LINEが乗っ取られた相手に返信しても大丈夫か


この記事のポイント
- ✓乗っ取られた可能性のあるLINEに返信してよいのかを
- ✓公式の案内をもとに整理しました
- ✓返信そのもので起きることと起きないこと
まず、安心してください。友だちから届いたメッセージに返信しただけで、自分のLINEアカウントが乗っ取られることはありません。危ないのは、返信という行為ではなく、そのあと続く会話の中で何を渡すかです。渡してはいけないものは四つに絞れます。この記事では、返信で起きることと起きないことを分けたうえで、本人かどうかを確かめる手順、相手が本当に乗っ取られていた場合に伝えるべき内容までを、順番に書いていきます。判断に必要な時間は数分です。
結論。返信そのものでアカウントが奪われることはない
LINEのアカウントが他人に使われる状態になるには、決まった経路が必要です。一つは、メールアドレスとパスワードを使ってブラウザからログインされる経路。もう一つは、QRコードを読み取ってログインの操作を行い、表示された認証番号が相手に渡る経路です。どちらも、メッセージを一通返すだけでは成立しません。
公式の防犯ページでは、LINEのログイン情報とは、メールアドレス、パスワード、電話番号、認証番号を指すと明記されています。逆に言えば、この四つを渡さない限り、会話の中で自分のアカウントが開かれることはありません。
ですから、返信してよいかどうかで迷って何時間も止まる必要はありません。むしろ、返信しないまま放置すると、相手が本当に乗っ取られていた場合に気づくのが遅れ、他の友だちに被害が広がります。確かめる行動そのものは、周囲を守る行為でもあります。
ただし、返信の仕方には条件が付きます。次の節から、その条件を具体的に並べます。
返信で起きること、起きないこと
起きないことから整理します。メッセージを返しても、こちらの電話番号やメールアドレスが新たに相手へ渡ることはありません。すでに友だちとしてつながっている相手なら、表示名とアイコンは最初から見えています。返信によって端末が遠隔操作されることもありません。
一方、起きることもあります。一つは、こちらが反応する人だと相手に認識されることです。乗っ取り犯は、多数の友だちに同じ文面を一斉に送り、反応があった人に絞って話を進めます。返信すると、その後の要求が具体的になります。
もう一つは、会話の中で個人的な情報が引き出される可能性です。公式が挙げているなりすましの特徴の中に、個人情報を聞いてくるという項目があります。家族構成、勤務先、住所、利用している金融機関。世間話の形で聞かれると、答えてしまいやすい情報です。
三つ目は、時間と気力を削られることです。相手は会話を長引かせ、こちらの判断力を鈍らせようとします。公式も、緊急と焦らせ、安全と信頼させて判断力を鈍らせる手口を挙げています。長く話すほど不利になるという前提で臨んでください。
結論としては、返信してよい。ただし、短く、確認だけにする。これが安全な形です。
絶対にしてはいけない四つのこと
ここが本題です。返信のやり取りの中で、次の四つだけは何があっても行わないでください。この四つを守れば、被害は起こりません。
一つ目は、送られてきたURLを開いてログイン情報を入力することです。公式は、リンクの偽ページではログイン情報を要求してくること、実在のアイコンや色使いを真似ているので見た目だけで気付くことは難しいことを説明しています。見分ける努力ではなく、開かないという判断で対応します。
二つ目は、認証番号を送ることです。番号を求める文面は、間違えて送られてきた、手続きに必要、代わりに受け取ってほしい、といった形で来ます。公式の防犯ページには、QRコードログインの画面を開かせ、届いた認証番号を入力させると、相手の端末で自分のLINEが使えるようになるという手口が説明されています。番号は鍵そのものです。
三つ目は、QRコードの読み取りです。読み取ってほしいと頼まれたら、その時点で断ってください。読み取ると、他の端末にログインする操作が始まります。誤って読み取ってしまった場合は、ログインをキャンセルし、認証番号を誰にも伝えないでください。
