介護施設の管理者になるには|資格と要件


この記事のポイント
- ✓介護施設の管理者になるのに必要な資格と要件を
- ✓居宅介護支援などサービスごとに国の基準の条文で整理
- ✓現場から管理者を目指す道筋を解説します
介護施設の管理者になるには、どんな資格が必要なのか。現場でリーダーを任されるようになった人も、他の業界から介護の運営に関わりたい人も、最初に知りたいのはこの点です。結論から言うと、管理者の資格の条件は施設やサービスの種類によってまったく違います。デイサービスや訪問介護のように国の基準に資格の決まりがないものもあれば、介護老人保健施設のように原則として医師が務めるもの、グループホームのように認知症介護の経験と研修が求められるものもあります。この記事では、国の基準の条文をもとに、サービスごとの要件と、現場から管理者を目指す道筋を順に説明します。
介護施設の管理者とはどんな立場か
介護施設の管理者とは、施設や事業所の運営に責任を持つ人のことです。介護保険のサービスを提供する事業所は、国の基準で「事業所ごとに常勤の管理者を置かなければならない」と決められていて、管理者がいないと事業所として運営できません。
管理者の仕事は、職員の採用と育成、勤務の割り振り、利用者や家族からの相談と苦情への対応、事故が起きたときの対応、介護報酬の請求に関わる書類の確認、行政の指導や監査への対応など、多岐にわたります。訪問介護を例にとると、国の基準の第28条は、管理者に「従業者及び業務の管理」を一元的に行うこと、そして従業者に基準を守らせるために必要な指揮命令を行うことを求めています。ほかのサービスの基準にも、同じ趣旨の決まりがあります。つまり、現場の介護が決まりどおりに行われているかを見届け、問題があれば正す役目です。
施設長と管理者の違い
求人を見ると、「施設長」と「管理者」という2つの呼び方が出てきます。法令の上では、介護保険法にもとづく事業所の責任者は「管理者」と呼ばれ、老人福祉法にもとづく特別養護老人ホームの責任者は「施設長」と呼ばれます。特別養護老人ホームは、老人福祉法の施設であり、同時に介護保険法の「介護老人福祉施設」でもあるため、施設長が介護保険の管理者を兼ねるのが一般的です。
民間の有料老人ホームなどでは、法人の役職として「施設長」という呼び方を使い、介護保険の届出の上では同じ人を「管理者」としていることがよくあります。呼び方の違いにとらわれず、その人が施設の運営に責任を持つ立場かどうかで考えると分かりやすくなります。
また、大きな法人では、1つの建物の中に特養、デイサービス、居宅介護支援事業所などが併設されていて、施設長の下にそれぞれの事業所の管理者がいる形もよく見られます。求人の「管理者」がどの事業所の管理者なのかによって、必要な資格の条件が変わるので、応募の前に必ず確かめましょう。
サービスの種類で変わる管理者の要件
介護施設の管理者の要件を、主なサービスごとに整理すると次のとおりです。いずれも国の基準の条文をもとにしたもので、自治体が独自の条件を加えている場合もあります。
| サービスの種類 | 管理者の資格や経験の要件 | もとになる決まり |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 社会福祉主事の資格、社会福祉事業に2年以上の経験、またはこれらと同等以上の能力 | 特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準 |
| 介護老人保健施設 | 原則として都道府県知事の承認を受けた医師 | 介護保険法 |
| 介護医療院 | 原則として都道府県知事の承認を受けた医師 | 介護保険法 |
| グループホーム(認知症対応型共同生活介護) | 認知症の介護に3年以上従事し、国が定める研修を修了 | 指定地域密着型サービスの基準 |
| 小規模多機能型居宅介護 | 認知症の介護に3年以上従事し、国が定める研修を修了 | 指定地域密着型サービスの基準 |
| 居宅介護支援事業所 | 原則として主任介護支援専門員 | 指定居宅介護支援等の基準 |
| デイサービス(通所介護) | 資格の決まりはない。常勤で専従 | 指定居宅サービス等の基準 |
| 訪問介護 | 資格の決まりはない。常勤で専従 | 指定居宅サービス等の基準 |
| 有料老人ホーム | 国の法令に資格の決まりはない | 都道府県の指導指針による |
この表から分かるように、「介護施設の管理者になるための資格」という1つの資格があるわけではありません。自分がどのサービスの管理者を目指すのかによって、必要な準備が変わります。次の節から、主なサービスごとに詳しく見ていきます。
特別養護老人ホームの施設長
