ダブルワークは何時間まで働けるのか、法律と体力から決める上限


この記事のポイント
- ✓法律で決まる線と体が続く線の二つで決まります
- ✓本業と副業の労働時間を通算するとどう数えるのか
- ✓割増賃金は誰が払うのか
「ダブルワークは何時間まで働けるんでしょうか」。このご相談、本当に多いんです。
先に結論からお伝えしますね。法律上の答えは、雇用と雇用の掛け持ちなら1日8時間・週40時間が原則で、36協定があれば残業として月45時間・年360時間まで、特別条項でも年720時間が天井です。これは2社の時間を足し算して考えます。業務委託の副業なら、この通算の対象外です。
ここまでが「法律の答え」。ただ、私のところに相談に来られる方が本当に知りたいのは、たいていその先なんです。「法律的にはセーフでも、私はこの働き方を何ヶ月続けられるんだろう」。この記事では、上限そのものの答えを短く整理したあと、あなた自身の上限時間をどう決めるか、その考え方に主題を置いてお話しします。
大丈夫です。答えは、法律の条文の中ではなく、あなたの生活の中にあります。
まず結論から。法律上の上限は3つの数字で覚える
ダブルワークの労働時間の上限は、突き詰めると3つの数字しかありません。ここを最初に押さえてしまえば、あとの判断がぐっと楽になります。
数字1:1日8時間・週40時間(法定労働時間)
労働基準法が定める大原則です。これを超えて働かせることは、原則として認められていません。
しかし、実際には労働基準法の原則として週40時間・1日8時間を超えて労働させてはならないと定められています。 出典: tcc-job.co.jp
ダブルワークで重要なのは、この8時間と40時間が「1社あたり」ではなく「あなた個人の合計」で見られる点です。本業で6時間働いて、そのあと副業先で3時間働けば、合計9時間。1時間分が法定時間外労働になります。
この通算ルールが適用されるのは、両方が「雇用契約」の場合です。パート、アルバイト、契約社員、正社員。呼び方が違っても、雇われて働いているなら通算されます。
数字2:月45時間・年360時間(36協定の原則の上限)
法定労働時間を超えて働くには、会社と労働者代表が結ぶ36(サブロク)協定が必要です。この協定を結んだ場合でも、時間外労働には上限があります。
原則は月45時間、年360時間。2019年の働き方改革関連法で、これが罰則付きの上限になりました。それ以前は「大臣告示」という行政指導レベルでしたが、今は法律の縛りです。
つまり、法定の週40時間に月45時間の残業を足した状態が、通常の上限イメージになります。月の所定労働日数を20日とすると、週40時間ベースで月160時間前後。そこに残業45時間で、月205時間あたりが一つの目安になります。
数字3:年720時間・単月100時間未満(特別条項の絶対上限)
繁忙期などの臨時的な事情がある場合、特別条項付き36協定を結べば原則を超えられます。ただし、ここにも絶対に超えられない線があります。
年間の時間外労働は720時間以内。単月では休日労働を含めて100時間未満。複数月の平均では80時間以内。そして月45時間を超えられるのは年6回まで。
この80時間と100時間という数字、どこかで聞いたことがあるかもしれません。過労死ラインと呼ばれる水準です。労災認定の実務で、脳や心臓の疾患と業務との関連が強いと評価される目安になっています。
労働時間に関する法令の原文や解説は、厚生労働省のサイトで確認できます。制度が変わることもあるので、判断に迷ったときは公的な情報源にあたる習慣をつけておくと安心です。
参考:厚生労働省
業務委託の副業は通算されない
ここが実務上とても大きなポイントです。
在宅ワークやフリーランス案件のような業務委託契約は、労働基準法上の「労働者」として働くわけではありません。したがって、本業の雇用時間と通算されません。本業でフルタイム週40時間働いていても、業務委託の副業を法律上の上限で止められることはないのです。
ただし、これは「いくらでも働いていい」という意味ではありません。労働基準法の保護が及ばないということは、労働時間の上限も、残業代も、休憩の保障もないということです。守ってくれるルールがない分、自分で線を引く必要が出てきます。
