営業を辞めたいと感じたときの考え方

丸山 桃子
丸山 桃子
営業を辞めたいと感じたときの考え方

この記事のポイント

  • 営業辞めたいと感じている人向けに
  • 厚生労働省の統計が示す離職理由の実際
  • 辞めるべき状態と環境を変えれば済む状態の見分け方

月末が近づくたびに胃が重くなる。朝、駅に向かう足が止まる。営業辞めたい、と検索窓に打ち込んだのは、たぶんこれが初めてではないはずです。結論から書きます。辞めるかどうかを今日決める必要はありません。決めるべきなのは、辞めたい理由がどこから来ているのかを特定することです。ここを飛ばして辞めると、次の職場で同じ状態に戻ります。

この記事では、営業を辞めたくなる理由を4つに分解し、それぞれについて「辞めることでしか解決しないもの」と「環境を変えれば解決するもの」を分けていきます。あわせて、営業経験が他の職種でどう評価されるのか、辞める前に済ませておく手続き、お金の計算までを整理します。感情の話ではなく、判断材料の話をします。

辞めたいと思っている人はどのくらいいるのか

まず、自分だけの問題なのかどうかを数字で確認します。

厚生労働省の令和6年(2024年)雇用動向調査によると、この1年間の離職者数は7,195.3千人、離職率は14.2%でした。働いている人のおよそ7人に1人が、1年のあいだに職場を離れています。入職率は14.8%なので、離れた人とほぼ同じ数の人が別の職場に入り直している計算です。

年齢別に見ると、20歳から24歳の転職入職率は男性13.4%、女性14.3%、25歳から29歳では男性15.1%、女性16.8%でした。20代後半は全年齢の中で最も動いている層です。つまり、この時期に職場を変えること自体は、統計上まったく例外的な行動ではありません。

辞めた理由の内訳も出ています。同じ調査で、前職を辞めた理由のうち「その他の個人的理由」といった分類しにくいものを除くと、男性では「給料等収入が少なかった」が10.1%、女性では「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が12.8%、次いで「職場の人間関係が好ましくなかった」が11.7%でした。前年からの上昇幅が最も大きかったのは、男性では「会社の将来が不安だった」で2.2ポイント、女性では「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」で1.7ポイントです。

お金、時間、人間関係、そして会社の先行き。辞める理由は、この4つに集約されています。営業職で辞めたいと感じている人も、突き詰めるとこのどれか、あるいは複数に当てはまるはずです。

実際の当事者の声も見ておきます。

営業辞めたいです、、 営業職になってから約2年経ちますが、最近新しい会社に転職して毎日バタバタです、、何件も打ち合わせして社内の事務業務もしないといけない、毎日細かく数字報告して、先輩からものすごい量のFB受けて早く結果出さないといけないから焦る、みたいな生活に疲れました。元々前職では営業が楽しくて(前職と現職は同業です)大変なのは今だけだと分かってます、慣れたら楽しいんです、けどもう辞めた... 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

注目すべきは「元々前職では営業が楽しくて」という部分です。同じ営業という職種でも、環境が変わると別の仕事になります。これは、辞めたい理由を特定するうえで重要な手がかりです。

辞めたい理由を4つに分ける

ここからが本題です。自分がどれに当てはまるかを確認してください。複数当てはまる場合は、一番重いものから見ていきます。

数字に追われることがつらい

毎月ゼロに戻る目標、日次の報告、達成できなかったときの空気。この構造そのものが合わないというケースです。

見分け方は単純で、目標を達成した月に気分が晴れるかどうかです。達成しても「来月も同じことをやるのか」としか思えないなら、数字を追う構造そのものが合っていません。この場合は、会社を変えても状態は変わりません。営業以外の職種に移ることが解決策になります。

逆に、達成した月は気分が良く、未達の月だけがつらいのであれば、問題は構造ではなく目標の設定か、達成の難易度です。この場合は、扱う商材や市場が変われば解決する可能性があります。

人間関係がつらい

上司の詰め方、同僚との比較、顧客からの扱い。どこに原因があるかで、対処が変わります。

上司が原因なら、部署異動で解決する可能性があります。人事に相談する、社内公募に応募するといった手が先にあります。会社を辞める前に、社内で移れないかを確認する価値は十分あります。

