弁当屋を車で開業する流れ|移動販売の許可と仕込み場所の確保

加藤 りさ
加藤 りさ
弁当屋を車で開業する流れ|移動販売の許可と仕込み場所の確保

この記事のポイント

  • ✓弁当屋を車で開業したい人向けに
  • ✓移動販売に必要な営業許可と食品衛生責任者
  • ✓開業資金の考え方までを一次資料をもとに整理しました

弁当屋を車で開業したいと考えたとき、最初につまずくのは「車さえ用意すれば売れるのか」「店舗を借りずに始められるのか」という点です。結論から言うと、車で弁当を売るには、保健所の営業許可と食品衛生責任者に加えて、多くの場合「仕込み場所」と呼ばれる調理や洗浄のための拠点が要ります。この記事では、弁当屋の移動販売を始めるまでの流れを、許可の取り方、仕込み場所の確保、出店場所の探し方、お金の考え方の順に整理します。

弁当屋の移動販売が注目される背景と需要

弁当の移動販売は、オフィス街の昼食需要に応える商売として長く続いてきました。最近はそれに加えて、住宅地や郊外の団地、工場や物流倉庫の周辺など、近くに飲食店やコンビニが少ない場所での需要が目立ちます。店舗を構えると立地が固定されますが、車なら曜日ごとに場所を変えて、売れる場所を探しながら商売を組み立てられます。

車で売る形が支持される理由は、買う側の事情にもあります。昼休みが短い職場では、歩いて数分の場所で温かい弁当が買えるだけで助かります。高齢の方が多い地域では、近所まで来てくれる販売車がそのまま日常の買い物の場になります。この点について、キッチンカーの製造販売会社は次のように書いています。

しかし高齢者の多いエリアであれば、ビジネス街のようなまとまった需要はなくとも、足を運ばなくても近所まで届けてくれるサービスに魅力を感じる人が多いかもしれません。 出典: my-kitchencar.com

昼の1時間に注文が集中するオフィス街と、午前から夕方まで少しずつ売れる住宅地では、仕込みの量も、メニューの組み方も、車を停める時間も変わります。どちらを主戦場にするかで、必要な車の大きさや保温の設備まで違ってくるため、開業の準備は「どこで、誰に、何時に売るか」を決めるところから始めるのが近道です。

もう1つの背景は、店舗の初期費用です。飲食店を物件から始めると、保証金、内装工事、厨房機器で大きな金額が先に出ていきます。車での開業も安くはありませんが、物件の家賃を毎月払い続ける形とは費用の性格が違います。売れる場所が見つからなければ車ごと移動できる点は、初めて商売をする人にとって大きな安心材料です。

車で弁当を売る3つの形と、それぞれに要るもの

一口に弁当屋の移動販売と言っても、実際の形は大きく3つに分かれます。どの形を選ぶかで、必要な許可も設備も変わるので、最初に整理しておきます。

形 調理する場所 車の役割 主な確認先
車内で調理して売る 車の中 調理と販売の両方 仕込み場所や保管場所を所管する保健所
仕込み場所で作って車で運んで売る 別の調理施設 保温と販売 調理施設と車それぞれの所管保健所
できあがった弁当を仕入れて売る 仕入れ先 保管と販売 販売する地域の保健所

車内で調理して売る形

揚げ物を揚げたり、ご飯を盛り付けたりする作業を車の中で行う形です。できたてを出せるのが強みですが、車内の設備に求められる水準が高くなります。給水と排水のタンク、手洗いと器具洗浄のシンク、冷蔵設備などが必要で、狭い車内で作業できる量には限りがあります。昼の短い時間に数十食を売る場合、車内調理だけでは間に合わないことが多く、下ごしらえは別の場所で済ませる人がほとんどです。

仕込み場所で作って運ぶ形

弁当屋の移動販売で最も多いのがこの形です。朝のうちに調理施設で弁当を作り、保温や保冷をしながら車で販売場所まで運びます。車の中では盛り付けや温め直し程度にとどめるため、車の設備は比較的簡素で済みます。その代わり、弁当を作る調理施設そのものに営業許可が要ります。