この記事の後半でお話しする「自分の上限の決め方」は、まさにこの層の方にこそ必要な考え方です。
通算されるケース、されないケースを整理する
「私の場合はどっちなんだろう」。ここが曖昧なまま働き始めると、あとで割増賃金や社会保険で混乱します。落ち着いて整理しましょう。
通算される組み合わせ
以下の組み合わせは、労働時間が合算されます。
本業が正社員で、副業がアルバイト。本業がパートで、副業も別のパート。本業が契約社員で、副業が派遣。いずれも両方が雇用契約なので、通算対象です。
たとえば平日は会社で8時間働き、土曜日に飲食店で5時間アルバイトをする場合。週の合計は45時間になり、5時間分が法定時間外労働になります。この場合、原則として後から労働契約を結んだ会社、つまり副業先が割増賃金を支払う義務を負います。
通算されない組み合わせ
雇用契約に該当しない働き方は、通算されません。
業務委託・請負契約でのライティング、デザイン、プログラミング、動画編集。個人事業主として自分で受注する仕事。フリマアプリやハンドメイド販売のような自分の商売。株式投資や不動産賃貸のような資産運用。
これらは労働時間という概念自体がないので、本業の時間と足し算されることはありません。
割増賃金は誰が払うのか
通算されるケースで、必ず出てくる疑問がこれです。
原則の考え方はシンプルで、「後から契約した側」が、通算して法定時間を超えた分の割増賃金を負担します。副業先を後から始めたなら、副業先が支払います。
ただし例外もあります。所定労働時間の設定順ではなく、実際に所定外労働が発生した順で判断される場面もあり、実務では雇用主同士の申告と管理に依存します。だからこそ、副業を始めるときは本業の労働時間を副業先に正しく伝えることが大切です。伝えていないと、副業先は割増賃金の計算ができません。
そして2020年の副業・兼業の促進に関するガイドライン改定で、「管理モデル」という簡便な運用も示されました。本業と副業であらかじめ時間の枠を決めておき、その枠内で働く限りは複雑な通算計算をしなくてよい、という考え方です。実際に副業を認めている企業では、この方式を採用しているところが増えています。
連続勤務日数の考え方
実際にこんな疑問を持つ方がいらっしゃいます。
ダブルワークの勤務日数について質問です。 月〜金は日勤で1日5.5時間勤務で土日に別の会社で早朝に1日4時間働こうと思うのですが、週7勤務になるので14日連続勤務が禁止となる?と言うのを見て、別の会社であれば連続勤務とカウントされないのか、それとも違法?になるのですか? 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
とても現実的な悩みです。法律の建て付けとしては、休日の付与義務は各雇用主に課されています。A社が週1日の休みを与えていれば、A社としては義務を果たしていることになります。B社も同様です。
つまり、A社で月〜金、B社で土日という働き方は、それぞれの会社の休日付与義務としては満たされている形になります。労働時間の通算は必要ですが、「連続勤務日数の上限違反」として直ちに違法になるわけではありません。
ただ、この方の例で計算してみると、週の合計は5.5時間×5日+4時間×2日で35.5時間。法定の週40時間には収まります。法律上はセーフです。
でも、私がカウンセリングでこの働き方を聞いたら、まず確認するのは時間数ではありません。「休みの日は、月に何日ありますか」です。答えがゼロなら、時間数がセーフでも赤信号だと考えます。
法律の上限と、あなたの上限は別物です
ここからが、この記事で一番お伝えしたい部分です。
法律の上限は「これを超えたら会社が罰せられる」というラインです。あなたが健康に働き続けられるラインではありません。この2つを混同すると、必ずどこかで壊れます。
相談の現場で繰り返し見てきたこと
こういうご相談がよくあります。
「法律の範囲内で働いているはずなのに、朝起きられなくなりました」。「休みの日、何もする気が起きなくて、ずっと寝ています」。「本業でミスが増えて、上司に指摘される回数が増えました」。
