わかりやすい引き継ぎマニュアルの作り方|後任が迷わない書く順番

@SOHO編集部
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わかりやすい引き継ぎマニュアルの作り方|後任が迷わない書く順番

この記事のポイント

  • ✓わかりやすい引き継ぎマニュアルの作り方を
  • ✓業務の棚卸しから書く順番
  • ✓アカウントや個人情報の扱いまで順に整理します

わかりやすい引き継ぎマニュアルの作り方を探している人の多くは、異動や退職、育児休業を前にして、限られた日数で自分の仕事を後任に渡さなければならない状況にあります。結論から書くと、後任が迷わないマニュアルは、書く順番で決まります。いきなり手順から書き始めるのではなく、仕事の全体像、1年の流れ、毎日の手順、例外とトラブル、関係者、保管場所の順に書くと、読む人が自分の位置を見失わずに済みます。

この記事では、引き継ぎマニュアルを書く前の準備から、書く順番、1つの手順の書き方、記載すべき項目、アカウントや個人の情報の扱い、引き継ぎの進め方までを順に説明します。最後に、マニュアルを古くしない保管と更新の仕組みとして、手順をカードで管理できるPinatecaのような道具の使い方にも触れます。

引き継ぎマニュアルとは何か、引継書との違い

引き継ぎマニュアルとは、ある人が担当していた仕事を、別の人が同じ品質で続けられるように、仕事の内容と手順、判断の基準をまとめた文書のことです。

よく似た言葉に引継書(引き継ぎ書)があります。引継書は、いま進んでいる案件の状況や、未完了の仕事、取引先との約束など、「その時点の状態」を伝えるための文書です。引き継ぎの日を過ぎれば役目を終えるのが普通です。一方、引き継ぎマニュアルは、その仕事を「これから先も繰り返し行うための方法」を伝える文書で、後任が使い続け、さらに次の人へ渡していくものです。

実際の引き継ぎでは、この2つを両方用意します。引継書で「いまどうなっているか」を伝え、マニュアルで「どうやって続けるか」を伝えます。2つを1つの文書に混ぜると、案件の状況が古くなるたびにマニュアル全体を書き直すことになり、更新が止まりやすくなります。ファイルを分けておき、引継書からマニュアルの該当する手順を参照する形にすると、後から読み返したときにも混乱しません。

この記事で扱うのは、主に引き継ぎマニュアルのほうです。ただし、後の節で説明する「仕事の一覧」は、引継書の土台にもなります。

わかりにくいマニュアルが生まれる3つの理由

わかりやすいマニュアルの作り方を考える前に、なぜわかりにくいマニュアルが生まれるのかを整理しておきます。理由が分かると、どこに気をつければよいかが見えてきます。

1つ目は、書き手の頭の中にある前提が書かれていないことです。毎日その仕事をしている人にとっては当たり前の「どの画面から入るか」「どのフォルダを開くか」「誰に確認するか」が抜け落ち、後任は最初の一歩で止まります。書き手が詳しいほど、この抜けは大きくなります。

2つ目は、例外の対応が書かれていないことです。通常の流れは書かれていても、「締め日が土日に当たったとき」「取引先から訂正の依頼が来たとき」のような例外が書かれていないと、後任はそのたびに前任者に連絡するか、自己判断で進めて失敗します。仕事の難しさの多くは、例外のほうにあります。

3つ目は、作ったあとに更新されないことです。引き継ぎの直前に急いで作ったマニュアルは、使っているうちに画面やルールが変わり、半年もすると実際の仕事と合わなくなります。古いマニュアルは、ないマニュアルより危険です。書かれているとおりに進めた後任が、間違った手順で仕事をしてしまうからです。