仕入れた弁当を売る形

他の業者が作った弁当を仕入れて売る形です。調理はしませんが、弁当は傷みやすい食品なので、温度管理と表示の確認が欠かせません。扱う品や販売方法によって許可が要るのか届出で済むのかが変わり、自治体ごとに運用の細部も違います。この形を考えている人は、仕入れ先と販売地域が決まった段階で保健所に相談してください。

どの形でも共通するのは、「車だけで完結する商売ではない」という点です。開業の相談で多いのは、車を先に買ってから仕込み場所が見つからず、営業を始められないという失敗です。車の購入は、仕込み場所と出店場所の見通しが立ってからにしてください。

必要な許可と資格|自動車の飲食店営業許可と食品衛生責任者

車で弁当を調理して売る場合は、食品衛生法に基づく営業許可が必要です。食品衛生法は令和3年6月1日に営業許可の制度が見直され、業種の区分と施設の基準が新しくなりました。東京都保健医療局のページにも、令和3年6月1日から新たな営業許可制度と営業届出制度が始まったことが書かれています。

申請先の保健所は「仕込み場所」で決まる

車での営業は、車がどこを走るかが一定しないため、どこの保健所に申請するのか迷う人が多い点です。東京都の「自動車関係営業許可申請の手引」では、次の順番で申請先を決めるよう案内しています。

  1. 仕込み場所が都内にあれば、仕込み場所の所在地を所管する保健所
  2. ない場合は、事務所または自動車の保管場所を所管する保健所
  3. それもない場合は、申請者の住所地を所管する保健所
  4. いずれもない場合は、主たる営業地を所管する保健所

ここで言う仕込み場所とは、車で扱う食品の調理や包装、器具の洗浄と消毒、給水タンクへの給水、食品や容器の保管を行う施設のことです。つまり、車の外にある拠点も含めて1つの営業として見られます。東京都の手引は特別区、八王子市、町田市では様式などが異なるとも明記しているので、自分の地域の保健所の案内を必ず確認してください。

申請に必要な書類

東京都の手引に並んでいる新規申請の書類は次のとおりです。

  1. 営業許可申請書
  2. 施設の構造及び設備を示す図面(2通)
  3. 営業の大要(仕込み場所、出店予定地、自動車登録番号、取扱品目などを書く書類、2通)
  4. 食品衛生責任者の資格を証明するもの
  5. 水質検査成績書(水道水などを使わない場合)
  6. 許可申請手数料

書類は施設工事の完成予定日の10日くらい前までに出すよう案内されています。申請や施設検査のときには、HACCP(ハサップ。食中毒を防ぐために、危ない工程を前もって決めて記録をつける衛生管理の考え方)に沿った衛生管理計画も確認されます。申請はオンラインの食品衛生申請等システムからも出せます。

手数料は自治体ごとに決まっています。東京都が令和8年4月1日から適用している手数料表では、都が所管する地域の飲食店営業の新規申請が18,000円です。特別区などは別の額のことがあるので、申請する保健所で確かめてください。

食品衛生責任者になれる人

営業許可を受けた施設ごとに、食品衛生責任者を1人決めなければなりません。東京都の手引によると、次のいずれかに当てはまる人がなれます。

・調理師、製菓衛生師、栄養士、管理栄養士などの資格を持つ人 ・食品衛生監視員または食品衛生管理者になれる資格を持つ人 ・食品衛生責任者の養成講習会を修了した人

調理の資格がない人は、養成講習会を受けるのが一般的です。講習は1日で終わるものが多いものの、開催日が限られる地域もあるので、車の手配より先に予約しておくと開業日がずれにくくなります。

仕込み場所の確保が最大の関門になる理由

弁当屋を車で開業するとき、もっとも時間がかかるのが仕込み場所の確保です。自宅の台所は家族の生活と共用になるため、そのままでは営業許可の施設基準を満たせないのが普通です。営業用の調理施設として認められるには、住居と区切られていること、手洗い設備や器具を洗うシンクがあること、床や壁が掃除しやすい素材であることなど、自治体の基準を満たす必要があります。

