副業先の会社名は本業にばれるのか|書類に載る情報と確かめ方


この記事のポイント
- ✓副業会社名ばれるという不安に対し
- ✓本業へ実際に届く書類と
- ✓そこに載る情報を条文で確認
副業をしていることは知られてもいい。でも副業先の会社名までは知られたくない。この線引きで悩んでいる人は多いはずです。
結論から書きます。本業の会社に届く書類は、市区町村から送られてくる住民税の通知が中心で、そこに記載されるのは金額です。副業先の会社が本業の会社へ直接何かを送ることはありません。ただし、知られる経路は書類だけではなく、住民税の金額、社会保険の手続き、雇用保険の手続き、そして人づてという4つがあります。このうち会社名まで伝わる可能性があるのは社会保険の経路で、そこにも条件があります。
この記事では、それぞれの経路を条文と公式の資料で分解し、どこで何が伝わるのかを確かめます。そのうえで、隠すことに労力を使うより先にやるべきことも示します。データで見ていくので、噂で語られている部分と制度上の事実を分けて理解できるはずです。
先に方向性を示しておきます。副業がアルバイトなど雇用による給与か、業務委託による事業所得または雑所得かで、伝わり方はまったく違います。この二つを混ぜて書いている解説が多いため、同じ検索をしても答えがばらばらに見える。ここを分けて読めば、自分の場合の結論が出ます。
本業の会社に実際に届く書類は何か
まず、経路の全体像を押さえます。会社員が副業をした場合、本業の会社に届く可能性のある書類は次のとおりです。
一つ目は、市区町村から送られてくる住民税の特別徴収税額の決定通知書です。毎年5月から6月ごろ、会社を通じて従業員に渡されます。ここには、前年の所得と、それに基づいて計算された住民税の年額と月ごとの徴収額が記載されます。
二つ目は、社会保険に関する通知です。副業先でも社会保険に加入する条件を満たした場合に発生します。
三つ目は、ありません。副業先の会社が本業の会社へ、雇用の事実や支払った報酬を直接知らせる仕組みは存在しません。税務署から本業の会社へ副業の内訳が通知されることもありません。
つまり、噂でよく語られる「税務署から会社に連絡が行く」という話は、制度としての裏付けがありません。伝わるとすれば、市区町村から会社へ送られる住民税の通知を経由するか、社会保険の手続きを経由するかのどちらかです。順に見ていきます。
住民税の仕組みを条文で追う
住民税がどう決まり、どう会社に伝わるかを、地方税法の条文で確認します。ここを理解すると、噂と事実の切り分けができます。
出発点は、給与支払報告書です。地方税法第317条の6は、1月1日現在において給与の支払をする者で、所得税を徴収する義務があるものは、同月31日までに、給与の支払を受けている者について前年中の給与所得の金額その他必要な事項を記載した給与支払報告書を、その人の1月1日現在における住所所在の市町村長に提出しなければならないと定めています。
ここが重要な点です。給与支払報告書の提出先は市区町村であって、本業の会社ではありません。副業先が提出した報告書は、あなたが住んでいる市区町村に集まります。
なお同条第3項には例外があります。年の中途で給与の支払を受けなくなった人については、その年の給与の総額が30万円以下である場合には提出しなくてよいとされています。逆に言えば、年末まで在籍している場合は金額にかかわらず提出されます。
次に、住民税の申告です。地方税法第317条の2は、申告書を3月15日までに、賦課期日現在における住所所在地の市町村長に提出しなければならないと定めています。よく言われる20万円の線は所得税の確定申告に関する基準であって、住民税の申告義務とは別の話です。所得税の確定申告をした場合はその内容が市区町村へ回るため住民税の申告は不要になりますが、確定申告が不要な場合でも住民税の申告が必要になる場合があります。
そして徴収です。地方税法第321条の3第1項は、前年中に給与の支払を受けた者であり、当該年度の初日において給与の支払を受けている者については、給与所得に係る所得割額と均等割額の合算額を特別徴収の方法によって徴収するものとすると定めています。特別徴収とは、会社が給与から天引きして納める方法のことです。
市区町村は、あなたが住む自治体に届いた情報を合算して住民税を計算し、その金額を本業の会社に通知します。会社から見えるのは、この計算結果としての金額です。
普通徴収を選べるのは給与所得以外の所得だけ
ここが、この記事でいちばん誤解の多い部分です。条文を正確に読みます。
