実績ゼロでMV制作を売り込むとき、練習で作った映像は使えるのか


この記事のポイント
- ✓MV制作 実績ゼロの状態から売り込むとき
- ✓練習で作った映像をポートフォリオに載せてよいのかを整理しました
- ✓市販楽曲を使った自主制作の扱い
先日、映像編集を学び始めた方から相談を受けました。「練習で好きな曲にMVを付けてみたんです。よく作れたと思うので、ポートフォリオに載せて売り込みたいのですが、大丈夫でしょうか」と。
結論から言うと、その楽曲が市販の音源であれば、そのまま公開するのは避けたほうがいいです。理由は著作権と原盤の権利の両方に関わるからです。ただし、実績ゼロの状態で見せるものが何もないという問題は、まったく別の方法で解決できます。
これ、知らない人が本当に多いんです。動画編集の学習コンテンツでは、練習用に好きな曲を使う手順がよく紹介されます。手を動かして学ぶには良い方法です。でも、その成果物をそのまま人に見せる段階になると、話が変わります。
この記事では、練習で作った映像がどこまで使えるのか、実績ゼロから安全に見せられるものを作る方法、そして見せ方そのものをどう設計するかを、順に整理していきます。※ 個別の案件で判断に迷う場合は、著作権を扱う弁護士に相談してください。この記事は2026年時点の一般的な整理であり、個別の事案への回答ではありません。
実績ゼロの人が最初にぶつかる壁
映像の仕事は、作ったものを見せて判断される世界です。資格でも学歴でもなく、成果物が評価の中心にあります。
その前提が、実績ゼロの人にとっては壁になります。仕事を受けるには見せるものが要る。見せるものを作るには仕事が要る。この循環の入口が見つからない。
実際に、制作物を並べた紹介ページがどういう形をしているかを見てみます。実績のある人のページには、こういう記述が並びます。
【MV/30万回再生】花咲ゆき美 『雨の港駅』の映像ディレクションを担当いたしました 出典: lancers.jp
アーティスト名、楽曲名、担当した役割、そして再生数。この4つが揃っています。実績ゼロの人が対抗しようとして「練習で作りました」と並べても、比較になりません。
だからこそ、同じ土俵で勝負しないことを最初に決めます。実績数で並べるのではなく、何ができるかが伝わる見せ方に切り替える。この記事の後半でその方法を説明します。
なお、実績がない状態で仕事を探す悩みは、映像に限った話ではありません。
cg関連のバイトがしたい専門学生です。 モデリングテクスチャ辺りのバイトってないんですかね?調べた感じほぼないです。 どういった見つけ方がありますか 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
クリエイティブ職の入口は、どの分野でも狭いというのが実情です。募集の数そのものが限られている。だから、募集を待つのではなく、自分から見せに行く必要があります。その「見せるもの」をどう用意するかが、この記事の主題です。
練習で作った映像は、そのまま使えるのか
いちばん多い質問から答えます。市販されている楽曲に自分で映像を付けたものを、ポートフォリオとして公開してよいか。
2026年時点の一般的な整理としては、権利者の許諾がない限り避けるべき、というのが答えになります。理由を分けて説明します。
楽曲そのものの権利と、音源の権利は別
音楽には、大きく2つの権利があります。1つは作詞作曲した人が持つ著作権。もう1つは、その楽曲を録音した音源に関する権利(原盤権や実演家の権利)です。
つまり、同じ1曲でも、権利を持っている人が複数いるということです。ここが理解されていない場面をよく見ます。
動画共有サイトの中には、音楽の著作権を管理する団体と包括的な契約を結んでいるところがあります。その契約があるので、その楽曲を自分で演奏したり歌ったりした動画を投稿できる場合があります。
ただし、その契約が対象にしているのは著作権の部分です。市販のCDや配信で売られている音源そのもの、つまり原盤を使う行為は、別の許諾が必要になります。「投稿サイトが契約しているから大丈夫」という理解は、ここで崩れます。
つまり、好きなアーティストの市販音源に映像を付けて公開する行為は、原盤に関する権利の面で問題になり得るということです。※ 個別のケースでは契約内容や利用態様によって結論が変わります。実際に公開を検討する場合は、著作権を扱う弁護士に相談してください。
「限定公開だから大丈夫」も成り立ちにくい
次に多いのが、「URLを知っている人しか見られない設定にすれば大丈夫ですか」という質問です。