仕込み場所の主な選択肢

選択肢 向いている人 注意点
自宅の一部を改装する 長く続ける予定があり、改装の余地がある人 住居と区切る工事と保健所の事前相談が必要
営業許可のある厨房を時間で借りる 初期費用を抑えたい人 使える時間帯と保管場所の広さを確認する
知人の飲食店の厨房を営業時間外に借りる 地域に知り合いの店がある人 許可の名義と責任の分け方を書面にする
小さな物件を借りて厨房にする 販売量を伸ばす見込みが立った人 家賃と工事費がかかり、車開業の身軽さは薄れる

近年は、営業許可を取った厨房を時間単位で貸すシェアキッチンも増えています。初期費用を抑えられる一方で、朝の仕込みが集中する時間帯は予約が埋まりやすく、食材や容器を保管する棚の広さにも限りがあります。弁当は早朝に作ることが多いので、使いたい時間帯が本当に空いているか、契約前に確かめてください。

仕込み場所の名義と許可の関係

他人の厨房を借りる場合は、その厨房の営業許可が誰の名義で、どの業種で取られているかが問題になります。借りる側が自分の名前で営業するのか、貸す側の営業の一部として扱われるのかによって、必要な手続きが変わります。自治体の運用も一律ではないため、物件を決める前に、借りる予定の厨房の住所と許可の内容を持って保健所に相談するのが確実です。

保健所への相談は、施設の図面を持って事前に行くよう東京都の手引にも書かれています。図面を見せながら相談すると、工事をやり直す手間が減ります。開業準備で後戻りが一番高くつくのは、工事が終わってから基準を満たしていないと分かったときです。

車両の選び方と、車に必要な設備

車は、仕込み場所で作った弁当を運んで売るのか、車内で調理もするのかで選び方が変わります。

車の大きさと形

軽自動車ベースの販売車は、取り回しがよく、狭い場所にも停めやすいのが利点です。弁当を並べて売るだけなら軽自動車でも十分なことが多く、駐車場の確保もしやすくなります。一方、車内で揚げ物を調理する場合や、1日に100食を超える量を運ぶ場合は、荷室の広い1トンから2トンクラスの車が候補になります。大きい車ほど設備は充実させやすいものの、停められる場所が限られ、運転にも慣れが要ります。

設備で確認すること

車に求められる設備の基準は、取り扱う食品と調理の内容によって変わります。弁当の移動販売で一般に確認されるのは次のような点です。

・給水タンクと排水タンクの容量 ・手洗い用と器具洗浄用のシンク ・弁当を保温または保冷する設備 ・食品を扱う場所と運転席が仕切られていること ・照明と換気

給水タンクの容量は、調理を車内でどこまで行うかで必要な大きさが変わります。車を作ってから容量が足りないと分かると改造が必要になるため、販売車を作る会社と保健所の両方に事前に確認してください。中古の販売車を買う場合も、前の所有者の地域で許可が取れていたからといって、自分の地域でそのまま通るとは限りません。

自動車の区域をまたぐ営業

厚生労働省は、自動車を用いた飲食店営業で複数の都道府県などの区域を越えて営業できる事例について、自治体向けに通知を出しています。県境に近い地域で営業する人は、どの範囲まで1つの許可で営業できるのかを、申請の段階で保健所に確認しておくと安心です。

出店場所の確保と、道路で売ってはいけない理由

車で弁当を売る場所は、自分で探すか、出店場所を仲介するサービスを使うかのどちらかです。いずれの場合も、公道に車を停めて売るのは原則としてできません。

道路で店を出すには警察署長の許可が要る

道路交通法第77条は、場所を移動しないで道路に露店や屋台店などを出そうとする人は、所轄の警察署長の許可を受けなければならないと定めています。

場所を移動しないで、道路に露店、屋台店その他これらに類する店を出そうとする者 出典: e-Gov法令検索(道路交通法)

