実績ゼロから小説・シナリオ制作を受注するとき、練習作をどう見せるか

前田 壮一
前田 壮一
実績ゼロから小説・シナリオ制作を受注するとき、練習作をどう見せるか

この記事のポイント

  • 小説・シナリオ制作を実績ゼロから始めるとき
  • 練習作の作り方と見せ方で結果が変わります
  • 発注者が見ている3つの点

まず、安心してください。実績ゼロの状態から小説・シナリオ制作の仕事を受けている方は、実際に存在します。特別な才能があったわけではなく、見せ方を整えた結果です。

ただし、正直に書いておきたいことがあります。この業界は、実績のある人が優先される構造になっています。そこを楽観視したまま応募を続けると、時間だけが過ぎます。

だからこの記事では、構造を先に確認したうえで、実績がない段階で何を作り、どう見せるかを具体的に扱います。練習作をただ並べるのと、選んで見せるのとでは、結果がまったく違います。

実績が優先される構造を、先に確認しておきます

つらい話から始めますが、ここを飛ばすと対策を間違えます。

未経験者は、熱意では順位が上がりません

シナリオ制作の現場で長く活動している方が、この構造をはっきり書いています。

例えば、ゲームシナリオライターになりたくても、たいていゲーム開発会社やシナリオ制作会社のシナリオライターは経験者のみを募集しています。未経験者はどんなに熱意があっても、経験者の方が優遇されてしまいます。(もちろんその熱意が通る場合もありますが、いきなり大きな仕事を任せてもらうことはまずありません) 出典: note.com

同じ方が、業界の性質についてこうも書いています。

実績や経験がないとチャンスが来ないし、取り逃してしまうシナリオライターも作家も、あらゆることで仕事は本当に実績の世界です。 出典: note.com

読んで落ち込む必要はありません。これは「入れない」という話ではなく、「熱意以外の材料が要る」という話です。

発注者が実績を見る理由は、能力の確認ではありません

ここを誤解している方が多いので、はっきり書きます。

発注者が実績を求めるのは、うまい文章が書けるかを確認したいからではありません。この人に頼んだ場合、どういう進み方になるかを予測したいからです。

締切を守るのか。指示を読み取れるのか。途中で消えないのか。実績があると、これらが過去の事実から推測できます。実績がないと、推測する材料がありません。

つまり、実績の代わりに必要なのは「予測材料」です。練習作は、その予測材料になります。ここが、この記事の中心的な考え方です。

「未経験可」の募集は、何を指しているのか

求人や案件の募集を見ていると、「未経験可」「初心者歓迎」と書かれたものが見つかります。これをどう読むかで、応募先の選び方が変わります。

未経験可の募集は、大きく2つに分かれます。

ひとつは、業務の一部が定型で、指示どおりに書けば成立する仕事です。ゲーム内の短いテキスト、既存フォーマットに沿った説明文、シリーズものの補助的な回。ここは実際に未経験から入れます。

もうひとつは、単価が低いために経験者が集まらない仕事です。こちらは未経験可というより、条件で選ばれていない募集です。実績を1件作るために割り切って受けるという判断はありますが、そこに留まり続けると次に進めません。

見分け方は、報酬と業務内容の釣り合いです。分量と難易度に対して報酬が明らかに低い場合は、後者の可能性が高い。最初の1件として受けるにしても、期限を決めて次に移ってください。

大きな仕事から入ろうとしない

未経験の段階で、いきなり大規模な案件を狙うと、ほぼ通りません。理由は前述のとおりで、比較対象に経験者がいるからです。

現実的な入口は、分量が小さく、仕様がはっきりしていて、修正の余地が限られている案件です。短編、企画書、既存シリーズの1話分、キャラクター設定の追加分。こうした仕事は、経験者が優先的に取りに行かないため、余地があります。

小説・シナリオ制作という職種の中に、どういう業務が含まれているのかは書籍・小説・シナリオ制作のお仕事で確認できます。書くこと以外の周辺業務も含まれているので、自分が入りやすい入口を探す材料になります。

