一人で働く人の労災はどうなるか|一人親方の特別加入と手続き


この記事のポイント
- ✓一人で働く人の労災について
- ✓雇われている人と一人親方・フリーランスの違い
- ✓労災保険の特別加入の対象と手続き
一人で働いていて仕事中にけがをしたら、労災保険は使えるのか。一人親方として現場に出ている人、個人で業務委託を受けているフリーランス、従業員のいない個人事業主にとって、これは切実な疑問です。会社員なら、仕事中のけがは勤め先の労災保険で治療費が出て、休んだ間の補償も受けられます。ところが、一人で働く人は、何もしなければこの仕組みの外にいます。
結論から言うと、一人で働く人でも、労災保険の「特別加入」という仕組みを使えば、仕事中や通勤中のけがに備えられる場合があります。一人親方や一定の自営業者に加えて、令和6年11月1日からは、企業から業務委託を受けるフリーランスも業種を問わず加入できるようになりました。ただし、加入できる人、補償される範囲、保険料の決まり方には細かな条件があります。
この記事では、厚生労働省の「特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)」などをもとに、一人で働く人の労災の考え方と、特別加入の手続き、保険料、受けられる給付、加入しないときの備えを順に整理します。
「一人労災」とは。一人で働く人と労災保険の関係
労災保険(労働者災害補償保険)とは、仕事中や通勤中のけがや病気、死亡に対して、治療費や休業中の補償などを支給する国の保険です。もともとは、会社などに雇われて働く人を守るための制度で、保険料は雇い主が負担します。
「一人労災」という言葉は、正式な制度の名前ではありません。一人で働く人がどうやって労災保険に入るか、という意味で使われることが多く、実際には次の2つの場面を指しています。
| 働き方 | 労災保険の扱い |
|---|---|
| 会社などに雇われて働いている人 | 正社員、パート、アルバイトを問わず、原則として勤め先の労災保険の対象 |
| 一人親方、個人事業主、フリーランス | 雇われていないので通常の労災保険の対象外。条件を満たせば特別加入できる |
1つ目は、従業員が1人だけの会社やお店で雇われて働いている場合です。この場合は、雇われている以上、原則として勤め先の労災保険の対象になります。職場の人数が少ないことは、労災保険の対象外になる理由になりません。
2つ目は、自分自身が誰にも雇われずに働いている場合です。一人親方、個人事業主、フリーランスがこれに当たります。この記事で主に扱うのは、こちらの場合です。
一人親方や自営業者が通常の労災保険に入れない理由
一人親方や個人事業主は、誰かに雇われているわけではないので、労働基準法でいう「労働者」に当たりません。労災保険は労働者を守るための保険なので、一人親方は原則として対象外です。たとえ建設現場で元請の指示のもとで作業していても、請負の形で仕事をしている一人親方は、元請の労災保険の対象になりません。
ただし、契約の名前が「請負」や「業務委託」であっても、実際の働き方が雇われている人と変わらない場合は、労働者と判断されることがあります。たとえば、仕事を断る自由がない、作業の時間や場所を細かく指定される、報酬が作業時間で決まっている、といった事情が重なると、労働者に当たる可能性が出てきます。この判断は個別の事情で変わるので、迷うときは労働基準監督署に相談します。
一人親方のように、労働者ではないけれど、労働者と同じように危険な仕事をしている人を守るために用意されているのが、特別加入の制度です。厚生労働省のしおりは、一人親方等の特別加入について次のように説明しています。
一人親方等の特別加入については、一人親方等の団体(特別加入団体)を事業主、一人親方等を労働者とみなして労災保険の適用を行います。 出典: 厚生労働省 特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)
つまり、一人親方が自分で直接国に申し込むのではなく、都道府県労働局長の承認を受けた「特別加入団体」を通じて加入する仕組みです。団体が事業主の役割を、一人親方が労働者の役割を担うと見なして、労災保険が適用されます。
特別加入できる人。対象となる12の事業
厚生労働省のしおりでは、労働者を使用しないで次の事業を行うことを常態とする一人親方その他の自営業者と、その事業に従事する人が特別加入できるとしています。労働者を使う場合でも、使う日の合計が1年間に100日に満たないときは、一人親方等として加入できます。
| 番号 | 対象となる事業の例 |
|---|---|
| 1 | 個人タクシー、個人の貨物運送、原動機付自転車や自転車を使った貨物運送 |