限定公開であっても、インターネット上にアップロードして、URLを渡した相手が視聴できる状態にすること自体が、著作物の利用にあたる可能性があります。公開範囲を絞れば問題が消えるという単純な整理にはなりません。
営業先にファイルを直接送る場合も同じです。複製して渡すという行為が発生しています。
こういうケース、実は本当に多いんです。悪意があってやっているわけではなく、練習作品だから問題にならないだろうという感覚で進めてしまう。でも、営業に使う時点で、練習ではなく事業活動の一部になります。
削除されるだけでは済まない場合がある
仮に問題が生じた場合、どうなるか。多くの場合は権利者からの申し立てを受けて動画が削除される、あるいは投稿サイト側の措置でアカウントに制限がかかる、という流れになります。
ただ、実績ゼロの人にとって本当に痛いのは、そこではありません。営業先にそのURLを送った後で削除された場合、相手の手元にはリンク切れだけが残ります。信用の話になります。
法律はあなたの味方です。ただし、それは守るべき手順を踏んでいる場合に限られます。権利のことを知らずに進めた結果として不利益を被るのは、いつも作った側です。
安全に「実績」を作る4つの方法
では、実績ゼロの状態で何を作ればいいのか。方法は4つあります。どれも権利の面で整理しやすいものです。
方法1: 権利処理された音源を使う
商用利用が許諾されている音楽素材を提供するサービスがあります。定額制のもの、1曲ごとに購入するもの、条件付きで無償のものなど、形態はさまざまです。
こうした音源を使えば、映像を付けて公開することが利用規約の範囲内で認められている場合があります。ただし、規約は提供元ごとに違います。ポートフォリオでの使用、営業目的での使用、クレジット表記の要否。ここを読まずに使うと、結局同じ問題が起きます。
面倒に感じるかもしれませんが、利用規約を読む習慣は、映像の仕事を続けるうえで必ず必要になります。依頼を受けた案件でも、素材の規約確認は制作者側に求められる場面があります。練習の段階で身につけておくと、後で効きます。
方法2: 楽曲を作る人と組む
作曲や編曲をしている人と組んで、その人の楽曲にMVを付ける方法です。
実績ゼロ同士でも成立します。むしろ、音楽を作っている側にも「MVがないので発表しづらい」という課題があります。お互いに必要としている関係なので、話が進みやすい。
この方法の良いところは、実際の案件とほぼ同じ流れを経験できることです。相手と条件をすり合わせ、素材をもらい、修正のやり取りをして、納品する。この経験そのものが、次の営業で語れる材料になります。
組む相手を探すときは、音楽制作の仕事がどういう形で発注されているかを知っておくと話が早くなります。作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事では、楽曲制作の依頼がどんな範囲で出てくるかが整理されています。相手側の仕事の形が分かると、対等な話ができます。
注意点として、口約束で進めないでください。無償で協力し合う場合であっても、完成した映像を双方がどう使えるのかを、文章にして残します。「双方が自身の実績紹介に使用できる」という一文があるだけで、後の揉め事が消えます。
方法3: 楽曲を自分で用意する
作曲まで自分で行う方法です。ハードルは上がりますが、権利の面ではもっとも整理しやすい。
近年は、演奏の技術がなくても楽曲を組み立てられるツールが増えています。生成AIを使った音楽制作サービスもありますが、これらは利用規約と生成物の権利の扱いが提供元ごとに大きく異なるため、商用利用の可否を必ず確認してください。
なお、AIツールの活用は映像制作の現場でも広がっています。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事では、この領域でどういう業務が発生しているかを確認できます。ツールを使えること自体が売りになる場面が増えているので、練習の段階で触れておく価値はあります。
方法4: 架空の案件として組み立てる
実在する楽曲を使わず、企画から自分で組み立てる方法です。
たとえば、架空のアーティストを設定し、権利処理済みの音源を使い、企画書、絵コンテ、完成映像までを一式作る。これは学習としても、見せる材料としても優れています。
理由は、映像だけでは伝わらない部分が見えるからです。なぜこの構成にしたのか、どういう狙いでこのカットを選んだのか。依頼者が知りたいのは、実は完成品の見栄えより、その判断の過程です。判断ができる相手かどうかを見ています。
