イラストの副業が会社に知られる場面と、公開の仕方の見直し

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
イラストの副業が会社に知られる場面と、公開の仕方の見直し

この記事のポイント

  • ✓イラストの副業が会社に知られる経路を4つに分け
  • ✓住民税の普通徴収を選べる条件
  • ✓作品の公開の仕方の見直しまで条文に沿って整理しました

イラストの副業が会社に知られるのではないかと心配している人へ、結論から書きます。知られる経路は4つしかありません。住民税、社会保険、自分の発信、取引相手です。このうち住民税は手続きで切れる場合があり、社会保険は副業の形によってはそもそも関係しません。逆に、自分の発信から知られる経路は制度の話ではないので、手続きでは防げません。世の中でよく言われる「普通徴収にすれば知られない」という説明は、条件付きでしか正しくありません。条文にその条件がはっきり書かれているので、まずそこを確かめます。

会社に知られる経路は4つしかない

整理から始めます。対策を考える前に、経路を並べたほうが早いです。

1つめは、住民税です。副業の所得が加わると、勤め先が給与から差し引く住民税の額が変わることがあります。勤め先には、市区町村から税額の通知が届きます。ここから気づかれる形です。

2つめは、社会保険です。副業先でも雇用されて加入の要件を満たすと、届出が必要になり、手続きの過程で両方の勤め先が関わります。業務委託で受ける形なら、この経路は発生しません。

3つめは、自分の発信です。作品を公開しているアカウント、投稿の時間帯、画風、プロフィールの書き方、実名とのつながり。ここから同僚や上司にたどられる形です。実際に相談として多いのは、この経路です。

4つめは、取引相手です。仕事を受けた相手が、自分の勤め先と取引のある会社だった、業界の知り合いが同じ案件に関わっていた、といった形です。

制度の話で対処できるのは1つめと2つめだけです。3つめと4つめは、自分の運用で変えます。世の中の情報は1つめの話に偏っていて、それだけ整えれば安心という空気がありますが、現実に多いのは3つめです。この記事では両方を扱います。

住民税の経路。普通徴収を選べる条件

ここが最も誤解が多い部分です。条文を見ると、はっきりしています。地方税法第321条の3が給与からの特別徴収を定めていて、その第2項の本文と但し書きはこうです。

前項の給与所得者について、当該給与所得者の前年中の所得に給与所得以外の所得がある場合においては、市町村は、当該市町村の条例の定めるところによつて、当該給与所得以外の所得に係る所得割額を同項本文の規定によつて特別徴収の方法によつて徴収すべき給与所得に係る所得割額及び均等割額の合算額に加算して特別徴収の方法によつて徴収することができる。 ただし、第三百十七条の二第一項の申告書に給与所得以外の所得に係る所得割額を普通徴収の方法によつて徴収されたい旨の記載があるときは、この限りでない。 出典: laws.e-gov.go.jp

条文を読み替えます。給与以外の所得があるとき、その分の税額は、給与から差し引く分に合算して徴収できます。ただし、申告書に「この分は自分で納めたい」と書いてあれば合算しません。これが「普通徴収を選べる」という話の根拠です。

重要なのは、対象が「給与所得以外の所得」に限られている点です。条文にそう書かれています。イラストを描いて報酬を受け取る形が業務委託なら、その所得は給与ではないので、この規定の対象になります。しかし、副業がアルバイトなどの雇用契約なら、その所得は給与です。給与所得については、この但し書きが使えません。

ここが、よく間違われる部分です。「普通徴収を選べば知られない」という説明は、業務委託や個人での販売という形に限った話です。イラストの副業は業務委託の形が多いので、この規定が使える場面が多いのですが、たとえば制作会社で時間給で働く形を選ぶと、使えなくなります。

手続きの方法も確かめます。所得税の確定申告をする場合は、確定申告書の住民税に関する事項の欄で、給与から差し引かない方法を選びます。確定申告をしない場合は、住民税の申告書で同じ選択をします。選択を忘れると合算されるので、提出前に必ず確かめます。

なお、この規定は「市町村の条例の定めるところによつて」という前提が付いています。運用が自治体で完全に一致するわけではありません。提出先の市区町村の案内を確かめるのが確実です。