特別養護老人ホーム(特養)は、常に介護が必要な高齢者が暮らす施設で、社会福祉法人や自治体が運営しています。施設長の資格は、国の「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」の第5条に決められています。
この条文によると、施設長は次のいずれかに当てはまる人でなければなりません。
- 社会福祉法第19条第1項の各号のいずれかに当てはまる人(社会福祉主事の任用資格がある人)
- 社会福祉事業に2年以上従事した人
- これらと同等以上の能力があると認められる人
社会福祉主事の任用資格とは
社会福祉主事の任用資格とは、もともとは福祉事務所などで働く公務員の資格の条件として法律に書かれているもので、福祉の現場で働く人の基礎的な資格として広く使われています。社会福祉法第19条によると、主に次のいずれかで得られます。
- 大学などで、厚生労働大臣が指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業する
- 都道府県知事が指定する養成機関や講習会の課程を修了する
- 社会福祉士の資格を持つ
- 厚生労働大臣が指定する社会福祉事業従事者試験に合格する
大学で福祉や心理、教育などを学んだ人は、卒業の時点で指定の科目を修めていて、任用資格を持っていることがあります。自分が当てはまるかどうかは、出身大学の科目の一覧で確かめられます。条文はe-Govの特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準で読めます。
「同等以上の能力」とは
「同等以上の能力があると認められる人」には、社会福祉施設の長を対象にした資格認定の講習会を修了した人などが含まれると、一般に扱われています。具体的にどのような人が認められるかは、施設の指導にあたる都道府県や市の判断によるため、異業種から特養の施設長を目指す人は、所管の自治体の福祉の担当課に確認しましょう。
介護老人保健施設と介護医療院の管理者は原則として医師
介護老人保健施設(老健)は、病院を退院した高齢者が自宅に戻るまでの間に、リハビリテーションを受ける施設です。介護医療院は、長い期間の療養と介護を一体で受けられる施設です。どちらも医療との結びつきが強く、管理者についての決まりは介護保険法そのものに書かれています。
介護保険法第95条は、老健の開設者が「都道府県知事の承認を受けた医師」に施設を管理させなければならないと定めています。介護医療院も、第109条で同じように決められています。
ただし、どちらの条文にも第2項があり、都道府県知事の承認を受ければ、医師以外の人に管理させることもできるとしています。この承認は、例外としての扱いです。医師以外の人が老健や介護医療院の管理者になる道は狭いと考え、目指す場合は、勤め先の法人と所管の都道府県に早めに相談しましょう。条文はe-Govの介護保険法で読めます。
なお、医師でない職員が老健で運営の中心を担う場合は、事務長や看護部長、介護部長といった役職で施設を支えることが多くあります。管理者の肩書きにこだわらず、施設の運営に関わる道として、こうした役職を目指す人もいます。
グループホームと小規模多機能の管理者は認知症介護の経験が必須
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送る住まいです。小規模多機能型居宅介護は、通い、泊まり、訪問を1つの事業所で組み合わせて提供するサービスです。どちらも地域の市町村が指定する「地域密着型サービス」で、管理者の要件が条文ではっきり決められています。
グループホームの管理者について、国の基準は次のように定めています。
共同生活住居の管理者は、適切な指定認知症対応型共同生活介護を提供するために必要な知識及び経験を有し、特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、介護老人保健施設、介護医療院、指定認知症対応型共同生活介護事業所等の従業者又は訪問介護員等として、三年以上認知症である者の介護に従事した経験を有する者であって、別に厚生労働大臣が定める研修を修了しているものでなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
小規模多機能型居宅介護の管理者にも、同じ基準の第64条で、認知症の介護に3年以上従事した経験と、国が定める研修の修了が求められています。
必要な2つの条件
整理すると、グループホームや小規模多機能の管理者になるには、次の2つがそろっている必要があります。
- 特養、デイサービス、老健、グループホームなどの職員や訪問介護員として、認知症の人の介護に3年以上従事した経験
