翻訳の内職は未経験から受けられるのか、求められる語学力と仕事の流れ


この記事のポイント
- ✓翻訳の内職を探している人に向けて
- ✓内職と在宅ワークの違い
- ✓未経験から翻訳の仕事に入る道筋
翻訳の内職を探していると、「未経験歓迎」「英語が少しできればOK」という言葉と、「実務経験3年以上」「トライアル合格が必須」という条件の両方を目にして、自分が受けられる仕事なのかどうか判断がつかない人が多いはずです。翻訳は、自宅で完結する仕事として昔から内職の候補に挙がってきましたが、未経験の人がいきなり翻訳だけで仕事を受けるのは簡単ではありません。一方で、英語を使う事務の仕事や、短い文書の翻訳から経験を積み、翻訳の仕事に近づいていく道筋はあります。この記事では、翻訳の内職が未経験から受けられるのかを、求められる語学力と仕事の流れから具体的に説明します。
「翻訳の内職」は法律上の内職とは違う
最初に、言葉の意味を整理しておきます。日常の会話では、自宅でする仕事をまとめて「内職」と呼ぶことがあります。ところが、法律でいう内職と、翻訳の仕事は別のものとして扱われています。
法律でいう内職は、家内労働法という法律で決まっています。家内労働法では、内職をする人を「家内労働者」と呼び、メーカーや問屋などから物品の提供を受けて、製造や加工をする人を対象にしています。
この法律で「家内労働者」とは、物品の製造、加工等若しくは販売又はこれらの請負を業とする者その他これらの行為に類似する行為を業とする者であつて厚生労働省令で定めるものから、主として労働の対償を得るために、その業務の目的物たる物品(物品の半製品、部品、附属品又は原材料を含む。)について委託を受けて、物品の製造又は加工等に従事する者であつて、その業務について同居の親族以外の者を使用しないことを常態とするものをいう。 出典: e-Gov法令検索 家内労働法 第2条第2項
つまり、法律上の内職は、部品の組み立てや袋詰め、縫製のように、物を作ったり加工したりする仕事です。翻訳は、物ではなく文書という成果物を作る仕事なので、家内労働法の対象には当たらないのが一般的です。
翻訳のように、パソコンやインターネットを使って自宅で仕事を受ける働き方は、厚生労働省では「自営型テレワーク」と呼ばれています。自営型テレワークとは、雇われるのではなく、注文した人から委託を受けて、自宅などで成果物を作る働き方のことです。厚生労働省は、この働き方を適正に進めるためのガイドラインを作り、ホームワーカーズウェブという支援のサイトで、契約の注意点や相談の窓口を案内しています。
この違いを知っておくと、仕事を探すときや、困ったときの相談先を選ぶときに迷いません。翻訳の仕事を「内職」として探すときは、実際には「在宅ワーク」「業務委託」「在宅勤務」といった言葉で募集されていることが多いので、検索の言葉を広げて探します。
翻訳の在宅の仕事は3つの形で募集されている
翻訳の在宅の仕事を探すと、募集の形が大きく3つに分かれていることに気づきます。
1つ目は、派遣やアルバイト、契約社員として企業に雇われ、社内の文書を翻訳する形です。求人の検索サイトで「在宅OK」「テレワーク可」と書かれている翻訳の求人の多くは、この形です。雇用なので、時給や月給で賃金が支払われ、最低賃金や労働時間の決まりが適用されます。ただし、「慣れたら在宅」「一部在宅」のように、最初は出社が必要な求人も多く、完全に自宅だけで働けるとは限りません。
2つ目は、翻訳会社に登録し、業務委託で仕事を受ける形です。産業翻訳と呼ばれる、企業の文書の翻訳の多くはこの形で流れています。翻訳会社が企業から受注した仕事を、登録している翻訳者に振り分けます。登録の前には、トライアルと呼ばれる訳文の試験を受けるのが一般的です。
3つ目は、クラウドソーシングのサービスや、企業や個人からの直接の依頼で仕事を受ける形です。短い文書の翻訳や、Webサイトの文章の翻訳など、比較的小さな案件が多く、実績がなくても応募できる案件があります。