| 2 | 土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊、解体またはその準備の事業(大工、左官、とび職人など) |
| 3 | 漁船による水産動植物の採捕 |
| 4 | 林業 |
| 5 | 医薬品の配置販売 |
| 6 | 再生利用の目的となる廃棄物などの収集、運搬、選別、解体など |
| 7 | 船員が行う事業 |
| 8 | 柔道整復師が行う事業 |
| 9 | 創業支援等措置に基づいて高年齢者が行う事業 |
| 10 | あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師が行う事業 |
| 11 | 歯科技工士が行う事業 |
| 12 | 特定フリーランス事業 |
一人親方という言葉は建設業で使われることが多いですが、特別加入の対象は建設業に限られません。運送、林業、漁業、医療に近い資格の仕事など、幅広い事業が含まれています。
このほかに、特定の作業に従事する人を対象とした「特定作業従事者」の特別加入もあり、介護作業や家事支援、芸能関係、アニメーション制作、情報処理システムの設計などの作業が含まれます。
フリーランスも加入できるようになった。特定フリーランス事業
令和6年11月1日からは、企業などから業務委託を受けているフリーランスが、業種や職種を問わず特別加入できるようになりました。これが「特定フリーランス事業」です。厚生労働省は、想定される職種として、営業、講師やインストラクター、デザインやコンテンツ制作、調査や研究、コンサルティング、翻訳や通訳、データや文書の入力などを挙げています。
ここで注意したいのは、対象にならない人がいることです。厚生労働省のフリーランスの特別加入のページでは、企業などから業務委託を受けていない人、つまり消費者だけから仕事を受けている人は、特定フリーランス事業の対象にならないとしています。ただし、企業から業務委託を受ける意向や見込みがある場合は加入できます。
また、企業から受けている仕事が、建設や運送など特定フリーランス事業以外の特別加入の事業に当たる場合は、そちらの区分で加入する必要があります。たとえば、建設業の一人親方として働くフリーランスは、特定フリーランス事業ではなく建設の事業の区分で加入します。区分を間違えて加入すると、けがをしたときに給付を受けられないことがあるので、自分の仕事がどの区分に当たるかを、加入前に特別加入団体に確かめておきます。
特別加入の手続き。団体を通じて申し込む
特別加入の手続きは、すでに承認を受けている特別加入団体に申し込むのが一般的です。手続きの流れは次のとおりです。
- 自分の事業に合った特別加入団体を探す(都道府県労働局や労働基準監督署で教えてもらえる)
- 団体に加入を申し込み、業務の内容、業務歴、希望する給付基礎日額を伝える
- 団体が、労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に変更届を出す
- 労働局長の承認を受けて、特別加入者になる
申し込みの際には、原則として顔写真付きの身分証明書による本人確認が行われます。特定フリーランス事業の団体では、事業者との取引の実績や見込みの確認も行われます。
加入時に健康診断が必要になる場合もあります。しおりでは、粉じん作業を3年以上、振動工具を使う業務を1年以上、鉛業務や有機溶剤業務を6か月以上行ったことがある人は、加入の申請の際に指定された健康診断を受ける必要があるとしています。
大切なのは、加入のタイミングです。新しく団体をつくって申請する場合の承認は、申請の日の翌日から30日以内で、申請者が希望する日となります。そして、すでにある団体を通じて加入する場合も、しおりは、業務災害や通勤災害が起きた後に変更届を出しても、すでに起きた災害の給付には反映されないと注意しています。けがをしてから慌てて加入しても間に合わないので、仕事を始める前に加入を済ませておくことが何より大切です。
保険料の計算。給付基礎日額で決まる
特別加入の保険料は、「給付基礎日額」をもとに計算します。給付基礎日額とは、保険料と、休業したときなどの給付の額を計算するもとになる1日あたりの金額のことです。会社員の労災では実際の給料から計算されますが、特別加入では、3,500円から25,000円の範囲で、自分で希望する額を選びます。
年間の保険料は、次の式で計算します。
給付基礎日額 × 365日 × 保険料率 = 年間の保険料
保険料率は事業の種類ごとに決まっていて、令和6年11月1日施行の料率表では、建設の事業が1,000分の17、個人タクシーや個人の貨物運送が1,000分の11、林業が1,000分の52、特定フリーランス事業が1,000分の3などとなっています。
