管理会計の勉強方法|学ぶ順番と仕事での使い方


この記事のポイント
- ✓資格の使い方に分けて解説します
- ✓簿記と原価計算から始め
- ✓意思決定の計算へ進む流れと
管理会計の勉強方法を調べている人の多くは、会社で数字を使って判断する場面が増えた、あるいは資格試験の科目として避けて通れなくなった、という事情を抱えているはずです。結論から書くと、管理会計は「簿記と原価計算で数字の作られ方を知る」「損益分岐点と予算の考え方で数字を読む」「意思決定の計算で数字を使って選ぶ」の順に積み上げると、遠回りせずに身につきます。この記事では、管理会計とは何かを確かめたうえで、学ぶ順番、各段階でつまずきやすい点、手を動かして覚える練習の仕方、資格の使い方、仕事での生かし方までを順に説明します。
管理会計と財務会計の違いを最初に押さえる
勉強を始める前に、管理会計が何のための会計なのかをはっきりさせておきます。ここがあいまいなままだと、教科書の内容が何の役に立つのかが見えず、途中で手が止まります。
会計には大きく分けて2つの種類があります。
| 項目 | 財務会計 | 管理会計 |
|---|---|---|
| 誰のための会計か | 株主、銀行、税務署など会社の外の人 | 経営者、部門の責任者など会社の中の人 |
| 目的 | 会社の成績と財産の状態を外に報告する | 計画を立て、結果を確かめ、判断に役立てる |
| 決まり | 会計の基準や法律に沿って作る | 会社ごとに必要な形で作ってよい |
| 代表的な資料 | 損益計算書、貸借対照表 | 予算書、部門別の損益、損益分岐点の分析 |
財務会計は、決まった形で外に報告するための会計です。一方の管理会計は、会社の中で「来期はいくら売れば利益が出るか」「この商品を続けるべきか」「どの部門が利益を生んでいるか」といった判断をするための会計です。決まった書式があるわけではなく、判断に必要な形に数字を組み直すのが管理会計の仕事だといえます。
ソフトウェアの開発に例えると、財務会計は外部に公開するAPIの仕様のようなもので、決まった形式を守ることが求められます。管理会計は社内のダッシュボードに近く、意思決定に必要な指標を、必要な粒度で見られるように設計するものです。どちらも元になるデータは同じ帳簿ですが、使う目的が違うため、切り出し方が変わります。
この違いを知っておくと、管理会計の勉強で「なぜこの分け方をするのか」「なぜこの計算をするのか」と考える習慣がつきます。管理会計の教科書に出てくる計算は、すべて何かの判断のために作られた道具です。道具の使い道を意識しながら学ぶことが、管理会計の勉強方法の土台になります。
管理会計が求められる場面
管理会計の知識が求められるのは、経理の担当者だけではありません。営業の責任者が利益の出る値引きの範囲を考えるとき、開発の責任者が人件費と工数から案件の採算を確かめるとき、経営者が新しい事業に投資するかどうかを決めるときなど、数字で判断する場面すべてに関わります。
資格試験の世界でも、管理会計は重要な科目です。国家資格の公認会計士の試験では、公認会計士法で試験の科目が決められていて、管理会計論は短答式試験の科目の1つになっています。
短答式による試験は、次に掲げる科目について行う。 一 財務会計論(簿記、財務諸表論その他の内閣府令で定める分野の科目をいう。以下同じ。) 二 管理会計論(原価計算その他の内閣府令で定める分野の科目をいう。以下同じ。) 出典: laws.e-gov.go.jp
同じ条文では、論文式試験の「会計学」が財務会計論と管理会計論をあわせたものと定められています。管理会計論が原価計算を含む分野として扱われていることからも分かるとおり、管理会計を学ぶうえで原価計算は欠かせない入口です。
日本商工会議所の簿記検定でも、2級から工業簿記が試験科目に入ります。日本商工会議所の案内では、工業簿記を企業内部での部門別や製品別の材料、燃料、人力などの資源の投入を記録し計算する技能で、経営管理に必須の知識だと説明しています。1級になると、工業簿記と原価計算がそれぞれ独立した科目として出題されます。
