建設業の一人親方として働く|労災の特別加入と現場に入る準備


この記事のポイント
- ✓建設業の一人親方が置かれている立場を
- ✓労災保険の特別加入を軸に整理します
- ✓給付基礎日額と保険料の決まり方
建設業で一人親方として働く、あるいはすでに働いている人がまず確かめておくべきことは1つです。けがをしたときに誰が治療費と休業中の生活費を出すのか、です。
結論から書きます。一人親方は労働基準法の労働者ではないため、労災保険は自動では適用されません。ただし、労災保険には特別加入という制度があり、建設業の一人親方はその対象に入っています。加入は団体を通して行い、保険料は自分で払います。この記事では、加入できる人の範囲、手続き、保険料の計算、補償される作業の範囲を一次資料で確認したうえで、現場に入る前に揃えておく書類と、建設業許可が必要になる金額の境目までを順に並べます。
一人親方という言葉は誰を指すのか。定義は労災保険の側にある
建設業界では日常語として使われていますが、「一人親方」という言葉の中身を決めているのは労災保険の制度です。厚生労働省の特別加入制度のしおりには、こう書かれています。
労働者を使用しないで次の①~⑫の事業を行うことを常態とする一人親方その他の自営業者およびその事業に従事する人(以下「一人親方等」といいます。)が特別加入できます。 ※労働者を使用する場合であっても、労働者を使用する日の合計が1年間に100日に満たないときには、一人親方等として特別加入することができます。 出典: mhlw.go.jp
ここで押さえておきたい点が2つあります。
1つ目は「労働者を使用しないことを常態とする」という条件です。人を雇っていないことが前提になります。ただし例外があり、人を使う日の合計が1年間で100日に満たなければ、一人親方等として扱われます。繁忙期だけ手伝いを頼む働き方なら、この枠に収まる場合があります。年間で100日を超える見込みになったら、一人親方ではなく中小事業主等としての特別加入に切り替える必要が出てきます。
2つ目は、対象になる事業が12種類に限定列挙されていることです。建設業はその2番目に置かれていて、しおりの表現では「土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊若しくは、解体又はその準備の事業」とされ、例として大工、左官、とび職人が挙げられています。足場、鉄筋、内装、塗装、解体、設備の取り付けといった現場の仕事は、この枠に入ります。
ここを誤解したまま加入すると、いざ災害が起きたときに給付が受けられません。自分が受けている仕事がどの事業に当たるかは、加入の申し込みをする段階で団体に確認してください。
建設業で一人親方の形が多い理由と、問題にされている点
建設業に一人親方が多いのは、工事が工程ごとに切り分けられていて、工程ごとに人を集めて解散する形が定着しているためです。会社が年間を通して全工程の技能者を抱えるより、必要な工程だけ外から呼ぶほうが費用の見通しが立ちます。技能者の側も、腕が上がれば単価を自分で決められます。この双方の都合が重なって、一人親方という形が広がりました。
一方で、近年は形だけ一人親方にする運用が問題として扱われています。実態は現場で指示を受けて働いているのに、契約だけを請負にして社会保険料の負担や労働時間の規制を外す形です。この形が広がると、技能者の側は労災保険も雇用保険も社会保険の会社負担分も失い、発注する側だけが負担を軽くすることになります。
正直なところ、ここは技能者の側が自分で線を引くしかない部分です。現場で見分ける材料は3つあります。作業の手順や配置を毎日細かく指示されているか。始業と終業の時刻を会社の都合で決められているか。工具や材料を自分で用意しているか。前の2つが当てはまり、最後が当てはまらないなら、契約の題名にかかわらず労働者として扱われる余地があります。労働基準監督署には、労働者に当たるかどうかについて相談できる窓口が設けられています。判断に迷う状態で1年を過ごすより、早めに相談したほうが損が小さくなります。
労災保険の特別加入。強制適用との違いはどこか
労災保険は、労働者を1人でも雇えば強制的に適用されます。保険料は全額が事業主の負担で、働く側の手元からは引かれません。業務中や通勤中のけがや病気の治療費は原則として全額が給付され、働けない期間の補償も出ます。
一人親方はこの枠の外にいます。そこで用意されているのが特別加入です。仕組みの骨格は、一人親方等の団体を事業主とみなし、一人親方等を労働者とみなして労災保険を適用する、というものです。つまり、労災保険の中身はそのまま使えますが、入口が任意で、保険料が自己負担になります。
