当てはまれば自動で下がるものと、役所に申し出て初めて下がるものの2種類があり、後者は黙っていると一円も下がりません。この記事では、国民健康保険料の減免条件を「申請がいらないもの」と「申請しないと動かないもの」に分けて、どの書類を持ってどこへ行けばよいかまで整理します。

保険料が急に高く見える理由と、軽減と減免の違い

会社員のときの健康保険料は、給料から天引きされていたうえ、半分を会社が払っていました。国民健康保険にはこの会社負担がありません。同じ年収でも、手元から出ていく金額が倍近くに見えるのはこのためです。さらに国民健康保険料は前年の所得をもとに計算されます。退職した年は、働いていた頃の収入で計算された保険料が、収入が下がったあとに届く形になります。このずれが「払えない」という感覚の正体です。

国民健康保険料の中身は、多くの自治体で3つか4つの部品に分かれています。医療分、後期高齢者支援金分、40歳から64歳の人にかかる介護分、そして自治体によっては子ども・子育て支援金分です。それぞれに、所得に比例する「所得割」と、加入者1人あたりで一律にかかる「均等割」、世帯ごとにかかる「平等割」があります。東京23区のように平等割を置いていない自治体もあります。どの部品が下がるのかは制度によって違うので、そこを押さえておくと話が早くなります。

用語も先に整理しておきます。「軽減」とは、法律や国の基準で決まっていて、条件に当てはまれば役所が自動で適用してくれる値引きのことです。おもに均等割と平等割が対象になります。いっぽう「減免」とは、自治体が条例で独自に定めているもので、申請書を出して認められて初めて適用される値引きのことです。こちらは所得割が対象になることが多く、申請期限もあります。検索していると両方が「減免」とまとめて書かれていることが多いのですが、この2つは手続きの要不要がまったく違います。

もうひとつ知っておきたいのが、軽減や減免の判定には「世帯」の所得が使われるという点です。国民健康保険は世帯単位の制度なので、実際に加入していない世帯主(会社の健康保険に入っている親など)の所得も判定に含まれます。これを擬制世帯主と呼びます。本人の所得がゼロでも、同じ世帯に所得の多い人がいると軽減がかからないことがあるのは、この仕組みによるものです。世帯を分けるかどうかは住民票の扱いそのものなので、保険料だけを理由に動かすのは勧められません。窓口で影響を確かめてから判断してください。

申請しなくても下がる「法定軽減」の所得基準

まず確認したいのが、全国共通の基準で均等割と平等割が下がる法定軽減です。7割、5割、2割の3段階があり、世帯主と加入者全員の前年の所得の合計が基準を下回ると自動的に適用されます。令和8年度の基準は次のとおりです。

軽減割合 世帯の総所得金額等の合計がこの額以下
7割 43万円+(給与所得者等の数−1)×10万円
5割 43万円+(給与所得者等の数−1)×10万円+(31万円×被保険者数)
2割 43万円+(給与所得者等の数−1)×10万円+(57万円×被保険者数)

東京都中央区は、令和8年度の基準を次のように示しています。

世帯主と加入者全員の総所得金額等の合計が43万円+(給与所得者等の数-1)×10万円+(31万円×被保険者数)以下 出典: city.chuo.lg.jp

読み方のこつは3つあります。1つ目は「43万円」が基礎控除額であること。所得が43万円以下なら、単身世帯でも7割軽減に届きます。2つ目は、5割と2割は加入人数が多いほど基準額が上がること。家族4人で加入していれば、5割の基準は43万円に31万円×4人を足した金額まで広がります。3つ目は「給与所得者等の数」です。世帯の中に給与をもらっている人や年金を受け取っている人が2人以上いる場合だけ、1人につき10万円ずつ基準が上乗せされます。これは税制改正で給与所得控除と公的年金等控除が下がった分を打ち消すための調整で、1人しかいない世帯では上乗せはありません。

ここで注意したいのが、この「給与所得者等」に当てはまる収入の線引きです。中央区は給与収入が65万円を超える人としていますが、更新が追いついていない自治体のページでは55万円超と書かれていることがあります。金額そのものより、自分の住む市区町村の最新ページで確かめる習慣のほうが大事です。判定に使う所得は、確定申告や住民税の申告で役所が把握している金額です。

