副業をしていても雇用保険に入れるか

前田 壮一
前田 壮一
副業をしていても雇用保険に入れるか

この記事のポイント

  • 雇用保険と副業の関係を
  • 加入要件・マルチジョブホルダー制度・失業手当・確定申告まで整理しました
  • 副業先でも雇用保険に入れるのか

まず、安心してください。雇用保険と副業の関係でつまずいている皆さんが心配しているのは、たいてい「副業をしたせいで本業の雇用保険が外れるのではないか」「失業手当がもらえなくなるのではないか」という2点です。結論から言うと、会社員として本業で雇用保険に入っている人が副業を始めても、本業側の資格が消えることは原則としてありません。ただし、副業先でもう1本雇用保険に入れるかというと、そこには明確な線が引かれています。

私自身、40代でメーカーを辞める1年前から副業でライティングの仕事を受けていました。そのとき一番調べたのがこの論点です。人事に聞くのは気が引ける、ネットの記事は制度の説明だけで自分のケースに当てはまらない。同じ場所で止まっている人は多いはずです。この記事では、雇用保険の加入要件がどういう単位で判定されるのかという根っこから始めて、副業の形態別にどう扱われるか、失業手当を受けながら副業をするとどうなるか、確定申告との関係まで、実務で確認する順番どおりに整理します。

雇用保険は「会社ごと」ではなく「1つの雇用関係ごと」に判定される

雇用保険を理解するうえで最初に押さえるべきなのは、加入の判定が会社単位でも人単位でもなく、雇用関係1本ごとに行われるという点です。ここを取り違えると、副業の話が一気にわからなくなります。

雇用保険の被保険者になる要件は、大きく2つです。1週間の所定労働時間が20時間以上であること、そして31日以上引き続き雇用される見込みがあることです。この2つを両方満たす雇用関係があれば、その事業所で被保険者になります。逆に、どちらか一方でも欠けていれば被保険者になりません。

問題は、この「週20時間以上」を誰が数えるかです。判定するのは雇用主であり、数えるのは自社との雇用契約の所定労働時間だけです。従業員が他社でどれだけ働いているかは、原則として計算に入りません。つまり、A社で週15時間、B社で週15時間働いている人は、合計すれば週30時間働いているのに、A社でもB社でも雇用保険の被保険者にならないという結果になります。

この結論に違和感を覚える人は多いはずです。実際、社会保険労務士の側からも同じ指摘が出ています。

しかし、2つの会社の所定労働時間を通算すれば、週30時間(15時間+15時間)になり、雇用保険の加入要件を満たす程度に働いている以上は、副業・兼業をしている従業員についても、何らかの保護が必要ではないか、とも考えられます。 出典: uenishi-sr.jp

制度が今の形になっている理由は、雇用保険が「失業したときに生活を支える」保険だからです。主たる生計を支える仕事を失ったときに給付する、という設計思想がある。だから、どの雇用関係が主たるものかを決める必要があり、その判定を単純化するために「週20時間以上の雇用関係」という線が引かれています。複数の会社で働く人が増えた今、この設計が現実と合わなくなってきているのは事実ですが、少なくとも2026年時点のルールはこの形です。

もうひとつ押さえておきたいのが、社会保険(健康保険と厚生年金)との違いです。健康保険と厚生年金は、複数の事業所で加入要件を満たした場合、「二以上事業所勤務届」を出して保険料を合算して按分する仕組みがあります。つまり、社会保険は複数加入を前提にした受け皿を持っている。ところが雇用保険にはその受け皿が、後述する一部の例外を除いて存在しません。副業の話をするときに「社会保険はこうだから雇用保険もこうだろう」と類推すると間違えるのは、この非対称があるためです。