地方税法第321条の3第2項は、給与所得者に給与所得以外の所得がある場合、市町村は条例の定めるところによって、その給与所得以外の所得に係る所得割額を、給与所得に係る所得割額と均等割額の合算額に加算して特別徴収することができると定めています。そして、ただし書きにこう続きます。
ただし、第三百十七条の二第一項の申告書に給与所得以外の所得に係る所得割額を普通徴収の方法によつて徴収されたい旨の記載があるときは、この限りでない。 出典: e-Gov法令検索(地方税法第321条の3第2項)
つまり、申告書に「自分で納める」と記載すれば、その部分は会社の給与から天引きされません。これが一般に言われる普通徴収の選択です。
ただし、対象は給与所得以外の所得に限られています。ここが決定的です。副業がアルバイトやパートなど雇用による給与である場合、その所得は給与所得なので、この規定では自分で納める方法を選べません。副業が業務委託で事業所得または雑所得になる場合は、選べる可能性があります。
副業先の会社名が知られるかどうかを心配している人の多くは、副業がアルバイトのケースです。その場合、住民税は本業と副業の給与を合算して計算され、本業の会社を通じて特別徴収されます。会社から見えるのは、給与の額に対して住民税が多いという金額の不一致です。会社名は分かりませんが、他に収入があることは推測できる状態になります。
なお、同条第3項には、特別徴収が適当でないと認められる特別の事情が生じた場合に、本人の申出により普通徴収へ切り替える仕組みも定められています。ただし、これも「給与所得以外の所得に係る所得割額」が対象です。実際の運用は市区町村の条例によって異なるため、自分の自治体でどう扱われるかは住民税の担当課に確認してください。
確定申告書に副業先の名前を書く欄はあるか
確定申告をする場合、申告書には所得の内訳を記載する欄があります。給与や報酬の支払者の名称を書く欄があるため、「ここに書いたら本業に伝わるのでは」と心配する人がいます。
制度としては、確定申告書の提出先は税務署です。税務署から本業の会社へ、副業の内訳が知らされる仕組みはありません。税務署が取りまとめた所得の情報は市区町村へ回りますが、市区町村が会社へ通知するのは住民税の税額です。
ただし、通知書の様式は自治体ごとに定められており、記載される項目にも幅があります。自分の自治体の通知書にどの情報が載るかを知りたい場合は、住民税の担当課に様式を確認するのが確実です。推測で判断しないでください。
確定申告そのものは避けて通れません。所得税の申告が必要になる条件に当てはまるのに申告しなければ、加算税や延滞税の対象になります。住民税の申告義務も別に定められています。申告しないという選択は、会社に知られるかどうか以前に、法令上の問題を抱えることになります。
申告の手続きは費用をかけずに進められます。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、画面の案内に沿って入力するだけで申告書を作成でき、電子申告で提出まで完結します。書き方に迷う場合は、税務署の相談窓口でも確認できます。
住民税の通知書を自分で先に確かめる手順
会社に届く前に、自分で内容を確かめる方法があります。噂に振り回されるより、実物を見るほうが早い。
第一の方法は、市区町村の住民税担当課に様式を問い合わせることです。特別徴収税額の決定通知書には、事業主に送る控えと本人に渡す控えがあります。どの項目が記載されるかは自治体が定める様式によるので、担当課に聞けば教えてもらえます。電話で「勤務先に送られる通知にどの項目が載るか」と尋ねれば足ります。
第二の方法は、前年の通知書を見返すことです。毎年5月から6月ごろに会社経由で受け取っているはずの書類です。手元に残っていれば、記載項目がそのまま確認できます。副業を始める前の年の通知書でも、様式は同じなので参考になります。
第三の方法は、自治体が公開している様式の見本を探すことです。多くの自治体が、事業主向けの案内のなかで通知書の見本を公開しています。自分の住む自治体のサイトで、住民税の特別徴収に関する事業主向けページを探してください。
確かめるときの観点は三つです。所得の種類ごとに内訳が分かれて記載されるか。支払者の名称が記載される欄があるか。給与以外の所得がある場合にその旨が表示されるか。この三つが分かれば、自分の状況で何が伝わるかを推測できます。
確かめずに不安だけを抱えると、判断を誤ります。たとえば「副業がばれないように申告しない」という選択は、会社に知られるかどうかとは別に、加算税や延滞税という確実な不利益を招きます。確かめてから判断してください。
年末調整と確定申告の関係を整理する
