個人事業税の事業廃止届出書|都道府県に出す忘れやすい書類

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
個人事業税の事業廃止届出書|都道府県に出す忘れやすい書類

この記事のポイント

  • 個人事業税の事業廃止届出書について
  • 税務署の廃業届との違い
  • 廃止の日から1か月以内という期限の根拠

結論から書く。個人事業税の事業廃止届出書は、税務署に出す廃業届とはまったく別の書類で、提出先は都道府県、期限は廃止の日から1か月以内と法律で決まっている。税務署に出す廃業届のほうは2026年1月から期限が確定申告期限まで延びたが、こちらは延びていない。法人成りの手続きで真っ先に期限が来るのはこの書類のほうだ、という傾向が見られる。にもかかわらず、案内されるのが都道府県のサイトだけなので、存在自体に気づかないまま1か月を過ぎる人が多い。以下では、書類の正式名称、期限の根拠、税額がどう決まるか、出さなかったときに何が起きるかを、地方税法の条文と都道府県の公式案内で確認できる範囲だけで整理する。

税務署に出す廃業届とは別の書類だという前提

個人事業主が事業をやめるときに出す書類は、出す先が2か所に分かれている。1か所目は税務署で、こちらに出すのが「個人事業の開業・廃業等届出書」、いわゆる廃業届だ。国税である所得税を扱う役所なので、税務署に出す。

2か所目が都道府県で、こちらに出すのが個人事業税の廃止を伝える書類になる。個人事業税は国の税金ではなく都道府県の税金なので、税務署は関知しない。税務署に廃業届を出しても、都道府県には自動では伝わらない、というのが実務上の出発点になる。

正直なところ、この二重構造が分かりにくさの原因だと思う。所得税の確定申告をすれば個人事業税の申告は要らない、という扱いが普段はあるので、「個人事業税のために何かを出した記憶がない」という人がほとんどだ。東京都主税局の案内でも、通常の年についてはこう書かれている。

個人で事業を営んでいる方は、毎年3月15日までに前年中の事業の所得などを、都税事務所(都税支所)・支庁に申告することになっています。ただし、 所得税の確定申告や住民税の申告をした方は個人の事業税の申告をする必要はありません。 この場合には、それぞれの申告書の「事業税に関する事項」欄に必要事項を記入してください。 出典: tax.metro.tokyo.lg.jp

毎年これで済んでいるので、廃業のときだけ別扱いになることに気づきにくい。ここが落とし穴になっている。

書類の名前は都道府県ごとに違う

検索で「個人事業税の事業廃止届出書」と入力しても、その名前どおりの様式が見つからないことがある。理由は単純で、書類の名前を都道府県が自分で決めているからだ。

東京都の場合、正式名称は「事業開始(廃止)等申告書」になる。開始と廃止が1枚にまとまった様式で、該当する欄に丸を付けて使う。都税事務所の窓口、郵送のほか、LoGoフォームという電子申請の窓口からも提出できる。様式はPDF版とExcel版の両方が用意されていて、記載例も別のPDFで公開されている。

ほかの道府県では「事業開始等申告書」「個人事業開業・廃業等申告書」「事業廃止申告書」といった名前になっていることが多い。共通しているのは、開始と廃止を1つの様式で扱っていることと、提出先が県税事務所や府税事務所といった都道府県の出先機関であることだ。書類名で探すより、住んでいる都道府県の名前と「個人事業税」で調べて、そのページから様式にたどり着くほうが早い。

なお、消費税のほうにも「事業廃止届出書」という名前の書類が存在する。こちらは税務署に出す国税の書類で、まったく別物になる。名前が似ているので、どちらの話をしているのかを確認しながら読み進めたい。

期限は廃止の日から1か月以内

期限の根拠は地方税法第72条の55第1項にある。条文を読むと、通常の年と廃業の年で扱いが分かれていることがはっきり分かる。

総務省令の定めるところにより、当該年度の初日の属する年(中略)の三月十五日までに(年の中途において事業を廃止した場合には、当該事業の廃止の日から一月以内(当該事業の廃止が納税義務者の死亡によるときは、四月以内)に)、当該年の前年中の事業の所得(年の中途において事業を廃止した場合には、当該年の一月一日から事業の廃止の日までの事業の所得)(中略)を事務所又は事業所所在地の道府県知事に申告しなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