練習作は、量ではなく選び方で効きます

さて、ここからが本題です。何を作り、何を見せるか。

発注者が練習作で見ているのは3点だけ

たくさん読んでもらえると期待しないでください。発注者が確認するのは、次の3点です。

1つ目、日本語が仕事に耐えるか。誤字、表記ゆれ、読点の位置。これは冒頭の数百字で判断されます。

2つ目、指定に沿って書けるか。テーマ、分量、形式。自由に書いた作品より、条件を課して書いた作品のほうが、この点を示せます。

3つ目、依頼したい種類の文章と近いか。恋愛の短編を10本出されても、ゲームのシナリオを発注したい相手には材料になりません。

この3点を満たす作品が3本あれば、実績ゼロでも判断はできます。逆に、条件のない自由作品が30本あっても、判断材料としては弱い。

練習作に向く題材、向かない題材

向くのは、条件が明確な題材です。

・分量が指定されているもの(3,000字の短編、原稿用紙10枚のシナリオ) ・形式が決まっているもの(脚本形式、プロット形式、企画書形式) ・想定媒体が決まっているもの(スマートフォン向けゲーム、ボイスドラマ、漫画原作)

向かないのは、長すぎるもの、自分の内面だけを書いたもの、完結していないものです。特に未完の長編は、判断材料になりません。締切内に完結させる能力こそが、発注者の知りたいことだからです。

分量の目安と、本数の目安

練習作の分量は、狙う案件の分量に合わせます。3,000字の案件を狙うなら3,000字の作品を用意する。長ければよいものではありません。

本数は3本から5本で十分です。多く並べると、読む側が選べません。それに、質の低いものが混ざると、そちらで判断されます。並べる本数を絞ることは、自分の基準を見せることでもあります。

練習作を作る前に、決めておくことが2つあります

作り始める前の準備の話です。ここを飛ばすと、作った練習作が使えないものになります。

どのジャンルで戦うかを、先に1つ決める

全部書けます、という見せ方は、実績ゼロの段階では機能しません。判断する側から見ると、どれも中途半端に見えるからです。

まず1つ、軸になるジャンルを決めてください。ホラー、恋愛、ミステリー、日常もの、ファンタジー。得意でなくてもよく、単に「一番多く読んできたもの」で構いません。読んできた量は、そのまま構成の引き出しになります。

決めたら、練習作の大半をそのジャンルで揃えます。3本のうち2本は同じジャンル、残り1本で幅を見せる。この配分が、専門性と対応力の両方を示せます。

ジャンルを決めるもうひとつの利点は、応募先を絞れることです。全案件に応募すると1件あたりの準備が薄くなりますが、ジャンルを絞れば募集を読み込む時間が取れます。

週に何時間書けるかを、実測しておく

もうひとつ、地味ですが重要です。自分が1週間に何時間書けるのかを、感覚ではなく実測してください。

方法は簡単で、練習作を書くときに開始と終了の時刻を記録するだけです。2週間も続ければ、自分の平均が見えます。

なぜ必要かというと、応募のときに納期を数字で書く必要があるからです。「なるべく早く対応します」では発注者は進行を組めません。「週8時間稼働できるため、3,000字の初稿は5日でお出しできます」と書けるかどうかで、扱いが変わります。

そして、実測せずに約束すると初回で崩れます。実績ゼロの段階での遅延は、挽回する材料がないため、そこで関係が終わります。

実績ゼロの段階で作る、5つの型

具体的に、何を作ればよいのかを型で示します。どれか1つでも構いませんし、複数を組み合わせても構いません。

型1:条件を自分に課した短編

もっとも効果が高い型です。実際の募集要項を1つ選び、その条件どおりに書きます。

「1話3,000字、全5話、ホラー、スマートフォン向け」といった条件を自分に課す。そのうえで、期日も決めて、その期日内に完成させます。

これがなぜ効くかというと、実務とまったく同じ形だからです。発注者は、条件つきで書かれた原稿を見れば、自分の案件でどう進むかを想像できます。

作品に添えて「◯月◯日から◯日で執筆」と制作期間を書いておくと、さらに材料が増えます。速度も判断されているためです。

型2:既存作品の構成分析

作品そのものではなく、分析を見せる型です。

公開されている作品を1本選び、話数ごとの構成、転換点の置き方、キャラクターの配置を分解して文章にまとめます。数千字あれば十分です。

これは、書く力ではなく読み解く力を示します。シナリオ制作の現場では、既存シリーズに合わせて書く仕事が多いため、この能力は直接評価されます。

注意点として、他人の作品の本文をそのまま長く引用しないでください。分析の対象として言及するにとどめ、自分の言葉で構造を説明します。権利の扱いには慎重になっておいたほうが、後々のためです。

