偽装請負にあたるとどんな罰則があるか

丸山 桃子
丸山 桃子
偽装請負にあたるとどんな罰則があるか

この記事のポイント

  • ✓労働者派遣法・職業安定法・労働基準法の3つにまたがります
  • ✓法人も罰せられる仕組み
  • ✓罰則より重い労働契約申込みみなし制度

偽装請負の罰則を調べている人が知りたいのは、たぶん罰金の金額そのものではありません。「うちのやり方は危ないのか」「この働かされ方はおかしいのではないか」という不安のほうです。結論から書きます。罰則は3つの法律にまたがっていて、上限は100万円以下の罰金または1年以下の拘禁刑です。ただし、実務でいちばん重い結果をもたらすのは、罰則ではありません。発注した側が、その人を自社で雇い入れる申し込みをしたものとみなされる制度のほうです。

この記事では、どの法律のどの罰則に当たるのかを条文で確認したうえで、罰金より先に効いてくる仕組み、そして発注側と受注側それぞれが実際に何を整えればよいかを整理します。

偽装請負かどうかは、契約書の名前ではなく指揮命令で決まる

まず、言葉の意味を揃えておきます。偽装請負とは、契約書のうえでは請負や業務委託の形を取っているのに、実際には発注した側が相手の会社の従業員に直接指示を出して働かせている状態のことです。

なぜこれが問題になるのか。労働者派遣法は、労働者派遣を「自分が雇っている労働者を、その雇用関係のまま、他人の指揮命令を受けて、その他人のために働かせること」と定義しています。つまり、指揮命令が誰から出ているかで、それが派遣かどうかが決まります。契約書の表題が業務委託契約書であっても、現場で発注側の社員が作業の順序や時間や方法を直接指示しているなら、実態は労働者派遣です。

労働者派遣事業は、厚生労働大臣の許可を受けた事業者しか行えません。許可を持たない会社が、請負という名目で実質的な派遣をしていれば、無許可で派遣事業をしていることになります。これが偽装請負の骨格です。

判断の分かれ目になるのは、だいたい次のようなところです。作業の進め方を誰が決めているか。始業と終業の時刻や休憩を誰が管理しているか。何人でやるかを誰が決めているか。設備や資材を誰が用意しているか。仕事の質に問題があったとき、誰が責任を負うか。これらが発注側に寄っているほど、請負とは言いにくくなります。

正直なところ、ここは「グレーだから大丈夫だろう」で済ませてはいけない部分です。実態で判定されるので、契約書の文言をどれだけ整えても、現場の運用が変わらなければ結論は変わりません。

罰則は3つの法律にまたがっている

偽装請負という名前の罪があるわけではありません。実態に応じて、次の3つのいずれか、または複数に当たります。

1つ目が労働者派遣法です。許可を受けないで労働者派遣事業を行った場合、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と定められています。請負の形を取っていても、実質が派遣であれば、許可のない派遣事業をしたことになります。

2つ目が職業安定法です。この法律は、許可を受けた労働組合等の場合を除いて、労働者供給事業を行うことと、労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自分の指揮命令のもとで働かせることを、どちらも禁じています。

何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

ここは見落とされがちなところです。禁じられているのは供給する側だけではありません。供給された人を指揮命令して働かせた側も、同じ条文で禁止されています。つまり発注した側も対象になります。この規定に違反した場合の罰則は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。

3つ目が労働基準法です。この法律には、法律に基づいて許される場合を除いて、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない、という規定があります。中間搾取の排除と呼ばれる決まりです。許可なく人を送り込んで手数料を得ていれば、ここに当たる可能性があります。違反した場合の罰則は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。

「懲役」と書いてある解説は、もう古い

ここで1つ補足しておきます。偽装請負の罰則を解説した記事の多くが「1年以下の懲役」と書いていますが、現在の条文は「拘禁刑」です。

刑法の改正によって、懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されました。上に挙げた3つの法律の罰則も、現行の条文では拘禁刑と書かれています。刑の重さが変わったわけではありませんが、いま条文を引くときは拘禁刑が正しい表記です。年に何度も更新されない解説記事を参照していると、この種のずれが積み上がります。制度を確認するときは、必ず現行の条文そのものに当たってください。

罰せられるのは担当者だけではない。法人にも罰金がかかる

もう1つ、発注側の責任者に知っておいてほしいのが、両罰規定です。

労働者派遣法には、法人の代表者や、法人の代理人・使用人その他の従業者が、その法人の業務に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対しても罰金刑を科す、という規定があります。現場の担当者が処罰されて終わりではなく、会社そのものも罰金の対象になるということです。

