公務員を辞めたいと感じたときの考え方

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
公務員を辞めたいと感じたときの考え方

この記事のポイント

  • 公務員を辞めたいと感じたときに
  • まず確認すべきお金と制度の話をまとめました
  • 総務省の退職状況等調査で分かる実際の離職数

公務員を辞めたいと検索する人の多くが最初にぶつかるのは、「甘え」と言われることへの心配です。安定していて、福利厚生も手厚くて、周囲からは恵まれていると見られる。それなのに辞めたい自分は間違っているのではないか、という迷いが判断を止めます。

結論から書きます。辞めるべきかどうかを決める前に、確認しておかないと取り返しがつかないことが3つあります。公務員には失業手当が出ないこと、在職中の兼業には許可が要ること、そして役所の経験のうち外で値段がつくものと、つかないものがはっきり分かれることです。この3つを知らずに辞表を出すと、辞めた後の数カ月が想定よりずっと苦しくなります。

この記事では、まず「辞めたい」という気持ちの中身を分解し、国の調査で分かる実際の離職の姿を確認したうえで、お金の話、在職中にできる準備、手続きと時期、転職先での見せ方までを順に扱います。

「辞めたい」の中身は、3つのどれかに分かれる

同じ「辞めたい」でも、その中身によって取るべき行動はまったく違います。まず自分がどれに当てはまるかを切り分けてください。

1つ目は、職場の問題です。特定の上司との関係、異動先の部署の雰囲気、異常な業務量といった、配属で決まる要素が原因になっている場合がこれにあたります。この場合、組織そのものを辞めなくても解決する可能性が残っています。役所は数年ごとの異動が前提になっている職場なので、次の異動で状況が変わることは珍しくありません。

2つ目は、仕事の性質の問題です。前例に沿って進めることが求められる、決裁に時間がかかる、成果が数字で返ってこない。こうした特徴は個別の部署ではなく行政という仕組みに由来するので、異動しても変わりません。ここが合わないと感じているなら、組織を移るしかありません。

3つ目は、将来の問題です。このまま定年まで同じ枠の中にいることへの不安、あるいは別の分野でやってみたいことが見つかった、という形です。緊急性は低いかわりに、時間が経つほど選択肢が減っていきます。

この3つは混ざって現れるので、自分では区別がつきにくくなります。切り分けに使える質問があります。「別の部署に異動になったら、この気持ちは消えるか」です。消えると答えられるなら職場の問題なので、辞める判断を急ぐ必要はありません。消えないと答えるなら、2つ目か3つ目です。

もう1つ、心と体の不調が先に来ている場合は、この切り分けより前に休むことを優先してください。眠れない、食べられない、朝起き上がれないといった状態が続いているなら、判断そのものが正常にできません。この状態で出した結論は、回復してから見ると別のものに見えることがあります。自治体には病気休暇や休職の制度があり、職員向けの相談窓口も置かれています。辞表より先に、そちらを使う選択肢があることは知っておいてください。

数字で見ると、公務員はどれくらい辞めているのか

体感ではなく統計で確認します。総務省は毎年、地方公務員の退職状況等調査を行っていて、どんな理由で何人が辞めたかを職種別に集計しています。

令和6年度の調査によると、一般行政職の離職者は合計43,201人でした。このうち定年退職が11,893人で構成比27.5%、そして自己都合による退職を含む普通退職が25,738人で構成比59.6%です。つまり、役所を離れた人の6割近くが、定年ではない理由で辞めています。

年齢の内訳も出ています。在職期間の通算を伴う退職等を除いた一般行政職の普通退職者22,552人のうち、25歳未満が6.3%、25歳以上30歳未満が16.0%、30歳以上35歳未満が14.0%、35歳以上40歳未満が11.2%でした。合計すると47.4%が40歳未満です。最も多い層は20代後半で、全体の6分の1を占めています。

この数字から分かることは単純です。若いうちに役所を辞める人は、例外的な存在ではありません。同じ庁舎の中では少数派に見えても、全国で見れば毎年これだけの人数が同じ判断をしています。「自分だけがおかしいのではないか」という不安は、少なくとも数の面では根拠がありません。

参考までに、民間を含めた労働市場全体の動きも見ておきます。厚生労働省の雇用動向調査では、令和6年の1年間の入職率が14.8%、離職率が14.2%でした。離職した人が前職を辞めた理由としては、男性で「給料等収入が少なかった」10.1%、「職場の人間関係が好ましくなかった」9.0%、女性で「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.8%、「職場の人間関係が好ましくなかった」11.7%が上位に来ています。