この3つの理由に対して、この記事では、前提を書く順番、例外を集める方法、更新の仕組みの3つで対応していきます。

引き継ぎマニュアルが必要になる場面

引き継ぎマニュアルが必要になる場面は、退職や異動だけではありません。

育児休業や介護休業で一定の期間仕事を離れる場合も、その間の仕事を誰かが代わりに担います。国も、休業する人の仕事を周りの人が代わりに担う体制づくりを支援しています。厚生労働省の両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)の支給要領では、助成の条件の1つとして、休業する人や代わりに担う人の業務について、次のいずれかの見直しを検討し、その結果が確認できることを求めています。

(a) 業務の一部の休止・廃止 (b) 手順・工程の見直し等による効率化、業務量の減少 (c) マニュアル等の作成による業務、作業手順の標準化 出典: mhlw.go.jp

ここでいう「標準化」とは、誰がやっても同じ手順と品質で仕事ができる状態にすることです。マニュアルの作成が、業務の見直しの方法の1つとして明記されていることは、引き継ぎマニュアルが一時しのぎの文書ではなく、職場の仕組みづくりの一部と考えられていることを示しています。助成金の詳しい条件や金額は、厚生労働省の両立支援等助成金のページと、都道府県の労働局で確かめてください。

このほか、仕事の一部を業務委託の人や外部の会社に頼むときにも、引き継ぎマニュアルが必要になります。社内の人なら近くの人に聞けますが、社外の人は聞く相手が限られるため、マニュアルの出来が仕事の品質に直結します。

また、急な病気やけがで担当者が仕事を離れることもあります。引き継ぎの準備をする時間がまったくない場合に、ふだんから作ってあるマニュアルがあるかどうかで、職場の混乱の大きさが変わります。引き継ぎマニュアルは、引き継ぎが決まってから作るものではなく、ふだんから育てておくものと考えると、急な事態にも備えられます。

書く前の準備は、仕事の棚卸しから

マニュアルを書き始める前に、自分が担当している仕事を一覧にする「棚卸し」をします。棚卸しを飛ばしていきなり書き始めると、思いついた順に書くことになり、大事な仕事が抜けます。

表計算ソフトで、次の列を持つ表を作ります。

・仕事の名前 「請求書の発行」「問い合わせメールへの返信」のように、動詞で終わる具体的な名前にする
・頻度 毎日、毎週、毎月、四半期ごと、毎年、不定期
・期限 毎月何日まで、など
・関係者 社内の誰、社外のどの会社の誰と関わるか
・使う道具 使うシステム、ファイル、フォルダ
・重要度 遅れたときや間違えたときの影響の大きさ

一覧を作るときのコツは、2週間ほど、自分がした仕事をその日のうちに書き留めることです。頭の中だけで思い出そうとすると、毎日の小さな仕事や、年に1回しかない仕事が抜けます。年に1回の仕事は、カレンダーや過去のメールを1年分さかのぼって探します。

一覧ができたら、重要度と頻度で並べ替えます。後任が最初の1か月で必ず行う仕事と、間違えたときの影響が大きい仕事から先にマニュアルを書きます。限られた日数で引き継ぐ場合、すべての仕事を同じ丁寧さで書くことはできません。優先順位をつけることが、わかりやすいマニュアルの第一歩です。

棚卸しと同時に、引き継ぎの日程表も作っておきます。最終出社日や休業の開始日から逆算し、「マニュアルを書く期間」「後任と並走する期間」「後任が1人で行い、前任者が質問に答える期間」の3つを区切ります。たとえば引き継ぎに使える日が6週間なら、最初の2週間で優先度の高い仕事の手順書を書き、次の3週間を並走に、最後の1週間を後任が1人で行う期間に当てる、という組み方です。日程表を上司と後任に共有しておくと、引き継ぎの時間を確保してもらいやすくなります。