そして、法定軽減でいちばん多い取りこぼしは申請忘れではなく「所得の申告忘れ」です。所得がゼロでも、収入がなかったことを申告していないと、役所は所得を把握できず軽減を当てられません。フリーランスとして独立した直後で売上が立っていない人や、扶養から外れたばかりの人は、住民税の申告だけでも済ませておくと軽減が正しくかかります。判定は原則として年度の初日時点の世帯状況で行われ、年度の途中で加入した世帯は資格取得日の状況で判定されます。

子どもと出産にかかる軽減は、所得に関係なく効く

所得の多い少ないに関わらず当たる軽減もあります。代表が未就学児の均等割軽減です。令和4年4月から、小学校に上がる前の子どもにかかる均等割額が、一律で2分の1になりました。多子世帯かどうか、低所得かどうかの条件はありません。低所得の法定軽減がすでに効いている場合は、軽減後の残りの半分がさらに引かれます。7割軽減が当たっている未就学児なら、元の均等割の15パーセント分まで下がる計算です。申請は必要ありません。

自治体によっては、国の基準よりさらに踏み込んでいるところもあります。北九州市は、18歳に達する日以降の最初の3月31日までの子どもについて、子ども分の均等割額を10割軽減しています。こうした上乗せは市区町村が独自に条例で定めるものなので、隣の市では扱いが違います。子育て中で保険料が重いと感じているなら、住んでいる自治体のページを「子ども 均等割」で探してみる価値があります。

出産に関する軽減は令和6年1月に始まった比較的新しい制度です。国民健康保険に加入している人が出産する場合、出産予定月(または出産月)の前月から翌々月まで、あわせて4か月分の所得割額と均等割額が免除されます。双子以上の多胎妊娠なら、出産予定月の3か月前から計6か月分に広がります。対象になるのは妊娠85日、つまり妊娠4か月以上の出産で、死産、流産、早産、人工妊娠中絶の場合も含まれます。

この産前産後の軽減は届出が必要です。ただし出産予定日の6か月前から届け出ることができ、出産後に届け出ることもできます。母子健康手帳など出産予定日を確認できる書類と、単胎か多胎かが分かる書類を持って窓口へ行きます。出産後に届け出る場合は、出産した本人と子どもの関係が分かる書類が必要になります。産休という考え方が会社員にしかないと思われがちですが、国民健康保険にも同じ趣旨の仕組みが用意されている、と覚えておいてください。なお世帯の保険料がすでに上限額に達している場合は、軽減額が出ないこともあります。

会社都合で辞めた人の「非自発的失業者軽減」

退職して国民健康保険に入る人にとって、影響がいちばん大きいのがこの制度です。倒産や解雇、雇い止めで職を失った人が、在職中と同じくらいの負担で国民健康保険に入れるようにする目的で、平成22年4月から続いています。効き方が独特で、前年の給与所得を実額の100分の30とみなして保険料を計算し直します。年収400万円だった人なら、給与所得を3割に圧縮したうえで保険料が決まるので、所得割が大きく下がります。

対象になるのは、離職時に65歳未満で、雇用保険の特定受給資格者または特定理由離職者にあたる人です。判定は、ハローワークで受け取る雇用保険受給資格者証、または雇用保険受給資格通知に書かれた離職理由のコードで行われます。特定受給資格者は11、12、21、22、31、32、特定理由離職者は23、33、34です。自己都合で辞めた場合のコードはここに含まれません。雇用保険に入っていなかった人や、離職時に65歳以上だった人も、この軽減の対象外になります。

軽減が効く期間は、離職日の翌日から、その翌年度の末日までです。最大でおよそ2年分になります。3月に離職すれば実質的に2年分に近く、翌年2月の離職なら1年と少しになる、という具合に、辞めた月によって長さが変わります。もうひとつ見落としやすいのが、医療費が高額になったときの自己負担限度額の判定にも、同じ100分の30が使われる点です。保険料だけでなく、入院や手術で高額療養費を使うときの区分にも効きます。山口市はこの扱いを次のように説明しています。

高額療養費などの自己負担限度額の判定についても、非自発的失業者の給与所得を100分の30として算定します。 なお、この場合の低所得(市民税非課税)世帯は、実際の市民税非課税判定によらず、原則、「43万円+56万円×(被保険者数+特定同一世帯所属者)+10万円×(給与等所得者等の数-1)」を下回る世帯となります。 出典: city.yamaguchi.lg.jp