共通しているのは、皆さん「時間は超えていない」とおっしゃることです。実際、超えていません。週40時間ちょっと、多くて月180時間程度。数字だけ見れば、何も問題がないように見えます。
でも体は正直です。問題は総時間数ではなく、時間の「質」と「並び方」にあることが多いんです。
私自身、独立した最初の年に同じことをやりました。カウンセリングの予約が入っていない時間がもったいなくて、夜に翻訳の仕事を受けたんです。1日の合計は9時間くらい。会社員時代より短いくらいでした。それなのに3ヶ月目で、クライアントの話が頭に入ってこなくなった。産業カウンセラーが人の話を聞けなくなる。これは本当に堪えました。
原因は時間数ではなく、切り替えの回数でした。人の感情に深く入る仕事と、言葉を機械的に置き換える仕事。この2つを1日の中で行き来するのに、私の脳は想像以上のエネルギーを使っていたんです。
3つの上限を分けて考える
自分の上限を決めるとき、私は3つのレイヤーで考えることをお勧めしています。
1つめが法律の上限。これは外から与えられる制約です。月45時間の残業、年720時間。ここまでは既にお話ししました。
2つめが体力の上限。睡眠時間、疲労の回復速度、持病の有無。人によって大きく違います。7時間眠らないと機能しない人もいれば、6時間で足りる人もいます。
3つめが生活の上限。家族と過ごす時間、家事、通院、子どもの行事。ここを削ると、収入が増えても生活の満足度は下がります。
多くの方が失敗するのは、1つめだけを見て働く量を決めてしまうからです。実際に効いてくるのは、3つのうち一番低い天井です。法律で月205時間まで働けても、体力の上限が月170時間なら、あなたの上限は170時間です。
自分の上限時間を決める5つのステップ
では、具体的にどう決めればいいのか。カウンセリングで実際に使っている手順をお伝えします。紙とペンがあれば30分でできます。
ステップ1:24時間から固定費を引く
まず、1日24時間から「絶対に削らないもの」を引きます。
睡眠時間。ここは最優先で確保します。日本人の平均睡眠時間は7時間前後と言われますが、これは平均であって、あなたの必要量ではありません。休日に自然に目が覚める時間から逆算すると、自分に必要な睡眠時間が見えてきます。
食事と入浴。合わせて1日1.5時間から2時間程度。ここを削って早食いや烏の行水にすると、消化と自律神経に響きます。
通勤時間。往復1時間なら1時間、2時間なら2時間。これは労働時間にカウントされませんが、あなたの体力は確実に消費されています。
家事と育児。一人暮らしでも1日1時間は見ておきます。家族がいるなら、実態に合わせて増やしてください。
これらを24時間から引いた残りが、あなたが働ける最大の枠です。ここには、まだ休息やプライベートが含まれていません。
ステップ2:回復に必要な時間を確保する
引き算した残りの中から、さらに「回復時間」を確保します。ここを飛ばす方が本当に多いんです。
回復時間とは、何も生産しない時間のことです。ぼんやりする、散歩する、家族と話す、趣味に触れる。この時間がゼロだと、疲労が翌日に持ち越されていきます。
目安として、平日は1日1時間、休日は半日。これを最初から予定に入れてください。「余ったらやる」ではなく、先に確保するのがコツです。
ステップ3:本業の実質拘束時間を書き出す
本業の労働時間だけでなく、実質的に拘束されている時間を書き出します。
契約上の労働時間。残業の平均時間。通勤時間。始業前の準備時間。帰宅後にメールをチェックしている時間。
このうち、最後の2つを見落とす方が多いです。特に、帰宅後にスマートフォンで仕事のメッセージを確認している時間。10分程度だと思っていても、確認するたびに脳は仕事モードに戻ります。実質的には拘束されているのと同じです。
ステップ4:残った枠にダブルワークを入れる
ここまで引き算して残った時間が、ダブルワークに使える枠です。
多くの会社員の方の場合、平日は1日1時間から2時間、休日は4時間から6時間程度に落ち着きます。週に換算すると13時間から22時間くらい。月なら55時間から95時間です。
法律上の残業上限が月45時間であることを思い出してください。雇用の掛け持ちだと、この枠の上のほうは既に法律に触れます。業務委託ならそこは問題ありませんが、体への負荷は同じです。