年の中途で事業をやめた場合は、廃止の日から1か月以内。本人が亡くなったことによる廃止なら4か月以内。これが法律で定められた期限だ。地方税法は全国共通なので、都道府県によって期限が変わることはない。東京都主税局の案内も同じ内容になっていて、「所得税の確定申告や住民税の申告とは別に」提出が必要だと書かれている。

申告する中身も、通常の年とは違う。通常の年は「前年の1月1日から12月31日まで」の所得を申告するが、廃業の年は「その年の1月1日から廃止の日まで」の所得を申告する。まだ確定申告をしていない期間の数字を、廃業から1か月以内に出すことになる、という構造だ。ここが手間に感じられる部分で、帳簿を締める作業が前倒しになる。

法人成りをする人にとっては、この1か月という期限が実務上いちばん先に来る。税務署に出す廃業届と青色申告の取りやめ届出書は、2026年1月から期限が確定申告期限まで延びた。一方で個人事業税の申告と、給与を払っていた人が出す給与支払事務所等の廃止届出書は、どちらも1か月以内のままになっている。期限の長さが書類ごとにばらばらなので、短いものから片付ける順番を決めておきたい。

個人事業税がかかる人と、かからない人

そもそも自分に個人事業税がかかるのか、という確認から入ったほうが早い場合もある。判定の軸は2つある。

1つ目が業種だ。個人事業税は、地方税法で定められた業種、いわゆる法定業種にだけかかる。東京都主税局の案内によれば、現在の法定業種は70業種あり、ほとんどの事業が該当する。区分と税率は次のとおりになっている。

区分 税率 業種数 代表的な業種
第1種事業 5% 37業種 物品販売業、請負業、広告業、印刷業、不動産貸付業、駐車場業、飲食店業
第2種事業 4% 3業種 畜産業、水産業、薪炭製造業
第3種事業 5% 30業種 デザイン業、コンサルタント業、税理士業、医業、理容業、美容業
第3種事業のうち一部 3% 該当分 あんま、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復、装蹄師業

在宅で受ける仕事の多くは、請負業として第1種事業の5%、またはデザイン業やコンサルタント業として第3種事業の5%に入る傾向が見られる。一方で、文筆業や画家といった純粋な芸術・著述の仕事は法定業種に含まれていないため、個人事業税がかからないという扱いになる。ただし、同じ「書く仕事」でも、企業から請け負って納品する形が強ければ請負業と判定されることがある。判定は都道府県が行うので、自分の仕事がどの業種に当たるかを断定せず、都道府県税事務所に確認するのが確実になる。

2つ目が金額だ。個人事業税には事業主控除という枠があり、控除額は年間290万円になっている。事業の所得がこの枠に収まれば税額は出ない。副業の延長で法人成りしたような規模なら、そもそもかからなかったというケースも少なくない。

ただし、廃業の年はこの枠が縮む。営業期間が1年未満の場合は月割になるからだ。東京都主税局が公開している月割額は次のようになっている。

事業を行った月数 事業主控除額
1か月 242,000円
3か月 725,000円
6か月 1,450,000円
9か月 2,175,000円
12か月 2,900,000円

たとえば3月末で個人事業をやめて法人成りした場合、その年の事業主控除は725,000円までになる。1月から3月までの所得がこれを超えていれば、その差に税率をかけた金額が個人事業税として出てくる。「毎年290万円の枠に収まっていたから今年も出ないはず」と考えていると、廃業年だけ通知が届いて驚くことになる。

廃業した年の税額はどう決まるか

計算の流れは、通常の年と基本的に同じだ。東京都主税局が示している式は次のようになっている。事業所得または不動産所得に、所得税の事業専従者給与(控除)額を足し戻し、個人事業税側の事業専従者給与(控除)額を引き、青色申告特別控除額を足し戻し、各種控除額を引いたうえで税率をかける。

注意したいのは、青色申告特別控除が効かない点だ。個人事業税には青色申告特別控除の適用がないので、所得税の計算で引いた65万円55万円は、個人事業税の計算では足し戻される。所得税では税額が出なかったのに個人事業税だけ出る、という現象はここから起きる。

事業専従者の扱いも所得税とは別枠になる。青色申告の場合は所得税の青色事業専従者給与額がそのまま使われ、白色申告の場合は配偶者86万円、その他の親族は1人50万円が限度とされている。

赤字が出ている場合の扱いも押さえておきたい。青色申告者が事業で損失を出したときは、翌年以後3年間の繰越控除ができる。ただしこの控除を受けるには、所得税、住民税、事業税のいずれかの申告を一定の期限内に毎年行っていることが原則として必要になる。廃業の年に申告を怠ると、それまで積み上げてきた繰越が使えなくなる可能性がある。ここは見落としやすい。