つまり、管理会計を学ぶ道は、仕事で数字を使う人にとっても、資格を目指す人にとっても、簿記と原価計算から始まるということです。
学ぶ順番の全体像
管理会計の勉強方法で最も大切なのは、学ぶ順番です。順番を間違えると、計算の意味が分からないまま公式を覚えることになり、少し形を変えた問題が出ると手が止まります。おすすめの順番は次のとおりです。
- 簿記の基礎(仕訳と決算書の仕組み)
- 原価計算の基礎(材料費、労務費、経費の分け方と、製品の原価の計算)
- 変動費と固定費の考え方、損益分岐点の分析
- 予算の作り方と、予算と実績の比較(差異の分析)
- 意思決定のための計算(差額原価、設備投資の評価)
- 業績の評価と指標の設計(部門別の損益、KPI)
1と2は、数字がどう作られるかを知る段階です。3と4は、作られた数字を読む段階です。5と6は、数字を使って判断し、組織の動きにつなげる段階です。
この順番は、プログラミングの学習に似ています。最初に変数や条件分岐といった基本の文法を覚え、次に小さなプログラムを読み、最後に自分で設計する、という流れです。基本の文法を飛ばして設計の本を読んでも、書かれていることが頭に入りません。管理会計でも、簿記と原価計算の基礎を飛ばして経営分析の本を読むと、用語の意味をつかめずに挫折しがちです。
それぞれの段階にかける時間の目安は、すでに持っている知識によって変わります。経理の経験がある人や簿記3級を持っている人は、1を短く済ませて2から始められます。数字に苦手意識がある人は、1に時間をかけても遠回りにはなりません。
第1段階:簿記と原価計算で数字の作られ方を知る
最初の段階では、会社の数字がどう記録され、どう集計されるのかを学びます。ここで身につけたいのは、次の3点です。
- 取引が仕訳として記録され、決算書にまとめられる流れ
- 費用を材料費、労務費、経費に分ける考え方
- 製品1つあたりの原価を計算する手順
簿記の基礎は、日本商工会議所の簿記検定の3級の範囲がちょうどよい目安になります。仕訳の考え方と、損益計算書と貸借対照表のつながりが分かれば、管理会計に進む準備は十分です。
原価計算の基礎は、簿記検定2級の工業簿記の範囲が目安です。日本商工会議所は、原価計算の基礎だけを学びたい人向けに「原価計算初級」というネット試験も実施しています。試験の内容とサンプル問題は、日本商工会議所の原価計算初級のページで確かめられます。簿記の上の級に進む前に、原価計算の考え方だけを先に確かめたい人には入りやすい試験です。
この段階でつまずきやすいのは、勘定科目の多さに圧倒されることです。最初からすべてを覚えようとせず、よく出てくる科目から順に、実際の取引の場面を思い浮かべながら覚えていきます。たとえば材料を買ったとき、それを工場で使ったとき、製品が完成したとき、それを売ったとき、と流れに沿って仕訳を追うと、科目の意味が自然とつながります。
原価計算は、まず「どの費用がどの製品にかかったか」を考える練習から始めます。材料費のように製品ごとに直接分かる費用と、工場の電気代のように複数の製品に共通してかかる費用を分け、共通の費用をどう配るかを考えるのが原価計算の中心です。この「配り方」が、後の段階で何度も出てくる考え方の基礎になります。
原価計算の種類を整理しておく
原価計算の勉強に入ると、名前の似た計算方法がいくつも出てきて混乱しやすくなります。ここで一度整理しておくと、教科書のどこを読んでいるのかを見失わずに済みます。
| 計算方法 | どんな場面で使うか | 考え方 |
|---|---|---|
| 個別原価計算 | 注文ごとに仕様が違う製品(受注生産、システム開発の案件など) | 注文ごとに原価を集める |
| 総合原価計算 | 同じ製品を続けて大量に作る場合(食品、日用品など) | 一定期間の原価を、作った数で割る |