差が出るのは3点です。1つ目は保険料を誰が払うかです。強制適用なら事業主、特別加入なら自分です。2つ目は補償の範囲です。強制適用なら業務に関する災害が広く対象になりますが、特別加入では対象になる作業が加入の種類ごとに決められていて、その枠の外で起きた災害は給付の対象になりません。3つ目は加入していない期間の扱いです。任意加入なので、手続きを済ませる前に起きた災害は対象外です。
この3点目が現場でいちばん惜しい結果を招きます。元請から加入証明を求められて初めて手続きに動く人が多いのですが、その間に事故が起きれば自分の健康保険で3割を負担する形になります。加入は仕事を受け始める前に済ませておくのが確実です。
加入の手続きは団体を通す。自分1人では申請できない
特別加入は、労働基準監督署の窓口に自分で行って申し込む形ではありません。都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が手続きを行います。
新しく団体をつくって申請する場合は、特別加入申請書を所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出します。申請書には、特別加入を希望する人の業務の具体的な内容、業務歴、希望する給付基礎日額を記入します。すでに承認されている団体に加わる場合は、その団体に申し込めば団体が変更届を出します。
実際に多い流れは後者です。地域の建設業の組合、労働保険事務組合、一人親方向けの団体のいずれかに入って、そこを通して加入します。団体の側には、加入を希望する人の本人確認を行う義務が課されていて、原則として顔写真付きの身分証明書の提示が求められます。顔写真がない証明書なら2点以上が必要です。
団体を選ぶときに確かめる点を挙げます。まず、月々の団体費と労災保険料が別に示されているかです。合計額しか出てこない案内は、あとで比べにくくなります。次に、災害が起きたときの請求手続きをどこまで手伝ってくれるかです。労災の給付請求は書類の作り方に癖があり、団体の支援があると進みが違います。最後に、事務処理を行える区域です。団体が事務処理できる範囲は、主たる事務所の所在地を中心とした区域で定められています。遠方の団体に入ると手続きが成り立たない場合があります。
給付基礎日額と保険料。払う額と受け取る額が連動する
特別加入で最初に決めるのは給付基礎日額です。これは保険料と給付の両方を計算する土台になる金額で、申請に基づいて労働局長が決定します。選べる幅は3,500円から25,000円までの16段階です。
年間の保険料は、給付基礎日額に365を掛けた保険料算定基礎額に、事業ごとの保険料率を掛けて計算します。建設の事業の保険料率は1,000分の17です。しおりの一覧表から建設の事業の例を抜き出すと、こうなります。
| 給付基礎日額 | 保険料算定基礎額 | 建設の事業の年間保険料 |
|---|---|---|
| 3,500円 | 1,277,500円 | 21,709円 |
| 5,000円 | 1,825,000円 | 31,025円 |
| 8,000円 | 2,920,000円 | 49,640円 |
| 10,000円 | 3,650,000円 | 62,050円 |
| 14,000円 | 5,110,000円 | 86,870円 |
| 20,000円 | 7,300,000円 | 124,100円 |
| 25,000円 | 9,125,000円 | 155,125円 |
低い日額を選べば保険料は安くなりますが、休業したときに受け取る額もそのぶん少なくなります。しおりも、給付額が少なくなることに十分留意して適正な額を申請するよう促しています。目安の立て方としては、自分が働けない期間に必要になる1日あたりの生活費と、直近の実際の日当を並べて、低いほうに合わせないことです。日額5,000円で加入していると、休業の補償はその6割と特別支給金の2割が基準になるため、実際の日当が15,000円ある人には足りません。
給付基礎日額は後から変えられます。ただし時期が決まっていて、3月2日から3月31日までに給付基礎日額変更申請書を監督署長経由で労働局長に提出すると翌年度から変わります。労働保険の年度更新期間中にも当年度分の変更が可能です。重要なのは、災害が起きたあとには変更できないという点です。上げておきたいと考えているなら、事故が起きる前に手続きしてください。
補償の対象になる作業の範囲。どこまでが業務中か
特別加入で見落とされやすいのが、給付の対象になる作業が具体的に決められている点です。建設業の一人親方等について、しおりは5つの場面を挙げています。