一方で「仕事の内容に興味を持てなかった」は男性4.4%、女性3.6%にとどまります。民間でも、仕事の中身そのものを理由に辞める人は少数派です。公務員を辞めたいと考える人の理由には、この「中身が合わない」が多く含まれます。だから周囲に相談しても共感が得られにくい、という構図になります。

なお、転職後の賃金については同じ調査に集計があり、前職と比べて増加した人が40.5%、減少した人が29.4%、変わらない人が28.4%でした。公務員からの転職に限った数字ではないので、そのまま自分に当てはめることはできません。ただ、転職すれば必ず下がるという通説が正しくないことは確認できます。

辞める前に確認しておきたい、お金の3つの事実

ここが本記事で最も重要な部分です。公務員の退職は、民間の退職とお金の仕組みが違います。

1つ目。公務員には、いわゆる失業手当が出ません。雇用保険法第6条は適用除外となる人を列挙しており、そのなかに、国や都道府県、市町村などの事業に雇用される者のうち、離職したときに他の法令や条例、規則等に基づいて支給される諸給与の内容が求職者給付および就職促進給付の内容を超えると認められる者が含まれています。給与明細に雇用保険料の欄がないのはこのためです。

民間で働いていた人が辞めた後に受け取る基本手当は、ハローワークで求職の申込みをすれば一定期間支給されます。公務員にはこの仕組みがありません。辞めた翌月から収入がゼロになる可能性がある、ということです。

2つ目。ただし、退職手当が極端に少ない場合には「失業者の退職手当」という制度があります。内閣官房の内閣人事局は、この制度を次のように説明しています。

具体的には、国家公務員が退職した場合において、退職時に支給された「一般の退職手当等の額」(A)が雇用保険の「失業等給付」(B)に満たない場合に、その差額分(B-A)を限度として公共職業安定所等を通じて支給しているものです。 出典: cas.go.jp

同じページには、受給対象になるのは退職時の退職手当が相当に低い人か支給されない人であり、主として3年以内などの短い勤続期間で退職した人だと明記されています。つまり、勤続年数がある程度ある人は対象になりません。地方公務員についても各自治体の条例で同様の制度が設けられていますが、要件や手続きは団体ごとに異なります。自分が対象になるかどうかは、勤務先の人事担当部署か、退職後にハローワークで確認してください。

3つ目。退職手当の額は勤続年数で大きく変わります。数年で辞める場合、金額は期待しないほうが安全です。一方で共済組合の扱い、住宅ローンの条件、扶養の関係など、辞めることで動く要素は退職手当以外にもあります。特に住宅ローンを組んでいる人は、転職が返済条件に影響しないかを金融機関に確認しておくべきです。

金額や条件は個別の事情で変わるため、この記事の内容だけで判断しないでください。退職を具体的に考え始めた段階で、人事担当部署と年金や共済の窓口に、自分の勤続年数と退職予定日を伝えて試算を依頼するのが確実です。

実務的な結論を1つ書くと、公務員の退職では生活費の備えが民間より多めに必要になります。次の職場が決まらないまま辞める場合、収入がゼロの期間を6カ月分は見込んでおくのが現実的な線です。

加えて、辞めた直後に発生する支払いも計算に入れてください。見落としやすいものが3つあります。

医療保険の切り替えです。在職中は共済組合の組合員でしたが、退職するとその資格を失います。次の勤務先の健康保険に入るか、国民健康保険に加入するか、共済組合の任意継続の仕組みを使うかのいずれかを選ぶことになります。どれが安く済むかは前年の収入と扶養する家族の人数で変わるため、退職前に共済組合の窓口と市区町村の国民健康保険の窓口の両方で金額を確認し、比較してから決めるのが確実です。手続きには期限があり、過ぎると選べる選択肢が減ります。

年金の切り替えです。退職して次の勤務先が決まっていない期間は、国民年金の第1号被保険者になります。保険料の納付が必要で、収入がない期間については免除や納付猶予を申請できる仕組みがあります。放置すると未納になり、将来受け取る額に影響するため、市区町村の年金の窓口か年金事務所で手続きしてください。