ステップ5:8割で設計する
そして最後、最も大事なステップです。
ステップ4で出た数字の8割を、実際の計画にしてください。
理由は単純で、人生には予定外のことが起きるからです。子どもが熱を出す。本業で急な残業が入る。自分が風邪を引く。天気が悪くて外出できない。
上限いっぱいで設計していると、こうしたときに必ず破綻します。最初から2割の余白を持っておけば、突発事項を吸収できます。この余白があるかどうかで、続けられる期間が大きく変わります。
在宅ワークでの1日の組み立て方については、実際のスケジュール例を紹介した在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開が参考になります。家事や育児と両立している方が、どこに時間を差し込んでいるかが具体的に書かれています。
危険信号のチェックリスト
自分で決めた上限が適切かどうかは、実際に働いてみないとわかりません。走りながら確認するために、体が出すサインを知っておきましょう。
睡眠のサイン
一番早く出るのが睡眠です。
寝つきが悪くなる。夜中に目が覚める回数が増える。朝、目覚ましより早く目が覚めてしまう。休日に10時間以上寝ても疲れが取れない。
この中で特に注意してほしいのが「早朝覚醒」です。疲れているはずなのに朝4時や5時に目が覚めてしまう状態は、心身の負荷が高まっているときによく見られます。「早起きできて得した」と思わないでください。
感情のサイン
次に出るのが感情の変化です。
些細なことでイライラする。家族に強く当たってしまう。今まで楽しめていたことが楽しくない。テレビや音楽が「うるさい」と感じる。
「今まで好きだったものへの興味が薄れる」というのは、心のエネルギーが枯れかけているサインです。心理学ではアンヘドニアと呼びますが、要は「楽しさを感じる力が落ちている」状態です。休息が足りていません。
身体のサイン
体にも出ます。
肩こりや頭痛が慢性化する。胃腸の調子が崩れる。風邪をひきやすくなり、治りにくくなる。食欲が極端に増えるか、減る。
特に「治りにくくなる」は重要です。免疫の働きは疲労と睡眠に強く影響されます。以前なら2日で治った風邪が1週間長引くなら、回復力そのものが落ちています。
パフォーマンスのサイン
そして、本業に出ます。
同じ作業に時間がかかるようになる。ケアレスミスが増える。人の話を聞いていて、内容が入ってこない。メールの返信が遅れがちになる。
ダブルワークで本業のパフォーマンスが落ちると、収入を増やすつもりが評価を下げる結果になりかねません。副業を認めている会社でも、本業に支障が出れば当然問題になります。
3つ以上当てはまったら
上の4カテゴリで、それぞれ1つ以上当てはまる。あるいは合計で3つ以上当てはまる。この状態になったら、いったんダブルワークの時間を3割減らしてください。
「もう少し頑張れる」と思う気持ちはよくわかります。でも、この段階で減らすのと、動けなくなってから止めるのとでは、回復にかかる時間が全然違います。3割減らして2週間様子を見る。これで戻る方がほとんどです。
集中力が落ちてきたと感じたときの対処法については、在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックに具体的な手法をまとめています。時間を増やすより、同じ時間の密度を上げるほうが体には優しい選択です。
時間の「量」より「並び方」が効く
同じ月80時間の副業でも、疲れ方はまったく違います。ここを理解すると、上限を増やせる場合があります。
分散型と集中型
分散型は、平日毎日2時間ずつ、月20日で40時間というような働き方。集中型は、土日に8時間ずつ、月8日で64時間というような働き方です。
どちらが楽かは、人によって、そして仕事の種類によって変わります。
分散型が向くのは、作業の立ち上がりが早い仕事です。データ入力、簡単なライティング、事務作業。座ってすぐ手が動くタイプの仕事なら、1日2時間でも成果が出ます。
集中型が向くのは、頭を切り替えるコストが高い仕事です。プログラミング、デザイン、長文の執筆。作業に入るまでに30分かかる仕事を1日2時間でやると、実質の作業時間は1.5時間。効率が悪いんです。
