実績ゼロからVR/ARゲーム開発を受注するとき、練習作は出してよいのか


この記事のポイント
- ✓VR/ARゲーム開発を実績ゼロから受注したいとき
- ✓練習作を実績として出してよいのかを整理します
- ✓守秘義務と著作権で公開できる範囲
実績ゼロの状態でVR/ARゲーム開発の案件に応募したいけれど、出せるものが練習で作ったものしかない。これを実績として出していいのか、かえって印象を悪くしないか。こういうご相談を、本当によくいただきます。結論から言うと、練習作は出してかまいません。ただし、出し方に条件があります。そして、その条件の多くは技術の話ではなく、権利と表示の話です。これ、知らない人が本当に多いんです。この記事では、実績ゼロから受注を目指すときに練習作をどう扱うか、法務の観点も含めて順番に整理します。
練習作を出してよい理由は、発注する側の事情にあります
まず、なぜ練習作でも意味があるのかを説明します。理由は、発注する側が背負っているリスクの大きさです。
VR/ARコンテンツの開発は、依頼する側にとって安い買い物ではありません。制作会社に一式で依頼した場合の相場を見ると、その規模が見えてきます。
企画からシステム開発まで一貫して依頼すると、3DCGの作成数などにもよりますが、最低でも約50万円、平均すると約250万円以上はかかります。また、VRヘッドセットが不要なスマートフォン用VRであれば比較的安価に開発できますが、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)対応のVRは費用が高くなります。 出典: metaversesouken.com
つまり、発注する側は数十万円から数百万円を投じる判断をしています。その相手に「経験はありませんが頑張ります」とだけ伝えても、判断材料がありません。逆に言えば、判断材料さえ渡せれば、実務経験の有無は絶対条件ではなくなります。
練習作は、その判断材料になります。動くものが1つあるだけで、「この人は最後まで作り切れる」「操作の設計を考えられる」「ビルドを通せる」という3つが同時に証明される。文章で10行書くより、動くビルドが1つあるほうが速いんです。
ただし、練習作を出すときには、いくつか気をつけるべき点があります。ここからが本題です。
実務で関わった案件を実績として出せるかは、契約次第です
練習作の話に入る前に、先に整理しておきたいことがあります。「前の会社で関わった案件を実績として出したい」というご相談です。
これは、出せる場合と出せない場合があります。判断の基準は、あなたが結んだ契約の中身です。
守秘義務で縛られる範囲
在職中または業務委託で結んだNDA(エヌディーエー)は、退職後や契約終了後も一定期間効力が続く形になっていることがほとんどです。対象となるのは、業務上知り得た情報全般で、プロジェクト名、クライアント名、仕様、未公開の技術情報などが含まれます。
つまり、「〇〇社の案件でVRコンテンツを開発しました」と書くこと自体が、守秘義務違反になる可能性があります。すでに一般公開されている製品であっても、自分が関わったという事実の開示までは認められていない場合がある。ここは契約書を読み返してください。
判断に迷う場合の安全な書き方があります。固有名詞を出さず、規模と役割だけを書く方法です。「教育分野向けのVR教材で、インタラクション部分の実装を担当」といった形にすれば、守秘義務に触れずに経験を伝えられます。※実際にどこまで書けるかは契約書の文言によって変わるため、重要な案件については弁護士に確認してください。
著作権が誰にあるかも確認する
もう1つ、著作権の帰属です。業務として制作したものの著作権は、契約で発注者側に譲渡されている場合が大半です。譲渡されている以上、自分の判断で公開することはできません。
さらに気をつけたいのが、著作者人格権の扱いです。契約書に「著作者人格権を行使しない」という条項が入っていると、自分が作ったと表示する権利も主張できなくなります。この条項は珍しいものではなく、むしろ標準的に入っています。
つまり、実務で作ったものは、たいていの場合そのまま実績として公開できません。だからこそ、実績ゼロの人だけでなく、経験のある人にとっても、自分の権利で自由に扱える練習作には価値があるんです。
出せないときの、代わりの伝え方
公開できない案件しかない場合、提案の中では次のように書きます。担当した工程、使ったエンジンと言語、チームの規模、期間、直面した課題と対処。固有名詞と数値の詳細を伏せれば、経験の中身は伝わります。