住民税です。住民税は前の年の所得に対して課税される仕組みなので、収入が下がった年にも前年分の請求が届きます。在職中は給与から毎月引かれていたものが、退職後は自分で納める形に変わり、まとめて請求されることがあります。金額は前年の給与水準によって変わりますが、辞めた直後の負担として最も見落とされやすい項目です。退職前に、残りの住民税をどう納めるかを人事担当部署に確認しておいてください。

役所の経験のうち、外で値段がつくもの

「公務員の経験は民間で通用しない」という言い方をよく見かけますが、これは正確ではありません。正しくは、通用する部分と通用しない部分がはっきり分かれる、です。

通用しにくいのは、その自治体でしか使わない知識です。庁内の決裁ルート、独自の様式、条例の細かい運用。これらは外に持ち出しても値段がつきません。異動のたびに一から覚え直してきた人ほど、この種類の知識を多く持っています。

一方で、外でも強く評価される経験があります。

制度を読んで正確に運用する力は、その筆頭です。法令や要綱を読み、条件に当てはまるかを判断し、間違いなく処理する。この能力は、金融、保険、医療事務、人材、士業の補助といった分野でそのまま使えます。規制が関わる業界ほど、この力を持つ人が足りていません。

外部との調整経験も同様です。住民対応、事業者との折衝、議会対応。相手の立場が違う人と合意を作る作業は、業種を問わず必要とされます。特に、感情的な相手を前にして手続きを止めずに進めた経験は、カスタマーサポートの管理職や、BtoBの折衝が多い職種で評価されます。

公金を扱った経験も武器になります。予算の執行、契約事務、補助金の審査。会計の厳密さを求められる環境で仕事をしてきた人は、民間の経理や内部管理の部門で安心して任せられる人材と見なされます。

さらに、行政の仕組みを内側から知っていること自体が価値になる分野があります。自治体向けにサービスを売る会社、補助金申請を支援する会社、公共事業に関わるコンサルティング。こうした会社では、役所がどう動くかを知っている人が慢性的に不足しています。

自分の経験を書き出すときは、担当した制度名ではなく、そこで何をしたかで書いてください。「生活保護担当」ではなく「申請者からの聞き取り、要件の確認、決定通知の作成、関係機関との連絡調整を年間何件」という粒度です。この書き方の詳細は職務経歴書の書き方完全ガイド|転職成功率を上げるコツ【2026年版】に、職歴の並べ方と実績の表現の仕方まで整理されています。役所の職務は言い換えが必要になるため、一度型を確認してから書き始めるほうが早く仕上がります。

在職中にできる準備と、兼業の壁

辞めてから考えるのではなく、在職中に準備を進めるのが安全です。ただし公務員には、民間の会社員にはない制約があります。

地方公務員法第38条は、職員は任命権者の許可を受けなければ、営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員等を兼ねたり、自ら営利企業を営んだり、報酬を得ていかなる事業や事務にも従事してはならない、と定めています。国家公務員にも同様の規定があります。つまり、報酬を受け取る副業は原則として許可が必要です。

ここを軽く考えて無許可で副業を始めると、懲戒処分の対象になります。制度を運用する側にいる人間が制度違反をした、という構図になるため、処分は重くなりがちです。準備のために将来を壊しては意味がありません。

では在職中にできることは何か。報酬を伴わない形であれば、選択肢は残ります。

学習と資格の取得は自由にできます。特に、実務の入口条件になっている資格は在職中に取っておく価値があります。たとえばCCNA(シスコ技術者認定)はネットワークの基礎を体系的に証明できる資格で、行政の情報システム部門を経験した人が民間のインフラ職へ移るときの足がかりになります。また、文書作成が多い職種を目指すならビジネス文書検定のように、報告書や依頼文の型を確認できる試験が役立ちます。役所の文書は独特の言い回しが多いので、民間向けの型を一度学び直しておくと応募書類の印象が変わります。

成果物を自分で作ることもできます。報酬が発生しない範囲であれば、何かを作って公開する、記事を書いて置いておく、といった活動は問題になりにくい部類です。ただし所属先の情報を使わないこと、勤務時間中に行わないことは絶対条件です。判断に迷う場合は、匿名でよいので人事担当部署に確認してください。

情報収集も在職中にやっておく作業です。行きたい分野の求人票を30件ほど集め、求められている要件を数えます。全部の求人に出てくる条件が必須で、たまにしか出てこない条件は後回しでよい。この整理をしておくと、辞めた後に何から手をつけるかで迷いません。