- 国が定める研修(一般に「認知症対応型サービス事業管理者研修」と呼ばれる研修)の修了
この研修は都道府県や政令指定都市などが実施していて、受講の前提として認知症介護の基礎的な研修を修了していることを求めるのが一般的です。研修は年に数回しか開かれない地域もあり、定員を超えると受講できないこともあります。管理者への登用が見えてきたら、勤め先と相談して早めに申し込みの計画を立てましょう。
居宅介護支援事業所の管理者は主任介護支援専門員
居宅介護支援事業所は、ケアマネジャー(介護支援専門員)が在宅の高齢者のケアプランをつくる事業所です。ケアプランとは、どの介護サービスをどれくらい使うかをまとめた計画のことです。
国の「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」の第3条は、居宅介護支援事業所の管理者を「主任介護支援専門員」でなければならないと定めています。主任介護支援専門員とは、ケアマネジャーとして一定の実務経験を積み、都道府県が行う主任介護支援専門員研修を修了した人のことで、ほかのケアマネジャーへの助言や指導を担う立場です。
ただし、この条文にはただし書きがあり、主任介護支援専門員を確保することが著しく難しいなど、やむを得ない理由がある場合は、主任ではない介護支援専門員を管理者にできるとしています。どのような場合が当てはまるかは、指定をする市町村の判断によります。条文はe-Govの指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準で読めます。
ケアマネジャーになるまでの道のり
居宅介護支援事業所の管理者を目指すなら、まずケアマネジャーの資格が必要です。ケアマネジャーになるには、都道府県の介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、実務研修を修了して登録します。試験を受けるには、介護福祉士や看護師などの資格にもとづく仕事や、決められた相談援助の仕事に、通算で5年以上かつ900日以上従事した経験が必要です。そこからさらに実務を積んで主任介護支援専門員の研修を受けるため、管理者になるまでには長い時間がかかります。
デイサービスと訪問介護の管理者には資格の決まりがない
デイサービス(通所介護)と訪問介護は、事業所の数が多く、管理者の求人もよく見かけるサービスです。国の「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」は、どちらについても「事業所ごとに専らその職務に従事する常勤の管理者を置かなければならない」と定めていますが、管理者の資格についての決まりはありません。
つまり、国の基準の上では、介護の資格を持たない人でもデイサービスや訪問介護の管理者になれます。実際に、異業種で店舗の運営やマネジメントを経験した人が、デイサービスの管理者として採用される例もあります。条文はe-Govの指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準で読めます。
「常勤で専従」の意味
資格の決まりはなくても、「常勤」で「専ら(もっぱら)その職務に従事する」という条件はあります。常勤とは、事業所が決めた常勤の勤務時間(多くは週40時間)をすべて勤務することで、専従とは、原則としてその事業所の管理者の仕事だけをすることです。ただし、管理に支障がない場合は、同じ事業所の介護の仕事や、ほかの事業所の仕事を兼ねることも認められています。小さな事業所では、管理者が現場の介護や送迎も担当していることがよくあります。
訪問介護ではサービス提供責任者と区別する
訪問介護の事業所には、管理者とは別に「サービス提供責任者」という役割があります。サービス提供責任者とは、利用者ごとの訪問介護の計画をつくり、ヘルパーに指示を出す人のことで、こちらは介護福祉士などの資格が求められます。管理者とサービス提供責任者を同じ人が兼ねることも多いため、訪問介護の管理者を目指すなら、介護福祉士や実務者研修の修了など、サービス提供責任者の条件を満たしておくと、採用の幅が広がります。
有料老人ホームの施設長
有料老人ホームは、老人福祉法にもとづき都道府県に届け出て運営する高齢者の住まいで、株式会社が運営しているものも多くあります。国の法令には施設長の資格の決まりはなく、都道府県がつくる設置運営の指導指針に沿って運営されます。
ただし、有料老人ホームの中で介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている「介護付き」のホームでは、介護保険の基準にもとづく管理者を置く必要があります。また、ホームの中にデイサービスや訪問介護の事業所を併設している場合は、それぞれの事業所の管理者も必要です。