| 募集の形 | 契約 | 未経験での入りやすさ | 在宅の度合い |
|---|---|---|---|
| 派遣・アルバイト・契約社員 | 雇用 | 英語を使う事務から入れることがある | 一部在宅や、慣れてから在宅が多い |
| 翻訳会社への登録 | 業務委託 | トライアルの合格が必要 | 自宅で完結する |
| クラウドソーシング・直接の依頼 | 業務委託 | 小さな案件から応募できる | 自宅で完結する |
未経験の人が最初に検討しやすいのは、1つ目の英語を使う事務の仕事か、3つ目の小さな案件です。2つ目の翻訳会社への登録は、ある程度の経験を積んでからのほうが、トライアルに通る見込みが高くなります。
未経験から受けられる仕事と、受けにくい仕事
翻訳の仕事の中には、未経験でも受けやすいものと、経験がないと受けにくいものがあります。
未経験でも受けやすいのは、次のような仕事です。
- 短い商品の説明文や、Webサイトの短い文章の翻訳
- 海外の利用者から届いた問い合わせのメールの翻訳
- 英語の資料の内容を日本語で要約する仕事
- 英語の文書の入力や、訳文と原文の突き合わせなどの補助の仕事
- 英語を使う事務の仕事の中で、メールや資料の翻訳を任される仕事
経験がないと受けにくいのは、次のような仕事です。
- 契約書や法律の文書の翻訳
- 医薬品や医療機器の文書の翻訳
- 金融の開示資料や、投資家向けの資料の翻訳
- 特許に関わる文書の翻訳
- 出版される書籍の翻訳
経験がないと受けにくい仕事は、誤訳があると、取引のトラブルや健康の被害、法律上の問題につながるおそれがある文書です。依頼する側は、その分野の知識と翻訳の実績がある人に任せたいと考えます。
ただし、本業でその分野の仕事をしてきた人は、翻訳の経験がなくても、分野の知識を強みにできます。たとえば、製薬会社で働いてきた人は、医薬の用語や文書の形式を知っているため、医薬の翻訳を学ぶときに有利です。未経験かどうかは、翻訳の経験だけでなく、分野の知識も含めて考えます。
求められる語学力の考え方
翻訳の仕事を考えるときに、多くの人が気にするのが英語の点数です。TOEICや英検の点数は、英語を読む力の目安として、求人の応募の条件に書かれていることがあります。ただし、点数が高ければ翻訳ができるわけではありません。
翻訳で求められる語学力は、次の3つに分けて考えると分かりやすくなります。
原文を正確に読む力
翻訳では、原文の1文1文を、意味を取り違えずに読む力が求められます。英語の試験では、文章の大意をつかめれば正解できる問題もありますが、翻訳では、否定の範囲、修飾の係り方、代名詞が指すもの、時制の違いまで正確に読み取る必要があります。1語の読み違いが、訳文全体の意味を変えてしまうことがあるからです。
日本語で書く力
英語を日本語に訳す場合、訳文を読むのは日本語の読者です。原文の意味が正しく取れていても、日本語として不自然な訳文は、読み手に伝わりません。翻訳の質の多くは、日本語の文章力で決まります。英語の点数よりも、日本語の文章を書くことに慣れているかどうかのほうが、翻訳の仕事では差がつきやすい点です。
日本語で書く力を確かめたい人は、ビジネスの文書の書き方を学ぶのも1つの方法です。ビジネス文書検定は、ビジネスの文書の形式や敬語、分かりやすい文章の書き方を問う検定で、訳文を整える力の土台になります。
調べる力
翻訳の作業時間の多くは、調べることに使われます。専門用語の訳し方、企業の製品名の正式な表記、業界で使われている言い回しを、辞書や公式の文書で確かめる作業です。知らない言葉が出てきたときに、どこを調べれば信頼できる答えが見つかるかを知っていることも、語学力の一部と考えます。
翻訳の力を客観的に測る方法として、日本翻訳連盟は検定を実施しています。
