キッチンカーで起業する手順|営業許可の取り方と出店場所の見つけ方


この記事のポイント
- ✓キッチンカー起業の手順を
- ✓HACCPに沿った衛生管理
- ✓開業届と資金の準備まで順番に整理しました
キッチンカーで起業したいと考えたとき、多くの人が最初につまずくのは「何から手を付ければよいのか分からない」という点です。車を先に買うのか、許可を先に取るのか、どこで売ればよいのか。調べるほど情報が増えて、順番が見えなくなってしまいます。この記事では、キッチンカーで起業するまでの流れを、保健所の営業許可、食品衛生責任者、仕込場所、出店場所の見つけ方、そして開業の届出と資金の準備まで、順番に整理します。結論を先に書くと、キッチンカー起業でいちばん大事なのは「車を買う前に保健所へ相談する」ことです。許可の基準を知らずに車を用意すると、改造のやり直しで費用も時間も余計にかかります。
キッチンカー起業の全体の流れ
キッチンカーとは、自動車に調理や販売のための設備を載せ、移動しながら食品を売る営業のことです。東京都は、自動車での営業を「自動車(2輪のものを除く。)に施設を搭載し、移動しながら行う営業」と説明しています。固定の店舗を持たずに、イベントや商業施設の敷地、オフィス街の空き地などで営業できるのが特徴です。
起業までの流れを大まかに並べると、次のとおりです。
- 売るメニューと、営業する地域を決める
- 営業する地域を所管する保健所に、事前に相談する
- 食品衛生責任者の資格を取る
- 仕込場所を確保する
- 保健所の基準に合わせてキッチンカーを用意する
- 営業許可を申請し、施設の検査を受ける
- 出店場所を確保する
- 税務署に開業届を出し、売上と経費の記録を始める
この順番で大事なのは、2番目の保健所への相談を、5番目の車の用意より先に行うことです。キッチンカーの設備の基準は、売るメニューと営業する自治体によって変わります。たとえば、どこまでの調理を車内で行うのか、給水タンクの容量はどのくらい必要か、手洗いの設備をどう設けるかは、事前の相談で確かめておかないと、車ができあがってから「この設備では許可が出ない」と言われることがあります。
キッチンカーの専門店の案内でも、開業に必要なものを次のように整理しています。
キッチンカーの開業には、大きく「300万〜500万円の資金」「保健所の営業許可・資格」「用途に合った車両」が必要です。 出典: foodtruck.co.jp
資金の額は、車を新しく作るのか、中古の車を改造するのか、すでに改造済みの車を買うのかで大きく変わります。後のセクションで、資金の考え方も整理します。
メニューの決め方と原価の考え方
保健所への相談の前に、売るメニューの方向性を決めておく必要があります。メニューによって必要な設備も許可の種類も変わるからです。キッチンカーのメニューを決めるときに考えたい点を整理します。
1つめは、提供の速さです。キッチンカーの売上は、昼食の時間帯やイベントの休憩時間など、短い時間に集中します。注文から1分から2分で渡せるメニューでなければ、行列が伸びて途中で帰ってしまう客が出ます。仕込みの段階でできる作業を増やし、車内では温めと盛り付けだけで済むように組み立てると、提供の速さと衛生管理の両方を満たしやすくなります。
2つめは、原価率です。原価率とは、売値に対する食材や容器の費用の割合のことです。キッチンカーは出店料がかかることが多いので、食材の費用だけでなく、容器、割り箸、袋、出店料、燃料代まで含めて、1食あたりにいくら残るかを計算しておきます。売値を決めるときは、近くで同じような料理を出している店の価格も参考にしつつ、1日に何食売れば費用をまかなえるかを逆算します。
3つめは、扱う食材の衛生上の危険です。生の魚介類や生肉に近い料理、温度の管理が難しい料理は、車内での扱いに制限がかかることがあります。保健所に相談したときに「このメニューは難しい」と言われることもあるので、候補を2つから3つ用意して相談に臨むと、話が早く進みます。
4つめは、季節による売れ方の違いです。冷たい飲み物やかき氷は夏に強く、汁物や温かい料理は冬に強い、というように、季節で売れるものは変わります。1年を通して売れる看板の品と、季節ごとに入れ替える品を組み合わせると、年間の売上をならしやすくなります。
まず保健所に事前相談する
キッチンカーの営業許可は、食品衛生法に基づいて、都道府県や保健所を設置する市区が出します。窓口になるのは保健所です。東京都の手引きでは、施設の設計図などを持って保健所へ事前に相談するよう呼びかけていて、申請の書類は施設の工事が終わる予定日の10日くらい前に出すよう案内しています。
