アルバイトで雇用保険なしのとき失業手当は受けられるか 2026


この記事のポイント
- ✓アルバイト雇用保険なし失業手当の関係を
- ✓加入要件・遡って加入する手続き・受給資格の12か月・受給できないときに使える求職者支援制度まで
- ✓公的な資料の記載にそって順番に確かめます
まず、落ち着いて確かめてほしいことがあります。「アルバイトだったので雇用保険なし。だから失業手当は無理」と会社から言われて、そこで諦めてしまう方がとても多いのです。ところが公的な資料を順番にたどると、結論はそこでは決まりません。雇用保険は、本人や会社が入るかどうかを選べる制度ではなく、働き方が一定の条件に当てはまったら自動的に加入になる制度として作られています。つまり「加入していなかった」ことと「加入資格がなかった」ことは別の話です。
この記事では、アルバイトで雇用保険なしの状態から失業手当にたどり着けるかどうかを、次の順番で確かめます。加入の条件はどこに書いてあるか、契約書のどの行を見れば判定できるか、加入していないことに気づいたら誰に何を言えばよいか、遡って加入できる期間はどこまでか、受給資格に届かなかったときに残っている制度は何か。数字はすべて2026年9月時点で公的なページを開いて確かめたものだけを載せています。
雇用保険なしのアルバイトで失業手当が出るかは、加入資格の有無で決まる
失業手当は、正式には雇用保険の「基本手当」という名前です。名前のとおり雇用保険から出るお金なので、雇用保険の被保険者だった人でなければ受け取れません。ここまでは、会社が言っていることと同じです。
問題は、その「被保険者だった人」という言葉の中身です。ハローワークインターネットサービスの説明では、被保険者になるかどうかは本人の意思や会社の方針では決まらないと、はっきり書かれています。
雇用保険の適用事業に雇用される労働者は、次の1.及び2.のいずれにも該当する場合には、原則としてその意志にかかわらず当然に被保険者となります。 31日以上の雇用見込みがあること。 1週間の所定労働時間が20時間以上であること。 出典: hellowork.mhlw.go.jp
「その意志にかかわらず当然に」という言い方が、この制度の性格をよく表しています。加入は申込制ではありません。条件に当てはまった瞬間に被保険者になっていて、会社にはそれをハローワークへ届け出る義務がある、という順序です。同じページには、届け出が正しく行われていないと、失業したときの給付で労働者側に不利益が生じることがあるとも書かれています。
ですから、考える順番はこうなります。まず自分の働き方が2つの条件に当てはまっていたかを確かめる。当てはまっていたなら、加入していなかったのは手続きの漏れであって、資格がなかったという話ではありません。当てはまっていなかったなら、失業手当そのものは対象外ですが、別の制度が残っています。どちらに転んでも次の行動があるので、ここで止まる必要はありません。
加入の2つの条件を、契約書の文字で判定する
条件は2つだけです。1週間の所定労働時間が20時間以上であること、そして31日以上の雇用見込みがあること。この2つがそろって初めて被保険者になります。片方だけでは足りません。
見落としやすいのは、判定に使う時間が「実際に働いた時間」ではなく「所定労働時間」だという点です。所定労働時間とは、雇用契約書やシフトの取り決めで最初から決まっている時間のことをいいます。体調を崩して休んだ週があって実働が20時間を下回ったとしても、契約上の取り決めが週20時間以上なら判定は変わりません。逆に、契約は週15時間なのに毎週応援で25時間働いていた、という状態は、契約の書き換えをしない限り原則として判定に乗りません。
手元の雇用契約書、労働条件通知書、採用時にもらった紙を出して、次の4か所を順に見てください。
・1日の所定労働時間と、1週間の勤務日数。掛け算して週20時間に届くか ・契約期間の欄。期間の定めがないか、あるいは31日以上か ・更新についての記載。「更新する場合がある」と書いてあるか ・シフト制の場合、週の目安時間がどこかに書かれていないか
