建築・図面デザインの案件の取り方は、提案文に載せる図面の枚数で変わる


この記事のポイント
- ✓建築・図面デザインの案件の取り方を
- ✓提案文に載せる図面の枚数という具体的な切り口から整理しました
- ✓提案時に守秘義務でつまずかないための注意点までまとめています
建築・図面デザインの案件の取り方について、相談を受けるときに必ず確認することがあります。「提案文に、図面を何枚載せていますか」という質問です。
返ってくる答えは、たいてい両極端に分かれます。1枚も載せていないか、10枚以上まとめて添付しているか。そしてどちらも、通過率が上がりにくい出し方なんです。これ、知らない人が本当に多い。
結論を先に書きます。提案文に載せる図面は3枚を基準にして、その3枚に役割を持たせてください。枚数そのものより「何を見せるために選んだ図面か」が伝わることが、通過を左右します。
つまり、案件が取れないのは腕の問題ではなく、見せ方の設計の問題であることが多いということです。この記事では、その設計の中身と、提案から契約までの手順、そして提案の段階で気をつけたい法的な注意点まで順に見ていきます。
提案文でつまずく、二つの典型的な失敗
まず、うまくいかない出し方の中身を押さえておきましょう。
一つ目は、図面を載せずに文章だけで応募する失敗です。「AutoCADの実務経験が5年あります」「住宅の意匠設計に携わっていました」と書いてあっても、発注者の側からは作図の精度が判断できません。
発注者が本当に知りたいのは、経歴ではなく「この人に渡した図面が、どんな状態で返ってくるか」です。文章はこれに答えられません。つまり、経歴だけの提案文は、発注者にとって判断材料がゼロの提案文なんです。
二つ目は、逆に大量の図面を添付する失敗です。過去の作品を10枚も20枚もまとめたPDFを送る。熱意は伝わりますが、これも通過率は上がりにくい。
理由は単純で、発注者に見る時間がないからです。募集をかけている発注者は、複数の応募をさばいています。1件あたりにかけられる時間は数分です。20枚のPDFを開いた時点で、後回しにされます。
そしてもう一つ、量を出すことには別のリスクもあります。玉石混交の図面が混ざっていると、発注者は最も出来の悪い1枚で判断します。人は良いものより悪いものに目が留まるからです。20枚のうち2枚が雑だったら、その提案文は雑な人の提案文として記憶されます。
なぜ枚数が結果を変えるのか
発注者が提案文を読む状況を、具体的に想像してみてください。
パソコンの前で、届いた応募を上から順に開いていきます。開いて、数十秒眺めて、次に進むか保留にするかを決める。この時点で判断しているのは、細かい作図の巧拙ではありません。「この人に頼めそうか」という大まかな感触です。
その感触を作るのは、実は図面の枚数ではなく、図面と説明の対応関係です。3枚の図面それぞれに「これは何を見ていただくためのものか」という一行が添えられていると、発注者は迷わず見るべきところを見られます。逆に20枚を無言で添付されると、どこを見ればいいのか分かりません。
つまり、提案文の図面は作品集ではなく、説明のための資料だということです。この立て付けが変わるだけで、同じ図面でも伝わり方が変わります。
もう一点、業務委託でパートナーを募る側がどんな人材を求めているかを見ておきましょう。設計事務所が外部の人に業務を委託する動機は、こう整理されています。
専門性を活かせる。CGパース・構造・設備・広報など特定の専門性を持つ人材が最も活躍できる働き方です。 出典: kawazoe-architects.com
「特定の専門性を持つ人材」という部分が重要です。発注側は、何でもできる人ではなく、この案件に必要なことができる人を探しています。ですから提案文で示すべきなのは幅広さではなく、募集内容との一致です。この観点で選ぶと、載せる図面は自然に絞られます。
3枚それぞれに、役割を持たせる
では具体的に、どの3枚を選ぶか。役割で決めてください。
1枚目は、募集内容と最も近い図面
木造住宅の平面図を求めている募集なら、木造住宅の平面図を。店舗の内装図なら店舗の内装図を。用途も縮尺もできるだけ揃えます。
ここで「もっと難しい仕事もできます」と、規模の大きい物件の図面を出したくなるのですが、逆効果になることが多い。発注者は「今回の案件と同じことができるか」を見ているので、違う種類の図面を見せられると照合ができません。つまり、背伸びした1枚より、募集に一致した1枚のほうが強いということです。
近い図面が手元にない場合は、募集内容に寄せて描き起こすほうが確実です。手間はかかりますが、通過率への効きは大きい。
2枚目は、作図の作法が読み取れる図面
作図の実力は、意匠のセンスではなく作法に現れます。線種の使い分け、寸法線の配置、文字の大きさの統一、通り芯の振り方、レイヤーの整理。実務経験のある人が図面を見るとき、真っ先に確認するのはここです。