手続きで気をつけたいのが、雇用保険受給資格通知には2種類あるという点です。雇用保険説明会のときに渡される全件版と、失業の認定時に渡される最新処理状況版があり、軽減の届出に使えるのは全件版です。窓口で「これでは判定できません」と言われて出直すことになりやすいので、持ち出す前に離職理由のコードが載っているかを見てください。また、受給資格者証の右上に「特」や「高」と表示されている特例受給資格者と高年齢受給資格者は、この軽減の対象になりません。

市区町村は対象者を自分で把握できないため、届出がないかぎり軽減はかかりません。ただし軽減の対象期間内であれば、届け出た時点からさかのぼって適用されます。退職から何か月か経ってしまった人も、まだ間に合う可能性があります。独立の準備を進めていて、会社都合での退職になりそうだと分かっている人は、離職票を受け取った日に役所へ寄るくらいの段取りで構えておくと無駄がありません。

申請して初めて下がる「条例減免」の型

ここからが、黙っていると動かない領域です。災害や失業、事業の休廃止といった事情で保険料を納められないとき、市区町村は条例に基づいて減免を判断します。基準も割合も自治体ごとに違いますが、型はおおむね共通しています。北九州市が公表している区分を例にすると、次のような並びになります。

事情 基準の例 減る範囲の例
災害 風水害や火災などで世帯の財産が20パーセント以上の被害 発生月から12か月以内の保険料の40から100パーセント
低所得 その年の見込み総所得が5割軽減の基準以下 保険料年額の20パーセント
所得減少 失業や事業の休廃止で前年比30パーセント以上減り、かつ300万円以下 所得割額の40から80パーセント
給付制限 刑事施設への収容などで給付を受けられない期間が1か月超 その期間の保険料月額の全額
旧被扶養者 家族の後期高齢者医療制度への移行で国保に移った65歳以上の人 所得割の全額と均等割の半額を2年間
多子 軽減判定所得320万円以下で18歳未満の子を2人以上扶養 2人目から1人につき一定額を所得割から控除

この表でフリーランスや独立直後の人に効くのは、3行目の所得減少です。会社を辞めた、取引先を失った、廃業した、といった理由で今年の所得が前年から3割以上落ち込み、金額としても300万円以下に収まる見込みなら、所得割の一部が減る可能性があります。非自発的失業者軽減が使えない自己都合退職の人にとっては、ここが実質的な受け皿になります。ただし「見込み」で判断するため、今年どれくらいの所得になるのかを自分で説明する資料が必要です。帳簿の写し、売上台帳、契約が切れたことが分かる書面などを揃えておくと話が早く進みます。

低所得の減免は、法定軽減の2割にも届かなかった世帯を拾うためのものではなく、逆に法定軽減がかかっていない世帯を対象にしている点が特徴です。北九州市の例では、その年の見込み所得が5割軽減の基準以下になりそうなのに、前年所得が高くて法定軽減の対象外という世帯に年額の20パーセントを充てています。前年は普通に稼いでいて、今年から収入が落ちた人のための枠、と理解すると位置づけが分かります。

多子の減免も見落とされがちです。18歳未満の子どもを2人以上扶養していて、世帯の軽減判定所得が320万円以下なら、2人目以降の子について所得割が減ります。未就学児の均等割軽減とは別枠なので、小学生や中学生の子がいる世帯にも効きます。ここも自治体の独自制度なので、同じ条件でも引っ越し先では使えないことがあります。

そして減免全体に共通する落とし穴が、申請期限です。北九州市は年度末の3月31日までとしています。納期限を過ぎた分は減免の対象から外す自治体が多く、放置した末に相談に行っても「もう手遅れ」となる部分が出ます。保険料の全体像が見えた時点で、払えないと分かったらすぐ相談する。これが減免をいちばん確実に取りに行く方法です。

後期高齢者医療制度への移行にともなう軽減

家族が75歳になったのをきっかけに、保険料が上がったように見えることがあります。これは、それまで国民健康保険に一緒に入っていた人が後期高齢者医療制度に移ったことで、世帯の構成が変わり、平等割の分担や軽減の判定が動くためです。この段差をならすための措置が用意されています。