本業が会社員なら、副業先では雇用保険に入れない

ここからが実務の本題です。本業で週20時間以上働いていて雇用保険の被保険者になっている会社員が、副業先でも週20時間以上働いた場合、雇用保険はどうなるのか。

答えは、副業先では被保険者になりません。雇用保険には「生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係についてのみ被保険者となる」という考え方があり、2つの雇用関係で両方とも要件を満たす場合は、主たる賃金を受けるほう1本に絞られます。主たる賃金がどちらかは、賃金額、所定労働時間、雇用契約の安定性などを総合して判断されます。通常は本業側が主たる雇用関係になりますから、副業先は要件を満たしていても被保険者になりません。

副業先の会社が事情を知らずに資格取得届を出してしまうこともあります。その場合、ハローワーク側で二重加入が発見され、後から一方が取り消されます。手続きのやり直しが発生するので、副業先で雇用契約を結ぶときは「本業で雇用保険に加入しています」と最初に伝えておくのが親切です。採用担当者からすると、これは不利な情報ではなく、単に手続き上の確認事項でしかありません。伝えたせいで不採用になるという心配はほぼ無用です。

では、本業で雇用保険に入っていない人はどうでしょうか。たとえば本業が週15時間のパートで、副業先が週25時間というケース。この場合は副業先のほうが要件を満たしますから、副業先で被保険者になります。主たる賃金を受けるのがどちらかという判定は、契約上の肩書きではなく実態で決まるということです。「本業」「副業」という言葉は法律上の区分ではなく、当人の主観的な呼び方にすぎない点は覚えておいてください。

もうひとつ、よくある誤解を潰しておきます。副業先で雇用保険に入れないことは、副業先での労働者としての保護が一切ないという意味ではありません。労災保険は事業主が雇用する労働者全員が対象で、週の労働時間に関係なく適用されます。しかも2020年9月の法改正で、複数事業労働者については給付基礎日額を全事業所の賃金を合算して算定する仕組みが入りました。雇用保険は合算しないのに労災は合算する、という一見ちぐはぐな状態になっているのですが、副業中の事故については保護が厚くなっていると理解しておけば実務上は困りません。

65歳以上に限って開かれた「マルチジョブホルダー制度」

通算しないという原則には、現在ひとつだけ例外があります。2022年1月1日に施行された雇用保険マルチジョブホルダー制度です。

そこで、2022(令和4)年1月1日施行の法改正により、65歳以上の者を対象に、一定の要件を満たす場合には、兼業・副業先の所定労働時間が、いずれも週20時間未満である場合であっても、雇用保険に加入することができるようになりました。 出典: uenishi-sr.jp

この制度の要件は3つです。第一に、本人が65歳以上であること。第二に、2つの事業所それぞれの1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満であること。第三に、2つを合計した所定労働時間が週20時間以上であること。加えて、それぞれの事業所で31日以上の雇用見込みがあることも必要です。

この制度で特徴的なのは、手続きを本人が行う点です。通常の雇用保険は会社が資格取得届を出しますが、マルチジョブホルダー制度では本人が住所地を管轄するハローワークに申し出ます。勤務先2社から雇用の事実を証明する書類をもらい、自分で窓口に持ち込むか郵送する。会社が動いてくれるのを待つ制度ではないということです。

もうひとつ重要なのは、資格を取得する日が申し出た日である点です。遡及適用がありません。要件を満たした時点に戻って保険料を払い直すことができない代わりに、手続きが遅れた分だけ被保険者期間が短くなります。65歳以上で2か所のパートを掛け持ちしている人は、要件に当てはまった時点で早めに動いたほうが得になります。

対象が65歳以上に限定されている理由は、試行的な制度だからです。厚生労働省は施行後の状況を見て対象拡大を検討するとしており、将来的に年齢制限が下がる可能性はあります。ただ、現時点で40代や50代の人がこの制度を使うことはできません。「合計すれば週20時間を超えているのだから入れるはずだ」と窓口に行っても、年齢要件で断られます。ここは期待値を正しく持っておいてください。