切り替えコストという考え方
私が独立初年度に失敗したのも、ここでした。
人は仕事を切り替えるたびに、認知的な負荷を払っています。心理学ではスイッチングコストと呼びますが、難しく考える必要はありません。「頭のギアを入れ替えるのに疲れる」というだけの話です。
本業と副業の性質が近いほど、この切り替えコストは小さくなります。事務職の方が在宅で事務代行をやるのは、比較的楽です。逆に、接客業の方が夜にプログラミングをやると、切り替えコストが大きくなります。
だから、副業を選ぶときは単価だけでなく「本業とどれくらい近いか」も見てほしいんです。近い仕事なら、同じ時間でも疲労が少なくて済みます。
曜日の設計
もう一つ、見落とされがちなのが「完全オフの日」です。
週7日のうち、最低1日は副業も本業もない日を作ってください。半日でも構いません。この日があるかないかで、翌週の回復度が変わります。
先ほど紹介した平日5日+土日2日の働き方は、法律上は問題なくても、この完全オフがゼロです。私なら、月に2回は土曜か日曜のどちらかを空けることを提案します。
収入との関係で上限を見直す
時間の上限を考えるとき、収入面の制約も無視できません。むしろ、こちらが実質的な上限になることもあります。
社会保険の加入ライン
雇用のダブルワークで押さえておきたいのが、社会保険の加入条件です。
週の所定労働時間が20時間以上で、月額賃金8.8万円以上、勤務期間が2ヶ月を超える見込み、学生でない。これらを満たすと、その勤務先で社会保険への加入義務が発生します。適用対象となる企業の規模は段階的に拡大されてきました。
重要なのは、この判定が「1社ごと」に行われる点です。労働時間は通算されますが、社会保険の加入判定は通算されません。A社で週15時間、B社で週15時間なら、合計30時間でもどちらも加入対象にならないケースがあります。
社会保険の適用に関する最新の要件は、日本年金機構のサイトで確認できます。
参考:日本年金機構
扶養の範囲で働く場合
配偶者の扶養に入っている方の場合、時間の上限は収入の壁から逆算されます。
こんなお悩みも実際にあります。
扶養内でダブルワークをしている方に質問です。 ふたつの仕事をどのようなシフトで働いていますか? 扶養内103万で収まってますか?それとも130万までに抑えれてますか? 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
年収の基準額から働ける時間を割り出すには、時給で割ればおおよその上限が出ます。時給1,200円で年130万円までに抑えるなら、年1,083時間、月90時間ほどが天井です。
複数の勤務先の収入は合算して判定されます。1社だけで見ていると超えてしまうので、必ず合計で管理してください。税や社会保険の基準額は改正されることがあるため、判断の前に国税庁の情報を確認しておくと確実です。
参考:国税庁
時給を上げるという選択肢
ここで一つ、考え方の転換をご提案します。
「何時間まで働けるか」という問いは、裏を返せば「必要な収入を得るのに何時間かかるか」という問いでもあります。時間の上限が動かせないなら、時間あたりの単価を上げるほうが現実的です。
たとえばライティングの仕事なら、汎用的な記事執筆と専門分野の執筆では単価が大きく変わります。実際の相場感は著述家,記者,編集者の年収・単価相場に職種別のデータがまとまっています。同じ2時間でも、単価が変われば手取りは変わります。
技術系の仕事も同様です。ソフトウェア作成者の年収・単価相場を見ると、スキルレベルによる単価の幅が具体的にわかります。
資格を取ることで単価が上がるケースもあります。事務系ならビジネス文書検定、ネットワーク系ならCCNA(シスコ技術者認定)といった資格は、業務委託の案件を受けるときの信頼材料になります。
時間を増やすのは限界があります。でも単価を上げるのに上限はありません。
業務委託で働く場合の「自主的な上限」
雇用ではなく業務委託でダブルワークをする方が増えています。この層は法律の上限に守られていないので、自分でルールを作る必要があります。
納期から逆算しない、体力から逆算する
業務委託でよくある失敗が、納期ベースで受注量を決めてしまうことです。