この許可は、交通の妨げにならないと認められる場合などに限られるので、昼の弁当販売のために毎日道路に停める用途で許可を得るのは現実的ではありません。そのため、移動販売の多くは、オフィスビルの敷地、スーパーやドラッグストアの駐車場、工場の構内、マンションの共用スペースなど、私有地の持ち主から許可をもらって営業しています。

出店場所の探し方

探し方 特徴
ビルや店舗の管理者に直接頼む 条件を直接話し合える。断られることも多い
出店場所を仲介するサービスに登録する 場所の情報がまとまっている。売上の一部を手数料として払うことが多い
自治体や商店街のイベントに出る 単発で認知を広げやすい。臨時の届出が別に要ることがある
企業の社員向けに曜日を決めて出店する 売上の見通しが立ちやすい。メニューの飽きに注意

出店場所の持ち主と話すときは、出店の曜日と時間、場所代の払い方、ごみの持ち帰り、電源の有無、雨天時の扱いを書面で決めておくと、あとで揉めにくくなります。営業許可の「営業の大要」には出店予定地を書く欄があり、出店場所を変えたときは変更の手続きが必要になることがあります。新しい場所が決まったら、届け出の要否も保健所に確認してください。

開業資金と売上の考え方

弁当屋を車で開業するときのお金は、最初に出ていくお金と、毎月かかるお金に分けて考えます。

最初に出ていくお金

・車両の購入費または改装費 ・仕込み場所の工事費や借りる費用 ・保温庫、炊飯器、調理器具などの備品 ・営業許可の申請手数料、食品衛生責任者の講習費 ・容器、のぼり、看板などの販促物

車両は新車か中古か、どこまで設備を載せるかで金額の幅が大きく、数十万円の差が簡単に出ます。見積もりを取るときは、車両本体と設備の工事を分けて書いてもらうと、どこを削れるか判断しやすくなります。自己資金だけで足りない場合は、日本政策金融公庫などの創業向けの融資を調べる人も多くいます。融資を受けるには事業計画書が必要になるため、出店場所と販売数の見通しを数字で示せるようにしておきます。

毎月かかるお金と、損益の試算の仕方

毎月かかるのは、食材費、容器代、燃料費、出店場所の手数料や場所代、仕込み場所の利用料、車の保険や駐車場代です。弁当は1個あたりの単価が決まっているので、損益は次の手順で試算できます。

  1. 1個あたりの原価(食材と容器)を出す
  2. 1日に売れる個数の見込みを、出店場所ごとに出す
  3. 1日の売上から原価を引き、その日の場所代と燃料費を引く
  4. 営業日数を掛けて、1か月あたりの固定費(仕込み場所、保険、駐車場、車のローン)を引く

たとえば1個600円の弁当を1日60個売る試算なら、売上は1日36,000円です。ここから原価、場所代、燃料費を引いた額が、その日に手元に残る額になります。試算では販売個数を楽観的に見積もりがちなので、最初の3か月は見込みの半分程度で計算しておくと、資金繰りに余裕が生まれます。

価格については、安さだけで勝負しない姿勢も参考になります。弁当のキッチンカーを紹介する記事では、ある販売車の取り組みを次のように紹介しています。

価格に挑戦するからには、やはり安ければ量も少ないだろうと思ってしまいますが、そうではないところに上海亭様のプライドを感じますね。 出典: foodtruck.co.jp

安くするなら量や味で妥協しない、妥協できないなら価格以外の価値で選ばれる。この2つのどちらで勝負するかを、開業前に決めておくと迷いが減ります。

車で弁当屋を始めるメリットとデメリット

メリット

・売れない場所から売れる場所へ移動できるので、立地の失敗を取り返しやすい ・曜日ごとに違う場所を回れば、同じ仕込みで複数の客層に届けられる ・店舗の家賃がかからず、固定費を抑えやすい ・昼だけ営業するなど、営業時間を自分の生活に合わせて組み立てやすい ・出店した場所の反応を見ながら、メニューと価格を細かく調整できる