副業をしている人が混乱しやすいのが、年末調整と確定申告の役割分担です。ここを整理します。
年末調整は、給与の支払者が1年間に源泉徴収した所得税を精算する手続きです。本業の会社で行われます。扶養控除等申告書は、原則として1か所にしか提出できません。本業に提出している場合、副業先では提出できないため、副業先での源泉徴収の税額計算が本業とは違う扱いになります。
副業がアルバイトなど給与の場合、本業の年末調整では副業分の給与が計算に入りません。そのため、2か所以上から給与を受けている人は、原則として確定申告で精算することになります。申告しないままだと、税額が本来より少なくなっている状態が残ります。
副業が業務委託で事業所得または雑所得になる場合も、一定の条件に当てはまれば確定申告が必要です。報酬から源泉徴収されている場合は、申告によって精算されます。経費として認められる支出を差し引けるのはこの形なので、記録を残しておくことが金額に直結します。
確定申告をすると、その内容は市区町村に回ります。改めて住民税の申告をする必要はありません。逆に、確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。所得税と住民税で基準が違うという点を、繰り返しになりますが押さえておいてください。
申告が必要かどうかの判断は、収入の種類と金額、控除の適用状況で変わります。自分のケースについては、税務署の相談窓口か税理士に確認してください。国税庁のサイトには、申告が必要な人の条件が項目ごとに整理されています。
社会保険の手続きから伝わる経路
会社名まで伝わる可能性が最も高いのが、この経路です。副業先でも社会保険に加入する条件を満たした場合に発生します。
日本年金機構は、被保険者が同時に2か所以上の適用事業所に使用されることとなった場合について、次のように説明しています。被保険者本人の届出により、主たる事業所を選択して管轄する年金事務所または保険者等を決定します。それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額により標準報酬月額を決定します。保険料は、決定した標準報酬月額による保険料額を、それぞれの事業所で受ける報酬月額に基づいて按分して決定します。
そして、手続きの流れにこう書かれています。
なお、決定した標準報酬月額および保険料額は、選択した事業所の所在地を管轄する事務センターから、それぞれの事業所へ通知します。 出典: 日本年金機構
つまり、本業の会社にも通知が届きます。しかも、そこに示される標準報酬月額は、本業と副業の報酬を合算して決められたものです。本業の給与だけでは説明できない金額になるため、他にも勤務先があることは明らかになります。
届出は本人が行います。同じページでは、事実発生から10日以内に被保険者が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を日本年金機構へ提出する必要があるとされています。この届出は義務であり、出さないという選択肢はありません。
ここで確認しておきたいのは、この手続きが発生するのは副業先でも社会保険の加入条件を満たした場合だという点です。短時間で働く人の加入要件には、勤め先の従業員数の基準に加えて、週の所定労働時間が20時間以上であること、学生ではないこと、所定内賃金が月額8.8万円以上であることが並んでいます。賃金の要件には2026年10月に撤廃される予定という注記が付いており、つまり現在はまだ残っています。あわせて、2か月を超えて雇用される見込みであることも必要とされています。
副業が業務委託であれば、そもそも副業先で社会保険に加入しないため、この経路は発生しません。副業の形を雇用にするか業務委託にするかで、この点が大きく変わります。
副業先での社会保険加入を避けたい場合に確認すること
二以上事業所勤務届が発生するのは、副業先でも社会保険の加入条件を満たした場合です。条件を正しく知っておくと、働き方の設計ができます。
加入の条件は、勤め先の従業員数の基準と、働き方の要件の組み合わせで決まります。働き方の要件は、週の所定労働時間が20時間以上であること、学生ではないこと、所定内賃金が月額8.8万円以上であること、そして2か月を超えて雇用される見込みであることです。このうち賃金の要件については、厚生労働省の特設ページに「2026年10月に賃金要件を撤廃予定」という注記が付いています。撤廃されれば、週20時間以上で2か月を超える見込みがあるという条件だけで加入することになります。