| 標準原価計算 | 原価の目標を決め、実際と比べたい場合 | あらかじめ決めた標準の原価と実際の原価を比べる |
| 直接原価計算 | 利益の計画や、損益分岐点の分析をしたい場合 | 費用を変動費と固定費に分けて利益を出す |
個別原価計算と総合原価計算は、製品の作り方の違いによる分け方です。注文ごとに中身が違うなら個別、同じものを繰り返し作るなら総合、と覚えておけば迷いません。システム開発の受託のように案件ごとに中身が違う仕事は、個別原価計算の考え方に近くなります。
標準原価計算は、原価の管理のための計算です。たとえば製品1つを作るのに材料をどれだけ使い、何分かかるのが標準かを決めておき、実際にかかった量や時間と比べます。差が出たら、その理由を調べて改善につなげます。後で説明する予算と実績の差異分析と、考え方の根は同じです。
直接原価計算は、管理会計の中心となる考え方の1つです。財務会計で作る損益計算書では、固定費の一部が製品の原価に含まれますが、直接原価計算では固定費をその期間の費用としてまとめて扱います。こうすると、売上が増えたときに利益がどう増えるかが見えやすくなり、次の段階で学ぶ損益分岐点の分析にそのままつながります。
日本の原価計算の考え方の土台には、企業会計審議会が昭和37年に定めた「原価計算基準」があります。古い基準ですが、現在も原価計算の教科書の多くはこの基準を出発点にしています。勉強が進んだら、一度目を通しておくと、教科書の説明の背景が分かります。
第2段階:変動費と固定費、損益分岐点を理解する
数字の作られ方が分かったら、次は数字を読む段階に進みます。ここで最初に学ぶのが、費用を変動費と固定費に分ける考え方です。
変動費とは、売れた数や作った数に比例して増える費用のことで、材料費や販売の手数料などが当たります。固定費とは、売れた数にかかわらず一定にかかる費用のことで、事務所の家賃や正社員の給与などが当たります。この2つに分けると、売上がいくらになれば利益が出るのかを計算できるようになります。
簡単な例で確かめます。ある商品の販売価格が1個あたり2,000円、変動費が1個あたり1,200円、1か月の固定費が40万円だとします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 販売価格 | 1個あたり2,000円 |
| 変動費 | 1個あたり1,200円 |
| 1個あたりの貢献利益(販売価格から変動費を引いた額) | 1個あたり800円 |
| 1か月の固定費 | 40万円 |
| 損益分岐点の販売数(固定費を1個あたりの貢献利益で割った数) | 500個 |
1個売るごとに800円が固定費の回収に回るので、固定費の40万円を回収するには500個を売る必要があります。500個を超えた分から利益が出ます。この500個にあたる売上の100万円を、損益分岐点の売上高といいます。
損益分岐点の考え方は、管理会計の中でも最もよく使われる道具です。値上げしたら損益分岐点がどう動くか、固定費を減らしたらどうなるか、といった「もしも」の計算ができるようになると、数字で判断する力が一気に伸びます。
この段階でつまずきやすいのは、公式を暗記して終わりにすることです。損益分岐点の公式を覚えても、なぜその式になるのかが分かっていないと、条件が少し変わった問題に対応できません。上の例のように、1個売るごとに何円が残り、それがいくつ集まれば固定費に届くのか、という筋道で考える癖をつけてください。
損益分岐点とあわせて覚えたい指標
損益分岐点の考え方が分かったら、関連する指標もあわせて覚えておくと、数字を読む力が広がります。ここでは、前の節の例(販売価格2,000円、変動費1,200円、固定費40万円)を使って、代表的な指標を確かめます。
1つ目は貢献利益率です。売上のうち、固定費の回収と利益に回る割合のことで、1個あたりの貢献利益を販売価格で割って求めます。例では800円を2,000円で割って40%です。売上が1万円増えると、そのうち4,000円が固定費の回収と利益に回る、という意味になります。