| 給付基礎日額 | 建設の事業(17/1000) | 特定フリーランス事業(3/1000) |
|---|---|---|
| 3,500円 | 21,709円 | 3,832円 |
| 5,000円 | 31,025円 | 5,475円 |
| 10,000円 | 62,050円 | 10,950円 |
| 15,000円 | 93,075円 | 16,425円 |
| 20,000円 | 124,100円 | 21,900円 |
建設の事業の金額は、しおりの表に載っている額です。特定フリーランス事業の金額は、同じ式で計算した目安です。実際には、団体全体の保険料算定基礎額の端数の扱いなどで多少変わることがあります。年度の途中で加入した場合は、加入した月数に応じて保険料が計算されます。
ここで考えたいのが、給付基礎日額をいくらにするかです。給付基礎日額を低くすると保険料は安くなりますが、休業したときに受け取れる給付も少なくなります。たとえば給付基礎日額を3,500円にすると、休業の給付は1日あたりその60%です。日々の生活費をまかなえるかを考えて選ぶことが大切です。給付基礎日額は、毎年3月2日から3月31日までに申請すれば翌年度から変更でき、労働保険の年度更新の期間中にも当年度の額を変更できますが、いずれも災害が起きる前に申請していることが前提です。
保険料のほかに、特別加入団体に支払う入会金や会費がかかります。金額は団体によって違うので、申し込む前に確かめます。
給付基礎日額の選び方の目安
給付基礎日額は、保険料と給付の両方を左右するので、選び方に迷う人が多いところです。考え方の目安を示します。
休業したときに受け取れる額は、休業4日目以降、休業の給付(給付基礎日額の60%)と休業特別支給金(20%)を合わせて、1日あたり給付基礎日額の80%です。給付基礎日額ごとに、休業1日あたりの受取額と、建設の事業の年間保険料を並べると次のようになります。
| 給付基礎日額 | 休業1日あたりの受取額(80%) | 建設の事業の年間保険料 |
|---|---|---|
| 5,000円 | 4,000円 | 31,025円 |
| 8,000円 | 6,400円 | 49,640円 |
| 10,000円 | 8,000円 | 62,050円 |
| 12,000円 | 9,600円 | 74,460円 |
| 16,000円 | 12,800円 | 99,280円 |
選ぶときの手がかりは、働けなくなったときに毎月どれだけの生活費が必要かです。家賃や住宅ローン、食費、国民年金の保険料(令和8年度は1か月あたり17,920円)、国民健康保険料、車両のローンなど、仕事を休んでも出ていくお金を書き出し、1日あたりに割り戻してみます。その額に近い受取額になる給付基礎日額を選ぶと、休業中の生活を支えやすくなります。
給付基礎日額は、障害や遺族の給付の額にも影響します。家族を養っている人は、休業の補償だけでなく、万一のときに家族に残る給付も考えて選ぶとよいでしょう。一方で、保険料は毎年かかるので、収入とのつり合いも大切です。最初は無理のない額で加入し、収入が安定してきたら、毎年3月の変更の申請で見直す、という方法もあります。
特別加入団体の選び方
特別加入は団体を通じて行うので、どの団体を選ぶかも大切です。団体によって、入会金や会費、受けられる支援の内容が違います。選ぶときに比べたい点は次のとおりです。
| 比べる点 | 確かめる内容 |
|---|---|
| 費用 | 入会金、毎月や毎年の会費、保険料の支払い方法 |
| 対象の区域 | 自分の住む都道府県で事務処理ができる団体か |
| 加入までの日数 | 申し込みから加入の日まで何日かかるか。加入証明書をいつ発行してもらえるか |
| 支援の内容 | けがをしたときの請求の手続きを手伝ってもらえるか |
| 脱退のとき | 年度の途中で脱退したとき、残りの期間の保険料が返金されるか |
一人親方等の特別加入団体には、事務処理ができる区域の決まりがあります。しおりでは、団体の主たる事務所がある都道府県と、それに隣接するなどの決められた都道府県が、事務処理のできる区域として示されています。遠い地域の団体に申し込んでも、区域外だと加入できないことがあるので注意が必要です。特定フリーランス事業の団体は、全国を単位として運営することが要件になっています。
団体の一覧は、厚生労働省の特別加入のページで公開されています。複数の団体の条件を比べ、自分の仕事の区分と住んでいる地域に合った団体を選びます。
補償される範囲。どんなけがが対象になるか