この構造は、実務上かなり効きます。「担当者が勝手にやったことだ」という説明では、会社は逃げられません。逆に言えば、会社として運用のルールを整えていなかったこと自体が問われます。

罰則より先に効いてくるのが、労働契約申込みみなし制度

ここからが、この記事でいちばん伝えたい部分です。偽装請負で本当に重いのは、罰金ではありません。

労働者派遣法には、違法な派遣を受け入れた側が、その派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなされる、という仕組みがあります。対象になる行為のひとつが、法律の適用を免れる目的で、請負その他の労働者派遣以外の名目で契約を結び、労働者派遣契約で定めるべき事項を定めないまま役務の提供を受けることです。これはまさに偽装請負そのものを指しています。

みなされる労働契約の中身は、その時点で本人に適用されていた労働条件と同じものです。そして、この申し込みは、対象となる行為が終わった日から1年を経過する日までの間、撤回できません。その期間内に相手が承諾すれば、労働契約が成立します。

つまり、偽装請負の状態で人を受け入れていた会社は、罰金を払って終わりではなく、その人を自社の従業員として抱えることになりうるということです。1人ではなく、同じ現場に複数人いれば、その全員が対象になり得ます。人件費、社会保険料、退職金の算定、すべてが変わります。

ただし、例外があります。その行為が違法なものに当たることを知らず、かつ知らなかったことについて過失がなかったときは、この仕組みは働きません。裏を返せば、少しでも疑いを持ちながら運用を続けていた場合、この例外は使いにくくなります。「たぶん大丈夫だろう」と思って続けることが、いちばん危ない。

行政からの勧告と、従わなかった場合の公表

刑事罰の手前にも段階があります。厚生労働大臣は、労働者派遣の役務の提供を受ける側が一定の規定に違反しているとき、是正するために必要な措置をとるよう勧告できます。そして、勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表できると定められています。

公表は、企業にとって罰金より痛いことがあります。取引先との契約条件、採用、金融機関の評価に直接響くからです。労働局の調査が入った段階で真剣に是正に動く会社が多いのは、ここを理解しているからです。

申告した人を守る仕組みもある

働いている側からすると、「おかしいと感じても、言ったら切られるのでは」という不安が先に立ちます。ここにも決まりがあります。

労働者派遣法は、派遣元の事業主や派遣先が法律に違反している事実があるとき、派遣労働者はその事実を厚生労働大臣に申告できると定めています。そのうえで、申告をしたことを理由に不利益な取扱いをすることを禁じ、これに違反した場合には6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金という罰則を置いています。

申告先は、実務上は勤務先を管轄する都道府県労働局の需給調整事業課です。相談だけなら匿名でもできます。自分の状況が偽装請負に当たるかどうかを自分で判定する必要はありません。現場で起きていることを具体的に伝えれば、判断は行政が行います。

現場で偽装請負になりやすい形

法律の話より、こちらのほうが役に立つはずです。実際に指摘されやすい形を挙げます。

発注側の社員が、請負会社のスタッフに直接、作業の順序や方法を指示している。朝礼に参加させて、その日の担当を発注側が割り振っている。出退勤の時刻を発注側が管理し、残業を発注側が命じている。人数や、誰を入れるかを発注側が指定している。欠員が出たときに発注側が補充を求めている。請負会社の責任者が現場にいない、あるいは名目上いるだけで何も決めていない。作業に使う機材も資材も全部発注側のもので、請負会社は人を出しているだけになっている。

このうち、いちばん多いのは最初の項目です。悪意があるケースは実は少なくて、「早いから」「そのほうが正確だから」という理由で、直接指示が日常になっていくパターンがほとんどです。チャットツールが普及してからは、発注側の担当者が相手のスタッフに直接メッセージを送るのが当たり前になり、境界線がさらに曖昧になりました。

もうひとつ、フリーランスとして1人で受けている場合にも似た問題が起きます。業務委託契約なのに、発注側のオフィスに常駐して、始業と終業の時刻を守り、日々の作業指示を受けている。この場合は労働者派遣の問題というより、その契約が実態として雇用ではないかという論点になります。名目が請負でも、実態が労働契約だと認められれば、労働基準法などの規定が適用されることになります。

請負と言えるための条件は、国の告示にはっきり書かれている

「グレーゾーンだ」と言われがちな分野ですが、実は判断の基準そのものは文書になっています。労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準という告示がそれです。1986年に出され、その後改正されています。

この告示の構造は明快です。請負の形で契約を結び、自分が雇っている労働者をその業務に就かせている事業主であっても、次の条件を全部満たしていない限り、労働者派遣事業を行う事業主として扱う、と書かれています。つまり、条件を満たせなければ派遣だという作りです。