2つ目は安全余裕率です。今の売上が、損益分岐点の売上からどれだけ離れているかを示す割合で、売上から損益分岐点の売上を引き、それを売上で割って求めます。例で毎月800個を売っているなら、売上は160万円、損益分岐点の売上は100万円なので、安全余裕率は60万円を160万円で割って37.5%です。売上が37.5%減るまでは赤字にならない、という意味です。この割合が高いほど、売上の落ち込みに強い状態だといえます。
3つ目は営業レバレッジの考え方です。固定費の割合が大きい事業ほど、売上が少し増えただけで利益が大きく増え、逆に売上が少し減っただけで利益が大きく減ります。固定費が大きい事業は、損益分岐点を超えたあとの伸びが大きい一方で、売上が落ちたときの影響も大きいということです。
これらの指標は、計算の手順そのものより、何を表しているのかを言葉で説明できることが大切です。「安全余裕率が37.5%なので、売上が4割近く落ちるまでは赤字になりません」と言える人は、会議で数字の意味を伝える役割を担えます。
第3段階:予算と実績を比べ、差の理由を探す
損益分岐点が分かったら、次は予算の考え方に進みます。予算とは、会社がこれからの期間に、どれだけ売り、どれだけ費用を使い、どれだけ利益を出すかを数字で決めた計画のことです。
予算を立てたら、期間が終わったあとに実績と比べます。予算どおりにいかなかった部分を差異といい、差異の理由を分析することを差異分析と呼びます。たとえば売上が予算に届かなかったとき、その理由が「売れた数が少なかった」のか「値引きで単価が下がった」のかを分けて考えると、次に打つ手が変わります。
| 差異の種類 | 意味 | 次に考えること |
|---|---|---|
| 数量の差異 | 売れた数が予算と違った | 集客や販売の方法を見直す |
| 価格の差異 | 1個あたりの販売価格が予算と違った | 値引きの基準や価格の決め方を見直す |
| 費用の差異 | 使った費用が予算と違った | どの費用がなぜ増えたかを調べる |
差異分析の計算そのものは難しくありません。大切なのは、数字の差を見つけて終わりにせず、その裏にある現場の動きを言葉で説明できることです。「売上が予算より10%少なかった」ではなく、「新規の問い合わせが予算より少なく、販売数が足りなかった」と説明できて初めて、差異分析が判断に役立ちます。
この段階は、仕事で管理会計を使う人にとって最も身近な内容です。月次の会議で予算と実績の比較表を見る機会がある人は、勉強した内容を実際の資料で確かめてみてください。教科書の例題より、自分の会社の数字のほうが理解は深まります。
第4段階:意思決定と業績評価の計算に進む
最後の段階では、数字を使って選ぶための計算を学びます。代表的なのが、差額原価の考え方です。
差額原価とは、ある選択をしたときとしなかったときで、変わる費用のことです。たとえば、外部の会社から部品を買うか、自社で作るかを決めるとき、比べるべきなのは「どちらを選んでも変わらない費用」ではなく「選び方によって変わる費用」です。工場の家賃のように、どちらを選んでも払い続ける費用は、判断から外して考えます。
この考え方は、日常の判断にも当てはまります。すでに払ってしまって取り戻せない費用を埋没原価といい、判断のときには考えに入れないのが原則です。「ここまでお金をかけたから続けたい」という気持ちは自然ですが、管理会計の考え方では、これから先に増える収入と費用だけで判断します。
設備投資の評価も、この段階で学びます。新しい機械やシステムに投資するとき、何年で投資額を回収できるか、将来の収入を今の価値に直すとどうなるか、といった計算をします。最初は回収期間の考え方から入り、慣れてきたら将来のお金を今の価値に直す計算に進むと無理がありません。