シフト制で時間の取り決めが曖昧なままだったという方は珍しくありません。その場合は、実際の勤務記録(給与明細の勤務時間、タイムカードの控え、勤務表の写真)を数か月分そろえてください。週20時間以上の状態が続いていた事実を示す材料になります。判断そのものはハローワークが行うので、材料を持って相談に行くのが最短です。
31日以上の見込みについても、短い契約を何度も更新していた場合は実態で見られます。1か月未満の単発だけをつないでいたのなら条件から外れますが、2か月契約を4回更新して8か月働いていた、という形なら見込みがあったと判断される余地があります。雇用保険法の第6条は、この31日を「同一の事業主に雇用されることが見込まれない」場合の除外として書いているので、同じ会社で続いていたかどうかが分かれ目になります。
「うちのアルバイトは雇用保険に入れない」は、会社の方針にすぎない
相談窓口に寄せられる話で最も多いのが、採用時に「パートは雇用保険に入れないから」と説明されていた、という形です。ここは強くお伝えしておきます。その説明は、制度の説明ではありません。
会社には、条件を満たす労働者について被保険者資格の取得届をハローワークへ出す義務があります。出していなかったとしても、労働者側の資格が消えるわけではありません。雇用保険法は、確認を求める権利を労働者本人に与えています。
(確認の請求)第八条 被保険者又は被保険者であつた者は、いつでも、次条の規定による確認を請求することができる。 出典: laws.e-gov.go.jp
条文の中で「いつでも」と書かれている箇所はそれほど多くありません。退職してから気づいた人、何年も前のことだと諦めていた人にも道を開いておくための書き方です。会社を辞めた後でも、会社の同意がなくても、本人から請求できます。
自分が被保険者として登録されていたかどうかは、ハローワークに照会できる仕組みが用意されています。雇用保険被保険者証や、資格取得等確認通知書という紙が手元にあれば、そこで確かめられます。何も渡されていない場合は、本人確認の書類と住所が分かるものを持ってハローワークの窓口へ行けば、加入記録の有無を調べてもらえます。電話で済ませたくなるところですが、記録の照会は本人確認が必要なので、来所するほうが早く終わります。
このとき用意しておくとよいものを挙げます。給与明細(できれば在籍期間の全部)、雇用契約書または労働条件通知書、勤務表やシフト表の控え、離職したことが分かるもの。給与明細は特に大事です。控除の欄に「雇用保険料」という行があれば、会社は保険料を引いていたことになり、その扱いが後で効いてきます。
遡って加入させる手続きと、2年という線の意味
要件を満たしていたのに届け出がなかった場合、加入をさかのぼって認めてもらう道があります。よく「2年まで遡れる」と言われますが、その2年がどこから数えた2年なのか、そして2年を超える場合があるのかまで書いてある解説は少ないので、条文で確かめます。
雇用保険法第14条は、失業手当を受けるために数える「被保険者期間」の計算方法を定めた条文です。その第2項第2号に、こう書かれています。被保険者となったことの確認があった日の2年前の日より前の期間は、被保険者であった期間に含めない。つまり基準は「働いた日」ではなく「ハローワークが確認した日」です。気づくのが遅れれば遅れるほど、拾える期間が後ろへずれていきます。だから、思い当たったら今日動いたほうがよいのです。
そして同じ号には括弧書きが付いています。第22条第5項に規定する者、すなわち被保険者が負担すべき保険料に相当する額が賃金から控除されていたことが明らかである人については、控除されていた最も古い時期まで遡れる、という内容です。給与明細に雇用保険料の行があった方は、この括弧書きに当たる可能性があります。2年という線は、保険料を引かれていた証拠がない場合の原則だと理解してください。
ここで大事なのは、明細を捨てないことです。会社側の賃金台帳が失われていても、労働者の手元にある明細が材料になります。紙の明細を処分してしまった方は、給与振込の記録が残っている預金通帳やインターネットバンキングの明細、源泉徴収票なども持っていきましょう。振込額だけでは保険料の控除は分かりませんが、在籍期間と給与の水準を示す材料にはなります。