型3:企画書とプロットの単体

完成原稿ではなく、企画書だけを作る型です。

タイトル案、あらすじ、主要キャラクター、全体構成、想定尺、想定読者。この形式でまとめたものを1本用意します。

企画書は、実は受注につながりやすい成果物です。理由は2つあります。制作会社側が企画段階の人手を欲しがっていること、そして企画書は分量が小さいので、こちらの負担も小さいことです。

小説を1本書く時間で、企画書は数本作れます。効率の面でも合理的です。

型4:修正に耐えることを示す改稿版

意外に効くのが、同じ作品の初稿と改稿版を並べる型です。

短編を1本書き、そのあとに条件を変えて書き直します。「分量を半分にした版」「主人公の年齢を変えた版」「結末を明るくした版」。どれか1つで構いません。

これが示すのは、指示に応じて直せるという能力です。発注者にとって、これは非常に重要な情報です。うまく書ける人よりも、直せる人のほうが現場では扱いやすい。

添える説明も短くて構いません。「初稿3,000字を、尺の都合で1,500字に再構成した版です」と書けば、何を意図した改稿かが伝わります。

未経験の段階では、書けることを示すより、直せることを示すほうが有利に働く場面が多い。ここは覚えておいてください。

型5:媒体別のサンプル

同じ物語を、複数の形式で書き分ける型です。

たとえば、同じ1つの筋書きを、小説として書いたもの、脚本形式で書いたもの、漫画原作のネーム指示として書いたもの。この3種類を並べます。

この型の効果は明確です。形式の違いを理解していることが一目で伝わります。小説は書けるがシナリオ形式が分からない、という人は多いので、そこで差がつきます。

どこに置き、どう見せるか

作ったあとの話をします。ここを整えないと、せっかくの練習作が判断材料になりません。

置き場所は、相手が3クリック以内で読めること

置き場所の選択肢は複数あります。小説投稿サイト、ブログ、文書共有サービス、PDFの直接送付。どれでも構いませんが、条件がひとつあります。

登録やログインを求めないこと。発注者は複数の候補を見比べているので、読むまでに手間がかかる時点で後回しになります。

ファイルで送る場合は、開ける形式にしてください。特殊なソフトが必要な形式は避け、一般的な文書形式かPDFにします。

索引のページを1枚作る

作品を並べただけでは、読む側がどれを読めばよいか分かりません。1枚だけ、索引になるページを作ってください。

そこに書くのは、次の項目です。

・作品名 ・ジャンルと想定媒体 ・文字数と、おおよその読了時間 ・書いた条件(自分に課した仕様) ・制作にかかった日数

この一覧があると、発注者は自分の案件に近いものを選んで読めます。全部読ませようとしないこと。選ばせることが目的です。

書類の体裁や、こうしたまとめ方の基本を体系的に押さえたい方にはビジネス文書検定の学習範囲が役立ちます。読み手が判断しやすい構成の作り方は、そのまま提案資料の質につながります。

見せ方の細部で、印象が変わります

細かいことですが、効きます。

作品ファイルの名前を整える。日付とタイトルが分かる形にしておくと、管理できる人だと伝わります。

冒頭に長い前置きを置かない。「拙い作品ですが」といった断りは不要です。読む側の時間を削るだけになります。

そして、誤字だけは必ず潰してください。内容の評価以前に、ここで落ちます。声に出して読む、時間を空けて読み直す、読み上げ機能を使う。方法は何でも構いません。

同じ考え方は、他の職種のポートフォリオにも共通します。構成の作り方や、見せる順番の設計はWebライターのポートフォリオの作り方|案件獲得率が上がるテンプレート付き【2026年版】で扱われている整理が参考になります。文章の仕事全般で通用する型なので、目を通しておくと迷いが減ります。

送るときに添える一文で、読まれ方が変わります

練習作へのリンクやファイルを送るとき、そこに一文添えるかどうかで、読まれ方が変わります。

避けたいのは「ご確認いただけますと幸いです」だけで送ることです。読む側は、どこを見ればよいか分かりません。

代わりに、こう書きます。「御社の募集が1話3,000字の連作とのことでしたので、同じ分量で書いた◯◯(ホラー短編・全3話)を最初にご覧ください。所要はおよそ8分です」。