納税通知書が届く時期と、納める時期

個人事業税は、自分で税額を計算して納める税金ではなく、都道府県が計算して納税通知書を送ってくる仕組みになっている。通常の年は8月に通知書が届き、8月31日11月30日の年2回に分けて納める(休日の場合はその翌日)。

廃業した場合は、この流れから外れる。東京都主税局の案内では、所得税の修正申告をした場合、更正や決定が行われた場合、そして事業を廃止した場合などの特別な場合には、通常とは別に納税通知書に記載された納期限までに納める、とされている。つまり、廃業の申告を出すと、その内容に基づいた通知書が送られてきて、そこに書かれた期限までに納めることになる。

送付月によって納期限が変わる表も公開されている。9月に送付されれば第1期が9月末、10月送付なら10月末、12月送付なら12月27日、というように動く。1月から3月に送付される場合は1回払いで、それぞれ月末が期限になる。

納め方は、都税事務所や支庁の窓口のほか、口座振替、コンビニエンスストア、クレジットカード納付、スマートフォンの決済アプリ、金融機関のATMなどが使える。法人成りをすると個人の口座から会社の口座へ資金の流れが移るので、個人あての納税通知書が届いたときに支払い原資が手元にない、という事態が起こりうる。廃業の時点で概算の税額を見積もり、個人の口座に残しておく。この段取りをしておくと慌てずに済む。

廃業年の個人事業税は経費にできるか

個人事業税は、通常であればその年の所得にかかる税額を翌年の必要経費に算入する。X年の所得にかかる個人事業税は、通知が来るX+1年の経費になる、という流れだ。ところが廃業すると、翌年には事業そのものがないので、経費にする場所がなくなってしまう。

この問題には、所得税法第63条という受け皿がある。

居住者が不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を廃止した後において、当該事業に係る費用又は損失で当該事業を廃止しなかつたとしたならばその者のその年分以後の各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額が生じた場合には、当該金額は、政令で定めるところにより、その者のその廃止した日の属する年分(中略)又はその前年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。 出典: laws.e-gov.go.jp

事業をやめたあとに生じた費用や損失で、事業を続けていれば必要経費になったはずの金額は、廃止した日の属する年分(またはその前年分)の必要経費に算入する、という内容だ。廃業年の個人事業税は、一般にこの規定を使って廃業年の必要経費に算入する扱いになる。

ただし、ここには段取りの問題がある。廃業年の確定申告を出す時点では、個人事業税の通知書がまだ届いていないことが多い。見込み額で計上するのか、通知が来てから更正の請求をするのかといった判断が必要になり、金額や状況によって扱いが変わる。ここは自分だけで決めずに、税務署か税理士に確認してほしい。同じく、廃業後に支払う外注費や事務所の原状回復費用も、この規定の対象になりうるが、どこまで含められるかは個別の判断になる。

書き方と、出すまでの手順

東京都の様式を例に、書く内容を並べる。ほかの道府県でも聞かれることはおおむね同じになる。

事業主の氏名、住所、電話番号。屋号がある場合は屋号も書く。

事務所または事業所の所在地。自宅で仕事をしていた場合は自宅の住所になる。複数の場所で事業をしていたなら、それぞれを書く欄がある。

事業の種類。ここで法定業種のどれに当たるかを書く。判断に迷う場合は空欄にせず、実際の業務内容をそのまま書いておくと、窓口で確認してもらえる。

開始または廃止の別と、その年月日。廃止に丸を付け、事業をやめた日を書く。法人成りの場合、税務署に出す廃業届に書いた廃止の日と同じ日にそろえておく。書類ごとに日付が違うと、あとで照合を求められることがある。

法人成りによる廃止であることを書く欄、または備考欄。設立した法人の名称、所在地、法人番号、設立年月日を書けるようになっていることが多い。個人から法人への引き継ぎであることが分かると、話が早い。

出し方は3通りある。窓口に持参、郵送、そして電子申請だ。東京都の場合、事業開始(廃止)等申告書はLoGoフォームから提出でき、パソコンでもスマートフォンでも手続きできる。郵送で出すなら、控えに受付印をもらうために返信用封筒を同封しておくとよい。手数料はかからない。