事前の相談で確かめておきたいのは、次のような点です。
・売る予定のメニューが、キッチンカーの車内でどこまで調理できるか ・必要な許可の種類(飲食店営業、菓子製造業など) ・給水タンクと排水タンクの容量の目安 ・手洗いの設備、シンクの数、冷蔵設備の基準 ・仕込場所が必要かどうかと、その場所に別の許可が必要かどうか ・許可の有効期間と、営業できる区域の範囲
車内でできる調理の範囲は、自治体によって考え方が違います。東京都の多摩地域などを対象にした以前の制度の説明では、車内での調理加工は小分け、盛り付け、加熱処理などの簡単なものに限り、生ものは提供しない、といった条件が示されていました。令和3年6月1日に改正された食品衛生法の制度では、施設の基準の考え方が見直されていますが、細かな扱いは自治体ごとに決められています。自分が営業する地域の保健所で、最新の基準を必ず確かめてください。
相談の窓口がどこになるかにも決まりがあります。東京都の案内では、仕込場所が都内にあればその所在地の保健所、なければ事務所や車の保管場所の保健所、それもなければ申請者の住所地の保健所、という順番で窓口が決まります。複数の地域で営業したい場合は、どの自治体の許可が必要になるかも、最初の相談で確かめておきましょう。営業許可は許可を出した自治体の区域で有効になるのが原則で、別の都道府県で営業するには、その地域の許可が別に必要になることがあります。
食品衛生責任者の資格を取る
キッチンカーの営業許可を受けるには、施設ごとに食品衛生責任者を選任する必要があります。食品衛生責任者とは、営業する施設の衛生管理を担う人のことで、キッチンカーなら1台ごとに1人を決めます。一人で営業するなら、自分自身が食品衛生責任者になります。
東京都の手引きでは、食品衛生責任者になれる人として、次の人を挙げています。
- 調理師、製菓衛生師、栄養士、管理栄養士などの資格を持つ人
- 食品衛生監視員や食品衛生管理者になれる資格を持つ人
- 食品衛生責任者の資格を取るための養成講習会を修了した人
調理師や栄養士の資格を持っていない人は、3番目の養成講習会を受けるのが一般的です。講習会は都道府県の食品衛生協会などが開いていて、食品衛生の基本、食中毒の予防、衛生管理の方法を学びます。日程や受講料は地域によって違い、人気のある時期は早めに定員が埋まることもあるので、開業の計画が決まったら早めに申し込んでおきましょう。
講習を修了すると、資格を証明する手帳などが交付されます。営業許可の申請のときに、この手帳の写しなどを提出します。食品衛生責任者は、資格を取ったあとも、衛生管理の知識を新しく保つことが求められます。自治体によっては、定期的な講習の受講を勧めているところもあります。
営業許可の種類と、申請に必要な書類
キッチンカーで調理した食品を売る場合、多くは「飲食店営業」の許可を受けます。焼き菓子を車内で作って売る場合は菓子製造業、というように、扱う食品によって必要な許可の種類が変わることもあります。どの許可が必要かは、事前の相談で保健所に確かめてください。
東京都の手引きに載っている、自動車での営業の新規申請に必要な書類は次のとおりです。
| 書類 | 部数など |
|---|---|
| 営業許可申請書 | 1通 |
| 施設の構造及び設備を示す図面 | 2通 |
| 営業の大要 | 2通 |
| 食品衛生責任者の資格を証明するもの | 手帳など |
| 水質検査成績書 | 水道水などを使わない場合 |
| 許可申請手数料 | 金額は保健所に確認 |
営業の大要とは、仕込場所、出店予定地、自動車の登録番号、取り扱う品目などをまとめた書類のことです。営業を始めたあとにこれらの内容が変わった場合は、変更の届出が必要になります。申請や施設の検査のときには、衛生管理計画も確かめられます。衛生管理計画とは、どんな手順で食品の衛生を保つのかを書いた計画のことで、次のセクションで説明するHACCPに沿った衛生管理の中身になります。
許可の申請は、保健所の窓口のほか、厚生労働省の食品衛生申請等システムを使ってオンラインで出すこともできます。ただし、オンラインで申請した場合でも、施設の検査は実際の車で受けることになります。
許可には有効期間があり、期間が終わる前に継続の申請をしないと営業を続けられません。有効期間は自治体や業種によって違うので、許可証を受け取ったら期限を確かめ、更新の時期をカレンダーに書き込んでおきましょう。
HACCPに沿った衛生管理を準備する