この一覧は、そのまま引継書の目次としても使えます。仕事ごとに、いまの状況や未完了の作業を書き足せば、引継書の骨組みになります。

後任が迷わない書く順番

棚卸しが終わったら、マニュアルを書いていきます。後任が迷わないためには、読む順番を意識して書く順番を決めることが大切です。おすすめの順番は次の6つです。

1番目は仕事の全体像

最初に、その仕事が何のためにあり、どこから仕事が来て、どこへ渡していくのかを書きます。たとえば「営業部から届く受注の連絡をもとに請求書を作り、取引先に送り、入金を確かめて経理に報告する」のように、仕事の流れを数行で示します。全体像が分かっていると、後任は手順の1つ1つが何のためにあるのかを理解でき、例外に出会ったときにも判断の手がかりになります。

2番目は1年の流れ

次に、1年の中で、どの月にどの仕事があるかを書きます。月末の締め、四半期ごとの報告、年に1回の更新の手続きなど、時期が決まっている仕事をカレンダーの形で並べます。後任は、これを見て「来月は何が来るのか」を先に知ることができます。

3番目は毎日・毎週の手順

ここで初めて、日々の仕事の手順を書きます。頻度の高い仕事から順に、1つの仕事につき1つの手順書を作ります。手順の書き方は次の節で詳しく説明します。

4番目は例外とトラブルの対応

通常の手順の後に、例外とトラブルの対応をまとめます。過去に起きたトラブルと、そのときの対応、相談した相手を書いておきます。

5番目は関係者の一覧

社内外の関係者の名前、役割、連絡の方法、気をつけたい点を一覧にします。「この取引先は電話よりメールを好む」「この部署の確認は前日までに頼む」のような、相手ごとのやり取りの癖は、マニュアルで最も喜ばれる情報の1つです。

6番目は保管場所とアカウント

最後に、ファイルの保管場所、使うシステムの一覧、アカウントの受け渡しの方法を書きます。アカウントの扱いには注意が必要なので、後の節で詳しく説明します。

この順番で書くと、読む人は「全体を知る、時期を知る、手順を知る、困ったときを知る、人を知る、道具を知る」という流れで、無理なく仕事を理解できます。

1つの手順の書き方

マニュアルの中心になるのは、1つ1つの仕事の手順書です。手順書は、次の5つの部分で書くと、誰が読んでも同じように動けます。

1つ目は、目的です。その仕事を何のためにするのかを1文で書きます。「取引先に請求額を正しく伝え、期日どおりに入金してもらうため」のように書くと、手順の途中で迷ったときの判断の基準になります。

2つ目は、始めるきっかけです。「毎月25日になったら」「営業部から受注の連絡が届いたら」のように、どんなときにこの仕事を始めるのかを書きます。

3つ目は、手順そのものです。1行に1つの動作だけを書き、番号を振ります。「請求書を作って送る」ではなく、「1. 販売管理の画面を開く」「2. 左のメニューから請求を選ぶ」「3. 対象の月を選んで出力を押す」のように分けます。画面の名前やボタンの名前は、実際の画面に表示されているとおりに書きます。言葉だけで伝わりにくいところには、画面の写真を添え、押す場所に印を付けます。

4つ目は、終わりの基準です。「取引先に送信し、送信済みのフォルダに控えを保存したら完了」のように、何をもって終わりとするかを書きます。終わりの基準がないと、後任は確認の作業を省いたり、逆に必要以上に確認を重ねたりします。

5つ目は、よくある間違いです。前任者が過去に間違えたこと、後任が間違えやすいことを書いておきます。「税率の欄を前月の設定のまま使わない」のような具体的な注意は、手順の中で最も役に立つ部分です。

手順書は、1つの仕事につきA4用紙1枚から2枚に収めるのが目安です。長くなりすぎる場合は、仕事を2つに分けられないかを考えます。

記載すべき項目の一覧

ここまでの内容を、マニュアルに記載すべき項目として一覧にします。仕事ごとの手順書の先頭に、この項目の表を載せておくと、後任は必要な情報をすぐに見つけられます。

・仕事の名前
・目的
・頻度と期限
・始めるきっかけ
・関係者と連絡の方法
・使う道具(システム、ファイル、フォルダ)
・手順(番号付き、1行1動作)
・終わりの基準
・よくある間違いと注意点
・例外とトラブルの対応
・判断に迷ったときの相談先
・最終更新日と更新した人