業績の評価では、部門ごとの損益を出し、どの部門が利益を生んでいるかを確かめる方法を学びます。ここで、第1段階で学んだ「共通の費用をどう配るか」が再び出てきます。共通の費用の配り方によって部門の損益の見え方が変わるため、配り方を決めるときは、部門の責任者が自分で管理できる費用かどうかを意識します。
学んだ内容を職場の資料で確かめる
4つの段階を学んだら、自分の職場の資料で確かめる時間を作ってください。教科書の例題は、計算しやすいようにきれいな数字で作られています。実際の会社の数字は、費用の分け方があいまいだったり、部門の区切りが組織の都合で決まっていたりして、教科書どおりにはいきません。そのずれに気づくことが、管理会計を使える力に変わる一歩です。
職場の資料を見るときは、次の3つの問いを持って読みます。
- この資料は、誰の、どんな判断のために作られているか
- 費用は変動費と固定費に分けられているか。分けられていないなら、自分で分けるとどうなるか
- 予算と実績の差は、数量、価格、費用のどれから生まれているか
1つ目の問いは、管理会計と財務会計の違いを思い出すためのものです。同じ売上の数字でも、経営者向けの資料と部門の責任者向けの資料では、切り出し方が違うはずです。2つ目と3つ目の問いは、第2段階と第3段階で学んだ内容をそのまま当てはめるものです。
社内の資料を外に持ち出すことはできないため、確かめた内容は自分のメモとして残し、数字そのものではなく考え方を記録しておくと、後で見返すときに役立ちます。
手を動かして覚える練習の仕方
管理会計は、読むだけでは身につきません。自分で数字を入れて計算し、結果がどう変わるかを確かめることで、初めて使える知識になります。最も手軽な練習の道具は、表計算ソフトやスプレッドシートです。
練習の手順の例を挙げます。
- 損益分岐点の例題を、表計算ソフトに入力する(販売価格、変動費、固定費、販売数)
- 利益を計算する式を自分で組む
- 販売価格や固定費を変えて、利益と損益分岐点がどう動くかを確かめる
- 予算と実績の表を作り、差異を自動で計算する列を加える
- 自分の家計や、副業の収支を同じ形で整理してみる
3つ目の「値を変えて動きを見る」練習が特に大切です。販売価格を1割上げると損益分岐点の販売数がどれだけ下がるか、固定費を2割減らすとどうなるか、といった変化を自分の目で確かめると、教科書の説明が実感として理解できます。
5つ目の練習もおすすめです。家計や副業の収支を、変動費と固定費に分けて整理してみると、管理会計の考え方が身近なものになります。副業で仕事を受けている人なら、1件あたりの作業時間と報酬から、月にいくつの案件を受ければ必要な収入に届くかを計算できます。これは損益分岐点の考え方そのものです。
プログラミングの経験がある人なら、簡単な計算のプログラムを書いてみるのもよい練習になります。条件を変えて何度も計算を回せるようにしておくと、意思決定の計算の感覚が早く身につきます。
教材の選び方と学習計画の立て方
教材は、目的によって選び方が変わります。
| 目的 | 選ぶ教材の方向 |
|---|---|
| 仕事で数字を読めるようになりたい | 図や例が多い入門書と、自分の会社の資料 |
| 簿記検定を受けたい | 検定の級に合わせたテキストと問題集 |
| 公認会計士や中小企業診断士の試験を受けたい | 試験の範囲に沿った講座や専門のテキスト |
仕事で使いたい人は、最初の1冊を入門書にし、計算の練習は表計算ソフトで行う組み合わせが効率的です。資格を目指す人は、試験の範囲と形式に合った教材を選び、過去の問題を繰り返し解くことが中心になります。日本商工会議所の簿記検定の1級は、試験問題が後日、検定のホームページで公開されているため、本番の形式を確かめるのに使えます。
学習計画は、1週間単位で立てると続けやすくなります。たとえば次のような配分です。
- 平日の3日間は、テキストを読んで新しい内容を学ぶ(1日30分)
- 平日の2日間は、問題を解いて復習する(1日30分)
- 週末の1日は、表計算ソフトで計算を組み、1週間の内容を確かめる(1時間)