そのうえで、自由に見せられる練習作を1つ添える。この組み合わせが、実務経験がある人の標準的な見せ方です。実績ゼロの方は、後半だけを用意すればいいということになります。
練習作に使う素材のライセンスを、必ず確認する
ここが、法務の相談で一番よく問題になる箇所です。
練習作を作るとき、無料で配布されている3Dモデル、テクスチャ、フォント、効果音、BGMを使う方は多いと思います。学習目的であれば問題ないものでも、実績として公開した瞬間に条件が変わることがあります。
確認すべき点は3つです。1つ目は商用利用の可否。ポートフォリオは営業目的の公開なので、非商用限定の素材は避けたほうが安全です。2つ目は再配布の可否。ビルドを配布する形にすると、素材の再配布に当たる場合があります。3つ目はクレジット表示の要否。表示が条件になっている素材は、作品内かページ内に明記が必要です。
エンジンのライセンスも同様です。主要なゲームエンジンには個人向けの無償ライセンスが用意されていますが、収益の規模によって条件が変わる仕組みになっています。練習作の段階では問題になりませんが、仕組みとして知っておいてください。
そして、生成AIで作った素材を含める場合は、使ったサービスの利用規約で商用利用と権利の扱いを確認してください。この分野は運用が変わりやすく、2026年時点での条件が来年も同じとは限りません。
面倒に感じるかもしれません。ただ、実績として公開したものに権利上の問題があると、それを見て依頼を検討していた相手が離れます。逆に、素材の出所を整理して明記できている人は、権利意識のある人として評価されます。法律はあなたの味方です。守るためのものではなく、信用を積むための道具として使ってください。
何を作るか、3つの型で考える
「とりあえず何か作る」で始めると、途中で目的を見失います。目的別に3つの型があるので、自分の狙う案件に近いものを選んでください。
型1、狭くて完成度の高い1本
もっとも効果的なのは、機能を絞って完成度を上げた1本です。たとえば「机の上のオブジェクトを手で掴んで並べ替える」だけの体験。範囲は狭くていい。掴む感触、置いたときの反応、UIの見やすさ、動作の軽さまで詰めます。
発注する側が見ているのは、機能の多さではありません。1つの操作を丁寧に仕上げられるかどうかです。機能を10個並べて全部が粗い作品より、1つを詰めた作品のほうが評価されます。
型2、募集要項に寄せた1本
応募したい分野が決まっているなら、その分野に近いものを作ります。教育向けの案件を狙うなら、手順を1つ教える教材。産業向けなら、機器の操作を確認する体験。
VR/ARは娯楽以外の分野での活用が広がっています。
今回はVR/ARの違い、活用される分野、その開発者に求められるスキルなどを紹介しました。現在、仮想世界と現実世界をより密接に融合させたMR(Mixed Reality)=複合現実という概念も出てきています。新たなユーザー体験が更新されていっている中、さらに需要が高まっていく分野と言えますので、その技術動向に注目しておくとよいでしょう。 出典: e-xtreme.co.jp
つまり、ゲーム的な作品だけを並べていると、業務用途の案件では響きにくい。狙う分野に合わせて題材を選ぶだけで、同じ技術力でも通りやすさが変わります。
型3、既存作品の改善記録
ゼロから作るのが難しい場合、公開されているサンプルプロジェクトを改善して、その過程を記録に残す方法があります。処理の重い箇所を特定して軽くした、操作しづらいUIを作り直した、といった内容です。
この型の利点は、課題の発見と解決の過程を示せることです。発注する側が最も知りたいのは、詰まったときに自力で進める人かどうか。改善の記録は、その証明になります。
制作にかかる費用と、必要なツール
実績ゼロから始める方が気にされるのが、初期費用です。結論として、金銭的な負担はそこまで大きくありません。
主要なゲームエンジンは個人利用の範囲で無償です。3D制作ツールにも無料で使えるものがあり、ヘッドセットベンダーが配布するSDKも基本的に無償です。無料で配布されている素材も豊富にあります。
費用がかかるのはハードウェアです。3Dをリアルタイムで扱うため、ある程度のGPU性能を持ったPCが必要になります。ヘッドセットも、スタンドアロン型を1台持っておくと検証の幅が広がる。ただし、スマートフォン向けARから始めるなら、手持ちの端末で確認できるので、ヘッドセットは後回しにできます。