廃業のときに一緒に使える申請様式

東京都の個人事業税の申請様式のページには、廃止の申告のほかにも使える様式が並んでいる。法人成りの場面で役に立つものがあるので、名前だけでも知っておきたい。

1つ目が納税管理人申告書だ。海外に移るなど、自分で納税の手続きができなくなる場合に、代わりに手続きをする人を届け出る様式になる。廃業して住所を移すときに関係することがある。

2つ目が事業開始等申告書提出済証明申請書だ。過去に事業開始(廃止)等申告書を出したことを証明してもらう申請で、LoGoフォームからも提出できる。融資や許認可の手続きで、個人事業の開始や廃止を証明する書類を求められたときに使う。

3つ目が繰越損失額に係る証明申請書になる。青色申告で出した損失を繰り越している場合、その金額を証明してもらう申請だ。こちらもLoGoフォームから提出できる。個人事業をたたむ前に赤字を抱えていた人は、繰越の残高を確認しておくと、その後の判断材料になる。

いずれも手数料や提出方法は都道府県によって違う。東京都以外の場合は、住んでいる都道府県の個人事業税のページから申請様式の一覧をたどって確認してほしい。

出さなかったらどうなるか

この書類に、出し忘れたこと自体への罰金のような定めは置かれていない。では出さなくてよいかというと、そうではなく、実務上の不都合が積み上がる。

いちばん多いのが、廃業したあとも個人事業税の納税通知書が届き続けるケースだ。都道府県は、廃業を知らせる書類が届かない限り事業が続いていると扱う。所得税の確定申告からある程度の情報は回るが、廃止の日までは伝わらないことがある。届いた通知書を無視すると滞納の扱いになり、延滞金が付く。

次に多いのが、税額が正しく計算されないケースだ。廃業年の事業主控除は月割になるが、廃止の日が伝わっていなければ月数が確定しない。結果として、本来より多い税額が通知されることがある。あとから訂正することはできるが、手間としては最初に申告しておくほうが軽い。

3つ目が、繰越控除の前提が崩れるケースだ。前述のとおり、損失の繰越控除には申告を毎年一定の期限内に行っていることが原則として必要になる。廃業の年に申告を落とすと、この連続性が切れる。

気づいた時点で出せば受け付けてもらえる。1か月を過ぎていても、都道府県税事務所に連絡して事情を伝え、廃止の日を書いた申告書を出す。放置するより確実に軽い。

不動産を貸していた人は、別の基準で判定される

法人成りのあとも個人名義で不動産を持ち続ける人は、廃業の申告の前に確認しておきたい論点がある。不動産貸付業と駐車場業には、ほかの業種と違って規模の認定基準が置かれているからだ。

東京都主税局が公開している基準を、代表的なものだけ並べる。住宅の一戸建てなら棟数が10以上、一戸建て以外なら室数が10以上。住宅以外の独立家屋なら棟数が5以上、独立家屋以外なら室数が10以上。土地は、住宅用で契約件数が10以上または貸付総面積が2,000平方メートル以上、住宅以外なら契約件数が10以上。これらの基準に届かない場合でも、貸付用建物の総床面積が600平方メートル以上で、かつその建物の賃貸料収入が年1,000万円以上であれば、不動産貸付業と認定される。

駐車場業は基準がさらに細かい。寄託を受けて保管行為を行う駐車場は駐車可能台数を問わず対象になり、建築物や機械式の駐車場も同様に対象になる。それ以外の駐車場は、駐車可能台数が10台以上で対象になる。共有物件は持分にかかわらず全体の貸付状況で判定し、税額は持分に応じて計算される。信託物件も貸付件数に含まれる。

なぜこれが廃業の申告に関わるのかというと、事業のうち一部だけを法人に移した場合、個人側に不動産貸付業が残ることがあるからだ。この場合、個人事業としては終わっておらず、廃止の申告を出す対象にならない。逆に、法人に不動産を移して個人には何も残らないなら、廃止の申告が必要になる。どちらに当たるかで出す書類が変わるので、基準に照らして先に確認しておきたい。

なお、駐車場業の取扱いについては一部変更が行われている。判定に迷う規模なら、最新の基準を都道府県のページで確認するか、都道府県税事務所に問い合わせるのが確実になる。

減免が使える場面もある

納税通知書が届いたあとで、どうしても納めるのが難しいという状況もある。個人事業税には減免の制度があるので、該当しそうなら期限内に申請しておきたい。

東京都主税局が挙げている減免の対象は、災害等により損害を受けたとき、生活保護法により生活扶助を受けているとき、高額な医療費の支出があったとき、納税者または扶養親族等が障害者であるとき、の4つになる。このほか中小企業者向けの省エネ促進税制による減免も用意されている。