毎日少しずつでも触れ続けることが、長い時間をまとめて取るより効果があります。仕事で疲れた日は、問題を1問解くだけでもかまいません。途切れさせないことを優先してください。
計画を立てるときは、ゴールの時期から逆算するのも1つの方法です。たとえば簿記検定2級を受けると決めたら、試験日から逆算して、商業簿記と工業簿記にそれぞれ何週間を使うかを先に決めます。工業簿記は原価計算の考え方そのものなので、管理会計を学びたい人は工業簿記に多めの時間を配分すると、試験の後にも役立つ知識が残ります。資格を目指さない人も、「3か月後に自分の部署の予算と実績の資料を説明できるようになる」といった具体的なゴールを決めておくと、計画が立てやすくなります。
独学と講座の選び方、つまずいたときの対処
管理会計は独学でも十分に学べる分野です。ただ、学ぶ目的と今の知識によって、独学が合う人と講座が合う人がいます。
独学が合うのは、簿記の基礎がすでにあり、仕事で数字を使う場面があって、学んだことをすぐに試せる人です。入門書を1冊読み、表計算ソフトで計算を組み、自分の会社の資料で確かめる、という流れを自分で回せるなら、講座に通わなくても身につきます。
講座が合うのは、資格試験の合格を目指していて試験の範囲が広い人や、数字に苦手意識があって一人では手が止まりやすい人です。公認会計士の試験のように範囲が広い試験では、何をどの順番でどこまで学ぶかを決めるだけでも大きな負担になります。講座はその順番を組み立ててくれる点に価値があります。
勉強の途中でつまずいたときは、次のように対処します。
- 分からなくなった箇所の1つ前の段階に戻る(損益分岐点が分からないなら、変動費と固定費の分け方に戻る)
- 自分で簡単な数字の例を作り、手で計算してみる
- 計算の手順を、誰かに説明するつもりで文章に書き出す
- それでも分からなければ、別の入門書で同じ箇所を読む
特に3つ目の「説明するつもりで書く」方法は効果があります。説明しようとすると、自分がどこを分かっていないかがはっきりします。プログラミングでも、詰まったときにコードの動きを1行ずつ言葉にすると原因が見つかることがありますが、それと同じです。
1冊の教科書の説明が合わないだけで、自分には向いていないと考える必要はありません。同じ内容でも、図が多い本、例が多い本、文章で丁寧に説明する本と、合う説明の形は人によって違います。
仕事での管理会計の使い方
管理会計の知識は、勉強を終えてからではなく、学びながら仕事に使うことで定着します。職種ごとの使い方の例を挙げます。
営業の仕事では、値引きの判断に使えます。値引きをすると1個あたりの貢献利益が減るため、同じ利益を確保するには販売数をどれだけ増やす必要があるかを計算できます。値引きの交渉の前にこの計算をしておくと、受けてよい条件とそうでない条件の線を引けます。
開発やシステムの仕事では、案件の採算の管理に使えます。エンジニアの人件費を時間あたりの費用に直し、案件ごとにかかった工数をかけると、その案件の原価が分かります。見積もりの段階で予定の工数を出し、終わったあとに実績の工数と比べる習慣をつけると、見積もりの精度が上がります。これは予算と実績の差異分析と同じ考え方です。
アプリやサービスの開発に関わる人なら、利用者1人あたりの収入と費用の考え方にも応用できます。サーバーの費用のように利用者の数に応じて増える費用と、開発の人件費のように一定にかかる費用を分けると、何人の利用者がいれば採算が合うのかを計算できます。アプリケーション開発のお仕事のように、受託で開発を請け負う場合も、案件ごとの採算を把握しておくことが安定した仕事につながります。
経営の相談や業務の改善を支援する仕事では、管理会計の考え方がそのまま提案の土台になります。AIコンサル・業務活用支援のお仕事のような業務改善の支援では、「この作業を自動化すると、どの費用がどれだけ減るか」を数字で示せると、提案の説得力が大きく変わります。