デメリット

・天候に売上が大きく左右される。雨の日は人通りが減り、仕込んだ弁当が残る ・出店場所の持ち主の都合で、急に出店できなくなることがある ・仕込みから販売、片付けまでを1人で回すと、1日の拘束時間が長くなる ・車の故障や事故で、営業そのものが止まる ・保健所の手続きは、場所や設備を変えるたびに確認が必要になる

デメリットの多くは、準備で小さくできます。雨の日に備えて日持ちしない食材の仕込み量を調整する、出店場所を最低3か所確保して1か所が使えなくなっても回るようにする、車の点検を定期的に入れておく、といった手当てです。

弁当の移動販売で長く続けるためのポイントとコツ

メニューは「早く渡せること」を優先する

昼休みの客は、並んで待つ時間を嫌います。注文を受けてから作るメニューより、あらかじめ詰めておける日替わり弁当を中心に、選択肢を3種類前後に絞るほうが回転がよくなります。温かさを売りにするなら、ご飯とおかずを保温しておき、渡す直前に盛り付ける方式が現実的です。

常連をつくる仕組みを考える

同じ場所に同じ曜日に来ることが、移動販売の信用になります。出店予定をSNSや紙のチラシで告知し、急な休みもすぐに知らせると、常連は離れにくくなります。予約を受けて取り置きする仕組みを入れると、売れ残りを減らしながら客の待ち時間も短くできます。

地域の事情に合わせた売り方を探す

弁当のキッチンカーを紹介する記事では、夜間に働く人向けの配達便を出している例も紹介されています。

深夜スタッフの方向けに、夜の日替わり弁当という深夜配達便も行っております。まさにこういった営業努力から、今の地元のお弁当屋さんとしての地位が確立しているのだと感じます。 出典: foodtruck.co.jp

工場や病院、物流拠点のように交代勤務の職場では、昼以外の時間帯に食事の需要があります。こうした需要は大手の店がすくい切れていないことが多く、小さな事業者が入り込める余地があります。

衛生管理の記録を習慣にする

HACCPに沿った衛生管理では、温度や清掃の記録を残すことが求められます。厚生労働省は小規模な事業者向けに、業界団体が作った手引書を公表しており、簡略化したやり方で取り組めるようになっています。記録は面倒に見えますが、食中毒の疑いをかけられたときに自分を守る証拠にもなります。

開業までの手順とスケジュールの目安

ここまでの内容を、実際に動く順番に並べ直します。

  1. 誰に、どこで、何時に売るかを決め、出店候補地を3か所以上リストにする
  2. 食品衛生責任者の講習を予約する
  3. 仕込み場所の候補を探し、図面や許可の状況を持って保健所に事前相談する
  4. 車を販売車の製作会社と相談し、保健所の基準に合う設備で見積もりを取る
  5. 仕込み場所と車の工事を進め、完成予定日の10日ほど前に営業許可を申請する
  6. 施設検査を受け、許可が出たら出店場所と最終的な条件を書面で詰める
  7. 税務署に開業の届出を出し、帳簿をつける準備をする
  8. 少ない販売数から始め、売れ方を見て仕込み量と出店場所を調整する

許可の申請から許可が出るまでの期間は、施設検査の日程にもよるため、自治体に確認しておきます。車の製作に時間がかかることも多いので、全体では余裕を持って計画を立ててください。

弁当ならではの衛生管理|作ってから売るまでの時間を短くする

弁当は、作ってから食べられるまでに時間が空く食品です。店内で作ってすぐに出す料理と違い、仕込み場所で詰めてから車で運び、売れるまで車内で保管し、買った人が職場で食べるまで、さらに時間が経ちます。この時間の長さが、移動販売の弁当で衛生管理が重く見られる理由です。