満たすべき条件は、大きく2つに分かれます。

1つ目は、自分が雇っている労働者の労働力を、自分で直接使っているといえること。中身は3つあります。業務の進め方についての指示や評価を自分で行っていること。始業と終業の時刻、休憩、休日、休暇についての指示や管理を自分で行っていること。そして、服務上の規律についての指示や、誰をどこに配置するかの決定と変更を自分で行っていることです。

ここで注意したいのが、告示がわざわざ「単なる把握を除く」と書いている点です。発注側が、相手のスタッフが何時に来て何時に帰ったかを把握しているだけなら問題になりません。問題になるのは、発注側が時刻を指示したり、残業を命じたりしたときです。把握と管理は違う、という線引きが明示されています。

2つ目は、請け負った業務を自分の業務として、発注者から独立して処理しているといえること。こちらも3つあります。業務に必要な資金を、すべて自分の責任で調達して支払っていること。民法や商法その他の法律に定められた事業主としての責任をすべて負っていること。そして、自分の責任と負担で準備した機械や設備、材料などを使って処理するなど、単に肉体的な労働力を提供しているだけではないこと。

この2つ目が抜けているケースは、現場でとても多い。人だけを出して、場所も機材も資材も全部発注側のもの、という形です。作業内容が専門的であっても、この状態が続いていれば請負とは言いにくくなります。告示の全文は厚生労働省の資料で読めます。3ページほどの短い文書なので、発注側の担当者は一度目を通しておく価値があります。

調査で実際に見られるのは、書類より現場

労働局の調査で確認されるのは、契約書の文言だけではありません。むしろ、現場で誰が何を決めているかのほうが重視されます。

具体的には、こういうところです。作業の指示が誰から誰へ出ているか。指示の記録がどこに残っているか。請負会社の責任者が現場にいて、実際に判断しているか。勤怠の管理を誰がしているか。急に人が足りなくなったとき、誰が手配しているか。作業に使う機材と資材の持ち主は誰か。仕事にミスがあったとき、誰が手直しの費用を負担しているか。

このうち、意外と決定的になるのが最後の項目です。請負であれば、仕上がりに問題があったとき、請け負った側が自分の費用で直します。ところが偽装請負の現場では、発注側が「やり直して」と指示して、そのまま時間分の費用も発注側が持つ形になっていることが多い。ここは契約書に書かれていないことが多いので、実際の運用を確かめられます。

もうひとつ、チャットの履歴が見られることがあります。最近はここが一番わかりやすい証拠になります。発注側の担当者が、請負会社のスタッフ個人に「これを先にやって」「今日は何時まで残れる?」と送っていれば、指揮命令があったと判断されやすくなります。やりとりは責任者を通す、というルールを技術的に守る仕組みにしておくと、この問題はかなり減ります。

一人で受けているフリーランスの場合は、別の論点になる

ここまでは、請負会社が従業員を出している前提の話でした。フリーランスが1人で受けている場合は、少し構造が違います。

1人でやっている以上、そこに「自分が雇っている労働者」はいません。だから労働者派遣の問題は起きにくい。代わりに問題になるのが、その契約が実態として労働契約ではないか、という論点です。

判断の材料は似ています。仕事を断る自由があるか。作業の進め方を自分で決められるか。時間や場所が拘束されているか。報酬が成果に対して払われているのか、時間に対して払われているのか。代わりの人を立てられるか。機材を自分で用意しているか。これらが発注側に寄っていれば、名目が業務委託でも、実態は労働契約だと判断される可能性があります。

労働契約だと認められれば、労働基準法や最低賃金法などが適用されます。残業代、有給休暇、解雇の制限といった保護が及ぶことになります。働く側にとっては保護が増える話ですが、発注側にとっては、想定していなかった義務が後から発生する話になります。

そして、2024年に施行されたフリーランス向けの法律によって、発注側には取引条件の明示や、報酬の支払期日、募集情報の的確な表示といった義務が課されるようになりました。偽装請負の論点とは別の枠組みですが、一人で受ける働き方をめぐるルールが整備されてきている流れの一部です。契約の書面に何を書かせるべきかという実務は共通しているので、受ける側も発注側も、押さえておく価値があります。

境界線がわかりにくい3つの場面

実際に相談が多い場面を、告示の考え方に当てはめて整理します。どれも「絶対にアウト」「絶対にセーフ」とは言えないので、どこを直せば安全側に寄るかという形で読んでください。