日本翻訳連盟は翻訳者の育成を目的としてJTF<ほんやく検定>を実施しています。受験によって自分の翻訳力を客観的に測ることができます。 出典: 一般社団法人日本翻訳連盟
英語の試験の点数とは別に、翻訳そのものの力を測る方法があることを知っておくと、自分の今の位置を確かめやすくなります。
翻訳の仕事の流れ
業務委託で翻訳の仕事を受ける場合の、一般的な流れを説明します。
- 依頼の打診を受ける(原文の分量、分野、納期、報酬、ファイルの形式が示される)
- 受けられるかを判断し、返事をする(分野が合わない、納期に間に合わない場合は断る)
- 原文と、用語集や参考の訳文、表記の決まりなどの資料を受け取る
- 原文を最初に通して読み、内容と、調べる必要のある言葉の見当をつける
- 訳文を作る
- 訳文を見直す(訳し漏れ、数字の誤り、表記の揺れ、日本語の自然さ)
- 指定された形式で納品する
- 依頼主の確認(検収)を受け、修正の依頼があれば対応する
- 請求書を出し、報酬を受け取る
この中で、未経験の人が見落としやすいのは、2と8と9です。
2の判断では、自分が訳せる分野か、納期までに作業の時間が取れるかを考えます。慣れないうちは、作業にかかる時間を短く見積もりがちです。最初の数件は、作業の時間を記録し、自分が1時間にどのくらいの分量を訳せるかを把握しておくと、次の判断がしやすくなります。
8の検収とは、依頼主が納品された訳文を確認し、受け取ってよいかを判断することです。修正の依頼にどこまで応じるかは、契約の時点で決めておくのが望ましく、決まっていないと、何度も修正を求められて作業の時間が膨らむことがあります。
9の請求では、請求書の書き方や、源泉徴収の扱いを知っておく必要があります。翻訳料は、支払う側が所得税と復興特別所得税を源泉徴収することがあり、請求書の金額より振り込まれる金額が少なくなることがあります。国税庁のタックスアンサーでは、原稿料などの報酬を個人に支払うときの源泉徴収の税率を、支払金額が100万円以下の部分で10.21%と説明しています。詳しくは国税庁のタックスアンサー No.2795で確かめられます。
未経験から翻訳の仕事に近づく道筋
未経験の人が、翻訳の仕事を受けられるようになるまでの道筋を、段階に分けて説明します。
段階1:得意な分野を決める
最初に、自分が訳せる分野を決めます。本業や学んできた分野、趣味で詳しい分野など、日本語で読んで内容がすぐに分かる分野を選びます。分野が決まると、練習の題材も選びやすくなります。
段階2:練習で訳文を作る
得意な分野の英語の文書で、日本語の公式な訳が公開されているものを探し、自分で訳してから見比べます。企業の年次報告書や、公的な機関の報告書、ソフトウェアのヘルプなど、英語版と日本語版の両方が公開されている文書は練習に向いています。見比べることで、専門用語の訳し方や、文の組み立て方の違いが分かります。
練習は、量を決めて続けることが大切です。たとえば、週に1本、原文で1ページほどの文書を訳し、公式の訳と見比べて、気づいた点を1つずつ書き留めていきます。数か月続けると、自分がよく間違える文の形や、訳し方の癖が見えてきます。書き留めた内容は、自分用の用語集や表記の決まりの一覧としてまとめておくと、実際の仕事でもそのまま使えます。
段階3:小さな案件で経験を積む
クラウドソーシングのサービスなどで、短い文書の翻訳の案件に応募し、実際の依頼で訳文を作る経験を積みます。報酬の水準は案件によって幅がありますが、最初の数件は、依頼主とのやり取りや納品の流れを経験することに意味があります。
段階4:翻訳会社のトライアルを受ける
ある程度の経験を積み、得意分野の訳文に自信がついてきたら、翻訳会社の翻訳者の募集に応募し、トライアルを受けます。職務経歴書には、どの分野の文書を、どのくらいの分量訳してきたかを具体的に書きます。
段階5:継続して受ける取引先を作る