令和3年6月1日に全面的に施行された改正食品衛生法では、原則としてすべての食品等事業者に、一般的な衛生管理に加えて、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の実施が求められるようになりました。厚生労働省は、この点を次のように説明しています。
原則として、すべての食品等事業者に、一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施を求めます。小規模営業者等は、厚生労働省ホームページで公表している手引書を参考に、簡略化したアプローチで取り組むことができます。 出典: 厚生労働省
HACCPとは、食品を作る工程の中で、食中毒などの危険が生じやすい場面をあらかじめ見つけ出し、そこを重点的に管理する考え方のことです。難しく聞こえますが、キッチンカーのような小規模な営業では、業界団体が作り厚生労働省が公表している手引書を使い、簡略化した方法で取り組めます。
具体的には、手引書に沿って、次のようなことを決めて記録します。
・食材の受け入れのときに、温度や見た目を確かめる ・冷蔵庫や保冷庫の温度を毎日確かめて記録する ・加熱する食品は、中心まで十分に火が通ったかを確かめる ・手洗いのタイミングと方法を決める ・器具の洗浄と消毒の方法を決める
キッチンカーは、限られた水と限られた場所で調理をするので、固定の店舗よりも衛生管理の工夫が必要です。特に夏場の屋外での営業では、保冷の管理が売上以上に大切になります。売れ残りを翌日に回さない、仕込みの量を天気と来客の見込みで調整する、といった運用のルールも、衛生管理計画の一部として決めておくと安心です。
仕込場所とキッチンカーを用意する
仕込場所とは、キッチンカーで売る食品の下ごしらえや、器具の洗浄、給水タンクへの給水、食材や容器の保管を行う場所のことです。東京都の手引きでは、仕込場所の例として、自動車で取り扱う食品の調理や包装、器具の洗浄や消毒、給水タンクへの給水、食品や容器包装の保管を挙げていて、仕込場所に別の営業許可が必要になる場合があると注意しています。
仕込場所を自宅の台所で済ませたい、と考える人は多いのですが、家庭の台所は営業の施設の基準を満たさないのが一般的です。営業許可を受けた飲食店の厨房を借りる、シェアキッチンを使う、自分で仕込み用の施設を作る、といった方法があります。どの方法が認められるかは保健所の判断になるので、事前の相談で確かめてください。
キッチンカーの用意の方法は、大きく3つです。新しい車を専門の業者で製作してもらう方法、中古の車を買って改造する方法、すでに改造済みの中古のキッチンカーを買う方法です。新しく製作する場合は、設備を自分のメニューに合わせて作れる一方で、費用と時間がかかります。中古の改造済みの車は費用を抑えられますが、自分の営業する地域の基準に合っているかを必ず確かめる必要があります。以前の持ち主が別の自治体で許可を受けていた車でも、自分の地域で同じ許可が出るとは限りません。
車の大きさも大事な判断のポイントです。大きな車は設備を充実させられますが、出店場所によっては入れないことがあります。軽自動車のキッチンカーは小回りがきき、出店できる場所の選択肢は広がりますが、積める設備と食材の量が限られます。売りたいメニューと、出店したい場所の両方から考えて選びましょう。
開業までの準備の段取り
キッチンカーの開業までには、いくつもの準備を並行して進める必要があります。何に時間がかかるのかを知っておくと、無理のない計画が立てられます。
時間がかかりやすいのは、車の製作や改造です。専門の業者に頼む場合、注文から完成までに数か月かかることもあり、人気の時期には待ち時間が延びることもあります。保健所への事前の相談で設備の基準を確かめたら、すぐに車の手配に取りかかるのが効率的です。
食品衛生責任者の養成講習会は、日程が決まっていて、定員があります。車の製作を待つ間に受講を済ませておけば、許可の申請のときに慌てずに済みます。
仕込場所の確保も、思った以上に時間がかかることがあります。シェアキッチンや飲食店の厨房を借りる場合は、使える曜日や時間帯、保健所の扱いを確かめながら交渉を進めるので、早めに候補を探し始めてください。
出店場所の交渉は、許可を受ける前から始められます。許可が下りる時期の見込みを伝えたうえで、出店の条件や申し込みの方法を確かめておけば、許可が下りてすぐに営業を始められます。開業の直後は、売上が安定するまでに時間がかかるので、その間の生活費の見込みも、準備の段階で立てておきましょう。
出店場所の見つけ方
キッチンカー起業で、許可と同じくらい大事なのが出店場所の確保です。どれだけおいしい料理を作れても、売る場所がなければ売上は生まれません。