制作会社に一式で依頼したときの相場が数十万円以上であることを考えると、個人が練習作を作るコストは、それとは桁が違います。この差は、発注する側から見れば「小規模なら個人に頼む選択肢がある」ということでもあります。
制作会社がどういう体制で仕事を受けているかを知っておくと、自分がどの位置で参加できるかが見えてきます。
株式会社ビーライズは、VR・AR・MRシステムやWeb・スマートフォンアプリを開発し、デジタルテクノロジーにおける体験そのものをトータルに提案しています。ユーザー視点のコンテンツ設計・ハイクオリティなCG制作・システム開発などを経験豊富な人材が担当し、企画から制作・運営までワンストップでトータルサービスを提供します。年間100件以上のコンテンツやシステムを担当し、さまざまな技術やノウハウを蓄積しています。 出典: biz.ne.jp
企画、設計、CG制作、システム開発、運営と工程が分かれているのがわかります。個人が実績ゼロから入る場合、この全部を担当する必要はありません。どこか1つの工程を確実にこなせることを示せば足ります。工程の切り分け方はVR/AR・ゲーム開発・モデリングのお仕事にまとまっており、自分の練習作をどの工程の証明として位置づけるかを決める参考になります。
音まわりが別の担当に分かれる構造は作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事を見るとわかります。練習作に自作の音を入れる必要はなく、そこは別の担当がいる前提で構いません。AIによる挙動制御が求められる案件が増えている点はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事の内容と重なります。
作り始める前に、3つだけ決めておく
制作に入る前に決めておくと、途中で迷わなくなる項目が3つあります。逆に、ここを決めずに始めると、作りながら方針が揺れて完成が遠のきます。
1つ目は、対象デバイスです。スタンドアロン型ヘッドセットなのか、PCに接続する型なのか、スマートフォンARなのか。デバイスによって使えるリソースの上限も、入力の方式も、検証の手間も変わります。1つに決めて、そこに合わせて作ってください。複数対応は、案件で求められたときに考えれば足ります。
2つ目は、体験時間です。1分で終わる体験なのか、5分なのか。ここを決めると、必要な要素の量が決まります。実績として見せる目的なら、短いほうが有利です。相手は最後まで見ないからです。
3つ目は、誰が使うものかです。VRに慣れた人向けなのか、初めてかぶる人向けなのか。この違いは、チュートリアルの有無、操作の説明方法、移動方式の選択に直結します。業務用途の案件を狙うなら、初めてかぶる人向けに設計しておくほうが、実務の要件に近くなります。
この3つを1枚のメモに書いて、作業机の見える場所に置いてください。作っている途中で「もっと機能を足したい」と思ったとき、そのメモを見れば足すべきかどうかが判断できます。実績ゼロの段階でつまずく最大の理由は技術ではなく、範囲が膨らんで完成しないことです。
練習作でよくある、もったいない失敗
相談を受けていて繰り返し見かける、惜しい失敗を挙げておきます。どれも直せるものばかりです。
まず、動く環境が限定されすぎている作品です。自分のPCと自分のヘッドセットでしか動かない状態で提出すると、相手は確認できません。動画を用意していれば防げます。
次に、説明文が長すぎる作品です。制作の背景や苦労を丁寧に書きたくなる気持ちはわかりますが、読む側は概要を知りたいだけです。全体を短くまとめ、詳細は別の場所に置いてください。
3つ目は、複数の未完成作品を並べてしまうケースです。数で補おうとすると、完成度の低さが目立ちます。完成した1本と、その制作過程の記録を出すほうが強い。
4つ目は、素材の出所を書いていないケースです。見た目が整った作品ほど、「どこまでが自作か」がわからないと評価しづらくなります。自作した部分と借りた部分を分けて書いてください。正直に書いても価値は下がりません。むしろ、自分の担当範囲を正確に説明できる人だと伝わります。
5つ目は、更新が止まったまま古いバージョンを出し続けるケースです。エンジンのバージョンが数世代前のままだと、それだけで最近手を動かしていない印象になります。年に一度は動作確認をして、必要なら作り直してください。
6つ目は、作品の説明に専門用語だけを並べてしまうケースです。相手が技術の詳しい判断をできない立場だと、用語だけの説明は読み飛ばされます。何ができるようになったのかを、日常の言葉で1文添えてください。「シェーダーを最適化しました」の隣に「かぶったときの映像のカクつきを減らしました」と書く。この1文があるかどうかで、伝わる相手の幅が変わります。