なお、この制度で被保険者になった人が離職した場合、受け取れるのは高年齢求職者給付金です。65歳未満の基本手当(いわゆる失業手当)とは別の給付で、被保険者期間に応じて基本手当日額の30日分または50日分が一時金として支給されます。毎月の失業認定を受けながら受給する形ではなく、一時金で終わります。給付の性格が違う点も合わせて理解しておきましょう。

失業手当を受け取りながら副業をするとどうなるか

会社を辞めて失業手当を受給している期間中に、副業として何らかの収入を得ることは可能です。ただし、扱いを誤ると不正受給とみなされる領域なので、ここは丁寧に見ていきます。

大前提として、失業手当は「働く意思と能力があり、求職活動をしているのに職に就けない状態」の人に支給されます。したがって、副業に時間を使いすぎて就職活動ができていない状態は、そもそも受給資格の前提から外れます。そのうえで、副業の量に応じて次の3つに分かれます。

1日の労働時間が4時間以上の日は「就労」として扱われ、その日は失業手当が支給されません。ただし支給されないだけで、権利が消えるわけではなく、受給期間内であれば支給日数が後ろにずれます。これを「繰り越し」と呼びます。1日の労働時間が4時間未満の日は「内職・手伝い」として扱われ、収入額に応じて減額されるか、そのまま全額支給されます。判定には賃金日額や控除額が絡むので、金額の目安は失業認定申告書を出すときに窓口で確認するのが確実です。

そして最も重要なのは、副業で得た収入は金額の大小にかかわらず、失業認定申告書にすべて記入する義務があるという点です。「少額だから書かなくていいだろう」と判断して省略すると、後で判明したときに不正受給として扱われます。不正受給の場合、支給済みの額の返還に加えて、その2倍に相当する額の納付を命じられます。合計で受け取った額の3倍を返すことになるわけです。金額のインパクトが大きすぎるので、申告漏れだけは絶対に避けてください。

待期期間(受給資格決定日から7日間)中の副業も要注意です。この7日間は完全に失業している状態である必要があり、働いた日があると待期が完成せず、その分だけ受給開始が後ろにずれます。退職直後に「どうせまだ支給されないから」と副業を詰め込むと、結果的に自分の首を絞めます。

自己都合退職の場合の給付制限期間中はどうか。この期間は失業手当が支給されないので、アルバイトをしても減額される手当がありません。ただし、働きすぎると「就職した」と判断されて受給資格自体が消えるおそれがあります。週20時間以上の雇用契約を結ぶと、その時点で新たに雇用保険の被保険者になるため、失業状態ではなくなります。給付制限中の副業は、週20時間未満に抑えるというのが実務上の目安です。

退職後の手続き全体の流れを整理したい人には、退職のタイミングと手当の関係をまとめた解説が参考になります。制度の名前だけ知っていても順番を間違えると損をするので、時系列で確認しておくと安心です。関連して、フリーランスや個人事業主が加入する保険の全体像については、個人事業主の保険料は経費にできる?仕訳と確定申告の方法で、どの保険料がどう扱われるかが整理されています。

業務委託の副業は、そもそも雇用保険の対象外

ここまで雇用契約を前提に話してきましたが、副業として増えているのは業務委託の仕事です。在宅でライティング、デザイン、プログラミング、事務代行などを請け負う形ですね。この場合、雇用保険はどうなるのか。

答えは単純で、業務委託は雇用契約ではないため、雇用保険の対象になりません。何時間働こうと、いくら稼ごうと、被保険者にはなりません。労災保険も原則として対象外です(特別加入制度という任意の仕組みはありますが、職種が限定されています)。

この「対象外」を、デメリットとだけ捉える必要はありません。本業で雇用保険に入っている会社員にとっては、副業を業務委託で行うことには実務上の利点があります。副業先で雇用保険の手続きが発生しないため、本業側に余計な確認が飛ぶことがない。二重加入の整理も不要。労働時間の通算問題(労働基準法38条の労働時間通算は雇用契約同士でのみ発生します)も起きません。会社に副業を届け出る制度がある場合でも、説明がシンプルになります。