1つ目は、発注側の事務所に常駐して作業する形です。常駐そのものが違法なわけではありません。セキュリティの都合で外に持ち出せないデータを扱う仕事などでは、常駐に合理性があります。問題になるのは、常駐した結果として、発注側の社員が日々の指示を出すようになることです。直すなら、作業場所を借りているという位置づけをはっきりさせ、指示は請負会社の責任者を経由させ、勤怠は請負会社が管理する形にします。

2つ目は、発注側の会議に参加してもらう形です。仕様のすり合わせのために打ち合わせに入ってもらうのは、請負でも普通に必要です。国の疑義応答集でも、発注者が請負事業主に対して必要な情報を提供すること自体は、直ちに問題になるものではないという整理がされています。問題になるのは、その場で発注側が作業者に直接、担当や時間を割り振り始めたときです。直すなら、打ち合わせの参加者に請負会社の責任者を必ず入れて、決定事項は責任者を通じて伝える形にします。

3つ目は、人手が足りないときに増員を頼む形です。「あと1人お願いします」という依頼は日常的に起きますが、これは労務の提供を頼んでいる形に見えます。請負であれば、依頼するのは成果物や作業範囲であって、人数ではありません。直すなら、「この範囲の作業を、この期日までに追加でお願いしたい」という形に言い換えます。人数を何人にするかは、請け負う側が決めることです。

言い換えると、危ないかどうかは「誰に何を頼んでいるか」で判定できます。人に対して作業を頼んでいるなら危ない。会社に対して成果を頼んでいるなら安全側です。この一文だけ覚えておけば、現場でほとんどの場面を判断できます。

指摘を受けたあと、実際に何が起きるか

万一、労働局の調査で指摘を受けた場合の流れも書いておきます。いきなり刑事罰という話にはなりません。

最初は指導や助言です。是正の方向を示され、期限までに運用を変えることを求められます。ここで直せば、多くの場合はそこで終わります。

直さなかった場合や、違反のおそれがあると判断された場合には、勧告に進みます。是正するために必要な措置、または違法な就業が行われることを防ぐために必要な措置をとるよう求められます。そして勧告に従わなかったときは、その旨が公表されることがあります。

刑事罰は、この先の段階です。悪質な事案や、繰り返している事案で問題になります。金額だけを見ると軽く感じるかもしれませんが、法人にも罰金が科され、公表と組み合わさると、取引や採用への影響は罰金額の比ではありません。

そして、ここまでの行政のプロセスとは別に、労働契約申込みみなしの効果は当事者間で働きます。行政が何も言わなくても、働いていた本人が承諾の意思表示をすれば、労働契約が成立しうるということです。行政から指摘されなかったから安全、という話ではありません。

発注する側が整えるべきこと

発注側の担当者が今日からできることを挙げます。

指示の出し方を変えます。作業者本人にではなく、請負会社の責任者に対して、成果物の仕様と納期を伝える形にします。仕様書を文書で渡し、やりとりの記録を残します。「どうやるか」ではなく「何を、いつまでに」を伝えるのが請負です。

責任者を現場に置いてもらいます。名前だけの責任者では意味がありません。勤怠、作業の割り振り、品質の一次確認を、その人が実際に行っている状態にします。

契約書を実態に合わせます。成果物の定義、検収の基準、瑕疵があったときの扱い、再委託の可否をはっきり書きます。逆に、人数や作業時間を契約の中心に据えていると、それだけで労務の提供に見えます。契約書に何を書くべきかを体系的に押さえたい人は、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに必須項目が整理されています。

そして、そもそも請負でよいのかを考え直します。継続的に自社の指示で動いてほしいなら、素直に雇用するか、許可を持つ派遣会社を使うほうが安全です。専門性の高い助言や設計を外に求めているなら、請負や準委任の形が合います。どちらの仕事なのかを先に決めると、契約の形は自然に決まります。技術領域を外部に頼むときの仕事の切り分け方は、アプリケーション開発のお仕事やAIコンサル・業務活用支援のお仕事にある案件の分類が参考になります。

受ける側が自分を守るためにできること

フリーランスや請負会社のスタッフとして働いている側の話もしておきます。

記録を残してください。誰から、いつ、どんな指示を受けたか。チャットのログ、メール、作業指示書。あとから状況を説明するとき、これがあるかどうかで話の進み方がまったく違います。

契約書を読み直してください。成果物が定義されているか、検収の基準があるか、指揮命令について何が書かれているか。何も書かれていないまま常駐しているなら、そこが出発点の問題です。

そして、報酬が支払われない事態になったときの手段も知っておいてください。偽装請負の問題と、報酬が未払いになる問題は、しばしば同じ現場で同時に起きます。回収の道筋については未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に、費用と手順がまとまっています。