翻訳会社や依頼主から継続して仕事を受けられるようになると、仕事の量が安定します。同じ取引先の文書を続けて訳すと、用語や表記の決まりに慣れ、作業も速くなります。
この道筋は、数か月から数年かけて進むものです。最初から翻訳だけで安定した収入を得ようとせず、英語を使う事務の仕事や、ほかの在宅の仕事と組み合わせながら、少しずつ翻訳の比重を高めていく人が多くいます。
英語を使う事務の求人の読み方
未経験の人が翻訳に近づく入口として、英語を使う事務の求人を検討する場合は、求人の書き方から仕事の中身を読み取ることが大切です。「翻訳・通訳」と書かれた求人でも、実際の仕事の多くがメールの対応や資料の作成で、翻訳はその一部ということがよくあります。
求人を読むときは、次の点を確かめます。
- 仕事の内容のうち、翻訳がどのくらいの割合を占めるか
- 訳す文書の種類(社内のメール、会議の資料、契約書、製品の資料など)
- 英語を読む仕事が中心か、英語を書く仕事が中心か
- 通訳を含むかどうか(会議の通訳は、その時間に参加することが前提になる)
- 在宅で働ける日数と、出社が必要な場面
- 雇用の形(派遣、アルバイト、契約社員)と、契約の期間
「慣れたら在宅」「一部在宅」と書かれた求人は、最初の数週間から数か月は出社して仕事を覚えることが前提になっていることが多くあります。完全に在宅で働きたい人は、在宅の条件を応募の前に確かめておきます。
英語を使う事務の仕事は、翻訳だけを任される仕事ではありませんが、社内の文書を訳す経験を積めるうえに、企業の中で翻訳がどのように使われているかを知ることができます。この経験は、のちに翻訳会社のトライアルを受けるときにも、職務経歴書に書ける実績になります。
応募の書類で伝えること
翻訳の仕事に応募するときは、履歴書や職務経歴書、応募の文章で、自分が何を訳せるかを具体的に伝えることが大切です。未経験の人ほど、伝え方の工夫で印象が変わります。
伝えたいのは、次のような点です。
- 翻訳の向き(英語から日本語か、日本語から英語か)
- 得意な分野と、その分野の知識の背景(本業の経験、学んできたこと)
- これまでに訳した文書の種類と、おおよその分量(練習や、事務の仕事の中での翻訳も含む)
- 1週間に作業できる時間と、連絡の取れる時間帯
- 使えるソフト(文書の作成、表計算、翻訳支援ツールなど)
「英語が好きです」「翻訳に興味があります」という書き方より、「製造業の品質管理の部署で5年間働き、英語の検査の手順書を社内で訳してきました」のように、分野と経験を結び付けて書くと、依頼主は任せられる仕事を想像しやすくなります。
クラウドソーシングの案件に応募するときは、依頼の内容を読んだうえで、どのように訳すか、納期までにどう進めるかを短く書きます。依頼主が求めている内容に合わせて応募の文章を書き分けると、決まった文章を送るより選ばれやすくなります。
作業の環境と道具
翻訳の在宅の仕事に必要な道具は、パソコンとインターネットの環境が中心です。ただし、道具の選び方で作業の速さが変わります。
画面は、原文と訳文と調べ物の画面を同時に開けるよう、大きめの画面か、2台目の画面があると作業が速くなります。辞書は、紙の辞書に加えて、オンラインの辞書や、分野の専門用語の辞書を使い分けます。
産業翻訳では、翻訳支援ツール(CATツール)と呼ばれるソフトが広く使われています。原文を文ごとに区切って表示し、過去の訳文の蓄積や用語集を参照しながら訳せる道具です。翻訳会社によっては、特定のツールを使えることを登録の条件にしていることがあります。最初からツールを買う必要はありませんが、無料の体験版などで操作に慣れておくと、登録の幅が広がります。
機械翻訳との付き合い方
いまの翻訳の現場では、機械翻訳が広く使われています。機械翻訳とは、原文を機械が自動で訳して訳文を出力する仕組みのことです。