一方で、注意すべき点もあります。業務委託という契約名であっても、実態として指揮命令を受け、時間的・場所的な拘束があり、報酬が労働時間に対して支払われているなら、労働基準法上は労働者と判断される可能性があります。いわゆる偽装請負です。その場合、発注者には雇用保険の加入義務が生じます。副業として業務委託を受けるときは、「成果物に対して報酬が支払われているか」「作業時間や作業場所を自分で決められるか」を確認しておくと、後々のトラブルを避けられます。

業務委託で副業を始める人が最初にぶつかるのは、どの分野なら未経験から入れるかという問題です。職種ごとの仕事内容と必要なスキルを把握するには、分野別のガイドを見るのが早道です。たとえば生成AIの導入支援や社内活用の相談に乗る仕事の広がりはAIコンサル・業務活用支援のお仕事にまとまっていますし、マーケティングやセキュリティ領域の案件像はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で確認できます。収入の見通しを立てたいなら、職種別の単価相場を公的統計ベースで整理した著述家,記者,編集者の年収・単価相場のようなページで、市場の水準感をつかんでおくとよいでしょう。

副業の収入と確定申告は、雇用保険とは別の話

雇用保険の相談と一緒に必ず出てくるのが確定申告です。ただ、この2つは制度としてまったく別物なので、混ぜずに整理します。

給与所得者が副業をしている場合、給与所得と退職所得以外の所得の合計が年間20万円を超えると、確定申告が必要になります。ここでいう所得は収入から必要経費を差し引いた後の金額です。業務委託で年間30万円の報酬を受け取っていても、経費が12万円あれば所得は18万円となり、20万円以下なので所得税の確定申告義務は生じません。

ただし、この20万円ルールには落とし穴が2つあります。ひとつは、副業が給与(アルバイトなど雇用契約)の場合、この20万円基準の対象外になる点です。2か所以上から給与をもらっていて、主たる給与以外の給与収入が20万円を超えると申告が必要になります。経費を引く前の収入額で判定される点が業務委託と異なります。

もうひとつは、所得税の申告が不要でも住民税の申告は必要という点です。20万円ルールは所得税の制度であり、住民税にはこの特例がありません。副業所得が5万円でも、住民税の申告義務は残ります。これを知らずに放置して、後から市区町村から問い合わせが来るケースは珍しくありません。

確定申告が必要かどうかの判定や、申告書の作成方法は国税庁のサイトで確認できます。制度は毎年細部が変わるので、国税庁の最新の案内を見るのが確実です。

雇用保険との関係で誤解されやすいのは、「確定申告をすると会社に副業がバレるのではないか」という点です。会社に通知が行くきっかけは確定申告そのものではなく、住民税の特別徴収額の変動です。確定申告書で住民税の徴収方法を「自分で納付」に選択すれば、副業分の住民税は自分で納めることになり、本業の給与から天引きされる住民税額は変わりません。ただし、副業が給与所得の場合は原則として自分で納付を選べないため、この方法が使えない点に注意してください。

副業を始める前に会社の就業規則を確認する

制度の話が続いたので、実務の順番に戻します。副業と雇用保険の関係を調べている人が、調べる前にやっておくべきことがあります。就業規則の確認です。

厚生労働省が公表しているモデル就業規則は、2018年に「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定が削除され、副業・兼業を認める方向に改定されました。ただ、これはモデルであって、各社の就業規則がそうなっているとは限りません。全面禁止のままの会社、届出制の会社、許可制の会社、それぞれあります。副業に関する国の考え方は厚生労働省のガイドラインにまとまっていますが、自社のルールは自社の規則を見るしかありません。

