一人親方の共済会で入れる補償の中身と、労災特別加入との違い


この記事のポイント
- ✓一人親方共済会に入ると何が補償されるのかを
- ✓国の労災保険の特別加入
- ✓会独自の共済や民間保険
元請けから「現場に入るなら労災の加入証明を出して」と言われ、一人親方共済会を検索すると、似た名前の団体がずらりと並びます。年会費の安さを打ち出すところ、即日加入をうたうところ、独自の共済金を上乗せするところ。どれも「共済会」を名乗っているので、何が違って、どこに入れば自分が守られるのかが分かりにくいのが実情です。
これ、知らない人が本当に多いのですが、一人親方共済会の多くが扱っている補償の中心は、会が独自に作った保険ではなく、国の労災保険の「特別加入」です。つまり、どの共済会を通しても国から出る給付の中身は同じで、違いが出るのは会費、手続きの速さ、会が独自に用意する上乗せの補償の3つです。この記事では、その仕組みを分解したうえで、補償されない場面、似た名前の別制度、会を選ぶときの確認点までを順に整理します。
一人親方共済会の正体は「特別加入団体」であることが多い
まず言葉の整理です。一人親方とは、労働者を雇わずに自分1人(または家族と)で仕事を請け負う職人のことです。大工、左官、とび、内装、電気工事などの職人が典型です。会社に雇われている労働者は、会社が労災保険に入っているので、仕事中のけがは当然に労災の対象になります。ところが一人親方は雇われていないので、原則として労災保険の外にいます。
この穴を埋めるのが、労災保険の特別加入という制度です。特別加入とは、本来は労災保険の対象外である事業主や自営業者のうち、仕事の実態が労働者に近い人に、任意で労災保険へ入る道を開いた仕組みのことです。厚生労働省の「特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)」では、加入の手続きについて次のように説明しています。
一人親方等の特別加入については、一人親方等の団体(特別加入団体)を事業主、一人親方等を労働者とみなして労災保険の適用を行います。特別加入の手続きは、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が行うことになっています。 出典: 厚生労働省 特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)
つまり、一人親方は個人で労働基準監督署に行っても、単独では特別加入できません。必ず、労働局長の承認を受けた団体に入り、その団体を「事業主」、自分を「労働者」とみなしてもらう形で労災保険に入ります。この団体が、世の中で「一人親方共済会」「一人親方組合」「労災センター」などと名乗っているものの多くです。
ここで押さえておきたいのは、団体の名前に「共済」と付いていても、国の労災保険の部分は共済会が独自に運営している保険ではないという点です。保険料は国に納められ、事故が起きたときの給付も国(労働基準監督署)が決めて支払います。共済会は、加入や更新、事故のときの請求書類の手続きを代わりに行う窓口の役割を担っています。
一方で、会によっては、国の労災とは別に、会員向けの見舞金や民間の傷害保険を独自に用意しているところもあります。この部分は国の制度ではないので、中身も金額も会ごとにまったく違います。共済会の比較が分かりにくくなる最大の理由は、国の労災の部分と、会独自の上乗せの部分が、パンフレットの上で区別されずに並んでいることにあります。
特別加入できる一人親方の条件
建設業の一人親方として特別加入できるのは、労働者を使わずに、土木・建築その他の工作物の建設、改造、修理、解体などの事業を行うことを常態としている人です。大工、左官、とび職人などがしおりの例に挙がっています。電気主任技術者の免状を持ち、委託契約で自家用電気工作物の保安を担う電気管理技術者も含まれます。
「労働者を使わない」という条件には例外があります。しおりには、次の注記があります。
労働者を使用する場合であっても、労働者を使用する日の合計が1年間に100日に満たないときには、一人親方等として特別加入することができます。 出典: 厚生労働省 特別加入制度のしおり 全体版(PDF)
つまり、繁忙期に手伝いを数日頼む程度であれば、一人親方として入れます。反対に、年間を通して職人を雇っているなら、一人親方ではなく中小事業主として、自分の会社で労災保険に入ったうえで事業主として特別加入する形になります。この区別を間違えると、いざ事故が起きたときに加入の前提が崩れるので、雇っている日数は正直に申告してください。