1つ目は、請負契約に直接必要な行為を行う場合です。見積りや打ち合わせのための移動が含まれます。2つ目は、請負工事現場における作業とこれに直接附帯する行為です。現場での作業が中心になります。3つ目は、請負契約に基づくものであることが明らかな作業を自家内作業場で行う場合です。自宅の作業場で加工する仕事が対象になります。4つ目は、請負工事に関する機械や製品を運搬する作業とこれに直接附帯する行為です。ここには括弧付きで「手工具類程度のものを携行して通勤する場合を除く」という限定が付いています。5つ目は、台風や火災といった突発事故により予定外に緊急の出勤を行う場合です。
この4つ目の限定が実務で効きます。工具箱を持って現場へ向かう移動は、運搬作業ではなく通勤として扱われます。通勤の途中の災害は通勤災害として別の枠で給付の対象になりますが、経路や中断の扱いに条件があります。一方、資材や機械を運ぶための移動なら業務として扱われます。同じ道を走っていても、何を運んでいたかで扱いが変わるわけです。
事故が起きたら、その日の行動を時刻とともに書き留めてください。どこから何のために移動していたか、何を積んでいたか、誰と打ち合わせる予定だったか。給付の請求では、この記録が業務との関係を示す材料になります。記憶に頼ると、請求の段階で説明が足りなくなります。
加入時健康診断が必要になる4つの業務
特別加入の申請をするとき、過去の業務歴によっては健康診断を受ける必要があります。対象になる業務と期間は次のとおりです。
| 過去に従事した業務 | 通算期間 | 必要な健康診断 |
|---|---|---|
| 粉じん作業を行う業務 | 3年以上 | じん肺健康診断 |
| 振動工具使用の業務 | 1年以上 | 振動障害健康診断 |
| 鉛業務 | 6か月以上 | 鉛中毒健康診断 |
| 有機溶剤業務 | 6か月以上 | 有機溶剤中毒健康診断 |
建設業の一人親方で当てはまりやすいのは上の2つです。解体やはつりで粉じんを扱ってきた人、削岩機やブレーカーなど振動する工具を長く使ってきた人は、加入の段階で診断を受けることになります。
手続きの流れは決まっています。まず特別加入時健康診断申出書を特別加入団体を通じて監督署長に提出します。業務歴から診断が必要と認められると、監督署長が指示書と実施依頼書を交付します。指示書に書かれた期間内に、労働局長が委託している診断実施機関の中から選んで受診し、依頼書を機関に提出します。最後に、機関が作成した健康診断証明書を申請書または変更届に添えて監督署長へ提出します。
費用について1点だけ押さえてください。加入時健康診断の費用は国が負担しますが、交通費は自己負担です。この診断は加入を断るためのものではなく、すでに進んでいる健康障害を把握して、補償の扱いを整理するためのものです。過去の業務歴を隠して申し込むと、あとで給付の判断に影響します。正確に書いてください。
現場に入る前に揃えておく書類
元請や上位の請負業者から求められる書類は、現場によって違いますが、共通して出てくるものがあります。先に用意しておくと、仕事を受ける速さが変わります。
まず、労災保険の特別加入を証明する書類です。加入予定の段階で加入予定証明書を発行する団体もあります。次に、建設業の許可証の写しです。許可が要らない規模の工事だけを受けているなら不要ですが、金額の境目は後の節で確認してください。3つ目は、保険関係の状況を示す書類です。国民健康保険と国民年金に加入していることを示す資料を求められる現場があります。4つ目は、技能を示す資格の証明です。玉掛け、足場の組立て等作業従事者、高所作業車、車両系建設機械など、作業ごとに必要な技能講習や特別教育の修了証があります。5つ目は、健康診断の結果です。粉じんや振動を扱う現場では、定期の診断結果の提示を求められることがあります。
加えて、請負契約であることを示す書類を自分の側で整えておくことを勧めます。見積書、注文書または請負契約書、完成後の請求書の3点です。この3点が毎回そろっていれば、契約の形が請負であることを自分から示せます。逆にこれがなく、日当の記録だけが残っている状態は、労働者として扱われる材料になります。書類のやりとりに自信がないなら、ビジネス文書検定のように、見積りや請求の書式を体系で学べる資格が出発点になります。
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建設業許可が必要になる金額の境目
一人親方でも、請け負う工事の金額によっては建設業許可が必要になります。境目は建設業法施行令に書かれています。