架空案件の作り方は、文章の仕事におけるポートフォリオの作り方とよく似ています。Webライターのポートフォリオの作り方|案件獲得率が上がるテンプレート付き【2026年版】では、実績が少ない段階での見せ方の型が整理されています。分野は違いますが、構成の考え方はそのまま応用できます。
見せ方を設計する
作るものが決まったら、次は見せ方です。実績ゼロの人ほど、ここで差がつきます。
担当範囲を必ず書く
映像を並べるだけのポートフォリオは、判断材料になりません。1本ごとに、自分が何をやったのかを書きます。
企画から入ったのか。素材は自分で撮ったのか、提供されたものか。編集のどこまでを担当したのか。テロップの設計は自分か。色調整はしたか。
練習作品であっても、この記述があると読み手の理解が変わります。「全部自分でやりました」と書けるなら、それは強みです。実際の案件では分業されるので、全工程を1人で回した経験は評価されます。
練習作品であることを隠さない
ここは意見が分かれるところですが、私の考えははっきりしています。練習で作ったものを、受注実績のように見せるべきではありません。
理由は2つあります。1つは、いずれ確認されるからです。「この案件はどちらのアーティストさんですか」と聞かれて答えられないと、そこで信用が終わります。
もう1つは、隠す必要がないからです。「自主制作」「習作として制作」と明記したうえで、担当範囲と制作意図を書く。それで十分に判断材料になります。依頼者が見ているのは、受注歴ではなく技能です。
制作の過程を見せる
完成品だけでなく、途中経過を見せる方法があります。
絵コンテ、構成案、色調整の前後の比較、テロップのデザイン案。こうした素材を並べると、作業の進め方が伝わります。
依頼者にとっては、この情報のほうが価値があります。完成品は運が良ければ1本で作れます。でも、進め方が言語化されている人は、次の案件でも同じように進められると判断できるからです。
見せる本数を絞る
実績ゼロの人ほど、作ったものを全部並べたくなります。逆効果です。
見る側は全部を見ません。最初の1本か2本で判断します。だから、いちばん良いものを先頭に置いて、3本から5本程度に絞る。学習の初期に作ったものが混ざっていると、そちらで評価されてしまいます。
素材の権利を確認する手順を、習慣にする
権利の話を避けて通れないのは、映像が複数の素材の組み合わせでできているからです。楽曲だけではありません。
映像に使う素材を種類ごとに並べると、確認すべき点が見えてきます。
楽曲と音源。作詞作曲者の著作権と、録音された音源に関する権利。この2つが別だという点は前述のとおりです。
映像素材。自分で撮ったものか、提供されたものか、素材配布サイトから入手したものか。配布サイトのものは、無償であっても利用条件が定められているのが通常です。商用利用の可否、クレジット表記の要否、再配布の禁止といった条件を確認します。
写真とイラスト。映像素材と同じ考え方です。加えて、人物が写っている場合は肖像の扱いが加わります。
フォント。見落とされやすい部分です。フォントには利用許諾があり、映像作品への埋め込みや商用利用が制限されているものがあります。テロップは映像の重要な要素なので、ここで規約違反が起きると作品全体に影響します。
効果音。楽曲と同様に権利があります。無償で配布されているものでも、使用条件が付いていることが少なくありません。
出演者。人が映る場合、その人の肖像に関わります。友人に協力してもらった場合であっても、公開範囲や利用期間について合意を文書で残しておくのが安全です。
この6種類について、素材を集めた段階で1つずつ確認する。慣れると30分もかかりません。習慣にしてしまえば、確認そのものが負担になることはなくなります。
そして、この確認ができる人は、案件を受けるようになったときに強い。依頼者から渡された素材の権利関係を整理して質問できるからです。これ、知らない人が本当に多いんです。だから、できるだけで差になります。
実績ゼロの段階でよく起きる相談
ここでは、実際に持ち込まれることの多い相談を整理しておきます。
「学習サービスの課題で作った映像は使えますか」。これはサービスの規約によります。学習用に提供された素材の二次利用が禁止されている場合があり、その素材を含む成果物を営業に使うと規約違反になり得ます。規約を確認し、不明なら運営に問い合わせてください。