家族と一緒に仕事をしている場合、その家族も「一人親方等」の範囲に含めて特別加入できます。夫婦で内装を請け負っている、親子で大工をしているといった形は珍しくありません。家族の分も加入しておかないと、家族が現場でけがをしたときに補償がないという事態になります。
加入にあたって健康診断が必要になる人もいます。粉じん作業に通算3年以上、振動工具を使う業務に通算1年以上、鉛業務や有機溶剤業務に通算6か月以上従事したことがある人は、加入前に指定の健康診断を受ける必要があります。はつり作業やグラインダーを長く使ってきた職人は、該当するかどうかを先に確認しておきましょう。
国の労災から出る給付の中身
特別加入した一人親方が仕事中や通勤中にけがをしたり病気になったりしたときは、労働者とほぼ同じ給付が国から出ます。しおりの表にある主な給付を、初めての人向けに言い換えて整理すると次のとおりです。
| 給付の種類 | どんなときに出るか | 中身 |
|---|---|---|
| 療養(補償)等給付 | 仕事や通勤のけが・病気で治療を受けるとき | 労災指定病院なら治療が無料。それ以外の病院は治療費が後から支給 |
| 休業(補償)等給付 | 治療のため働けない日が4日以上になったとき | 4日目から1日につき給付基礎日額の60%、さらに特別支給金20% |
| 障害(補償)等給付 | 治った後に障害が残ったとき | 等級に応じて年金または一時金 |
| 傷病(補償)等年金 | 1年6か月たっても治らず、重い状態が続くとき | 等級に応じた年金 |
| 遺族(補償)等給付 | 亡くなったとき | 遺族の人数に応じた年金または一時金 |
| 葬祭料 | 亡くなって葬儀を行うとき | 31万5千円に給付基礎日額の30日分を加えた額など |
給付基礎日額とは、保険料と給付の両方を計算するもとになる「1日あたりの収入の見なし額」のことです。自分で選んで申請し、労働局長が決めます。たとえば給付基礎日額を1万円にしていれば、20日間休んだときの休業の給付は、1万円×60%×(20日から最初の3日を引いた17日)で10万2千円、これに特別支給金が1万円×20%×17日で3万4千円加わります。この計算例はしおりの表にそのまま載っているものです。
治療費が無料になる療養の給付は、給付基礎日額をいくらにしても中身は同じです。給付基礎日額の高い低いが効いてくるのは、休業、障害、遺族など、お金で支払われる給付のほうです。
建設業の一人親方は、通勤中の事故も補償の対象です。しおりでは、通勤災害の保護から外れているのは個人タクシー・個人貨物運送業者と漁船による自営漁業者だけで、建設業の一人親方は一般の労働者と同じ扱いになっています。自宅から現場への移動中に車の事故にあった、というケースにも備えられるということです。
補償されない場面を先に知っておく
特別加入の給付は、労働者とまったく同じ範囲で出るわけではありません。ここを知らずに入って、「入っていたのに出なかった」と揉める相談は少なくありません。
1つめは、業務の範囲です。しおりでは、建設業の一人親方等について、補償の対象になる業務を次のように限っています。請負契約に直接必要な行為、請負工事現場での作業とそれに直接付随する行為、請負契約に基づくことが明らかな作業を自宅の作業場で行う場合、請負工事に使う機械や製品を運ぶ作業、台風や火災などの突発事故で予定外に緊急で出勤する場合です。
つまり、請負契約と結びつかない作業は対象外になりえます。たとえば、自宅の作業場で自分の家具を作っていてけがをした、知人の家の修理を契約もなく手伝ってけがをした、といった場面は、仕事との結びつきを説明しにくくなります。見積書や注文書、請負契約書を残しておくことは、取引上のトラブル防止だけでなく、労災の場面でも自分を守る記録になります。
2つめは、休業の給付の条件です。しおりの注記には、特別加入者の休業の給付は「全部労働不能」であることが必要だと書かれています。全部労働不能とは、入院中や自宅で寝て療養している、または通院して治療中で、補償の対象となっている仕事がまったくできない状態のことです。指をけがして重い作業はできないが、見積もりや段取りの仕事はしている、という状態だと、休業の給付が認められない可能性があります。労働者のように「出勤できなかった日」で単純に数えるのとは違う、と覚えておいてください。
3つめは、支給が制限される場合です。しおりには、故意や重大な過失で起きた事故、保険料を滞納している期間に起きた事故は、給付の全部または一部が制限されることがあると書かれています。共済会に会費と保険料を払い忘れたまま現場に出ていた、というのは最も避けたいパターンです。