作る時刻から逆算して段取りを組む

衛生管理の基本は、作ってから売り切るまでの時間をできるだけ短くすることです。昼の販売に合わせて深夜から仕込むのではなく、販売時刻から逆算して、加熱と盛り付けの時刻を決めます。揚げ物や煮物は十分に加熱し、盛り付ける前に冷ましすぎない、詰めたら保温か保冷のどちらかの状態を保つ、といった流れを毎日同じ手順で繰り返すことで、事故の起きにくい段取りになります。

傷みやすい食材を見極める

生野菜、半熟の卵、マヨネーズで和えた料理、水分の多い煮物などは、温度管理が崩れると傷みやすい食材です。夏場はこうした食材を外す、加熱したものに置き換えるといった判断も必要になります。メニューを決めるときは、味や見栄えだけでなく、運んで売るまでの時間に耐えられるかという目で見直してください。

売れ残りの扱いを先に決めておく

その日に売れなかった弁当を翌日に回すことは、衛生面からも信用の面からも避けるべきです。売れ残りが出たときにどう処分するかを決め、その数を記録しておくと、翌日以降の仕込み量の調整にも使えます。売れ残りの記録は、出店場所ごとの需要を知る一番確かなデータになります。

迷ったときは、仕込み場所を所管する保健所に、自分のメニューと段取りを見せて助言をもらうのが確実です。保健所は取り締まるだけの場所ではなく、衛生管理の相談に乗ってくれる窓口でもあります。

会社勤めのまま週末だけ始める場合に確かめること

弁当の移動販売は、いきなり本業にするのではなく、会社に勤めながら週末やイベントの日だけ営業して手応えを確かめる人もいます。この形で始めるときに確かめておきたいのは、勤め先の規則、税金、体力の3つです。

勤め先の就業規則

厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で、労働者が勤務時間外の時間をどう使うかは基本的に労働者の自由であるという考え方を示しています。モデル就業規則(令和7年12月版)では副業・兼業の定めは第70条にあり、会社が副業を禁止または制限できるのは、仕事に支障が出る場合、会社の秘密が漏れる場合、会社の名誉や信用を損なう場合、競業で会社の利益を害する場合に限られる形になっています。ただし実際の扱いは勤め先の就業規則で決まるので、届出が必要かどうかを先に確認してください。

裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である。 出典: 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」

税金の申告

会社員が副業で事業をする場合、給与以外の所得の合計が20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。国税庁のタックスアンサー(No.1900)にこの基準が書かれています。ここで言う所得は売上ではなく、売上から食材費や燃料費などの経費を引いた額です。20万円以下でも住民税の申告は別に必要になることがあるので、住んでいる市区町村の案内も確認してください。

体力と時間の見積もり

週末だけの営業でも、前日の買い出し、早朝の仕込み、販売、片付けと車の清掃まで含めると、1日の作業は10時間を超えることがあります。平日の本業に響かないよう、最初は月に数回の出店から始め、体の負担と売上の両方を見ながら回数を決めるのが現実的です。

許可以外に確認しておく手続きと備え

営業許可が取れたら終わりではありません。商売として続けるために、許可とは別に確認しておくことがあります。

開業の届出と青色申告

個人で事業を始めたら、税務署に開業の届出を出します。あわせて青色申告の承認申請を出しておくと、帳簿のつけ方などの条件を満たした場合に青色申告特別控除を受けられます。国税庁のタックスアンサー(No.2070)によると、控除額は最高55万円で、電子帳簿保存またはe-Taxでの申告をすると最高65万円になります。条件は年によって変わることがあるので、申請の前に国税庁の案内を確認してください。

食品表示

弁当を包装して売る場合、作った場所と売る場所の関係や販売の仕方によって、原材料やアレルゲン(アレルギーの原因になる物質)の表示が求められることがあります。仕込み場所で作って別の場所で売る移動販売は、店内で作ってその場で渡す飲食店とは扱いが違うことがあるため、ラベルを作る前に保健所に確認しておくと安心です。