20万円の線は所得税だけの話。住民税の申告は別

住民税の話をもう1つ整理します。「20万円以下なら何もしなくていい」という理解は誤りです。

まず所得税の側を確かめます。国税庁のタックスアンサーは、給与所得者の副収入についてこう説明しています。

しかし、年末調整が済んでいる給与所得者であっても、その給与所得以外に副収入等によって20万円を超える所得を得ている場合には、確定申告をすれば税金が還付される人を除いて、確定申告が必要となります 出典: nta.go.jp

同じページは、インターネットを利用した個人取引による所得や、人的役務の提供による所得を、一般的に雑所得に当たるものとして挙げています。イラストの依頼を受けて描いた報酬は、多くの場合ここに入ります。

この20万円は所得の金額です。売上ではありません。画材、ソフトの利用料、通信費のうち作業に使った部分、機材の費用は、必要経費として差し引ける可能性があります。売上が25万円で経費が8万円なら、所得は17万円なので20万円を超えません。

そして、この線は住民税にはありません。地方税法第317条の2は、3月15日までに、賦課期日現在の住所地の市町村長へ申告書を提出しなければならないと定めています。給与以外の所得があれば、金額が小さくても住民税の申告は必要です。

ここに、逆の落とし穴があります。所得が20万円以下で確定申告をせず、住民税の申告もしなかった場合、市区町村はその所得を把握していません。あとから取引先が支払調書を出したり、税務署の調査で判明したりすると、申告漏れとして処理されます。そのとき、勤め先を経由して連絡が行く形になることがあります。申告しないことが、かえって知られる経路を作る場合があるのです。

住民税の申告だけを出す場合も、普通徴収の選択ができます。申告書にその記載をします。所得が小さいうちは確定申告をしない選択も合理的ですが、住民税の申告と普通徴収の選択はセットで済ませます。

社会保険と雇用保険の経路

2つめの経路を見ます。ここは副業の形で結論が変わるので、自分がどちらなのかを先に決めます。

業務委託でイラストの仕事を受ける形なら、社会保険の手続きは発生しません。厚生年金保険と健康保険は、事業所に使用される人が対象です。業務委託は使用される関係ではないので、加入の対象になりません。本業の社会保険にそのまま入り続ける形で、届出も要りません。この場合、この経路は存在しないと考えて構いません。

一方、副業先で雇用され、その勤め先でも加入の要件を満たすと、届出が必要になります。日本年金機構の案内では、事実が発生してから10日以内に被保険者所属選択・二以上事業所勤務届を提出し、それぞれの勤め先で受ける報酬月額を合算した額で標準報酬月額が決まります。保険料は各勤め先で受ける報酬月額に基づいて按分されます。この手続きは両方の勤め先が関わる形になるので、副業の存在が伝わります。

雇用保険は別の扱いです。原則として、主に賃金を受ける1つの勤め先で加入します。複数の勤め先で重ねて加入する形は取りません。65歳以上の人が2つの勤め先の労働時間を合計して加入できる制度はありますが、対象が限られています。

労働時間の通算も押さえておきます。労働基準法第38条は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めています。2か所で雇用されて働く形だと、労働時間が通算されるので、時間外労働の扱いが出てきます。会社が把握しなければならない事項なので、自然に伝わる構造です。

結論として、社会保険の経路を避けたいなら、副業の形を業務委託に寄せるのが確実です。イラストの仕事は業務委託で受けられるものが多いので、この選択は難しくありません。

自分の発信から知られる経路

実際の相談で最も多いのがここです。制度の話ではないので、手続きでは防げません。運用を変えます。

つながりが生まれる場面を具体的に並べます。作品を公開しているアカウントのプロフィールに、居住している地域や勤務先の業種を書いている。作品に添えた文章で、勤め先の出来事に触れている。投稿の時間帯が勤務時間と反転していて、生活のパターンが読める。本業で使っているアカウントと、同じ画像や同じ表現の癖がある。連絡先のメールアドレスが実名の一部を含んでいる。過去に実名で活動していた時期の投稿が残っている。

見直す手順を並べます。

1つめは、アカウントの分離です。作品を公開するアカウントで、本名や勤め先が読み取れる情報を出しません。連絡先のメールアドレスは、活動用に新しく用意します。既存のアドレスを使い回すと、検索で結びつきます。