四つ目は、金銭の立て替えです。コンビニで電子マネーを買って番号を送ってほしい、急ぎで振り込んでほしい、といった依頼が典型です。本人に見えるアカウントからの依頼でも、金銭の話が出た時点で別の手段で確認する。この一点を固定してください。
この四つに共通しているのは、どれも自分の操作が必要だという点です。設定で防げない代わりに、知っていれば必ず止められます。
本人かどうかを確かめる手順
疑わしいと感じたら、同じトークの中で問いただすのではなく、別の経路で確認します。同じトーク内で本人確認を試みても、相手は答えを合わせてきます。
一番確実なのは、電話をかけることです。声が分かる相手なら、数秒で判断できます。出られない場合は、留守番電話に用件を残しておきます。乗っ取り犯は、電話に出る形での確認を避けます。
電話番号を知らない相手の場合は、共通の知人に確認します。同じメッセージが届いていないかを聞けば、一斉送信かどうかがすぐ分かります。乗っ取りの多くは、友だち全員に同じ文面が送られています。
本人しか知らないことを尋ねる方法も有効ですが、聞き方に注意が必要です。過去のやり取りを見れば分かる内容だと、相手も答えられます。トークに残っていない出来事、たとえば直前に会った場所や、口頭でしか話していない話題を選んでください。
確認の途中で相手が急かしてきた場合、それ自体が答えです。公式が挙げるなりすましの特徴には、実際の関係と不釣り合いな接し方をする、日本語におかしなところがある、という項目も含まれています。違和感を覚えたら、会話を止めて構いません。
実際に届く文面には、決まった型がある
相談として持ち込まれる文面には、いくつかの型があります。知っておくと、読んだ瞬間に構えられます。
型の一つ目は、様子を尋ねる短い文です。いま忙しい、時間ある、お願いがある。ここでは要求が出てきません。反応する人を選別する段階です。ここで返信しても危険はありませんが、次に来る内容で判断します。
二つ目は、立て替えの依頼です。急ぎで電子マネーを買ってほしい、後で必ず返す、自分のカードが使えない。金額は数千円から数万円で、断りにくい範囲に設定されています。
三つ目は、手続きの協力を求める形です。アカウントの認証で困っている、番号が届くので教えてほしい、URLから手続きしてほしい。これは金銭ではなく、こちらのアカウントを狙う型です。
四つ目は、投資や副業の話です。いい話がある、一緒にやらないか、という誘いから、外部のサイトやアプリへ誘導されます。総務省の解説でも、SNSの投稿にURLを載せて誘導する手口や、短縮URLを使ってアクセス先を分かりにくくする手口が説明されています。
いずれの型でも、対応は同じです。短く返す、要求には応じない、別経路で確認する。文面を読み解く必要はありません。
既読を付けること、ブロックすること
返信の可否と並んでよく迷うのが、既読の扱いとブロックの判断です。
既読を付けても、相手にできることは増えません。読んだかどうかが分かるだけで、こちらの情報は渡りません。既読を避けるために通知だけで内容を判断しようとすると、かえって誤読の原因になります。内容を確認したうえで、要求に応じなければ問題ありません。
ブロックについては、状況によります。相手が本当に乗っ取られている場合、ブロックすると復旧後の連絡も届かなくなります。まずは返信を止めるだけにして、様子を見るほうが扱いやすいことが多いです。
一方、明らかに金銭や番号を要求してきている場合は、ブロックしてから通報してください。LINEには通報機能があり、公式の防犯ページでも、自分や友だちのアカウント乗っ取りを見かけたときは通報機能から通報するよう案内されています。報告が集まるほど、同じ文面への対応が早くなります。
やり取りの記録は、消す前に保存しておいてください。送信取消をされると内容が消えるので、スクリーンショットを撮っておくと、相手の復旧後に何が送られたかを共有できます。
相手が本当に乗っ取られていた場合に伝えること
本人と連絡が取れたら、伝える内容は決まっています。長い説明は不要で、次の手順だけで足ります。
まだLINEが使えているなら、パスワードを変更し、ログイン許可をオフにし、ログイン中の端末を確認して知らない端末をログアウトする。公式の使い方ガイドで案内されている対応と同じ並びです。