会社が協力しない場合はどうするか。確認の請求は本人からできるので、会社の同意は要件ではありません。ハローワークが会社へ調査に入り、事実関係を確かめてから資格を認めるかどうかを決めます。会社が保険料の会社負担分を後から納めることになるため、渋られることは実際にあります。それでも手続きの主体はハローワークなので、本人が窓口に相談を持ち込めば話は前に進みます。
失業手当そのものの受給要件は「2年で12か月」
加入が認められたとして、それだけで失業手当が出るわけではありません。基本手当には別に受給要件があります。ハローワークの案内では、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上あること、と定められています。倒産や解雇などで離職した人(特定受給資格者、特定理由離職者)は、離職の日以前1年間に通算6か月以上でも足りる扱いです。
この「被保険者期間」の数え方にも決まりがあります。離職日から1か月ごとに区切って、その1か月の中で賃金の支払いの基礎になった日数が11日以上ある月を1か月と数えます。週2日勤務のような働き方だと、在籍していた月数と数えられる月数がずれてきます。ここで足りない人を救うために、11日に届かない月でも賃金の基礎になった時間数が80時間以上あれば1か月と数える、という補いの規定が置かれています。
倒産や解雇、契約期間の満了で更新されなかった場合は、条件が1年で6か月に緩みます。アルバイトの雇止めは、この「特定理由離職者」に当たる可能性がある形です。離職票の離職理由の欄が自己都合になっていると扱いが変わるので、実際は更新を断られたのに自己都合と書かれていた、という場合は窓口で事情を伝えてください。ハローワークは本人の主張と会社の主張、証拠書類を確認して最終的な離職理由を決める、と公表されています。
遡って加入した方に特に関係するのが、受給期間という考え方です。所定給付日数が残っていても、受給できる期間そのものに期限があります。
雇用保険の受給期間は、原則として、離職した日の翌日から1年間(所定給付日数330日の方は1年と30日、360日の方は1年と60日)ですが、その間に病気、けが、妊娠、出産、育児等の理由により引き続き30日以上働くことができなくなったときは、その働くことのできなくなった日数だけ、受給期間を延長することができます。ただし、延長できる期間は最長で3年間となっています。 出典: hellowork.mhlw.go.jp
離職した日の翌日から1年、という線は動きません。加入していなかったことに気づくのが遅れて、確認の手続きに数か月かかると、この1年を使い切ってしまう危険があります。遡って加入が認められても、受給期間が終わっていれば受け取れないのです。急いだほうがよい理由はここにもあります。なお病気やけが、妊娠、出産、育児で30日以上働けない期間があった場合は、その日数だけ受給期間を延ばす申請ができます。申請は早めが原則ですが、延長後の受給期間の最後の日までなら可能で、代理人や郵送でも受け付けられます。
所定給付日数は、離職理由と年齢、被保険者であった期間で決まります。一般の離職者で被保険者であった期間が10年未満なら90日、10年以上20年未満なら120日、20年以上なら150日です。1日あたりの額は、離職前6か月の賃金(賞与は除く)を180で割った賃金日額の50%から80%で、賃金が低い人ほど率が高くなる仕組みです。年齢区分ごとに上限があり、30歳未満は7,450円が上限になっています。
受給資格に届かなかったときに残っている制度
条件を確かめた結果、やはり12か月に届かなかった。この場合でも打つ手はあります。求職者支援制度です。
求職者支援制度は、再就職、転職、スキルアップを目指す方が 月10万円の生活支援の給付金を受給しながら、無料の職業訓練を受講する制度 です 離職して雇用保険を受給できない方、収入が一定額以下の在職者の方などが、給付金を受給しながら訓練を受講できます 出典: mhlw.go.jp