翻訳の仕事では、機械翻訳を使ってよいかどうかが案件ごとに決まっています。機械翻訳の訳文を人が直して仕上げる「ポストエディット」と呼ばれる案件も増えています。ポストエディットでは、機械の訳文の誤りや不自然な表現に気づく力が求められ、原文を正確に読む力と、日本語で書く力がそのまま問われます。
注意したいのは、預かった原文の扱いです。原文には、公開前の製品の情報や取引の条件など、外に出してはいけない情報が含まれていることがあります。依頼主の許可なく、外部の機械翻訳のサービスに原文を入力すると、秘密保持の約束に反するおそれがあります。案件の指示に機械翻訳の扱いが書かれていないときは、使う前に依頼主に確かめます。
AIを業務に取り入れる流れは、翻訳以外の分野でも広がっています。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、企業がAIを業務に取り入れるときの支援の仕事を紹介しています。機械翻訳の得意なことと苦手なことを知っておくことは、こうした仕事にも生きる知識です。
教材や講座を先に買わせる手口に注意する
翻訳の内職を探していると、「翻訳の講座を受ければ仕事を紹介する」「教材を購入すれば在宅で翻訳の仕事ができる」という案内に出会うことがあります。こうした案内の中には、仕事の紹介を約束しながら、実際には講座や教材の代金を払わせることが目的のものが紛れています。
次のような特徴がある案内には注意します。
- 仕事を始める前に、講座の受講料や教材費、登録料を支払わせる
- 「講座を修了すれば必ず仕事を紹介する」と言いながら、仕事の量や報酬を書面で示さない
- 「英語が苦手でも翻訳で稼げる」など、仕事の難しさを説明しない
- 契約を急がせる、その場で申し込ませる
- 運営している会社の名前、所在地、連絡先がはっきりしない
仕事の紹介を条件に、教材や講座の代金を支払わせる取引は、特定商取引法の「業務提供誘引販売取引」に当たることがあります。この取引では、事業者に契約の内容を書面で渡すことなどが求められていて、一定の期間内であれば契約を解除できる決まりがあります。詳しくは消費者庁の特定商取引法のページで確かめられます。
翻訳の学校や通信の講座そのものは、翻訳の力を伸ばす方法として多くの人が利用しています。問題になるのは、講座の受講と仕事の紹介を結び付けて、仕事が得られるかのように思わせて契約させる場合です。講座を選ぶときは、受講の目的を「翻訳の力を伸ばすこと」として、仕事の紹介の約束とは切り離して判断します。困ったときは、お住まいの地域の消費生活センターに相談します。
契約で確かめておくこと
業務委託で翻訳の仕事を受ける場合は、契約の内容を書面やメールで確かめておくことが大切です。確かめておきたいのは、次の点です。
- 報酬の額と、その計算の方法(原文の語数か、文字数か、1件あたりか)
- 納期と、納品の方法
- 検収の方法と、修正にどこまで応じるか
- 報酬の支払いの期日と、振込の手数料をどちらが持つか
- 秘密保持の約束の内容と、原文や訳文の扱い
- 機械翻訳を使ってよいかどうか
2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法では、個人で働くフリーランスに業務を委託する発注事業者に、取引の条件を明示することや、原則として成果物を受け取った日から60日以内に報酬を支払うことなどが義務付けられています。詳しくは厚生労働省のフリーランス向けのページで確かめられます。報酬が支払われないなどのトラブルがあったときは、同じページで案内されている「フリーランス・トラブル110番」で、弁護士に無料で相談できます。
税金と扶養の扱い
翻訳の仕事の収入の扱いは、雇用か業務委託かで変わります。
派遣やアルバイトとして雇われる場合は、給与として支払われ、勤め先が源泉徴収と年末調整をします。業務委託で報酬を受け取る場合は、自分で収入と必要経費を管理し、条件に当てはまれば確定申告をします。