転職を狙う場合と、案件受注を狙う場合の違い
同じ練習作でも、見せる相手によって重点が変わります。
企業への転職を狙う場合、見られているのは伸びしろとチームで働けるかどうかです。技術選択の理由を説明できるか、コードが他人に読める形になっているか、設計の意図を言葉にできるか。作品そのものより、その周辺の説明が評価対象になります。ソースコードを公開しておくと、判断材料が増えます。
案件の受注を狙う場合、見られているのは納品まで到達できるかどうかです。動くこと、ビルドが通ること、対象デバイスで確認済みであること。この3点が示されていれば足ります。コードの綺麗さは、転職ほど重視されません。
つまり、転職を視野に入れるならコードと設計の説明を厚くし、受注を狙うなら動画と動作確認の記録を厚くする。両方を狙うなら、それぞれの要素を用意しておいて、相手に応じて出し分けてください。同じ作品でも、添える説明を変えるだけで伝わり方が変わります。
練習作の見せ方で、印象は大きく変わります
作ったものをどう提示するかは、作ること自体と同じくらい重要です。相手は忙しく、ビルドをダウンロードして自分の環境で動かしてくれるとは限りません。
最優先で用意すべきは、短い動画です。30秒から60秒程度で、起動から主要な操作までを収めたもの。ヘッドセット内の映像を録画して、実際に見えている画面を見せてください。これが1つあれば、相手は環境を用意せずに判断できます。
次に、説明文です。何を作ったか、対象デバイスは何か、使ったエンジンと言語は何か、どこを自分で実装したか、素材はどこから持ってきたか。特に最後の項目は、権利の整理ができている人だと伝わるので必ず書いてください。
そして、詰まった点と解決方法を1つ書きます。「初期実装では手を伸ばしたときにオブジェクトを掴めない角度があり、当たり判定の形状を見直して解消した」といった内容です。この一文が、練習作を「作ってみた」から「課題を解いた記録」に変えます。
ビルドを配布するかどうかは、素材のライセンス次第です。再配布が認められていない素材を含む場合は、動画と説明だけにしてください。
置き場所も決めておきましょう。動画の共有サービスに限定公開で上げ、説明文とあわせて1つのページにまとめておくと、提案のたびにリンクを1本貼るだけで済みます。毎回ファイルを添付する形にすると、相手のメール環境によっては届かないことがあり、確認されないまま終わります。
もう1つ、動画には音声解説を入れないほうが無難です。相手が仕事中に確認する可能性を考えると、音を出さずに見られる形のほうが再生されます。伝えたいことは、画面上の短いテロップか、説明文のほうに書いてください。再生ボタンを押してもらう確率を上げる工夫は、地味ですが効きます。
見せ方の考え方そのものは、他の職種とも共通します。Webライターのポートフォリオの作り方|案件獲得率が上がるテンプレート付き【2026年版】では、実績の並べ方や説明文の書き方が整理されており、分野が違っても構成の参考になります。
実績ゼロの段階を、どう抜けるか
練習作を用意したあと、実際の実績に変えていく道筋も考えておきましょう。
現実的な順番は、小さく確実な案件から入ることです。既存プロジェクトへの機能追加、特定の不具合の修正、素材の組み込みといった範囲の限定された依頼は、実績ゼロでも任されることがあります。ここで納品を1件通せば、次からは実務経験として書けます。
このとき、「実績として公開してよいか」を必ず契約時に確認してください。公開の可否と、書ける範囲(クライアント名を出せるか、画面を見せられるか)を先に取り決めておく。あとから聞くと、断られることのほうが多いです。書面に一文入れてもらうだけで済みます。
転職を視野に入れる方もいると思います。VR/AR領域は、業界未経験からの採用も一定数あり、練習作の提出を求められる場面があります。この場合も、権利関係が整理されている作品を出せるかどうかが分かれ目になります。
報酬の相場感も、早い段階で持っておいてください。ソフトウェア作成者の年収・単価相場には職種としての年収と単価が整理されており、提示された条件が妥当かどうかを判断する基準になります。実績ゼロの時期は足元を見られやすいので、基準を持っているかどうかで交渉の落ち着きが変わります。単価を上げていく考え方そのものはWebライターが文字単価を上げる方法|1円→5円にステップアップする戦略【2026年版】の進め方が参考になり、実績の積み方と単価の関係は分野を問わず似た構造をしています。