顧客が原因なら、担当する顧客層を変えられないかを考えます。個人向けと法人向け、新規と既存、大企業と中小企業では、相手の振る舞いがまったく違います。同じ営業でも担当が変われば別の仕事になります。

会社全体の空気が原因なら、これは変わりません。詰めることが文化になっている組織で、自分だけがその文化から逃れることはできません。この場合は転職が現実的な解です。

労働時間がつらい

移動時間、持ち帰りの事務作業、接待。営業職は時間が読みにくく、ここで消耗する人が多い職種です。

まず確認したいのは、その長さが業界の標準なのか、会社の問題なのかです。同業他社に知り合いがいれば聞いてみてください。同じ業界でも、仕組みが整っている会社では移動と事務が大幅に減っています。案件管理の仕組みが入っているかどうかで、営業1人あたりの事務作業の量は大きく変わります。

会社の問題であれば、転職で解決します。業界の構造であれば、業界を変えるか、職種を変えるかのどちらかです。

商材に納得できない

自分が売っているものに価値を感じられない。これは、短期的には我慢できても、長期的には効いてきます。

ここが理由の人は、商材を変えれば営業を続けられることが多いです。実際、扱う商品が変わっただけで仕事が楽しくなったという例は珍しくありません。営業の技術は持ち越せるので、業界を変える転職は、未経験職種に移るより難度が低くなります。

辞めるべき状態と、環境を変えれば済む状態

分解した結果を整理します。

辞める以外に解決しないのは、数字を追う構造そのものが合わない場合と、会社全体の文化が原因の場合、そして業界の構造として労働時間が長い場合です。ここは個人の努力でどうにもなりません。

環境を変えれば済むのは、上司や特定の顧客が原因の場合、商材が合わない場合、目標設定が現実的でない場合です。社内異動や、同業他社への転職で解決する可能性があります。

判断の目安として、1つの問いを置いておきます。「明日から上司が変わり、担当顧客が全部入れ替わったら、この仕事を続けたいか」。続けたいと思えるなら、辞めるのは早いかもしれません。それでも続けたくないなら、職種を変える方向で考えるほうが筋が通ります。

ただし、この判断には前提があります。心身に不調が出ている場合は、判断そのものを後回しにしてください。眠れない、食欲がない、朝に体が動かないといった状態が2週間以上続いているなら、まず医療機関を受診してください。この記事は診断も治療の助言もできません。判断は体調が戻ってからでも遅くありません。

営業経験は他の職種でどう評価されるか

辞める方向で考えるとき、次に気になるのは「営業しかやってこなかった自分に何ができるのか」だと思います。ここは、思っているより持ち越せるものがあります。

1つ目は、相手の要望を言語化する力です。顧客が言っていることと、本当に困っていることは違います。そのずれを埋める作業を日常的にやってきたなら、それは企画、マーケティング、カスタマーサクセス、人事のどの職種でも使えます。

2つ目は、数字で管理する習慣です。目標に対する進捗を把握し、足りない分をどう埋めるかを考える。この思考は、営業以外の職種では意外と身に付いていない人が多く、評価されます。

3つ目は、期限を守る動き方です。商談の日程、提案の提出、契約の締結。期限が明確な仕事を続けてきた人は、段取りの組み方が身に付いています。

4つ目は、断られることへの耐性です。企画を通す、社内を説得する、交渉する。どの職種でも、一度で通らないことはあります。ここで折れない人は重宝されます。

問題は、これらを職務経歴書にどう書くかです。「コミュニケーション能力があります」と書いても伝わりません。どんな場面で、何を考えて、どう動いて、結果どうなったか。この4点セットで書くと、営業以外の職種の採用担当にも伝わります。書き方の詳細は職務経歴書の書き方完全ガイド|転職成功率を上げるコツ【2026年版】で構成ごとに整理しています。

同じ営業でも、型が違えば別の仕事になる

営業を辞めたいと感じている人の多くは、「営業」という一語で全部をくくっています。実際には、型によって日々の内容がまったく違います。ここを分けて考えると、辞める以外の選択肢が見えてきます。