分量、ジャンル、読むのにかかる時間。この3つを添えるだけで、読んでもらえる確率が上がります。相手の時間を見積もって差し出すという行動そのものが、仕事の進め方の見本にもなります。

権利の都合で見せられない場合の書き方

受注が始まると、納品した作品を公開できない案件が出てきます。守秘義務があるものや、クレジットが出ないものです。

その場合は、作品そのものではなく、条件だけを書きます。「ゲーム向けシナリオ、1話4,000字、全8話、2026年◯月納品、守秘義務のため本文非公開」。この形式でも、実績としては機能します。

ただし、公開の可否は契約の内容によります。書いてよいかどうかは、事前に発注者へ確認してください。無断で内容を明かすと、契約違反になる場合があります。

練習作が実績に変わるまでの動き方

最後に、最初の1件をどう取るかを整理します。

小さく、確実に終わる案件から入る

繰り返しになりますが、最初の案件は分量が小さいものを選びます。

理由は2つあります。ひとつは、経験者との競合が比較的少ないこと。もうひとつは、確実に納品できること。初回で遅延すると、その相手からの次はありません。

そして、初回は多少条件が良くなくても受ける価値があります。実績が1件できると、次の提案から材料が変わるためです。ただし、無償で受けるのは推奨しません。無償の仕事は、実績としての説得力も弱くなります。

初回でつまずきやすいのは、この3点です

実績ゼロで最初の案件を受けたとき、うまくいかない原因は毎回だいたい同じです。

1点目、確認せずに書き始めること。仕様に不明点があるまま進めて、初稿を出してから方向違いが判明する。着手前に、分からない点をまとめて質問してください。質問することで評価が下がることはありません。むしろ、質問がない相手のほうが不安がられます。

2点目、初稿を出すのが遅すぎること。完成度を上げてから出したくなりますが、期日の半分の時点で一部だけでも共有したほうが安全です。方向がずれていた場合、早く分かるほど傷が浅い。

3点目、修正指示に反論してしまうこと。作品への思い入れがあるほど起きやすい。一度受け止めて、そのうえで意図を説明する順番にしてください。順番が逆になると、意図が正しくても関係が悪くなります。

これらはすべて、技量ではなく段取りの話です。だからこそ、実績ゼロの初回からでも守れます。

納品後に、必ずやっておくこと

納品したら、その場で3つ記録してください。

案件の種類と分量。かかった実作業時間。修正の回数と内容。

この記録が、次の提案での数字になります。「3,000字の短編を実作業6時間で納品しました」と書けるかどうかで、説得力が変わります。

実作業時間を記録しておくと、単価の判断もできるようになります。文章の仕事の水準感は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で職種としての幅を確認できます。自分の時間あたりの成果と照らすと、受けるべき案件の基準が定まります。単価を上げていく過程の考え方はWebライターが文字単価を上げる方法|1円→5円にステップアップする戦略【2026年版】にも整理されているので、実績が数件たまった段階で読み返すと使えます。

断られた案件からも、情報は取れます

通らなかった応募について、理由を聞ける場面があれば聞いてください。全員が答えてくれるわけではありませんが、答えが返ってくることもあります。

「今回は経験者を優先しました」なら、こちらの見せ方の問題ではありません。狙う案件の層を変える判断になります。「文章は良かったが分量が合わなかった」なら、練習作の分量を調整すれば次に通ります。

理由が分かると、直す場所が絞れます。分からないまま応募を続けると、同じ理由で落ち続けることになります。

聞き方は短くて構いません。「今後の参考にしたいので、差し支えなければ理由を一言いただけますか」。この一文で十分です。

実績が増えたら、練習作は下げていく

これは意外と忘れられがちです。

実績が3件ほど貯まったら、練習作は前面から下げてください。実績と練習作が同列に並んでいると、実績の価値が薄まります。

見せる順番は、実績、近いジャンルの練習作、その他の順です。相手が最初に見るものが、その人の水準として認識されます。

実績ゼロの期間を、どう短くするか

ここからは、在宅と副業の市場を長く見てきた立場からの観察です。

準備の質より、締切を課した本数が効いています

20年この市場を見てきて感じるのは、実績ゼロの期間が短い方には共通点があるということです。作品の完成度ではなく、自分に締切を課して完成させた回数が多い。

未完の力作を1本持っている方より、条件つきの短編を3本仕上げた方のほうが、先に受注しています。発注者が知りたいのが「終わらせられるか」だからです。

逆に、いつまでも準備を続けてしまう方も見てきました。作品をもっと良くしてから応募しよう、と考えているうちに数年が過ぎる。ここは、はっきり書いておきます。作品の質より、応募して反応をもらうほうが、上達は速い。