「雇用保険を受給できない方」が制度の対象として明記されている点が要点です。雇用保険なしのアルバイトから離職した方は、まさにこの制度の想定内にいます。
給付金の支給要件は公表されていて、本人収入が1か月あたり8万円以下、世帯全体の収入が1か月あたり30万円以下、訓練実施日すべてに出席すること、世帯の中で同時にこの給付金を受けて訓練を受けている人がいないこと、過去6年以内にこの給付金を受けていないことなどが並んでいます。支給されるのは職業訓練受講手当が1か月あたり10万円、加えて通所手当が定期乗車券などの額(1か月あたり上限42,500円)、別居して寄宿する場合は寄宿手当が1か月あたり10,700円です。
収入要件に届かない場合でも、本人収入が1か月あたり12万円以下かつ世帯収入が1か月あたり34万円以下で他の要件を満たすなら、通所手当だけを受けられる扱いがあります。さらに給付金だけでは生活費が足りない場合に備えて、求職者支援資金融資という貸付も用意されています。貸付額は単身者で1か月あたり5万円、扶養家族がいる人で1か月あたり10万円に受講予定の訓練月数を掛けた額、利率は2%で担保も保証人も要りません。
そして見落とされやすいのですが、給付金の要件を満たさない場合でも訓練そのものは無料で受けられます。収入や世帯の状況で給付金が出ないからと訓練まで諦める必要はありません。事務やパソコンの基礎から、経理、介護、Webの制作まで分野は幅広く用意されています。訓練を受けている間はハローワークが求職活動の相談にも付き合うので、独りで求人を探すより手数が増えます。
加入していた場合の待期と給付制限は、いまは原則1か月
遡って加入が認められ、受給資格も満たした。次に来るのが待期と給付制限の話です。ここは情報が古いまま流れている代表的な箇所なので、数字を確かめてください。
まず、受給資格の決定を受けた日から7日間は待期といって、誰でも基本手当が出ません。この7日は離職理由に関係なく全員に付きます。
そのうえで、自己都合の離職には給付制限が加わります。
正当な理由のない自己都合によって離職された方の給付制限期間は、離職日が令和7年4月1日以降である場合は原則1か月、同年3月 31日以前である場合は原則2か月となります。 ただし、離職日からさかのぼって5年間のうちに2回以上正当な理由なく自己都合離職し受給資格決定を受けた場合または自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された(いわゆる重責解雇)場合の給付制限期間は3ヵ月となります。 出典: hellowork.mhlw.go.jp
原則1か月です。「2か月」と書いてある解説は令和7年3月31日以前に離職した人の話で、いま離職した方には当てはまりません。改正から時間が経っていないため、検索して最初に出てくるページが古いままというのが今の状況です。
もう1つ、給付制限を解除できる道があります。離職の期間中、または離職日前1年以内に、雇用の安定と就職の促進に役立つ教育訓練を自ら受けた場合、給付制限が解除されて基本手当を受けられる扱いが令和7年4月から始まっています。何を受ければ該当するかは窓口で確かめる必要がありますが、訓練を考えている方は先に聞いておく価値があります。
雇止めや倒産、解雇での離職なら、そもそも給付制限は付きません。待期7日が明ければ支給の対象に入ります。離職票の理由欄がここに直結するので、繰り返しになりますが理由欄は必ず自分の目で見てください。
受給中にアルバイトを続ける場合の申告のしかた
失業手当を受けながら、生活のために短いアルバイトを続ける方が多くいます。これは禁じられていません。ただし申告が要ります。
厚生労働省が公開しているQ&Aでは、受給資格を決めるときに雇用保険の被保険者になっている期間中、あるいは契約期間が7日以上の雇用契約で週の所定労働時間が20時間以上かつ週の就労日が4日以上の場合は、実際に働いていない日も含めて「就職」している期間として扱われ、基本手当を受けられないとされています。逆に言えば、この線を超えない働き方なら受給手続き自体はできます。仕事をした日が支給の対象外になったり、収入の額によって減額されることがある、という扱いです。