4つめは、加入前の事故は補償されないという点です。特別加入の承認日は、申請の翌日から30日以内で本人が希望する日になります。事故が起きてから慌てて加入しても、その事故には遡って適用されません。※実際に事故が起きて、加入日との前後関係や業務の範囲で判断が分かれそうな場合は、労働基準監督署や社会保険労務士に早めに相談してください。
保険料の計算と、共済会に払う会費の見分け方
特別加入の費用は、大きく分けて国に納める労災保険料と、共済会(特別加入団体)に払う入会金・会費の2つです。参考ソースとして、ある特別加入団体は費用の構造を次のように説明しています。
一人親方労災保険に特別加入をする場合の費用は、国に納める労災保険料と組合費の2つの費用が必要です。(入会時のみ入会金が必要になります) 保険料と組合費は毎年4月から翌年3月までを区切りとし、労災保険料と組合費の合計額をお支払いしていただくことになります。なお、労災保険料は給付基礎日額(保険料や保険給付の基礎となるもの)3,500円から25,000円までの16段階に応じて決まります。 出典: rousai-hoken.jp
国に納める保険料は、どの共済会を通しても計算式が同じです。年間保険料は、給付基礎日額×365日で出した保険料算定基礎額に、事業ごとの保険料率をかけて計算します。厚生労働省の特別加入保険料率表(令和6年11月1日施行)では、建設業の一人親方の料率は1,000分の17です。
しおりの一覧表から、建設の事業の年間保険料をいくつか抜き出すと次のとおりです。
| 給付基礎日額 | 保険料算定基礎額 | 年間保険料(料率17/1000) |
|---|---|---|
| 3,500円 | 1,277,500円 | 21,709円 |
| 5,000円 | 1,825,000円 | 31,025円 |
| 10,000円 | 3,650,000円 | 62,050円 |
| 16,000円 | 5,840,000円 | 99,280円 |
| 20,000円 | 7,300,000円 | 124,100円 |
| 25,000円 | 9,125,000円 | 155,125円 |
給付基礎日額は3,500円、4,000円、5,000円から1,000円刻みで10,000円まで、その上は12,000円、14,000円、16,000円、18,000円、20,000円、22,000円、24,000円、25,000円の16段階です。年度の途中で加入した場合は、加入した月数に応じて保険料が計算されます(1か月未満の端数は1か月として数えます)。
一方、共済会に払う入会金や会費は、団体ごとに自由に決めています。先ほどの団体は、入会金が初回1,000円、組合費が1か月あたり500円と公表しています。団体によっては、年会費を一括で払う形、手続き代行の報酬を別に取る形、独自の見舞金の掛金を込みにした形などがあります。
比べるときは、パンフレットの「月額いくら」という見出しの数字をそのまま並べないことが大切です。次の3つに分けて書き出すと、実際の負担が見えてきます。
- 国に納める労災保険料(どの会でも同じ。給付基礎日額で決まる)
- 会に払う入会金と会費、手続きの報酬(会ごとに違う)
- 会独自の上乗せ補償の掛金(会ごとに違う。任意かどうかも確認)
1が同じなのに総額が大きく違う場合、その差は2か3のどちらかです。差の理由が分かれば、自分に必要な支払いかどうかを判断できます。
給付基礎日額の選び方
給付基礎日額は、高くすれば保険料が上がり、低くすれば保険料が下がります。その代わり、休業や障害、遺族の給付は給付基礎日額に比例して増減します。保険料を抑えたい気持ちから最低の3,500円を選ぶ人もいますが、休業したときに1日に受け取れるのは3,500円×60%で2,100円、特別支給金を合わせても2,800円です。
目安としてよく使われるのは、前年の所得を365日で割った額に近い段階を選ぶ方法です。たとえば年間の所得が400万円なら、1日あたり約1万1千円なので、10,000円か12,000円の段階が候補になります。生活費の固定費(家賃、ローン、子どもの教育費)が大きい人ほど、休業中の手取りが減ったときの影響が大きいので、少し高めを選ぶ考え方もあります。
給付基礎日額は、毎年3月2日から3月31日までに変更の申請をすれば翌年度から変えられます。労働保険の年度更新の期間中にも、その年度の給付基礎日額を変更できます。ただし、どちらも事故が起きる前に申請していることが前提です。事故の後に「やっぱり高くしておけばよかった」と変更しても、その事故には反映されません。