「来週金曜までなら間に合いそう」。この判断が危険なのは、間に合わせるために睡眠を削ることを前提にしているからです。1回なら大丈夫。でもこれが習慣になると、常に睡眠不足の状態で仕事をすることになります。
私が受注量を決めるときに使っているのは、逆の順番です。まず1週間に使える時間を固定する。次に、その時間で確実にこなせる量を計算する。最後に、その量に収まる案件だけを受ける。
順番を逆にするだけで、無理な受注がなくなります。
稼働時間を記録する
業務委託には出勤簿がありません。だからこそ、自分で記録をつけることをお勧めします。
方法は何でも構いません。スマートフォンのメモでも、スプレッドシートでも。「今日は何時から何時まで働いたか」を1行書くだけ。
記録をつけると、思っていたより働いている自分に気づきます。「今週は3日くらいしか作業してないつもりだったけど、記録を見たら6日やっていた」。こういうことが本当によく起きるんです。
そして記録は、体調を崩したときの原因究明にも役立ちます。「先月は月80時間だったのに調子が良くて、今月は60時間で辛い。何が違ったんだろう」と振り返れるようになります。
断る基準をあらかじめ決めておく
依頼が来てから「受けるか断るか」を考えると、目の前の金額に判断が引っ張られます。
だから、依頼が来る前に基準を決めておきます。
週の稼働が既に15時間を超えていたら受けない。納期まで3日を切っている案件は受けない。時給換算で1,500円を下回る案件は受けない。
数字は人それぞれで構いません。大事なのは、事前に決めておくことです。基準があると、断るときの罪悪感がぐっと減ります。「私が怠けているから断る」ではなく「ルールに従って断る」に変わるからです。
自分に合う案件の探し方や、条件面での見極め方については在宅ワークの求人の探し方5選|初心者でも安心な方法と注意点を徹底解説にまとめられています。時間の条件が合う仕事を最初から選ぶことが、無理のないダブルワークの第一歩になります。
分野によって「時間あたりの疲労度」は違う
同じ1時間でも、仕事の種類によって消耗の度合いが変わります。上限時間を決めるとき、ここも考慮してください。
集中力を大きく使う仕事
プログラミング、設計、分析、専門的な執筆。これらは深い集中を必要とする仕事です。
深い集中が持続する時間には個人差がありますが、多くの人は90分程度が一区切りになります。それを超えると、質が落ち始めます。
こうした仕事を本業のあとにやるなら、1日2時間が現実的な上限だと考えてください。3時間、4時間と延ばしても、後半の生産性は大きく落ちます。
AIを使った業務改善の支援なども、この分類に入ります。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、クライアントの課題を整理して提案する仕事の内容が説明されています。頭を使う分、時間あたりの単価は高くなる傾向があります。
手を動かす作業が中心の仕事
データ入力、画像の切り抜き、文字起こし、簡単な資料作成。ルーティン性の高い作業です。
これらは深い集中を必要としない分、長時間でも続けやすい特徴があります。音楽を聴きながら、テレビをつけながらでも進められる方も多いでしょう。
ただし、単調さゆえの別の疲れがあります。同じ姿勢が続くことによる身体の負担、そして「これをやっていて意味があるのか」という感覚の摩耗です。長期的に続けるなら、時々は違う種類の仕事を混ぜることをお勧めします。
人と関わる仕事
オンライン接客、カスタマーサポート、コーチング、コンサルティング。人と直接やりとりする仕事です。
これは時間数以上に消耗します。感情労働と呼ばれる領域で、自分の感情を管理しながら相手に合わせる作業が含まれるからです。
私自身、カウンセリングは1日4件までと決めています。時間にすれば4時間程度。事務作業なら8時間できても、この仕事は4時間で限界です。
もし本業が接客業や営業職なら、副業には人と関わらない仕事を選ぶほうが体は楽になります。逆に、本業が一人で黙々と作業する仕事なら、副業で人と関わることが気分転換になる場合もあります。
専門性の高い分野