まず押さえたいのは、道路での販売の決まりです。道路交通法では、場所を移動しないで道路に露店や屋台店などを出そうとする人は、その場所を管轄する警察署長の許可を受けなければならないと定めています。公道に車を止めて販売する形は、交通の妨げになるため、許可を得るのは簡単ではありません。キッチンカーの営業は、私有地や施設の敷地、イベントの会場など、管理する人の許可を得た場所で行うのが基本です。
出店場所を探す方法には、次のようなものがあります。
・商業施設、オフィスビル、マンションの敷地などの管理者と直接交渉する ・地域のお祭りやマルシェ、スポーツの大会などのイベントに出店を申し込む ・キッチンカーと出店場所をつなぐマッチングのサービスに登録する ・自治体や商店街が主催する出店の募集に応募する
出店の条件は、場所ごとに違います。売上の一定割合を出店料として払う形、1日あたりの定額を払う形、無料の代わりに集客の役割を求められる形などがあります。条件を比べるときは、出店料だけでなく、その場所の人の流れ、近くの飲食店との競合、電源や水の有無、雨の日の扱いまで確かめておきましょう。
出店が決まったら、条件を書面やメールで残しておくことも大切です。出店料の金額と支払いの時期、営業できる時間、電源や水の使用の可否、ごみの持ち帰りの決まり、雨天や荒天のときの中止の判断と出店料の扱いを、あらかじめ確かめて記録しておきます。口頭の約束だけで出店すると、当日になって条件が違うと言われても確かめようがありません。継続して出店する場所ほど、最初に条件を整理しておくと、長く良い関係を続けられます。
火を使う調理をする場合は、消防の決まりにも気を配ります。イベントの会場では、消火器の準備や、ガスの器具の扱いについて主催者や消防署から条件が示されることがあります。出店の申し込みの段階で、必要な届出や準備を確かめておくと、当日に慌てずに済みます。
開業の届出と資金の準備
キッチンカーで個人事業として起業する場合は、保健所の許可とは別に、税務署への届出も必要です。開業届の提出期限は、2026年1月1日からの制度の変更により、開業した年分の確定申告の期限までとなっています。あわせて青色申告承認申請書を出しておくと、帳簿をきちんと付けることを条件に、青色申告特別控除を受けられます。青色申告特別控除は原則55万円で、電子帳簿保存か電子申告(e-Tax)による申告をすると65万円になります。
資金は、車の費用、設備の費用、食品衛生責任者の講習や許可の申請の手数料、仕込場所の費用、最初の食材や容器の費用、保険料、そして売上が安定するまでの生活費に分けて考えます。キッチンカーの専門店の案内では、固定の店舗で飲食店を開く場合は1,000万円以上かかることも珍しくない一方で、キッチンカーなら車と設備の初期費用は300万から500万円程度と説明されています。これは目安であり、中古の車を使うか、どこまで設備を整えるかで大きく変わります。
資金を借りる場合は、日本政策金融公庫の創業向けの融資を検討する人が多くいます。融資の相談では、どんなメニューを、どこで、いくらで、1日に何食売る見込みかをまとめた事業計画が求められます。出店場所の見込みと、仕込みの量や原価の計算まで具体的に書けると、計画の説得力が増します。融資の条件は時期によって変わるので、日本政策金融公庫の最新の案内で確かめてください。
保険の準備も欠かせません。食中毒などで来客に損害を与えた場合に備える生産物賠償責任保険、営業中の事故に備える賠償責任保険、そして車の自動車保険です。仕事で使う車は、自家用の保険の条件では補償されないことがあるので、使い方を保険会社に正しく伝えて加入してください。
キッチンカー起業でよくある失敗
キッチンカーの起業では、似たような失敗が繰り返されています。先に知っておけば、同じ落とし穴を避けられます。
いちばん多いのは、車を先に買ってしまう失敗です。安く売られていた中古のキッチンカーを買ったあとで保健所に相談し、給水タンクの容量やシンクの数が自分の地域の基準に合わないと分かって、改造をやり直すことになる、という例です。車は、保健所に相談して基準を確かめてから用意してください。
次に多いのは、出店場所の見込みが甘い失敗です。許可も車もそろったのに、出店できる場所が見つからず、思うように営業日を確保できない、という例です。出店場所の交渉は、車の手配と並行して早めに始めておくのが安全です。
3つめは、メニューを広げすぎる失敗です。客の要望に応えようと品数を増やした結果、仕込みが追いつかず、売れ残りも増えて、手元に残るお金が減ってしまう、という例です。品数を絞り、1品あたりの提供の速さと質を上げるほうが、結果として売上は安定します。