2つめは、過去の投稿の確認です。何年も前の投稿に、実名や勤め先が残っていることがあります。アカウントの履歴を古いほうから確かめます。プロフィール画像やヘッダーの画像に、勤務先の建物や制服が写り込んでいる例もあります。

3つめは、画像そのものの確認です。写真を含む作品を出す場合、撮影時に記録された位置情報が画像に残っていることがあります。作品を撮影して公開する形を取るなら、公開前に情報を落とします。作業画面をそのまま公開する形も、開いているファイル名やアプリの表示から情報が読めます。

4つめは、連絡の入口です。依頼を受ける窓口を、氏名を書かなくても成り立つ形にします。匿名で使える依頼の受付サービスや、仲介するサービスの仕組みを使う形です。

5つめは、支払いの受け取りです。振込先の口座名義は相手に見えます。屋号を使った口座を作る選択もありますが、個人事業の口座を作るには開業の届出が必要になる場合があります。仲介するサービスを通して受け取る形なら、名義が直接相手に見えない設計のものもあります。

6つめは、周囲への話です。実務上、いちばん多い経路がこれです。同僚に打ち明けた、家族が話した、友人が作品を共有した。制度や技術ではどうにもならないので、話す相手を決めるという運用の問題になります。

取引相手から知られる経路

4つめの経路も、制度では防げません。ただし、判断で減らせます。

避けたほうがいいのは、勤め先と取引のある会社から直接受ける形です。担当者のつながりで話が伝わります。同じ業界の同業他社から受ける形も、就業規則の競業の条文に触れる可能性があるので、二重の意味で避けます。

受ける前に確かめることを並べます。発注元の社名と、その会社が自社と取引しているかどうか。作品がどこで使われるのか。制作した人の名前が表示されるのか。表示される場合、その名前を活動用の名前にできるのか。

作品に名前が出る仕事は、実績として残る価値がある一方、知られる経路を作ります。どちらを取るかは自分で決める話ですが、受ける前に決めます。納品後に「名前を出さないでほしい」と言うと、相手の作業が増えて関係が悪くなります。

条件は最初に文書で確かめます。2024年11月に施行された特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の第3条は、業務を委託した側が「直ちに」給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面または電磁的方法で明示しなければならないと定めています。この明示を求める中で、名前の表示の扱いも決めておきます。取引の条件を整えるという話は、知られる経路を管理する話とつながっています。発注と受注のルールの全体像はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにまとまっているので、何を決めておくべきかの一覧として使えます。

就業規則をどう読むか

そもそも、副業が禁止されているのかを確かめます。多くの人が確かめずに心配しています。

厚生労働省のモデル就業規則は令和7年12月版で、副業と兼業の条文を第70条に置いています。届け出制を原則とし、会社が禁止または制限できる事由を4つに限定しています。労務の提供に支障がある場合、企業の秘密が漏れる場合、会社の名誉や信用を損ない信頼関係を壊す場合、競業により会社の利益を侵害する場合です。

イラストの副業を、この4つに当てはめて考えます。1つめは、作業が深夜に及んで本業に影響が出る形が該当しかねません。2つめは、本業で知った情報を題材にする形が該当します。3つめは、作品の内容が公序良俗に反する場合や、勤め先が分かる形で問題のある表現を出す場合です。4つめは、勤め先と同じ市場で競合する形で受ける場合です。

逆に言えば、本業の時間と情報を使わず、勤め先と競合しない題材で、勤め先が分からない形で活動する限り、この4つには当たりません。自社の就業規則がモデルどおりとは限らないので条文は確かめる必要がありますが、一律に禁止する形は現在の考え方に合っていません。

許可制になっている会社もあります。その場合は、申請を出して判断を仰ぐ形になります。申請には、業務の内容、稼働する時間帯、想定する時間数、競業がないことを書きます。出してみたら通ったという例は珍しくありません。隠し続けるコストと、申請して通る可能性を比べる価値があります。