確認するポイントは3つです。副業が禁止されているか届出制か許可制か。禁止されている業種や競合他社の定義があるか。労働時間の上限について何か定めがあるか。とくに3つ目は、副業先が雇用契約の場合に効いてきます。労働基準法では雇用契約同士の労働時間を通算するため、本業8時間の後に副業で働くと、副業先に割増賃金の支払い義務が生じることがあります。この負担を避けるため、パート先が「他社で正社員として働いている人は採用しない」という方針を持っていることもあります。

公務員の場合は、国家公務員法と地方公務員法で兼業が制限されており、民間企業とは別の枠組みになります。許可を得ずに副業をすると懲戒の対象になり得るので、制度の確認は必須です。人事院の兼業に関する運用については人事院の情報が起点になります。

私が副業を始めたときは、まず総務に「副業の届出制度がありますか」とだけ聞きました。制度の有無を聞くだけなら「副業をします」という宣言にならないので、心理的なハードルが下がります。結果として届出制だったので所定の書式を出し、その後は何も言われませんでした。隠して始めて後から発覚するほうが、はるかに面倒なことになります。

副業先で雇用保険の手続きが発生する場面と必要書類

本業で雇用保険に入っていない人が副業先で被保険者になる場合、あるいは65歳以上でマルチジョブホルダー制度を使う場合、実際にどんな手続きが必要かを見ておきます。

通常の資格取得手続きは会社が行います。会社が雇用保険被保険者資格取得届をハローワークに提出し、受理されると雇用保険被保険者証が発行されます。本人が用意するのは、マイナンバー、過去に雇用保険に入ったことがある人は前職の雇用保険被保険者番号です。被保険者番号は生涯1つで、転職しても引き継がれます。前の被保険者証が見つからない場合は、ハローワークで再発行できます。

マルチジョブホルダー制度の場合は本人申請なので、揃える書類が増えます。雇用保険被保険者資格取得届(マルチジョブホルダー用)、2社それぞれの賃金台帳や出勤簿の写し、労働条件が分かる雇用契約書の写し、本人確認書類とマイナンバー確認書類です。勤務先に書類の写しを依頼する必要があるため、事前に事情を説明しておかないと話が進みません。「65歳以上で2か所で働く人向けの雇用保険の制度があり、申請に会社の証明が必要です」と伝えれば、総務側も調べがつきます。

手続きの詳細や様式は厚生労働省の案内に掲載されています。ハローワークの窓口でも相談できますが、マルチジョブホルダー制度は利用者がまだ少ないため、事前に電話で「マルチジョブホルダー制度の申し出をしたい」と伝えて必要書類を確認してから出向くと、二度手間になりません。

雇用保険に入るメリットも整理しておきましょう。被保険者になると、離職時の基本手当のほかに、教育訓練給付金の対象になります。一般教育訓練給付では受講費用の20%(上限10万円)、専門実践教育訓練では最大で費用の80%が支給されるコースもあります。資格取得を考えている人にとっては無視できない金額です。どんな資格が実務に効くかを検討する際は、たとえば文書作成の基礎力を測るビジネス文書検定や、ネットワーク分野の定番であるCCNA(シスコ技術者認定)のように、実務に直結する資格のガイドを見比べてみてください。

市場を長く見てきた立場からの観察

20年ほどこの在宅ワーク・フリーランス市場を運営してきた立場から言えば、雇用保険に入れるかどうかという問いは、多くの場合その人の本当の問いではありません。本当の問いは「副業をしたことで、今の生活の土台が崩れないか」です。雇用保険はその土台の一部なので、代表として名前が挙がっているだけです。