新規開拓と既存深耕では、精神的な負荷のかかり方が正反対です。新規開拓は断られる回数が多く、成果が出るまでの期間も読めません。既存深耕は関係ができている相手との仕事なので、断られる頻度は下がる代わりに、値上げ交渉や解約の防止といった別種の難しさがあります。断られることがつらいなら既存中心の職場へ、同じ相手と長く付き合うのが気詰まりなら新規中心の職場へ。この入れ替えだけで状態が変わる人がいます。

法人向けと個人向けでも構造が違います。法人向けは決裁までの期間が長く、関係者が複数います。1件あたりの金額が大きいので、件数を追うより1件を深く進める動き方になります。個人向けは判断が早く、件数で成果が決まります。短距離走と長距離走くらい違うので、自分がどちらの走り方に耐えられるかを考えてください。

商材の単価と購入頻度も効きます。単価が低く何度も買ってもらう商材は、回転が速く、月次の数字が読みやすい代わりに件数を追い続けることになります。単価が高く一度きりの商材は、1件の重みが大きく、外したときの落差が大きくなります。月末に胃が痛くなる原因が「件数」なのか「1件の重さ」なのかで、移るべき先が変わります。

ルート営業と提案営業の違いもあります。ルート営業は決まった顧客を定期訪問する形で、業務の予測が立ちます。提案営業は毎回中身を作るので、企画に近い仕事になります。考えることが好きで、決まった型の繰り返しが苦痛なら後者、逆なら前者です。

この分解をしてみて、「どの型でもつらい」と思ったなら、営業という職種そのものが合っていない可能性が高いです。その場合は、次の章の移り先を見てください。逆に「この型なら続けられそう」と思えるものが1つでもあれば、まずは社内での配置転換か、同業他社への転職を検討する余地があります。

営業から移りやすい職種

実際にどんな移り方があるのかを挙げておきます。

営業企画や営業推進は、最も近い移り先です。現場を知っている人がデータを見て仕組みを作る役割なので、営業経験がそのまま前提知識になります。表計算や分析ツールを扱えると有利です。

カスタマーサクセスは、契約後の顧客を支える職種です。売ることより使ってもらうことが仕事になるので、数字の追われ方が変わります。新規開拓のプレッシャーが合わなかった人には向きます。

マーケティングは、個別の相手ではなく市場全体を相手にする仕事です。営業で得た顧客の生の声は、この職種では貴重な材料になります。デジタル広告やSNSの運用に関わる場合、数字を読む力がそのまま効きます。この領域の仕事の出方はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事のページで確認できます。

人事や採用は、人と会って口説く仕事という点で営業と構造が似ています。候補者に自社の魅力を伝え、意思決定を支える。営業の動き方がほぼそのまま使えます。

IT系の職種に移る人もいます。ただしこれは学習の負荷が大きいので、準備期間を確保してから動くべきです。ネットワーク系であればCCNA(シスコ技術者認定)が入口の資格として機能しますし、開発系の求人がどんな形で出ているかはアプリケーション開発のお仕事のページで見られます。AI活用の支援業務のように、技術と業務の間をつなぐ役割であれば、営業で培った業務理解が効きます。AIコンサル・業務活用支援のお仕事の内容を見ると、純粋な技術職とは求められるものが違うことが分かります。

文章を扱う職種も選択肢です。提案書を書いてきた経験は、そのまま文章の仕事に転用できます。どのくらいの水準で取引されているかは著述家,記者,編集者の年収・単価相場、開発側の相場はソフトウェア作成者の年収・単価相場のページで確認できます。

年収はどうなるのか

営業から離れると年収が下がる、という話をよく聞きます。実際はどうか。

厚生労働省の令和6年雇用動向調査によると、転職した人の賃金は、前職と比べて「増加」が40.5%、「減少」が29.4%、「変わらない」が28.4%でした。増加が減少を11.1ポイント上回っています。

25歳から29歳の層に限ると、「増加」は46.3%、そのうち「1割以上の増加」が37.9%です。「減少」は29.2%でした。20歳から24歳では「増加」が50.5%で、増加が減少を33.7ポイント上回ります。20代の転職は、全体として賃金が上がる方向に動いています。