転職サイトの登録も、在職中のうちに済ませておくと動きが速くなります。年代や職種で向き不向きがあるため、転職サイトおすすめ比較【2026年版】|年代・職種別の選び方に、どの層にどのサービスが向くかの整理があります。20代であれば未経験や第二新卒を扱う枠が広く、扱っている求人の層がサービスごとに違うので、登録先を1つに絞らず複数を並行させるほうが実際の求人に当たりやすくなります。

辞めないほうがよい状態と、動いたほうがよい状態

判断の材料として、どちらに寄せるべきかの目安を整理しておきます。

まず、辞める判断を先送りにしたほうがよい状態です。

1つ目は、体調が落ちているときです。睡眠が乱れている、食欲がない、休日に何もできない。この状態では、将来の見通しを冷静に立てられません。不調の原因が職場にあるとしても、まず休暇や休職の制度を使って回復させ、それから判断してください。回復した後に同じ結論が出るなら、それは正しい結論です。

2つ目は、不満の中身が特定の人物に集中しているときです。上司との関係が原因なら、次の異動で状況は変わります。役所は数年単位で人が入れ替わる職場なので、組織を辞めるより異動を待つほうが確実に解決する場合があります。ただし、何年も同じ状況が続いているなら話は別です。

3つ目は、やりたいことがまだ言葉になっていないときです。「ここではないどこか」を探している段階で辞めると、条件が今より少しでも良く見える先に飛びついてしまいます。行き先を選ぶ基準は、逃げたい気持ちとは別に用意する必要があります。

次に、動いたほうがよい状態です。

1つ目は、不満の対象が行政という仕組みそのものに向いているときです。前例主義、決裁の遅さ、成果が数字で返ってこないこと。これらは部署を変えても消えません。合わないものは合わないので、時間をかけても状況は改善しません。

2つ目は、身につけたい技能が今の職場では手に入らないと分かっているときです。たとえば開発や設計の実務経験は、担当する事業の性質によっては何年いても積めません。積めないものを待ち続けても、年齢だけが進みます。

3つ目は、民間側の入口が狭くなる年齢が近づいているときです。未経験からの採用は年代が上がるほど枠が減ります。40歳を超えると、担当者としての未経験枠はかなり限られ、専門性かマネジメント経験のどちらかを求められるようになります。動くつもりがあるなら、枠が広いうちに動くほうが選択肢は多くなります。

この2つの分類は、どちらが正解という話ではありません。重要なのは、自分がどちらの状態にあるかを言葉にすることです。言葉にできていれば、周囲に何を言われても判断が揺れにくくなります。

辞めた後によくあるつまずき

実際に役所を離れた人が、どこで苦労しているかを整理しておきます。先に知っておけば避けられるものが多くあります。

1つ目は、無収入期間の見積もりの甘さです。失業手当が出ないことを知らずに辞めて、貯蓄が思ったより早く減っていくことに焦り、条件の悪い求人を受けてしまう。このパターンが最も多く、かつ最も影響が長く残ります。6カ月分の生活費を確保してから動く、という原則を守るだけで防げます。

2つ目は、肩書きが消えることへの動揺です。在職中は、自治体名を名乗るだけで相手が信用してくれました。辞めた瞬間にその看板がなくなり、個人として評価される世界に移ります。これが想像以上にこたえる、と話す人は少なくありません。対策としては、辞める前に個人として評価される場を1つ作っておくことです。何かを作って公開する、勉強会に参加して顔を覚えてもらう。小さくて構いません。

3つ目は、民間の意思決定の速さへの戸惑いです。役所では時間をかけて合意を作り、記録を残してから動きます。民間では、決まっていないまま動き始めることが普通にあります。この違いに慣れるまで数カ月かかりますが、慣れる過程で「確認を軽んじる文化だ」と批判的になると、周囲との関係が悪くなります。まずは合わせ、信用ができてから確認の必要性を提案する。この順番が実務的です。

4つ目は、自分の働きに値段をつけられないことです。特に独立や業務委託の形を選んだ場合、見積もりを自分で出す必要が出てきます。決められた額の中で仕事をしてきた期間が長いほど、この作業に抵抗があります。相場を調べずに安く出してしまい、作業量に見合わない状態で消耗する。ここを避けるには、同じ職種の単価を先に調べ、そこから下げないと決めておくことです。