特別加入者が労災保険の給付を受けられるのは、加入した事業の範囲で、決められた業務を行っていたときに起きた災害に限られます。会社員の労災よりも、補償の範囲が具体的に決められているのが特徴です。
建設業の一人親方の場合、しおりは補償の対象となる業務災害として、次の場合を挙げています。
- 請負契約に直接必要な行為を行う場合
- 請負工事現場における作業と、これに直接附帯する行為を行う場合
- 請負契約に基づくことが明らかな作業を自家内作業場で行う場合
- 請負工事に関する機械や製品を運搬する作業と、これに直接附帯する行為を行う場合
- 台風や火災などの突発事故で予定外に緊急の出勤を行う場合
特定フリーランス事業の場合は、契約に基づいて報酬が支払われる作業のうち特定フリーランス事業に当たる作業と、これに直接附帯する行為、その作業に必要な移動などが対象です。しおりは、事故の後に、フリーランス法に基づく契約の書面の提出を求める場合があるとしています。契約の内容を書面やメールで残しておくことは、労災の手続きのうえでも大切です。
通勤中の災害は、一般の労働者と同じように扱われます。ただし、個人タクシーや個人の貨物運送を行う人と、漁船による自営の漁業者は、通勤災害の保護の対象になっていません。
受けられる給付。休業4日目から補償がある
特別加入者が業務や通勤で被災した場合、労災保険の給付と、これに上乗せされる特別支給金が支給されます。主な給付は次のとおりです。
| 給付 | 受けられる場合 | 内容 |
|---|---|---|
| 療養(補償)等給付 | 仕事や通勤のけがや病気の治療 | 労災病院や労災指定病院などで治療が無料で受けられる |
| 休業(補償)等給付 | 療養のため働けない日が4日以上になったとき | 休業4日目から1日につき給付基礎日額の60%、特別支給金として20% |
| 障害(補償)等給付 | 治った後に障害が残ったとき | 障害の等級に応じた年金または一時金 |
| 遺族(補償)等給付 | 亡くなったとき | 遺族の人数に応じた年金または一時金 |
| 葬祭料等 | 亡くなった人の葬祭を行うとき | 31万5千円に給付基礎日額の30日分を加えた額か、60日分のいずれか高いほう |
休業の補償は、一人で働く人にとって特に大切です。しおりの例では、給付基礎日額1万円の人が20日間休業した場合、休業4日目以降の17日分について、休業の給付が1万円×60%×17日で10万2千円、休業特別支給金が1万円×20%×17日で3万4千円となっています。合わせると、休業した17日分について給付基礎日額の80%に当たる額を受け取れる計算です。
ただし、特別加入者の休業の給付には、会社員にはない条件があります。補償の対象となる業務が「全部労働不能」であることが必要で、入院中や自宅で療養中、通院中で、その業務ができない状態であることが求められます。けがをしても、軽い作業なら続けられる状態だと、休業の給付を受けられないことがあります。
給付が制限される場合と、加入資格がなくなる場合
特別加入していても、給付が制限される場合があります。しおりは、災害が特別加入者の故意や重大な過失によって起きた場合や、保険料の滞納期間中に起きた場合には、給付の全部または一部が制限されることがあるとしています。保険料の納付を忘れないことは、加入と同じくらい大切です。
また、特別加入者としての地位は、次の場合になくなります。
| なくなる場合 | なくなる日 |
|---|---|
| 一人親方等としての要件を満たさなくなったとき | その日 |
| 特別加入団体の構成員でなくなったとき | その日 |
| 特別加入団体が解散したとき | 解散の日の翌日 |
たとえば、一人親方が人を雇うようになり、雇う日が1年間に100日以上になると、一人親方等としての要件を満たさなくなります。その場合は、中小事業主としての特別加入など、別の形での加入を考える必要があります。働き方が変わったときは、団体に早めに相談します。
特別加入しないときのけがへの備え
特別加入は任意の制度なので、加入しない人もいます。その場合、仕事中のけがの治療はどうなるのでしょうか。
国民健康保険に入っている個人事業主は、労災保険の給付を受けられない場合、仕事中のけがでも国民健康保険を使って治療を受けられます。国民健康保険法は、労災保険などの他の法律で医療の給付を受けられる場合には給付を行わないと定めていて、逆に言えば、労災保険の対象でない場合は国民健康保険で治療を受けることになります。一方、会社員などが入る健康保険は、仕事中のけが(業務災害)を給付の対象から外しているので、会社員が副業の一人親方として働いている場合などは扱いが複雑になります。迷う場合は、加入している健康保険の窓口に確かめます。