一部の団体では、給付基礎日額の高い段階を選ぶときに所得を示す書類の提出を求めることがあります。高い段階を希望するなら、確定申告書の控えを手元に用意しておくと手続きが早く進みます。所得に見合わない高い段階を選んでも、保険料が上がるだけで意味がない場合があるので、迷ったら団体の窓口に相談してください。
共済会が独自に用意する上乗せ補償
国の労災で足りない部分を補うために、会員向けに独自の補償を用意している共済会もあります。よく見かけるのは、入院や通院の見舞金、死亡時の弔慰金、民間保険会社の団体傷害保険への加入などです。
国の労災は、仕事中や通勤中の事故にしか出ません。休日の私生活でのけがや、仕事と関係のない病気は対象外です。また、休業の給付は収入の全額ではなく、給付基礎日額の60%と特別支給金20%です。この差額や対象外の部分を、会独自の補償でどこまで埋めるかが、共済会ごとの違いになります。
上乗せの補償を見るときは、次の点を確かめてください。
- 運営主体はどこか(会そのものか、提携する保険会社か)
- 補償されるのは仕事中だけか、日常生活も含むか
- 支払われる条件と金額(入院何日目からいくら、など)
- 掛金は会費に含まれているのか、任意で別払いなのか
- 会を退会したら補償も終わるのか
民間保険会社の団体保険であれば、契約の内容は保険会社の約款で決まります。会の案内だけでなく、重要事項説明書や約款の写しをもらい、補償の対象外になる場面(いわゆる免責事項)を読んでおくと安心です。
ここで1つ注意しておきたいのは、国の労災と上乗せ補償を「どちらか片方」で考えないことです。上乗せの見舞金がいくら手厚くても、国の労災に入っていなければ、治療費の無料化も、重い障害が残ったときの年金も受けられません。順番は、まず国の特別加入、その上に必要な分だけ上乗せ、です。
似た名前の制度との違い(建退共・小規模企業共済・国民健康保険組合)
「一人親方 共済」と検索すると、特別加入団体のほかに、名前の似た別の制度も出てきます。混同しやすい3つを整理します。
1つめは、建設業退職金共済、略して建退共です。建退共は、建設現場で働く人の退職金を業界全体で積み立てる国の制度で、勤労者退職金共済機構が運営しています。けがの補償ではなく、建設業で働くのをやめたときの退職金です。一人親方は、仲間と任意組合を作り、機構が規約を認定すると、その組合を事業主、個々の親方をその組合に雇われる労働者とみなして加入できる仕組みになっています。詳しくは建退共の「一人親方(任意組合)について」に説明があります。
2つめは、小規模企業共済です。中小機構が運営する、個人事業主や小さな会社の経営者のための退職金制度です。こちらもけがの補償ではありません。中小機構の小規模企業共済のページによれば、掛金は1か月あたり1,000円から70,000円の範囲で500円単位で決められ、掛金の全額を所得から差し引けます。一人親方が廃業や引退に備えて使う制度として知られています。
3つめは、建設業の国民健康保険組合です。地域や職種ごとに、建設業で働く人向けの国民健康保険組合があり、一般の市区町村の国民健康保険の代わりに加入できる場合があります。これは病気やけがの治療費を3割負担にする医療保険で、仕事中のけがは本来は労災で扱うものです。労災で扱うべきけがを健康保険で治療してしまうと、後から精算の手続きが必要になることがあるので、現場でのけがは必ず「仕事中のけが」と病院に伝えてください。
このように、「共済」という言葉が付く制度は、労災の補償、退職金、医療保険とまったく別の役割を持っています。共済会に入って安心していたら、実は退職金の制度にしか入っていなかった、ということのないよう、自分が入ったものが何の制度なのかを書面で確認しておきましょう。
加入から事故の請求までの流れ
初めて特別加入する一人親方が、実際にどう動けばよいかを順番に整理します。
- 加入する団体を決める。住んでいる都道府県を扱える特別加入団体かどうかを確かめる
- 申込書に、業務の具体的な内容、これまでの業務歴、希望する給付基礎日額、加入を希望する日を書く
- 本人確認の書類を提示する。しおりでは、原則として顔写真付きの身分証明書(顔写真がない場合は2点以上)で確認すると定められている
- 必要な人は、加入時の健康診断を受ける(粉じん、振動工具、鉛、有機溶剤の業務歴がある人)
- 保険料と会費を納める。団体が労働基準監督署を経由して労働局長に届け出る
- 加入が認められると、団体から会員証や加入証明書が届く。元請けに提出する
すでに承認を受けている団体を通じて加入する場合、新しく加入する人の分は、団体が「特別加入に関する変更届」を出す形で手続きされます。個人で役所に書類を出す必要はなく、団体がまとめて行います。