ひとつが特定世帯の軽減です。後期高齢者医療制度への移行によって国民健康保険の加入者が1人だけになった世帯は、医療分と後期高齢者支援金分などの平等割額が、移行後5年間は2分の1、その後3年間は4分の1に軽くなります。ただし、その間に世帯主が変わったり、新たに加入者が増えたりすると途中で外れます。8年間必ず続く制度ではない、という点は押さえておいてください。

もうひとつが旧被扶養者の減免です。会社の健康保険に入っていた本人が75歳になって後期高齢者医療制度へ移ると、その扶養に入っていた家族は国民健康保険に入り直すことになります。このうち65歳以上の人については、所得割額が当分の間免除され、均等割額は資格を取得した月から2年間は半額までになります。こちらは申請が必要です。扶養されていた立場から突然「加入者本人」になるため、保険料の負担感がいちばん急に変わる場面で、放っておくと取りこぼしやすいところです。

なお、軽減の判定には特定同一世帯所属者という考え方も出てきます。国民健康保険から後期高齢者医療制度に移ったあとも、同じ世帯に住み続けている人のことです。この人の所得と人数は、残された世帯の法定軽減の判定に引き続き含めて計算されます。移行した家族の所得があるせいで軽減が外れる、という誤解を招きやすい部分ですが、実際にはむしろ判定を安定させるための仕組みです。

申請の手順と、持っていく書類

制度の話が長くなったので、実際に動くときの順番にまとめ直します。窓口は住んでいる市区町村の国民健康保険担当課です。区がある市なら区役所の国保年金課にあたります。

1つ目にやることは、手元の納付書か決定通知書を開いて、内訳を見ることです。医療分、支援金分、介護分の別、所得割と均等割の別、そして軽減が適用されているかどうかが書かれています。すでに7割や5割の表示があれば法定軽減は効いています。何も書かれていないなら、所得の申告が済んでいるかをまず疑ってください。

2つ目は、自分が当てはまりそうな制度を1つに絞ることです。会社都合の退職なら非自発的失業者軽減、出産予定があるなら産前産後の軽減、どちらでもないが今年の所得が大きく落ちるなら条例の所得減少減免、という具合に入口が違います。併用できる組み合わせもありますが、窓口では制度ごとに別の届出書を書くことになります。

3つ目が書類の準備です。非自発的失業者軽減なら雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知の全件版、産前産後なら母子健康手帳、所得減少の減免なら今年の収入見込みを説明できる帳簿や契約書類が中心になります。いずれも本人確認書類とマイナンバーが分かるもの、世帯主の口座情報を求められることが多いので、まとめて持って行くと二度手間になりません。

4つ目が相談の切り出し方です。「保険料が高い」ではなく「この事情でこの制度に当てはまるか見てほしい」と伝えると、担当者は判定に必要な情報をすぐ揃えられます。減免の可否は書類の出し方で変わるものではありませんが、判断に必要な材料が足りないまま不該当とされるのはもったいないところです。税務や保険の個別の取り扱いは、金額や世帯の事情で結論が変わります。ここに書いた基準はあくまで代表的な自治体の例なので、最終的な適用の可否は必ず窓口で確かめてください。

窓口へ行く時期にもこつがあります。国民健康保険料の決定通知書は、多くの自治体で6月ごろにまとめて発送されます。この直後は窓口が混み合い、相談に時間をかけにくくなります。急ぎでないなら発送から少し時間を置く、逆に非自発的失業者軽減のように離職の直後から効くものは発送を待たずに届け出る、と使い分けると待ち時間の無駄が減ります。電話で「この制度の相談をしたい」と伝えて必要書類を先に聞いておけば、一度で終わる確率が上がります。オンラインで申請を受け付けている自治体も増えているので、公式サイトの案内も確かめてください。

減免に当てはまらなかった場合でも、打つ手はあります。納付が難しいときは分割納付や徴収の猶予について相談できます。連絡せずに滞納すると、有効期間の短い被保険者証に切り替わったり、延滞金が積み上がったりします。国民健康保険のルールそのものは市区町村が条例で定めており、全国共通の法令は電子政府の総合窓口であるe-Govで確認できます。