「友人のバンドのMVを無償で作りました。実績として載せていいですか」。載せられる可能性は高いですが、事前の合意があるかどうかで変わります。無償の協力であっても、双方が実績として公開できることを文章で確認しておくのが確実です。楽曲がそのバンドのオリジナルであっても、メンバー間で権利の所在が整理されていないことがあります。
「以前の勤務先で作った映像を、独立後のポートフォリオに載せられますか」。これは慎重に判断すべき場面です。業務として作った成果物の権利は雇用主側にあるのが通常で、加えて秘密保持の取り決めが残っている場合があります。※ 元の勤務先に確認を取るか、著作権と労働契約の両方を扱える弁護士に相談してください。
「クライアントから公開しないでほしいと言われた案件があります」。この場合、実績として名前を出すことはできません。ただし、「アーティスト名は非公開ですが、企画から編集まで担当した5分尺のMVがあります」といった形で、範囲と規模だけを伝えることは可能な場合があります。ここも、依頼者との合意内容によります。
共通しているのは、事前に文書で確認しておけば防げるものばかりだという点です。作り終えてから確認すると、選択肢が「使えない」しか残らないことがあります。
実績ゼロの段階で、単価をどう考えるか
金額の話もしておきます。実績がないから安く受ける、という判断について。
安く受けること自体は、選択肢の1つです。ただし、期間か本数を自分で区切ってください。「最初の3本は相場より低く受ける」と決めて、そこを過ぎたら通常の金額に戻す。区切りがないまま安い水準で受け続けると、そこが自分の基準になります。
そして、安く受ける代わりに何を得るのかを決めておきます。実績として公開する許可、担当範囲を明記する許可、依頼者からの推薦文。金額を下げるなら、金額以外の何かを条件として得る。これは値引きではなく交渉です。
単価をどう上げていくかという流れそのものは、他の職種でも共通しています。Webライターが文字単価を上げる方法|1円→5円にステップアップする戦略【2026年版】では、初期の低単価から抜け出す考え方が段階的に整理されています。映像でも構造は同じで、実績の見せ方と提案の内容を変えることで水準が動きます。
相場の感覚を持つためには、隣接する職種のデータも参考になります。ソフトウェア作成者の年収・単価相場は在宅で成立する技術職の報酬水準を、著述家,記者,編集者の年収・単価相場は文章仕事の水準を、それぞれ職種分類ベースで確認できます。MV制作は映像と音と文章と進行管理が混ざる仕事なので、1つの相場だけでは値付けができません。
実際にどういう依頼が出ているかを知るという意味では、MV制作・BGM付き映像のお仕事で案件の形を確認しておくと、自分のポートフォリオに何が足りないかが見えます。求められている範囲と、自分が見せているものが噛み合っているかを点検してください。
見せる場所をどこにするか
ポートフォリオを作ったあと、どこに置くかという問題が残ります。実績ゼロの段階では、置き場所の選び方も結果に影響します。
動画共有サイトに置く方法は、URLを渡すだけで見てもらえる手軽さがあります。ただし、権利の申し立てを受けた場合に映像が視聴できなくなる可能性があるため、権利処理を済ませた素材だけで構成することが前提になります。
自分のサイトを用意する方法は、担当範囲や制作意図といった文章を自由に配置できる利点があります。映像だけを並べるより、判断材料が伝わりやすい。手間はかかりますが、営業を続けるつもりがあるなら早い段階で用意する価値があります。
制作物を掲載できるサービスを使う方法もあります。同じ分野の人の見せ方を参照できるので、構成の参考になります。並んでいる実績と自分を比べて落ち込む必要はありません。見るべきは、担当範囲の書き方や説明文の長さといった形式の部分です。
どこに置くにしても、共通して守りたいことが1つあります。営業のメールに映像を直接添付しないことです。容量の問題もありますが、それ以上に、相手が開ける環境かどうかが分からないためです。閲覧できるURLを渡し、必要であればダウンロードもできる状態にしておく。この形が確実です。
実績以外で信用を作る要素
映像そのもの以外にも、判断材料になるものがあります。実績ゼロの段階では、この部分が効きます。
やり取りの文面です。提案文、見積書、進行の連絡、請求書。実績がない相手を選ぶとき、依頼者は「この人とやり取りできるか」を見ています。文書の作法が整っているだけで、印象が変わります。
ビジネス文書検定は、こうした書面の基本を体系的に確認できる資格です。映像の受注に直結するわけではありませんが、実績がない段階で信用を補う要素としては現実的です。