実際の採用では、介護の現場での経験や、介護福祉士、介護支援専門員などの資格を持つ人が施設長に選ばれることが多くあります。入居者と家族からの信頼を得るうえで、介護の現場を知っていることが大きな強みになるためです。
管理者の仕事の中身
管理者の要件が分かったところで、実際にどんな仕事をするのかを見ていきます。施設の規模やサービスによって違いはありますが、主な仕事は次のとおりです。
| 分野 | 主な仕事 |
|---|---|
| 人の管理 | 職員の採用と面接、研修の計画、勤務表の作成、面談、離職の防止 |
| サービスの質 | ケアの方針の決定、事故やヒヤリハットの分析、感染症の対策 |
| 利用者と家族 | 入所や利用の相談、契約の説明、苦情への対応 |
| お金と書類 | 介護報酬の請求の確認、予算の管理、運営規程や記録の整備 |
| 行政と地域 | 運営指導への対応、自治体への届出、地域の医療機関や事業所との連携 |
運営指導とは、自治体が事業所を訪れて、基準どおりに運営されているかを確かめる手続きのことです。記録の不備が見つかると、介護報酬の返還を求められることもあるため、管理者は日ごろから書類が整っているかを確認しておく必要があります。
現場の介護とどう関わるか
管理者の仕事は、現場で介護をすることとは性格が違います。職員が気持ちよく働ける環境をつくり、ケアの質を保つ仕組みを整えることが中心です。現場の介護から管理者になった人の中には、自分で手を動かせない時間が増えることに戸惑う人もいます。一方で、現場を知っている管理者は、職員の大変さを理解したうえで判断できるので、職員からの信頼を得やすいという強みがあります。
現場から管理者を目指す道筋
介護の現場で働く人が管理者を目指す場合、一般的には次のような順番で経験を積んでいきます。
ステップ1:介護の資格を段階的に取る
まずは、介護職員初任者研修、実務者研修、介護福祉士と、段階的に資格を取っていきます。介護福祉士は国家資格で、実務経験3年以上と実務者研修の修了などで受験できます。介護福祉士を持っていると、訪問介護のサービス提供責任者や、多くの事業所でのリーダーの条件を満たせます。
ステップ2:リーダーや主任を経験する
次に、ユニットリーダーやフロアリーダー、主任などの役割を経験します。数人の職員をまとめ、勤務表をつくり、新人を指導する経験は、管理者の仕事の土台になります。この段階で、職員の相談にのる、利用者の家族と話し合う、事故の報告書を書く、といった経験を積んでおくと、管理者になってからの戸惑いが小さくなります。
ステップ3:目指すサービスの要件を満たす
グループホームや小規模多機能の管理者を目指すなら、認知症の人の介護に3年以上従事したうえで、管理者の研修を受けます。居宅介護支援事業所の管理者なら、ケアマネジャーの資格を取り、主任介護支援専門員の研修に進みます。特養の施設長を目指すなら、社会福祉主事の任用資格か、社会福祉事業での2年以上の経験を確認しておきます。
ステップ4:管理者として登用されるか、転職する
条件がそろったら、勤め先で管理者に登用されるのを待つか、管理者の求人に応募して転職します。法人の中で昇進する場合は、日ごろの働きぶりや、職員をまとめる力が評価されます。転職する場合は、職員の人数、定員、サービスの種類、法人の方針をよく調べたうえで応募しましょう。
管理者を目指す人に役立つ資格
管理者の要件として決められていなくても、持っていると管理者の仕事に役立ち、採用でも評価されやすい資格があります。
| 資格 | どんな資格か | 管理者の仕事での役立ち方 |
|---|---|---|
| 介護福祉士 | 介護の国家資格 | 現場の介護の質を判断できる。サービス提供責任者の条件も満たせる |
| 介護支援専門員(ケアマネジャー) | ケアプランをつくる専門職 | 介護保険の仕組みとケアマネジャーとの連携を理解できる |
| 社会福祉士 | 福祉の相談援助の国家資格 | 社会福祉主事の任用資格にもなり、特養の施設長の条件を満たせる |
| 認知症介護実践者研修 | 認知症介護の考え方と技術を学ぶ研修 | グループホームなどの管理者研修の前提になることが多い |
この中でも、社会福祉士は特養の施設長の要件である社会福祉主事の任用資格を満たし、相談援助の専門知識も身につくため、福祉の施設で長く働きたい人に向いています。介護支援専門員は、介護保険の制度を深く理解できるので、どのサービスの管理者になっても役立ちます。
資格を取る順番は、今の仕事と目指すサービスで決めましょう。現場の介護職なら介護福祉士から、相談の仕事をしている人なら社会福祉士や介護支援専門員から、というように、今の経験がそのまま次の資格の受験の条件につながる順番を選ぶと、遠回りがありません。