申告を忘れた場合の扱いは重いので、そのまま引用します。
仕事をした日は雇用保険(基本手当)の支給対象とならなかったり、収入額により減額される場合がありますので、必ず失業認定申告書に記載の上、申告が必要です。 なお、申告をせずに、雇用保険(基本手当)を受給した場合は不正受給となり、以降の雇用保険(基本手当)の支給が停止するとともに、不正に受給した額の3倍の額の納付を命じられる場合があります。 出典: mhlw.go.jp
3倍という数字は覚えておいてください。1日だけ手伝った、報酬は現金で数千円もらっただけ、という規模でも、書かなければ不正受給として扱われます。書けば単に「その日は対象外」で済む話が、書かないことで受給そのものを失う話になります。手間と失うものの差が大きすぎるので、迷ったら全部書くのが正解です。
給付制限の期間中に働いた場合も同じです。収入があったかどうかにかかわらず、働いた日を初回の認定日と給付制限が明けた最初の認定日に提出する失業認定申告書へ書く、と案内されています。制限期間中は手当が出ていないから申告は要らないだろう、という思い込みが事故になります。
なお、基本手当そのものに税金はかかりません。雇用保険の給付はすべて非課税で確定申告の必要はない、と厚生労働省のQ&Aに明記されています。確定申告が必要になるのはアルバイトや内職の収入がある場合で、その部分だけを見ればよいことになります。
雇用保険に加入することの負担と、それでも加入しておく理由
遡って加入すると、労働者負担分の保険料を後から精算することになります。これを負担と感じて手続きをためらう方がいるので、金額の目安を置いておきます。
令和8年度の雇用保険料率は、一般の事業で労働者負担が1,000分の5、事業主負担が1,000分の8.5、合わせて1,000分の13.5です。労働者負担は賃金の0.5%なので、月額15万円の給与なら1か月あたり750円ほどになります。1年分を遡っても1万円に届かない水準です。手取りが減るのは事実ですが、失業したときに数十万円単位の給付につながる可能性と比べれば、判断は難しくありません。
保険料の負担以外に、加入によって不利になることはほとんどありません。よく心配されるのが配偶者の扶養から外れるのではないかという点ですが、雇用保険への加入と健康保険の被扶養者かどうかは別の判定です。ただし失業手当を受けている間は、その日額によって健康保険の被扶養者から外れる場合があります。厚生労働省のQ&Aも、扶養家族であっても受給要件を満たせば受給は可能だが、受給していると被扶養者になれない場合があるので加入している健康保険組合か勤務先に問い合わせるように、と案内しています。ここは制度の一般論では決まらず、加入先の判断が入るので、必ず自分の保険者に確かめてください。
もう1つ、雇用保険の被保険者であることは失業手当以外にもつながっています。働きながら学び直すときの教育訓練給付、育児や介護で休むときの給付、再就職が早く決まったときの再就職手当。どれも被保険者であることが前提です。目の前の失業手当だけを見て判断すると、こうした部分を丸ごと手放すことになります。
離職票が届かないときと、健康保険や年金の切り替え
加入の確認と並行して片付けておきたい手続きが2つあります。
1つは離職票です。失業手当の手続きには離職票が必要ですが、会社が出してくれない、連絡が取れない、会社がなくなってしまった、という相談が一定数あります。この場合も窓口はハローワークです。会社へ提出を求める働きかけをしてもらえますし、それでも出てこないときは、賃金台帳や給与明細、出勤簿などの資料をもとに離職の事実と賃金を確かめる扱いがあります。手元の資料が多いほど話が早く進むので、ここでも給与明細が効いてきます。会社が倒産した場合は、離職理由が倒産になるため給付制限が付かず、受給要件も1年で6か月に緩む可能性があります。