企業規模の基準も段階的に広がる予定が示されています。従業員数36人から50人の企業は2027年10月から、21人から35人の企業は2029年10月から、11人から20人の企業は2032年10月から、10人以下の企業は2035年10月から対象になるとされています。つまり、今は対象外の小さな会社でも、将来は対象になります。
ここから導かれるのは、雇用で副業を続ける限り、社会保険の加入を避ける余地は年々狭くなるということです。加入すれば二以上事業所勤務届が必要になり、本業にも通知が届きます。制度の方向としてはこの流れなので、長く続ける前提なら、届け出て進める形に整えるほうが現実的です。
なお、加入するかどうかは本人の希望で選べるものではありません。要件を満たせば加入することになります。自分の働き方が要件に当たるかどうかは、勤務先か年金事務所に確認してください。
雇用保険の扱いはどうなるか
雇用保険は、同時に複数の事業所で加入するという形を原則として取りません。主たる賃金を受ける事業所で被保険者になります。本業でフルタイムに働いている場合、副業先で新たに雇用保険の被保険者になることは通常ありません。
ただし、65歳以上の人には例外があります。2社それぞれで週5時間以上20時間未満、合計で週20時間以上、それぞれの雇用見込みが31日以上という条件を満たす場合、本人の申出により雇用保険に加入できる制度が設けられています。加入できるのは2社までです。制度の詳細は厚生労働省のページで確認できます。
この制度を使う場合は、本人が申し出る形になるため、勤務先に知られずに進めることはできません。
会社が副業に気づく実際のきっかけ
制度の経路を押さえたうえで、現実に何がきっかけになっているかを整理します。データで見ると、書類より人の経路のほうが圧倒的に多いのが実情です。
第一に、本人の発信です。ソーシャルメディアで作業の様子を投稿する、成果物を実名で公開する、プロフィールに肩書きを並べる。同僚が見ています。顔や声を出さなくても、書いている内容と投稿の時間帯から推測されることがあります。
第二に、同僚や取引先からの話です。副業先が本業と同じ業界だと、取引先が重なります。展示会や商談の場で名前が出ることもあります。
第三に、働き方の変化です。残業を断るようになった、休日の連絡が取れない、疲れが見える。こうした変化から聞かれることがあります。
第四に、本人が話すことです。信頼している同僚に打ち明けたことが広がる。これが実はいちばん多い経路です。
つまり、住民税の通知の様式を気にする前に、日常の発信と会話を整えるほうが効果が大きい。ここに労力を割かずに書類の話ばかり気にするのは、正直なところ順番が逆だと考えています。
先に確かめるべきは就業規則
隠す方法を探す前に、そもそも自分の会社が副業をどう扱っているかを確認してください。禁止されていない会社で無用に隠すのは、労力の無駄です。
厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)では、副業と兼業の条文は第70条に置かれています。労働者が勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができるとしたうえで、事前の届出を求め、次の四つのいずれかに該当する場合には禁止または制限できると定めています。労務提供上の支障がある場合、企業秘密が漏えいする場合、会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、競業により会社の利益を害する場合です。原文は厚生労働省のモデル就業規則で読めます。
注意していただきたいのは、モデル就業規則はあくまで例であって、自社の規則がそのとおりとは限らない点です。就業規則の該当条文を実際に読んでください。届出が必要なだけなのか、許可が必要なのか、禁止されているのか。この三つで取るべき行動が変わります。
届出制であれば、届け出るのがいちばん安全です。届け出ていれば、あとから知られても手続き上の問題になりません。届出の様式に副業先の会社名を書く欄がある場合もありますが、そこで書くことと、勝手に知られることは意味が違います。
許可制や禁止の規定がある場合は、就業規則の文言と自分の副業の内容を照らして判断する必要があります。この判断は個別の事情で結論が変わるため、不安がある場合は社会保険労務士や弁護士に相談してください。ここは自己判断で進めないほうが安全です。
副業の形を選ぶ段階で決まること
ここまでの整理を踏まえると、会社名が伝わる可能性は副業の形で大きく変わることが分かります。表の形で並べます。