活動用の名前と、依頼を受ける窓口の設計

発信の経路を減らす具体策を、もう少し踏み込んで書きます。ここは一度決めてしまえば、あとは運用するだけです。

活動用の名前は、検索で本名に結びつかないものにします。本名の一部を並べ替えた名前、読み方が同じで表記を変えただけの名前は、結びつきます。過去に別の趣味の活動で使っていた名前も避けます。その名前で実名を出していた履歴が残っている可能性があります。

新しく決めた名前は、先に検索してみます。同じ名前で活動している人がいると、依頼の連絡が混ざります。商標として登録されている語だと、使い続けるうちに問題になります。名前を決める段階で、その名前の検索結果を一度見るだけで防げます。

依頼を受ける窓口は、氏名を書かなくても成り立つ形を選びます。選択肢を3つ並べます。1つめは、匿名で依頼を受け付けられる専用のサービスを使う形です。金額と納期が仕組みとして固定されるので、やりとりが少なくて済みます。2つめは、仲介するサービスに登録する形です。支払いが仲介されるので、口座名義が相手に見えません。3つめは、活動用のメールアドレスだけを公開する形です。自由度は高いものの、条件のやりとりを自分で回す必要があり、支払いの管理も自分で行います。

どれを選ぶ場合も、返信で書く内容を定型にしておくと安全です。毎回その場で文章を作ると、つい余計なことを書きます。「本業の都合で納期は週末になります」といった一文が、勤務形態の情報になります。定型の文面に、必要な項目だけを埋める形にします。

断り方も決めておきます。受けられない依頼を曖昧に保留すると、理由を説明する場面が増えて、情報が出ます。「現在は新規の受付を止めています」という一文で終える形が、いちばん情報が漏れません。理由を説明する義務はありません。

交流サイトごとに確かめる設定

発信の場ごとに、確かめる設定が違います。抜けやすい箇所を並べます。

まず、アカウントを作ったときの連絡先です。電話番号で登録していると、連絡先を同期している知人に候補として表示される仕組みがあります。この機能を切る設定が用意されている場合は切ります。新しく作るなら、電話番号を使わずに登録できるかを確かめます。

次に、おすすめとして表示される仕組みです。同じ端末や同じ連絡先を持つ人に、アカウントが提案される設計があります。本業のアカウントと同じ端末から両方を操作していると、結びつく可能性があります。設定で提案の対象から外せる場合は外します。

続いて、公開範囲です。投稿を誰でも見られる状態にしておくと、検索から到達されます。作品を広く見てほしい活動なので、公開を狭めるのは目的と矛盾します。そこで、公開する内容のほうを絞ります。作品だけを出し、生活の記述を出さない形にすると、範囲を広く取っても情報は出ません。

投稿の時間帯も情報です。平日の同じ時刻に必ず投稿がある形だと、勤務のパターンが読めます。投稿を予約して時間を散らす機能があれば使います。

プロフィールに書く情報も見直します。居住している地域、出身、年齢、業種のうち、活動に必要なものはほとんどありません。作品の傾向と、依頼の受付状況だけで足ります。書けば書くほど、絞り込む材料が増えます。

最後に、他の人からの言及です。友人が作品を共有するときに、本名を添えてしまう例があります。共有してもらうときに、名前を出さないでほしいと伝えておきます。自分の設定をいくら整えても、他人の投稿からは漏れます。

本業に影響を出さないための時間の設計

制度と発信の話を整えても、本業に影響が出れば結局は問題になります。就業規則が禁止できる事由の1つめが「労務の提供に支障がある場合」なので、ここは直接つながっています。

受ける量を決める方法は単純です。1週間のうち副業に使える時間を先に決め、その時間で納められる量だけを受けます。1件にかかる時間が分かっていないと、この計算ができません。だから作業時間の記録が要ります。

納期の置き方も工夫します。相手に伝える納期は、自分の見込みより数日先にします。体調や本業の繁忙で作業が止まったときの余裕になります。前倒しで納められれば評価が上がり、遅れなければ約束どおりです。ぎりぎりの納期を約束して、本業の残業と重なって徹夜する形が、いちばん危ないです。