ですから2枚目は、部分的な拡大図でも構いません。矩計図や部分詳細図のように、細かい表現が必要な図面のほうが作法は伝わります。全体像より、細部です。
このとき、可能であればCADデータの構造が分かるスクリーンショットを添えると、さらに効きます。レイヤー分けが整理されているかどうかは、受け取った側の作業効率に直結するからです。発注者にとっては、そこが「渡した後で楽か大変か」の分かれ目になります。
3枚目は、修正の履歴が分かる図面
これを載せている人は少ないのですが、効果が高い1枚です。
同じ図面の修正前と修正後を並べて、「この指示に対してこう直しました」と一行添える。発注者が知りたいのは、初回の完成度だけではありません。修正指示をどう受け取り、どう反映するかです。図面の仕事は必ず修正が発生します。だから、修正を扱える人だと分かる資料は、初回の作図力を示す資料と同じくらい重視されます。
修正前後を出せる素材がない場合は、自分で描いた図面に対して「もし施主から動線を変えたいと言われたら」と仮定して直したものでも構いません。仮定であることを明記すれば、誤解は生じません。
4枚目以降は、リンクで置く
3枚で足りないと感じるなら、残りは添付せず、まとめて見られる場所へのリンクを一行添えてください。「他の作例はこちらでご覧いただけます」と書いておけば、興味を持った発注者だけが見に行きます。
これで、時間のない発注者には3枚、じっくり見たい発注者には全部、という両立ができます。提案文の本体を軽く保つことが、開いてもらうための条件です。
提案文の本文には、工程の説明を書く
図面が決まったら、本文です。ここでも書くべき内容は決まっています。
多くの人は、本文に経歴と意欲を書きます。「5年の経験があります」「精一杯取り組みます」。悪くはないのですが、他の応募者と差がつきません。
代わりに書いていただきたいのが、工程の説明です。この案件をどういう手順で進めるか、初回提出までに何日かかるか、修正はどのくらいで返せるか、どの段階で確認をもらいたいか。この四点を書きます。
なぜこれが効くのか。発注者が外注に不安を感じる最大の理由は、進捗が見えないことだからです。工程を先に示されると、発注者は自分のスケジュールを引けます。つまり、提案文の段階で「この人に頼むと予定が立つ」と感じてもらえる。ここで差がつきます。
さらに、確認したい点を質問として一つか二つ添えると印象が変わります。「支給いただける資料の形式はDWGでしょうか」「既存図と現況に相違がある場合、どちらを優先しますか」といった実務的な質問です。この質問が出せるかどうかで、実務が分かっている人かどうかが判断されます。
案件ごとの実際の作業内容を把握しておきたい場合は、建築・インテリア・図面デザインのお仕事に工程別の中身が整理されています。募集文に書かれていない前提を読み取るための土台になります。
どこで案件を探すか、市場の構造を押さえる
提案の作り方が固まったら、次は出す先です。案件の入り口は大きく三つに分かれます。
一つ目が、クラウドソーシング型のサービスです。案件数が多く、応募のハードルが低いのが利点です。実際、平面図や設計図の案件を扱う場も用意されています。
平面図作成・その他設計図の仕事・案件一覧ページです。クラウドソーシング・アウトソーシングに強いランサーズでは、平面図作成・その他設計図の仕事情報の検索から納品、報酬の受け取りまで、すべて完結します。時間や場所にとらわれず、在宅や副業などさまざまな働き方を実現可能です。 出典: lancers.jp
一方で、この型は応募が集中しやすく、報酬から手数料が引かれます。実績を作る期間の入り口としては有効ですが、ここだけに依存すると手取りが伸びにくい構造になります。
二つ目が、設計事務所や工務店のパートナー募集に直接応募する型です。募集の数は多くありませんが、継続的な取引になりやすい。委託側から見たメリットも明確に語られています。
設計事務所のパートナーとして業務委託で働くことには、以下のメリットがあります。複数のプロジェクトに関われる。1つの事務所に縛られず、複数の設計事務所のプロジェクトに携わることで、多様な設計思想・建築タイプを経験できます。時間の自由度が高い。育児・介護・他の仕事との両立がしやすい。スポット対応・短期契約から始められます。 出典: kawazoe-architects.com
スポット対応から始められるという点は、副業として様子を見ながら関わりたい人にとって現実的です。
三つ目が、在宅ワーク向けの求人・業務委託マッチングサービスです。仲介手数料の扱いはサービスによって異なるので、応募前に確認しておいてください。手数料の差は、そのまま手取りの差になります。