副業が雇用(アルバイト、パート)の場合。住民税は本業と合算して特別徴収され、給与所得なので自分で納める方法を選べません。社会保険の加入条件を満たすと二以上事業所勤務届が必要になり、本業にも通知が届きます。雇用保険は原則として本業のみです。
副業が業務委託(事業所得または雑所得)の場合。住民税は、申告書に記載すれば給与所得以外の所得について自分で納める方法を選べる可能性があります。副業先で社会保険に加入しないため、二以上事業所勤務届は発生しません。雇用保険も関係しません。
この違いは収入の安定性とも表裏です。雇用なら時間で報酬が決まり、社会保険と雇用保険の保護があります。業務委託は報酬が成果に連動し、保護は薄くなりますが、働き方の裁量は広がります。どちらが良いかは、優先するものによって変わります。
業務委託で副業をする場合、契約条件の確認は必須です。発注書や契約書に何が書かれているべきかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにチェックリストの形でまとまっています。報酬の支払期日や成果物の取り扱いを文書で確定させておくと、トラブルの大半は防げます。
本業の職種によっては、副業の可否や届出の要否が業界の慣行で決まっている場合もあります。資格を持つ職種での副業がどう扱われているかは会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】に、規程と実務の関係が具体的に書かれています。自分の業界に置き換えて読む材料になります。
世の中に流れている説を条文で確かめる
副業と会社への発覚をめぐっては、根拠のない説が大量に流通しています。よく見かけるものを、制度に照らして確認します。
「手渡しの給与なら記録が残らない」。これは成り立ちません。給与を支払う側には給与支払報告書の提出義務があり、支払方法によって免除される規定はありません。現金で受け取っても、1月31日までに市区町村へ報告されます。
「日払いなら申告しなくてよい」。日払いも給与です。支払の頻度と申告義務は関係ありません。
「マイナンバーを出さなければ分からない」。個人番号は本人確認と名寄せに使われるものであって、出さなければ所得の情報が届かないわけではありません。住所と氏名と生年月日で名寄せされます。
「20万円以下なら何もしなくてよい」。所得税の確定申告が不要になる場合があるだけで、住民税の申告義務は地方税法第317条の2に定められています。
「副業がばれた人は全員クビになる」。就業規則で禁止または制限できる事由は限定されています。厚生労働省のモデル就業規則では、労務提供上の支障、企業秘密の漏えい、会社の名誉や信用を損なう行為、競業による利益侵害の四つが挙げられています。これに当たらない副業を理由とする処分が常に有効になるわけではありません。ただし、個別の事案でどう判断されるかは事情によるため、不安がある場合は専門家に相談してください。
「普通徴収にすれば絶対にばれない」。給与所得については選べません。そして自治体によっては、給与所得以外の所得についても運用の扱いが異なる場合があります。
こうした説を信じて行動した結果、申告漏れという別の問題を抱えることになるケースが実際にあります。判断の材料は、条文と自治体の案内から取ってください。
会社名を出さずに実績を示す方法
副業で実績を積みたいけれど、公開の場に名前を出したくない。この両立は工夫でかなり解決できます。
第一に、取引先の名前を出さずに成果の中身を書く方法があります。「アパレルのEC運営を支援し、商品ページの構成を見直した」という書き方なら、業界と役割は伝わり、固有名詞は出ません。実績を示すときは、固有名詞ではなく担当した工程と使った技術を書くほうが、依頼する側にとっても判断材料になります。
第二に、公開の範囲を契約で決めておく方法です。成果物を実績として公開してよいかは、契約時に確認します。公開が認められない案件も多いので、勝手に出すと契約違反になります。逆に、公開の許可を得たうえで名前を伏せる形にすれば、後から問題になりません。
第三に、発信する場を分ける方法です。本業の同僚とつながっているアカウントと、副業の活動を書くアカウントを分ける。当たり前のようですが、実際にはここが混ざって知られるケースが多くあります。
第四に、実績を記録として自分の手元に残す方法です。公開しなくても、案件ごとに担当した範囲、期間、使った技術、成果を整理して保存しておけば、次の依頼の提案に使えます。この記録を丁寧に作るコツは、終わった直後に書くことです。時間が経つと細部を思い出せなくなります。