単価の交渉材料として、自分の職種の相場を知っておくことも自衛になります。ソフトウェア作成者の年収・単価相場のような職種別の相場データは、常駐前提の安い契約を断る根拠になります。技術の裏づけを形にしておきたいなら、CCNA(シスコ技術者認定)のような、業務範囲がはっきりした資格が交渉の材料になります。

社内で1枚のチェック表を作っておく

最後に、実務で回すための形にしておきます。難しい判定をその場でやろうとすると続かないので、担当者が見るのは1枚で足ります。

確認する項目は8つです。作業の指示は、請負会社の責任者に対して出しているか。指示の内容は「どうやるか」ではなく「何を、いつまでに」になっているか。責任者は現場にいて、実際に配置と勤怠を決めているか。始業と終業の時刻や残業を、発注側が指示していないか。人数や誰を入れるかを、発注側が指定していないか。作業に使う機材と資材は、誰が用意しているか。仕上がりに問題があったとき、手直しの費用を誰が負担しているか。個人あてのチャットで、直接の作業指示を送っていないか。

このうち1つでも発注側に寄っているなら、そこから直します。全部を一度に直そうとすると現場が止まるので、影響の大きいものから順にやるのが現実的です。経験上、最初に手を付けるべきは指示の経路です。ここが責任者経由になるだけで、残りの項目も自然に整っていきます。

そして、四半期に一度は実際の運用を見てください。契約を結んだときは正しくても、半年もすると現場の都合で崩れていきます。崩れるのは悪意からではなく、そのほうが早いからです。だからこそ、定期的に戻す仕組みが要ります。記録の残し方や社内の文書の整え方を体系的に学びたい担当者には、ビジネス文書検定のように書類の形式を扱う資格が、地味ですが実務の助けになります。

市場を見てきた立場からの観察

在宅ワークと業務委託の市場を20年運営してきた立場から言えば、偽装請負の問題は、悪質な会社だけで起きているわけではありません。むしろ、現場の善意から始まることのほうが多い。発注側の担当者が親切に教えているうちに、指示が日常になる。受ける側も、教えてもらえるほうが楽だから受け入れる。気づいたときには、契約の形と現場の実態が完全にずれている。

運営者として見てきた限りでは、この問題が起きにくい取引には共通点があります。成果物が先に定義されていることです。「このページのこの機能を、この仕様で、この日までに」と決まっている案件では、そもそも作業の進め方に口を出す必要がありません。逆に、「とりあえず来て手伝ってほしい」という形で始まった取引は、ほぼ必ず指揮命令の話になります。

そして、間に何社も入る取引ほど、この問題は起きやすくなります。層が増えるほど、誰が指示を出し、誰が責任を負うのかが曖昧になるからです。発注者と受注者が直接つながっていれば、責任の所在ははっきりします。手数料0%の直接取引が意味を持つのは、手取りが厚くなることだけではありません。間に人が入らない分、契約の中身と現場の実態がずれにくいという効果があります。

罰則の金額を覚えておく必要は、実はあまりありません。覚えておくべきなのは、実態で判定されるということ、そして発注した側がその人を雇うことになりうるということの2つです。この2つを知っていれば、現場で線を引く場面がわかります。

よくある質問

Q. 偽装請負の罰則はいくらですか?

実態によって適用される法律が変わります。許可なく労働者派遣事業を行った場合は労働者派遣法で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、労働者供給事業の禁止に違反した場合は職業安定法で同じく1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、中間搾取にあたる場合は労働基準法で1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。

Q. 罰せられるのは請負会社だけですか?

いいえ。職業安定法は、供給された労働者を自分の指揮命令のもとで働かせることも禁じているため、発注した側も対象になります。さらに労働者派遣法には両罰規定があり、違反行為をした担当者を罰するほか、その法人に対しても罰金刑が科されます。

Q. 罰金より重い結果になることはありますか?

あります。労働者派遣法には、違法な派遣を受け入れた側がその労働者に労働契約を申し込んだものとみなされる仕組みがあります。法の適用を免れる目的で請負の名目にしていた場合が対象で、申し込みは行為が終わった日から1年を経過する日まで撤回できません。相手が承諾すれば労働契約が成立します。

Q. 偽装請負ではないかと感じたら、どこに相談できますか?

勤務先を管轄する都道府県労働局の需給調整事業課が窓口です。労働者派遣法は、派遣労働者が法律違反の事実を厚生労働大臣に申告できると定め、申告を理由とする不利益な取扱いを禁じています。違反した場合は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金という罰則もあります。相談段階では判定を自分で行う必要はありません。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月8日最終更新:2026年9月23日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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