5つ目は、辞めたことを後悔したときの逃げ道の少なさです。一度辞めると、同じ自治体に戻るのは簡単ではありません。経験者採用の枠はありますが、募集がある年とない年があり、確実ではありません。戻れない前提で決める必要があります。

これらを並べると共通点が見えます。どれも、辞める前に確認しておけば対処できたことです。感情で決めた部分と、確認して決めた部分の比率が、辞めた後の苦しさを左右します。

辞める時期をどう決めるか

時期の決め方には、実務的な目安があります。

まず、退職の申し出は早めに行うのが原則です。民間では期間の定めのない雇用について一定期間前の申し出で退職できるとされていますが、公務員の辞職は任命権者の承認という形を取るため、扱いが同じではありません。実際には引き継ぎと後任の手当てを考慮して、1カ月から3カ月前の申し出を求める運用が多くなっています。自分の団体の規程と過去の運用がどうなっているかは、人事担当部署に確認してください。

次に、年度の区切りです。行政は年度単位で動くので、年度末での退職は引き継ぎが自然に収まります。担当していた事業が年度で完結するなら、その区切りを使うのが周囲との摩擦が少ない選択です。一方で、精神的に限界が近い場合は区切りを待つ必要はありません。体調を犠牲にして年度末まで持たせることに、キャリア上の利点はありません。

3つ目は、退職手当と賞与の扱いです。勤続年数の計算方法や、賞与の支給基準日との関係で、数週間の違いが金額に影響する場合があります。これも団体ごとに規程が違うので、退職日を決める前に人事担当部署へ試算を依頼してください。聞かなければ誰も教えてくれない部類の情報です。

4つ目は、転職先が決まってから辞めるかどうかです。在職中に転職活動をするのは可能ですが、平日の面接の調整が難しいという現実的な壁があります。年次有給休暇を使って対応するか、オンライン面接に対応している企業を優先するか、いずれかの方法を取ることになります。

判断の軸として1つ挙げるなら、「辞めた後の無収入期間を、貯蓄で何カ月乗り切れるか」です。6カ月以上乗り切れるなら、決まる前に辞めても立て直せます。3カ月を切るなら、決めてから辞めるほうが安全です。公務員には失業手当がないため、この計算は民間より厳しめに置いてください。

応募書類と面接で、どう見せるか

公務員から民間へ移るとき、採用する側が気にしていることは決まっています。先回りして答えておくと、通過率が変わります。

1つ目の懸念は、スピード感です。決裁に時間がかかる環境にいた人が、民間のテンポに適応できるかを見られます。対策としては、期限を守り切った具体例、短期間で処理件数を増やした工夫といった話を用意しておくことです。

2つ目の懸念は、数字への意識です。行政の仕事は売上や利益で評価されないため、成果を数字で語る訓練が足りないと見なされます。対策は、自分の仕事を件数、時間、金額のいずれかで表現し直すことです。処理件数、短縮した時間、扱った予算規模。どれか1つでも数字が入ると、説明の質が変わります。

3つ目の懸念は、辞めた理由です。安定した職を捨てた理由を必ず聞かれます。ここで前の職場の批判を並べると、同じことを次の職場でも言うと判断されます。使える形は、事実と、そこから自分がどう考えたかをつなぐ形です。「担当した制度では、住民から見て使いにくい部分があっても、変更までに何年もかかる。仕組みそのものを速く作り替えられる場所で働きたいと考えた」といった説明なら、批判ではなく動機として成立します。

行き先の分野については、行政経験との接点が広いところから探すのが効率的です。業務の流れを整理して仕組みに落とす仕事は、役所で手続きを設計してきた人と相性がよい領域です。たとえばAIコンサル・業務活用支援のお仕事は、現場の業務を棚卸しして手順を組み直す工程が中心で、制度の読み込みに慣れている人が評価されやすい分野です。規制やルールが絡む領域を扱うAI・マーケティング・セキュリティのお仕事も、確認と記録を丁寧に積む働き方が要求されるため、行政の仕事の仕方が不利になりにくい分野といえます。

収入の見通しを立てるときは、希望する職種の水準を先に調べてください。文章を扱う仕事であれば著述家,記者,編集者の年収・単価相場に収入帯が整理されています。技術職を目指すならソフトウェア作成者の年収・単価相場で、年収と業務委託の単価の両方の目安が確認できます。相場を知らないまま条件交渉に入ると、提示された金額が妥当かどうか判断できません。