減免を考える前に、そもそも国民健康保険が最安かを確かめる

減免の条件を調べ始める人の多くは、退職して国民健康保険に入ったばかりです。ただ、退職後の健康保険には選択肢が3つあり、国民健康保険はそのうちのひとつにすぎません。全国健康保険協会(協会けんぽ)は、退職後の選び方を次のように整理しています。

選択肢 手続き先 加入の条件
健康保険の任意継続 住んでいる都道府県の協会けんぽ支部 退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あること。退職日の翌日から20日以内に手続きすること
国民健康保険 住んでいる市区町村の国民健康保険担当課 市区町村の担当課に確認する
家族の健康保険の被扶養者 家族の勤務先 家族が加入している健康保険の扶養の条件を満たすこと

任意継続とは、退職前に入っていた会社の健康保険に、最長で2年間そのまま残る仕組みのことです。保険料はそれまで会社が半分負担していた分も自分で払うことになるため、在職中の控除額のおよそ2倍になります。ただし上限があり、協会けんぽの場合は退職時の標準報酬月額が32万円を超えていても、32万円として計算されます。給与が高かった人ほど、この頭打ちの効果で国民健康保険より安くなる可能性があります。

いっぽう国民健康保険は、世帯の人数と前年の所得で決まります。扶養という考え方がないため、家族の人数分だけ均等割が積み上がります。独身で前年の所得が低い人は国民健康保険が有利になりやすく、家族が多く前年の所得が高い人は任意継続が有利になりやすい、というのが大まかな傾向です。そして本記事で説明してきた減免や軽減は、国民健康保険を選んだ場合にだけ使えるものです。任意継続には所得が下がったことを理由にした減免の仕組みがありません。

判断を難しくしているのが、期限のずれです。任意継続の申し出は退職日の翌日から20日以内で、これを過ぎると原則として選べなくなります。いっぽう国民健康保険の減免は、金額が分かってから相談しても間に合う場面があります。つまり順番としては、まず退職から20日以内に任意継続と国民健康保険のどちらが安いかを比べ、国民健康保険を選んだあとで減免の相談に進むのが無理のない流れです。任意継続の保険料の計算方法や納付の仕組みは全国健康保険協会が公表しています。国民健康保険の概算額は市区町村の窓口や公式サイトの試算ページで出せるので、退職前の段階で両方を並べておくと迷いません。

家族の健康保険の被扶養者になる道も忘れずに検討してください。被扶養者には保険料の負担がありません。独立直後で収入の見込みが立たない時期に、配偶者や親の扶養に入り、売上が育ってから外れるという組み立て方もあります。扶養に入れるかどうかの条件は加入している健康保険ごとに違うので、家族の勤務先に確認することになります。

収入が落ちた年をどう乗り切るかという視点

ここまでは減らす話でしたが、保険料は所得に連動するため、翌年の負担は今年の稼ぎ方で決まります。退職した年に一度きりの重さを受け止めたあと、翌年以降をどう組み立てるかまで見ておくと判断がぶれません。

独立して1年目に起きがちなのが、収入がゼロに近い数か月と、まとまった入金がある月が交互に来る状態です。この形だと、年間の所得はそれほど大きくないのに、月々の資金繰りが苦しくなります。減免や猶予は、この谷を越えるための道具として使うのが本来の姿です。逆に言えば、谷が来ることが分かっているなら、先に相談しておけば選べる手が増えます。

もうひとつ、独立後の収入をどう積むかという現実的な話があります。会社を辞めてから仕事を探すと、収入のない期間がそのまま保険料の負担として跳ね返ります。在職中に少しずつ実績を作っておいた人は、辞めた月から売上が立つので、この谷が浅くて済みます。どんな仕事にどれくらいの相場があるのかを知りたい場合は、職種ごとの単価をまとめた著述家,記者,編集者の年収・単価相場ソフトウェア作成者の年収・単価相場が目安になります。自分の職種の相場が分かると、月にいくら受注すれば保険料と年金を払っても手元が残るのかを逆算できます。

保険料そのものの扱いにも触れておきます。国民健康保険料は、確定申告のときに社会保険料控除として全額が所得から差し引けます。事業の経費ではなく所得控除という位置づけなので、帳簿のつけ方が変わります。この線引きは間違えやすいところなので、個人事業主の保険料は経費にできる?仕訳と確定申告の方法で仕訳の考え方を確認しておくと申告のときに迷いません。あわせて、会社員時代の団体保険が退職で切れることも見落とされがちです。子育て中の世帯がどこまで保障を持つべきかは30代の生命保険おすすめ|子育て世代の保障設計が参考になります。