セキュリティ、マーケティング、システム開発といった専門領域は、時間あたりの単価が高い一方で、常に学習が必要という特徴があります。
AI・マーケティング・セキュリティのお仕事やアプリケーション開発のお仕事には、こうした分野で求められるスキルと仕事の進め方が整理されています。
こうした分野で副業をするなら、作業時間だけでなく学習時間も上限の計算に入れてください。「案件の作業は週10時間だけど、勉強に週5時間使っている」なら、実質の稼働は15時間です。ここを見落とすと、なぜか疲れが取れないという状態になります。
運営者として20年見てきたこと
ここで、フリーランス・在宅ワークの市場を長く運営してきた立場からの観察をお伝えします。
20年この市場を見てきた立場から言えば、長く続いている方には共通点があります。それは「働ける時間の上限を、自分でコントロールできる状態にしている」ことです。
具体的には、案件の数ではなく、依頼元との関係の質に時間を使っています。単発の仕事を数多く取るのではなく、「この人に任せると楽だ」と思ってもらえる関係を数社と作る。そうすると、繁忙期に無理を押し付けられることが減り、逆にこちらの都合で調整してもらえる場面が増えます。
時間の上限を守るというのは、実は交渉力の問題でもあるんです。代わりがいくらでもいる立場だと、断ると次がありません。だから無理をする。でも「この人でないと」と思われる立場になると、断っても関係が切れません。
もう一つ、運営者として見てきた限りでは、手取りの構造も見逃せない要素です。仲介手数料が乗る仕組みだと、同じ報酬額でも受け手の手元に残る金額が減ります。その差を埋めるために働く時間を増やす、という悪循環が起きやすい。
中間マージンが乗らない直接取引だと、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受ける側は同じ仕事で手取りが厚くなります。手数料0%という条件が意味を持つのは、金額の多寡そのものより、「同じ時間でも手元に残るものが違う」という点です。時間の上限が動かせないなら、時間あたりの手取りを厚くするしかありません。
そして、これは長く続けるための条件でもあります。手取りが薄いと、必要な収入を得るために時間を増やすしかなくなる。時間を増やすと体を壊す。体を壊すと働けなくなる。この連鎖を断つには、入口の構造から見直す必要があります。
上限を超えてしまったときの戻し方
どれだけ気をつけていても、超えてしまうことはあります。そのときにどう戻すかを知っておくと、傷が浅くて済みます。
まず睡眠を戻す
最優先は睡眠です。
副業の時間を削ってでも、睡眠時間を先に確保してください。1週間、いつもより1時間早く寝る。これだけで、判断力と気分がかなり戻ります。
「寝る時間がない」と感じるときこそ、寝てください。睡眠不足の状態では作業効率が落ちているので、寝てから作業したほうが結果的に早く終わります。
案件を減らす連絡は、早めに正直に
抱えている案件が多すぎると気づいたら、早めに連絡してください。
納期の直前になって「できません」と言うのが一番迷惑がかかります。逆に、余裕がある段階で「今月は体調を整えたいので、次の依頼は来月からでもよいですか」と伝えれば、たいていの依頼主は理解してくれます。
こういうご相談もよくあります。「断ったら、もう依頼が来なくなるんじゃないですか」。気持ちはわかります。でも実際は、体調を崩して突然連絡が取れなくなるほうが、よほど信頼を失います。早めに正直に伝える人のほうが、長い目で見れば信用されます。
元に戻す期間を決める
減らしたら、いつまで減らすかも決めてください。
「調子が戻るまで」という曖昧な設定だと、罪悪感で早く戻りすぎることが多いんです。「3週間は週10時間まで」と数字で決めて、その期間は守る。期間が終わったら、体の状態を見て次を決める。
このやり方だと、休んでいる間の不安が減ります。終わりが見えているからです。
戻すときは元の8割から
期間が終わって再開するとき、いきなり元の量に戻さないでください。
まず元の8割で2週間。問題なければ元の量に戻す。この段階を踏むと、再発が減ります。
体は、以前できていたことが今もできるとは限りません。年齢、生活環境、本業の忙しさ。条件が変われば、適正な上限も変わります。半年前の自分の上限が、今の自分の上限とは限らないんです。