技術面の周辺知識も同様です。大容量ファイルの受け渡し、作業環境の構築、通信トラブルの切り分け。CCNA(シスコ技術者認定)のようなネットワーク認定は本来技術者向けのものですが、学習範囲は在宅で映像を扱う環境の理解に応用が利きます。MV制作のために取るものではありませんが、すでに持っている人は環境面での不安が少ないという特徴があります。
学習にかかる費用の面では、職種によっては公的な支援制度が使える場合があります。制度の対象や要件は分野ごとに異なり、映像分野がそのまま該当するとは限りませんが、支援制度の考え方を知っておくと選択肢が広がります。福祉用具貸与事業所のスキルアップ助成金2026|人材開発支援助成金の活用法は別分野の事例ですが、助成金がどういう仕組みで動いているかを掴む材料になります。※ 制度の適用可否は必ず所管の窓口で確認してください。
運営者から見た、実績ゼロから抜けた人の共通点
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、実績のない状態から仕事につなげた人の共通点を挙げます。
まず、作品数を増やすことに時間を使っていません。3本を丁寧に見せている人のほうが、20本を並べている人より先に決まります。見る側の時間は有限で、選別のコストを相手に押し付けた時点で読まれなくなるからです。
次に、長く続く人ほど、単発の受注ではなく「この人に任せると楽だ」という関係づくりに時間を使っています。実績ゼロの段階でこれをやるには、権利処理を自分で整理する、担当範囲を明記する、条件を先に出す、といった手間を惜しまないことです。この手間が、そのまま「安心して任せられる相手」という評価になります。
そして、運営者として見てきた限りでは、最初の1件を取るまでの期間より、その1件をどう終えたかのほうが後の展開を決めています。丁寧に終えた1件は次を呼びます。無理な条件を飲んで疲弊した1件は、実績にはなっても継続にはなりません。
最後に、報酬の構造にも触れておきます。中間マージンが乗らない直接取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼めて、受ける側は手取りが厚くなります。実績ゼロの段階では金額そのものが小さいので、そこから手数料が引かれる影響は相対的に大きい。手数料0%という条件の価値は、金額の大小ではなく、少額の案件でも働いた分がそのまま残るという質にあります。
練習で作った映像をそのまま使うのは避ける。でも、それは実績ゼロの人が何も見せられないという意味ではありません。権利を整理した素材で作り直し、担当範囲を書き、判断の過程を見せる。この手順を踏めば、受注歴がなくても判断材料は作れます。法律はあなたの味方です。守るべき順番を守っていれば、それが自分の信用になります。
よくある質問
Q. 好きなアーティストの曲で作った練習用MVは公開できますか?
権利者の許諾がない限り避けるのが無難です。楽曲には作詞作曲者が持つ著作権と、市販音源に関する原盤の権利があり、投稿サイトが音楽の管理団体と包括契約を結んでいても、それは著作権の部分に関するものです。市販音源そのものの利用には別の許諾が必要になる場合があります。
Q. 限定公開やファイル送付なら問題ありませんか?
公開範囲を絞れば問題が消えるという単純な整理にはなりません。限定公開でもアップロードして視聴できる状態にすること自体が著作物の利用にあたる可能性があり、営業先へのファイル送付も複製にあたります。判断に迷う場合は著作権を扱う弁護士に相談してください。
Q. 実績ゼロでポートフォリオに載せるものは何を作ればよいですか?
方法は4つあります。商用利用が許諾された音源を使う、楽曲を作る人と組んで実際の制作を経験する、楽曲自体を自分で用意する、架空のアーティストを設定して企画から一式を組み立てる。どれも権利面を整理しやすく、企画から納品までの流れを経験できる点で共通しています。
Q. 練習作品であることは伏せたほうが有利ですか?
伏せるべきではありません。後から確認された際に答えられないと信用を失いますし、依頼者が見ているのは受注歴ではなく技能です。「自主制作」と明記したうえで、担当範囲と制作意図、絵コンテや色調整前後の比較といった過程を示すほうが、判断材料として価値があります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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