市場を長く見てきた立場からの観察

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、独立の可否を分けるのは度胸ではなく、固定費の把握です。保険料と年金、住民税を合わせた年間の金額を先に書き出せている人は、売上が読めない月が来ても慌てません。逆に、ここを曖昧にしたまま辞めた人は、納付書が届くたびに判断が短期的になり、単価の低い仕事を取って消耗する流れに入りやすい傾向があります。減免の制度を知っておく意味は、金額が数万円下がること以上に、この「慌てない状態」を作れることにあります。

もうひとつ、長く続いている人に共通するのは、単発の作業を数えるのではなく、任せると楽だと思われる関係を作っている点です。同じ作業量でも、継続して頼まれる相手が数社あるだけで、月ごとの収入の振れ幅が小さくなります。振れ幅が小さいということは、翌年の保険料が読めるということでもあります。

仲介手数料が引かれない直接取引の価値も、ここに効いてきます。同じ予算を用意した依頼者は、中間マージンが乗らなければその分だけ多く頼めます。受け手の側は、同じ仕事量でも手数料0%のぶん手取りが厚くなります。運営者として見てきた限りでは、この差は1件あたりの金額としてはささやかでも、1年を通すと「保険料を払っても残る」かどうかの分かれ目になっていることが少なくありません。額面を追うより、手取りの厚みを積むほうが、結果として固定費に強い働き方になります。

職種の選び方についても触れておきます。市場全体では、企業の業務にAIを組み込む支援の需要が伸びており、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のように相談から設計までを請け負う仕事が増えています。手を動かす領域でもアプリケーション開発のお仕事は継続案件になりやすく、月ごとの収入が安定しやすい分野です。書く仕事から入るなら、文書の型を身につけておくと発注側の信頼を得やすく、ビジネス文書検定のような資格は、実務経験が浅い段階で提案の裏づけになります。

保険料の減免は、困ったときに使える正当な仕組みであって、後ろめたいものではありません。条件に当てはまるなら使い、当てはまらないなら早めに相談する。そのうえで、翌年の保険料を自分で読める働き方に寄せていく。この順番で考えると、納付書が届いた日の判断が落ち着いたものになります。

よくある質問

Q. 国民健康保険料の軽減は自分で申請しないと受けられませんか?

所得が基準を下回ることで受けられる7割・5割・2割の法定軽減と、未就学児の均等割軽減は申請不要で自動的に適用されます。ただし所得の申告をしていないと役所が判定できず軽減がかかりません。収入がなかった年も住民税の申告は済ませてください。会社都合の退職や出産、所得の大幅な減少による減免は、いずれも届出や申請が必要です。

Q. 自己都合で退職した場合も保険料は下がりますか?

非自発的失業者軽減は倒産や解雇、雇い止めが対象で、自己都合退職は含まれません。ただし自治体の条例による減免には、その年の所得が前年から3割以上減り、かつ一定額以下になる見込みの世帯を対象にした枠があります。北九州市では前年比30パーセント以上減かつ300万円以下が基準です。基準は自治体ごとに違うので窓口で確認してください。

Q. 非自発的失業者軽減はいつまで効きますか?

離職日の翌日から、その翌年度の末日までです。最大でおよそ2年分になり、離職した月によって長さが変わります。届出が遅れても、対象期間内であればさかのぼって適用されます。届出にはハローワークで交付される雇用保険受給資格者証か、雇用保険受給資格通知の全件版が必要です。最新処理状況版では手続きできないので注意してください。

Q. 出産予定がある場合、いつ届け出ればよいですか?

出産予定日の6か月前から届け出ることができ、出産後の届出も可能です。出産予定月の前月から翌々月までの4か月分、多胎妊娠なら出産予定月の3か月前から6か月分の所得割額と均等割額が免除されます。妊娠85日以上の出産が対象で、死産や流産の場合も含まれます。母子健康手帳など予定日と単胎か多胎かが分かる書類を持参してください。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月3日最終更新:2026年9月23日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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