数字を使った提案や報告では、計算の結果を相手に伝わる文章にまとめる力も求められます。報告書の書き方を体系的に学びたいなら、ビジネス文書検定のような文書の資格も役に立ちます。
在宅ワーク市場から見た管理会計の知識の価値
フリーランスと在宅ワークの仲介を長く続けてきた運営者として見てきた限りでは、数字に関わる仕事で長く依頼を受け続けている人は、計算ができることより、計算の結果を依頼する側の判断に結び付けて説明できる人です。経理の代行や、月次の数字のまとめ、事業計画の数字の作成といった仕事では、表を作って終わりではなく、「この数字から何が言えるか」を一言添えられる人が重宝されます。
在宅で管理会計の知識を生かせる仕事の例を挙げます。
- 小さな会社や個人事業の月次の収支のまとめと、予算と実績の比較
- 事業計画や資金計画の数字の作成の補助
- 表計算ソフトでの管理資料の作成や、集計の仕組みづくり
- 会計や経営に関する記事の執筆
また、フリーランスとして働く人自身にとっても、管理会計の考え方は欠かせません。1か月の固定費を把握し、1件あたりの作業時間と報酬から必要な案件の数を計算しておくと、受けてよい単価の下限がはっきりします。仲介手数料が差し引かれない直接取引は、同じ予算で依頼する側はより多くの仕事を頼め、受ける側は手取りが厚くなります。手取りが厚いことは、損益分岐点が下がることと同じ意味を持ち、無理な量の仕事を抱えずに済む余裕につながります。
管理会計の勉強方法は、簿記と原価計算で数字の作られ方を知り、損益分岐点と予算で数字を読み、意思決定の計算で数字を使って選ぶ、という順番に尽きます。それぞれの段階で表計算ソフトを使って手を動かし、自分の仕事や生活の数字に当てはめてみることで、教科書の知識が判断の道具に変わります。資格試験の範囲や日程は改定されることがあるため、受験を考えている人は、日本商工会議所や金融庁の公認会計士・監査審査会の最新の案内を確かめてください。
よくある質問
Q. 管理会計の勉強は簿記を知らなくても始められますか?
始めることはできますが、簿記の基礎を先に学んでおくと理解が格段に早くなります。管理会計で使う数字は、帳簿に記録された数字を組み直したものだからです。仕訳の考え方と、損益計算書と貸借対照表のつながりが分かる程度、目安としては日本商工会議所の簿記検定3級の範囲を先に押さえておくと、原価計算や損益分岐点の内容がつながりやすくなります。
Q. 管理会計を学ぶのにおすすめの資格はありますか?
仕事で使う知識を確かめたいなら、工業簿記が科目に入る日本商工会議所の簿記検定2級が目安になります。原価計算の基礎だけを先に確かめたい人には、ネット試験の原価計算初級もあります。専門家を目指すなら、公認会計士の試験で管理会計論が短答式の科目、論文式の会計学の一部として出題されます。目的に合わせて選んでください。
Q. 管理会計の勉強で一番つまずきやすいのはどこですか?
多くの人がつまずくのは、損益分岐点などの公式を暗記するだけで終わり、計算の筋道を理解しないまま進んでしまう点です。1個売るごとにいくら残り、それがいくつ集まれば固定費に届くのか、という考え方で説明できるようにしてください。表計算ソフトで数字を変えて結果の動きを確かめる練習が、理解を深める近道です。
Q. 管理会計の知識は在宅の仕事に生かせますか?
小さな会社や個人事業の月次の収支のまとめ、予算と実績の比較、事業計画の数字の作成補助、表計算ソフトでの管理資料の作成などに生かせます。依頼する側が求めているのは、表を作ることだけでなく、数字から何が言えるかを分かりやすく説明することです。また、自分の仕事の単価や必要な案件の数を考えるときにも、管理会計の考え方がそのまま役立ちます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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