重要なのは申請の期限で、減免を受けるには納期限までに申請が必要とされている点だ。通知書が届いてから納期限までの期間はそれほど長くないので、該当しそうだと思ったら届いた時点で動く必要がある。申請には個人事業税減免申請書を使い、高額な医療費を理由にする場合は医療費の一覧表も添える。生活扶助減免と省エネ減免については、LoGoフォームからの申請も可能になっている。

廃業の年は、事業をやめた事情そのものが健康や災害に関わっていることもある。そうした場合は、廃止の申告を出すときに窓口で事情を伝えておくと、使える制度を教えてもらえることがある。

法人成りのときの並べ方

法人成りの場面で個人側から出す書類を、期限の短い順に並べると次のようになる。

書類 出す先 期限
健康保険・厚生年金保険 新規適用届 年金事務所または事務センター 事実発生から5日以内
事業開始(廃止)等申告書 都道府県税事務所 廃止の日から1か月以内
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 税務署 事実があった日から1か月以内
法人設立届出書 税務署 設立登記の日以後2か月以内
個人事業の開業・廃業等届出書 税務署 廃業した年分の確定申告期限まで
所得税の青色申告の取りやめ届出書 税務署 取りやめる年分の確定申告期限まで

この並びで見ると、個人事業税の申告は上から2番目に来る。法人の設立登記が終わって一息つくころには、もう半分近く時間が過ぎている、という位置づけになる。登記が完了したら、まず社会保険と都道府県への申告に手を付ける。この順番を先に決めておくだけで、1か月の期限を落とす確率はかなり下がる。

もう1つ、法人側でも都道府県への届出が必要になる点を書いておく。会社を設立すると、都道府県と市町村のそれぞれに法人設立の届出を出すことになる。個人事業税の廃止を出す窓口と、法人の設立を届け出る窓口が同じ都道府県税事務所になることも多い。片方を出しに行くなら、もう片方の様式も一緒にもらってくると二度手間にならない。

廃業した月ごとに、税額はいくら変わるか

事業主控除が月割になると、税額はどう動くのか。月あたりの事業の所得を50万円として、廃業した月だけを変えて並べてみる。ここでいう所得は、青色申告特別控除を足し戻したあと、つまり個人事業税の計算に使う金額だ。第1種事業の5%で計算する。

廃業した月 事業の所得 事業主控除 課税標準 税額(5%)
3月末 1,500,000円 725,000円 775,000円 38,750円
6月末 3,000,000円 1,450,000円 1,550,000円 77,500円
9月末 4,500,000円 2,175,000円 2,325,000円 116,250円

控除は1か月あたり242,000円ずつ増えるが、所得は1か月あたり500,000円ずつ増える。増え方が倍以上違うので、続けた月数が伸びるほど税額の差は開いていく。逆に言えば、早くやめれば個人事業税は軽くなるが、その分の売上も個人には立たない。会社側に移る売上のほうが多いなら、個人事業税だけを見て廃業の月を決めるのは筋が違う。実際の通知額は端数の処理が入るので、上の表の金額とぴったり一致するとは限らない。

もう1つ、所得税では税額が出ないのに個人事業税だけ出る、という形も数字で確かめておきたい。上の表の1行目は、青色申告特別控除の65万円を足し戻したあとが150万円なので、控除後の事業所得は85万円になる。所得税では基礎控除や社会保険料控除を引いた結果、税額がほとんど出ない水準だ。それでも個人事業税では38,750円が出る。個人事業税に青色申告特別控除の適用がないからだ。「所得税がかからなかったから何も来ないはず」と考えていると、通知書が届いて驚くことになる。

段取りとしては、廃業の申告書を作るときに上の式で概算を出し、その金額を個人の口座に残しておく。通知が届くのは申告のあとなので、会社へ資金を移してしまってから請求が来る、という順番になりやすい。

独自データから見た、事務の重さと仕事の選び方

在宅ワーク求人サイトを20年運営してきた立場から見ると、法人成りでつまずく人の多くは、書類そのものではなく、書類が複数の役所に散らばっていることに消耗している。税務署、都道府県、年金事務所、法務局。窓口ごとに用語も様式も違い、どこに何を出したかを自分で管理しないといけない。