もう1つは健康保険と年金です。退職して会社の健康保険から外れたら、市区町村の国民健康保険に入るか、家族の被扶養者になるか、退職前の健康保険を任意継続するかの3つから選びます。国民健康保険の保険料は前年の所得で計算されるため、退職直後は前年の給与を基準にした額が請求されます。所得が下がったことを理由に軽減や減免を受けられる制度が用意されている自治体があるので、窓口で必ず聞いてください。年金は、厚生年金から国民年金の第1号被保険者への切り替えが必要で、国民年金保険料は令和8年度で1か月あたり17,920円です。収入が減っているなら保険料の免除や納付猶予の申請ができます。免除を受けた期間は、年金を受け取るために必要な期間として数えられるので、未納のまま放置するのとは扱いが違います。
この2つを先に片付けておくと、失業手当の相談に集中できます。逆にここを放置すると、あとから保険料の請求がまとまって届いて生活が圧迫されます。優先順位としては、ハローワークへの相談と同じ週に市区町村の窓口も回る、くらいの近さで考えておくとよいでしょう。
雇用保険の外側で働くなら、備えの形を自分で用意する
ここまでは雇用されている前提の話でした。在宅で仕事をする場合、雇用ではなく業務委託の形になることがあり、そのときは雇用保険の外側に出ます。
厚生労働省は、注文者から委託を受けて情報通信機器を使い、主に自宅かそれに準じた自分で選んだ場所で成果物の作成や役務の提供を行う働き方を「自営型テレワーク」と呼んでいます。この形は労働者ではないので、雇用保険にも労災保険にも自動では入りません。代わりに、注文者や仲介事業者が守るべき事項を定めた「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」が置かれていて、令和8年7月に一部改正されています。契約の内容を書面で明らかにする、報酬の支払期日を定める、といった内容が並んでいます。
雇用の外で働くと決めるなら、雇用保険が担っていた部分を自分で埋める設計が必要になります。具体的には、収入が途切れたときに生活を支える現金を先に確保しておくこと、取引先を1社に寄せないこと、単価の交渉ができる技能を持つこと。この3つです。3つめについて言えば、報酬の相場を知らないまま単価の話をするのは難しいので、職種ごとの水準を先に見ておくことをおすすめします。編集や執筆の仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場に業務の内容と報酬の幅が整理されていますし、開発の仕事ならソフトウェア作成者の年収・単価相場で経験年数ごとの差を確かめられます。
技能そのものを示す材料を持っておくと、条件の話がしやすくなります。事務や文書の仕事ならビジネス文書検定のように文書の作法を体系で扱う検定があり、ネットワークの分野ならCCNA(シスコ技術者認定)が実務での通用度が高い認定として知られています。訓練を受けるなら、求職者支援制度の無料の訓練と組み合わせる形も取れます。
報酬が支払われないという事故に備える知識も、雇用の外では自分の担当になります。支払いが止まったときにどう動くかは未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で費用と手順の順番が整理されています。雇用されていれば会社が背負っていたリスクが、委託では自分の側に移る、という理解が先にあると読みやすくなります。
市場の側から見た「雇用保険なし」という状態
在宅ワークと業務委託の市場を20年にわたって見てきた立場から、1つ観察を書いておきます。
雇用保険に入っていなかったという相談は、特定の業種に偏って出てきます。小規模の飲食、小売、個人の事業所、そして短時間の事務。共通しているのは、社会保険の手続きを担う人が社内にいないことです。悪意があって外しているケースより、届け出の存在自体を知らないまま何年も続いているケースのほうがずっと多いのが実感です。だからこそ、本人から確認を請求する道が用意されているのだと思われます。会社を責める前に、まず記録を確かめる。この順番のほうが早く終わります。
もう1つ、長く続く働き手の共通点についてです。単発の作業を数だけこなす人より、「この人に任せると楽だ」と思われる関係を作った人のほうが、結果として収入が安定しています。関係が続けば仕事が途切れにくく、途切れにくければ雇用保険がなくても生活が壊れにくい。制度で守られていない働き方を選ぶなら、制度の代わりになるのは技能と関係です。