4つめは、記録を付けない失敗です。売上と経費の記録を後回しにすると、どのメニューが利益を生んでいるのか、どの出店場所が採算に合っているのかが分からなくなります。確定申告の時期に慌てないためにも、営業した日のうちに記録を付ける習慣をつけておきましょう。
許可を受けたあとの日々の管理
営業許可を受けたあとも、日々の管理を続けることが、営業を続けるための前提になります。
衛生管理計画に沿った記録は、営業する日ごとに付けます。冷蔵や保冷の温度、加熱の確認、手洗いと器具の消毒の実施を、決まった用紙やアプリに記録しておけば、保健所の確認があったときにもすぐに示せます。
営業の大要に書いた内容が変わったときは、変更の届出が必要です。仕込場所を移した、車を替えた、取り扱う品目を追加した、といった場合は、保健所に確かめて手続きを済ませてから営業してください。許可の有効期間が近づいたら、期限が切れる前に継続の申請を行います。
売上を安定させるための工夫
開業してから多くの人が直面するのが、日によって売上が大きく変わることです。天気、曜日、イベントの有無で来客の数は大きく動きます。売上を安定させるための工夫を整理しておきます。
1つめは、メニューの絞り込みです。キッチンカーは設備と場所が限られているので、メニューを増やしすぎると仕込みも在庫の管理も難しくなります。看板になる1品を決め、そのほかは2品から3品に絞ると、提供の時間が短くなり、行列をさばけるようになります。
2つめは、出店場所の組み合わせです。平日はオフィス街の昼食の時間、週末はイベント、というように、曜日ごとに違う種類の場所を組み合わせると、売上の波をならせます。同じ場所に定期的に出店すると、常連の客が付きやすくなる利点もあります。
3つめは、記録を付けることです。日ごとの売上、来客の数、天気、売れたメニュー、売れ残りの量を記録しておくと、仕込みの量や出店場所の判断の精度が上がります。記録が半年にわたってたまれば、季節ごとの傾向も見えてきます。記録は紙のノートでも表計算のソフトでも構いませんが、毎回同じ項目を同じ順番で書くことが、あとで見返すときの手間を減らします。
4つめは、発信です。出店の予定をSNSで知らせると、常連の客が足を運んでくれます。写真の撮り方や、出店の予定の伝え方を工夫するだけで、来客の数は変わります。出店の前日と当日の朝に、場所と営業時間とその日のメニューを短く知らせる、という決まった型を作っておくと、忙しい日でも発信を続けやすくなります。
雨の日と冬場への備え
キッチンカーは屋外での営業が中心なので、天気の影響を強く受けます。売上が落ちる日をどう乗り切るかを、開業の前から考えておくことが大切です。
雨の日は、来客の数が大きく減るだけでなく、出店そのものが中止になることもあります。イベントの出店では、雨天の中止のときに出店料が戻るのか、仕込んだ食材をどうするのかを、申し込みの段階で確かめておきます。仕込みの量を天気予報で調整する、日持ちのする食材を中心にメニューを組む、といった工夫で、雨の日の損失を小さくできます。
冬場は、屋外で待つ客が減り、営業できる時間も短くなります。温かい汁物や飲み物を加える、屋内の催しや商業施設の屋根のある場所での出店を増やす、といった工夫が考えられます。給水の設備が凍らないような管理も、寒い地域では欠かせません。
売上が落ちる時期に備えて、ケータリングや会社の行事への出張の販売など、天気に左右されにくい仕事を組み合わせる人もいます。事前に注文の数が決まっている仕事は、仕込みの無駄も少なく、売上の見通しを立てやすいのが利点です。
会社員の副業として週末だけ始める場合
会社員として働きながら、週末だけキッチンカーで営業したいと考える人もいます。副業として始める場合に確かめておきたい点を整理します。
まず、勤め先の就業規則です。副業を認めているか、届出が必要か、同じ業種での副業に制限があるかを確かめてください。厚生労働省のモデル就業規則では、副業や兼業を原則として認めつつ、労務の提供に支障がある場合などは禁止や制限ができるとされていますが、実際の扱いは会社ごとに違います。
次に、税金です。副業の所得があると、所得税の確定申告が必要になる場合があります。給与を受けている人で副業の所得が年20万円以下なら所得税の確定申告が不要になる場合がありますが、これは所得税だけの話で、住民税の申告は別に必要です。キッチンカーの営業は事業として開業届を出すかどうかも含めて、扱いは本人の状況や金額で変わるので、税務署や市区町村の窓口で確かめてください。