すでにログインできない場合は、公式のヘルプセンターから問い合わせるよう伝えます。ヘルプセンターは、本人からの問い合わせのみを受け付けており、家族や友人など代理の方からの問い合わせは原則として受け付けていないと案内しています。代わりに手続きをしてあげることはできない、という点を先に伝えておくと、相手が窓口を探す時間を節約できます。
あわせて、友だちに一斉に連絡を出すよう促してください。乗っ取られた側が一番困るのは、被害を知らせる手段が止まっていることです。メールや電話など、別の手段で周囲に知らせる必要があります。
そして、金銭の被害が出ている人がいないかを確認します。電子マネーを買ってしまった、振り込んでしまったという人がいれば、消費者ホットラインの188や警察相談専用電話の#9110に相談するよう伝えてください。
責めないことも大事です。公式が、見た目だけで気付くことは難しいと書いているとおり、引っかかったのは注意力の問題ではありません。
復旧後のフォローにも触れておきます。アカウントが戻った、あるいは作り直した後、本人は友だちリストとグループを一から整え直すことになります。共通の知人がいる場合、新しいアカウントが本物であることを周囲に伝えてあげると、混乱が減ります。なりすましの別アカウントが同時に動いているケースでは、どちらが本人か分からなくなるためです。連絡先を交換し直すときに、電話番号も一緒に確認しておくと、次に同じことが起きたときの確認が早くなります。
何かを渡してしまった後の30分
気づいたときにはURLを開いていた、番号を送っていた。そういう場合でも、直後に動けば被害は止まります。順番を決めておきます。
最初にやるのは、パスワードの変更です。ホームから設定に入り、アカウントの中のパスワードから変更します。偽のログイン画面にメールアドレスとパスワードを入力してしまった場合、その組み合わせはすでに相手の手元にあります。変更すれば、その情報は使えなくなります。
次に、ログイン中の端末を確認します。知らない端末が並んでいたら、その場でログアウトしてください。パスワードを変えても、すでにログインしている端末が残る場合があります。あわせて、ログイン許可をオフにしておきます。
三つ目に、同じパスワードを使っている他のサービスを変更します。メールアドレスのパスワードが最優先です。メールは他のサービスの鍵を配る場所なので、そこが相手の手にあると、他を直しても戻されます。
四つ目に、友だちへの連絡です。自分のアカウントから何かが送られていないかを確認し、送られていれば、リンクを開かない、番号を送らない、金銭の依頼に応じないことを伝えます。謝罪より先に、相手が取るべき行動を書くほうが被害が止まります。
金銭を渡してしまった場合は、購入した電子マネーの発行元や金融機関へ早く連絡してください。そのうえで、消費者ホットラインの188や警察相談専用電話の#9110に相談します。被害回復の可否は金額や経緯で変わるので、窓口で事実を伝えて判断を仰いでください。
グループトークに同じ投稿が届いたとき
個別のトークではなく、グループに不審な投稿が流れることもあります。この場合、影響する人数が一気に増えるため、対応の順番が変わります。
まず、グループ内で一言だけ注意を出します。長い説明は不要で、このリンクは開かないでください、と短く書くだけで十分です。読む人が多いほど、簡潔な文のほうが伝わります。
次に、投稿した本人に別経路で連絡します。グループ内で問いただすと、相手が本物だった場合に気まずくなりますし、乗っ取り犯だった場合は言い訳の材料を与えます。電話やメールで、短く確認してください。
三つ目に、グループの管理をしている人に知らせます。参加者が多いグループでは、管理者が該当の投稿を削除したり、注意を出したりできます。案件ごとに作られた仕事のグループなら、参加者の棚卸しもこの機会に行っておくとよいです。
すでに誰かがリンクを開いてしまった場合は、その人に前の節の手順を伝えてください。開いただけで情報を入力していなければ、被害は起きていないことがほとんどです。入力してしまった場合は、パスワードの変更を急ぎます。