国民健康保険で治療を受けられても、休業中の収入の補償は別の問題です。国民健康保険法では、傷病手当金は市区町村などが条例で定めた場合に支給「できる」給付とされていて、会社員の健康保険のように必ず用意されているものではありません。自分の住む市区町村で個人事業主が対象になるかは窓口で確かめる必要があり、対象にならない場合は、働けない間の収入を自分で備えることになります。特別加入の休業の補償は、この穴を埋める役割を持っています。
民間の保険で備える方法もあります。けがで入院や通院をしたときに給付が出る傷害保険や、働けない間の収入を補う保険です。特別加入と民間の保険は、どちらか一方を選ぶものではなく、補償の範囲と保険料を比べて組み合わせることもできます。
会社員が副業で一人で働く場合
会社に勤めながら、副業で一人親方やフリーランスとして働く人もいます。この場合、本業の仕事中のけがは勤め先の労災保険の対象ですが、副業の仕事中のけがは、副業が雇われての仕事でない限り、勤め先の労災保険の対象になりません。副業の仕事中のけがに備えるには、副業の区分で特別加入する必要があります。
特別加入していれば、副業の仕事中のけがも、その区分の補償の範囲で給付の対象になります。また、しおりでは、事業主が同じでない2つ以上の事業の業務が原因となった傷病について、要件を満たせば、労働者と同じように「複数業務要因災害」として給付が行われるとしています。本業と副業の両方の負荷が重なって体を壊した、といった場合の扱いです。詳しい要件は厚生労働省の解説で確かめます。
副業の段階では、仕事の量が少ないからと特別加入を後回しにしがちです。ただ、けがの起こりやすさは仕事の量に比例するわけではなく、慣れない作業ほど事故が起きやすい面もあります。副業で危険を伴う作業をするなら、始める前に加入を検討しておくと安心です。
一人で働く人が日頃からできる事故の防止
労災保険は、けがをした後の生活を支える仕組みですが、そもそもけがをしないことが一番です。一人で働く人は、現場に安全を見てくれる人がいないことも多いので、自分で事故を防ぐ工夫が欠かせません。
特別加入団体は、業務災害の防止のために団体が講ずべき措置と、加入者が守るべき事項を定めることになっていて、加入時にその説明を受けます。内容を読み流さず、自分の作業に当てはめて確認しておくことが大切です。
日頃の工夫としては、高所での作業では安全帯を必ず使う、脚立は安定した場所に立てて天板に乗らない、薬剤や工具は取扱説明書の使い方を守る、疲れているときは無理に作業を続けない、といった基本の積み重ねが効きます。一人で作業する日は、作業の場所と終わる予定の時刻を家族や取引先に伝えておくと、万一のときに気づいてもらいやすくなります。
建設現場で加入を求められる理由
建設業の一人親方の場合、元請から特別加入を求められることがよくあります。現場に入る前に、加入の証明書の提示を求める元請も少なくありません。
元請がこれを求めるのは、一人親方が現場でけがをしたときに、補償の手段がないと、治療費や休業中の生活をめぐってトラブルになりやすいからです。一人親方は元請の労災保険の対象外なので、本人が特別加入していなければ、労災保険からの給付は受けられません。
元請の現場に入る一人親方にとって、特別加入は仕事を受けるための条件になっていると考えておくのが現実的です。加入の証明書は、団体に申し込むと発行してもらえます。
起こりがちな場面。加入の前日にけがをした場合
よくある場面として、次のような例を考えてみます。内装の一人親方が、独立して最初の現場に入る前日に、自宅の作業場で材料を加工していて手を切るけがをしたとします。特別加入の申し込みは済ませていたものの、加入の日は翌日からでした。この場合、けがは加入前の出来事なので、労災保険の給付は受けられず、国民健康保険で治療を受けることになり、休業中の収入の補償もありません。
この例から分かるのは、加入の日をいつにするかの大切さです。仕事を始める日に間に合うよう、余裕を持って申し込んでおく必要があります。また、自宅の作業場での作業でも、請負契約に基づくことが明らかな作業であれば補償の対象になりうるので、契約の内容を書面に残しておくことも大切です。給付が受けられるかどうかは個別の事情で判断されるので、けがをしたときは、まず団体と労働基準監督署に相談します。
相談先と、労災保険の請求の流れ
仕事中や通勤中にけがをしたときは、まず加入している特別加入団体に連絡します。労災保険の給付を受けるには、請求書を労働基準監督署に出す必要があり、団体が手続きを支援してくれます。
けがをしたときに、すぐに記録しておきたいこともあります。けがをした日時と場所、そのときにしていた作業の内容、どの契約に基づく仕事だったか、近くにいた人の名前と連絡先です。特別加入者の給付は、補償の範囲の業務を行っていたかどうかで判断されるので、作業の内容と契約の関係を説明できる記録が、請求の手続きで役に立ちます。現場の写真や、取引先とのメッセージの記録も残しておきます。