独自データから見えるダブルワークの現実
在宅ワークの求人情報を扱う立場から見ると、募集要項に書かれている時間の条件には、はっきりした傾向があります。
まず、業務委託案件の多くは「週何時間」という形で稼働の目安を示しています。この数字が週10時間から20時間のレンジに集中しているのは、副業として現実的に続けられる範囲を、依頼する側も理解しているからです。
一方で、時間の条件を書かずに「成果物ベース」とだけ記載する案件もあります。こうした案件は自由度が高い反面、実際にどれくらいの時間がかかるかを自分で見積もる必要があります。慣れないうちは、時間の条件が明記されている案件から始めるほうが安全です。
職種による時間の傾向も見えてきます。事務代行やデータ入力は「1日2時間から」といった短時間の案件が多く、開発やデザインは「週20時間程度」というまとまった時間を求める案件が目立ちます。これは仕事の性質を素直に反映しています。細切れにできる仕事と、まとまった時間が必要な仕事の違いです。
自分の生活パターンに合う職種を選ぶことは、時間の上限を守るうえで想像以上に効きます。平日夜に2時間しか取れない人が、週20時間必要な案件を受けても続きません。逆に、まとまった時間が取れる人が細切れの案件ばかり受けると、単価が伸び悩みます。
そして、20年この市場を見てきて確信していることがあります。時間を増やして収入を伸ばせる期間は、思っているより短いということです。多くの方は最初の半年から1年で、時間の上限にぶつかります。そこから先の伸びは、単価と効率で作るしかありません。
だからこそ、最初から「何時間まで働けるか」だけでなく「この時間で何ができるか」を考えてほしいんです。時間は誰にとっても1日24時間で、増やせません。増やせるのは、その時間の中身のほうです。
あなたが今、ダブルワークの時間を調べているということは、これから増やそうとしているか、既に無理を感じているか、どちらかだと思います。前者なら、この記事の5ステップで先に上限を決めてから始めてください。後者なら、危険信号のチェックリストを見て、当てはまるものを数えてみてください。
どちらの場合も、あなたは一人ではありません。同じところで悩んでいる方を、私は何百人と見てきました。そして、上限を自分で決められるようになった方は、ちゃんと長く続けています。大丈夫ですよ。
よくある質問
Q. ダブルワークは1日最大何時間まで働けますか?
雇用契約同士の掛け持ちなら、2社の労働時間を通算して1日8時間・週40時間が原則です。36協定があれば残業として月45時間・年360時間まで、特別条項でも年720時間が上限になります。業務委託の副業は通算対象外ですが、法律の保護もないため自分で上限を決める必要があります。
Q. 本業と副業の労働時間が通算されないのはどんな場合ですか?
副業が業務委託・請負契約の場合、労働基準法上の労働者に当たらないため通算されません。フリーランスとして受注するライティング、デザイン、プログラミングなどが該当します。個人での物販や投資も同様です。逆に、パートやアルバイトなど雇用契約であれば呼び方に関係なく通算されます。
Q. 週40時間以内なら体調面でも問題ないと考えてよいですか?
法律の上限と、健康に続けられる上限は別物です。通勤時間、切り替えの負担、仕事の種類による疲労度の違いがあるため、時間数だけでは判断できません。24時間から睡眠・食事・通勤・家事を引き、さらに回復時間を確保した残りの8割を目安に設計すると無理が出にくくなります。
Q. 働きすぎているかどうかは何で見分けますか?
睡眠、感情、身体、パフォーマンスの4つを見ます。寝つきが悪い、些細なことでイライラする、風邪が治りにくい、本業でミスが増える。この中で3つ以上当てはまったら、副業の時間を3割減らして2週間様子を見てください。動けなくなってから止めるより、回復がずっと早く済みます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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