法第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、千五百万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。 出典: laws.e-gov.go.jp
言い換えると、工事1件の請負代金が500万円未満なら許可は要りません。建築一式工事なら1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅を建てる工事なら許可なしで請けられます。
ここで2つの落とし穴があります。1つ目は分割です。同じ建設業を営む者が工事の完成を2つ以上の契約に分けて請け負うときは、各契約の金額を合計した額で判断します。正当な理由に基づいて分割した場合は別扱いになりますが、金額を下げるために分けても意味はありません。2つ目は材料です。注文する側が材料を提供する場合は、その市場価格、または市場価格と運送賃を請負代金に加えた額で判断します。手間だけで400万円でも、支給される材料が200万円分あるなら合計で境目を超えます。
許可を取ると営業の幅が広がりますが、専任技術者や財産的基礎の要件を満たす必要があり、一人で満たすには準備が要ります。当面の判断としては、自分が受けている工事の金額が境目に近づいているかを毎回確かめることです。近づいてきたら、都道府県の建設業を担当する課に相談する段階に入ります。
建設キャリアアップシステムと就業履歴
現場に入るとき、カードの提示を求められることが増えています。建設キャリアアップシステムのことです。国土交通省はこの仕組みをこう説明しています。
「建設キャリアアップシステム(CCUS)」は、技能者が、技能・経験に応じて適切に処遇される建設業を目指して、技能者の資格や現場での就業履歴等を登録・蓄積し、能力評価につなげる仕組みです。 出典: mlit.go.jp
一人親方にとっての意味は2つあります。1つは、現場に入る条件として登録を求められる場合があることです。公共工事では登録と現場での読み取りを進める動きがあり、登録していないと入れない現場が出てきます。もう1つは、就業履歴が自分の実績として残ることです。どの現場でどの職種として何日働いたかが積み上がるため、単価の交渉で示せる材料になります。
一人親方が使うときの注意点を1つ挙げます。事業者の登録と技能者の登録は別の手続きです。一人で仕事をしている場合、両方の登録が必要になる場面があります。また、システムの事業者検索では一人親方は表示の対象から外れている扱いがあるため、自分の登録状況は自分で確認しておく必要があります。登録の手続きと必要書類は、国土交通省のポータルから運営側の案内に辿れます。
社会保険と税。一人親方が自分で回す部分
一人親方は、雇われている人が会社に任せていた手続きを自分で回すことになります。項目を並べます。
健康保険は国民健康保険です。保険料は前年の所得と住んでいる市区町村の料率で決まります。建設業には業種ごとの国民健康保険組合があり、そちらに入れる場合もあります。押さえておきたいのは、国民健康保険には傷病手当金の仕組みがないことです。病気で働けない期間の収入は、労災保険の対象になる災害でなければ自分で備えることになります。
年金は国民年金です。厚生年金がないため、将来受け取る年金は基礎年金だけになります。上積みの手段としては、国民年金基金、付加保険料、確定拠出年金、小規模企業共済があります。いずれも掛金が所得控除の対象になるため、税の軽減と老後の備えを同時に進められます。建設業には建設業退職金共済という仕組みもあり、一人親方でも任意で加入できる枠が用意されています。
税は確定申告です。青色申告の承認を受けると、複式簿記で記録して電子申告か電子帳簿保存の条件を満たせば、青色申告特別控除は65万円になります。条件を満たさない場合は55万円です。工具や車両は金額によって減価償却の対象になり、現場までのガソリン代や高速代、作業着、安全帯は経費として扱えます。記録の付け方は最初に決めてしまうほうが楽です。
消費税は、売上が一定額を超えると課税事業者になります。インボイスの登録をするかどうかは、元請が課税事業者かどうかで交渉の材料が変わります。登録しない選択も制度上は成り立ちますが、取引条件の話になるため、元請と早めに擦り合わせてください。
けがをしたときに何がどれだけ出るのか
特別加入していると、業務または通勤による災害について保険給付が行われ、これと併せて特別支給金が支給されます。主なものを、給付基礎日額10,000円の場合の例と合わせて並べます。
| 給付の種類 | どんなときに | 受け取れるもの |
|---|---|---|
| 療養補償給付 | 病院で治療する場合 | 労災病院または労災指定病院で必要な治療が無料。指定外の病院なら治療に要した費用が支給される |