推移も見ておきます。「増加」した割合は平成27年(2015年)の35.6%から令和6年の40.5%まで上がり、「減少」した割合は33.5%から29.4%まで下がりました。10年で、転職が賃金にとって不利ではなくなってきています。

ただし、これは職種を問わない全体の数字です。営業からインセンティブのない職種に移る場合、成果報酬の分が固定給に置き換わるので、額面が下がることはあります。逆に、労働時間が短くなるなら時間あたりの単価は上がります。額面だけでなく、時間で割った数字でも比べてください。

辞める前に済ませておくこと

順番を守るだけで、辞めたあとの負担がかなり変わります。

1つ目は、在職中に次を決めることです。収入が途切れないので、条件を冷静に見られます。面接の時間が取れないという問題はありますが、夕方や土曜の面接に応じる企業は多くあります。

2つ目は、固定費の計算です。家賃、光熱費、通信費、保険、ローン、食費。ここに社会保険料と住民税を必ず入れてください。退職すると健康保険と年金を自分で払うことになり、住民税は前年の所得に対して請求が来ます。収入が減った年ほど重く感じるのは、この2つを計算に入れていないからです。

3つ目は、有給休暇の残日数の確認です。退職日を決める前に残日数を確認し、消化できるように日程を組みます。就業規則と、直近の給与明細か勤怠システムで確認できます。

4つ目は、退職の伝え方の準備です。就業規則で定められた申し出の期限を確認し、直属の上司に最初に伝えます。引き留めがあることを想定して、伝える内容は事前に固めておきます。転職先が決まっている場合、入社日から逆算して日程を組みます。

5つ目は、転職サイトやエージェントの使い分けを決めることです。自分で探すのか、紹介を受けるのか、両方使うのか。20代であれば選択肢は多く、20代の転職サイトおすすめ5選|未経験・第二新卒向けで年代に合ったサービスを比較しています。年代や職種で選び方が変わる点は転職サイトおすすめ比較【2026年版】|年代・職種別の選び方にまとめました。

雇用保険と学び直しの支援

辞めてから動く場合、お金の見通しを立てておく必要があります。

令和7年(2025年)4月1日以降に離職した場合、正当な理由がない自己都合退職の給付制限期間は原則1か月になりました。それより前の離職は原則2か月だったので、1か月分短くなっています。ただし、離職日から遡って5年のうちに2回以上、正当な理由のない自己都合退職で受給資格の決定を受けている場合は3か月です。

さらに、令和7年4月以降に学び直しのための教育訓練等を受けた場合は、給付制限が解除されて基本手当を受け取れるようになりました。職種を変えるために講座に通う予定があるなら、先に窓口で確認する価値があります。

受け取れる金額と日数は、離職前の賃金、被保険者だった期間、離職理由、年齢によって一人ひとり違います。一般論で判断せず、住所地を管轄するハローワークで自分の場合を確認してください。手続きの案内はハローワークインターネットサービスに出ています。

学び直しの費用については、雇用保険の教育訓練給付があります。一般教育訓練給付金は受講費用の20%で上限10万円、特定一般教育訓練給付金は40%で上限20万円、修了後1年以内に資格を取って就職した場合は10%が追加されて合計50%、上限25万円です。専門実践教育訓練給付金は50%で年間上限40万円、就職などの条件を満たすと70%で年間上限56万円、訓練の前後で賃金が5%以上上がった場合はさらに上乗せされて80%、年間上限64万円になります。

被保険者期間などの条件があるので、申し込む前にハローワークで対象かどうかを照会してください。指定されていない講座は給付の対象になりません。制度の全体像は厚生労働省のサイトでも公開されています。

動き出す前に書いておく3枚のメモ

転職活動を始める前に、紙に書き出しておくと迷いが減るものが3つあります。頭の中だけで考えていると、日によって結論が変わります。

1枚目は、今の仕事で「嫌ではなかったこと」の一覧です。辞めたいときは嫌なことばかり思い出しますが、3年やってきた仕事に1つも良い場面がなかったということは、まずありません。資料を作っているときは集中できた、初回の訪問で相手の話を聞く時間は楽しかった、社内の調整はむしろ得意だった。こうした断片が、次の職種を決める手がかりになります。