事故が起きたときは、まず病院で「仕事中(または通勤中)のけが」であることを伝えます。労災指定病院であれば、療養の給付の請求書を病院に出すことで、窓口での支払いなしに治療を受けられます。そのうえで、加入している団体に連絡し、事故の日時、場所、作業の内容、けがの状態を伝えます。請求書には、事故がどの請負工事の、どんな作業中に起きたのかを書く欄があり、団体の証明が必要になる書類もあります。
ここで役に立つのが、先に触れた契約書や注文書、現場の写真、作業日報などの記録です。事故の後に思い出しながら書くより、日ごろから「いつ、どこの現場で、何の作業をしたか」を残しておくほうが、請求はずっと早く進みます。スマートフォンのカレンダーに現場名と作業内容を1行書いておくだけでも、後から十分な手がかりになります。
元請けの現場で事故が起きた場合、元請けにも報告が必要です。現場によっては、元請けが事故の報告書を作成し、労働基準監督署に提出する場面もあります。一人親方だからと黙っていると、後から事実関係で食い違いが起きやすくなるので、事故の当日中に元請けと団体の両方に連絡を入れるのが基本です。
共済会(特別加入団体)を選ぶときの確認点
国の給付の中身はどこでも同じなので、選ぶときに見るのは手続きと費用、上乗せの部分です。確認したい点を整理します。
1つめは、その団体が本当に労働局長の承認を受けた特別加入団体かどうかです。厚生労働省は特別加入団体の一覧表を公開しています。また、都道府県労働局や労働基準監督署に問い合わせれば、近くの特別加入団体を教えてもらえます。団体の名前と所在地が一覧と一致するかを確かめると安心です。
2つめは、事務処理をできる区域です。特別加入団体は、原則として主たる事務所のある都道府県と、その周辺の決められた区域の一人親方しか扱えません。しおりには都道府県ごとの区域の表が載っています。住んでいる県が対象外の団体に申し込むと、加入そのものができない場合があります。
3つめは、加入日と加入証明の出し方です。現場に入る日が決まっている場合、いつから補償が始まり、加入証明書(会員証)をいつ受け取れるかが大事になります。即日や翌日の加入をうたう団体もありますが、国の承認日の扱いと、団体が出す証明書の日付の関係を確認しておきましょう。
4つめは、事故のときの支援です。労災の請求書は、事故の状況や業務との関係を書く必要があり、慣れていないと時間がかかります。団体が請求書の作成を手伝ってくれるのか、相談の窓口は電話だけか、平日の何時までか、といった点は、事故が起きてから困らないために事前に聞いておく価値があります。
5つめは、更新と退会の手続きです。特別加入は年度単位で、毎年3月ごろに次年度の保険料と会費を納めます。更新の案内がどう届くのか、払い忘れたらどうなるのか、退会するときの手続きは何か、を確認しておくと、知らないうちに無保険になる事態を避けられます。
書類と記録の整え方は、現場以外の仕事にも通じる
特別加入の補償範囲が「請負契約に直接必要な行為」に結びついていることからも分かるように、一人親方にとって契約書や注文書の記録は、取引と補償の両方の土台になります。口約束で仕事を受けることが多い業界ですが、少なくとも工事の内容、場所、期間、金額は書面かメールで残しておきましょう。
元請けとの取引条件については、令和6年11月に施行されたフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)や、下請法の改正による取適法が関わってきます。発注書に何が書かれていなければならないかを知っておくと、条件があいまいなまま工事に入るリスクを減らせます。具体的なチェック項目は、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストで、発注書・契約書に必要な項目を一覧にしています。
工事代金が支払われないトラブルも、一人親方からの相談で多いものの1つです。請求書や納品の記録が残っていれば、内容証明郵便や支払督促といった手段で回収を進めやすくなります。未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】では、弁護士に頼むときの費用の目安と、自分でできる支払督促の流れを解説しています。※金額が大きい場合や相手が支払いを争っている場合は、弁護士に相談してください。
書類を整える力は、年齢を重ねて現場仕事を減らしたあとに、見積もりや工程管理、図面の整理といった事務寄りの仕事へ広げるときにも役立ちます。ビジネス文書の書き方を体系立てて身につけたい人には、ビジネス文書検定の資格ガイドが、試験の級ごとの内容と学び方の参考になります。