| 休業補償給付 | 療養のため働けない日が4日以上になった場合 | 休業4日目以降、1日につき給付基礎日額の60%。これに休業特別支給金20%が加わる |
| 障害補償給付 | 傷病が治った後に障害が残った場合 | 第1級なら給付基礎日額の313日分の年金、第8級から第14級なら503日分から56日分の一時金。障害特別支給金は第1級342万円から第14級8万円 |
| 傷病補償年金 | 療養開始後1年6か月を経過しても治らず、傷病等級に該当する場合 | 第1級は給付基礎日額の313日分、第2級は277日分、第3級は245日分 |
| 遺族補償給付 | 死亡した場合 | 遺族の人数に応じた年金。遺族特別支給金は人数にかかわらず定額 |
休業の計算を具体的に見ます。給付基礎日額10,000円の人が20日間休んだ場合、休業補償給付は10,000円×60%×(20日から3日を引いた17日)で102,000円、休業特別支給金は10,000円×20%×17日で34,000円です。合計136,000円になります。
ここで2つ気づいてほしい点があります。1つ目は、最初の3日間は対象にならないことです。これは待期と呼ばれる期間で、特別加入でも同じ扱いです。2つ目は、20日休んで受け取れるのが136,000円だという事実です。日当が15,000円ある人なら、本来なら同じ期間で30万円近くを得ていたことになります。給付基礎日額を実際の日当より低く選んでいると、この差がさらに開きます。保険料を節約した結果が、いちばん困る場面での不足になるという構図です。
療養補償給付については、給付基礎日額とは関係なく必要な治療が無料で受けられます。つまり、治療費は日額の選び方に左右されません。日額が効くのは休業と障害と遺族の給付です。
給付が制限される場合と、抜けるときの手続き
特別加入しているだけで、どんな場合でも給付されるわけではありません。しおりには、災害が特別加入者の故意または重大な過失によって発生した場合や、保険料の滞納期間中に生じた場合には、支給制限が行われることがあると書かれています。全部が止まる場合と一部が減る場合があります。
現場で現実的に怖いのは滞納です。特別加入の保険料は団体を通して納めるため、自分の払い忘れだけでなく、団体費の未納で構成員から外された結果として加入が切れているという事態も起こります。年に1回は加入の状態を団体に確認してください。
抜けるときの扱いも押さえておきます。特別加入者としての地位が消滅するのは3つの場合です。特別加入者としての要件を満たさなくなったとき、その日に消滅します。特別加入団体の構成員でなくなったとき、その日に消滅します。団体が解散したときは、解散の日の翌日に消滅します。団体全体が脱退する場合は、構成員全員を包括して脱退の申請を行い、監督署長を経由して労働局長の承認を受けます。承認される日は、脱退申請の日から30日以内で申請者が希望する日です。
特定の人だけが抜ける場合は、団体が変更届を出す形になります。ここを自分で判断して連絡をやめると、いつ切れたのかが曖昧なまま時間が過ぎます。廃業する場合も、別の団体に移る場合も、抜ける日を書面で残してください。
現場を離れる時期を自分で決められるのが一人親方の強みですが、保険の切れ目を自分で管理する責任も同時に付いてきます。加入した日、保険料を納めた日、給付基礎日額を変えた日の3つを1枚の紙に書いておくだけで、いざというときの確認が速くなります。
分からないことを聞ける窓口を先に押さえる
制度の話は、調べるより聞いたほうが速い場面があります。一人親方が使える窓口を整理します。
特別加入の様式の書き方、支払う保険料の計算、給付の内容、制度全体の考え方については、厚生労働省が労災保険相談ダイヤルを用意しています。番号は0570-006031です。加入する前の段階で、自分の仕事が対象になるかを確かめるのにも使えます。
近くの特別加入団体を探したいときは、都道府県労働局または労働基準監督署に問い合わせます。特別加入団体の一覧は厚生労働省のページでも公開されていて、地域と業種から候補を絞れます。団体によって団体費と支援の手厚さが違うので、2つか3つを比べてから決めるほうが納得できます。
自分の働き方が請負なのか雇用なのかに迷う場合は、労働基準監督署に労働者性について相談できる窓口が設けられています。契約書の題名ではなく実態で判断されるため、日々の指示の出方、時間の決め方、工具の用意の状況を持って相談してください。
加入時健康診断を受ける診断実施機関も、都道府県労働局または労働基準監督署に聞けば教えてもらえます。機関の一覧は厚生労働省のページから資料として確認できます。