読まれない場所に置き続けても、実績にはなりません

もうひとつ、運営者として見ていて気になる失敗があります。作品を投稿サイトに置いて、反応を待ち続けてしまうことです。

投稿サイトで読者がつくのは価値のあることですが、それと発注につながるのは別の経路です。発注者は、投稿サイトを巡回して書き手を探しているわけではありません。案件に応募してきた人の作品を読みます。

つまり、練習作は「置いておく」ものではなく「提出する」ものです。応募しなければ、誰の判断材料にもなりません。

作ることに時間をかけ、出すことに時間をかけない方は、実績ゼロの期間が長くなります。完成度が8割でも、条件を満たしているなら出したほうが早い。反応が返ってきて初めて、どこを直すべきかが分かります。

隣接する仕事で、実績を作る道もあります

シナリオの案件だけを狙う必要はありません。文章を扱う仕事は広く、そこで作った実績も判断材料になります。

商品説明、インタビュー記事、ゲーム内のテキスト、広告のコピー。これらは物語ではありませんが、条件に沿って書く能力を示せます。関連する領域はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事アプリケーション開発のお仕事で扱われている業務を見ると、接点が見つかります。技術寄りの知識を土台にしたい方にはCCNA(シスコ技術者認定)のような資格もありますが、まずは文章側で1件作るほうが近道です。

直接取引だと、同じ予算でも取り分が変わります

運営者として見てきた実感をひとつ書きます。

仲介手数料が乗る取引と、乗らない直接取引では、同じ発注予算でも受け手に届く金額が違います。手数料0%の分だけ手取りが厚くなり、発注側は同じ予算でより多く依頼できる。金額の大小というより、同じ仕事に対する取り分の質の話です。

実績ゼロの段階では、この差は小さく見えます。しかし、続けるほど効いてきます。手取りが厚ければ、無理に本数を受けずに済み、1本あたりの時間を確保できる。時間を確保できれば質が上がり、質が上がれば指名が来る。実績ゼロから抜けるまでの期間は、この循環に早く入れるかどうかで変わります。

長く続いている方に共通しているのは、単発の作業をこなすのではなく「この人に任せると楽だ」と思われる関係を積み上げている点です。締切より少し早く出す、修正指示をまず受け止める、聞かれる前に進捗を出す。実績ゼロの初回から、この姿勢は示せます。作品の完成度より、この部分のほうが次につながります。

実績がないことは、始められない理由になりません。条件を課した練習作を数本作り、選んで見せる。それだけで、判断してもらえる状態は作れます。

よくある質問

Q. 練習作は何本くらい用意すればよいですか?

3本から5本で十分です。多く並べると読む側が選べず、質にばらつきがあると低いほうで判断されます。それより、狙う案件と同じ分量・同じ形式で書くことを優先してください。自由に書いた作品を30本並べるより、条件を課して仕上げた作品が3本あるほうが、発注者にとっては判断材料になります。

Q. 実績ゼロでも受注しやすい案件はありますか?

分量が小さく、仕様がはっきりしている案件です。短編、企画書、既存シリーズの1話分、キャラクター設定の追加分などが該当します。大規模な案件は経験者と直接比較されるため通りにくい一方、こうした小さな仕事は競合が少なく余地があります。初回は確実に納品できる規模を選んでください。

Q. 練習作はどこに置いて見せるのがよいですか?

登録やログインなしで読める場所であれば、投稿サイトでもブログでも構いません。重要なのは索引を1枚作ることです。作品名、ジャンルと想定媒体、文字数、自分に課した条件、制作日数を一覧にしておくと、発注者が自分の案件に近いものを選んで読めます。全部読ませようとしないでください。

Q. 守秘義務で納品作を公開できない場合、実績はどう書きますか?

作品本文の代わりに条件だけを書きます。「ゲーム向けシナリオ、1話4,000字、全8話、守秘義務のため本文非公開」といった形式でも実績として機能します。ただし、どこまで書いてよいかは契約内容によるため、公開の可否は事前に発注者へ確認してください。無断で内容を明かすと契約違反になる場合があります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月11日最終更新:2026年8月26日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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