労災指定病院で治療を受ける場合は、窓口で労災であることを伝えると、治療費を払わずに受診できます。労災指定病院以外で治療を受けた場合は、いったん治療費を払い、後から請求して支給を受けます。
制度について一般的な質問がある場合は、厚生労働省の労災保険相談ダイヤル(0570-006031)で受け付けています。特別加入団体を探すときや、自分の仕事が対象になるかを確かめたいときは、都道府県労働局や労働基準監督署に問い合わせます。特別加入の様式や団体の一覧は、厚生労働省の労災保険への特別加入のページにまとまっています。
契約と報酬を守る知識と合わせて備える
一人で働く人にとって、けがへの備えと同じくらい大切なのが、契約と報酬を守る知識です。けがで仕事を休んだときに、受けていた仕事の報酬が支払われない、契約を一方的に打ち切られる、といったトラブルが重なると、生活への影響はさらに大きくなります。
企業から業務委託を受けるフリーランスには、フリーランス法により、取引条件の明示や、給付を受け取った日から原則60日以内の報酬の支払いなどが発注者に義務づけられています。契約書や発注書に何を書いておくべきかは、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストで整理しています。報酬の未払いが起きたときの回収の手段は、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で解説しています。
在宅ワークや業務委託の市場を長く見てきた立場から言えば、長く働き続けている人ほど、仕事の量を伸ばす前に「働けなくなったときの備え」と「契約の書面」を整えています。中間に入る業者を通さずに直接取引をすると、同じ発注額でも受け手の手取りは厚くなりますが、その代わりに自分で備える範囲も広がります。直接取引の良さを生かすためにも、特別加入と契約の書面は最初に整えておきたいところです。
契約書や見積書、報告書を自分で整える力は、一人で働く人の信用を支えます。文書の書き方を基本から学びたい人は、ビジネス文書検定のような資格も参考になります。また、企業から業務委託を受けて働く仕事の内容は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事などで紹介しています。
一人で働く人の労災は、何もしなければ補償のない状態から始まります。特別加入の対象になるかを確かめ、仕事を始める前に加入を済ませ、給付基礎日額を生活に合わせて選ぶ。この3つを押さえておけば、けがをしたときにも生活を立て直す手段を持てます。
よくある質問
Q. 一人親方は元請の労災保険で補償されますか?
一人親方は雇われている労働者ではないため、原則として元請の労災保険の対象になりません。仕事中のけがに備えるには、特別加入団体を通じて労災保険に特別加入する必要があります。ただし、契約が請負の形でも、働き方の実態が雇われている人と変わらない場合は、労働者と判断されることがあります。迷うときは労働基準監督署に相談してください。
Q. 特別加入の保険料はいくらですか?
年間の保険料は、給付基礎日額×365日×保険料率で計算します。給付基礎日額は3,500円から25,000円の範囲で選び、保険料率は建設の事業が1,000分の17、特定フリーランス事業が1,000分の3などです。たとえば建設の事業で給付基礎日額1万円なら年間62,050円です。これとは別に、特別加入団体の入会金や会費がかかります。
Q. フリーランスでも労災保険に入れますか?
令和6年11月1日から、企業などから業務委託を受けているフリーランスは、特定フリーランス事業として業種を問わず特別加入できるようになりました。ただし、消費者だけから仕事を受けている人は対象になりません。企業から委託を受ける見込みがある場合は加入できます。建設や運送など別の区分に当たる仕事は、その区分で加入します。
Q. けがをした後に特別加入しても補償されますか?
補償されません。特別加入は、加入した日以後に起きた災害が対象で、災害が起きた後に加入の手続きをしても、すでに起きた災害の給付には反映されません。給付基礎日額の変更も、災害の前に申請していることが前提です。仕事を始める日に間に合うよう、余裕を持って特別加入団体に申し込んでください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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