保険

車を営業に使う場合は、自動車保険の使用目的を営業用に合わせる必要があるか、保険会社に確認します。また、販売した弁当が原因で客に損害が出た場合に備える賠償責任保険も検討しておくと、万一のときに事業を続けやすくなります。出店場所の持ち主から、加入を条件にされることもあります。

小さく始めて続ける人の共通点と、必要な力の考え方

フリーランスや副業の市場を20年にわたって運営してきた立場から見ると、弁当の移動販売のように1人で始める商売は、調理の腕だけで決まるものではありません。長く続いている人ほど、出店場所の持ち主や常連客との関係づくりに時間を使い、「この人に任せておけば昼の食事は困らない」と思ってもらえる存在になっています。単発の売上を追うより、毎週同じ場所に来る約束を守ることのほうが、結果として売上を安定させます。

もう1つの共通点は、書類と発信を自分で回せることです。営業許可の申請書、営業の大要、出店場所との契約書、事業計画書と、移動販売は意外なほど書類仕事が多い商売です。文書の書き方を体系立てて学べるビジネス文書検定のような資格は、相手に伝わる書類を短時間で作る力を身につける助けになります。

集客の発信も同じです。出店予定の告知、メニューの写真、常連向けの取り置きの案内など、SNSでの発信は売上に直結します。発信や広告の仕事がどう組み立てられているかはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で紹介しているので、自分で回すか外部に頼むかを考える材料になります。

直接取引の市場を見てきた実感として、中間の手数料が乗らない取引は、頼む側はより多くの仕事を任せられ、受ける側は手取りが厚くなります。出店場所の持ち主と直接条件を決める移動販売も、構造は同じです。仲介サービスを使うか直接交渉するかを、手数料と手間の両方で比べて選ぶと、続けられる商売に近づきます。

最後に、弁当屋を車で開業する準備は、保健所への相談から始まります。仕込み場所の候補が見つかった段階で、図面や物件の情報を持って所管の保健所に行き、どの許可が要るのかを確かめてから車の手配に進んでください。順番を守れば、車を買ったのに営業できないという失敗は避けられます。

よくある質問

Q. 弁当屋を車で開業するのに調理師免許は必要ですか?

調理師免許は必須ではありません。必要なのは保健所の営業許可と、施設ごとに1人決める食品衛生責任者です。食品衛生責任者は、調理師や栄養士などの資格がなくても、養成講習会を修了すればなれます。講習は開催日が限られる地域もあるため、車の手配より先に予約しておくと開業日がずれにくくなります。

Q. 自宅の台所で作った弁当を車で売ることはできますか?

自宅の台所をそのまま使うことは一般にできません。営業用の調理施設として認められるには、住居と区切られていることや、手洗い設備と器具洗浄用のシンクがあることなど、自治体の施設基準を満たす必要があります。自宅を改装するか、営業許可のある厨房を借りるかを検討し、工事の前に図面を持って保健所に相談してください。

Q. 公園や道路に車を停めて弁当を売ってもよいですか?

道路で場所を移動せずに店を出すには、道路交通法に基づく警察署長の許可が必要で、毎日の昼の販売で許可を得るのは現実的ではありません。公園も管理者の許可が要ります。移動販売の多くは、ビルの敷地や店舗の駐車場など、私有地の持ち主から許可をもらって営業しています。場所が決まったら保健所への届け出の要否も確認してください。

Q. 開業までにどのくらいの準備期間を見ておけばよいですか?

仕込み場所の確保、車の製作、営業許可の申請と施設検査を順番に進めるため、数か月単位の準備期間を見ておくのが一般的です。特に仕込み場所が見つからないと申請に進めないので、最初に取りかかるべきは仕込み場所探しと保健所への事前相談です。車の製作期間は製作会社によって違うため、見積もりの段階で納期も確認しておきます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年10月6日最終更新:2026年10月10日
加藤 りさ

この記事を書いた人

加藤 りさ@SOHO編集部

フリーランス採用コンサルタント

大手人材会社でRPO(採用代行)チームを率い、数多くの企業の採用を支援。フリーランスとして独立し、人事・採用・HR Tech系の記事を発信しています。

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