最後の「最終更新日と更新した人」は見落とされがちですが、大切な項目です。いつ誰が書いた内容なのかが分かれば、後任は古い情報かどうかを判断でき、分からないことがあったときに誰に聞けばよいかも分かります。

すべての項目を毎回埋める必要はありません。項目が空欄なら「この仕事には例外がない」のか「まだ書いていない」のかが分からないので、該当しない項目には「なし」と書いておくと、読む人が迷いません。

仕事の種類ごとに書き足したい点

ここまでの書き方は、どの仕事にも共通するものです。仕事の種類によっては、さらに書き足しておきたい点があります。よく引き継がれる3つの仕事を例に挙げます。

経理や請求の仕事

お金に関わる仕事では、締め日と支払日、金額の確かめ方、承認の流れを特に丁寧に書きます。どの帳票をどの順番で突き合わせるのか、金額が合わないときに最初に何を確かめるのかを手順にしておくと、後任が一人で原因を探せます。取引先ごとの支払いの条件や、振込の手数料の扱いのような、取引先ごとに違う決まりは一覧にまとめます。税や会計の扱いに迷う取引は、顧問の税理士や経理の責任者に確かめる、と相談先を書いておきます。

問い合わせ対応の仕事

問い合わせの対応では、返事の文面の型と、答えてよい範囲の線引きを書きます。よくある質問への返事の文面は、そのまま使える形で載せておくと、後任の負担が大きく減ります。一方で、値引きや返金、約束の変更のように、担当者の判断だけで答えてはいけないことは、誰の承認が必要かを明記します。過去に揉めた問い合わせの経緯も、個人の情報を伏せたうえで書き残しておくと、同じ失敗を防げます。

SNSやWebサイトの更新の仕事

SNSやWebサイトの更新では、投稿の頻度と時間帯、文章の調子、使ってはいけない表現、画像の作り方の決まりを書きます。ログインの方法は、アカウントの節で説明したとおり、パスワードを書かずに、誰にアカウントの発行を頼むかを書きます。投稿の予約の仕組みを使っている場合は、すでに予約されている投稿の一覧も引継書に載せます。前任者が辞めたあとに、予約した投稿が意図せず公開される、という事故はよく起きます。

どの仕事でも共通するのは、「担当者の判断で決めてよいこと」と「誰かの承認が必要なこと」を分けて書くことです。この線引きが書かれていると、後任は迷いなく動ける範囲が分かり、必要なときだけ相談できます。

わかりやすく書くための6つのコツ

同じ内容でも、書き方1つで読みやすさは大きく変わります。わかりやすく書くためのコツを6つ挙げます。

1つ目は、社内の略語や専門用語を言い換えることです。毎日使っている略語は、後任にとっては暗号です。使う場合は、初めて出てくるところで意味を1文で書きます。

2つ目は、主語を書くことです。「確認する」だけでは、誰が確認するのかが分かりません。「自分で確認する」「課長に確認してもらう」のように、誰がするのかを書きます。

3つ目は、数字で書くことです。「早めに」「なるべく」ではなく、「3営業日前までに」「10時までに」と書きます。

4つ目は、判断の基準を書くことです。「金額が大きいときは上司に相談」ではなく、「10万円を超えるときは上司に相談」のように、線を引く場所を具体的に書きます。

5つ目は、理由を書くことです。手順の理由が分かっていれば、画面が変わったときやルールが少し変わったときにも、後任は自分で正しい方法を考えられます。

6つ目は、書き終えたら、その仕事を知らない人に読んでもらうことです。読みながら実際に手を動かしてもらい、止まったところを書き直します。書き手が自分で読み返しても、前提の抜けには気づけません。