最後に、聞くときのコツを1つ挙げます。自分の仕事の内容を、工程の名前ではなく作業の中身で説明してください。「内装をやっています」ではなく「ボードを張って、パテを打って、クロスを貼っています」と伝えると、どの事業に当たるかが相手の側で判断しやすくなります。制度の分類は作業の中身で決まっているので、この言い換えが話を速くします。
単価の決め方と、続けられる形を作るために
一人親方の単価は、日当の数字だけで判断すると必ず足りなくなります。雇われていたときには会社が負担していたものが、そのまま自分に移っているためです。
計算に入れるべきものを挙げます。国民健康保険料と国民年金保険料。労災保険の特別加入の保険料と団体費。工具と消耗品の買い替え。車の維持費と燃料代。作業着と安全帯の更新。雨で現場が止まる日と、体調を崩す日の収入がない分。確定申告のための記録に使う時間。これらを年間で合計し、働ける日数で割った額を、日当に上乗せする必要があります。
編集部が在宅と業務委託の市場を20年にわたって見てきた立場から言えば、単価が上がっている人は、腕の差だけで上がっているわけではありません。金額の根拠を自分の言葉で説明できる人が上がっています。この作業に何時間かかり、どの工具を使い、誰が段取りをしているか。これを説明できると、値切りの話が段取りの話に変わります。
中間の手数料が乗らない直接の取引では、同じ予算で頼む側はより多く頼めて、受ける側の手取りは厚くなります。運営者として見てきた限り、長く続いている人は単発の現場を数で追うのではなく、任せると段取りが楽だと思われる関係を1社ずつ積み上げています。指示を細かく受けなくても現場が回る状態を作れれば、請負としての形も整い、労働者性を疑われる場面も減ります。
職種ごとの相場を確かめる習慣も持っておいてください。建設の技能そのものとは離れますが、公的統計に基づく水準の見方は共通です。著述家,記者,編集者の年収・単価相場のような職種別の頁では、平均だけでなく幅が示されているため、自分の位置を確かめる練習になります。
現場の仕事と並行して収入の柱を増やしたい人もいます。図面や積算の周辺には、パソコンで進められる業務委託の仕事があります。相談に近い形の業務は時間の拘束が生じにくく、成果で評価されやすい領域です。AIコンサル・業務活用支援のお仕事には進め方と前提が整理されていて、周辺の分野はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で確かめられます。体を使う仕事に頼りきりにしない形を、早いうちから考えておく価値はあります。
よくある質問
Q. 建設業の一人親方は労災保険に入れますか?
入れます。労災保険には特別加入という制度があり、建設業の一人親方はその対象に含まれています。ただし自動では適用されないため、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体を通して申し込む必要があります。保険料は自己負担です。加入手続きを済ませる前に起きた災害は給付の対象にならないので、仕事を受け始める前に手続きしてください。
Q. 特別加入の保険料は年間でいくらになりますか?
給付基礎日額に365を掛けた額に、事業ごとの保険料率を掛けて計算します。建設の事業の率は1,000分の17です。給付基礎日額10,000円なら年間62,050円、3,500円なら21,709円、25,000円なら155,125円になります。日額を低く選ぶと保険料は下がりますが、休業したときに受け取る額も同じだけ下がります。
Q. 一人親方でも建設業許可は必要ですか?
工事1件の請負代金が500万円未満なら許可は要りません。建築一式工事は1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅を建てる工事までが許可なしの範囲です。ただし2つ以上の契約に分けたときは合計額で判断され、注文者が材料を提供する場合はその市場価格を請負代金に加えて判断します。
Q. 人を雇うと一人親方ではなくなりますか?
原則として、労働者を使用しないことを常態とする人が一人親方等です。ただし人を使う日の合計が1年間に100日に満たなければ、一人親方等として特別加入を続けられます。100日を超える見込みになったら、中小事業主等としての特別加入に切り替える手続きが必要になるため、加入している団体に早めに相談してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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