最後に、体力と時間の配分です。週末の営業は、前日の仕込み、当日の移動と営業、翌日の片付けと記録まで含めると、平日の仕事と合わせて休みがほとんど無くなることもあります。最初は月に数回の出店から始め、無理なく続けられる頻度を探るのが現実的です。
公開データから見るキッチンカー起業と周辺の仕事
最後に、キッチンカーの起業を支える周辺の力と、関連する仕事について整理します。
キッチンカーの集客では、SNSでの発信と、地図のサービスへの情報の登録が大きな役割を果たします。出店の予定、メニューの写真、営業時間を分かりやすく発信し続けることで、移動しながらでも常連の客をつなぎとめられます。こうした発信や集客を支える仕事の広がりは、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で紹介しています。
売上や在庫の記録を、表計算のソフトやAIの道具で分析する方法も広がっています。天気や曜日と売上の関係を整理し、仕込みの量を決める材料にする、といった使い方です。業務にAIを取り入れる支援の仕事については、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で紹介しています。
出店の交渉や融資の相談では、事業計画書や出店の提案書を書く力が問われます。読み手が判断しやすい文書を書く力は、キッチンカーの起業でも大きな武器になります。実務の文書の書き方を体系的に学べる検定の概要は、ビジネス文書検定で紹介しています。また、キッチンカーの起業の経験を、記事として発信する仕事につなげる人もいます。文章を書く仕事の年収の分布は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。
フリーランスと小さな事業の市場を長く見てきた運営者の立場から言えば、移動しながら商売をする人ほど、取引先との直接の関係を大切にしています。出店場所の管理者、イベントの主催者、仕込場所を貸してくれる店、そして常連の客。間に入る人が少ないほど、条件の相談もしやすく、互いに長く付き合える関係になりやすいものです。
仲介の手数料がかからない直接の取引は、原価や出店料がかかるキッチンカーの商売ほど効いてきます。依頼する側は同じ予算でより多くの出店やケータリングを頼め、受ける側は手数料0%なので手取りが厚くなります。保健所への事前の相談から始めて、許可、仕込場所、出店場所を一つずつ固めていくことが、キッチンカー起業を確実に進める近道です。
よくある質問
Q. キッチンカーで起業するには何から始めればよいですか?
売るメニューと営業する地域を決めたら、車を用意する前に、営業する地域を所管する保健所に事前に相談してください。車内でできる調理の範囲、給水タンクの容量、手洗いの設備などの基準は、メニューと自治体で変わります。基準を知らずに車を用意すると、改造のやり直しで費用と時間が余計にかかります。
Q. キッチンカーの営業に必要な資格は何ですか?
施設ごとに食品衛生責任者を選任する必要があります。調理師や栄養士などの資格を持っていない人は、都道府県の食品衛生協会などが開く養成講習会を修了すると食品衛生責任者になれます。そのうえで、扱う食品に合った営業許可(飲食店営業など)を保健所から受けます。必要な許可の種類は保健所に確かめてください。
Q. 公道にキッチンカーを止めて販売できますか?
道路交通法では、場所を移動しないで道路に露店や屋台店などを出す場合、その場所を管轄する警察署長の許可が必要と定めています。公道での販売は交通の妨げになるため、許可を得るのは簡単ではありません。キッチンカーの営業は、商業施設の敷地やイベントの会場など、管理する人の許可を得た場所で行うのが基本です。
Q. 自宅の台所を仕込場所にできますか?
家庭の台所は、営業の施設の基準を満たさないのが一般的です。営業許可を受けた飲食店の厨房を借りる、シェアキッチンを使う、仕込み用の施設を作る、といった方法があります。仕込場所に別の営業許可が必要になる場合もあるので、どの方法が認められるかは、事前の相談で保健所に確かめてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
松本 あゆみ@SOHO編集部
元看護師・医療系ライター
大学病院で看護師として8年間勤務。介護福祉士の資格も取得し、医療・介護両方の現場を知る立場から、ヘルスケア系の記事を執筆しています。
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