画面の録画や動画を使うときの注意

文章だけでは伝わりにくい手順は、画面を録画した動画で補う方法があります。パソコンの操作のように、どこを押してどの画面に進むかを見せたい手順では、動画のほうが早く伝わります。

ただし、動画だけに頼るのはおすすめしません。動画は、知りたい箇所を探すのに時間がかかり、画面が少し変わっただけで撮り直しが必要になります。文章の手順書を主にし、動画は「この手順の画面の動きはこちら」という補助として使うと、更新の手間が抑えられます。

動画を撮るときは、次の点に気をつけます。

・1本の動画は1つの手順に絞り、長さは数分に収める
・画面に顧客の名前や住所、金額などの情報が写らないように、架空のデータで撮るか、写る部分を隠す
・通知の表示が録画に入らないよう、録画の前に通知を止めておく
・動画の題名に、手順書の名前と撮った日付を入れる

撮った動画は、手順書と同じ場所に保管し、手順書から動画の場所が分かるようにしておきます。手順書を直したときは、動画も合っているかを確かめ、合わなくなった動画は差し替えるか、使わない動画として区別しておきます。

会議で前任者が仕事を説明する様子を録画し、それを書き起こして手順書の下書きにする方法もあります。話し言葉のままでは読みにくいので、書き起こした文章は、この記事で説明した手順書の5つの部分に沿って整え直します。

アカウントと個人の情報の扱い

引き継ぎで最も気をつけたいのが、アカウントやパスワード、個人の情報の扱いです。

まず、パスワードをマニュアルに書かないことです。マニュアルは多くの人が読み、印刷されたり、別の場所に写されたりします。パスワードを書いたマニュアルは、それだけで情報が漏れる原因になります。マニュアルには「どのシステムのアカウントが必要か」と「アカウントの発行や変更を誰に頼むか」だけを書きます。

次に、前任者のアカウントをそのまま後任が使い続けないことです。個人に発行されたアカウントを共有すると、誰が何をしたのかの記録が残らず、問題が起きたときに原因を追えません。後任には後任のアカウントを発行してもらい、前任者のアカウントは引き継ぎが終わったら止めてもらいます。

3つ目に、取引先や顧客の個人の情報を、マニュアルの例として使わないことです。手順を説明するための画面の写真に、実在の顧客の名前や住所が写っていないかを確かめ、写っている場合はぼかすか、架空の例に差し替えます。

4つ目に、会社のパスワードの管理の決まりや、情報の取り扱いの決まりがあれば、それに従うことです。マニュアルに書く内容に迷ったら、情報システムの担当者や上司に確かめます。

引き継ぎの進め方は、並走で確かめる

マニュアルが完成しても、渡すだけでは引き継ぎは終わりません。前任者と後任が一緒に仕事をする「並走」の期間を作り、マニュアルが本当に使えるかを確かめます。

並走の期間は、3つの段階で進めます。

最初の段階では、前任者が仕事をし、後任はマニュアルを見ながらその様子を見ます。マニュアルと実際の動きが違うところがあれば、その場で書き直します。

次の段階では、後任が仕事をし、前任者は横で見守ります。後任が止まったところ、迷ったところは、マニュアルの書き方が足りないところです。前任者は口で教えるだけでなく、マニュアルにも書き足します。

最後の段階では、後任が1人で仕事をし、前任者は質問に答えるだけにします。この段階で出た質問と答えは、マニュアルの「よくある間違い」や「例外の対応」の欄に書き足していきます。

並走の期間は、月に1回しかない仕事を含めて一通り経験できるよう、少なくとも1か月取れるのが理想です。日数が足りない場合は、月次の仕事だけでも一度は一緒に行えるよう、日程を組みます。