運営者として見てきた限りでは、この時期に売上が落ちる人と落ちない人の差は、事務にかけた時間の長さではなく、取引先への連絡を先に済ませたかどうかで分かれている。書類は期限内なら順番を変えても結果が同じだが、取引先との契約の巻き直しは、遅れるほど請求のタイミングがずれていく。個人事業税の申告を1か月以内に片付けるべきなのは、それ自体が重いからではなく、早く終わらせて残りの時間を営業に回せるからだ。

どの仕事を法人に寄せるかを考えるときは、業種の区分も材料になる。たとえばAIコンサル・業務活用支援のお仕事は、相談から設計まで請け負う形が多く、個人事業税の区分ではコンサルタント業に当たる可能性が高い。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事も、社内の体制づくりまで踏み込む案件では同じ扱いになりやすい。開発を主軸にするならアプリケーション開発のお仕事にまとまっている受託の形が参考になるが、こちらは請負業として第1種事業に入る傾向が見られる。区分が違えば税率も判定も変わるので、業務内容を説明できるようにしておくと窓口でのやり取りが速い。

規模の見通しを立てるなら、相場を先に確認しておきたい。ソフトウェア作成者の年収・単価相場には開発職の収入の分布が、著述家,記者,編集者の年収・単価相場には書く仕事の水準がまとめてある。事業の所得が事業主控除の290万円に届くかどうかで、個人事業税が出るかどうかが変わる。廃業年は月割になるので、いつやめるかによっても結果が動く。

法人になったばかりの時期は、取引先が判断材料を探している。ビジネス文書検定のように書類のやり取りの型を示せるものや、CCNA(シスコ技術者認定)のような技術の裏付けは、会社名がまだ知られていない時期に効く。お金の置き場所も変わるので、【20年で2倍?】毎月10万円の積立投資で資産形成する最強のポートフォリオで長期の積み上げ方を確認しておくと、役員報酬をいくらにするかの判断がしやすい。廃業年の個人の申告そのものに不安があるなら、確定申告 メリットを最大化!フリーランスが知るべき節税と還付のコツに、控除と還付の論点がまとまっている。デザイン系の仕事を続けるなら、UI/UXデザイナーの平均年収は?職種別の収入格差を公開【2026年版】で職種ごとの収入差を見ておくとよい。

最後に、20年この市場を見てきた立場からの観察を1つ。中間に手数料が乗らない直接の取引は、同じ予算でも依頼する側はより多く頼めて、受ける側は手取りが厚くなる。法人成りをすると、この差がそのまま会社の利益率に出る。長く続く人ほど、単発の作業を集めるのではなく、この人に任せておけば楽だという関係を作ることに時間を使っている。個人事業税の申告は1か月という短い期限が付いているが、片付けてしまえばそれきりの作業だ。早く終わらせて、その時間を関係づくりに回すほうが、翌年の数字に効いてくる。

よくある質問

Q. 税務署に廃業届を出せば個人事業税の手続きも終わりますか?

終わりません。個人事業税は都道府県の税金なので、税務署とは別に都道府県税事務所への申告が必要です。東京都では「事業開始(廃止)等申告書」という名前で、廃止の日から1か月以内に提出します。地方税法第72条の55に定められた期限なので、都道府県によって長さが変わることはありません。

Q. 廃業した年の個人事業税はいくらくらいになりますか?

事業主控除が月割になるため、通常の年とは枠が変わります。東京都の月割額は1か月で242,000円、3か月で725,000円、6か月で1,450,000円です。この枠を超えた所得に、業種の区分に応じて5%、4%、3%のいずれかの税率がかかります。青色申告特別控除は足し戻されるので、所得税より課税の対象が広くなります。

Q. 1か月の期限を過ぎてしまいました。罰則はありますか?

提出が遅れたこと自体への罰則は定められていませんが、放置すると廃業後も納税通知書が届き続け、月割が反映されず税額が多く計算されることがあります。損失の繰越控除の前提も崩れます。気づいた時点で都道府県税事務所に連絡し、廃止の日を記入した申告書を出してください。

Q. 文筆業や画家でも個人事業税の廃止を届け出ますか?

法定業種に当たらない業種は個人事業税の課税対象外なので、そもそも納税義務者ではありません。ただし業種の判定は都道府県が行い、同じ書く仕事でも請負業と判定されることがあります。自分で断定せず、都道府県税事務所に業務内容を伝えて確認してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年7月26日最終更新:2026年9月19日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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