会社員が副業として翻訳の仕事を受ける場合、国税庁の案内では、給与を1か所から受けていて、その全部が源泉徴収の対象となる人は、給与所得と退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えると、確定申告が必要とされています。所得とは、収入から必要経費を差し引いた額のことです。詳しくは国税庁のタックスアンサー No.1900で確かめられます。源泉徴収された税金が多すぎる場合は、確定申告をすると戻ってくることもあります。
家族の扶養に入っている人は、翻訳の収入によって、税の扶養と健康保険の扶養のどちらからも外れることがあります。税と健康保険では、収入の数え方や基準が違います。また、業務委託の翻訳の収入は、法律上の内職とは扱いが違うため、内職の収入に使える税の特例が当てはまらないことが一般的です。収入の見込みが分かった段階で、税務署や、加入している健康保険の窓口で確かめます。
在宅で続けるための時間の組み方
翻訳の仕事を在宅で続けるには、時間の組み方が大切です。特に、子育てや介護、本業と両立しながら働く人は、次の点を意識すると続けやすくなります。
1つ目は、訳す時間と見直す時間を分けることです。訳し終えた直後は、自分の訳文の誤りに気づきにくいものです。訳した日と見直す日を分け、時間を空けて読み直すと、訳し漏れや不自然な文に気づきやすくなります。
2つ目は、まとまった時間を確保することです。翻訳は、原文の文脈を頭に入れたまま作業する仕事のため、細切れの時間では効率が落ちます。1日のうち、30分でも1時間でも、中断されずに作業できる時間を決めておくと、作業が進みやすくなります。
3つ目は、受ける量の上限を決めることです。1週間に使える時間と、1時間に訳せる分量から、1週間に受けられる分量の上限を出しておきます。上限を超える打診は、納期の相談をするか断ります。
4つ目は、連絡の時間を決めておくことです。依頼主や翻訳会社からの連絡に、決まった時間に返信できるようにしておくと、仕事の打診を逃しにくくなります。
翻訳の在宅の仕事のよい点と大変な点
ここまでの内容を踏まえ、翻訳を在宅の仕事にするときのよい点と大変な点を整理します。
よい点は、次のとおりです。
- 自宅で完結する仕事が多く、通勤の時間がかからない
- 業務委託であれば、作業の時間を自分で割り振れる
- 本業や学んできた分野の知識が、訳文の質と作業の速さに直接つながる
- 訳すたびに、分野の知識と英語の力、日本語の文章力が深まる
- 継続して取引できる相手ができると、仕事の量が安定しやすい
大変な点は、次のとおりです。
- 未経験のうちは、受けられる仕事の数が限られる
- 調べ物に時間がかかり、慣れるまでは時間あたりの報酬が低くなりやすい
- 納期の前は、集中して作業する時間を確保する必要がある
- 機械翻訳の広がりで、人に求められる仕事の中身が変わってきている
- 誤訳があると、依頼主の信頼を一度に失うことがある
翻訳の在宅の仕事に向いているのは、1つの文書に時間をかけて向き合い、細かな言葉の違いを調べることが苦にならない人です。反対に、短い時間で多くの作業をこなしたい人や、調べ物が苦手な人には、続けるのが難しい仕事です。自分に合うかどうかは、短い文書を1本訳してみて、その作業を楽しめるかどうかで確かめられます。
翻訳の周辺にある在宅の仕事
翻訳の仕事だけにこだわらず、英語の力を生かせる周辺の在宅の仕事にも目を向けると、経験を積む機会が広がります。
英語の資料を読んで、日本語で要点をまとめる仕事は、全文を訳す翻訳より入りやすく、調べる力と書く力を鍛えられます。海外の市場や研究の動向を調べる仕事は、研究職や調査の経験がある人に向いています。研究者の年収・単価相場では、研究に関わる仕事の収入の目安を紹介しています。