並走の期間には、後任の質問を1つの場所に書き留めておく決まりを作ると効果的です。口頭で答えた内容は時間がたつと忘れられますが、書き留めておけば、あとでマニュアルに反映する材料になります。同じ質問が2回出たら、マニュアルの書き方が足りない合図です。

引き継ぎが終わったあとに後任から質問が来ることもあります。連絡の取り方と期間を決めておくと、前任者は新しい仕事に集中でき、後任は困ったときに相談できます。

マニュアルを古くしない保管と更新の仕組み

引き継ぎマニュアルは、作ったときが最も正しく、時間がたつほど古くなっていきます。古くしないためには、マニュアルを保管する場所と更新の仕組みを決めておくことが大切です。

まず、保管場所を1か所に決めます。共有のフォルダ、社内の文書管理の道具、プロジェクト管理の道具など、どこでもかまいませんが、「マニュアルはここにある」と全員が分かることが前提です。個人のパソコンやメールの添付に分散していると、どれが最新か分からなくなります。

次に、仕事のたびにマニュアルを見る形にします。マニュアルを見ずにできる仕事は、マニュアルが古くなっても誰も気づきません。毎月の仕事を始めるときに、手順書を開きながら進め、違うところがあればその場で直す、という習慣が、マニュアルを生きたものにします。

この習慣を作りやすい道具の1つが、手順をカードで管理する方法です。たとえば、国産のプロジェクト管理ツールのPinatecaでは、公式の使い方ガイドの説明によると、1枚のカードに担当者、期限、チェックリスト、説明、添付、コメントを入れられます。チェックリストの進み具合はカードの表に表示され、説明欄には見出しや箇条書き、リンクが使え、動画のURLを貼るとその場で再生できます。毎月の仕事を1枚のカードにし、手順をチェックリストに、目的や注意点を説明欄に書いておけば、仕事をするたびにマニュアルを開くことになります。手順が変わったら、その場でチェックリストを書き換え、変えた理由をコメントに残せます。カレンダーやガントのボードで1年の流れも並べられ、5人まで無料のプランで使えます。詳しくはPinatecaの紹介ページで確かめられます。

Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。

問い合わせの受け付けを担当している人の引き継ぎでは、問い合わせが前任者の個人のメールに届いていることが、引き継ぎを難しくします。フォームで受け付け、届いた1件ごとに担当と状況を記録しておく形にしておけば、担当が変わっても過去のやり取りをそのまま渡せます。そうした受け付けの道具の1つがHalictで、公式サイトによると、フォームで集めた回答を担当と状況つきで管理し、同じ画面から返信を送って開封まで記録できます。無料から始められます。

Halictは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。

最後に、更新の担当と時期を決めます。マニュアル全体を年に1回見直す日を決め、それぞれの手順書の「最終更新日」が1年以上前のものを確かめます。システムの変更やルールの変更があったときは、その変更を担当した人がマニュアルを直す、という決まりも作っておきます。

在宅や業務委託の人に引き継ぐとき

仕事を在宅の人や業務委託の人に引き継ぐ場合は、社内で引き継ぐときより、マニュアルの役割が大きくなります。

在宅で働く人は、隣の席の人に気軽に聞くことができません。質問をするたびにチャットやメールで連絡し、返事を待つことになります。マニュアルで答えが見つかれば、その待ち時間がなくなります。業務委託の人の場合は、質問の時間も報酬の計算に関わることがあり、マニュアルの出来が費用にも響きます。

社外の人に引き継ぐときは、次の点を書き足しておきます。

・社内の人には当たり前の、部署の名前や役割の説明
・連絡の方法と、返事が来るまでの目安の時間
・扱ってよい情報と、扱ってはいけない情報の線引き
・成果物の納め方と、確認の流れ

社外の人には、マニュアルを渡す前に秘密を守る約束を交わしておくのが一般的です。マニュアルには、社内の仕組みや取引先の情報が含まれるため、渡す範囲も必要な部分に絞ります。