運営者として見てきた限りでは、副業から本業への移行がうまくいく人には共通点があります。給付や制度に詳しいことではなく、収入の柱を1本増やす過程で、既存の柱を壊さないよう順序を守っていることです。具体的には、最初の数か月は業務委託で週5時間から10時間程度の範囲に収め、本業の労働時間や就業規則に触れない形で実績を作る。その間に、継続的に依頼してくれる相手を2社から3社確保する。そこまで来てから、働く時間を増やすかどうかを判断する。この順番を守った人は、制度上のトラブルもほとんど起こしていません。

もうひとつ、長く続いている人ほど、単発の作業を数多くこなすことよりも「この人に任せると楽だ」と思ってもらう関係づくりに時間を使っています。納期の3日前に途中経過を送る、指示になかった前提の確認を1行添える、こうした小さな行動が次の依頼を呼びます。案件を探し続けるより、既存の取引先から継続案件をもらうほうが、時間あたりの効率は圧倒的に高い。これは20年間ほとんど変わらない傾向です。

金銭面についても、運営者としての実感を書いておきます。間に何社も入る契約では、同じ予算でも受け手に届く金額が目減りします。逆に中間マージンが乗らない直接取引では、依頼側は同じ予算でより多くを頼めて、受け手は手取りが厚くなる。手数料0%の仕組みが効くのは、単価の高さではなく、この手取りの厚みという質の部分です。副業で月に数万円を積み上げる段階では、この差が体感で効いてきます。雇用保険という公的な安全網の外側で働くなら、その分、手元に残る金額の構造は自分で設計する必要があります。

制度面をまとめ直すと、判断の軸はこうなります。本業で雇用保険に入っているなら、副業先では入れない。業務委託の副業なら雇用保険とは無関係に進められる。65歳以上で2か所のパートを掛け持ちするならマルチジョブホルダー制度を検討する。失業手当の受給中に副業をするなら、時間と収入を必ず申告する。この4つを押さえておけば、雇用保険が理由で副業をためらう必要はなくなります。

準備さえ整えれば、40代からでも50代からでも副業を軌道に乗せることはできます。制度を正しく知ることは、その準備のいちばん最初の一歩です。

よくある質問

Q. 本業の会社員が副業先でも雇用保険に入ることはできますか?

できません。雇用保険は主たる賃金を受ける雇用関係1本についてのみ被保険者となるため、両方で週20時間以上働いていても、加入するのは本業側のみです。副業先が誤って資格取得届を出すと後から取り消されるので、雇用契約を結ぶ際に本業で加入済みであることを伝えておくと手続きがスムーズです。

Q. 失業手当をもらいながら副業をしても問題ありませんか?

可能ですが、働いた日と収入は失業認定申告書にすべて記入する義務があります。1日4時間以上働いた日は就労扱いでその日の手当は支給されず、受給期間内に繰り越されます。申告を省略すると不正受給となり、返還に加えて2倍相当額の納付を命じられるため、金額の大小にかかわらず必ず申告してください。

Q. 業務委託の副業でも雇用保険に加入できますか?

できません。業務委託は雇用契約ではないため、報酬額や作業時間にかかわらず雇用保険の対象外です。ただし実態として指揮命令を受け時間や場所を拘束されている場合は労働者と判断され、発注者に加入義務が生じることがあります。契約時に成果物基準の報酬か、作業時間を自分で決められるかを確認しておきましょう。

Q. 副業の収入がいくらから確定申告が必要になりますか?

給与所得者は、給与と退職所得以外の所得の合計が年間20万円を超えると所得税の確定申告が必要です。業務委託なら経費を引いた後の金額で判定しますが、副業が給与の場合は経費を引く前の収入額で判定します。なお所得税の申告が不要でも住民税の申告義務は残るため、20万円以下でも自治体への申告は必要です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月18日最終更新:2026年9月24日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金

お金・税金

確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

AI活用

AI活用

職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人

看護師の転職・求人

看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人

薬剤師の転職・求人

薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人

介護職の転職・求人

介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人

保育士の転職・求人

保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人

医療職の転職・求人

医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業

法律・士業

契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金

補助金・助成金

個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方