運営者として見てきた、続く一人親方の共通点
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、長く仕事が途切れない一人親方には、腕の良さとは別の共通点があります。それは、「この人に頼むと手間がかからない」と元請けに思われていることです。加入証明をすぐ出せる、見積もりと請求が分かりやすい、現場で事故を起こさない。こうした地味な積み重ねが、次の仕事の声につながっています。
労災の特別加入は、その「手間がかからない」の土台の1つです。加入していない職人を現場に入れることは、元請けにとっても安全管理上の不安材料になります。逆に、自分から加入証明を提示できる一人親方は、それだけで信頼の入口に立てます。
もう1つ見えてきたのは、中間に入る業者が多いほど、職人の手取りが薄くなるという構造です。元請けから二次、三次と下請けが重なると、同じ工事代金でも末端の職人に届く額は減っていきます。依頼者と職人が直接つながる取引では、依頼者は同じ予算で多くを頼め、職人は手取りが厚くなります。在宅ワークの世界でも、仲介の手数料が乗らない直接取引(たとえば手数料0%の仕組み)で、依頼する側と受ける側の双方が得をしている例を多く見てきました。手取りが厚くなれば、その分を労災の給付基礎日額の引き上げや上乗せの補償に回す余裕も生まれます。
職種のデータから見る、書類と収入の関係
内部の年収データベースでは、現場以外の職種の収入相場も公開しています。たとえば著述家,記者,編集者の年収・単価相場では、文章を書く仕事の年収と単価の幅を職種別に確認できます。建設の現場経験を活かして、施工の解説記事や業界紙の原稿を書く元職人もいます。現場の知識は、文章の仕事では他の書き手が持っていない強みになります。
一人親方として働き続ける場合も、別の働き方を組み合わせる場合も、共通して言えるのは「自分の働き方に合った補償を、自分で選んで入る」必要があるということです。会社員なら会社が用意してくれる労災、退職金、医療保険を、一人親方は1つずつ自分で組み立てなければなりません。その最初の1つが、国の労災保険の特別加入です。共済会という名前に惑わされず、国の労災の部分と、会独自の部分と、別の制度を分けて考えれば、どこに入るべきかは自然と見えてきます。法律はあなたの味方です。ただし、その味方は、手続きをした人にだけ力を貸してくれます。
建設の仕事と並行して、在宅でできる仕事の幅を広げたい人は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のような、業務の困りごとを聞いて解決策を提案する仕事のガイドも参考になります。現場の段取りや職人の手配で培った「人と仕事をつなぐ力」は、業種が変わっても通用します。
よくある質問
Q. 一人親方共済会によって、国の労災から出る給付の額は変わりますか?
変わりません。国の労災保険の特別加入から出る給付は、どの特別加入団体を通して加入しても、選んだ給付基礎日額と被災の内容で決まります。団体ごとに違うのは、入会金や会費、手続きの対応、会が独自に用意する見舞金や民間保険などの上乗せの部分です。比べるときはこの2つを分けて見てください。
Q. 建設業の一人親方の労災保険料はいくらですか?
建設業の一人親方の特別加入保険料率は1,000分の17です。年間保険料は給付基礎日額に365をかけた額に料率をかけて計算し、給付基礎日額3,500円なら21,709円、10,000円なら62,050円、25,000円なら155,125円です。これとは別に、団体に払う入会金や会費がかかります。
Q. 事故が起きた後に特別加入しても補償されますか?
補償されません。特別加入の承認日は、申請の翌日から30日以内で本人が希望する日になり、それより前の事故には遡って適用されません。給付基礎日額の変更も、事故が起きる前に申請していることが前提です。現場に入る予定が決まった時点で、加入日と証明書の受け取り日を団体に確認しておきましょう。
Q. 建退共や小規模企業共済に入っていれば、労災の代わりになりますか?
代わりにはなりません。建退共は建設業で働くのをやめたときの退職金の制度で、小規模企業共済は個人事業主の退職金の制度です。どちらも仕事中のけがの治療費や休業中の収入を補う仕組みではありません。けがへの備えは労災保険の特別加入で行い、退職金の制度はそれとは別に考えてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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