文書の型を整えておくと、この記録も提案書もぐっと速く作れるようになります。報告書や依頼状の構成を体系的に確認したい場合はビジネス文書検定の出題範囲が参考になります。
整理すると、やるべき順番はこうなる
情報を順番に並べ直します。
最初にやるのは、就業規則の確認です。禁止されているのか、届出が必要なのか、何も定めがないのか。ここが分からないまま対策を考えても意味がありません。
次にやるのは、副業の形を決めることです。雇用で受けるのか、業務委託で受けるのか。この選択で、住民税の徴収方法も社会保険の手続きも変わります。
三番目は、申告の準備です。所得税の確定申告が必要かどうか、住民税の申告が必要かどうかを確認し、必要なら期限内に済ませます。申告しないという選択肢はありません。
四番目は、住民税の徴収方法の確認です。業務委託なら、申告書で自分で納める方法を選べる可能性があります。自治体の運用を担当課に確かめてください。
五番目は、日常の発信の整理です。制度の経路より、人の経路のほうが現実には多い。ここを整えるほうが確実に効きます。
在宅ワークの市場を長く運営者として見てきた立場から、一つ付け加えます。副業を隠し続けることに労力を使っている人ほど、副業そのものの成果が伸びていません。実績を公開できない、相談できない、本業の繁忙期に調整できない。この三つが重なると、続けること自体が負担になります。届け出て堂々と進めている人のほうが、結果として長く続いています。
もう一つ、報酬の構造の話をします。仲介が何段も入る案件では、発注元が出している予算と受け手が受け取る額の差が大きくなります。仲介手数料が乗らない直接取引なら、発注する側は同じ予算でより多く依頼でき、受ける側は同じ仕事で手取りが厚くなります。手数料0%の取引形態が意味を持つのはこの点で、単価の大小ではなく、受け取る側に残る比率の問題です。副業に割ける時間は限られているので、同じ時間で残る額が変わるかどうかは、無視できない差になります。
どの分野で副業を組み立てるか決めるときは、職種ごとの単価水準を先に見ておくと判断が速くなります。著述家,記者,編集者の年収・単価相場では統計に基づく分布を確認できます。デジタル分野で需要が伸びている領域を見たい場合は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事に、求められる経験と案件の傾向がまとまっています。
なお、税務と労務の個別の判断は、金額や契約の内容、自治体の運用によって結論が変わります。この記事の内容を前提に動く前に、税務署、市区町村の住民税担当課、年金事務所、そして必要に応じて専門家に確認してください。
よくある質問
Q. 本業の会社に副業先の会社名が通知されることはありますか?
副業先の会社が本業の会社へ直接知らせる仕組みはありません。本業に届くのは市区町村からの住民税の通知で、記載されるのは金額です。ただし、副業先でも社会保険に加入した場合は、報酬を合算して決めた標準報酬月額が本業の事業所にも通知されるため、他に勤務先があることは分かります。通知書の様式は自治体ごとに違うので、担当課で確認してください。
Q. 住民税を自分で納める方法を選べば会社に知られませんか?
選べるのは給与所得以外の所得に係る部分だけです。地方税法第321条の3第2項のただし書きにより、申告書に普通徴収を希望する旨の記載があるときはその部分が特別徴収から外れます。副業がアルバイトなど給与である場合は給与所得なので選べません。業務委託で事業所得または雑所得になる場合は選べる可能性があります。
Q. 副業の所得が20万円以下なら何もしなくてよいですか?
所得税の確定申告が不要になる場合があるだけで、住民税の申告義務は別に定められています。地方税法第317条の2は、申告書を3月15日までに住所所在地の市町村長へ提出しなければならないと定めています。確定申告をした場合は住民税の申告は不要になりますが、確定申告が不要なケースでは住民税の申告が必要になることがあります。
Q. 副業を始める前に何を確認すればよいですか?
最初に就業規則の副業に関する条文を読んでください。厚生労働省のモデル就業規則では第70条が副業と兼業を扱い、事前の届出を求めたうえで、労務提供上の支障、企業秘密の漏えい、会社の名誉や信用を損なう行為、競業による利益侵害の四つに該当する場合は禁止または制限できるとしています。自社の規則がモデルどおりとは限らないため、実際の条文で確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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