異業種から介護の管理者を目指す場合
介護の現場の経験がない人でも、デイサービスや訪問介護、有料老人ホームでは、管理者や施設長として採用されることがあります。小売や飲食の店長、営業の管理職、病院の事務などで、人の管理や数字の管理を経験してきた人は、その経験を活かせます。
ただし、介護保険の仕組みや、利用者の体と心の状態についての知識がないまま管理者になると、職員の判断を支えられず、信頼を得るのに時間がかかります。異業種から目指す人は、少なくとも介護職員初任者研修などで介護の基本を学び、介護保険の制度の全体像を押さえておくと安心です。
また、法人によっては、現場の経験がない管理者を、介護の経験が長い主任やサービス提供責任者が支える体制をとっています。面接の段階で、管理者を支える体制があるかを確かめておくと、入ってからの負担を見通しやすくなります。
管理者になる前に確かめたい働く条件
管理者のポストは、責任が大きい分、働き方の条件もよく確かめておく必要があります。求人の情報や面接で、次の点を確認しておきましょう。
- 勤務時間と休日。管理者が現場の介護や夜勤を兼ねる前提になっていないか
- 夜間や休日の呼び出しの有無。事故や急変のときに誰が対応する決まりか
- 兼務の範囲。管理者のほかに、生活相談員や送迎、サービス提供責任者などを兼ねるのか
- 管理者の権限。採用や勤務表、備品の購入をどこまで自分で決められるか
- 法人の本部からの支援。請求や人事、法律の相談を本部が受け持つ体制があるか
- 管理者手当などの待遇と、評価の仕組み
とくに小規模な事業所では、管理者が現場の人手不足を埋める形で働き続け、管理の仕事に手が回らなくなることがあります。入職前に、職員の人数と退職の状況、管理者がどの時間を管理の仕事に使えるのかを具体的に聞いておくと、入ってからの差が小さくなります。
管理者になったら最初に取り組むこと
新しく管理者になった人が、最初の数か月で取り組んでおきたいことを整理します。
決まりと書類の現状を確かめる
まず、事業所の運営規程、重要事項説明書、各種の記録、自治体への届出が、今の決まりと合っているかを確かめます。介護保険の決まりは数年ごとの報酬の改定で変わるため、前任の管理者のときから更新されていない書類が残っていることがあります。前回の運営指導で指摘された点があれば、直っているかも確認しましょう。
職員一人ひとりと話す
次に、職員一人ひとりと面談の時間をとります。仕事のやりがい、困っていること、今後の希望を聴くことで、事業所の課題が見えてきます。管理者が替わる時期は職員も不安を感じやすいので、最初の段階で話を聴く姿勢を見せることが、信頼を築く第一歩になります。
数字を把握する
最後に、利用者の数、稼働率、介護報酬の収入、人件費などの数字を把握します。介護の事業所の運営は、利用者の数と職員の配置の釣り合いで成り立っています。毎月の数字を同じ形で記録しておくと、変化に早く気づけるようになります。
要件を確かめるときに見る資料
管理者の要件は、国の基準だけでなく、自治体の条例や解釈の通知で細かく決められていることがあります。正確に確かめるには、次の資料を見ます。
- 国の基準の条文(e-Govの法令検索で読める)
- 事業所を指定する自治体(都道府県や市町村)が公開している指定申請の手引き
- 自治体が開く事業者向けの説明会の資料や、よくある問い合わせの一覧
指定申請の手引きには、管理者に必要な経歴や資格の証明書類、兼務できる範囲などが具体的に書かれています。同じサービスでも自治体ごとに細かな扱いが違うことがあるので、働く予定の事業所がある自治体の手引きを必ず確かめましょう。分からない点は、自治体の介護保険の担当課に問い合わせるのが確実です。
管理者に求められる力
資格の要件を満たしていても、管理者として長く務めるには、資格とは別の力が求められます。介護の現場で管理者の評価につながりやすいのは、次のような力です。
- 職員の話を聴き、悩みや不満に早く気づく力
- 事故や苦情が起きたときに、事実を確かめてから落ち着いて対応する力
- 介護保険の決まりと、自治体からの通知を読み解く力
- 介護報酬や人件費の数字を見て、運営の状態を判断する力
- 医療機関やケアマネジャー、地域の関係者と連携する力
とくに、職員の定着は介護の事業所にとって大きな課題です。管理者が職員の声に耳を傾け、研修や面談の機会をつくることで、離職を防げることがあります。職員の研修の費用には、国の助成金を使える場合もあります。福祉用具貸与事業所のスキルアップ助成金2026|人材開発支援助成金の活用法では、職員の研修に人材開発支援助成金を使う方法を紹介しているので、研修の計画を立てる管理者は参考にしてください。