学習の初期投資を抑えたい場合、公的な助成の枠組みが使えることもあります。福祉用具貸与事業所のスキルアップ助成金2026|人材開発支援助成金の活用法では人材開発支援助成金の活用手順が扱われており、制度の考え方を知る入口になります。※対象になるかどうかは事業形態や要件によって変わるため、実際の申請は各制度の窓口で確認してください。
技術以外の部分では、条件を文書にする力が効いてきます。ビジネス文書検定は業務文書の型を体系的に学べる資格で、公開許諾や納品条件を角の立たない形で依頼できるようになると、実績を積む速度が上がります。ネットワークの基礎を固めたい場合はCCNA(シスコ技術者認定)の学習範囲が、サーバー連携を含む案件で役に立ちます。
運営者として見てきた、実績ゼロから抜けた人の共通点
フリーランスと在宅ワークの市場を20年見てきた立場から言えば、実績ゼロの段階を早く抜ける人には、はっきりした共通点があります。作品の完成度が飛び抜けているわけではありません。共通しているのは、1件目を小さく設計していることです。
大きな作品を1年かけて作ってから応募しようとする人は、たいてい途中で止まります。完成しないまま時間だけが過ぎ、モチベーションが落ちる。逆に、2週間で作り切れる範囲に絞って完成させ、それを持って応募し、フィードバックをもらって次を作る人は、半年後には実務案件を持っています。速いのは制作ではなく、回転です。
もう1つ、長く続く人ほど、単発の納品ではなく「この人に任せると楽だ」という関係づくりに時間を使っています。納品時に次に起きそうな点を1行添える、仕様の穴に気づいたら実装前に伝える。実績ゼロの段階でも、この姿勢は伝わります。技術で並ばれたときに選ばれる理由は、たいていここにあります。
額面と手取りの話もしておきます。中間マージンが乗る取引では、依頼者が出した予算の一部が仲介側に流れ、受け手に届く額はその分だけ薄くなります。マージンが乗らない直接取引では、同じ予算で依頼者はより多くの工程を頼めるようになり、受け手の手取りは厚くなる。運営者として見てきた限りでは、この差は始めたばかりの時期ほど気づきにくく、案件が積み上がってからようやく実感されます。手数料0%で受け取れる形を早い段階で知っておくと、実績が増えたときの伸び方が変わります。
最後に、権利の話に戻ります。練習作を出すこと自体に問題はありません。問題になるのは、出したものの中身が整理されていないときです。使った素材の出所を書けるか、公開してよい範囲を把握しているか。これができている人は、実績ゼロの段階でも「仕事を任せて大丈夫な人」として扱われます。技術より先に整えられる部分が、ここにあります。
よくある質問
Q. 練習作を実績として出しても、印象は悪くなりませんか?
悪くなりません。発注する側は数十万円以上を投じる判断をしているため、動くものが1つあるかどうかで判断材料の量が大きく変わります。ただし、使用した素材の出所とライセンス、担当した範囲、対象デバイスを明記してください。整理されていない作品のほうが、実績ゼロであること以上に不安を与えます。
Q. 前職で関わった案件を実績として書けますか?
契約次第です。NDAは契約終了後も効力が続く形が一般的で、クライアント名やプロジェクト名の開示が制限されている場合があります。著作権も発注者側に譲渡されていることが多く、自由な公開はできません。固有名詞を伏せ、分野と担当工程だけを書く形にすれば伝えられます。判断に迷う案件は弁護士に確認してください。
Q. 練習作にはどれくらいの規模のものを作るべきですか?
機能を絞って完成度を上げた1本が有効です。掴む、置く、選ぶといった操作を1つに絞り、反応の自然さやUIの見やすさ、動作の軽さまで詰めてください。機能を多く並べて全体が粗い作品より評価されます。制作期間は2週間程度で作り切れる範囲に設計すると、途中で止まりにくくなります。
Q. 実績ゼロから始めるのに、どれくらい費用がかかりますか?
ソフトウェア面の負担は小さく、主要なゲームエンジンは個人利用の範囲で無償、3D制作ツールやSDKにも無料のものがあります。費用がかかるのはPCとヘッドセットで、スマートフォン向けARから始める場合は手持ちの端末で検証できるため、ヘッドセットの購入は後回しにできます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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