英語の文章を書く力や、日本語の記事を書く力を生かして、ライティングの仕事を受ける人もいます。Webライターが文字単価を上げる方法【2026年版】|1円→5円のステップでは、文章の仕事で単価を上げていく段階を紹介しています。翻訳で鍛えた調べる力は、記事の執筆にもそのまま生きます。
ソフトウェアやアプリを日本の利用者向けに合わせるローカライズの仕事もあります。画面の文言の文字数の制限や、開発の流れを知っておくと、ローカライズの仕事で話が通じやすくなります。アプリケーション開発のお仕事では、アプリの開発の仕事の内容を紹介しています。
運営者として見てきた、翻訳の仕事に入っていく人の傾向
在宅ワークとフリーランスの仲介を20年以上続けてきた運営者として見てきた限りでは、未経験から翻訳の仕事に入っていく人には、共通する進み方があります。
1つは、最初から翻訳の仕事だけを探すのではなく、英語を使う事務や、資料の要約、海外とのメールのやり取りなど、英語に触れる仕事から入っていることです。そうした仕事の中で、翻訳を任される場面が少しずつ増え、実績として語れる経験が積み上がっていきます。
もう1つは、依頼主の確認の手間を減らす工夫をしていることです。訳文を納品するときに、原文の誤りに気づいた箇所や、訳語を選んだ理由を短く添えると、依頼主は確認が楽になります。長く続く人ほど、「この人に任せると確認が楽になる」という関係を作ることに時間を使っています。依頼主と直接取引できるようになると、仲介の手数料が乗らない分、依頼主は同じ予算でより多くの文書を頼め、受ける側は手取りが厚くなります。
翻訳の内職を考えている人は、まず得意な分野を1つ決め、その分野の英語の文書を訳す練習から始めます。英語の力を生かせるほかの在宅の仕事も合わせて探したいときは、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように分野ごとの仕事を紹介しているガイドを読むと、自分の経験と重なる仕事が見つけやすくなります。
よくある質問
Q. 翻訳の内職は英語の資格がないと受けられませんか?
資格がなくても応募できる仕事はあります。翻訳会社のトライアルやクラウドソーシングの案件では、資格よりも実際の訳文の質が見られます。ただし、派遣やアルバイトの求人では、英語の試験の点数を応募の条件にしていることがあります。資格は英語を読む力の目安として、持っていれば職務経歴書に書いておきます。
Q. 翻訳は家内労働法の内職に当たりますか?
家内労働法の内職は、物品の提供を受けて製造や加工をする仕事を対象にしています。翻訳は文書という成果物を作る仕事で、一般には家内労働法の対象に当たりません。パソコンを使って自宅で委託を受ける翻訳は、厚生労働省では自営型テレワークとして扱われ、ホームワーカーズウェブで契約の注意点が案内されています。
Q. 未経験でも受けやすい翻訳の仕事はどんなものですか?
短い商品の説明文やWebサイトの短い文章の翻訳、海外から届いた問い合わせのメールの翻訳、英語の資料の要約などは、比較的入りやすい仕事です。契約書や医薬、金融、特許の文書は、誤訳の影響が大きいため、分野の知識と実績が求められます。本業でその分野の経験がある人は、分野の知識を強みにできます。
Q. 翻訳の講座を受ければ仕事を紹介してもらえますか?
講座の受講と仕事の紹介を結び付けて、先に受講料や教材費を払わせる案内には注意が必要です。仕事の紹介を条件に代金を支払わせる取引は、特定商取引法の業務提供誘引販売取引に当たることがあります。講座は翻訳の力を伸ばす目的で選び、契約の前に条件を書面で確かめ、迷ったら消費生活センターに相談します。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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