管理者が抱えやすい悩みと向き合い方
管理者になると、現場の職員だったときとは違う種類の悩みを抱えるようになります。よく聞かれる悩みと、向き合い方の例を紹介します。
現場と法人の間で板挟みになる
職員からは人手を増やしてほしい、休みを取りたいという声が上がり、法人の本部からは人件費を抑えて利用者を増やすよう求められる。管理者はその間に立つことになります。このようなときは、職員の声を数字と事実で整理し、本部に伝えることが大切です。残業の時間、利用者の介護の度合い、事故の件数などを記録しておくと、感覚ではなく根拠をもって話し合えます。
相談できる相手がいない
事業所の中で管理者は1人だけということが多く、悩みを打ち明けられる相手がいないと感じる人も少なくありません。同じ法人のほかの事業所の管理者や、地域の事業者の集まり、自治体や職能団体が開く管理者向けの研修は、同じ立場の人とつながるよい機会です。ほかの事業所の工夫を知ることで、自分の事業所の課題を解く手がかりが見つかることもあります。
自分の時間が取れない
管理者は、職員の急な休みを埋めるために現場に入ることが多く、管理の仕事が後回しになりがちです。毎週決まった時間を書類や面談のために確保し、その時間は現場に入らないと決めておくと、管理の仕事が積み残しになりにくくなります。職員の中から次のリーダーを育て、仕事を任せていくことも、管理者が自分の時間を確保するための大切な取り組みです。
管理者の経験を活かせる働き方の広がり
介護施設の管理者として運営の経験を積むと、その経験は施設の外でも求められるようになります。複数の事業所を統括するエリアマネージャー、新しく事業所を立ち上げる法人の開設の支援、介護の事業所向けの研修の講師、運営指導に備えた書類の点検の支援など、管理の経験そのものが仕事になる場面があります。
フリーランスと在宅ワークの仲介を長く続けてきた運営者の立場から見ると、介護の運営を知る人の知識は、文章や資料の形でも求められています。介護事業所向けのマニュアルや研修資料の作成、介護保険の制度を分かりやすく説明する記事の執筆、事業所の採用ページの文章づくりといった仕事は、現場と管理の両方を知っていることで信頼を得やすい分野です。長く依頼が続く人ほど、制度の言葉をやさしく言い換え、職員や家族が読んで迷わない資料をつくれる人です。仲介の手数料が乗らない直接のやり取りなら、同じ予算で依頼する側はより多くを任せられ、受ける側の手取りも厚くなります。
管理者の仕事では、運営規程、事故の報告書、家族への案内、職員向けの通知など、正確な文書を書く場面が多くあります。文書の力を確かめたい人は、ビジネス文書検定のページで、ビジネス文書の書き方と表記の基本を問う検定の内容を確かめてみてください。
よくある質問
Q. 介護の資格がなくても介護施設の管理者になれますか?
施設の種類によってはなれます。デイサービスや訪問介護の管理者、有料老人ホームの施設長には、国の基準に資格の決まりがありません。一方、グループホームや小規模多機能では認知症介護の経験と研修が、居宅介護支援事業所では原則として主任介護支援専門員の資格が必要です。目指すサービスの要件を先に確かめましょう。
Q. グループホームの管理者になるには何年の経験が必要ですか?
国の基準では、特養やデイサービス、グループホームなどの職員や訪問介護員として、認知症の人の介護に3年以上従事した経験が必要です。そのうえで、国が定める管理者の研修を修了していることが求められます。研修は都道府県などが実施していて、開催の回数や定員が限られる地域もあるので、早めに計画しましょう。
Q. 特別養護老人ホームの施設長になる条件は何ですか?
国の基準では、社会福祉主事の任用資格がある人、社会福祉事業に2年以上従事した人、またはこれらと同等以上の能力があると認められる人が施設長になれます。社会福祉主事の任用資格は、大学で指定の科目を修めて卒業する、指定の講習会を修了する、社会福祉士の資格を持つなどの方法で得られます。
Q. 介護老人保健施設の管理者は医師でなければいけませんか?
介護保険法では、老健の管理者は原則として都道府県知事の承認を受けた医師と決められています。ただし、都道府県知事の承認を受ければ、医師以外の人に管理させることもできるとされています。これは例外の扱いなので、医師以外の人が目指す場合は、勤め先の法人と所管の都道府県に早めに相談しましょう。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
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