テレワークの環境を整える費用の支援については、テレワーク 助成金 2026で説明しています。在宅の人と仕事をする体制を作るときの参考になります。

業種によっては、引き継ぎの内容に法令や基準の知識が関わります。たとえば、訪問看護の事業所を開く手順や必要な体制は訪問看護ステーションの開業手順2026|必要資格・設備基準・開業資金で、介護や福祉の事業所で記録を電子化する流れは介護・福祉事業所のDX化2026|IT導入補助金で介護記録を完全デジタル化で説明しています。紙の記録を電子化するときは、手順の書き直しが必ず必要になるので、引き継ぎマニュアルを整える機会にもなります。

マニュアル作りを仕事にする人の視点から

最後に、引き継ぎマニュアルの作成が、在宅の仕事の市場でどう扱われているかを整理します。

マニュアルの作成や業務の手順の整理は、外部の人に頼まれることが増えている仕事です。担当者が辞める前に仕事を聞き取り、手順書に整えてほしい、という依頼や、散らばった手順をAIの道具で整理し直してほしい、という依頼があります。AIを使った業務の改善の支援がどのような形で募集されているかは、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で確かめられます。

業務の仕組みを見直す力を体系的に身につけたい人には、経営の診断と助言の専門家の国家資格である中小企業診断士という道もあります。引き継ぎマニュアルの作成は、業務の流れを見える化する仕事の入り口でもあります。

在宅ワークの市場を長く運営してきた立場から言えば、引き継ぎがうまくいく職場ほど、マニュアルを「辞める人が最後に書くもの」ではなく、「仕事をしながら育てるもの」と考えています。外部の人に仕事を頼む場面でも、手順が書かれていれば依頼の説明が短く済み、受ける側は作業そのものに時間を使えます。発注する側と受ける側が直接やり取りでき、仲介の手数料0%で取引できる関係なら、浮いた予算をマニュアルの整備のような土台づくりに回すこともできます。

わかりやすい引き継ぎマニュアルは、仕事の棚卸しから始め、全体像から順に書き、並走で確かめ、使いながら更新することで作れます。今日の仕事を1つ、手順書にしてみるところから始めてみてください。

よくある質問

Q. 引き継ぎマニュアルと引継書はどう違いますか?

引継書は、いま進んでいる案件の状況や未完了の作業など、その時点の状態を伝える文書で、引き継ぎが終われば役目を終えます。引き継ぎマニュアルは、その仕事をこれから先も繰り返し行うための手順と判断の基準をまとめた文書で、後任が使い続けます。ファイルを分けて作り、引継書からマニュアルの手順を参照する形にすると更新しやすくなります。

Q. 引き継ぎマニュアルはどんな順番で書けばよいですか?

仕事の全体像、1年の流れ、毎日や毎週の手順、例外とトラブルの対応、関係者の一覧、保管場所とアカウントの順に書くと、読む人が迷いにくくなります。書き始める前に、担当している仕事を一覧にする棚卸しをして、重要度と頻度の高い仕事から手順書を作ります。

Q. パスワードは引き継ぎマニュアルに書いてよいですか?

書かないのが原則です。マニュアルは多くの人が読み、印刷や転記もされるため、パスワードを書くと情報が漏れる原因になります。マニュアルには必要なシステムの名前と、アカウントの発行を誰に頼むかだけを書き、後任には後任のアカウントを発行してもらいます。会社の情報の取り扱いの決まりにも従います。

Q. 引き継ぎの期間はどれくらい取ればよいですか?

前任者と後任が一緒に仕事をする並走の期間は、月に1回の仕事を含めて一通り経験できる1か月程度が理想です。前任者が仕事をして後任が見る、後任が仕事をして前任者が見守る、後任が1人で行い前任者は質問に答える、の3段階で進め、出てきた質問はマニュアルに書き足します。

この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年3月31日最終更新:2026年10月14日
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