提案から契約までの、五つの手順
流れを手順として整理します。
第一に、募集文を最後まで読んで、求められている成果物と形式を書き出します。DWGなのかPDFなのか、縮尺は何か、いつまでか。ここを読み落とした提案は、内容が良くても外されます。
第二に、書き出した条件に一致する図面を3枚選びます。無ければ描き起こします。
第三に、工程の説明と質問を添えた本文を書きます。初回提出日、修正の返却日数、確認をもらいたい段階を明記します。
第四に、提出前に守秘義務の確認をします。この項目は次の節で詳しく書きます。
第五に、受注が決まったら、契約の条件を書面またはメールで残します。業務内容、報酬額、支払期日、修正の範囲、成果物の権利の扱い。口頭だけで進めないでください。
この五つのうち、副業で始める人が飛ばしがちなのが第四と第五です。ですが、後からトラブルになるのはほぼこの二つです。急がば回れ、という言葉がそのまま当てはまります。
提案の段階で気をつけたい、法的な注意点
ここは特に丁寧に書きます。行政書士として相談を受ける中でも、事故が起きやすいのが提案の段階だからです。
まず、過去に携わった実務の図面をそのまま提案文に載せてよいかという問題があります。多くの設計案件では、施主や元請との間に守秘義務の取り決めがあります。加えて図面には、施主の氏名、住所、家族構成、間取りといった情報が含まれます。個人情報そのものです。
ですから、実務図面を提案に使う場合は、原則として権利者の許諾を取ってください。許諾が取れない場合は、施主が特定できる情報を消し、寸法や配置を変えて、元の物件が識別できない状態にする。それでも不安が残るなら、その図面は使わず、自主制作の図面を用意するほうが安全です。
※どこまで加工すれば問題ないかは、契約書の文言や案件の性質によって変わります。判断に迷うケースでは、契約書を持って弁護士や所属先の法務担当に相談してください。ここは自己判断で押し切らないほうがよい領域です。
もう一点、受注後の書面についても触れておきます。フリーランスとの取引については、2024年11月に施行された、いわゆるフリーランス・事業者間取引適正化等法があり、発注者に対して取引条件の明示などが求められています。制度の具体的な内容や適用範囲は、公正取引委員会や厚生労働省の案内で確認してください。細かい要件は運用の中で整理されていく部分もありますので、最新の情報に当たるのが確実です。
法律はあなたの味方ですが、味方になってもらうには、条件を記録に残しておく必要があります。メール一通でも記録は記録です。
単価をどう提示するか
提案文で報酬額を書く場面もあります。相場感を持たずに出すと、安すぎて自分が疲弊するか、高すぎて外されるかのどちらかになります。
業務委託の報酬水準については、こういう整理があります。
業務内容・難易度・経験により異なります。設計補助で時給換算3,000〜5,000円、意匠設計担当で5,000〜10,000円程度が目安。スポット対応(短期・単発)から長期パートナーシップまで、双方の合意で決定します。 出典: kawazoe-architects.com
設計補助で時給換算3,000〜5,000円、意匠設計担当で5,000〜10,000円という幅です。作図中心の案件はこの下側から入ることが多くなります。職種としての年収水準は建築技術者の年収・単価相場で確認できますので、提示額が市場のどこに位置するかを照らし合わせておくとよいでしょう。
金額を出すときは、作業時間の見積もりを添えてください。「この内容ですと8時間程度を見込んでおり、3万円でお願いしたいです」という形です。根拠のある金額は交渉になりますが、根拠のない金額は比較されるだけで終わります。
出した後の動き方と、応募数の考え方
提案は出して終わりではありません。出した後の扱い方でも、結果は変わります。
まず、返信が来ない場合です。募集の締切から数日経っても連絡がないなら、そのまま追わないでください。催促は印象を悪くしますし、選ばれなかった案件を追う時間があるなら、次の提案を作るほうが効率的です。
ただし例外が一つあります。やりとりが始まっていて、条件の確認まで進んでいた案件が途中で止まった場合です。この場合は1回だけ、「他の案件との調整のためお伺いしたいのですが、本件は進行中でしょうか」と確認を入れてよいと考えます。こちらの都合を理由にすると、催促の形になりません。
次に応募数です。副業として始める段階では、通過率を気にするより本数を出すほうが早く進みます。ただし3枚の選定と工程の説明を毎回作り直していると、時間がいくらあっても足りません。
そこで、本文の骨格をひな型にしておいてください。工程の説明、修正の返却日数、質問の型は案件が変わってもほぼ同じです。案件ごとに差し替えるのは、募集内容に一致させる1枚目の図面と、冒頭で募集内容に触れる数行だけ。この形にすると、1件あたりの作成時間が大きく下がります。