乗っ取りと紛らわしいものを、先に除外する
すべてが乗っ取りとは限りません。よく似ているけれど別の現象を、三つ挙げておきます。
一つ目は、知らない人が友だちに表示される現象です。ヘルプセンターには、端末のアドレス帳に登録されている電話番号がLINEに登録されると、その相手が友だちとして自動的に表示される場合があるという説明があります。自分や相手が乗っ取られているということではない、とも書かれています。
二つ目は、別アカウントによるなりすましです。乗っ取りではなく、同じ名前とアイコンで新しいアカウントを作り、友だちに接触する手口です。この場合、本物のアカウントは無事なので、本人に連絡すれば確認できます。友だち追加の通知から始まる形が多く、トークの履歴が空である点が見分けの手がかりになります。
三つ目は、自分の操作によるログイン通知です。パソコン版にログインした、タブレットで開いた、といった覚えがあれば、その通知は正常です。日時と端末名を照らし合わせれば判断できます。
除外できるものを先に外しておくと、本当に対処が必要な場面に集中できます。焦って全部を乗っ取りと判断すると、必要のないアカウント削除まで進んでしまうことがあります。
仕事の相手から届いた場合は、扱いを変える
同じメッセージでも、相手が取引先である場合は確認の重さが変わります。金額と口座が絡むからです。
とくに注意が必要なのは、振込先の変更を伝えてくる連絡です。口座が変わりました、今回はこちらに振り込んでください、という文面が来た場合、メッセージアプリだけで完結させないでください。電話で確認する、あるいは以前のメールに返信する形で確かめます。
請求書のやり取りをしている場合は、金額の修正依頼にも同じ扱いをします。乗っ取られたアカウントから、正規の請求内容を装った依頼が来ると、気づくのが難しくなります。
事前の取り決めがあると、こうした場面で迷いません。口座情報の変更は電話で確認する、という一行を作業の合意に入れておくだけで、なりすましが通らなくなります。乗っ取りに限らず、送信元を偽ったメールへの対策にもなります。
万一、変更後の口座に振り込んでしまった場合は、取引先と金融機関の双方に速やかに連絡してください。対応の可否は状況によって変わるため、自己判断せず、事実を伝えて指示を仰ぐのが確実です。
自分の番が来たときのために、備えておく
今回は受け取る側でも、次は自分が乗っ取られる側になる可能性があります。備えは三つで足ります。
一つ目は、設定を三か所だけ変えておくことです。ホームから設定に入り、アカウントの画面で、ログイン許可をオフにする、ログイン中の端末を確認する、Webログインの2要素認証をオンにする。公式が挙げている対策の中で、手数が少なく効果が大きい三つです。
二つ目は、パスワードの使い回しをやめることです。ヘルプセンターは、推測されやすいパスワードや他社サービスと同じパスワードを設定している場合、変更を強くすすめると案内しています。どこか一社から漏れた情報で、別のサービスに入られる形を防ぎます。
三つ目は、連絡手段を二つ持っておくことです。メッセージアプリが止まったときに、メールか電話で説明できる相手を増やしておきます。仕事の取引先とは、必ず二経路を作っておいてください。
この三つに加えて、トークのバックアップも取っておくと安心です。乗っ取り被害が確認された場合、悪用を防ぐためにアカウントが削除される対応が案内されています。履歴は戻らないので、日頃の備えがそのまま差になります。
返信しないほうがよい相手もいる
ここまで、友だちからのメッセージを前提に書いてきました。相手が友だちでない場合は、判断が変わります。
友だちに追加した覚えのない相手からのメッセージには、返信しないほうが安全です。誰かと間違えたふりで会話を始め、時間をかけて信頼を作ってから投資や副業に誘う手口があります。国民生活センターや消費者庁は、簡単に稼げるとうたう副業の相談事例を公表しており、入口がSNSやメッセージアプリである点が繰り返し指摘されています。
国際電話の番号や、見慣れない形式のアカウント名から届く連絡にも反応しないでください。返信した時点で、使われているアカウントだと判断され、別の勧誘が続きます。