繁忙期は先に断ります。本業に決算期や納期が集中する時期があるなら、その期間は新規の受付を止めます。予定が読める分だけ、事前に対処できます。

作業の場所も分けます。本業の端末やネットワークで副業の作業をする形は、情報が混ざるだけでなく、規則違反になることがあります。私物の端末と回線を使い、ファイルの保存先も分けます。本業で使うクラウドの保存領域に副業のファイルを混ぜると、共有の設定を誤ったときに一気に出ます。

睡眠を削って量をこなす形は続きません。半年から1年で止まり、その前に本業でミスが出ます。長く続けている人は例外なく、受ける量を絞っています。量を絞っても収入を保つには、単価を上げる必要があります。単価は、描く速さより、取引を整える力と提案できる幅で決まります。

時間の記録は、あとから自分を守る材料にもなります。本業に支障が出ていないかを問われたときに、いつ何時間作業したかを示せると、話が短く済みます。逆に記録がないと、心配している側の想像で判断されます。就業規則が禁止できる事由に当たっていないことを自分で示せる状態を作っておくのが、いちばん確実な備えです。表計算のファイル1つで足りるので、作業を始める前に日付と開始時刻を書き、終わったら終了時刻を書くだけの形にします。凝った仕組みを用意すると続きません。

会社の業務で描いたものは、誰のものか

見落とされやすい論点です。会社でイラストやデザインの業務をしている人は、ここを確かめておきます。

著作権法第15条は、法人の発意に基づき、その法人の業務に従事する者が職務上作成する著作物で、その法人の名義で公表するものについて、契約や勤務規則に別段の定めがない限り、著作者はその法人になると定めています。

つまり、会社の仕事として描いたものは、原則として会社が著作者です。これを自分の作品として公開したり、副業の実績として見せたりすると、権利の問題になります。「自分が描いたのだから自分のもの」という感覚と、条文の扱いが違います。

実績を見せたいときは、会社に確認して許可を得た範囲で出します。許可を得ずに出すと、就業規則の企業秘密の条項にも触れる可能性があります。ここは副業が知られるかどうかという話ではなく、出した時点で問題になる話です。

逆の場面も押さえます。副業で自分が描いたものは、契約で権利を渡すと決めていない限り、自分に権利があります。取引条件を明示してもらうときに、権利をどう扱うかを決めておく理由がここにあります。曖昧なままにすると、あとから使われ方で揉めます。

開業届と、事業所得か雑所得か

規模が大きくなってきたら、この論点が出てきます。知られるかどうかとは別に、税の扱いが変わります。

開業の届出について、所得税法第229条は次のように定めています。

居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し、若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、税務署長に提出しなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

期限は「その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限まで」です。世の中には「開業から1か月以内」と書いている情報が多く残っていますが、現在の条文はこうなっています。

事業所得として扱われる場合、青色申告を選ぶと控除が使えます。国税庁の説明では、青色申告特別控除は所得金額から55万円、一定の要件を満たす場合は65万円、または10万円を控除する仕組みです。65万円の控除を受けるには、55万円の要件に加えて、仕訳帳と総勘定元帳の電子帳簿保存を行うか、確定申告書と貸借対照表、損益計算書などを提出期限までにe-Taxで送信する必要があります。

雑所得と事業所得のどちらに当たるかは、営利性や継続性、規模などから判断されます。どちらになるかで、損失を他の所得と通算できるかどうかや、青色申告が使えるかどうかが変わります。金額が大きくなってきたら、税務署か税理士に事実を伝えて確認するのが確実です。記事の記述をもとに自分で決めない領域です。

なお、開業の届出を出すことで会社に情報が行くことはありません。届出先は税務署です。屋号での口座開設や、経費の記録を整える目的で出す人が多く、副業が知られる経路にはなりません。

記録の作り方と、金額が動くときの備え

知られないようにする話と並べて、続けるための実務も書きます。ここを整えている人のほうが、結果として問題が起きません。

記録は3つに分けます。1つめは、取引の記録です。誰から、いつ、何を依頼され、いくらで、いつ支払われたかを1つの表に残します。2つめは、経費の記録です。画材、ソフトの利用料、機材、通信費のうち作業に使った部分を、領収書と一緒に残します。3つめは、作業時間の記録です。1件にどれだけかかったかを書いておくと、時間あたりの金額が見えます。