市場を20年見てきた立場からの考察

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、役所を出た人について気づいていることを2つ書いておきます。

1つ目は、立ち上がりの速さの差がどこから来るかです。役所を辞めて民間や独立の道に進んだ人のうち、早く軌道に乗る人は、仕事の内容ではなく「返事の速さ」と「途中経過の共有」を最初から徹底しています。行政の仕事は、確認と記録を積み重ねる文化のなかで育ちます。この習慣は、外に出ると想像以上に評価されます。民間の現場では、期限に遅れる人、連絡が途切れる人が一定の割合でいるためです。役所で当たり前だったことが、外では差別化の材料になる。これは本人が一番気づいていない点です。

2つ目は、つまずくタイミングです。運営者として見てきた限りでは、役所出身の人が最初に苦戦するのは、技術の習得ではありません。価格を自分で決める場面です。ずっと決められた額の中で仕事をしてきたため、自分の作業に値段をつける経験がない。結果として相場より大幅に安く出してしまい、消耗して続かなくなる。ここを乗り越えられるかどうかが、最初の1年の分かれ目になっています。

もう1つ、市場の構造の話をしておきます。同じ発注予算でも、間に入る事業者が多いほど、依頼できる量は減り、受け手の手元に残る額は薄くなります。仲介手数料が引かれない直接取引では、発注する側は同じ予算でより多く頼め、受ける側は同じ作業で手取りが厚くなる。手数料0%という条件が効いてくるのは、単価が高い案件よりも、始めたばかりで1件あたりの額が小さい時期です。受け取る額が小さいほど、差し引かれる割合の重さが響きます。

最後に、この記事を読んでいる人に伝えたいことを1つだけ書きます。辞めるかどうかを今日決める必要はありません。決めるべきなのは、今週どの窓口に何を聞くか、今月どの資料を集めるかです。退職手当の試算を人事担当部署に依頼する、行きたい分野の求人票を30件集める、兼業の可否を規程で確認する。この3つを終えるだけで、判断の材料はかなりそろいます。

材料がないまま「辞めたい」と「辞められない」の間を往復している時間が、一番消耗します。気持ちの問題として扱うのをやめて、確認できる事実から順に潰していくほうが、結果として早く楽になります。

そして、確認した結果として「今は辞めない」という結論になっても、その時間は無駄になりません。退職手当の見込みを知り、兼業の規程を読み、行きたい分野の求人要件を数えた状態は、何も調べていない状態とはまったく違います。いつでも動けると分かっている人は、同じ職場にいても以前ほど追い詰められません。選べる状態を作ること自体が、目的の半分です。

よくある質問

Q. 公務員を辞めると失業手当はもらえますか?

原則として受け取れません。雇用保険法第6条で、離職時に他の法令や条例に基づく給付が求職者給付等の内容を超えると認められる公務員は適用除外とされているためです。ただし退職手当が雇用保険の失業等給付相当額に満たない場合、その差額を「失業者の退職手当」として受け取れる仕組みがあります。主に勤続期間が短い人が対象になるため、自分が該当するかは人事担当部署かハローワークで確認してください。

Q. 公務員は何歳くらいで辞める人が多いですか?

総務省の令和6年度地方公務員の退職状況等調査では、一般行政職の普通退職者のうち25歳以上30歳未満が16.0%で最も多く、40歳未満が全体の47.4%を占めています。20代後半から30代前半が中心です。同じ職場では少数派に見えても、全国では毎年多くの人が同じ判断をしています。

Q. 在職中に副業で稼ぎながら準備してもよいですか?

報酬を得る副業は原則として任命権者の許可が必要です。地方公務員法第38条は、許可なく営利企業を営むことや報酬を得て事業や事務に従事することを制限しています。無許可で始めると懲戒処分の対象になるため、資格の取得や報酬を伴わない制作といった、許可なしでできる準備から進めるのが安全です。

Q. 辞めてから転職活動を始めても間に合いますか?

公務員には失業手当がないため、収入がゼロの期間を貯蓄だけで支える必要があります。6カ月以上を無収入で乗り切れる見通しがあるなら決まる前に辞めても立て直せますが、3カ月を切るなら在職中に方向を決めてから辞めるほうが安全です。焦った状態での判断は条件を落としやすく、短期間で再び転職することになりがちです。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月19日最終更新:2026年9月23日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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