友だち以外からのメッセージを受信しない設定にしておくと、この手の連絡自体が減ります。設定を変えても、既に友だちの相手とのやり取りには影響しません。仕事で不特定多数から連絡を受ける立場でなければ、オンにしておいて損はありません。
判断の基準としては、知っている相手かどうかで扱いを分けるのが簡単です。知っている相手なら確認のために返信する。知らない相手には反応しない。この二分でほとんどの場面をさばけます。
高齢の家族が受け取っていたときの対応
同じメッセージが高齢の家族に届いた場合、対応の難しさが一段上がります。文面が身内からに見えるうえ、断ること自体に抵抗があるためです。
伝える内容は、手口の説明ではなく、行動の約束にします。お金の話が出たら電話で確認する、番号は誰にも教えない。この二つだけを共有してください。手口は毎年変わりますが、この二つは変わりません。
そのうえで、確認の電話をかける相手を具体的に決めておきます。困ったら誰に電話するかが決まっていれば、迷う時間が減ります。判断を一人でさせない形にしておくのが、一番効く対策です。
家族の端末の設定も、一緒に見ておくとよいです。ログイン許可をオフにする、画面ロックをかける、アプリを最新に保つ。総務省も、安心してインターネットを利用するために最低限意識することとして、ソフトウェアを最新に保つこと、強固なパスワードの設定と多要素認証を活用すること、不用意に開かないことの三つを挙げています。
すでに何かを送ってしまった後でも、責めずに事実だけ聞いてください。隠されると、対応が遅れます。
返信する前に、30秒で見る三つの点
毎回すべてを確認していると時間が足りません。実務的には、三点だけ見れば十分です。
一つ目は、要求があるかどうかです。要求のない世間話なら、返信しても問題は起きません。お金、番号、リンク、QRコードのいずれかが出てきた時点で、確認の手順に切り替えます。
二つ目は、急いでいるかどうかです。今すぐ、今日中に、あと10分で。時間を区切る文面は、考える余裕を削るために入っています。公式も、緊急と焦らせて判断力を鈍らせる手口を挙げています。急かされたら、むしろ止まる合図だと考えてください。
三つ目は、いつもと違うかどうかです。その人が普段使わない言い回し、普段しない依頼、普段と違う時間帯。公式が挙げるなりすましの特徴にも、実際の関係と不釣り合いな接し方をする、日本語におかしなところがある、という項目が並んでいます。
この三点のうち二つが当てはまったら、返信の内容を確認だけに限定します。具体的には、電話してもいい、と一言返すだけで構いません。乗っ取り犯は、音声での確認を避けます。相手が理由をつけて電話を拒んだら、それで判断がつきます。
背景にある数字を見ておく
なぜこれほど多くのメッセージが届くのかは、入口の規模を見ると分かります。フィッシング対策協議会の月次報告によると、2026年8月に寄せられたフィッシングの報告件数は82,338件で、前月より16,219件増えました。報告されたフィッシングサイトのURL件数は39,800件、悪用されたブランドは96件です。
同じ報告では、調査用のアドレスに届いたフィッシングメールのうち、実在するサービスのメールアドレスを差出人に使ったなりすましが約32.3%だったとされています。差出人の表示で見分けるという方法が、三分の一のケースで通用しないということです。月ごとの件数と悪用されたブランドの傾向は、フィッシング対策協議会の月次報告で公開されています。どのサービスをかたる連絡が増えているかを知っておくと、届いたメッセージへの警戒の仕方が変わります。
脅威の並びも公的機関が整理しています。IPAの情報セキュリティ10大脅威 2026では、個人向けの脅威としてインターネット上のサービスへの不正ログインが挙げられ、2016年の初選出から11年連続で選ばれています。フィッシングによる個人情報等の詐取も8年連続で並んでいます。
「組織」向け脅威については順位を併記し、「個人」向けでは脅威名のみを五十音順で記載しています。複数の脅威にまたがる事案もあるため、各自の環境に照らし選出された脅威については、極力もれなく対策を行うことが求められます。 出典: ipa.go.jp