2枚目は、譲れない条件と譲れる条件の仕分けです。年収、勤務地、労働時間、リモートの可否、業界、職種。これを「絶対に譲れない」「できれば」「どちらでもいい」の3段階に分けます。全部を満たす求人は存在しないので、最初に線を引いておかないと、応募のたびに判断がぶれます。特に年収については、下限の数字を1つ決めておいてください。

3枚目は、いつまでに何をするかの日程表です。今月は書類を作る、来月から応募を始める、3か月後に一度振り返る。期限を決めずに始めると、活動が長引くほど判断基準が下がっていきます。期限が来たら、条件を見直すか、いったん止めるかを決めます。

この3枚は、面接の準備にもそのまま使えます。「なぜ辞めるのか」「何がしたいのか」「条件はどうか」は必ず聞かれる質問で、答えが即座に出てこないと、勢いで動いている人に見えます。

面接で聞かれることと、答え方の方向

営業からの転職で、ほぼ必ず出る質問が3つあります。

1つ目は、退職の理由です。ここで前職の批判を並べると、印象が悪くなります。事実として起きたことを短く述べたうえで、それを踏まえて次に何を求めているかに話を移すのが定石です。「数字を追う働き方が合わなかった」ではなく、「顧客の声を商品や仕組みに反映する側に回りたい」と言い換えます。

2つ目は、営業経験をどう活かすかです。ここで抽象的な言葉を使うと弱くなります。「顧客が言った要望と、実際に困っていたことが違った場面があり、聞き方を変えて背景を確認するようにした。その結果、提案の修正回数が減った」のように、場面と行動と結果で話します。

3つ目は、未経験の業務をどう学ぶかです。「頑張ります」では通りません。すでに始めている学習があるなら、その進み具合を具体的に伝えます。何も始めていない場合は、入社までに何をどこまでやるかを日程で答えられるようにしておきます。

逆に、こちらから聞いておきたいことも整理しておきます。その職種の人が何人いるか、評価の基準は何か、入社後3か月でどんな状態を期待されているか。ここが曖昧なまま入ると、入社後に「思っていた仕事と違う」となります。

辞める前に副業で試す選択肢

職種を変えるかどうか迷っている場合、先に小さく試す方法があります。

業務委託として、移りたい職種の小さな仕事を受けてみる。実際にやってみると、想像と違う部分が必ず出てきます。マーケティングの仕事に憧れていたが、実際は数字の集計と報告に時間の大半を使うと分かった。文章の仕事が向いていると思ったが、修正の往復が想像以上に多かった。こうした発見は、転職してからでは取り返しがつきません。

もう1つの利点は、実績として示せることです。未経験と言っても、納品したものがあれば話が変わります。応募書類に書ける材料が1つあるかないかで、書類選考の通り方が変わります。

営業出身者は、この進め方と相性が良い傾向があります。仕事を取ってくる工程に抵抗がないので、案件を見つけるところで止まりません。技術や制作の経験がある人が最初につまずくのがまさにここなので、順番が逆になっているぶん有利です。

ただし、始める前に今の勤務先の就業規則を必ず確認してください。許可制になっている会社が多く、無断で始めると処分の対象になります。確認して、必要なら申請する。この順番は飛ばさないでください。

今すぐ動いたほうがいい場合

これまで「急がなくていい」と書いてきましたが、例外があります。

長時間労働が常態化していて、体に症状が出ている場合。ハラスメントを受けていて、社内に相談窓口が機能していない場合。給与の未払いや、労働条件が契約と違う場合。これらは我慢して解決する問題ではありません。

この場合、まず記録を残してください。勤務時間、言われた内容、日付。あとから証明が必要になったとき、記録の有無が分かれ目になります。勤怠システムの画面を保存する、手帳に日付と内容を書く、社内のやり取りを残す。形式は問いませんが、その場で残すことが大切です。あとからまとめて書いたものは、記録としての説得力が落ちます。

そのうえで、労働基準監督署や都道府県労働局の相談窓口に事実を伝えてください。会社の中だけで解決しようとすると、時間がかかりすぎます。相談は無料で、内容によっては会社名を伏せたまま進めることもできます。まず聞いてみる、という使い方で構いません。