そしてもう一つ、提案の記録を残してください。いつ、どの案件に、どの3枚を添えて出したか。通過した案件と外れた案件を並べて見ると、どの図面が効いているかが見えてきます。感覚ではなく記録で調整すると、修正の方向を間違えません。
応募する案件を、出す前に選別する
提案の質を上げるより先に効くのが、出す案件を絞ることです。通らない案件に丁寧な提案を出しても、時間だけが減ります。募集文を読んだ段階で見分けられる要素がいくつかあります。
第一に、成果物の形式が書かれているかどうかです。データ形式、縮尺、レイヤーの扱い、提出の締切。これらが具体的に書かれている募集は、発注側が図面を扱い慣れている証拠です。逆に「図面を作れる方募集」とだけ書かれている募集は、要件が固まっていないことが多く、着手後に条件が増えます。
第二に、報酬の書き方です。金額または算定の基準が示されているか、それとも「経験に応じて相談」だけか。後者がすべて問題というわけではありませんが、提案の段階でこちらから金額を出す必要があるため、作成の手間が増えます。応募数を稼ぎたい時期には、条件が明示された案件を優先するほうが効率的です。
第三に、修正の扱いです。修正回数や範囲について何も書かれていない募集は、着手前に必ず確認してください。確認に対する返答の速さと具体性で、その後の進め方もおおよそ読めます。
第四に、募集の掲載期間と応募状況です。掲載直後の案件は候補が少なく、目を通してもらえる確率が上がります。締切間際に出す提案は、すでに候補が絞られた後に届くため、内容が良くても検討されないことがあります。案件を探す時間帯を朝に固定して、新着から順に見る習慣をつけておくと、この差が積み上がります。
選別の基準を持つと、応募先の数はいったん減ります。それで構いません。通過率が上がれば、同じ時間で得られる仕事は増えます。
名乗り方と、経歴欄の整え方
提案文と一緒に見られているのが、応募者としての経歴欄です。ここが空欄に近い状態だと、図面が良くても判断材料が足りないと見なされます。
書くべき項目は多くありません。扱えるソフトとその年数、経験のある建物の用途、対応できる図面の種類、稼働できる時間帯、返信の目安です。この5つが揃っていれば、発注側は依頼できるかどうかを判断できます。
扱えるソフトは、名称だけでなく版と出力形式まで書いてください。互換の問題で受け渡しがうまくいかない事例は珍しくありません。先に書いてあれば、そこで合わない相手とは最初から当たらずに済みます。
経験のある用途は、住宅、店舗、事務所、集合住宅といった区分で書きます。得意分野を絞ることを恐れる必要はありません。募集側は、自分の案件に近い経験を持つ人を探しています。範囲を広く見せると、かえって誰の記憶にも残りません。
稼働時間と返信の目安は、副業として受ける場合ほど重要になります。平日の日中に連絡が取れないことを最初に書いておけば、それを前提に依頼が来ます。書かずに受注してから伝えると、期待を裏切る形になります。
守秘義務に配慮している旨を一行添えておくのも有効です。図面を扱う仕事では、情報の扱いに対する意識が信用の一部になります。前職の内容を具体的に書きすぎない姿勢そのものが、判断材料として見られていると考えてください。
質問の作り方が、返信の来る提案と来ない提案を分ける
提案文に質問を添えるとよい、という話はよく聞きます。しかし、質問なら何でもよいわけではありません。返信を呼ぶ質問と、相手の手間を増やすだけの質問があります。
返信を呼ぶのは、こちらの仮説を添えた質問です。たとえば「縮尺は100分の1と想定していますが、印刷の都合で50分の1が必要でしたらお知らせください」という形。相手は是か非かを答えるだけで済みます。
反対に「どのような図面をご希望ですか」という質問は、相手に説明の労力を丸ごと預ける形になります。募集文に書かれている範囲で答えられることを聞き返すのも同様で、読んでいないという印象につながります。
質問の数は2つか3つに抑えてください。多いほど熱意が伝わるということはなく、むしろ着手前の確認が多い人だと受け取られます。優先度の高い順に並べ、それぞれ一行で書く。長い前置きは削って構いません。
質問の内容は、成果物に直接関わるものを選びます。データの受け渡し方法、既存図面の有無、確認をもらう段階の回数。これらは工程の組み立てに直結するため、聞かれた側も答える意味を感じます。逆に、報酬の支払時期や契約の形式に関する質問は、条件の擦り合わせが始まってからのほうが自然です。
質問に対する返答が届いたら、その内容を反映した工程表を短くまとめて返してください。ここまでのやり取りが1往復で成立すると、相手はこの人と進めた場合の様子を具体的に想像できます。提案が選ばれる瞬間は、たいていこの想像ができたときです。