法律の面でも、他人のIDとパスワードを使ってログインする行為は、不正アクセス行為の禁止等に関する法律で禁じられています。同法第11条は、違反した者を3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処すると定めています。迷惑行為ではなく犯罪なので、被害を受けた側が遠慮する理由はありません。
市場を長く見てきた立場からの観察
在宅ワークやフリーランスの市場を20年運営してきた立場から見ると、この種のメッセージで一番損をしているのは、金銭を渡した人ではなく、判断に時間を取られた人です。仕事の連絡と詐欺の連絡が同じアプリに並ぶため、確認のたびに手が止まります。
対策として効いているのは、用途で連絡手段を分けている人の運用でした。日常のやり取りはメッセージアプリ、金額と納期の確定はメール、緊急連絡は電話。この形にしておくと、メッセージアプリに金銭の話が出てきた時点で、それだけで不自然だと分かります。ルールが判断を肩代わりしてくれる状態です。
仕事の種類によって、守るべきものも変わります。キャラクター・アイコン・LINEスタンプのお仕事のように制作物を扱う仕事では、未公開のデータが手元にあります。作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事も同じで、納品前の音源が流出すれば案件そのものが飛びます。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事なら、預かるのは顧客情報や管理画面の権限です。自分が何を預かっているかを把握しておくと、連絡手段の扱いも自然に慎重になります。
知識の土台を作りたい場合は、CCNA(シスコ技術者認定)のようにネットワークと認証を扱う資格が役に立ちます。取引先への報告文を整えたい場合は、ビジネス文書検定の範囲がそのまま効きます。報酬の相場を確かめたいときは、著述家,記者,編集者の年収・単価相場やソフトウェア作成者の年収・単価相場を見ておくと、不自然な依頼との線引きがしやすくなります。
最後に、手取りの話を一つ。仲介が入る取引では、発注者が払った額と受け手が受け取る額に差が生まれます。手数料0%の直接取引は、同じ予算で依頼者はより多く頼め、受け手の手取りは厚くなります。運営者として見てきた限りでは、直接つながっている関係ほど、電話番号やメールを交換していて、いざというときに本人確認ができています。安全の話と取引の形は、思っているより近いところでつながっています。
よくある質問
Q. 乗っ取られた友だちに返信したら、自分も乗っ取られますか?
返信そのものではアカウントは奪われません。危険なのは、送られてきたURLでログイン情報を入力すること、認証番号を送ること、QRコードを読み取ること、金銭を立て替えることの四つです。この四つを避ければ、短く返信して確認しても問題ありません。
Q. 本人かどうかを確かめるには、どうすればよいですか?
同じトークの中で問いただすのではなく、電話など別の手段で確認してください。共通の知人に同じメッセージが届いていないかを聞くのも有効です。トークを見れば分かる内容ではなく、口頭でしか話していない話題を尋ねると判別しやすくなります。
Q. 既読を付けたりブロックしたりしても大丈夫ですか?
既読を付けても相手にできることは増えません。ブロックは、相手が本当に乗っ取られている場合、復旧後の連絡も届かなくなるため、まずは返信を止めるだけでも構いません。金銭や番号を求めてきている場合は、ブロックしたうえで通報してください。
Q. うっかり認証番号を送ってしまいました。どうすればよいですか?
すぐにパスワードを変更し、ログイン中の端末を確認して知らない端末をログアウトし、ログイン許可をオフにしてください。ログインできなくなっている場合は、公式のヘルプセンターから本人が問い合わせます。金銭被害があれば188や#9110に相談してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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