体調面の変化も軽く見ないでください。眠れない、食欲がない、休みの日も仕事のことが頭から離れない。こうした状態が続いているなら、転職活動より先に医療機関を受診してください。判断力が落ちた状態で進路を決めると、後から見て納得できない選択になりがちです。療養が必要な場合、健康保険から給付を受けられる仕組みもありますが、対象になるかどうかは個別の事情で変わるので、加入している健康保険の窓口で確認してください。

個別の事案が法的にどう扱われるかは、事情によって変わります。自分で判断せず、公的な窓口で確認する。ここは急いで構いません。

市場を見てきた立場からの観察

運営者として在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた中で、営業から他の職種に移った人には、いくつかの共通点があります。

うまく移れた人は、辞める理由ではなく、次にやりたいことを言語化できていました。「営業がつらい」だけで動くと、面接でその話しかできません。「顧客の声を商品開発に返す仕事がしたい」のように、次の方向が決まっている人は、書類の段階から通り方が違います。

もう1つ気づくのは、営業経験者が独立や業務委託の世界で強いことです。仕事を取ってくることに慣れているので、案件が途切れにくい。技術職から独立した人が営業で苦労する一方、営業出身者は最初から仕事の取り方を知っています。これは大きな資産です。

お金の見え方についても、一つ言っておきたいことがあります。会社員として働いていると、自分が生んだ売上と手元に入る額の差を意識する機会がありません。独立や業務委託になると、その差が見えるようになります。仲介手数料が何段も乗る取引では、依頼者が払った額と受け手に届く額に開きが出ます。同じ予算でも、手数料0%の直接取引であれば、依頼者はより多くの量を頼めますし、受け手の手取りは厚くなります。額面の大小ではなく、同じ仕事をして残る額が違うという質の問題です。

長く続いている人に共通するのは、単発の受注を積み上げることより、「この人に任せると楽だ」と思われる状態を作ることに時間を使っている点です。営業をやってきた人なら、この感覚は説明されなくても分かるはずです。既存顧客からの紹介が一番効率がいいことを、体で知っているからです。

最後に、統計に戻ります。令和6年の離職率は14.2%、25歳から29歳の転職入職率は男性15.1%、女性16.8%でした。動いている人は確実にいます。ただし、この数字は「動け」とは言っていません。辞めたい理由がどこから来ているかを特定し、それが環境で解決するのか、職種を変えないと解決しないのかを分ける。その作業を終えてから決めても、選択肢は減りません。今日決めなくていい、というのはそういう意味です。

よくある質問

Q. 営業を辞めたいと思うのは甘えでしょうか?

厚生労働省の令和6年雇用動向調査では離職率は14.2%で、働く人の7人に1人が1年のうちに職場を離れています。離職理由として女性では「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が12.8%、「職場の人間関係が好ましくなかった」が11.7%と上位です。感じ方の問題ではなく、条件の問題として多くの人が同じ判断をしています。

Q. 辞めるべきか、環境を変えれば済むかはどう見分けますか?

目標を達成した月に気分が晴れるかどうかが目安になります。達成しても晴れないなら、数字を追う構造そのものが合っていないので職種を変える方向になります。未達の月だけがつらいなら、商材や市場を変えることで解決する可能性があります。上司や特定の顧客が原因なら、社内異動で済む場合もあります。

Q. 営業経験は他の職種で評価されますか?

相手の要望を言語化する力、数字で進捗を管理する習慣、期限を守る段取り、断られても折れない耐性。この4つは営業企画、カスタマーサクセス、マーケティング、人事のいずれでも使えます。職務経歴書では「コミュニケーション能力」と抽象的に書かず、場面と行動と結果をセットで書くと伝わります。

Q. 辞めてから探す場合、収入はどうなりますか?

令和7年4月1日以降に離職した場合、正当な理由のない自己都合退職の給付制限期間は原則1か月に短縮されました。ただし5年のうちに2回以上同じ理由で受給資格の決定を受けていると3か月です。金額と日数は賃金や被保険者期間で変わるため、住所地を管轄するハローワークで自分の条件を確認してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月26日最終更新:2026年9月23日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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