なお、質問を添えるかどうかを迷う場面もあります。募集文に条件がすべて書かれていて、確認すべき点が見当たらない案件です。その場合は無理に質問を作らず、こちらの理解を1行で確認する形にしてください。「提出はDWGとPDFの両方、初回は着手から5日後の想定で進めます」と書けば、認識のずれがあれば相手から訂正が入ります。質問の形式を取らなくても、確認の役割は果たせます。
20年市場を見てきた立場からの観察
在宅ワークと業務委託の市場を20年運営してきた立場から、案件の取り方について一つ観察を書いておきます。
継続的に案件が入っている人は、提案の巧さで勝っているわけではありません。1件目の仕事の返し方で、2件目以降を取っています。図面に修正版の日付を入れる、変更箇所を色分けする、判断が必要な点を質問としてまとめて送る。この積み重ねが、次の発注につながっています。
言い換えると、提案文は入り口の鍵にすぎず、収入の安定を作っているのは納品後の振る舞いだということです。だから提案文に時間をかけすぎるより、3枚を的確に選んで早く出し、取れた案件を丁寧に返すほうが、結果として案件数は増えます。
もう一つ、中間マージンが乗らない直接取引を長く見てきて感じるのは、これが受け手だけの得ではないという点です。手数料が抜けない分、依頼側は同じ予算でもう一件多く頼めます。受け手は同じ作業量で手取りが厚くなる。手数料0%の意味は、金額表の数字よりも、双方が無理をせず関係を続けられるところにあります。案件の取り方を考えるとき、一回の受注額だけでなく、この構造の差も見ておいてください。
3枚を選び直すところから始める
整理します。案件が取れないとき、まず疑うべきは腕ではなく提案文の構成です。図面ゼロは判断材料がなく、20枚は開いてもらえません。募集に一致した1枚、作図の作法が分かる1枚、修正の履歴が分かる1枚。この3枚に役割を持たせ、本文には工程と質問を書く。
そして提案の前に守秘義務を確認し、受注後は条件をメールで残す。この二つを飛ばさないでください。
在宅で成果物が完結する仕事は建築分野だけではありません。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事や作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事も、提案の考え方は同じ構造です。文章方面に広げるなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場で相場を、IT側に広げるならCCNA(シスコ技術者認定)のような資格が入り口になります。提案文そのものの書き方を底上げしたい場合はビジネス文書検定のような文書系の基礎も効きますし、在宅で評価されやすい資格の全体像は在宅ワークに強い資格10選|自宅で稼げるスキルを身につけるにまとまっています。作業環境を整えるなら在宅ワークに最適なネット回線|光回線vsホームルーターの選び方も併せて確認しておくとよいでしょう。
よくある質問
Q. 提案文に載せる図面は何枚が適切ですか?
3枚を基準にしてください。募集内容と最も近い用途・縮尺の図面、線種や寸法など作図の作法が読み取れる図面、修正前後が分かる図面の3枚です。それ以上は本文に添付せず、まとめて見られる場所へのリンクを一行添えます。20枚の一括添付は開いてもらえず、最も出来の悪い1枚で判断されます。
Q. 提案文の本文には何を書けばいいですか?
経歴や意欲より、工程の説明を書いてください。進め方の手順、初回提出までの日数、修正の返却日数、確認をもらいたい段階の四点です。加えて資料の形式や既存図との相違の扱いなど、実務的な質問を一つか二つ添えると、実務経験の有無が伝わります。
Q. 過去に仕事で描いた図面を、そのまま提案文に載せてもいいですか?
原則として権利者の許諾が必要です。多くの案件には守秘義務の取り決めがあり、図面には施主の氏名や住所などの個人情報も含まれます。許諾が取れない場合は物件を識別できない程度まで加工するか、自主制作の図面を用意してください。判断に迷うときは契約書を持って弁護士等に相談を。
Q. 案件はどこで探すのが有利ですか?
入り口は三つあります。案件数が多く応募しやすいクラウドソーシング型、継続取引になりやすい設計事務所のパートナー募集、そして在宅ワーク向けの求人・業務委託マッチングサービスです。手数料の扱いはサービスごとに異なり、そのまま手取りの差になるため応募前に確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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