仲介の手数料が乗らない直接の取引は、この関係づくりと相性がよいという面があります。同じ予算で依頼する側はより多く頼めますし、受ける側の手取りが厚くなります。金額の話ではなく、手取りが厚いと関係を続けるための余裕が生まれる、という順序で効いてきます。手数料0%という条件の値打ちは、単価表の数字ではなく、続けられるかどうかに出てくるものです。
今日から動くための順番を整理する
最後に、動く順番だけ並べておきます。
1つ目。雇用契約書と給与明細を全部出して、週の所定労働時間と契約期間を確かめる。週20時間以上と31日以上の見込みがそろっていたかを判定します。給与明細の控除欄に雇用保険料の行があるかも見てください。
2つ目。住んでいる場所を管轄するハローワークへ、本人確認の書類と集めた材料を持って行く。加入記録の照会と、必要なら被保険者資格の確認の請求を行います。確認があった日から2年という線が動くので、早いほど拾える期間が長くなります。
3つ目。受給資格に届かないと分かったら、同じ窓口で求職者支援制度の相談に切り替える。給付金の要件に届かない場合でも無料の訓練は受けられます。
4つ目。受給中にアルバイトや手伝いをしたら、金額の大小にかかわらず失業認定申告書へ書く。書けば減額で済み、書かなければ支給停止と3倍の納付という差になります。
5つ目。次の仕事を選ぶ段階で、雇用と業務委託のどちらで働くかを意識して決める。委託を選ぶなら、単価の相場と技能の示し方を先に用意しておくと条件の話が進みます。在宅でどんな仕事があるのかを俯瞰するなら、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事やAIコンサル・業務活用支援のお仕事のように分野ごとに業務の内容と求められる技能が整理された案内を先に読むと、求人票の言葉が読み解けるようになります。
雇用保険なしと言われた時点で終わりにしないでください。判定の材料は手元の紙にあり、確認を請求する権利は条文に書かれていて、資格に届かない人のための制度も別に用意されています。順番に確かめれば、どこかに必ず次の一手があります。
よくある質問
Q. アルバイトで雇用保険に加入していなかったのですが、いまから遡って加入できますか?
週の所定労働時間20時間以上と31日以上の雇用見込みを満たしていたなら、本人からハローワークへ被保険者資格の確認を請求できます。雇用保険法第8条は「いつでも」請求できると定めています。遡れる範囲は原則として確認があった日から2年前までですが、給与明細で雇用保険料が引かれていたことが示せる場合はそれより前まで遡れる扱いがあります。
Q. 週の労働時間が20時間未満だった場合、失業手当はまったく受け取れませんか?
基本手当の対象にはなりません。ただし厚生労働省の求職者支援制度は「雇用保険を受給できない方」を対象に含めています。要件を満たせば職業訓練受講手当が1か月あたり10万円支給され、通所手当も加わります。給付金の要件に届かない場合でも、職業訓練そのものは無料で受けられます。
Q. 自己都合で辞めた場合、失業手当が出るまで何か月待ちますか?
令和7年4月1日以降に自己都合で離職した場合は、待期7日の後に原則1か月です。令和7年3月31日以前の離職なら2か月でした。5年間のうちに2回以上正当な理由なく自己都合離職して受給資格決定を受けた場合や重責解雇の場合は3か月になります。古い「2か月」の記載が残っているページが多いので注意してください。
Q. 失業手当を受けながらアルバイトをすると、手当は止まりますか?
働いた日が支給の対象外になったり、収入の額によって減額されることがありますが、働くこと自体は禁じられていません。必ず失業認定申告書に書いてください。申告せずに受給すると不正受給として以降の支給が停止され、不正に受給した額の3倍の納付を命じられる場合があります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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