時間あたりの金額を出すのが、いちばん効きます。金額を上げるべきか、断るべきかの判断がつくようになります。世の中の水準を知っておくと、比べる先ができます。文章や編集の仕事の単価水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場、開発の仕事の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっています。

支払われないときの備えも要ります。イラストの取引は個人相手が多く、支払いが止まる場面があります。回収の流れと費用の目安は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に整理されています。手順を知っていると、相手を選ぶ目も変わります。

取引のやりとりを自分で整える力も、単価に直結します。見積書、請求書、納品の連絡を過不足なく出せると、相手の手間が減って次の依頼が来ます。ビジネス文書検定のような形で基礎を確かめておくと、書式を毎回調べる手間がなくなります。

20年この市場を見てきた立場からの観察

在宅ワークとフリーランスの市場を20年見てきた立場から言えば、副業が勤め先に知られて問題になった例の大半は、住民税の経路ではありません。本人の発信か、周囲への話です。住民税の話がこれだけ広く語られているのは、手続きで対処できるので書きやすいからだと思います。正直なところ、対策の重心が実態からずれています。

もう1つ、運営者として見てきた限りではっきりしていることがあります。知られることを恐れて隠し続けた人より、就業規則を確かめて届け出を出した人のほうが、長く続いています。届け出を出すと、稼働時間を会社が把握している状態になるので、無理な受注を自分で止めるようになります。隠していると、誰にも見られていない状態になるので、際限なく受けてしまい、本業に影響が出て発覚するという順番をたどります。この順番を何度も見てきました。

金額の話もします。仲介が入る取引では、中間の手数料が受け手の手取りを削ります。同じ予算を用意した依頼者から見ると、手数料が乗るほど頼める量が減ります。手数料0%で直接つながる取引が広がってきたのは、この双方が得をする構造があるからです。手取りが厚くなると、同じ収入を得るために受ける件数が減ります。件数が減れば、稼働時間が減り、本業への影響も小さくなります。知られるかどうかの心配を減らすいちばん確実な方法は、じつは単価を上げることです。

確かめる順番をもう一度並べます。就業規則の副業の条文を読む。副業の形が業務委託か雇用かを整理する。業務委託なら、住民税の申告書で普通徴収を選ぶ。20万円以下でも住民税の申告は出す。発信しているアカウントと過去の投稿を見直す。取引相手が勤め先と関係していないかを確かめる。会社の業務で描いたものを実績に使わない。規模が大きくなったら開業の届出と所得の区分を確認する。この8つで、心配の大半は片づきます。仕事の幅を広げる方向を考えるなら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で、絵を描く力とつながる領域を見ておくと、選べる道が増えます。

よくある質問

Q. 住民税を普通徴収にすれば、会社に知られませんか?

条件付きです。地方税法第321条の3第2項のただし書きが認めているのは「給与所得以外の所得」に係る税額だけです。業務委託でイラストの報酬を受け取る形なら選べますが、副業がアルバイトなどの雇用契約だと、その所得は給与なので選べません。また運用は市区町村の条例によるので、提出先の案内を確かめてください。

Q. 所得が20万円以下なら、何もしなくてよいですか?

所得税の確定申告は不要になる場合がありますが、住民税は別です。地方税法第317条の2により、3月15日までに住所地の市区町村へ申告書を提出する必要があります。申告しないまま後から所得が判明すると、勤め先を経由して連絡が行く形になることがあり、かえって知られる経路を作ります。

Q. 副業のイラストで社会保険の手続きは必要ですか?

業務委託で受ける形なら不要です。厚生年金保険と健康保険は事業所に使用される人が対象で、業務委託は使用される関係ではありません。副業先で雇用され、その勤め先でも加入の要件を満たす場合は、事実の発生から10日以内に被保険者所属選択・二以上事業所勤務届を提出します。この手続きは両方の勤め先が関わります。

Q. 会社の仕事で描いたイラストを、副業の実績として見せてよいですか?

著作権法第15条により、法人の発意に基づき業務に従事する者が職務上作成し、その法人の名義で公表する著作物は、契約や勤務規則に別段の定めがない限り、著作者はその法人になります。会社の仕事として描いたものは原則として会社のものなので、実績として出す場合は会社に確認して許可を得た範囲にとどめます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月20日最終更新:2026年9月27日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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